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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C08F
管理番号 1389340
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2022-01-21 
確定日 2022-07-14 
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6935402号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6935402号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6935402号(以下「本件特許」という。)は、2017年(平成29年)8月2日(優先権主張 平成28年8月5日 日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2018−531955号)に係る特許であって、その請求項1〜8に係る発明について令和3年8月27日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、本件特許は、令和4年1月21日に本件訂正審判の請求がなされ(本件訂正審判に係る訂正を以下「本件訂正」ともいう)、同年4月28日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年5月31日に意見書及び審判請求書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 審判請求書の補正の適否について
令和4年5月31日に提出された手続補正書における審判請求書の補正(以下「本件補正」という。)の適否について、以下に検討する。
1 補正の内容
本件補正は、審判請求書の「6 請求の理由」の「(3)訂正の理由」を以下のように補正するものである。






2 本件補正の適否
本件補正は、請求の理由を補正するものであり、特許法第131条の2第1項ただし書第1号に該当するから、特許法第131条の2第1項本文の規定により、これを認める。

第3 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判請求の趣旨は、「特許第6935402号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を下記「2 訂正の内容」の訂正事項のとおりに訂正することを求めるというものである。

2 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に式(1)として記載されている下記化学式を、



以下の化学式に訂正する(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2から請求項8も同様に訂正する)。




第4 当審の判断
1 訂正の目的について
訂正前及び訂正後の請求項1の式(1)の記載は、上記「第3 2(1)」のとおりである。
訂正事項1は、要するに、式(1)の化学式を変更するものであって、訂正前の請求項1の式(1)の化学式における左右の芳香環の中から1本ずつ横方向外側に突き出す「2本の棒」を削除して訂正後の式(1)の化学式とするものである。
そこで、訂正前の請求項1の式(1)における当該「2本の棒」の解釈について検討する。
まず、芳香環の中から外側に突き出す棒が環の任意の位置で置換されることを表す慣用の表記法であること、及び、化学構造式ではC(炭素原子)及びH(水素原子)の表示がしばしば省略されることを踏まえると、式(1)の「2本の棒」は、一見、芳香環のR又はSO2との接続部を除く任意の位置に結合したメチル基と解しうる。以下、この解釈を「メチル基とする解釈」ともいう。
一方、訂正前の請求項1には「下記式(1)で表される構造を分子中に含むスルホニル化合物(B)」と記載されており、式(1)は当該化合物(B)の部分構造を規定するものである。してみれば、当該化合物(B)における式(1)の部分とそれ以外の部分との結合が芳香環のR又はSO2との接続部を除く任意の位置にあることを示すために「2本の棒」が記載されているとも解しうる。以下、この解釈を「結合とする解釈」ともいう。
このように、訂正前の請求項1の式(1)の「2本の棒」は、2通りの解釈の余地があるものであり、明瞭でない記載といえる。
そこで、本件特許の願書に添付した明細書(以下、単に「明細書」ともいう。)の記載をみるに、まず、明細書の段落0010、0017、0026にはスルホニル化合物(B)が分子中に含む構造を表す式(1)として、訂正前の請求項1の式(1)とは「2本の棒」が無いことを除き同じ化学構造式が記載されている。「メチル基とする解釈」を採用すると、訂正前の請求項1記載の式(1)とこれらの段落に記載の式(1)とが互いに異なる構造を表すこととなり、両者の間に不整合が生じるが、「結合とする解釈」を採用すると、どちらの式(1)も同じ部分構造を表すものであって、「2本の棒」の有無は単に他の部分との結合を明示するか否かという形式的な差異にすぎないものといえ、両者の間に不整合は生じない。
また、明細書の段落0036にはスルホニル化合物(B)の具体例が列挙され、段落0058〜0064では、実施例で用いられるスルホニル化合物(B)の具体的な化合物(B1)〜(B6)が記載されているが、これらは全て芳香環にメチル基が結合していない構造を含む化合物である。そのため、「メチル基とする解釈」を採用すると、訂正前の請求項1で特定されるスルホニル化合物(B)と明細書に開示された具体的なスルホニル化合物(B)とが対応しないものとなってしまうが、「結合とする解釈」を採用すると、明細書に開示された具体的なスルホニル化合物(B)が全て訂正前の請求項1で特定されるスルホニル化合物(B)の具体的態様となる。
このように、訂正前の請求項1の式(1)における「2本の棒」について、「メチル基とする解釈」を採用すると明細書の記載との間で不整合が生じてしまうが、「結合とする解釈」を採用すると明細書の記載との間でそのような不整合は生じない。
そして、訂正事項1は、「2本の棒」を削除することで「メチル基とする解釈」の余地を無くし、「結合とする解釈」を採用することを明確にするためのものといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記1で述べたとおり、明細書の段落0010、0017、0026には訂正後の請求項1の式(1)と同じ、「2本の棒」が無い化学構造式が記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかであるから、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記1で述べたとおり、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 特許法第126条第7項について
上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであるから、本件訂正には、同法同条第7項に規定される、いわゆる独立特許要件は課されない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド化合物(A)、及び、下記式(1)で表される構造を分子中に含むスルホニル化合物(B)を含むマレイミド樹脂組成物であって、
前記マレイミド化合物(A)が、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルとアニリンとを反応させて得られるアミン樹脂と、無水マレイン酸との反応物である、マレイミド樹脂組成物。
【化1】

(式中、複数のRは、それぞれ独立して、アルケニル基、アルケニルエーテル基、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基を表し、Rの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルケニルエーテル基である。aは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記スルホニル化合物(B)が下記式(2)で表されるスルホニル化合物である請求項1に記載のマレイミド樹脂組成物。

(式中、複数のRは、それぞれ独立して、アルケニル基、アルケニルエーテル基、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基を表し、Rの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルケニルエーテル基である。Xはそれぞれ独立して水素原子またはグリシジル基を表す。aは1〜4の整数を表す。nは0〜10であり、その平均値は0〜10の実数を表す。)
【請求項3】
さらに、ラジカル重合開始剤(C)を含む請求項1又は請求項2に記載のマレイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合開始剤(C)が有機過酸化物及びアゾ化合物から選ばれる少なくともいずれかである請求項3に記載のマレイミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂組成物をシート状の繊維基材に保持し、半硬化状態にあるプリプレグ。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載のプリプレグの硬化物。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂組成物を用いて封止した半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2022-06-16 
結審通知日 2022-06-22 
審決日 2022-07-07 
出願番号 P2018-531955
審決分類 P 1 41・ 853- Y (C08F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 細井 龍史
土橋 敬介
登録日 2021-08-27 
登録番号 6935402
発明の名称 マレイミド樹脂組成物、プリプレグ、その硬化物及び半導体装置  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  

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