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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1389315
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-18 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2020− 72735「給気システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021− 1721、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年4月15日(優先権主張令和1年6月24日)の出願であって、令和2年6月25日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年10月29日に意見書が提出され、さらに令和3年3月31日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年12月17日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、令和4年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

本願請求項1、3−6に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、請求項2に係る発明は、拒絶理由が通知されていないので本査定の対象とはならないが、同様の理由により特許を受けることができないものといえる。
請求項7−12に係る発明は、現時点では、拒絶の理由を発見しない。

引用文献等一覧
1.特開2012−077968号公報
2.特開2011−052905号公報

第3 本願発明1
本願の請求項1−12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明12」という。)は、令和3年8月5日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1−12は以下のとおりである。

「 【請求項1】
第1ファン(21)を有する第1ユニット(20)と、
第1空気を対象空間に供給する第2ファン(31)を有する複数の第2ユニット(30)と、
前記第1ユニットから前記第1ファンにより送出された前記第1空気を複数の前記第2ユニットに搬送するダクト(40)と、
前記対象空間の第2空気の情報を検知する第1検知部(70)と、
前記第1ユニット、複数の前記第2ユニット及び前記第1検知部と通信を行う第1コントローラ(51)と、
を備え、
前記各第2ユニットは、前記第2ファンが送風する風量を検知する第2検知部(32)と、前記第2ファンの回転数を制御する第2コントローラ(52)とを含み、
前記第1コントローラは、前記第1検知部から取得した前記対象空間の前記第2空気の情報に基づき、複数の前記第2ユニットの各々に対し、目標風量を決定し、前記目標風量を前記第2コントローラに指示し、
前記各第2コントローラは、前記第2検知部により検知された風量が、前記目標風量になるように、前記第2ファンの回転数を制御する、給気システム(10)。
【請求項2】
前記第1コントローラは、前記対象空間への給気風量を変更するときに、前記第1ファンの出力及び複数の前記第2ユニットの複数の前記目標風量を決定する、
請求項1に記載の給気システム(10)。
【請求項3】
前記第1ユニットは、熱媒体の流れる熱交換器(22)を有し、
前記熱交換器は、前記第1ファンにより送出される前記第1空気と前記熱媒体との間で熱交換を行う、
請求項1または請求項2に記載の給気システム(10)。
【請求項4】
前記第1検知部は、温度センサ、CO2濃度センサまたは湿度センサであり、
前記第1コントローラは、予め設定された対象空間の設定温度、設定CO2濃度または設定湿度と、前記第1検知部によって検知された値とに基づき、複数の前記第2ユニットの前記目標風量を決定する、
請求項3に記載の給気システム(10)。
【請求項5】
前記第1ユニットの下流側に配置され、前記第1ファンにより送出された前記第1空気の圧力を検知する第3検知部をさらに備え、
前記第1コントローラは、前記第3検知部から取得した圧力の値が所定の範囲になるように、前記第1ファンの回転数を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の給気システム(10)。
【請求項6】
前記第1検知部は、複数の前記第2ユニットそれぞれに対応して複数設けられ、
前記第1コントローラは、複数の前記第1検知部から取得した前記対象空間の前記第2空気の情報に基づき、複数の前記第2ユニットの複数の前記目標風量を決定し、前記各第2コントローラに前記各目標風量を指示する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の給気システム(10)。
【請求項7】
前記第1コントローラが、複数の前記第2ファンの中の少なくとも1台の前記第2ファンの運転状態または複数の前記第2ファンの中の少なくとも1台の前記第2ファンの風量を変更するときには、前記第1ファン及び複数の前記第2ファンの中のファン効率の高いファンの出力を増やすことを優先するかまたはファン効率の低いファンの出力を減らすことを優先する、
請求項6に記載の給気システム(10)。
【請求項8】
前記第1コントローラが、複数の前記第2ファンの中のファン効率が最も高いものの処理静圧が一定になるように若しくは複数の前記第2ファンの中のファン効率が最も高いもののファン回転数が最大になるように、前記第1ファンの出力を決める、
請求項7に記載の給気システム(10)。
【請求項9】
前記第1コントローラが、複数の前記第2ファンの中のファン効率が最も低いものの処理静圧が一定になるように若しくは複数の前記第2ファンの中のファン効率が最も低いもののファン回転数が最小になるように、前記第1ファンの出力を決める、
請求項7に記載の給気システム(10)。
【請求項10】
複数の前記第2ファンの処理静圧を検知するための複数の差圧センサ(33)を備え、
前記第1コントローラが、複数の前記差圧センサの検出値に基づいて前記第1ファンの出力を決める、
請求項8または請求項9に記載の給気システム(10)。
【請求項11】
前記第1コントローラは、複数の前記第2ファンの中のファン効率が最大のものの風量が前記目標風量に達しない場合に、前記第1ファンの出力を増加させる、
請求項8または請求項9に記載の給気システム(10)。
【請求項12】
前記第1ファンにより送出される前記第1空気の風量を検知するための第4検知部(23)をさらに備え、
前記第1コントローラが、前記第1ファン及び複数の前記第2ファンのファン効率の比較に、複数の前記第2検知部及び前記第4検知部のうちの少なくとも一方を用いる、
請求項7から10のいずれか一項に記載の給気システム(10)。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。また、「・・・」は、記載の省略を意味する。以下同様。)。

