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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1389361
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-20 
確定日 2022-08-01 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6694846号発明「レタスを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及びレタスを含む青果物の鮮度保持方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6694846号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕、7について訂正することを認める。 特許第6694846号の請求項1、2、4ないし7に係る特許を維持する。 特許第6694846号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6694846号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成29年3月30日を出願日とする特許出願であり、令和2年4月22日にその特許権の設定登録がされ、同年5月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、概略次のとおりである。
令和2年11月20日 : 特許異議申立人森田弘潤(以下、「申立人」という。)による請求項1〜7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年3月16日付け : 取消理由の通知
同年5月18日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年9月6日 : 申立人による意見書の提出
同年11月19日付け : 訂正拒絶理由の通知
同年12月22日 : 特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和4年1月18日付け : 取消理由の通知(決定の予告)
同年3月22日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

平成3年5月18日の訂正請求書による訂正の請求は、令和4年3月22日の訂正請求がされたから、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正
1 訂正の内容
令和4年3月22日の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6694846号の明細書、及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7について訂正することを求める、というものであって、その内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって」を、「包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなる包装体であって」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「内部二酸化炭素濃度が1.0」の直前に、「包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、」を追加する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記包装容器の酸素透過度が、」の直前に「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%であり、」を追加する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「内部二酸化炭素濃度が1.0〜97.6体積%であり」を、「内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「内部酸素濃度が0.386〜20.2体積%であり、」を、「内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であり、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上97.6体積%以下であり、」を「前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であり、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、」を、「前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2〜6の記載を、同様に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に記載の「請求項1から3のいずれか一項に記載」を「請求項1又は2に記載」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5及び6の記載を、同様に訂正する。

(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に記載の「請求項1から4のいずれか一項に記載」を、「請求項1、2及び4のいずれか一項に記載」に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項6の記載を、同様に訂正する。

(11)訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に記載の「請求項1から5のいずれか一項に記載」を、「請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載」に訂正する。

(12)訂正事項12
訂正前の本件特許明細書の段落【0061】から【0065】、及び、【0065】の【表1】に記載の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。

(13)訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に記載の「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納する工程」を、「包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納する工程」に訂正する。

(14)訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に記載の「とする工程を有する、青果物の鮮度保持方法。」の直前に、「、包装体の封止後72時間における内部酸素濃度が5.69体積%以上18.5体積%以下、」を追加する。

(15)訂正事項15
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に記載の「及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上97.6体積%以下とする」を、「及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下とする」に訂正する。

(16)訂正事項16
訂正前に特許請求の範囲の請求項7に記載の「酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内」を、「酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内」に訂正する。

