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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F01N
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F01N
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  F01N
管理番号 1389360
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-12 
確定日 2022-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6691865号発明「汚染防止装置において又は火炎止めで使用するのに好適な不織布繊維性材料を製造するための再利用廃水の使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6691865号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕、〔16ないし20〕について訂正することを認める。 特許第6691865号の請求項1ないし20に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6691865号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月19日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和2年4月15日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月13日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年11月12日:特許異議申立人河井 清悦による請求項1ないし
20に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年11月13日:特許異議申立人本間 賢一による請求項1ないし
20に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年2月9日付け:取消理由通知書
令和3年5月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年7月16日 :特許異議申立人河井 清悦による意見書の提出
令和3年8月13日 :特許異議申立人本間 賢一による意見書の提出
令和3年9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)

令和3年9月30日付けで特許権者に取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年5月17日付けで特許権者から提出された訂正請求書による訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが」と記載されているのを、「前記第2のスラリーを準備することにおいて、前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜15も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「与えない、方法。」と記載されているのを、「与えず、前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す、方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜15も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0067】の【表4】に「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」と記載されているのを、「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」にそれぞれ訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16に「前記第1の廃水が比較的中性のpHを維持する」と記載されているのを、「前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」に訂正する(請求項16の記載を引用する請求項17〜20も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項19に「前記凝集剤」と記載されているのを、「前記第1の中性pH凝集剤」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0067】の【表4】に「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」と記載されているのを、「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」にそれぞれ訂正する。

(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし15は、請求項2ないし15が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし15について請求されている。
同様に、訂正前の請求項16ないし20は、請求項17ないし20が、訂正の請求の対象である請求項16の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項16ないし20について請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る発明において、特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えること」が「前記第2のスラリーを準備することにおいて」行われることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0032】や【0068】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正後の請求項1に係る発明において、「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0035】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、明細書の段落【0067】の【表4】において、多数の記載箇所で「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」となっているにもかかわらず、一部の記載箇所で「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」とされていたために不明瞭となっていた記載を整合させるように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0039】、【0043】及び【0067】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正後の請求項16に係る発明において、「前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0035】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正後の請求項19に係る発明において、「前記凝集剤」が「前記第1の中性pH凝集剤」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0042】及び【0043】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、明細書の段落【0067】の【表4】において、多数の記載箇所で「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」となっているにもかかわらず、一部の記載箇所で「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」とされていたために不明瞭となっていた記載を整合させるように訂正するものであり、本件特許明細書の段落【0039】、【0043】及び【0067】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
上記のとおり、訂正事項1ないし6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕、〔16ないし20〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし20に係る特許に対して、当審が令和3年2月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理 由

1.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

4.(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●理由1(進歩性)について

・請求項1ないし10、16ないし20
・引用文献等1及び2

・請求項11ないし15
・引用文献等1ないし3

<引用文献等一覧>
1.特表2010−519419号公報(特許異議申立人河井清悦及び本間賢一が提出した甲第1号証)
2.特公平3−33838号公報(特許異議申立人本間賢一が提出した甲第2号証)
3.特表2006−514524号公報(特許異議申立人河井清悦が提出した甲第6号証)

●理由2(サポート要件)について

請求項1ないし20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

●理由3(明確性)について

請求項1ないし20に係る発明は明確でない。

●理由4(実施可能要件)について

発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
1.1 取消理由1(進歩性)について
(1)訂正後の請求項1ないし20に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし20に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明20」という。)は、上記「第2 訂正の適否」の「1 訂正の内容」において示したとおりのものである。

(2)引用文献の記載
ア 引用文献1について
本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、取消理由通知において引用された特表2010−519419号公報(以下「引用文献1」という。)には、「可撓性繊維性材料、汚染防止装置、及びそれらを作成する方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。

(ア)「【0022】
図1は、代表的な汚染防止装置を示す。図1を参照すると、汚染防止装置10は、ハウジング12を包含し、ほぼ円錘の入口14及び出口16(即ち、エンドコーンと一般的に称される)を有する。ハウジング12は、これはカン又はケーシングと一般的に称されるが、金属(例えば、ステンレススチール)から通常作製される。ハウジング12内に配置されるのは、セラミック又は金属材料により作製されたモノリシック構造体18であり、またこれは触媒を包含してもよい。絶縁体22は、モノリシック構造体18を取り囲む。モノリシック構造体18は、例えば、触媒コンバータ要素又はディーゼル微粒子フィルタ要素であってもよい。本発明による可撓性繊維性材料は、絶縁体22として使用されてもよい。
【0023】
金属ハウジングの入口14及び出口16領域は、内部エンドコーンハウジング28及び外部エンドコーンハウジング26を包含する。絶縁材30は、内部エンドコーンハウジング28と外部エンドコーンハウジング26との間に位置付けられる。本発明による可撓性繊維性材料は、絶縁材30として使用されてもよい。」

(イ)「【0028】
有用な無機繊維には、例えば、繊維ガラス、セラミック繊維、非酸化物無機繊維、例えば、グラファイト繊維又はホウ素繊維、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
有用なセラミック繊維には、例えば、アルミノボロシリケート繊維、アルミノシリケート繊維、アルミナ繊維、それらの熱処理された種類、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なアルミノボロシリケート繊維の例には、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から取引表記「ネクステル312セラミック繊維(NEXTEL 312 CERAMIC FIBERS)」、「ネクステル440セラミック繊維(NEXTEL 440 CERAMIC FIBERS)」、及び「ネクステル550セラミック繊維(NEXTEL 550 CERAMIC FIBERS)」として市販されているものが挙げられる。好適なアルミノシリケート繊維の例には、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ(Niagara Falls)のユニフラックス社(Unifrax Corp.)から取引表記「ファイバーフラックス(FIBERFRAX)」7000Mとして、ジョージア州オーガスタ(Augusta)のサーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「セラファイバー(CERAFIBER)」として、及び日本、東京の新日鐵化学株式会社(Nippon Steel Chemical Company)から取引表記「SNSC タイプ 1260 D1(SNSC Type 1260 D1)」として入手可能なものが挙げられる。好適な市販のアルミナ繊維の例には、英国ウィドネス(Widnes)のサフィル(Saffil)から取引表記「サフィル(SAFFIL)」として入手可能な多結晶アルミナ繊維が挙げられる。
【0030】
他の好適な無機繊維には:石英繊維、高シリカ含有量の非晶質及び結晶性繊維、アルミナ繊維及び高アルミナ繊維、非晶質及び結晶性アルミナ−シリカ繊維、酸化物及び非酸化物繊維、金属繊維、溶融物からの吹き込み、紡績、牽引により形成された繊維、ゾル−ゲル形成繊維、有機前駆体から形成された繊維、ガラス繊維、溶出ガラス繊維、及び実質的に無機組成物の他の繊維が挙げられる。好適な無機繊維はまた、有機及び無機材料の表面コーティング又はサイジングを含んでもよい。好適な無機繊維は、言うまでもなく、単独で又は他の好適な無機繊維との組み合わせにおいて使用されてもよい。」

(ウ)「【0032】
有用な第1の有機ポリマーには、例えば、それらのアクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーが挙げられるが、それらの多くは必須ではない。任意に、追加的有機ポリマー(単数又は複数)が、第1の有機ポリマーとの組み合わせにより使用されてもよい。第1の有機ポリマーは、水性のアニオン安定化ポリマーエマルション(例えば、ラテックス)として、典型的には使用されるが、ただし、溶媒系ポリマー、又は100パーセント固形分のポリマーが時には有用である場合もある。
【0033】
典型的には、第1の有機ポリマーは、30摂氏温度(℃)、0℃、−10℃、−20℃、−30℃未満、又は更には−40℃未満のガラス転移温度を有するが、これは必須ではない。更に、第1の有機ポリマーは、エラストマーを含んでもよい。
【0034】
有用な水性ポリマーエマルション(ラテックスエマルションを包含する)には、例えば、可撓性繊維性材料に強度及び可撓性を提供するために好適な、アクリルポリマーエマルション、ポリウレタンエマルション、シリコーンポリマーエマルション、エポキシポリマーエマルション、ブチルゴムエマルション、ビニルポリマーエマルション、ビニルアセテートポリマーエマルション、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な市販の水性ポリマーエマルションの例には、例えば、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)のローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)により市販される取引表記「ロプレックス(RHOPLEX)HA−8」(アクリルコポリマーの44.5重量%固形分の水性エマルション)、及びペンシルベニア州アレンタウン(Allentown)のエアープロダクツ(Air Products)により市販される取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」(55%固形分のエチレンビニルアセテートコポリマー)として入手可能なもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
有用な凝集剤には、カチオン性基を有する有機ポリマーが挙げられる。典型的には、有機ポリマーは、水膨張性又は水溶性であるが、しかしながらこれは必要条件ではない。例えば、ポリマーは単に水分散性であってもよい。好適な凝集剤の例には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以後、PDADMAC)及びジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの溶液(典型的には水性)又は分散体が挙げられる。任意に、凝集剤は金属カチオン(例えば、アルミニウム)を更に含んでもよく、これは解離した錯体において(例えば、ハイドレート、クロライド、又はクロロハイドレート)、又はポリマー形態において(例えば、ポリ(メタルオキサイド)又はオキシクロライドとして)存在してもよい。
【0036】
好適な市販の凝集剤の例には、カリフォルニア州バーリントン(Burlington)のギャラット・キャラハン(Garratt Callahan)から取引表記「フォーミュラ(FORMULA)7644」(PDADMACの水溶液)、「フォーミュラ(FORMULA)7643」、「フォーミュラ(FORMULA)7642」、「フォーミュラ(FORMULA)AH−423」、「フォーミュラ(FORMULA)7602」、「フォーミュラ(FORMULA)7603」、「フォーミュラ(FORMULA)7552」、「フォーミュラ(FORMULA)7622」、「フォーミュラ(FORMULA)7655」、又は「フォーミュラ(FORMULA)7658」として;ルイジアナ州リンゴールド(Ringold)のミッドサウスケミカル(Mid-South Chemical)から取引表記「MP 9307」(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの水溶液であると考えられている)として;ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown)のチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から取引表記「ZETAG 7125」(PDADMACの水溶液)、「ZETAG 7127」(PDADMACの水溶液)として;及びミネソタ州セントポール(St. Paul)のホーキンズ(Hawkins)から取引表記「アークティックフロック(ARCTICFLOC)AF12104」(PDADMACの水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)2987」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)101」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(四級アミン)の水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)427」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(四級アミン)の水溶液)、及び「アクア・ホーク(AQUA HAWK)2757」(アルミニウム系ポリ無機物及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)として入手可能な水処理剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
ポリアミンは、プロトン化した(即ち、カチオン性及びポリカチオン性の)形態と平衡して水性媒体中に存在することが認められることになる。
【0038】
一般に、凝集剤は、乳化された第1の有機ポリマーの凝集を生じるのに有効な量で使用されるが、ただし、他の量もまた使用されてもよい。例えば、凝集剤は(固形分基準で)、第1の有機ポリマーの重量の少なくとも1、5、10、15、20、又は更には少なくとも100パーセントの量で存在してもよい。」

(エ)「【0051】
1つの代表的な有用な方法では、無機繊維、第1の有機ポリマーの水中スラリー(例えば、典型的には、水の重量の95重量パーセントを超える)が調製され、凝集剤と共に組み合わされる。任意成分(例えば、消泡剤、膨張性材料、又は充填剤)が次に添加され(使用される場合)、そしてスラリーは次に伝統的なウェットレイド不織布抄紙技術によって可撓性繊維性材料に形成される。つまり、このプロセスは、成分を混合し、スラリーをワイヤーメッシュ又はスクリーン上に注いで水の大部分を取り除くことを包含する。形成されたシートは次に乾燥されて可撓性繊維性材料を形成する。可撓性繊維性材料は次に、シート及びマットのような所望の形態に変換されてもよい。プロセスは、段階的に、バッチで、及び/又は連続方式で行われてもよい。」

(オ)「【0058】
繊維性シートを調製するための一般手順
水道水(3リットル、18℃)及び無機繊維(ジョージア州オーガスタ(Augusta)のサーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「HAバルクファイバー(HA BULK FIBER)」として得られ、50重量パーセント未満のショット含有量に浄化されている)の60グラム(g)がブレンダーに添加される。ブレンダーは、低速度で5秒間操作される。得られたスラリーは、1リットルの水道水(18℃)を使用して、パドルミキサー装備混合コンテナの中にすすぎ落とされる。スラリーは追加の1リットルの水道水(18℃)を用いて希釈される。希釈されたスラリーは、固形分を懸濁し続けるように中速度で混合される。消泡剤(ニュージャージー州エジソン(Edison)のヘンケル(Henkel)から取引表記「フォーマスター(FOAMASTER)111」(0.3g)として得られる)及びエチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」(6.0g、55重量パーセント固形分)として得られる)が添加される。凝集剤が、表2に示されるような量で滴下される。20〜50メッシュの粒径を有する未膨張のバーミキュライト(43g)が次に添加される。ミキサー速度が増加され、混合は1〜5分間継続される。パドルミキサーが取り除かれ、スラリーは、20cm×20cm(8インチ×8インチ)シートフォーマーの中に注入され、水抜きされる。水抜きされたシートの表面は、のし棒を用いて伸ばされて、過剰の水を取り除かれる。次にシートは、90〜97kPa(13〜14psi)の表面圧力において、吸取紙の間で5分間圧搾される。シートは次に、150℃で強制空気オーブン中で10〜15分間乾燥され、試験前に雰囲気に曝されながら一晩平衡化される。
【0059】
実施例で使用される材料
表1(以下)は、実施例で使用される凝集剤を一覧にする。
【0060】
【表1−1】


【0061】
【表1−2】


【0062】
実施例1〜31及び比較例A
繊維性材料のシートが、繊維性シートを調製するための一般手順(上記)によって、表2に示される凝集剤を使用して調製された。繊維性シートの試験結果がまた表2(以下)に提示されている。
【0063】
【表2】


【0064】
実施例32
2つの容器は12〜14℃に調節された水道水の1000ミリリットルで充填された。エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として入手可能なエチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(1.8グラム)、及びヘンケル(Henkel)から取引表記「フォーマスター(FOAMASTER)111」として入手可能な消泡剤の0.1グラムが各容器に添加され、並びにラテックスを分散させるためにそっと混合された。更に、サーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「HA−バルク(HA-BULK)」として入手可能な無機繊維の10グラム(それらが50重量%未満のショットを含有するように部分的に浄化された)が容器の1つに添加され及び繊維を分散させるために混合された。水中でのラテックスの分散の結果として生じた乳様の外観が両容器中で観察された。ミッドサウスケミカル(Mid South Chemical)から取引表記「7307C」として入手可能な凝集剤(0.1グラム)が各容器に緩やかに混合しながら添加された。ラテックス及び無機繊維の両方を保持する容器中では、液体の際立った清澄が1分未満で観察された。ラテックスを含有するが無機繊維のない容器中では、遅いアグロメレーション及び混合の清澄のみが5分を超える期間にわたって観察された。」