(1−a)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二酸化炭素濃度に基づいて画一的に導入外気流量を決定すると、その外気流量で被空調室の潜熱を処理できるようにエンタルピを減少させるために、そのコイルに適切な範囲の運転点を外れて運転しなければならない場合が生じ得る。あるいは、外気を搬送するファンに適切な範囲の運転点を外れて運転しなければならない場合が生じ得る。このとき、外気導入流量を決定する観点を、二酸化炭素濃度あるいは機器類の運転点のいずれか適切な方を基準とすることも考えられるが、外調機で処理した外気を1つの被空調室に供給する場合はともかく、複数系統の被空調室に供給する場合は被空調室ごとに事情が異なる場合が一般的なので適用が難しいが、適用できればエネルギー消費量等の所定の指標を最適値に近づけることができると考えられる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、湿度が調節された外気を複数系統の被空調室に供給する場合でも所定の指標を最適値に近づけることができる空調方法及び空調システムを提供することを目的とする。」

(1−b)「【0020】
外調機11は、外気OAを導入し、導入した外気OAを熱源機13からの冷水Cで冷却除湿して湿度を調節し、外気OAの湿度が調節された調節済外気QAを生成する機器である。外調機11は、外気OAを冷却するコイル11cと、調節済外気QAを吐出するファン11fとを有している。また、外調機11は、排出する被空調室Rの空気(排気EA)と湿度調節前の外気OAとで熱交換を行わせる熱交換器11xを有している。以下の説明では、熱源機13のエネルギーを用いて冷却除湿された外気を調節済外気QAと言うこととし、熱交換器11xを通過した後でもコイル11cに導入される前は外気OAの概念に含まれることとする。外調機11のコイル11cと熱交換器11xとの間には、外気OAの温度を検出する外気温度計51と、外気OAの湿度を検出する外気湿度計52とが配設されている。外気温度計51と外気湿度計52とで、調節前外気状態検出器を構成している。外調機11は、外気OAの湿度を調節する際に外気OAを冷却するため、結果として外気OAの温度も変化することとなる。
【0021】
外調機11には、外気OAを導入する外気ダクト31と、調節済外気QAを流す調節済外気ダクト32と、被空調室Rからの排気EAを導入する排気ダクト33と、熱交換後の排気EAを外部に導く排気ダクト34とがそれぞれ接続されている。調節済外気ダクト32には、調節済外気QAを分配する分岐ダクト35が接続されている。分岐ダクト35は、図1中では3つが示されているが、実際は、1系統の外調機11から調節済外気QAが供給される被空調室Rの数分が、メインダクトとしての役割を果たす調節済外気ダクト32から分岐している。
・・・
【0024】
空調機18は、VAV15から導出された調節済外気QA及び被空調室Rからの還気RAを導入して混合し、混合された空気の温度を調節して被空調室Rに供給する供給空気SAを生成する機器である。空調機18は、混合された空気の温度を調節するコイル18cと、供給空気SAを吐出するファン18fとを有している。供給空気SAを圧送するファン18fは、インバータ制御で回転速度を変えることにより供給空気SAの吐出風量を変えることができるように構成されている。また、空調機18は、導入した調節済外気QA及び還気RAを混合させるミキシングチャンバ18mを有している。」

