• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1389294
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-22 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2017−232373「車載装置及び個人情報管理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019−101786、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月4日の出願であって、令和3年6月16日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和4年1月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたが、これに対し、同年2月22日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年4月8日に特許法164条3項に規定される前置報告がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において、頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.国際公開第2016/038729号

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって補正前の請求項1、3の「登録装置において前記車両の登録の消去、及び前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新の少なくとも1つによる前記関連情報の更新」を「登録装置において前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新による前記関連情報の更新」とする補正は、補正前の請求項1、3の「前記車両の登録の消去、及び前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新の少なくとも1つ」と選択的に記載された事項を「前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新」のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1−3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和4年2月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 車両のユーザの個人情報を記憶する記憶部と、
車両名と前記車両のユーザ名とを関連付けた関連情報が登録されている登録装置において前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新による前記関連情報の更新により出力された指示信号に従って前記記憶部に記憶されている前記ユーザの個人情報を消去する制御部と、
を備えた車載装置。」

なお、本願発明2は、本願発明1を限定したものであり、本願発明3は、本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものである。

第5 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載及び引用発明

(1)原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に既に公知である、国際公開第2016/038729号(2016年3月17日公開。以下、これを「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加したものである。以下、同じ。)

A 「[0011] 以下、実施形態の認証システム、利用者端末、制御装置、サービス提供装置、プログラム、および認証方法について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態による各装置と、その機能構成について説明する。
図1は本実施形態が実現する認証システムの概略機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態によるシステムは、利用者端末100と、サービス提供装置200と、移動体制御装置300とを含む。移動体制御装置は、単に「制御装置」とも呼ぶ。
[0012] 利用者端末100は、例えば、スマートフォンや、パーソナルコンピューターや、ウェアラブルコンピューターや、その他の携帯型情報通信機器などである。複数の利用者がいる場合、原則として、各利用者が1台の利用者端末100を保有し、利用する。サービス提供装置200は、サーバーコンピューター等を用いて実現される装置である。なお、複数の装置を用いて、いわゆるクラウドとしてサービス提供装置200を実現しても良い。サービス提供装置200は、例えば、移動体(車両など)の予約管理を行う機能や、利用者の認証処理に関する検証を行う機能などを備えている。移動体制御装置300は、移動体の機能を制御する能力を備えている。移動体が車両であるとき、移動体制御装置300は、その車両のドアロックを解錠/施錠したり、その車両のエンジンロックを解錠/施錠したりする。エンジンロックの制御は、車両のイモビライザーの機能と連動する。原則として、1台の移動体に対して1台の移動体制御装置300が設けられている。
[0013] 利用者端末100とサービス提供装置200と移動体制御装置300とは、ネットワークにより相互に通信可能なように接続されている。このネットワーク上では、例えばIP(インターネットプロトコル)を用いた、双方向のデータ通信が行われる。利用者端末100と移動体制御装置300との間は、無線LANやブルートゥース(bluetooth)やNFC(Near Field Communication)などの近距離通信を用いることが好適であるが、特に通信距離に関する限定はない。利用者端末100とサービス提供装置200との間や、移動体制御装置300とサービス提供装置200との間は、WAN(ワイドエリアネットワーク)を用いることが好適であるが、特に通信距離に関する限定はない。
[0014] 利用者端末100は、通信部110と、サービス管理部120と、認証装置130とを含む。通信部110は、サービス管理部120や認証装置130が、ネットワークを介して外部の装置との間で通信するための機能を提供する。ここで外部の装置とは、サービス提供装置200や移動体制御装置300である。サービス管理部120は、移動体を利用することに関連する諸サービスをサービス提供装置200に対して要求する機能を有する。
[0015] 認証装置130は、認証機能を提供するものであり、格納部131と、情報取得部132と、認証処理部133とを含む。認証装置130は、利用者を認証する。認証装置130は、ヒトの個体ごとの特徴を利用した生体認証の技術を利用することが好適であるが、その他の認証のための技術を利用しても良い。
[0016] 格納部131は、利用者の本人認証に必要な情報を格納する機能と、格納した情報を認証処理部133に渡す機能とを有する。なお、格納部131は、利用者の認証要素である利用者認証要素を予め格納しておくようにする。格納部131は、例えば半導体メモリなどの記憶装置を用いて実現される。情報取得部132は、利用者の本人確認のために必要な情報を外部から取得する機能と、取得した情報を認証処理部133に渡す機能とを有する。認証処理部133は、格納部131と情報取得部132とから情報を受け取る機能を有する。また、認証処理部133は、格納部131と情報取得部132とから受け取った情報を用いて利用者の本人認証を行う機能を有する。また、認証処理部133は、認証装置130の処理が正しく行われることを表明するアサーション情報を生成する機能を有する。また、認証処理部133は、通信部110に情報を渡す機能を有する。言い換えれば、認証処理部133は、移動体制御装置300から認証要素を含んだ照合要求メッセージを受信すると、照合要求メッセージに含まれている認証要素と、格納部131に格納されている利用者認証要素とを照合し、この照合処理が成功か失敗かを表す情報を含んだ照合応答メッセージを移動体制御装置300に送信する。
[0017] なお、認証処理部133が生成するアサーション情報としては、ISO/IEC24761「生体認証のための認証コンテキスト」で定義されたACBioInstanceが好適である。但し、認証装置130が実行した処理や利用した情報の正当性を表明できるものであれば、認証処理部133は、このACBioInstance以外のアサーション情報を用いても良い。なお、以後に記載する各種のアサーション情報としても、同様に、ISO/IEC24761で定義されたACBioInstanceが好適である。
[0018] サービス提供装置200は、通信部210と、サービス提供部221と、格納部222と、検証部231と、格納部232とを含む。格納部222および232は、半導体メモリやハードディスク装置などの記憶装置を用いて実現される。」