一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜6は、請求項2〜6が本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用し、請求項1の記載の訂正に連動して訂正される関係にあるから、訂正事項1〜12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1〜6〕に対して請求するものである。
訂正事項13〜16は、請求項7に対して請求するものである。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1〜7について
訂正事項1〜7は、いずれも、特許請求の範囲の請求項1についてのものである。
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「カットレタスを含む青果物」を「その全部がカットレタスで構成されている青果物」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「内部二酸化炭素濃度が1.0〜97.6体積%であり、内部酸素濃度が0.386〜20.2体積%であり、」についてそれら濃度が呈される時点を「包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、」と特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた「内部酸素濃度」について「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%であり、」という条件を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載されていた「内部二酸化炭素濃度が1.0〜97.6体積%であり、」を「内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり、」と数値範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、訂正前の請求項1に記載されていた「内部酸素濃度が0.386〜20.2体積%であり、」を「内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であり、」と数値範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上97.6体積%以下であり、」を「前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であり、」と数値範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、訂正前の請求項1に記載の「前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、」を「前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、」と数値範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)に記載された実施例は、包装容器にカットレタスのみを封入したものであるから(段落【0060】【0061】)、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件明細書に記載された実施例2〜4から、包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であること(下限値は実施例4、上限値は実施例2。)及び内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であること(下限値は実施例2、上限値は実施例4。)、包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であること(下限値は実施例4、上限値は実施例2。)、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%であること(下限値は実施例2、上限値は実施例4。)、並びに、包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下であること(下限値は実施例2、上限値は実施例4。)が読み取れる(段落【0065】【表1】参照。)。ここで、22℃、40%RHにおける酸素透過度は、後述するように、20℃、90%RHにおける酸素透過度と同程度のものと考えられる。
したがって、訂正事項2〜7は、いずれも、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1〜7は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項の削除は、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項9〜11について
訂正事項9〜11は、訂正事項8により請求項3を削除することにともない、訂正前の請求項を引用する請求項から請求項3を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
訂正前の引用する請求項から一部の請求項を引用しないものとすることは、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正事項3、4及び6により“実施例”と表現するのが適切ではなくなった「実施例1」をそれぞれ「参考例1」と表現し直すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、これは請求項1〜7に関係する訂正である。
そして訂正事項12は、単に表現を変えるだけの訂正であるから、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項13〜16について
訂正事項13〜16は、いずれも、特許請求の範囲の請求項7についてのものである。
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13は、訂正前の請求項7に記載されていた「カットレタスを含む青果物」を「その全部がカットレタスで構成されている青果物」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項14は、訂正前の請求項7に記載されていた「内部酸素濃度」について「包装体の封止後72時間における内部酸素濃度が5.69体積%以上18.5体積%以下」という条件を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項15は、訂正前の請求項7に記載されていた「包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上97.6体積%以下とする」について「及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下」と数値範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項16は、訂正前の請求項1に記載されていた「酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内」を「酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内」と数値範囲を狭める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
既に(1)で述べたように、本件明細書等に記載された実施例は、包装容器にカットレタスのみを封入したものであり(段落【0060】【0061】)、本件明細書等の実施例2〜4からは、包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であること(下限値は実施例4、上限値は実施例2。)、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69体積%〜18.5体積%であること(下限値は実施例2、上限値は実施例4。)、及び、包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下であること(下限値は実施例2、上限値は実施例4。)が読み取れる(段落【0065】【表1】参照。)。
したがって、訂正事項13〜16は、いずれも、本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項13〜16は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1〜16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項〜第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲〔1〜6〕、7を、本件訂正の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1、2、4〜7に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明7」といい、その各々の発明を「本件各発明」ということがある。)は、令和4年3月22日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなる包装体であって、包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり、内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であり、
前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%であり、
前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、上記包装体。
【請求項2】
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が、3.0〜87.8体積%である、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記包装容器が、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さない、請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項5】
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項7】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなり、酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納する工程、該包装容器を封止する工程、及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下、包装体の封止後72時間における内部酸素濃度が、5.69体積%以上18.5体積%以下、とする工程を有する、青果物の鮮度保持方法。

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1〜7に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和4年1月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
1 サポート要件: 本件請求項1〜7に係る特許は、本件請求項1〜7に記載された発明が発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
明確性: 本件請求項1〜7に係る特許は、本件請求項1〜7の記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
進歩性: 本件特許の請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



・ 甲第1号証:特開平4−148643号公報
・ 甲第2号証:特開2011−78369号公報
・ 甲第5号証:泉秀実、“カット野菜の品質特性と微生物的安全性”、日本食品保蔵科学会誌、VOL.27 NO.3 2001〔総説〕、145〜156ページ
・ 甲第6号証:壇和弘 他2名、“数種野菜の呼吸におよぼす低酸素の影響”、日本食品低温保蔵学会誌、VOL.21 NO.1 1995〔報文〕、3〜8ページ
・ 甲第8号証:日本工業規格“プラスチック―フィルム及びシート―ガス透過度試験方法―第2部:等圧法”、JIS K 7126−2:2006、2006年
・ 甲第9号証:山下市二、“野菜のMA包装における機能性フィルムの利用”、日本食品科学工学会誌、第45巻 第12号、1998年12月、711〜718ページ

第5 当審の判断
1 特許権者に通知した取消理由について
(1)理由1(サポート要件)
ア 本件発明の課題について
本件特許明細書には、本件発明が解決しようとする課題について、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術の限界に鑑み、包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、当該レタスを含む青果物の褐変が抑制される低酸素濃度の環境においても、異臭を効果的に防止することが可能であるなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、所定濃度の二酸化炭素を導入することで、低酸素濃度の環境においてもレタスを含む青果物からの異臭が防止され、これを利用することで従来技術の限界を超えた高いレベルでのレタスを含む青果物の褐変の抑制及び異臭の防止の両立が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。」
そうすると、本件発明は「・・・当該レタスを含む青果物の褐変が抑制される低酸素濃度の環境においても、異臭を効果的に防止することが可能であるなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを」課題とし、そのために、「所定濃度の二酸化炭素を導入することで、低酸素濃度の環境においてもレタスを含む青果物からの異臭が防止され、これを利用することで従来技術の限界を超えた高いレベルでのレタスを含む青果物の褐変の抑制及び異臭の防止の両立」することとしたものである。