(1−c)「【0028】
調節済外気ダクト32には、調節済外気QAの温度を検出する調節済外気温度計53と、調節済外気QAの湿度を検出する調節済外気湿度計54とが配設されている。還気ダクト38には、還気RAの温度を検出する還気温度計55と、還気RAの湿度を検出する還気湿度計56と、還気RAの二酸化炭素濃度を検出する還気炭酸ガス濃度計57とが配設されている。還気温度計55及び還気湿度計56で、被空調室R内の温度及び湿度を実質的に検出することができるように構成されている。なお、還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57は、被空調室R内に配設されていてもよい。外気湿度計52、調節済外気湿度計54、還気湿度計56は、典型的には半導体等を用いたセンサを感部とする電気式湿度計が用いられるが、露点計が用いられてもよい。また、各湿度計52、54、56は、単独で湿度を検出するものに限らず、温度計で検出された温度を用いて間接的に湿度を検出するものであってもよく、検出する湿度は相対湿度でも絶対湿度でもよい。さらに空調機18における供給空気SAの温度制御用に、供給空気SAの温度を検出する給気温度計(不図示)を給気ダクト36に設けてもよい。
【0029】
制御装置60は、外調機11を制御する外調機制御部61と、VAV15及び空調機18を制御する空調機制御部68とを含んで構成されている。外調機制御部61と空調機制御部68とは、図1では分離されて示されているが、一体に構成されていてもよい。外調機制御部61は、外気温度計51、外気湿度計52、調節済外気温度計53、及び調節済外気湿度計54とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、検出された値に基づいて外調機11のコイル11cにおける冷水Cと外気OAとの交換熱量を調節することができるように構成されている。冷水Cと外気OAとの交換熱量の調節は、典型的にはコイル11cを通過する冷水Cの流量を変化させることで行わせるが、コイル11cに供給される冷水Cの温度を変化させること、あるは冷水Cの温度及び流量の双方を変化させることにより調節することとしてもよい。外調機制御部61と空調機制御部68とは信号ケーブルで接続されており、検出値等のデータを相互に伝達することができるように構成されている。空調機制御部68は、還気温度計55、還気湿度計56、及び還気炭酸ガス濃度計57とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、検出された値に基づいて除湿風量や必要外気量を算出又は抽出することができるように構成されている。また、空調機制御部68は、空調機18のファン18f及びVAV15とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、外調機制御部61及び/又は空調機制御部68で検出あるいは演算されたデータに基づいてVAV15のダンパの開度及びファン18fの回転速度を調節することができるように構成されている。制御装置60における制御の詳細は後述する。」

(1−d)「【図1】



(1−e)図1及び段落【0021】から、外調機11のファン11fにより送出された調節済外気QAを空調機18に搬送する調節済外気ダクト32及び分岐ダクト35が記載されているといえる。

(1−f)段落【0029】には、「外調機制御部61と空調機制御部68とは信号ケーブルで接続されており、・・・空調機制御部68は、還気温度計55、還気湿度計56、及び還気炭酸ガス濃度計57とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、・・・また、空調機制御部68は、空調機18のファン18f及びVAV15とそれぞれ信号ケーブルで接続されており」と記載されているから、外調機制御部61は、空調機制御部68、及び空調機制御部68と信号ケーブルで接続された外調機18、そして、還気温度計55、還気湿度計56、及び還気炭酸ガス濃度計57と通信を行うものと認められる。
よって、上記段落【0029】には、外調機11、空調機18及び還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57と通信を行う外調機制御部61が記載されていると認められる。

したがって、上記(1−a)〜(1−f)の事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ファン11fを有する外調機11と、
供給空気SAを被空調室Rに供給するファン18fを有する空調機18と、
外調機11のファン11fにより送出された調節済外気QAを空調機18に搬送する調節済外気ダクト32及び分岐ダクト35と、
被空調室R内に配設された還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57と、
外調機11、空調機18及び還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57と通信を行う外調機制御部61と、
空調機18を制御する空調機制御部68と、
を備え、
外調機制御部61及び/又は空調機制御部68で検出あるいは演算されたデータに基づいてファン18fの回転速度を調節する空調システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2−a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御対象の室内に供給する空気を通す給気ダクト内の目標静圧値を有し、前記空調制御対象の室内から取り込んだ還気を空調処理して前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む還気制御を行う第1制御装置と、この第1制御装置に接続され、外気を取り込んで空調処理して前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む外気制御を行う第2制御装置とを備えた空調制御システムにおいて、
前記第1制御装置および前記第2制御装置は、
前記還気制御により空調処理された空気と前記外気制御により空調処理された空気とのいずれか一方のみが前記空調制御対象の室内に供給されている状態から、前記還気制御により空調処理された空気と前記外気制御により空調処理された空気とが混合されて前記空調制御対象の室内に供給される状態に切り替わると、前記目標静圧値を所定時間下げて制御を実行するための制御信号を生成する制御信号生成部を有する、
ことを特徴とする空調制御システム。」