B 「[0021] 移動体制御装置300は、通信部310と、認証装置320と、制御管理部330とを含む。
[0022] 通信部310は、認証装置320や制御管理部330が、ネットワークを介して、利用者端末100やサービス提供装置200との間で通信を行う機能を提供する。認証装置320は、情報取得部321と、認証処理部322と、格納部323とを含む。情報取得部321は、利用者から本人確認のため必要な情報を取得する機能と、取得したその情報を認証処理部322および格納部323に渡す機能とを有する。言い換えれば、情報取得部321は、利用者の認証のための認証要素を取得する。認証処理部322は、情報取得部321および格納部323から情報を受け取る機能と、受け取った情報を用いて利用者の本人確認を行う機能と、認証装置320の処理が正しく行われることを表明するアサーション情報を生成する機能と、アサーション情報の正当性を検証する機能と、認証要素を管理する機能と、認証要素証明書の有効性を確認する機能と、通信部310との間で情報を受け渡す機能とを有する。言い換えれば、認証処理部322は、情報取得部321が取得した認証要素を照合するため認証要素を含んだ照合要求メッセージを利用者端末100に対して送信するとともに、利用者端末100から照合要求メッセージに対応する照合応答メッセージを受信し、照合応答メッセージが照合成功を示す場合には取得した認証要素を格納部323に登録するとともに認証要素のステータスを「無効」とし、認証要素登録応答メッセージをサービス提供装置200に対して送信し、認証要素登録応答メッセージに対応してサービス提供装置200から認証要素有効化指示を受けると、格納部323に登録した認証要素のステータスを「有効」とする。格納部323は、認証要素や認証要素証明書を格納するための記憶機能を有する。」