したがって、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「汚染防止装置10に使用される、ウェットレイド不織布抄紙技術によって形成される可撓性繊維性材料を形成する方法であって、
水道水及び無機繊維から得られるスラリーに、エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)が添加され、下記表1に示される凝集剤が滴下されて混合されたスラリーを水抜きする方法。






イ 引用文献2について
本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、取消理由通知において引用された特公平3−33838号公報(以下「引用文献2」という。)には、「シート状物およびその製造方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「 本発明に用いられる不燃性繊維状物質としては石綿、ロツクウール、ガラス繊維、ケイ酸アルミ質等のセラミツク繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等を挙げることができる。」(第7欄第26行ないし第29行)

(イ)「 本発明において無機質繊維の表面を被覆し、からみを助長して得られたシート状物の強度や弾性回復力、加工性を増大させる目的で使用される熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーとしては水に溶解もしくは分散可能な性状のものが好ましく、水溶性高分子もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状樹脂が好適である。水溶性高分子としては例えばポリビニルアルコール系重合体、ポリアクリル酸系重合体、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、澱粉等を挙げることができ、広く合成及び天然の水溶性高分子材料を用いることができる。エマルジヨンまたはラテツクス状樹脂としては、例えばエマルジヨンの形態を有するポリ酢酸ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリエチレン及びその共重合体、ポリウレタン系重合体等を挙げることができ、又、エチレン−アクリル酸塩共重合体等のハイドロゾルもこの範ちゆうに含めることができる。
本発明において特に柔軟性、屈曲性を必要とする用途に供するためのシート状物を得る上においは、特に熱可塑性樹脂としてそのガラス転移点が−50〜30℃の範囲内にある樹脂をバインダーとして用いることが好ましく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、可塑化塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等をを挙げることができる。」(第8欄第5行ないし第32行)

(ウ)「 つぎに本発明による防火性と屈曲性に優れたシート状物の製造方法を具体的に説明する。まず一定量の前述の不熱性繊維状物質および必要に応じて前述の有機質繊維や各種の添加剤、さらに前述の水溶性熱可塑性樹脂もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーを該熱可塑性樹脂の架橋剤もしくは高分子凝集剤(ポリアクリルアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリアクリル酸ソーダ系等)と共に水中に均一に分散溶解させてスラリー原液を調整する。この時点で分散効果を高めるために適宜界面活性剤を加えてもよい。また、本発明においてはこの時点でさらに脱水効率を高め、該シート状物のバインダー量をコントロールする目的で泡安定剤を用いることができる。この泡安定剤としては一般にはノニオン系界面活性剤が有効であり、その作用は、スラリー原液中に添加された水溶性熱可塑性樹脂もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状の熱可塑性樹脂の作用により該スラリー原液は若干起泡してくるが、この気泡を均一微細化し、減圧脱水時に繊維状物質間に適当な水膜を形成せしめて空気の素抜けを防止し、脱水率を常に一定に保つこことである。分散方法はチエスト等での比較的ゆるやかな撹拌が好ましく、ピーター等の装置で激しく打解すると繊維状物質が破断したり、球状の集合体を形成して好ましくない。該不燃性繊維状物質および該バインダーの分散濃度は共に0.1〜5重量%が好ましく、得られるシート状物の使用目的によつて適宜選択されるべきである。次に該スラリー原液をタンクから繊維状物質が球状の集合体にならないような構造を有するスラリー用ポンプで輸送するか、上部より落下させる方法により抄造部へ導き、走行もしくは回転する網状または多孔質状の基材の面と5〜60度好ましくは20〜45度の角度を有する方向から供給して該基材上にシート状に抄造成形し、3〜30度の配向度を有するウエツトマツトを作製する。この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用される。」(第12欄第14行ないし第13欄第9行)

したがって、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献2記載事項>
「防火性に優れるシート状物の製造方法において、ガラス繊維等の不燃性繊維状物質、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーを高分子凝集剤と共に水中に均一に分散溶解させてスラリー原液を調整し、次に該スラリー原液を抄造部へ導き、網状または多孔質状の基材上にシート状に抄造成形し、この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用されること。」

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比する。
第1に、引用発明における「汚染防止装置10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「汚染防止装置」に相当し、以下同様に、「ウェットレイド不織布抄紙技術によって形成される可撓性繊維性材料を形成する方法」は「不織布繊維性材料の製造方法」に、「水道水」は「水」に、「無機繊維」は「第1の無機繊維」にそれぞれ相当する。
第2に、引用発明における「エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0027】、【0063】の【表2】、【0066】の【表3】に挙げられた有機結合剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の有機結合剤」に相当する。
第3に、引用発明における「表1に示される凝集剤」は、引用文献1の段落【0060】及び【0061】の【表1】を参酌すると、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0043】の【表1】に挙げられた中性pH凝集剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の中性pH凝集剤」に相当する。
第4に、引用発明における「水道水」、「無機繊維」、「エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)」及び「表1に示される凝集剤」が混合された「スラリー」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「第1のスラリー」に相当する。
第5に、引用発明における「スラリーを水抜きする」という事項は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「第1のスラリーから第1の廃水を除去すること」という事項に相当する。

よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「汚染防止装置において使用するのに好適な不織布繊維性材料の製造方法であって、
水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーを準備することと、
前記第1のスラリーから第1の廃水を除去することと、を含む方法。」

<相違点>
本件発明1は「ある量の前記第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、
前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成することと、を含み、
前記第2のスラリーを準備することにおいて、前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが、前記第2のスラリー中の前記第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えず、前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」のに対して、引用発明はそのような事項を備えていない点。

上記相違点について検討する。
引用文献2記載事項における「ガラス繊維等の不燃性繊維状物質」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0023】に挙げられた無機繊維の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の無機繊維」に相当する。
引用文献2記載事項における「ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0027】に挙げられた有機結合剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の有機結合剤」に相当する。
また、引用文献2記載事項から、スラリー原液は抄造部に導かれて網状または多孔質状の基材上にシート状に抄造成形されるから、少なくとも製造されるシート状物は不織布状であると把握できる。
さらに、引用文献2記載事項における「この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用されること」は、本件発明1における「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えること」に相当する。
そうすると、引用発明と引用文献2記載事項とは、不織布状のシート状物の製造方法において、水と、無機繊維と、有機結合剤と、凝集剤とを含むスラリーを準備する工程を有し、その工程においてスラリーから廃水を除去する点で共通している。
したがって、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、上記相違点に係る本件発明1における「ある量の前記第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成すること」という事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、そのような事項を採用した場合、引用発明における凝集剤が「中性pH凝集剤」であることを考慮すると、その廃水は中性pH廃水であるから、次の不織布繊維性材料の製造に廃水を再利用しても、有機結合剤の凝集に悪影響を与えないと考えられる。
なお、前述のとおり、引用発明における「表1に示される凝集剤」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明における中性pH凝集剤の具体例と同一であるから、引用発明は、本件発明1の「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項を有していることが明らかである。
よって、本件発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2及び3について
廃水をどの程度まで再利用するかは、不織布繊維性材料の製造に支障が生じない程度の廃水の再使用回数の中から、当業者が適宜に決定し得ることである。
よって、本件発明2及び3は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明4ないし6について
本件発明4における「スラリー中の有機結合剤が、アニオン性基を有する少なくとも1つのポリマーを含む」点については、引用文献1の段落【0032】の「有用な第1の有機ポリマーには、例えば、それらのアクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーが挙げられるが、それらの多くは必須ではない。任意に、追加的有機ポリマー(単数又は複数)が、第1の有機ポリマーとの組み合わせにより使用されてもよい。」を参照。
また、本件発明5及び6における「中性pH凝集剤が、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む」点及び「中性pH凝集剤が、金属カチオンを含む」点については、引用文献1の段落【0035】の「有用な凝集剤には、カチオン性基を有する有機ポリマーが挙げられる。典型的には、有機ポリマーは、水膨張性又は水溶性であるが、しかしながらこれは必要条件ではない。例えば、ポリマーは単に水分散性であってもよい。好適な凝集剤の例には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以後、PDADMAC)及びジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの溶液(典型的には水性)又は分散体が挙げられる。任意に、凝集剤は金属カチオン(例えば、アルミニウム)を更に含んでもよく、これは解離した錯体において(例えば、ハイドレート、クロライド、又はクロロハイドレート)、又はポリマー形態において(例えば、ポリ(メタルオキサイド)又はオキシクロライドとして)存在してもよい。」を参照。
よって、本件発明4ないし6は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明7について
スラリーを構成する各種材料に関して、「ア 本件発明1について」で述べたとおり、引用発明は本件発明と同一の材料を用いているから、本件発明7と同一の数値範囲のpHを示すと考えられる。
よって、本件発明7は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明8について
廃水をどの程度まで再利用するかは、不織布繊維性材料の製造に支障が生じない程度のスラリー中の廃水の割合の中から、当業者が適宜に決定し得ることである。
よって、本件発明8は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明9について
引用発明において、スラリーから可撓性繊維性材料を形成していることは明らかである。
よって、本件発明9は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明10について
引用発明において形成される可撓性繊維性材料は、シート状であるから少なくとも2次元形状を有することは明らかである。
また、引用文献1の段落【0022】、【0023】及び図1の記載を踏まえると、絶縁体22及び絶縁材30は所定の厚みを持つことから、3次元形状を有することも明らかである。
よって、本件発明10は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明11について
本件発明11における「実装マット」及び「端部コーン断熱体」については、それぞれ引用文献1の段落【0022】、【0023】及び図1における絶縁体22及び絶縁材30を参照。
また、不織布繊維性材料を火炎止めに用いることは、例えば、取消理由通知において引用された特表2006−514524号公報(以下「引用文献3」という。特に、段落【0029】ないし【0031】、図1及び図2を参照。)に記載されているように、本願出願前の周知技術(以下「周知技術」という。)である。
よって、本件発明11は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明12について
本件発明12における「前記第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成すること」については、引用文献1の段落【0058】において、水道水及び無機繊維から得られるスラリーに、エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)が添加され、さらに、凝集剤が滴下されてできるスラリーから繊維性シートが調製される点を参照。
よって、本件発明12は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ 本件発明13について
スラリーを構成する各種材料に関して、「ア 本件発明1について」で述べたとおり、引用発明は本件発明と同一の材料を用いているから、本件発明13と同一の数値範囲のpHを示すと考えられる。
よって、本件発明13は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

サ 本件発明14について
本件発明14における「ハウジング」及び「汚染制御要素」については、それぞれ引用文献1の段落【0022】及び図1において、ハウジング12及びモノリシック構造体18を参照。
よって、本件発明14は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

シ 本件発明15について
不織布繊維性材料を火炎止め内に形成する点については、周知技術を示す例として挙げた引用文献3の段落【0029】ないし【0031】及び図2において、断熱材料14の内部層に不織ウェブが含まれる点を参照。
よって、本件発明15は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ス 本件発明16ないし18について
本件発明16は本件発明1とカテゴリー表現上の差異があるのみで、その実質的な内容は同じである。同様に、本件発明17及び18は、それぞれ本件発明5及び6と、その実質的な内容は同じである。
したがって、本件発明16の見解については「ア 本件発明1について」を、本件発明17及び18の見解については、「ウ 本件発明4ないし6について」の見解を参照。
よって、本件発明16ないし18は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

セ 本件発明19について
各凝集剤については、引用文献1の段落【0060】及び【0061】の【表1】を参照。
よって、本件発明19は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ソ 本件発明20について
本件発明20は本件発明7とカテゴリー表現上の差異があるのみで、その実質的な内容は同じである。
したがって、本件発明20の見解については「エ 本件発明7について」を参照。
よって、本件発明20は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、引用文献1に記載された凝集剤と、引用文献2に記載された高分子凝集剤とは共通していないから、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けがない旨を主張する。
しかしながら、引用文献2に記載された高分子凝集剤は単なる例示にすぎない。
また、引用文献2から採用したものは、引用文献2に記載された具体的な材料ではなく、白水を再使用するという技術思想である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

1.2 取消理由2(サポート要件)について
(1)請求項1ないし20
請求項1ないし20に係る発明は、無機繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水の種類又は量を特定していないので、いずれも任意の種類又は量でよいと把握できる。
一方、本件訂正明細書の発明の詳細な説明において、段落【0062】ないし【0067】(特に【表3】及び【表4】)を参酌しても、廃水を使用して繊維製シートを作成する場合(実施例2、4、6、8、10、12)に関して、特定の種類及び量の無機繊維(70gの商品名「CERAFIBER」)、特定の種類及び量の有機結合剤(9.0gの商品名「AIRFLEX 600BP」)、特定の種類及び量の凝集剤(種類:商品名「MP 9307C」、商品名「AQUA HAWK 2987」、商品名「FORMURA 7602」、商品名「FORMURA 7644」、量:1.5g、2.5g、3.8g、1.9g、5.3g)、特定の量の廃水(2000mL)、特定の量のきれいな水(水道水2000mL)が示されているのみである。また、その場合の実施例のうち、使用に適したものといえる、可撓性試験に合格した実施例は実施例6、8、10、12のみである。
さらに、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の上記記載箇所及び他の記載箇所を参酌しても、請求項1ないし20に記載されたように、任意の種類又は量の無機繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水を使用することにより、不織布繊維性材料が製造できる根拠となる十分な数の具体例または機序や技術常識等が示されていない。
そして、スラリーや廃水のpHや、有機結合剤の凝集具合は、使用する無機繊維、有機結合剤、凝集剤の種類、スラリーに含まれる各種物質の量に依存することが本件特許の出願時の技術常識であるから、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水について、何らその種類や量を特定していない場合にまで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に十分な具体例が記載されているとはいえない。
よって、請求項1ないし20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、本件訂正明細書及び技術常識に基づけば、スラリー原料の種類及び量は、当業者が適宜決定できる旨を主張する。
しかしながら、前述のとおり、スラリーや廃水のpHや、有機結合剤の凝集具合は、使用する無機繊維、有機結合剤、凝集剤の種類、スラリーに含まれる各種物質の量に依存することが本件特許の出願時の技術常識であるから、任意の種類又は量では本件発明の課題が解決できるか不明である。
また、意見書には、本件発明がサポート要件を満たす理由が具体的に記載されていない。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