(2−b)「【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、還気処理系統の制御と外気処理系統の制御とを連携させて行うことで、効率良く空調制御を行う空調制御システムを提供することを目的とする。
・・・
【0019】
本実施形態による空調制御システム1は、空調制御対象の部屋AおよびBからの還気を取り込んで空調する還気処理空調機11と、還気処理空調機11で空調された空気を通すダクト12と、ダクト12を通る空気量を調整するダンパ13と、還気処理空調機11で取り込まれた還気のうち建物外に排気する空気を通すダクト14と、ダクト14を通る空気量を調整するダンパ15と、還気処理空調機11、ダンパ13、およびダンパ15の動作を制御する第1制御装置としてのDDC16と、空調制御対象の部屋AおよびBから取り込んだ還気のCO2濃度を計測するCO2濃度センサ17と、外気を取り込んで空調する外気処理空調機18と、外気処理空調機18で空調された空気を通すダクト19と、ダクト19を通る空気量を調整するダンパ20と、ダクト12とダクト19とに接続され、還気処理空調機11で空調された空気と外気処理空調機18で空調された空気とを混合し空調制御対象の部屋AおよびBに供給する給気を通す給気ダクト21と、給気ダクト21内の静圧を計測する圧力センサ22と、給気ダクト21内の給気の温度を計測する給気温度センサ23と、給気ダクト21内の給気の湿度を計測する給気湿度センサ24と、給気ダクト21を通った空気を部屋Aへ給気する給気ユニット25と、給気ダクト21を通った空気を部屋Bへ給気する給気ユニット26と、DDC16に接続され、外気処理空調機18、ダンパ20、給気ユニット25、26の動作を制御する第2制御装置としてのDDC27と、空調制御対象の部屋A内の温度を計測する室内温度センサ28と、部屋A内の湿度を計測する室内湿度センサ29と、部屋B内の温度を計測する室内温度センサ30と、部屋B内の湿度を計測する室内湿度センサ31と、外気の温度を計測する外気温度センサ32と、外気の湿度を計測する外気湿度センサ33と、DDC16およびDDC27の運転を制御する中央制御装置34とを有する。」

(2−c)「【0023】
DDC16は、運転指示取得部161と、計測値取得部162と、外気処理状態監視部163と、制御信号生成部164とを有する。
・・・
【0027】
制御信号生成部164は、予め設定された給気ダクト21内の目標静圧値を有し、運転指示取得部161から取得した指示、計測値取得部162で取得した各種センサの計測値、外気処理状態監視部163で監視している外気処理状態、および当該目標静圧値に基づいて、還気処理空調機11のインバータ112を制御する制御信号、冷水コイル113に供給する冷水量を制御する制御信号、温水コイル114に供給する温水量を制御する制御信号、蒸気コイル115に供給する蒸気量を制御する制御信号、ダンパ13、15の開度を制御する制御信号、およびダンパ15の開度を制御する制御信号を生成してそれぞれの設備装置に送信する。
【0028】
DDC27は、運転指示取得部271と、計測値取得部272と、還気処理状態監視部273と、制御信号生成部274とを有する。
・・・
【0032】
制御信号生成部274は、予め設定された給気ダクト21内の目標静圧値を有し、運転指示取得部271から取得した指示、計測値取得部272で取得した各種センサの計測値、還気処理状態監視部273で監視している還気処理状態、および当該目標静圧値に基づいて、外気処理空調機18のインバータ182の回転数を制御する制御信号、冷水コイル183に供給する冷水量を制御する制御信号、温水コイル184に供給する温水量を制御する制御信号、蒸気コイル185に供給する蒸気量を制御する制御信号、ダンパ20の開度を制御する制御信号、給気ユニット25から部屋Aに供給する給気量を制御する制御信号、給気ユニット26から部屋Bに供給する給気量を制御する制御信号を生成してそれぞれの設備装置に送信する。」