イ 官能評価について
(ア)発明の詳細な説明には、実施例、比較例の評価手法に関し、次の記載がある。
「【0059】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(開口部の有無)
赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製、商品名:エージレスシールチェックスプレー)を包装容器内に注入後、インパルスシーラーで加熱条件の目盛を3に設定し、約5mm幅でヒートシールして、紙(コクヨ PPC用紙 共用紙 A4)を押しあて、紙へのインクの転写の有無により、開口部の有無を確認した。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸170mm×235mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸170mm×235mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次に、袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(799cm2)/0.21(酸素の分圧)(二酸化炭素濃度・酸素濃度)
Dansensor製食品包装用O2/CO2分析計Check Mate 3により測定した。
(外観)
包装体の封を開けて、取り出した青果物を並べ、レタス断面を中心に全体的な褐変部分の面積を目視にてn=3で評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:褐変が全くなく問題ない。
A×:褐変はないが断面の一部が薄く赤くなっているがほとんど目立たない状態
B:褐変はあるが断面全体の10%以下で少し目立つ状態
B×:褐変はあるが断面全体の20%以下で目立つ状態
C:褐変はあるが断面全体の30%以下であり、かなり目立つが販売可能な状態
D:褐変はあるが断面全体の50%以下であり、著しく目立ち消費者により販売不可能な状態
(異臭)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:新鮮な状態で全く問題ない
B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態
C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態
D:更に臭いが強く消費者が気にする状態
E:更に臭いが強く販売不可能な状態
なお、本願では、CとDとEの評価の場合に異臭が発生したと評価し、DとEの場合に商品価値を失う異臭が発生したと評価する。」
また、各実施例(参考例)、比較例について、異臭、外観それぞれについてAからEまでのアルファベットが付されている。
(イ)特許権者は、令和4年3月22日に意見書を提出して、カットレタスという現実の流通で広く販売されている商品について、消費者の容認可否や販売可能性という客観性がある外部基準を採用したものである旨主張する。
(ウ)そこで、さらに検討を進める。
まず、「褐変」の評価は、その面積割合に着目したもので、これ自体は、十分客観的なものといえる。また、「褐変」の面積割合は、褐変の程度に直結するものである。したがって、その評価は、客観性が備わったものと考える。
次に、「臭い」については、単純に“よい”“わるい”“強い”“弱い”といったようなものではなく、「新鮮な状態」、「販売可能」な状態、「消費者が気にする」状態といった事項が評価の際に検討されている。そして、当該事項は、臭いに直結するものであって、包装された食品素材の商品価値の観点から定められたものと推察される。
また、食品に関する技術分野における評価手法として、官能評価は、よく用いられるものであるが、それは、一定の知識・経験を有した者がパネラーとなって実施されるのが通常である。そして、「カットレタス」についての前記「新鮮な状態」等の事項は、そのようなパネラーにとって共通した認識が持てる程度の、十分な客観性を備えたものと考える。
そうしてみると、発明の詳細な説明において実施例(参考例)、比較例に対して行われた官能評価は、「褐変」、「臭い」それぞれについてのものであって、そのいずれも十分客観性を持ったものであるから、そのような評価による結果を伴った実施例は、課題が解決できることを示す上で十分なものというべきである。