(2)請求項1ないし11、13ないし15
請求項1の記載では、第1のスラリーから廃水を除去することは特定されているものの、第1のスラリーから不織布繊維性材料を形成することは特定されていない。すなわち、第1のスラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合が含まれている。
一方、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、スラリーから不織布繊維性材料を製造することを前提とした従来技術及び本件発明が記載されているのみで、スラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合については明示的に記載されていない。
また、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、段落【0005】や【0034】を参酌すると、本件発明が解決しようとする課題として、スラリーから不織布繊維性材料を製造する際に生じた廃水を、処理するための費用を節約することが記載されているから、不織布繊維性材料を形成せずに単にスラリーから廃水を得ることは明らかに想定されていない。
よって、請求項1に係る発明及び請求項1に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2ないし11、13ないし15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成するか否かは、本件発明1の課題とは無関係であり、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成しなくてもよく、例えば、第1のスラリーは、不織布繊維性材料を形成するために使用されない初期スラリー又はテストスラリーであってもよい旨を主張する。
しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、スラリーから不織布繊維性材料を製造することを前提とした従来技術及び本件発明が記載されているのみで、スラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合については明示的に記載されていない。
すなわち、初期スラリーやテストスラリーは、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
また、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、段落【0005】や【0034】を参酌すると、本件発明が解決しようとする課題として、スラリーから不織布繊維性材料を製造する際に生じた廃水を、処理するための費用を節約することが記載されているから、不織布繊維性材料を形成せずに単にスラリーから廃水を得ることは明らかに想定されていない。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

1.3 取消理由3(明確性)について
(1)請求項1ないし15
請求項1には、「有機結合剤の凝集に悪影響を与えず」という記載が、請求項3には「有機結合剤の凝集に悪影響を与えない」という記載がある。
しかしながら、上記記載だけでは、有機結合剤の凝集がどの程度であれば悪影響を与えないといえるのか、その基準が不明である。
また、上記記載における「悪影響」とは、具体的にどのような影響を意味するのか不明である。
よって、請求項1及び3に係る発明、並びに、請求項1及び3に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2、4ないし15に係る発明は明確でない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0032】や【0035】を参酌すれば、請求項1に記載された「有機結合剤の凝集に悪影響を与えず」と、請求項3に記載された「有機結合剤の凝集に悪影響を与えない」の双方が、有機結合剤の有意な早期凝集又は沈殿を引き起こすことがないことを意味することは、当業者にとって明確である旨を主張する。
しかしながら、特許権者が明確である根拠として挙げた段落【0032】の「有意な早期凝集又は沈殿を引き起こすことがない」という記載や、段落【0035】の「有意な程度の悪影響を与える」という記載を参酌しても、「有意な」の程度が不明である結果、依然として、どの程度であれば悪影響を与えないといえるのか、その基準が不明である。
また、段落【0032】の上記記載では、凝集が起きる時間がどの程度であれば許容範囲内であるのか、又は、沈殿が全く起きないことを意味するのか或いは所定量の沈殿であれば許容されるのか等も不明であるため、依然として、比較の基準が不明である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

(2)請求項1ないし20
請求項1ないし3、5及び6、16ないし18には、「中性pH凝集剤」という記載がある。
上記記載における凝集剤を表記のとおりに解すると、中性を示す凝集剤であると把握できる。
しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】には、「したがって、本件特許明細書で使用するとき、用語「中性pH凝集剤」は、凝集剤が示すpHに関わらず、「中性pH廃水」を生成する任意の凝集剤を指すものとする。」と記載され、段落【0035】には、「したがって、中性pH凝集剤は、使用したときに、(a)結果として対応する廃水のpHが比較的中性を維持する、及び/又は(b)廃水が後続スラリーに加えられたときに、結果として対応する廃水が後続の凝集に悪影響を与えない、若しくはそれに少なくとも寄与する、任意の凝集剤であってよい。」と記載されている。
そうすると、「中性pH凝集剤」に関して、本件訂正明細書中に通常の意味と異なる意味の用語の定義が置かれているため、どちらの意味に解するべきか不明である。
また、仮に、「中性pH凝集剤」を本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】及び【0035】における上記記載で定義されるものと解したとしても、廃水を使用した不織布繊維性材料の製造の前提となる「第1のスラリー」に含まれる各種物質の量や、「第2」以降のスラリーに含まれる各種物質の量が特定されていないので、廃水のpHが比較的中性に維持される凝集剤として、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、その境界も不明である。
さらに、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0033】には、「よって、本明細書使用するとき、用語「中性pH廃水」は、中性pHを示す廃水に必ずしも限定されず、むしろ、反応性凝集剤残渣の含有量が十分に低く、中性pH廃水の使用が、後続スラリー中の有機結合剤の有意な早期凝集又は他の沈殿を生じさせない、あらゆる廃水を包含する。」という記載があるが、廃水中の凝集剤の濃度や、物質自体は塩基性pH凝集剤または酸性pH凝集剤であるものの、滴定により廃水のpHを中性にしたもの等によっても「中性pH凝集剤」に該当する場合と該当しない場合が生じるため、やはり「中性pH凝集剤」としてどのような種類の凝集剤が該当し得るのか、その境界が不明である。
そして、訂正事項2により請求項1の記載で「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項が特定され、訂正事項4により請求項16の記載で「前記第1の中性pH凝集剤により、前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定されたが、ミョウバン凝集剤と比較して、どの程度中性側のpHであれば「比較的中性」に該当するのか不明であり、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、依然として、その境界が不明である。
よって、請求項1ないし3、5及び6、16ないし18に係る発明及び請求項1ないし3、5及び6に係る発明を直接または間接的に引用する請求項4、7ないし15、並びに、請求項16ないし18に係る発明を直接または間接的に引用する請求項19及び20に係る発明は明確でない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、訂正事項2により本件発明1で「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項が特定され、訂正事項4により本件発明16で「前記第1の中性pH凝集剤により、前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定された結果、本件発明1ないし20の「中性pH凝集剤」は明確になった旨を主張する。
しかしながら、前述のとおり、ミョウバン凝集剤と比較して、どの程度中性側のpHであれば「比較的中性」に該当するのか不明であり、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、依然として、その境界が不明である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

(3)請求項9ないし15
請求項9には、「スラリー成形法」という記載がある。
しかしながら、上記記載は一般的な用語ではなく、本件訂正明細書中に上記記載に関する用語の定義も置かれていない。
そのため、上記記載をスラリー自体を成形する方法と解するのか、又は、スラリーを使用して何かを成形する方法と解するのか、それとも、その他の意味に解するのか不明である。
よって、請求項9に係る発明及び請求項9に係る発明を直接または間接的に引用する請求項10ないし15に係る発明は明確でない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、訂正後の請求項9が直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項1における「前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成すること」という記載から、本件発明9の「スラリー成形法」がスラリーを使用して不織布繊維性材料を形成する方法を意味することは、当業者にとって明確である旨を主張する。
しかしながら、上記主張は、請求項9の「前記形成すること」が、「スラリー成形法」であると、請求項9の記載で特定された事項を繰り返して述べているにすぎず、スラリーを使用して不織布繊維性材料を形成するという達成すべき結果で特定されているのみであるから、具体的にどのような成形法なのか不明である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

(4)請求項16ないし20
請求項16には、「比較的中性のpH」という記載がある。
しかしながら、上記記載だけでは、どの程度のpHであれば「比較的中性のpH」に該当するのか不明である。
よって、請求項16に係る発明及び請求項16に係る発明を直接または間接的に引用する請求項17ないし20に係る発明は明確でない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、訂正事項4により本件発明16で「ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定された結果、本件発明16ないし20の「比較的中性のpH」は明確になった旨を主張する。
しかしながら、本件発明16ないし20の「比較的中性のpH」を、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水との相対的関係で比較的中性と解したとしても、どの程度のpHであれば「比較的中性のpH」に該当するのか不明である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

1.4 取消理由4(実施可能要件)について
(1)請求項1ないし20
本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、【表3】及び【表4】を参酌すると、スラリーからの廃水を使用して、使用に適した繊維製シートを作成する場合(実施例6、8、10、12)に関して、特定の種類及び量の無機繊維(70gの商品名「CERAFIBER」)、特定の種類及び量の有機結合剤(9.0gの商品名「AIRFLEX 600BP」)、特定の種類及び量の凝集剤(種類:商品名「MP 9307C」、商品名「AQUA HAWK 2987」、商品名「FORMURA 7602」、商品名「FORMURA 7644」、量:3.8g、1.9g、5.3g)、特定の量の廃水(2000mL)、特定の量のきれいな水(水道水2000mL)が示されている。
したがって、実施例6、8、10、12に挙げられた特定の種類の各材料を、特定の量又は特定の量の近傍の数値で使用する場合であれば、その場合におけるスラリーからの廃水を利用して、使用に適した不織布繊維性材料が得られると認められる。
しかしながら、請求項1ないし20の記載では、各材料の種類及び量が特定されていないことに鑑みると、実施例6、8、10、12に示されていない材料を使用した場合や、実施例6、8、10、12に示された材料であっても、実施例6、8、10、12に示された数値とは大きく異なる量で使用した場合に、スラリーからの廃水を利用して不織布繊維性材料が得られるのか、また、得られたとしてもその不織布繊維性材料が所定の試験に合格するだけの使用に適したものとなるのか、【表3】及び【表4】に示される実施例の数値からだけでは、予測することが困難である。
そして、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の実施例を手がかりとしても、請求項1ないし20の記載で特定されない各材料の種類及び量で、本件発明の効果を満足する不織布繊維性材料を得るためには、製造された不織布繊維性材料につき、可撓性試験等により逐一試験して確認するほかないから、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといえる。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