(2−d)
「【図1】



したがって、上記(2−a)〜(2−d)の事項を総合すると、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

「空調制御対象の室内に供給する空気を通す給気ダクト内の目標静圧値を予め設定し、前記空調制御対象の室内から取り込んだ還気を空調処理して前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む還気制御を行う第1制御装置(DDC16)と、この第1制御装置に接続され、外気を取り込んで空調処理して予め設定された前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む外気制御を行う第2制御装置(DDC27)とを備えた空調制御システム。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「ファン11f」、「外調機11」は、それぞれ、本願発明1の「第1ファン(21)」、「第1ユニット(20)」に相当する。
よって、引用発明の「ファン11fを有する外調機11」は、本願発明1の「第1ファン(21)を有する第1ユニット(20)」に相当する。

イ 引用発明の「供給空気SA」、「被空調室R」、「ファン18f」、「空調機18」は、それぞれ、本願発明1の「第1空気」、「対象空間」、「第2ファン(31)」、「第2ユニット(30)」に相当する。
しかしながら、引用発明は、1つの被空調室Rに供給空気SAを供給するファン18fを有する空調機18が複数あるものではない。
よって、引用発明の「供給空気SAを被空調室Rに供給するファン18fを有する空調機18」と、本願発明1の「第1空気を対象空間に供給する第2ファン(31)を有する複数の第2ユニット(30)」とは、「第1空気を対象空間に供給する第2ファン(31)を有する第2ユニット(30)」である限りにおいて共通する。

ウ 引用発明において、「調節済外気QA」は、空調機18に搬送されるものであり、「供給空気SA」は、空調機18から被空調室Rに供給されるものである。そうすると、引用発明の「調節済外気QA」は、「供給空気SA」に含まれるものであるから、「供給空気SA」と同様に、本願発明1の「第1空気」に相当する。
また、引用発明の「調節済外気ダクト32及び分岐ダクト35」は、本願発明1の「ダクト(40)」に相当する。
よって、引用発明の「外調機11のファン11fにより送出された調節済外気QAを空調機18に搬送する調節済外気ダクト32及び分岐ダクト35」と、本願発明1の「第1ユニットから第1ファンにより送出された第1空気を複数の第2ユニットに搬送するダクト(40)」とは、「第1ユニットから第1ファンにより送出された第1空気を第2ユニットに搬送するダクト(40)」である限りにおいて共通する。

エ 引用発明の「還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57」は、本願発明1の「第1検知部(70)」に相当する。
また、引用発明の被空調室R内に空気が存在することは自明であるから、引用発明の「還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57」が、被空調室R内の空気の情報を検知するものであることは、技術的に明らかである。
よって、引用発明の「被空調室R内に配設された還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57」は、本願発明1の「対象空間の第2空気の情報を検知する第1検知部(70)」に相当する。

オ 引用発明の「外調機制御部61」は、本願発明1の「第1コントローラ(51)」に相当する。
よって、引用発明の「外調機11、空調機18及び還気温度計55、還気湿度計56及び還気炭酸ガス濃度計57と通信を行う外調機制御部61」と、本願発明1の「第1ユニット、複数の第2ユニット及び第1検知部と通信を行う第1コントローラ(51)」とは、「第1ユニット、第2ユニット及び第1検知部と通信を行う第1コントローラ(51)」である限りにおいて共通する。

カ 引用発明の「空調機制御部68」は、本願発明1の「第2コントローラ(52)」に相当する。
よって、引用発明の「空調機18を制御する空調機制御部68」を備える点と、本願発明1の「各第2ユニットは、第2ファンが送風する風量を検知する第2検知部(32)と、第2ファンの回転数を制御する第2コントローラ(52)とを含」む点とは、「第2ユニットは、第2コントローラ(52)を有」する限りにおいて共通する。