ウ 実施例2〜4にについて
(ア)この点についての令和4年1月18日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、次のものであった。
・ 実施例3では封止後144時間で外観評価がC、実施例4では封止後96時間以降で外観評価が、D又はEである(第4の2.(4))。
・ また、実施例2〜4は、酸素濃度が随所で15%を超えるものであるから、解決すべき課題において触れられた「レタスを含む青果物の褐変が抑制される低酸素濃度の環境」(本件特許明細書等の段落【0005】)を実現するものであるとはいえない(第4の2.(7))。
(イ)一方、特許権者は、令和4年3月22日に意見書を提出して、本件発明1、2、4〜7は、褐変の抑制の可否は、包装体の封止後72時間までを基準としたものである旨主張する(16ページ14行〜17ページ下から2行)。
(ウ)そこで、検討を進める。
まず、本件明細書には「本発明の包装体においては、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で保持した場合、72時間にわたって抑制することが好ましい。・・・この好ましい実施形態においては、・・・包装体の封止後144時間にわたって抑制することが特に好ましい。」(段落【0023】)との記載があり、上記特許権者の主張を裏付ける記載である。
次に、実施例2〜4は、包装体の封止後72時間までの外観の評価がA〜Bであり、酸素濃度も明らかに大気よりは低い値であるから、褐変が抑制された低酸素濃度の環境とみることができる。
したがって、実施例2〜4は、上記課題を解決するものであるといえる。
そうすると、発明特定事項たる酸素濃度、二酸化炭素濃度の値を実施例2〜4の値に基づいたものとすることも、何ら不合理なことではない。

エ 酸素透過度について
(ア)本件特許の発明の詳細な説明には、酸素透過度に関し、次の記載がある。
「【0030】
高分子フィルム
また、本発明に用いる包装容器において上述した好ましい酸素透過度を実現するためには、酸素透過度が所定値以下である高分子フィルムを用いて、包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下であることが好ましい。20℃、90%RHにおける酸素透過度が上記値以下である高分子フィルムを用いることによって、好ましい実施形態である、酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器を、比較的簡単な構成及び製法で、比較的低コストで製造することができる。
本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、15000mL/m2/atm/24hr以下であることがより好ましく、12000mL/m2/atm/24hr以下であることが特に好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度には特に下限は存在しないが、ガスバリアコーティング等を行っていない、通常の高分子フィルムを使う限りにおいて、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上となることが一般的である。
また、収納された青果物からの異臭の発生を一層効果的に防ぐ観点からは、高分子フィルムは、青果物の最低限度の呼吸が可能な程度の酸素透過率を有することが好ましい。この観点からは、高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、750mL/m2/atm/24hr以上であることが好ましく、900mL/m2/atm/24hr以上であることが特に好ましい。」
上記本件発明の課題を解決する実施例2〜4の「高分子フィルムを含んでなる包装容器の酸素透過度」の値(cc/m2/atm/day)は、「22℃、40%RH」の測定条件の下で「5、000」、「10、000」、「15、000」であることが示されている(段落【0065】)。
また、本件訂正により、本件各発明において、高分子フィルムを含んでなる「包装容器の酸素透過度」は、「20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である」と特定された。
(イ)そうすると、高分子フィルムの酸素透過度は、温度、湿度に応じて変化すると考えられるものの、発明の詳細な説明では高分子フィルムに開口部を設ける手段についても記載されており(段落【0034】)、ポリプロピレン、ポリエチレンを用いたものについていえば、「22℃、40%RH」と「20℃、90%RH」で値の違いは大きなものではなく、実施例2〜4での「22℃、40%RH」における「5、000」、「10、000」、「15、000」(いずれも単位は、cc/m2/atm/day)という値を根拠にして、「20℃、90%RH」における「5000mL/m2/atm/24hr以上、15000mL/m2/atm/24hr以下」という値の範囲であっても所与の課題を解決するといえる。
したがって、本件各発明は、“酸素透過度”の観点で、発明の詳細な説明に記載したものということができる。