C 「[0037] ステップST12において、上記の認証要素登録要求のメッセージを受信した認証処理部322は、利用者に認証要素を要求する。例えば、生体情報を用いた認証を利用する場合、情報取得部321は、ここで利用者の認証要素として生体情報の生データを取得する。
ステップST13において、認証処理部322は、ステップST12で取得した認証要素を含む照合要求のメッセージを、利用者端末100側の認証処理部133に送信する。なお、ここで、移動体制御装置300と利用者端末100との間の通信接続は、ブルートゥースやNFCなどの近接通信を利用することが好ましい。」

D 「[0040] ステップST16において、認証処理部322は、ステップST14における照合が成功したことを条件として、ステップST12で獲得した認証要素を格納部323に登録する。移動体制御装置300内の格納部323に格納されているこの認証要素を、車載認証要素と呼ぶ。なお、この段階では、認証処理部322は、格納部323に登録した認証要素のステータスを「無効」とする。認証要素のステータスが「無効」であることを表すためには、いくつかの方法が考えられる。第1の方法として、明示的に「無効」というステータスを示す情報を格納部323に記憶させても良い。また第2の方法として、格納されている認証要素に対応する認証要素証明書が登録されていない場合には「無効」とみなすことにしても良い。」

E 「[0052] 処理の流れについての説明に戻る。
図8は、本実施形態によるシステムにおける、移動体の利用終了時の処理の流れを示すシーケンスチャートである。以下、このチャートに沿って説明する。
ステップST23において、利用者は移動体から下車し、利用者端末100を操作することによってサービス終了を要求する。これに応じて、利用者端末100内のサービス管理部120は、サービス提供装置200側のサービス提供部221に対して利用終了要求のメッセージを送信する。この利用終了要求のメッセージは、移動体識別情報を含む。」

F 「[0056] ステップST30において、検証部231は、ステップST29での検証結果が成功したことを前提として、移動体のドアロックとエンジンロックを施錠する要求を、移動体制御装置300内の制御管理部330に送信する。また、検証部231は、格納部323に登録されている認証要素を削除する要求を認証処理部322に送信する。それに、検証部231は、サービス提供部221に対して、格納部222に登録されていた予約情報を削除するように要求する。また、検証部231は、ステップST18において登録した認証要素証明書を、格納部232から削除する。
[0057] ステップST31において、制御管理部330は、受信したドアロック施錠要求およびエンジンロック施錠要求に基づいて、それぞれ、ドアのロックおよびエンジンのロックを施錠する。
ステップST32において、認証処理部322は、格納部323に登録された認証要素と認証要素証明書を無効とする。また、認証処理部322は、これらの情報を適切に削除する。つまり、認証処理部322は、これらの無効にした情報を、いかなる手段によっても読み出すことができないように完全に削除する。
以上で、このシーケンスチャート全体の処理を終了する。」

G 「[0059] 図10は、サービス提供装置200に設けられている格納部222が記憶するデータの構成の概略を示す概略図である。図示するように、格納部222は、表形式の構造のデータを記憶している。格納部222が記憶する表は、移動体識別情報と、利用者識別情報と、ドアロック状態と、エンジンロック状態と、認証要素の各データ項目を有する。この表における1行のデータが、ある利用者による移動体の予約に対応している。
[0060] 格納部222が保持する表における各データ項目の意味は次の通りである。
移動体識別情報は、移動体制御装置が搭載される移動体を識別するための情報である。
予約者識別情報は、その移動体を予約して利用する利用者を識別するための情報である。
ドアロック状態とエンジンロック状態は、該当移動体に対して、ドアとエンジンが施錠か解錠であるかを示す情報である。ドアロック状態およびエンジンロック状態の各項目は、「解錠状態」または「施錠状態」のいずれか、その時点での状態を表す値を記憶する。ドアロック状態が「施錠状態」であるとき、移動体のドアがロックされており、利用者等はその移動体のドアを開けて入ることができない。ドアロック状態が「解錠状態」であるとき、移動体のドアロックは解錠されており、利用者はその移動体のドアを開けて出入りすることができる。エンジンロック状態が「施錠状態」であるとき、利用者等はエンジンを市度させることができない。エンジンロック状態が「解錠状態」であるとき、利用者は、エンジンを始動させることができる。
認証要素の項目は、「登録済み」または「なし」のいずれかに相当するデータを記憶する。この認証要素の項目の値が「登録済み」であるとき、予約されている当該移動体に関して、移動体制御装置300側の格納部323には利用者の認証要素が登録されていることを表す。この認証要素の刻目の値が「なし」であるとき、予約されている当該移動体に関して、移動体制御装置300側の格納部323には利用者の認証要素が登録されていないことを表す。」