ア 特許権者の意見について
特許権者は、意見書において、本件訂正明細書及び技術常識に基づけば、スラリー原料の種類及び量は、当業者が適宜決定できる旨を主張する。
しかしながら、請求項1ないし20の記載では、依然として、各材料の種類及び量が特定されていないことに鑑みると、前述のとおり、本件訂正明細書の実施例に示されていない材料を使用した場合や、実施例に示された材料であっても、本件訂正明細書の実施例に示された数値とは大きく異なる量で使用した場合に、スラリーからの廃水を利用して不織布繊維性材料が得られるのか、また、得られたとしてもその不織布繊維性材料が所定の試験に合格するだけの使用に適したものとなるのか、【表3】及び【表4】に示される実施例の数値からだけでは、予測することが困難である。
したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし10及び16ないし20は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明11ないし15は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許は、本件発明1ないし20が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
さらに、本件特許は、本件発明1ないし20が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1ないし20を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 金澤 俊郎
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】汚染防止装置において又は火炎止めで使用するのに好適な不織布繊維性材料を製造するための再利用廃水の使用
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性スラリーを使用して(例えば、汚染防止装置、火炎止め用途等において用いるために)無機繊維で不織布繊維性材料を作製することに関し、詳細には、前回の使用済みスラリーからの廃水の少なくとも一部を再利用することを含むそのような方法に関し、より詳細には、例えば、汚染防止装置(例えば、実装マット及び断熱材(thermal insulation))及び火炎止め用途(例えば、ブランケット、ラップ、及びテープの形態)で有用であるもののような不織布繊維性材料のそのような製造方法、並びにその方法によって製造される不織布繊維性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
幅広い用途で用いるための様々な不織布繊維性材料を製造するために、無機繊維を含有する水性スラリーがこれまで使用されてきた。そのような水性スラリーを使用する不織布繊維性材料の製造方法は、例えば、米国特許第6,224,835号に開示されているもののような湿式抄紙技術、及び米国特許第5,800,875号に開示されているもののような真空成型法を含んでいる。
【0003】
典型的な湿式抄紙法では、スクリーン又は多孔質ウェブの片側上にそのような水性スラリーを流しかけ、スクリーンの反対側から排水を除去し(例えば、重力、真空の適用、又はそれら両方によって)、それによって、スクリーン又は多孔質ウェブの上記片側上にぬれた状態の不織布繊維性材料が残る。その後、ぬれた状態の得られた不織布繊維性材料を乾燥させて(例えば、空気乾燥、加熱乾燥、又はそれら両方によって)、連続ウェブ又はシート状不織布繊維性材料を形成し、これを所望の形状(例えば、マット、ストリップ、2次元端部コーン形状等)へと更に加工又は変換することができる。
【0004】
典型的な真空成型法では、スクリーン、あるいは別様に穿孔された表面で形成されたモールド型をそのような水性スラリーに沈め、モールド型から穿孔を介して排水を吸い出し、それによって、モールド型の穿孔面上にぬれた状態の不織布繊維性材料が残る。次に、湿式成形された得られた繊維性材料をモールドから取り外し、乾燥させて(例えば、空気乾燥、加熱乾燥、又はそれら両方によって)、モールド型(例えば、端部コーン断熱体のための切頭円錐形状)に対応する形状を有する不織布繊維性材料を形成する。
【0005】
不織布繊維性材料を製造するためにそのような水性スラリーを使用する先行技術の方法では、排水は廃棄される。環境に対する懸念から、そのような排水には、廃棄する前に、必ず上水処理が施される。そのような廃水の処理の程度は、管轄区域ごとに、特に国ごとに異なる場合がある。米国では、そのような処理排水のpHレベルは、通常、約5から9まで(9を含む)、又は更には11の範囲であることが求められ、そうなった末にやっと廃水を公共用水施設(例えば、町の下水道)に移動させることができるようになる。
【0006】
そのような不織布繊維性材料は、汚染防止装置(例えば、触媒コンバータ、ディーゼル微粒子フィルタ、及びディーゼルトラップ)で使用するための実装マット及び断熱材など、並びに炎止め用途で使用するためのブランケット、ラップ、及びテープといった代表的な物品に製品化されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そうした方法に対する改善の必要性が依然として存在する。本発明は、そうした改善を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、汚染防止装置において又は火炎止めとして使用するのに好適な不織布繊維性材料の製造方法が提供される。本方法は、水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーを準備することと、第1のスラリーから第1の廃水を除去することと、任意追加的に、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成することと、ある量の第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成することと、を含む。第1の廃水を第2のスラリーに加えることは、第2のスラリー中の第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない。本発明はまた、かかる方法に従って製造された不織布繊維性材料を提供する。
【0009】
本発明の更なる態様において、後述する材料pH試験に従って試験した場合に、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)範囲内のpHを示す不織布繊維性材料が提供される。
【0010】
本発明の更なる態様において、ハウジングと、ハウジング内に配設された汚染制御要素と、ハウジング内に配設された、本発明による不織布繊維性材料と、を備える汚染防止装置が提供される。
【0011】
本発明の更に別の態様において、本発明による不織布繊維性材料を含む火炎止めが提供される。
【0012】
本発明の更なる態様において、不織布繊維性材料を製造するためのスラリーが提供される。スラリーは、水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーから除去されたある量の第1の廃水を含む。スラリーは、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、任意の第2の中性pH凝集剤と、を含む。スラリーはまた、任意の量の比較的きれいな水を含み得る。第1の中性pH凝集剤により、第1の廃水が比較的中性のpHを維持する。本発明はまた、本発明によるスラリーを使用して形成された不織布繊維性材料を提供する。
【0013】
本発明のこれら及び他の態様、特徴、並びに/又は利点を、同様の参照番号を用いて同様の部材を表している本発明の図面及び発明を実施するための形態に更に示し、説明する。ただし、図面及び説明は単に例示のためのものであり、本発明の範囲を不当に制限するものとして読まれるべきではないことを理解されたい。
【0014】
本発明の上記の「発明の概要」は、本発明のそれぞれの開示された実施形態又は全ての実施を説明することを意図したものではない。以下の説明は、例示的実施形態をより詳細に例証する。本出願の全体を通じて幾つかの箇所で、実施例のリストによって指針が与えられるが、これらの実施例は異なる組み合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載されるリストは、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって、排他的なリストとして解釈するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面において、
【図1】本発明による不織布繊維性材料の異なる実施形態を使用した代表的な汚染防止装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態の説明では、明瞭化のために特定の専門用語を用いる。ただし、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、そのように選択された各用語は、同様に作用する全ての技術的等価物を包含する。
【0017】
端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれる全ての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、並びにその範囲内のあらゆる範囲が含まれる。
【0018】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で用いられる場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈による明確な別様の指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含し、「又は」という用語は一般に、「及び/又は」を含む意味で用いられる。本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、互換可能に使用される。用語「及び/又は」は、列挙した要素の1つ若しくはすべて、又は列挙した要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0019】
用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種以上の異なるモノマーを使用して形成されたポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせ、並びに混和性ブレンド中で形成され得るポリマー、オリゴマー、又はコポリマーを含むものと理解されるであろう。
【0020】
用語「含む」及びその変化形は、本明細書及び「特許請求の範囲」においてこれらの用語が用いられる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0021】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況下においては他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0022】
本発明による不織布繊維性材料の1つの代表的な製造方法では、本発明による初期スラリーは、最初に、スラリーを作製するのに適したある量の水(例えば、住宅用水又は商用水道水)を容器に充填することによって作製され得る。スラリーは、典型的には、約65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%超の水を含有する。次に、水を攪拌し(例えば、混合動作によって)、水を攪拌している間に、ある量の無機繊維及び有機結合剤を撹拌水に加える。次に、無機繊維、及びスラリーの他の任意の固形成分上に有機結合剤を析出させるために、中性pH凝集剤を撹拌水に加える。中性pH凝集剤の意味については後で詳述する。有機結合剤は、有機結合剤液滴、粒子、又はその両方の液分散体又は懸濁液の形態であってもよい。任意成分を水に含ませることが望ましい場合もある。スラリーに添加されるそのような任意成分としては、例えば、ある量の、中性pH凝集剤ではない凝集剤、消泡剤、有機繊維、無機粒子(例えば、膨張粒子、コロイド状シリカ粒子、研磨粒子、摩擦誘引粒子等)、充填剤、及び他の従来の添加剤のうちの任意の1つ又は任意の組み合わせを挙げることができる。得られた混合物の攪拌は、スラリー全体にわたる構成成分の均一分布又は均質性をもたらす傾向がある。
【0023】
有用な無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、非酸化物無機繊維、例えば、グラファイト繊維又はホウ素繊維、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0024】
有用なセラミック繊維としては、例えば、アルミノボロシリケート繊維、アルミノシリケート繊維、アルミナ繊維、それらの熱処理された種類、及びこれらの混合物を挙げることができる。好適なアルミノボロシリケート繊維の例としては、3M Company(St. Paul, Minnesota)から商品名「NEXTEL 312セラミック繊維」、「NEXTEL 440セラミック繊維」、及び「NEXTEL 550セラミック繊維」として市販されているものが挙げられる。好適なアルミノシリケート繊維の例としては、Unifrax Corp.(Niagara Falls, New York)から商品名「FIBERFRAX」7000M、Thermal Ceramics(Augusta,Georgia)から商品名「CERAFIBER」、及び新日鐵化学株式会社(日本・東京)から商品名「SNSCタイプ1260 D1」として入手可能なものが挙げられる。好適な市販のアルミナ繊維の例としては、Saffi1(Widnes(England)から商品名「SAFFIL」として入手可能な多結晶アルミナ繊維が挙げられる。
【0025】
他の好適な無機繊維の例としては、石英繊維、高シリカ含有量の非晶質及び結晶性繊維、アルミナ繊維及び高アルミナ繊維、非晶質及び結晶性アルミナーシリカ繊維、酸化物及び非酸化物繊維、金属繊維、溶融物の吹き込み、紡績、牽引により形成された繊維、ゾルーゲル形成無機繊維、有機前駆体から形成された繊維、ガラス繊維、溶出ガラス繊維、米国特許第5,714,421号に教示されているもののような生物分解性(別名:生体内溶解性)繊維、及び実質的に無機組成物の他の繊維が挙げられる。そのような無機繊維のそれぞれの表面の一部、大部分、又は全てを、有機及び/又は無機材料でコーティング又はサイジングするのが望ましい場合がある。好適な無機繊維は、単独で又は他の好適な無機繊維との組み合わせにおいて使用されてもよい。
【0026】
一般的に言えば、ショットの相当量を含有する無機繊維は、ショットを含まない、又は部分的に浄化された無機繊維より安価である。しかしながら、ショットを含まない無機繊維は、一般に、より弾性のある物品(例えば、ウェブ、シート、マット)を提供する。そのようなショットを含まない無機繊維を用いて製造された実装マットは、室温への戻りを含めてあらゆる温度で保持力をより良好に維持することができる。したがって、本発明による無機繊維性材料は、無機繊維性材料の総乾燥重量に基づいて、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15重量パーセント未満、又は更には10重量パーセント未満、又はそれより少ないショットを含有することが望ましく場合がある。
【0027】
有用な有機結合剤としては、例えば、アクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含むものを挙げることができる。有機結合剤は、水性アニオン安定化ポリマーエマルション(例えば、ラテックス)の形態であり得るが、場合によっては、溶媒系ポリマー結合剤、又は100パーセント固形分のポリマー結合剤が有用であり得る。有機結合剤ポリマーは、30℃、0℃、−10℃、−20℃、−30℃未満、又は更には−40℃未満のガラス転移温度を有し得るが、これは要件ではない。有機結合剤ポリマーは、エラストマーを含んでもよい。水性ポリマーエマルション(ラテックスエマルションを包含する)の形態の有用な有機結合剤としては、例えば、無機繊維性材料に所望の強度及び可撓性を提供するために好適な、アクリルポリマーエマルション、ポリウレタンエマルション、シリコーンポリマーエマルション、エポキシポリマーエマルション、ブチルゴムエマルション、ビニルポリマーエマルション、及びビニルアセテートポリマーエマルションのうちの任意の1つ又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。好適な市販の水性ポリマーエマルションの例としては、例えば、Rohm and Haas(Philadelphia,Pennsylvania)により市販される商品名「RHOPLEX HA−8」(アクリルコポリマーの44.5重量%固形分の水性エマルション)、及びAir Products(Allentown,Pennsylvania.)により市販される商品名「AIRFLEX 600BP」(55%固形分のエチレンビニルアセテートコポリマー)として入手可能なもののうちの任意の1つ又はこれらの組み合わせを挙げることができる。有機結合剤はまた、少なくとも1つ以上の可塑剤を包含してもよい。可塑剤は、ポリマーマトリックスを軟化させる傾向があり、それによって無機繊維性材料の可撓性及び成形性に寄与する。有機結合剤はまた、例えば無機繊維性材料を共に保持するのを助けるために、1つ以上の粘着付与剤又は粘着付与樹脂を含んでもよい。好適な粘着付与剤の使用可能な例は、Eka Nobel,Inc.(Toronto,Canada)から商品名「SNOWTACK 810A」として市販されている。
【0028】
凝集剤をスラリーの一構成成分として使用することは、有機結合剤と無機繊維とを互いに引き合わせるために望ましい。凝集剤は、典型的には、有機結合剤及び無機繊維がスラリー全体に均一に分布するのに十分な時間だけ混合された後に添加される。このように、凝集剤を使用することにより、廃水がスラリーから除去されるとき際に(例えば、無機繊維性材料の形成中に)、無機繊維及びスラリーの他の固形成分(例えば、膨張材料、充填剤、強化成分等)に十分な有機結合剤が確実に付着したままとなり、得られた無機繊維性材料を確実に取り扱うことができ、又は得られた無機繊維性材料が別様に所望の構造的完全性を確実に呈するのを助けることができる。本明細書で使用するとき、用語「廃水」は、スラリーが形成された後しばらくしてから(例えば、無機繊維性材料が形成されたとき)、又はスラリーが形成された後の他の時点でスラリーから除去される、水及びスラリーの他の構成成分を指す。
【0029】