キ 引用発明の「空調システム」は、本願発明1の「給気システム(10)」に相当する。
また、引用発明は、「外調機制御部61及び/又は空調機制御部68で検出あるいは演算されたデータに基づいてファン18fの回転速度を調節する」から、少なくとも空調機制御部68(第2コントローラ)でファン18f(第2ファン)の回転速度を制御するといえる。
よって、引用発明の「外調機制御部61及び/又は空調機制御部68で検出あるいは演算されたデータに基づいてファン18fの回転速度を調節する空調システム」と、本願発明1の「各第2コントローラは、第2検知部により検知された風量が、目標風量になるように、第2ファンの回転数を制御する、給気システム(10)」とは、「少なくとも第2コントローラは、第2ファンの回転数を制御する、給気システム(10)」である限りにおいて共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「第1ファン(21)を有する第1ユニット(20)と、
第1空気を対象空間に供給する第2ファン(31)を有する第2ユニット(30)と、
前記第1ユニットから前記第1ファンにより送出された前記第1空気を前記第2ユニットに搬送するダクト(40)と、
前記対象空間の第2空気の情報を検知する第1検知部(70)と、
前記第1ユニット、前記第2ユニット及び前記第1検知部と通信を行う第1コントローラ(51)と、
を備え、
第2ユニットは、第2コントローラ(52)を有し、
少なくとも第2コントローラは、第2ファンの回転数を制御する、給気システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第1空気を対象空間に供給する第2ファン(31)を有する第2ユニット(30)に関して、本願発明1は、「複数」であるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

[相違点2]
第2コントローラに関して、本願発明1は、「前記各第2ユニットは、前記第2ファンが送風する風量を検知する第2検知部(32)と、前記第2ファンの回転数を制御する第2コントローラ(52)とを含み、
前記第1コントローラは、前記第1検知部から取得した前記対象空間の前記第2空気の情報に基づき、複数の前記第2ユニットの各々に対し、目標風量を決定し、前記目標風量を前記第2コントローラに指示し、
前記各第2コントローラは、前記第2検知部により検知された風量が、前記目標風量になるように、前記第2ファンの回転数を制御する」のに対し、
引用発明は、「空調機18を制御する空調機制御部68と、
を備え、
外調機制御部61及び/又は空調機制御部68で検出あるいは演算されたデータに基づいてファン18fの回転速度を調節する」点。

(2)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記「第4 2」に記載のとおり、引用文献2記載の事項は、「空調制御対象の室内に供給する空気を通す給気ダクト内の目標静圧値を予め設定し、前記空調制御対象の室内から取り込んだ還気を空調処理して前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む還気制御を行う第1制御装置(DDC16)と、この第1制御装置に接続され、外気を取り込んで空調処理して予め設定された前記目標静圧値に基づいた風量で前記給気ダクトに送り込む外気制御を行う第2制御装置(DDC27)とを備えた空調制御システム。」である。
上記引用文献2記載の事項においては、第1制御装置(DDC16)及び第2制御装置(DDC27)といった2つの制御装置(コントローラ)を有しており、いずれの制御装置も予め設定された目標静圧値に基づいた風量で、換気又は外気を給気ダクトに送りこむ制御を行っている。
しかしながら、引用文献2記載の事項の「目標静圧値」は、各制御装置において予め設定されたものであるから、引用文献2記載の事項には、本願発明1でいう「第1コントローラは、前記第1検知部から取得した前記対象空間の前記第2空気の情報に基づき、複数の前記第2ユニットの各々に対し、目標風量を決定し、前記目標風量を前記第2コントローラに指示し、前記各第2コントローラは、前記第2検知部により検知された風量が、前記目標風量になるように、前記第2ファンの回転数を制御する」する点(以下「構成A」という。)は、記載されておらず、引用文献2記載の事項から容易に想到できるものでもない。
そして、本願発明1は、構成Aを有することにより、「第2ユニットが、第1コントローラから風量の指示値を受け取り、第1コントローラに依存せずに第2コントローラによって第2ユニット自身で風量の制御を自動的に行うことができる。第1コントローラから第2ユニットに対しては、適宜風量の指示値を与えればよく、第1コントローラの制御負荷を小さくすることができる。」(段落【0007】)という格別な効果を奏するものであり、上記効果は、引用発明及び引用文献2記載の事項から予測できるものではない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明7〜12について
本願発明7〜12は、原査定において拒絶の理由を発見しないとされているものであり、また、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−12は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2022-09-14 
出願番号 P2020-072735
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 丹治 和幸
平城 俊雅
発明の名称 給気システム  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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