H 「図1




I 「図4




J 「図8




K 「図10




L 「図12




(2)引用文献1の上記記載について検討する。
a 上記(1)Aの「図1は本実施形態が実現する認証システム・・・(中略)・・・本実施形態によるシステムは、・・・(中略)・・・サービス提供装置200と、移動体制御装置300とを含む」との記載から、引用文献1には、“サービス提供装置200と、移動体制御装置300とを含む認証システム”が記載されていると認められる。

b 上記(1)Aの「サービス提供装置200は、・・・(中略)・・・格納部222と、検証部231と・・・(中略)・・・を含む」との記載、上記(1)Gの「格納部222が記憶する表は、移動体識別情報と、利用者識別情報と・・・(中略)・・・の各データ項目を有する」との記載、上記(1)Gの「移動体識別情報は、移動体制御装置が搭載される移動体を識別するための情報である。」「予約者識別情報は、その移動体を予約して利用する利用者を識別するための情報である。」との記載、上記(1)Hの記載、及び上記(1)Kの記載から、引用文献1には、“サービス提供装置200は、格納部222と、検証部231とを含み、前記格納部222が記憶する表は、移動体識別情報と、利用者識別情報との各データ項目を有し、前記移動体識別情報は、移動体制御装置が搭載される移動体を識別するための情報であり、前記利用者識別情報は、その移動体を予約して利用する利用者を識別するための情報であ”ることが記載されていると認められる。(なお、上記(1)Gの「予約者識別情報」は、「利用者識別情報」の誤記であると認められる。)

c 上記(1)Bの「移動体制御装置300は、・・・(中略)・・・認証装置320・・・(中略)・・・を含む」との記載、上記(1)Bの「認証装置320は、情報取得部321と、認証処理部322と、格納部323とを含む」との記載、上記(1)Bの「格納部323は、認証要素・・・(中略)・・・を格納するための記憶機能を有する」との記載、上記(1)Cの「生体情報を用いた認証を利用する場合、情報取得部321は、・・・(中略)・・・利用者の認証要素として生体情報・・・(中略)・・・を取得する」との記載、上記(1)Dの「認証処理部322は、・・・(中略)・・・獲得した認証要素を格納部323に登録する」との記載、上記(1)Hの記載、及び、上記(1)Iの記載より、引用文献1には、“移動体制御装置300は、認証装置320を含み、前記認証装置320は、情報取得部321と、認証処理部322と、格納部323とを含み、生体情報を用いた認証を利用する場合、前記情報取得部321は、利用者の認証要素として生体情報を取得し、前記認証処理部322は、獲得した認証要素を前記格納部323に登録し、前記格納部323は、認証要素を格納するための記憶機能を有す”ることが記載されていると認められる。そして、引用発明の「移動体制御装置300」が搭載される「移動体」は、上記(1)Aの[0012]によれば、「移動体が車両であるとき、移動体制御装置300は、その車両のドアロックを解錠/施錠したり、その車両のエンジンロックを解錠/施錠したりする。エンジンロックの制御は、車両のイモビライザーの機能と連動する。」等と記載されていることからすると、「車両」を当然に含むものといえる。