汚染防止装置(例えば、実装マット及び断熱材)、火炎止め、又は他のそのような用途用の不織布無機繊維性材料を製造する従来技術では、ミョウバン凝集剤が一般にスラリーで使用される。本発明者らは、そのようなミョウバン凝集剤が酸性pHを示し、そのようなスラリーから除去された排水を、ミョウバン凝集剤又は他の酸性凝集剤を含有する後続のスラリーで使用した場合に、後続のスラリー中のミョウバン凝集剤が効力を失うように見受けられることを発見した。例えば、十分な無機繊維及び他の固形のスラリー構成成分(例えば、膨張材料、充填剤等の粒子)が、無機繊維性材料中に存在する十分な有機結合剤によって結合されないため、得られた不織布無機繊維性材料は、所望の特性(例えば、構造的完全性)を示すことができなくなる場合がある。
【0030】
理論に束縛されることを意図しないが、(例えば、得られる不織布無機繊維性材料の構造的完全性の欠如として示される)後続スラリーの凝集不足は、廃水中の反応性凝集剤の残渣によって引き起こされると考えられ、この残渣は、有機結合剤、無機繊維、及び他の固形のスラリー構成成分が、後続スラリー全体にわたって均等に分布する機会を有する前に、後続スラリー中の有機結合剤の早期凝集を引き起こす。本明細書で使用するとき、早期凝集は、有機結合剤が最初に均等に分布されることなく(すなわち、有機結合剤が、スラリー全体にわたって均等に分布するように混合されることができる前に)、かつ無機繊維及びスラリーの他の任意の固形成分上に付着することなく、有機結合剤の20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%又は95重量%超が、既に凝集しているか、ないしは別の方法で凝結していることを指す。
【0031】
塩基性pHを示す凝集剤もある(例えば、カルシウム、水酸化カルシウム、及びケイ酸ナトリウム)。そのような塩基性pH凝集剤を使用することにより、そのような塩基性pH凝集剤を使用して作製したスラリーの廃水が塩基性pHを示すことになり、そのようなスラリーから除去した排水を、同一若しくは別の塩基性pH凝集剤、又は更には場合により酸性pH凝集剤を含有する後続スラリーで使用すると、後続スラリー中の凝集剤は、同じように効力を失うことになると考えられる。スラリーの凝集不足(例えば、得られる無機繊維性材料の構造的完全性の欠如)は、塩基性pH廃水中の反応性凝集剤の残存量によっても引き起こされると考えられ、この残存量は、有機結合剤、無機繊維、及び他の固形のスラリー構成成分が後続スラリー全体にわたって均等に分布する機会を有する前に、後続スラリー中の有機結合剤の早期凝集を引き起こす。同様に、酸性pH廃水(すなわち、廃水を酸性pHにするのに十分な反応性凝集剤の残渣を含有している廃水)を、塩基性pH凝集剤、又は同一若しくは別の酸性pH凝集剤を使用した後続スラリーにおいて使用した場合、上述のように、酸性pH廃水の反応性により有機結合剤の早期凝集が生じる可能性があり、後続スラリー中の凝集剤は同じように効力を失うことになると考えられる。
【0032】
本発明者らは、更に、無機繊維、有機結合剤、及び水のスラリーにおいてある凝集剤を使用すると、このスラリーから生成される廃水は、(例えば、無機繊維性材料を作製するために使用される場合に)後続スラリーに再利用されることができ、後続スラリー中の有機結合剤の有意な早期凝集又は沈殿を引き起こすことがないことを発見した。そのような凝集剤は、対応する排水のpHを中性に維持する又は中性にすることができ、そのような中性pHの廃水を、同一又は類似の凝集剤を有する後続スラリーにおいて使用した場合、廃水が中性pHであることにより、後続スラリーで使用されている凝集剤は、商業的に許容される無機繊維性材料を製造するのに十分な有効性を維持することが可能である。つまり、十分な量(すなわち、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%超)の無機繊維及び他の固形のスラリー構成成分が、無機繊維性材料中に存在する十分な有機結合剤(例えば、凝集する、ないしは別の方法で沈殿する、及び十分な固形スラリー構成成分に付着するのに十分な有機結合剤)によって結合されるため、得られる無機繊維性材料は所望の特性(例えば、構造的完全性)を示す。そのような中性pH廃水は、任意の種類の凝集剤(すなわち、酸性pH凝集剤、塩基性pH凝集剤、又は中性pH凝集剤)が添加される後続スラリーを形成するために使用することができ、後続スラリー中の凝集剤の有効性に悪影響を与えないと考えられる。
【0033】
理論に束縛されることを意図しないが、そのような中性pH廃水は、後続スラリーに悪影響を与えないと考えられ、それは、中性pH廃水が、後続スラリー中の有機結合剤の有意な早期凝集又は他の沈殿を引き起こすのに十分なだけの反応性凝集剤の残渣を含有していないためである。すなわち、有機結合剤及びスラリーの固形成分が、スラリー全体にわたって均等に分布する機会を有し、凝集剤がスラリーに添加されるまで、有機結合剤の有意な凝集は生じない。よって、本明細書使用するとき、用語「中性pH廃水」は、中性pHを示す廃水に必ずしも限定されず、むしろ、反応性凝集剤残渣の含有量が十分に低く、中性pH廃水の使用が、後続スラリー中の有機結合剤の有意な早期凝集又は他の沈殿を生じさせない、あらゆる廃水を包含する。廃水中の反応性凝集剤の残渣の量は、廃水を形成するために使用するスラリー中に存在する反応性凝集剤の量の約0%から、1%刻みで、最大約50%までの範囲、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、1%〜40%、5%〜30%等)であり得る。
【0034】
したがって、本明細書で使用するとき、用語「中性pH凝集剤」は、凝集剤が示すpHに関わらず、「中性pH廃水」を生成する任意の凝集剤を指すものとする。本発明の中性pH凝集剤は、対応する中性pH廃水の、少なくとも約10体積%(Vol.%)から、5体積%刻みで、約100体積%まで(100%を含む)(すなわち、少なくとも約10体積%、15体積%、20体積%、25体積%、30体積%、35体積%、40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、65体積%、70体積%、75体積%、80体積%、85体積%、90体積%、95体積%、又は100体積%)を後続スラリーとして再利用させることができ、(例えば、スラリーから製造された無機繊維性材料の構造的完全性に影響を及ぼすことによって)後続スラリーにおける凝集(例えば、有機結合剤がスラリー全体にわたって均一又は均等に分布される前の早期凝集)に有意な程度の悪影響を与えない、任意の凝集剤であると考えることもできる。再利用される中性pH廃水の量は、商業的に有意であることが望ましい。中性pH廃水の再利用量は、廃水が排出される前にその量を前処理する必要がないことによる節約が商業的に有意である場合に、商業的に有意と考えられる。後続スラリーが、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%又は70%の再利用中性pH廃水を含有するのが商業的に好ましい場合がある。加えて、後続スラリーから形成される得られた無機繊維性材料が、構造的完全性(例えば、機械的完全性)及びその目的とする用途(例えば、汚染防止装置のための実装及び/又は断熱用途、排気システムの他の構成要素の断熱、火炎止め用途等)において機能するのに必要な他の特性を示す場合に、凝集の程度は、廃水の使用によって悪影響を受けたと考えられない。使用した中性pH凝集剤が廃水のpHを比較的中性に維持する場合に、所望の結果が得られている。
【0035】
本発明による中性pH凝集剤は、特に従来のミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す凝集剤であり得る。そうであっても、(例えば、廃水から製造された後続スラリーの早期凝集を引き起こすことによって)廃水から製造された後続スラリーにおける凝集に該廃水が有意な程度の悪影響を与えるのに十分な反応性凝集剤が、抽出された廃水中に残らないか別様に残留しないほど、凝集剤が凝集時に高効率である場合には、単独で比較的酸性のpH又は塩基性のpHを示す凝集剤もまた、本発明による中性pH凝集剤として機能することが可能である。したがって、中性pH凝集剤は、使用したときに、(a)結果として対応する廃水のpHが比較的中性を維持する、及び/又は(b)廃水が後続スラリーに加えられたときに、結果として対応する廃水が後続の凝集に悪影響を与えない、若しくはそれに少なくとも寄与する、任意の凝集剤であってよい。よって、中性pH凝集剤の少なくともいくつかの実施形態がスラリーで使用された場合、本発明によると、スラリーから抽出された、得られた廃水は、特に従来のミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて、比較的中性のpHを示し得る。
【0036】
従来のミョウバン凝集剤はそのように効率が悪いので、望ましい凝集の程度を生じさせるためには、より多くのミョウバン凝集剤が必要となり、その結果、過剰な未反応の(すなわち、反応性の)ミョウバン凝集剤が廃水中に残留することになると考えられる。過剰な反応性凝集剤が存在することで、得られる廃水が比較的酸性のpHを有する可能性がある、及び/又は、さもなければ、反応性凝集剤を含有する廃水を用いて製造された後続スラリー中に早期凝集が生じる可能性がある。更に、十分な凝集を得るために必要な従来のミョウバン凝集剤の量は、本発明による少なくともいくつかの中性pH凝集剤を使用した場合に必要となる量の10倍以上であり得ることが見出された。よって、本発明による中性pH凝集剤(例えば、Mid South 9307C)は、比較的少量で使用することができ(特に従来のミョウバン凝集剤と比べて)、それでも尚十分な凝集を生成することができるほど高効率であるのものを包含し得る。
【0037】
本発明の文脈において、前回の又は初期のスラリーから得た廃水の商業的に有意な量を後続スラリーに加えたとき、有機結合剤及び固形成分が混合されて後続スラリーの中に均等に分布する前に、スラリーの中の有機結合剤の早期凝集又は沈殿が生じない場合に、廃水のpHは中性であると考えられる。廃水が十分に中性のpH廃水である場合、後続スラリーから形成された無機繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)は、構造的に存続可能である(例えば、バラバラにならずに取り扱う及び設置することができる)、ないしは別様に商業的に実現可能である(例えば、実装マット、断熱シート、端部コーンインサート、又はその目的とする用途、例えば、汚染防止装置において若しくは火炎止めとして適している他の2次元若しくは3次元の繊維構造体として使用することができる)。
【0038】
中性pH凝集剤として有用な凝集剤としては、カチオン性基を有する有機ポリマーを含むものを挙げることができる。要件ではないが、そのような凝集剤ポリマーは、水膨潤性、水可溶性、又は水分散性であり得る。好適な中性pH凝集剤の例としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以後、PDADMAC)及びジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの溶液(典型的には水性)又は分散体を挙げることができる。任意追加的に、中性pH凝集剤は、金属カチオン(例えば、アルミニウム)を更に含んでもよく、これは、解離した錯体で(例えば、ハイドレート、クロライド、又はクロロハイドレート)、又はポリマー形態で(例えば、ポリ(メタルオキサイド)又はオキシクロライドとして)存在してもよい。
【0039】
中性pH凝集剤として使用するのに好適な市販の凝集剤の例としては、Garratt Callahan(Burlington,California)から商品名「FORMULA 7644」(PDADMACの水溶液)、「FORMULA 7643」、「FORMULA 7642」、「FORMULA AH−423」、「FORMULA 7602」、「FORMULA 7603」、「FORMULA 7552」、「FORMULA 7622」、「FORMULA 7655」、又は「FORMULA 7568」として;Mid−South Chemical(Ringold,Louisiana)から商品名「MP9307」(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの水溶液であると考えられている)として;Ciba SpecialtyChemicals(Tarrytown,New York)から商品名「ZETAG 7125」(PDADMACの水溶液)、「ZETAG 7127」(PDADMACの水溶液)として;並びに、Hawkins(St.Paul,Minnesota)から商品名「ARCTICFLOC AF12104」(PDADMACの水溶液)、「AQUA HAWK 2987」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)、「AQUA HAWK 101」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(第4級アミン)の水溶液)、「AQUA HAWK 427」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(第4級アミン)の水溶液)、及び「AQUA HAWK 2757」(アルミニウム系ポリ無機物及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)として入手可能なもの、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。ポリアミンは、プロトン化した(すなわち、カチオン性及びポリカチオン性の)形態と平衡して水性媒体中に存在することが認められることになる。
【0040】
スラリー中に存在する凝集剤の割合は、ミョウバン凝集剤であるか中性pH凝集剤であるかに関わらず、スラリー中の固体要素(例えば、結合剤、繊維、充填剤、膨張材料等)の重量に基づく。例えば、非膨張不織布繊維性材料を製造する場合、使用される中性pH凝集剤の割合は、主に、スラリーの有機結合剤及び無機繊維含有量の重量に基づいてもよい。膨張不織布繊維性材料を製造する場合、使用される中性pH凝集剤の割合は、主に、スラリーの有機結合剤、無機繊維、及び膨張材料含有量の重量に基づいてもよい。スラリーで使用した水の量は、必要となる中性pH凝集剤の量に影響を与える場合がある。一般に、スラリーの含水量が増加するにつれて、所与の量のスラリー固形物(例えば、有機結合剤及び無機繊維)に対して必要となる凝集剤の量が多くなる。これは、追加の水がスラリーに加えられると、スラリー中の凝集剤の濃度が低下するためであると考えられる。
【0041】
一般に、中性pH凝集剤は、使用される有機結合剤(例えば、乳化性有機ポリマー結合剤)を凝集させるのに有効な量で使用される。使用される中性pH凝集剤の量が、従来使用されているミョウバン凝集剤の量よりも著しく少ない場合でも、望ましい結果が得られた。他の量を用いることも可能であるが、中性pH凝集剤(固形分基準)は、通常使用される従来のミョウバン凝集剤の量よりも著しく少ない量でスラリー中に存在するのが望ましい場合がある。例えば、使用される中性pH凝集剤の量は、スラリー構成成分の乾燥重量に基づいて、少なくとも約0.2%から、0.1%刻みで、約5%まで(5%を含む)、場合によっては約10%までの範囲内、及びこれらの間の任意の範囲内(例えば、少なくとも約0.25%から約5%、4%、3%、2%、又は1%まで(5%、4%、3%、2%、又は1%を含む)の範囲内)であり得る。それに対して、従来のミョウバン凝集剤は、少なくとも5%超から、更には場合により50%までの量で使用される必要がある。典型的な用途では、ミョウバン凝集剤は約20%の量で使用されているが、中性pH凝集剤は約1%の量で使用されている。
【0042】
表1(下記)は、本発明による中性pH凝集剤として有用であり得る凝集剤を列挙する。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の以前には、スラリーから無機繊維性材料を製造する従来の方法からの排水は、廃棄される(例えば、貯蔵池、許可されている場合には下水道などに)、又は、廃水を再使用又は廃棄できるようにする前に、費用のかかる水処理に供される必要があった。本発明は、スラリーを作製するために使用される水の少なくとも約10%から、1.0%刻みで、約100%まで(更には場合により約100%を含む)(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%、更には場合により100%)を形成するように、廃水の全て、ほとんど、又は少なくとも有意な量を再使用又は再利用できるようにする。スラリーで必要な水の残部(もしあれば)は、例えば、住宅用水又は商用水道水供給元のような供給源からの、ある量の比較的きれいな水である(すなわち、廃水ではない)。
【0045】
使用される廃水の量は、得られるスラリー組成物の一貫性を制御し維持する能力に依存し得る。スラリー組成物の一貫性は、得られる無機繊維性材料の特性がスラリーごとに同じであるか否かに影響を及ぼし得る。無機繊維性材料の各バッチ又はランの特性の一貫性は、商業的に望ましくあり得る。更に、廃水のpHは比較的中性に保たれているので、廃水は、特別な又は費用のかかる水処理を施さずに又はあまり施さずに、より簡単に廃棄する又は捨てることができる。例えば、本発明に従って作製された中性pH廃水を、ほとんどの地方自治体の下水道に直接廃棄する、又は、下水道に廃棄する前に、中性pH廃水をある量の比較的きれいな水(すなわち、廃水ではない)で最初に希釈するくらいで廃棄することを、許容することができる。
【0046】
任意追加的に、本発明による不織布繊維性材料は、所望の最終用途に応じて、1つ以上の膨張材料を含んでもよい。膨張材料は、未膨張、部分膨張、又はこれらの混合物であってよい。例えば、約500℃超える温度で使用する場合、未膨張のバーミキュライト材料が約300℃〜約340℃の温度範囲で膨張を開始するため、適している。これは、膨張する金属ハウジングと、触媒コンバータ内のモノリスとの間の膨張格差を埋めるのに有用である可能性がある。例えばディーゼル用モノリス又は微粒子フィルタなど、約500℃未満の温度で使用する場合、膨張可能なグラファイト、又は膨張可能なグラファイトと未膨張バーミキュライト材料との混合物が好ましい場合があるが、膨張可能なグラファイトが約210℃で膨張(expand)又は膨張(intumesce)を開始するからである。処理済みバーミキュライトも有用であり、通常は約290℃の温度で膨張する。
【0047】
有用である可能性のある膨張材料の例としては、未膨張のバーミキュライトフレーク又は原鉱、処理した未膨張バーミキュライトフレーク又は原鉱、部分的脱水バーミキュライト原鉱、膨張可能なグラファイト、膨張可能なグラファイトと、処理した又は未処理の未膨張バーミキュライト原鉱との混合物、ハイドロバイオタイト、米国特許第3,001,571号(Hatch)に記載された水膨張性合成フッ素四ケイ素雲母(tetrasilicic fluorine type mica)、米国特許第4,521,333号(Grahamら)に記載されたアルカリ金属シリケート粒剤、加工した膨張可能ケイ酸ナトリウム(例えば、3M Companyから商品名「EXPANTROL」として市販されている不溶性のケイ酸ナトリウム)、及びこれらの混合物が挙げられる。市販の膨張可能なグラファイト材料の例は、UCAR Carbon Co.(Cleveland,Ohio)から商品名「GRAFOIL Grade 338−50」膨張可能グラファイトフレークとして入手可能なものである。処理済み未膨張バーミキュライトフレーク又は原鉱としては、イオン交換塩(例えば、リン酸二水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、又は当該技術分野において既知の他の好適な化合物)によるイオン交換などのプロセスによって処理された、未膨張のバーミキュライトが挙げることができる。
【0048】
本発明による不織布繊維性材料を形成する工程は、例えば、従来の湿式法などの任意の好適な技術を用いて行われ得る。スラリーを使用して不織布繊維性材料を形成するためのそのような方法の1つは、旧来の湿式不織布製紙技術であり得る。簡潔に述べると、かかる方法は、スラリー構成成分を一緒に混合する工程と、得られたスラリーを、ワイヤーメッシュ、スクリーン、又は他の多孔質表面上に沈積させて(例えば、注いで)水の大部分を除去する工程と、を含み得る。概ね2次元のシートが得られ、次にこれを乾燥させて不織布繊維性材料を形成する。次に、不織布繊維性材料は、(例えば、打抜き、レーザー切断等によって)シート及びマットのような所望の最終形態に変換され得る。他の湿式タイプの形成方法は、成形型キャビティを有する成形型の使用を含み得、その場合、スラリーは成形型キャビティの中に注がれ、ないしは別の方法で沈積され、廃水は、(例えば、成形型キャビティの少なくとも一部を画定するメッシュ、スクリーン、又は他の多孔質表面若しくは穿孔面を介して廃水を吸引する又は抜くために真空を用いることによって)除去される。そのような成形型を使用して、予備形態又は所望の最終形態(例えば、2次元又は3次元形状)を有する不織布繊維性材料を形成することができる。そのような形成方法は、段階的、バッチ、及び/又は連続方式のうちの任意の1つ又は任意の組み合わせで行うことができる。
【0049】
スラリーを作製するとき、沈積工程の直前に、任意の膨張材料及びより高密度の充填剤(使用される場合)のようなより高密度の材料を、より少容量の混合容器の中のスラリーに、一定速度で添加してもよい。そのような材料を含有するスラリーを十分に攪拌して、メッシュ若しくはスクリーン上に又は成形型の中にスラリーを沈積させる前に、これらのより高密度の材料(典型的には粒子の形態である)が混合タンクの中に沈降するのを防止する。こうしたスラリーは、より高密度の材料の望ましくない沈降を防ぐために、典型的には、メッシュ若しくはスクリーン上に、又は成形型の中に沈積させたほぼすぐ後に又は直後に部分的に脱水されるべきである。スラリーの真空脱水が望ましくい場合がある。更なる脱水又は乾燥に有用な方法は、当該技術分野において既知のように、脱水されたスラリーを、例えば、圧縮又は加圧ローラーを通してウェットプレスし、続いて、得られた不織布繊維性材料を任意の加熱されたローラーに通過させ、続いて、強制熱風乾燥を行うことを含み得る。成形型を使用して不織布繊維性材料又はその構造体を製造する場合、雌モールド型のキャビティの中で脱水されたスラリーを形成した後、脱水されたスラリーをウェットプレスするように、加圧下で相手の雄モールド型を成形型キャビティに挿入し、予備形態又は所望の最終形態(例えば、2次元又は3次元形状)を有する、得られる不織布繊維性材料を形成することができる。あるいは、脱水されたスラリーを雄モールド型の表面上で形成した後、脱水されたスラリーをウェットプレスするように、加圧下で雌モールド型キャビティに嵌合して、予備形態又は所望の最終形態(例えば、2次元又は3次元形状)を有する、得られる不織布繊維性材料を形成することができる。
【0050】
そのような押圧操作はまた、得られる不織布繊維性材料の厚さを低減させる及び/又は密度を増加させることができる。得られる不織布繊維性材料は、繊維性材料中の有機結合剤を使用して、所望の厚さ及び/又は密度を有するように作製されることができ、この有機結合剤は、不織布繊維性材料が圧縮状態にある間に、(例えば、有機結合剤を架橋及び/又は固化することによって)硬化又は固化させることができる。例えば、有機結合剤が熱硬化型である場合、圧縮した不織布繊維性材料に熱を加えて、必要な程度まで硬化させることができる。一旦有機結合剤が硬化すると、繊維性材料は、押圧操作が完了し、不織布繊維性材料が取り除かれた後であっても、所望の厚さ及び/又は密度を維持することができる。
【0051】
本発明による不織布繊維性材料は、乾燥重量基準で、約30パーセントから、約0.5パーセント刻みで、約99.5パーセントまで(99.5パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約40〜約98.5重量パーセント、約50〜約98重量パーセント、約60〜約97.5重量パーセント、又は約70〜約97重量パーセント)の無機繊維を含むことができる。不織布繊維性材料はまた、有機結合剤を、約0.5重量パーセントから、約0.5重量パーセント刻みで、約15重量パーセント(15重量パーセントを含む)範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約0.5、1.0、又は1.5重量パーセントから、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントまで(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントを含む))で含むことができる。火炎止め用途では、機結合剤含有量はこれより高くてもよい。任意追加的に、不織布繊維性材料は、約15重量パーセントから、約1重量パーセント刻みで、約70重量パーセントまで(70重量パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約20重量パーセントから約60重量パーセントまで(60重量パーセントを含む))の膨張材料を含むことができる。しかしながら、これらの範囲外の組成物の使用が望ましい場合もある。膨張材料及び他のそのような材料を含まない実施形態では、乾燥重量基準で、無機繊維の割合は、少なくとも約85重量パーセント(例えば、少なくとも90、91、92、93、94、95重量パーセント、又はそれ以上)であるのが望ましい場合があるが、より低い重量パーセントを使用してもよい。
【0052】
本発明の不織布繊維性材料は、任意追加的に、1種以上の無機充填剤、無機結合剤、有機繊維、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物を含有してもよい。使用可能な充填剤の例としては、層剥離バーミキュライト、中空のガラスミクロスフェア、パーライト、アルミナ三水和物、リン酸マグネシウム六水和物、炭酸カルシウム、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填剤は、不織布繊維性材料の乾燥重量で、0パーセントから、1パーセント刻みで、約50パーセントまで(50パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50パーセントまで(10、15、20、25、30、35、40、45、又は50パーセントを含む))のレベルで、不織布繊維性材料中に存在してもよい。使用可能な無機結合剤の例としては、雲母粒子、カオリン粘土、ベントナイト粘土、及び他の粘土様鉱物を挙げることができる。無機結合剤は、不織布繊維性材料の乾燥重量で、0から、1パーセント刻みで、約50パーセントまで(50パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、又は50パーセントまで(10、15、20、25、30、35、40、45、又は50パーセントを含む))のレベルで、不織布繊維性材料中に存在してもよい。任意追加的に、有機繊維(例えば、短繊維又はフィブリル化繊維)を、例えば、加工中の湿潤強度、及び目的とする用途(例えば、汚染防止装置内にキャニングされるかないしは別の方法で設置される前のマット状又はシート状実装材料)における乾燥強度及び弾力性を提供するために、本発明の不織布繊維性材料に含ませてもよい。しかしながら、一般的に、有機構成成分は、使用中にそれらの燃焼温度を超える温度で燃焼除去されると、好ましくない結果(例えば、煙及び悪臭)の一因となり得るので、特に汚染防止装置用途においては、有機繊維及び他の有機材料の含有量を最小限に抑えるのが望ましい場合がある。本発明による不織布繊維性材料に含ませることが可能な他の添加剤又は加工助剤としては、消泡剤、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、沈殿を助ける塩、殺真菌剤、及び殺菌剤を挙げることができる。
【0053】
本発明による不織布繊維性材料は、(例えば、汚染防止装置における)目的とする用途に適した物理的特性を有するように配合されるが、所望により、異なる物理的特性を有して配合されてもよい。例えば、不織布繊維性材料は、6インチ(15.24cm)、5インチ(12.70cm)、4インチ(10.16cm)、3インチ(7.62cm)、2インチ(5.08cm)、1インチ(2.54cm)、3/4インチ(1.91cm)、又は更には1/2インチ(1.27cm)の直径を有するマンドレルを使用する可撓性試験(以下で述べる)に合格するだけの十分な可撓性を有することが望ましい場合がある。更に、本発明の不織布繊維性材料は、引張強度試験(以下で述べる)に従って、少なくとも7.3ポンド/平方インチ又はpsi(50kPa)、10.7psi(75kPa)、又は14.5psi(100kPa)の引張強度を有することが望ましい場合がある。
【0054】
本発明による不織布繊維性材料は、縁部保護材料を更に含んでもよい。好適な縁部保護材料の例としては、米国特許第5,008,086号(Merry)に記載される、縁部の周囲に巻装されるステンレススチールワイヤースクリーン、及び米国特許第4,156,533号(Closeら)に記載される、編まれた又はロープ状のセラミック繊維編み材料又は金属ワイヤー材料が挙げられる。縁部保護材料はまた、例えば欧州特許第639701 A1号((Howorthら)、同第639702 A1号((Howorthら)、及び同第639700 A1号(Stroomら)に記載されるようなガラス粒子を有する組成から形成されてもよい。好適な縁部保護材料の他の例としては、米国特許第5,882,608号(Sanockiら)に記載される、多結晶及びその他の不織布繊維性材料のストリップが挙げられる。
【0055】
図1は、本発明による不織布繊維性材料の代表的な使用を示す。すなわち、触媒コンバータなどの汚染防止装置10である。汚染防止装置10は、一般に端部コーン領域と呼ばれる概ね円錐形の入口14及び出口16を有するハウジング12を備えている。ハウジング212は、一般に缶又はケーシングと呼ばれ、通常は金属(例えば、ステンレス鋼)から作製される。典型的には、ハウジング12内に配設されるのは、セラミック又は金属材料により作製されたモノリシック構造体18であり、これは触媒でコーティングされてもよい。断熱実装材料のマット22は、ハウジング12内のモノリシック構造体18を取り囲んで固定する。モノリシック構造体18は、例えば、触媒コンバータ要素又はディーゼル微粒子フィルタ要素であってもよい。本発明による不織布繊維性材料は、マット22として使用することができる。金属ハウジングの入口14及び出口16端部コーン領域のそれぞれは、内側端部コーンハウジング28及び外側端部コーンハウジング26を含む。入口14及び出口16を形成する端部コーンハウジングは、同一の又は異なる形状を有していてもよい。断熱材30が、内側端部コーンハウジング28と外側端部コーンハウジング26との間に位置付けられ得る。本発明による不織布繊維性材料は、断熱材30として使用されてもよい。
【0056】
本発明による、実装マット22の形態の不織布繊維性材料は、触媒コンバータ又はディーゼル微粒子フィルタと同様な様式で、モノリス18とハウジング12との間に配設されてもよい。これは、例えばモノリス18を実装マット22で包み、包まれたモノリスをハウジング12に挿入することによって行うことができる。同様に、端部コーン形状の不織布繊維性材料30は、最初に、各内側端部コーンハウジング28上に配置され、次に、外側端部コーンハウジング26が断熱材30の上に配置されて、内側端部コーンハウジングに対して適所に溶接される。多くの汚染防止装置は、当該技術分野において周知であり、例えば、触媒コンバータ、エンドコーンサブアセンブリ、並びにディーゼル微粒子トラップ及びフィルタが挙げられる。かかる装置に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,882,608号(Sanockiら)及び米国特許出願公開第2006/0154040A1号(Merry)に見出すことができる。
【0057】
本発明による不織布繊維性材料は、目的とする用途に適した任意の寸法及び/又は厚さを有することができる。しかしながら、汚染防止装置で用いる場合、代表的な不織布繊維性材料の厚さは、キャリパー測定の一般手順(以下に開示)に従って、典型的には、約0.1インチ(0.3cm)から、約0.1インチ(0.3cm)刻みで、約2インチ(5cm)まで(2インチ(5cm)を含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約0.1インチ(0.3cm)、0.15インチ(0.38cm)、又は0.2インチ(0.5cm)から、約0.3、0.5、0.7、又は1インチ(0.8、1.3、1.8、又は2.5cm)まで(0.3、0.5、0.7、又は1インチ(0.8、1.3、1.8、又は2.5cm)を含む)、あるいはそれ以上である。汚染防止装置用で用いる場合、本発明による不織布繊維性材料は、典型的には、約400グラム/平方メートル(gsm)から、約100gsm刻みで、約15000gsmまで(15000gsmを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約700、1000、1500、又は2000gsmから、約5000、10000、又は15000gsmまで(5000、10000、又は15000gsmを含む))の乾燥坪量を有する。本本発明による非膨張不織布繊維性材料は、典型的には、約400gsmから、約100gsm刻みで、約2500gsmまで(2500gsmを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約1000gsmから約1500gsmまで(1500gsmを含む))の乾燥坪量を有する。本発明による膨張不織布繊維性材料は、典型的には、約1200gsmから、約100gsm刻みで、約15000gsmまで(1500gsmを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約2400gsmから約8000gsmまで(8000gsmを含む))の乾燥坪量を有する。
【0058】
試験方法
可撓性試験(亀裂試験)
試験される標本を僅かに曲げることにより両側に既に亀裂がないことを、目視検査することにより確認する。亀裂のある標本は使用されるべきではない。試験される標本の1インチ幅ストリップ(1つ又は複数)を、ステンレス抜き型を使用して、最小でも4インチ(10cm)の長さに切断する。ストリップの1つの面を、直径6インチ(15.24cm)の円筒形マンドレル(長さが少なくとも2インチ(5.1cm))の周りに180°(半分)まで、ストリップがマンドレルの周りにあることを確実にし、かつ少なくとも30秒間保持するのに必要な最小限の力を用いてそっと巻く。繊維分離又は亀裂についてストリップを目視検査する。繊維分離又は亀裂のいずれかが観察されるまで、5インチ(12.70cm)、4インチ(10.16cm)、3インチ(7.62cm)、2インチ(5.08cm)、1インチ(2.54cm)、0.75インチ(1.91cm)、0.5インチ(1.27cm)の直径を有する、次第により小さくなる直径のマンドレルを使用して繰り返す。亀裂が目視観察されるまで継続する。取るに足りない又は表面的な亀裂以外のいずれの繊維分離又は亀裂も目視観察されない場合、標本は可撓性試験に合格する。
【0059】
引張強度試験
キャリパー測定手順(上記)に従ってキャリパーを測定した後、試験される標本を、幅1インチ(2.5cm)×長さ7インチ(18cm)のストリップに切断する。1つのストリップの各末端部を、試料の破断点におけるピーク引張荷重を記録できる好適な荷重フレーム中の1インチ平方の空気式グリップの中に、グリップの各末端部間にストリップの6インチ(15cm)が存在するようにクランプする。次に、1インチ(2.54cm)毎分の速度でストリップを引き離し、破断する前にサンプルが支持したピーク荷重を記録する。引張強度は、分裂した試料の幅とキャリパーを乗じることによって計算された断面積で除したピーク荷重として定義される。
【0060】
キャリパー測定の一般手順
デジタルマイクロメータを、滑らかな金属ベースプレート上に載置される円筒形重荷の上に定置されたときにゼロインチ(0cm)を示すように較正する。円筒形重荷は、2.5インチ(6.35cm)のベース直径を有し、0.712psi(4.9kPa)の圧力を加えるのに十分な重量を有する。円筒形重荷は次に、測定される標本(例えば、シート)の上に定置され、較正されたデジタルマイクロメータを重荷の上に定置することにより、標本のキャリパーが決定される。
【0061】
不織布繊維性材料を調製するための代表的な手順
【実施例】
【0062】
(実施例1)
4000mLの水道水を1ガロンのワーリングブレンダーに加える。70gのCERAFIBER(Thermal Ceramics(Augusta,Georgia)製)をブレンダーに加える(繊維は予め約20%のショット含有量に浄化され、1050℃でアニール処理されている)。ブレンダーを低速で5秒間動作させる。得られたスラリーを混合用容器に注ぎ込み、固形分を懸濁し続けるように、気流型混合機を使用して中速度で攪拌し続ける。1.73gの消泡剤(Henkel(Edison New Jersey)製のFoamaster 111)を添加した後、9.0gのエチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(Air Products製の商品名AIRFLEX 600BP、55重量パーセント固形分)を添加する。次に、混合開始から約1分後に、1.5gの凝集剤(Mid South Chemical製のMP9307C)を添加する。混合を1〜3分間継続する。混合機を取り除き、内容物を、8インチ×8インチ(20.3cm×20.3cm)シートフォーマー又は成形型に注ぎ込み、水抜きする。シートフォーマーは、例えば、4つの固体側壁(内寸8インチ×8インチ)と、有孔底部(例えば、スクリーンで形成される)とを有することができ、穿孔は、水を通過させることができると同時に、スラリーからの固形分の大部分(全部ではないが)を保持するようにサイジングされる。吸取紙のシート数枚を水抜きされたシートの上に広げ、のし棒を用いて水抜きされたシートを3回延ばした後、のし棒を除去し、シートを13〜14psi(90〜97kPa)の表面圧力で、吸取紙の間で5分間圧搾する。次に、シートを150℃にて強制空気オーブン中で10〜15分間乾燥させ、試験前に雰囲気に曝しながら一晩平衡化させる。
【0063】
【表2】