d 上記(1)Eの「移動体の利用終了時」との記載、上記(1)Fの「検証部231は、格納部323に登録されている認証要素を削除する要求を認証処理部322に送信する」との記載、上記(1)Fの「認証処理部322は、格納部323に登録された認証要素・・・(中略)・・・を・・・(中略)・・・削除する」との記載、及び、上記(1)Jの記載より、引用文献1には、“移動体の利用終了時、前記検証部231は、前記格納部323に登録されている認証要素を削除する要求を前記認証処理部322に送信し、前記認証処理部322は、前記格納部323に登録された認証要素を削除する”ことが記載されていると認められる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 サービス提供装置200と、移動体制御装置300とを含む認証システムに用いられる移動体制御装置300であって、
前記サービス提供装置200は、格納部222と、検証部231とを含み、前記格納部222が記憶する表は、移動体識別情報と、利用者識別情報との各データ項目を有し、前記移動体識別情報は、移動体制御装置が搭載される車両を含む移動体を識別するための情報であり、前記利用者識別情報は、その移動体を予約して利用する利用者を識別するための情報であり、
前記移動体制御装置300は、認証装置320を含み、前記認証装置320は、情報取得部321と、認証処理部322と、格納部323とを含み、生体情報を用いた認証を利用する場合、前記情報取得部321は、利用者の認証要素として生体情報を取得し、前記認証処理部322は、獲得した認証要素を前記格納部323に登録し、前記格納部323は、認証要素を格納するための記憶機能を有し、
移動体の利用終了時、前記検証部231は、前記格納部323に登録されている認証要素を削除する要求を前記認証処理部322に送信し、前記認証処理部322は、前記格納部323に登録された認証要素を削除することを特徴とする移動体制御装置300。」

2 前置報告にて引用された文献の記載
(1)前置報告において、周知技術を示す文献として引用された特開2007−241383号公報(平成19年9月20日公開。以下、これを「引用文献2」という。)には、以下の記載が認められる。

「【0004】
ところで、車両は、例えば、中古車として転売されることがあるが、そのときには、登録されている前の所有者の生体情報を消去して、次の所有者の生体情報を登録する必要がある。このとき、新しく所有者となった中古車の購入者の生体情報が登録されると、生体情報が登録されている人しか、その中古車を利用することができなくなるので、車両が盗難にあう可能性が低くなる。」

「【0008】
例えば、車両においては、中古車として転売を行ったとき、生体認証を行うための、前の所有者の生体情報を消去して、次の所有者の生体情報を登録する必要があるが、前の所有者の生体情報が登録されたまま残っていることにより、前の所有者の認証情報が漏洩し、不正に利用されてしまう可能性があった。」

(2)前置報告において、周知技術を示す文献として引用された特開2005−190040号公報(平成17年7月14日公開。以下、これを「引用文献3」という。)には、以下の記載が認められる。

「【0019】
次に、図7及び図8を参照しながら、データベース120が保持する各データについて説明する。但し、図7及び図8に示すデータは、車両毎に、車両に取り付けられたRFIDタグ及び車籍証明証50のRFIDタグ72にもその一部又は全部が保持されている。
図7は、データベース120に含まれる所有者データのデータ構造を示す概略図である。図示するように、所有者データには、車両IDと対応付けられた所有者情報が含まれている。所有者情報とは、所有者の氏名、生年月日、住所等の情報である。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「移動体」は車両を含むものであるから、引用発明の「移動体制御装置300」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「車載装置」に相当するということができる。
そして、引用発明における、移動体の「利用者」は、「車両」の「ユーザ」を当然に含むといえ、本願明細書段落【0020】等の記載によれば、本願発明1でいう「車両のユーザ」の「個人情報」は、「少なくともユーザの生体情報42を含んでいる」とされているから、引用発明の「利用者の認証要素」である「生体情報」は、本願発明1でいう「車両のユーザ」の「個人情報」ということができる。そうすると、引用発明の移動体制御装置300に含まれる認証装置320の「格納部323」と、本願発明1の「記憶部」とは、「車載装置」に備わる「車両のユーザの個人情報を記憶する記憶部」である点で共通するといえる。