【0064】
(実施例2)
水道水を2000mL、及び廃水を2000mL使用したことを除いて、実施例1に関してすでに説明した通りに繊維性シートを作製する。実施例1と同様にスラリーを作製することによって廃水を得たが、スラリーは、シート成形装置に注ぎ込むのではなく、フィルターバッグを通して濾過し、固形分の大部分又は全てを除去した。廃水のpHをpH試験紙で測定したところ、約7.36であった。
【0065】
表3及び4に示されていることを除いて、実施例1に関して既に説明した通りに実施例3、5、7、9、11、13、及び15を作製した。表3及び4に示されていることを除いて、実施例2に関して既に説明した通りに実施例4、6、8、10、12、及び14を作製した。
【0066】
【表3】

*−浄化及びアニール処理済み
**−アルミン酸ナトリウム/ミョウバン(最初の数字がアルミン酸ナトリウムであり、2つ目の数字がミョウバンである)
(0067)
【表4】

*−4”で亀裂試験結果はOK
**−燃焼除去された有機物の量
***−アルミン酸ナトリウム及びミョウバン
【0068】
追加の実施形態
不織布繊維性材料の製造方法の実施形態
1.不織布繊維性材料の製造方法であって、
例えば、廃水、比較的きれいな水(例えば、通常の住宅用水、商用水道水、又はスラリーで使用するのに商業的に許容され、かつ廃水でない任意の他の水)などの水と、1種又は複数種の第1の無機繊維と、1種以上の第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーを準備することと、
第1のスラリーからある量の第1の廃水を(例えば、重力、圧搾を用いることによって、及び/又は第1のスラリーに対して真空若しくは他の吸引力を加えることによって)分離ないしは別の方法で除去することと(例えば、第1の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第1のスラリーから除去される)、
任意追加的に、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)を形成する(例えば、湿式抄紙法、成形法等によって)ことと、
ある量の第1の廃水(例えば、第1の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第1のスラリーから除去される)と、廃水でない任意の量の比較的きれいな水と、第1のスラリーで使用したものと同一の及び/又は異なる1種又は複数種の第2の無機繊維と、第1のスラリーで使用したものと同一の及び/又は異なる1種以上の第2の有機結合剤と、第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、
第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)を形成する(例えば、湿式抄紙法、成形法等によって)ことと、を含み、
第1の廃水を第2のスラリーに加えることが、第2のスラリー中の第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない、方法。例えば、第2のスラリー中で第1の廃水を使用したことに起因する第2の有機結合剤の有意な早期凝集を、第2のスラリーが示さない場合に、第2のスラリー中の第1の廃水は、第2のスラリー中の第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えないと見なすことができる。
【0069】
好ましくは、第1の中性pH凝集剤を使用することにより、第1の廃水が比較的中性のpHを維持する。第2の廃水の中性pHは、唯一又は主に、第2の中性pH凝集剤によるものであり、第1の中性pH凝集剤は、第2の廃水の中性pHの維持を殆ど又は全く助けないと考えられる。不織布繊維性材料は、例えば、平坦な又は湾曲したシート若しくはマットの形態、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーンの形態、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態であり得る。更に、不織布繊維性材料は、様々な用途において好適となるように、機能的に適合される(すなわち、寸法設定、組成、及び/又は構成される)ことができる。概して、得られる不織布繊維性材料は、断熱材、防音材(acoustic insulation)等として使用するのに好適であり得る。無機材料を含有していることから、不織布繊維性材料は、例えば、汚染防止装置において(例えば、実装マット、断熱シート、若しくは端部コーンインサート等として)、又は火炎止め若しくは火炎止め物品の構成要素としてなど、高温用途で使用されるのが望ましい場合がある。しかしながら、本発明の不織布繊維性材料は、本明細書に記載又は特定されるように使用されることのみに必ずしも限定されない。
【0070】
2.第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
3.第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成している間に、ある量の第1の廃水が第1のスラリーから分離ないしは別の方法で除去され、第1の無機繊維は第1の不織布繊維性材料に形成される、実施形態2に記載の方法。
4.第2のスラリーが、ある量の比較的きれいな水を含む、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
5.第2の凝集剤が、第1のスラリーで使用した凝集剤同一の及び/又は異なる凝集剤である第2の中性pH凝集剤を含み、上記方法が、
第2のスラリーからある量の第2の廃水を分離ないしは別の方法で除去することを更に含む(例えば、第2の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第2のスラリーから除去される)、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
6.第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成している間に、ある量の第2の廃水が第2のスラリーから分離ないしは別の方法で除去され、第2の無機繊維は第2の不織布繊維性材料に形成される、実施形態5に記載の方法。
7.第2の凝集剤が、第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる凝集剤である第2の中性pH凝集剤を含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
8.第2の凝集剤が、第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の又は異なる凝集剤である第2の中性pH凝集剤を含み、上記方法が、
第2のスラリーからある量の第2の廃水を分離ないしは別の方法で除去することと(例えば、第2の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第2のスラリーから除去される)、
ある量の第2の廃水(例えば、第2の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第2のスラリーから除去される)と、廃水でない任意の量の比較的きれいな水と、第2のスラリーで使用したものと同一の及び/又は異なる1種又は複数種の第3の無機繊維と、第2のスラリーで使用したものと同一の及び/又は異なる1種以上の第3の有機結合剤と、第2のスラリーで使用した凝集剤と同一の又は異なる第3の中性pH凝集剤と、を含む第3のスラリーを準備することと、
第3のスラリーから第3の不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)を形成する(例えば、湿式抄紙法、成形法等によって)ことと、を含み、
第2の廃水を第3のスラリーに加えることが、第3のスラリー中の第3の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない、方法。例えば、第3のスラリー中で第2の廃水を使用したことに起因する第3の有機結合剤の有意な早期凝集を、第3のスラリーが示さない場合に、第3のスラリー中の第2の廃水は、第3のスラリー中の第3の有機結合剤の凝集に悪影響を与えないと見なすことができる。
【0071】
好ましくは、第2の中性pH凝集剤を使用することにより、第2の廃水が比較的中性のpHを維持する。第3の廃水の中性pHは、唯一又は主に、第3の中性pH凝集剤によるものであり、第1及び第2の中性pH凝集剤は、第3の廃水の中性pHの維持を殆ど又は全く助けないと考えられる。
【0072】
9.第3のスラリーが、ある量の比較的きれいな水を含む、実施形態8に記載の方法。
10.第3のスラリーからある量の第3の廃水を分離ないしは別の方法で除去すること(例えば、第3の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に第3のスラリーから除去される)を更に含む、実施形態8又は9に記載の方法。
11.分離が、第3のスラリーから第3の不織布繊維性材料を形成している間(すなわち、第3の無機繊維が第3の不織布繊維性材料に形成されている間)に生じる、実施形態10に記載の方法。
12.第3の中性pH凝集剤が第2の中性pH凝集剤と同一である、実施形態8〜11のいずれか1つに記載の方法。
13.各追加のN番目のスラリーに関し、上記方法が、
前回のスラリー又はN−1番目のスラリーから除去されたある量の廃水(例えば、前回の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様に前回のスラリーから除去される)と、廃水でない任意の量の比較的きれいな水と、任意の前回のスラリーで使用したものと同一の及び/又は異なる1種又は複数種のN番目の無機繊維と、任意の前回のスラリーで使用した有機結合剤と同一の及び/又は異なる1種以上のN番目の有機結合剤と、任意の前回のスラリー又はN−1番目のスラリーで使用した凝集剤と同一の又は異なるN番目の中性pH凝集剤と、を含むN番目のスラリーを準備することと、
N番目のスラリーからN番目の不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)を形成する(例えば、湿式抄紙法、成形法等によって)ことと、を更に含み、
Nが4以上の整数であり、N−1番目の廃水をN番目のスラリーに加えることが、N番目のスラリー中のN番目の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない、実施形態8〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
例えば、N番目のスラリー中でN−1番目の廃水を使用したことに起因するN番目の有機結合剤の有意な早期凝集を、N番目のスラリーが示さない場合に、N番目のスラリー中のN−1番目の廃水は、N番目のスラリー中のN番目の有機結合剤の凝集に悪影響を与えないと見なすことができる。好ましくは、N−1番目の中性pH凝集剤を使用することにより、N−1番目の廃水が比較的中性のpHを維持する。N番目の廃水の中性pHは、唯一又は主に、N番目の中性pH凝集剤によるものであり、使用された前回の中性pH凝集剤は、N番目の廃水の中性pHの維持を殆ど又は全く助けないと考えられる。
【0074】
14.N番目のスラリーが、ある量の比較的きれいな水を含む、実施形態13に記載の方法。
15.N番目のスラリーからある量のN番目の廃水を分離ないしは別の方法で除去すること(例えば、N番目の不織布繊維性材料の形成前、形成中、若しくは形成後に除去される、あるいは別様にN番目のスラリーから除去される)を更に含む、実施形態13又は14に記載の方法。
16.N番目のスラリーからN番目の不織布繊維性材料を形成している間に、ある量のN番目の廃水がN番目のスラリーから分離ないしは別の方法で除去され、N番目の無機繊維はN番目の不織布繊維性材料に形成される、実施形態15に記載の方法。
17.N番目の中性pH凝集剤が、前回使用した中性pH凝集剤(例えば、N−1番目の中性pH凝集剤)と同一である、実施形態13〜16のいずれか1つに記載の方法。
18.各スラリー中の無機繊維が、ガラス繊維、無機生体溶解性繊維、耐火セラミック繊維、及び他のセラミック繊維のうちの少なくとも1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法。
19.各スラリーが、ある量の膨張材料を更に含む、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の方法。かかる膨張材料は、例えば、未膨張のバーミキュライト、及びグラファイトのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
20.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、膨張材料である、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の方法。
21.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、約15重量パーセントから、約1重量パーセント刻みで、約70重量パーセントまで(70重量パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約20重量パーセントから約重量60パーセントまで(60重量パーセントを含む))の膨張材料を含む、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の方法。
22.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、非膨張材料である、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の方法。
23.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、約30重量パーセントから、約1重量パーセント刻みで、少なくとも約85重量パーセントまで(85重量パーセントを含む)の範囲内(例えば、少なくとも約86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99重量パーセントまで(86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99重量パーセントを含む)、又はそれ以上)の無機繊維を含むが、ただしより低い重量パーセントも使用可能である、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の方法。
24.使用されるスラリーの少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全ての中の有機結合剤が、アニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有する少なくとも1つのポリマーを含む、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の方法。例えば、有機結合剤は、アクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、アニオン性末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。有機結合剤ポリマーはまた、エチレン及びビニルアセテートのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含むモノマーのコポリマーを含んでもよい。
25.使用されるスラリーの少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全ての中の有機結合剤が、水性アニオン安定化ポリマーエマルション(例えば、ラテックス)の形態である、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の方法。
26.使用されるスラリーの少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、約一60℃から、1℃刻みで、約30℃までの範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、−40℃から10℃まで)のガラス転移温度を有する、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の方法。
27.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全ての有機結合剤含有量が、約0.5重量パーセントから、約0.5重量パーセント刻みで、約15重量パーセントまで(15重量パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約0.5、1.0、又は1.5重量パーセントから、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントまで(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントを含む))である、実施形態1〜26のいずれか1つに記載の方法。
28.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、約0.5重量パーセントから、約0.5重量パーセント刻みで、約15重量パーセントまで(15重量パーセントを含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約0.5、1.0、又は1.5重量パーセントから、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントまで(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量パーセントを含む))の有機構成成分総重量を有する、実施形態1〜27のいずれか1つに記載の方法。この有機構成成分総重量は、一部又は完全に、使用される有機結合剤によってもたらされ得る。
29.使用される不織布繊維性材料の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、無機繊維の総重量又は不織布繊維性材料の総重量の9パーセント以下の有機構成成分総重量を有する、実施形態1〜28のいずれか1つに記載の方法。
30.使用される中性pH凝集剤の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全て(同一の又は異なる凝集剤の形態)が、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む、実施形態1〜29のいずれか1つに記載の方法。
31.使用される中性pH凝集剤の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、その対応するスラリー中に、有機結合剤ポリマーの、少なくとも約1重量%から、1重量%刻みで、約100重量%まで(100重量%を含む)、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、少なくとも約5重量%、10重量%、15重量%、及び20重量%)の量で存在する、実施形態1〜30のいずれか1つに記載の方法。繊維性材料中の中性pH凝集剤の重量パーセントは、乾燥重量基準で20%未満であるのが望ましい場合がある。
32.使用される有機結合剤の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、対応する中性pH凝集剤と反応生成物を形成する有機ポリマーを含む、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の方法。
33.使用される中性pH凝集剤の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全て(例えば、同一の又は異なる凝集剤の形態)が、金属カチオン(例えば、アルミニウムカチオン)を含む、実施形態1〜32のいずれか1つに記載の方法。
34.使用される中性pH凝集剤の少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、凝集剤1〜凝集剤30、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1〜33のいずれか1つに記載の方法。
35.使用されるスラリーの少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、約5.5から、約0.1刻みで(すなわち、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4)、約8.5まで(8.5を含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内のpHを示す、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の方法。この実施形態は、指定範囲を記述するときに「刻みで」という語句を使用することにより意図されること例示している。
36.廃水を含有するスラリーの少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又は全てが、少なくとも約10%から、約1%刻みで、約100%まで(100%を含む)の範囲内を含む総含水量を有する(例えば、スラリーを作製するために使用される水の少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又はそれ以上が廃水である)、実施形態1〜35のいずれか1つに記載の方法。
37.形成することが、湿式抄紙法である、実施形態1〜36のいずれか1つに記載の方法。
38.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、連続した平坦な又は湾曲したシート又はウェブである、実施形態1〜37のいずれか1つに記載の方法。形成された後、シート又はウェブは、形成方法に沿って個々の部品に連続的に変換されるか、又は最初に巻回された後、続いて巻き出されて変換されるのが望ましい場合がある。