イ 引用発明の「サービス提供装置200」は、「格納部222」を有しており、「格納部222」が記憶する「表」は、「移動体識別情報と、利用者識別情報との各データ項目」を有するところ、引用発明の「移動体」が「車両」を含むことを踏まえると、引用発明の「移動体識別情報」と、本願発明1の「車両名」とは、いずれも「車両の識別情報」である点で共通する。同様に、引用発明の「利用者識別情報」と、本願発明1の「車両のユーザ名」とは、いずれも「ユーザの識別情報」である点で共通する。そうすると、引用発明の「サービス提供装置200」と、本願発明1の「登録装置」とは、下記の点(相違点1)で相違するものの、「車両の識別情報とユーザの識別情報とが関連付けた情報が登録されている登録装置」である点で一致する。

ウ 引用発明の移動体制御装置300に含まれる認証装置320の「認証処理部322」は、移動体の利用終了時、「サービス提供装置200」に含まれる「検証部231」が送信する「格納部323に登録されている認証要素を削除する要求」に応じて、「格納部323に登録された認証要素を削除する」機能を有する。
引用発明の「サービス提供装置200」が、本願発明1の「登録装置」に対応することを踏まえて、引用発明の上記した機能と、本願発明1の「制御部」が果たす「出力された指示信号に従って前記記憶部に記憶されている前記ユーザの個人情報を消去する」という機能とを対比すると、引用発明の「認証処理部320」と、本願発明1の「制御部」とは、「登録装置からの指示に従って、記憶部に記憶されているユーザの個人情報を消去する制御部」を構成している点で共通するといえる。
一方、本願発明1の「指示信号」は、「登録装置において前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新による前記関連情報の更新」により出力されるものであるのに対し、引用発明の「認証要素を削除する要求」は、移動体の利用終了時に送信されるものである点で相違する。

(2) 一致点、相違点
上記(1)の検討結果を踏まえると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「 車両のユーザの個人情報を記憶する記憶部と、
車両の識別情報と前記車両のユーザの識別情報とを関連付けた関連情報が登録されている登録装置からの指示に従って前記記憶部に記憶されている前記ユーザの個人情報を消去する制御部と、
を備えた車載装置。」

(相違点1)
本願発明1の「登録装置」には、車両の識別情報と前記車両のユーザの識別情報とを関連付けた関連情報として、「車両名と前記車両のユーザ名とを関連付けた関連情報」が登録されているのに対し、引用発明の「サービス提供装置200」は、「格納部200」に、「移動体識別情報」と「利用者識別情報」との「各データ項目を有」する「表」を記憶している点。

(相違点2)
本願発明1は、「指示信号」を「前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新による前記関連情報の更新により」出力するのに対して、引用発明は、「移動体の利用終了時」に送信する点。

(3) 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
引用文献1には、本願発明1の上記相違点2に係る構成を示唆する記載は見当たらず、「車両の登録の消去」に応じて「記憶部に記憶されている前記ユーザの個人情報を消去する」程度のことは、例えば上記第5 2(1)に示した引用文献2等に散見されるように、周知な技術であるが、「指示信号」を「前記車両の所有者が代わったことを示すユーザ名の更新による前記関連情報の更新により」出力することは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとまではいえない。また、前置報告で引用された引用文献2、及び、3にも、本願発明1の上記相違点2に係る構成は記載も示唆もされていない。加えて、本願発明1の上記相違点2に係る構成が、本願出願時における周知技術であったとも認められない。
したがって、相違点1の容易想到性について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載のごとき周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし3について
本願発明2ないし3は、本願発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載のごとき周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1−3は補正前の請求項において選択的に記載された事項のうち「前記車両の登録の消去」という事項を有さないものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-09-14 
出願番号 P2017-232373
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 山崎 慎一
児玉 崇晶
発明の名称 車載装置及び個人情報管理システム  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