39.形成することが、少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料を、複数の不織布繊維性材料構造体に変換することを更に含み、各不織布繊維性材料構造体は2次元形状を有する(例えば、実装マット、C字形端部コーン断熱体、又はノッチ付きドーナツ形端部コーン断熱体の形態である)、実施形態1〜38のいずれか1つに記載の方法。
40.形成することが、スラリー成形法である、実施形態1〜36のいずれか1つに記載の方法。
41.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、個別に成形された不織布繊維性材料構造体の形態であり、各不織布繊維性材料構造体は2次元又は3次元形状を有する、実施形態1〜36及び40のいずれか1つに記載の方法。2次元マット又はシート(例えば、さねはぎ実装マット、円形平面部品等)、3次元切頭円錐形状の単一ピース端部コーン断熱体、切頭円錐形状のマルチピース端部コーン断熱体、管形状の部品(例えば、管状の実装マット)など、任意の所望の2次元又は3次元形状の構造体を作製することができる。
42.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、汚染防止装置のハウジング内に汚染制御要素を実装する際に用いるように機能的に適合された(すなわち、寸法設定、組成、及び/又は構成された)少なくとも1つ又は複数の実装マットの形態である、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の方法。
43.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、汚染防止装置で用いるように機能的に適合された少なくとも1つ又は複数の端部コーン断熱体又は他の断熱体の形態である、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の方法。
44.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、少なくとも1つ又は複数の火炎止めの形態である、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の方法。
45.中性pH凝集剤を含むスラリーから形成された、少なくとも1つ、大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、材料pH試験に従って試験した場合に、約5.5から、約0.1刻みで(すなわち、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4)、約8.5まで(8.5を含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内のpHを示す、実施形態1〜44のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
材料pH試験
材料pH試験は、50グラムの不織布繊維性材料サンプルを、12mm×12mmかそれより小さい寸法の片に切断し、300mLのきれいな水を収容している500mLのビーカーの中にこれら片を入れることを含む。これら片を飽和するまで水の中に沈め、少なくとも1時間にわたって、又は無機繊維上の水溶性のスラリー構成成分の過半量が水に溶解するまで、水中に維持する。次に、各サンプルを収容している水のpHを、pH計を使用して、又は浸したサンプル片を収容している水の中にpH指示ストリップ(例えば、colorpHast(登録商標))を浸すことによって、試験する。濡れている間に、pH指示ストリップを、pH指示ストリップの容器に印刷されている色コードと比較する。この測定されたpH指示値は、不織布繊維性材料のサンプルの、材料pH試験の結果である。
【0076】
46.上記方法がバッチプロセスであり、各スラリーは別々に形成される、実施形態1〜45のいずれか1つに記載の方法。
47.各スラリーの配合が、同一処方に基づいている、実施形態1〜46のいずれか1つに記載の方法。同一処方に基づいている場合でも、各スラリーの組成は、例えば、廃水組成の変動及び各スラリーで用いられる廃水の量によって異なり得る。
48.各スラリーの配合が、異なる処方に基づいている(すなわち、各スラリーの組成が異なる)、実施形態1〜47のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
不織布繊維性材料の実施形態
49.実施形態1〜48のいずれか1つに記載の方法に従って製造された不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)。
50.材料pH試験に従って試験した場合に、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)の範囲内のpHを示す、実施形態49に記載の不織布繊維性材料。
【0078】
公害防止装置の実施形態
51.ハウジングと、ハウジング内に配設された汚染制御要素と、実施形態49又は50に記載の不織布繊維性材料と、を含み、不織布繊維性材料がハウジングの内部又は外側に配設される、汚染防止装置。
52.少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、ハウジングと汚染制御要素との間の間隙内に配置される実装マットの形態である、実施形態51に記載の汚染防止装置。
53.ハウジングが、入口端部コーン領域と出口端部コーン領域とを含み、少なくとも一方又はそれぞれの端部コーン領域が、内側端部コーンハウジングと外側端部コーンハウジングとを含み、少なくとも1つ以上、若しくは大部分、又はそれぞれの不織布繊維性材料が、内側端部コーンハウジングと外側端部コーンハウジングとの間の間隙内に配置される端部コーン断熱体の形態である、実施形態51又は52に記載の汚染防止装置。
【0079】
火炎止めの実施形態
54.実施形態49又は50に記載の不織布繊維性材料を含む火炎止め。
【0080】
スラリーの実施形態
55.実施形態1〜48のいずれか1つに記載の方法で使用されるスラリーのうちのいずれか1つ。
56.不織布繊維性材料(例えば、汚染防止装置において又は火炎止めとして使用するのに好適なものなど)を製造するためのスラリーであって、
例えば、廃水、比較的きれいな水(例えば、通常の住宅用水又は商用水道水)などの水と、1種又は複数種の第1の無機繊維と、1種以上の第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーから除去されたある量の第1の廃水と、
任意の量の比較的きれいな水(すなわち、廃水ではない)と、
第1のスラリーで使用されるものと同一の又は異なる、1種又は複数種の第2の無機繊維と、
第1のスラリーで使用されるものと同一の又は異なる、1種以上の第2の有機結合剤と、
第1のスラリーで使用されるものと同一の又は異なる、任意の第2の中性pH凝集剤(例えば、同一の又は異なる凝集剤の形態)と、を含み、
第1の中性pH凝集剤により、第1の廃水が比較的中性のpHを維持する、スラリー。廃水の中性pHは、中性pH凝集剤の使用によってもたらされると考えられる。更に、第1の中性pH凝集剤は、第2の廃水の中性pHを維持するのを助けることができないと考えられる。不織布繊維性材料は、例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態であり得る。更に、不織布繊維性材料は、汚染防止装置において(例えば、実装マット、断熱シート、又は端部コーンインサート等として)、又は火炎止めとして使用するのに好適であるように、機能的に適合され得る。
57.各スラリー中の無機繊維が、ガラス繊維、及びセラミック繊維のうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態55又は56に記載のスラリー。
58.各スラリーが、ある量の膨張材料を更に含む、実施形態55〜57のいずれか1つに記載のスラリー。かかる膨張材料は、例えば、未膨張のバーミキュライト、及びグラファイトの少なくとも1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
59.少なくとも第1の有機結合剤、又は第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤のそれぞれが、アニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有する少なくとも1つのポリマーを含む、実施形態55〜58のいずれか1つに記載のスラリー。例えば、有機結合剤は、アクリルポリマー、ビニルポリマー((例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、アニオン性末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。有機結合剤ポリマーはまた、エチレン及びビニルアセテートのうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含むモノマーのコポリマーを含んでもよい。
60.第1の有機結合剤、又は第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤のそれぞれが、水性アニオン安定化ポリマーエマルション(例えば、ラテックス)の形態である、実施形態55〜59のいずれか1つに記載のスラリー。
61.第1の有機結合剤、又は第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤のそれぞれが、例えば、少なくとも約−60℃から、1℃刻みで、30℃までの範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、−40℃から15℃まで、又は10℃まで)のガラス転移温度を有することができる、実施形態55〜60のいずれか1つに記載のスラリー。
62.少なくとも第1の中性pH凝集剤、又は第1の中性pH凝集剤及び第2の中性pH凝集剤(同一の又は異なる凝集剤の形態)のそれぞれが、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む、実施形態55〜61のいずれか1つに記載のスラリー。
63.少なくとも第1の中性pH凝集剤、又は第1の中性pH凝集剤及び第2の中性pH凝集剤のそれぞれが、その対応するスラリー中に、スラリーの固形成分の乾燥重量で(すなわち、水ではない)、少なくとも約0.1%から、0.1%刻みで、約15%まで(15%を含む)、及びそれらの間の任意の範囲内(例えば、約0.5%から約10%まで)の量で存在し得る、実施形態55〜62のいずれか1つに記載の方法。
64.少なくとも第1の有機結合剤、又は第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤のそれぞれが、対応する中性pH凝集剤と反応生成物を形成する有機ポリマーを含む、実施形態55〜63のいずれか1つに記載のスラリー。
65.少なくとも第1の中性pH凝集剤、又は第1の中性pH凝集剤及び第2の中性pH凝集剤(同一の又は異なる凝集剤の形態)のそれぞれが、金属カチオン(例えば、アルミニウムカチオン)を更に含む、実施形態55〜64のいずれか1つに記載のスラリー。
66.凝集剤が、凝集剤1〜凝集剤30、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態55〜65のいずれか1つに記載のスラリー。
67.各スラリーが、約5.5から、約0.1刻みで(すなわち、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4)、約8.5まで(8.5を含む)の範囲内、及びそれらの間の任意の範囲内のpHを示す、実施形態55〜66のいずれか1つに記載のスラリー。
68.廃水を含有する各スラリーが、少なくとも約10%から、約1%刻みで、約100%まで(100%を含む)の範囲内を含む総含水量を有する(例えば、スラリーを作製するために使用される水の少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又はそれ以上が廃水である)、実施形態55〜67のいずれか1つに記載のスラリー。
69.ある量の比較的きれいな水(すなわち、廃水でない)を更に含む、実施形態55〜68のいずれか1つに記載のスラリー。
70.第1のスラリーで使用したのと同一の又は異なる第2の中性pH凝集剤を更に含む、実施形態55〜69のいずれか1つに記載のスラリー。
【0081】
不織布繊維性材料の実施形態
71.実施形態55〜70のいずれか1つに記載のスラリーを使用して形成された不織布繊維性材料(例えば、平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態)。
72.平坦な若しくは湾曲したシート、単一ピース若しくはマルチピース切頭コーン、又は任意の他の所望の2次元若しくは3次元形状の形態の、実施形態71に記載の不織布繊維性材料。
73.材料pH試験に従って試験した場合に、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)の範囲内のpHを示す、実施形態71又は72に記載の不織布繊維性材料。
【0082】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態を取り得る。したがって、本発明は上記の記載によって限定されるものではないが、以下の「特許請求の範囲」及びそのあらゆる均等物において記載される限定条件によって規制されるものである。本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素がなくても好適に実施され得る。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染防止装置において又は火炎止めとして使用するのに好適な不織布繊維性材料の製造方法であって、
水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーを準備することと、
前記第1のスラリーから第1の廃水を除去することと、
ある量の前記第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、
前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成することと、を含み、
前記第2のスラリーを準備することにおいて、前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが、前記第2のスラリー中の前記第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えず、前記第1の中性H凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のHを示す、方法。
【請求項2】
前記第2の凝集剤が、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の又は異なる凝集剤である第2の中性pH凝集剤を含み、前記方法は、
前記第2のスラリーからある量の第2の廃水を除去することと、
ある量の前記第2の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第3の無機繊維と、第3の有機結合剤と、第3の中性pH凝集剤と、を含む第3のスラリーを準備することと、
前記第3のスラリーから第3の不織布繊維性材料を形成することと、を更に含み、
前記第2の廃水を前記第3のスラリーに加えることが、前記第3のスラリー中の前記第3の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各追加のN番目のスラリーに関し、上記方法が、
前回のスラリーから除去されたある量の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、N番目の無機繊維と、N番目の有機結合剤と、N番目の中性pH凝集剤と、を含むN番目のスラリーを準備することと、
前記N番目のスラリーからN番目の不織布繊維性材料を形成することと、を更に含み、
Nが4以上の整数であり、N−1番目の廃水を前記N番目のスラリーに加えることが、前記N番目のスラリー中の前記N番目の有機結合剤の凝集に悪影響を与えない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのスラリー中の前記有機結合剤が、アニオン性基を有する少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの中性pH凝集剤が、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの中性pH凝集剤が、金属カチオンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのスラリーが、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)の範囲内のpHを示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
廃水を含有する各スラリーが、約10%以上の総廃水含有量を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記形成することが、スラリー成形法である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各不織布繊維性材料が、2次元又は3次元形状を有する個別に成形された不織布繊維性材料構造体の形態である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの不織布繊維性材料が、(a)汚染防止装置内に汚染制御要素を実装する際に用いるように機能的に適合された少なくとも1つの実装マット、(b)汚染防止装置の端部コーン領域を断熱する際に用いるように機能的に適合された少なくとも1つの端部コーン断熱体、(c)少なくとも1つの火炎止め、の形態である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成することを含み、前記第1の不織布繊維性材料は、材料pH試験に従って試験した場合に、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)の範囲内のpHを示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ハウジングを提供するステップと、前記ハウジング内に汚染制御要素を配設するステップと、前記ハウジング内に請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法において形成される少なくとも1つの不織布繊維性材料を配設するステップと、を備える、汚染防止装置の製造方法。
【請求項15】
火炎止めを製造する方法であって、前記方法は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法において形成される少なくとも1つの不織布繊維性材料を火炎止め内に形成することを含む、火炎止めの製造方法。
【請求項16】
不織布繊維性材料を製造するためのスラリーであって、前記スラリーは、
水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーから除去されたある量の第1の廃水と、
任意の量の比較的きれいな水と、
第2の無機繊維と、
第2の有機結合剤と、
任意の第2の中性pH凝集剤と、を含み、
前記第1の中性pH凝集剤により、前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する、スラリー。
【請求項17】
少なくとも前記第1の中性pH凝集剤が、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む、請求項16に記載のスラリー。
【請求項18】
少なくとも前記第1の中性pH凝集剤が、金属カチオンを更に含む、請求項16又は17に記載のスラリー。
【請求項19】
前記第1の中性pH凝集剤が、下記表1に記載された凝集剤1〜凝集剤30、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16〜18のいずれか一項に記載のスラリー。
【表1】

【請求項20】
各スラリーが、約5.5から約8.5まで(8.5を含む)範囲内のpHを示す、請求項16〜19のいずれか一項に記載のスラリー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-17 
出願番号 P2016-541095
審決分類 P 1 651・ 537- ZAA (F01N)
P 1 651・ 852- ZAA (F01N)
P 1 651・ 853- ZAA (F01N)
P 1 651・ 121- ZAA (F01N)
P 1 651・ 536- ZAA (F01N)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
星名 真幸
登録日 2020-04-15 
登録番号 6691865
権利者 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
発明の名称 汚染防止装置において又は火炎止めで使用するのに好適な不織布繊維性材料を製造するための再利用廃水の使用  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉野 亮平  
代理人 池田 成人  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 戸津 洋介  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 野村 和歌子  
代理人 清水 義憲  
代理人 池田 成人  
代理人 佃 誠玄  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 佃 誠玄  
代理人 清水 義憲  
代理人 戸津 洋介  
代理人 吉野 亮平  
代理人 野村 和歌子  
代理人 長谷川 芳樹  

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