オ 発明特定事項について
(ア)この点についての取消理由の概要は、本件各発明の発明特定事項には、包装容器の酸素透過度は含まれているものの、封入ガス組成及びカットレタスを含む成果物の呼吸の程度は含まれていない、というものであった。
(イ)本件発明1、7には、ガス組成に関し、次の発明特定事項が含まれている。
a 「包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり、内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であ」ること(本件発明1)。
b 「包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であ」ること(本件発明1)。
c 「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%であ」ること(本件発明1)。
d 「包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下」とすること(本件発明7)。
e 「包装体の封止後72時間における内部酸素濃度が5.69体積%以上18.5体積%以下」、とすること(本件発明7)。
本件特許の明細書等の段落【0012】には、高分子フィルムの酸素透過度に関連して、「酸素透過度が上記範囲にある包装容器を用いることで、内部ガス、とりわけ二酸化炭素の流出、外気、とりわけ酸素の流入等による内部ガス組成の変動が抑制、又は緩和され、レタスを含む青果物の鮮度保持に適した環境の維持が容易となる。」と記載されているから、包装容器が封止された後は、特定の酸素透過度を備えた高分子フィルムを介して、包装体内の二酸化炭素が大気に流出し、外気中の酸素が包装体に流入するものである。そして、前記a〜eの事項は、いわば二酸化炭素濃度、酸素濃度の履歴を示すものといえるものの、これも、褐変及び異臭の発生を抑制する上で十分意味があるものと理解できる。
そうすると、前記a〜eの事項は、直接的に封入ガス組成を表現するものではないが、特定の酸素透過度を備えた高分子フィルムと相まって、褐変及び異臭の発生を抑制する上で必要なガス組成を示したものであり、特に封入ガス組成が特定されていないことをもって、所与の課題を解決することができると認識できる範囲を超えるとまではいえない。
(ウ)また、レタスの種類、レタスのカットの仕方などは、カットレタスの収納後の呼吸に関係する要素であるとはいえるものの、本件各発明は、特定の範囲の酸素透過度の高分子フィルムを用いた包装体内部の中の酸素濃度、二酸化炭素濃度をそれぞれ封入後の特定の時点で特定の範囲内になるようにしたものであり、本件各発明の実施にあたってはレタスの種類やカットの仕方に加えて収納される分量なども適宜選定されることも勘案すれば、これらレタスの種類などが特定されないことをもって当業者が課題を解決することができると認識できる範囲を超えるとまではいえない。

カ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4〜7は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、本件請求項1、2、4〜7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

(2)理由2(明確性)について
本件訂正により、本件発明1において特定の時点での内部二酸化炭素濃度、内部酸素濃度が明らかになり、また、既に前記「(1)エ」で述べたことを踏まえると、本件発明1、2、4〜7は、第三者に不測の不利益をもたらすほど明確ではないとはいえない。
したがって、本件請求項1、2、4〜7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

(3)理由3(進歩性)について
ア 甲第1号証(特開平4−148643号公報。以下、各甲号証を「甲1」等という。)には、以下の記載がある。
(ア)「2. 特許請求の範囲
1.カットレタスの下部に位置する吸水性シートと、カットレタスおよび吸水性シートの外側を被覆する、適度な酸素透過性を有するフィルムにより構成される袋状体とからなるカットレタスの包装体であって、前記吸水性シートは、カットレタス側に位置する透水性シートと、透水性シートあるいは非透水性シートと、前記両シートの間に挟着された高吸水性樹脂とからなり、かつ前記袋状体はヒートシール性を有するカットレタスの包装体。
・・・
5.適度な酸素透過度性を有するフィルムの23℃における酸素透過度が、4000〜20,000cc/m2・atm・24hrsである請求項1乃至4のいずれかに記載のカットレタスの包装体。
6.外葉を除去後、芯とり、カット、洗浄・殺菌、脱水工程を経たカットレタスを計量後、カットレタス側に位置する透水性シートと、透水性シートあるいは非透水性シートと、前記両シートの間に挟着された高吸水性樹脂とからなる吸水性シートとともに、適度な酸素透過性を有し、かつヒートシール性を有するフィルムよりなる袋状包装体に入れ、減圧下または一旦減圧下に保持した後、窒素および/または炭酸ガスを包装体内に導入しガス置換包装した後、ヒートシール密封し、冷蔵することを特徴とするカットレタスの包装方法。」(1ページ左欄4行〜右欄19行)
(イ)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、カットレタスの包装体およびその包装方法に関し、さらに詳しくは、カットレタスの保存時の褐変、アルコール臭の発生、ドリップによる品質の低下、雑菌の繁殖を防止し得るカットレタスの包装体および包装方法に関する。」(2ページ左下欄末5行〜右下欄1行)
(ウ)「〔発明が解決しようとする課題〕
このようなカットレタスの加工・流通工程において、品質に影響する要因としては、○1(当審注:原文で○で囲まれた数字を、代用表記した。以下同様。)切断刃の切れ味、○2切断幅、○3洗浄と脱水、○4脱気(残存ガス量)、○5包材の種類と形態、○6保存温度(配送温度)等挙げられる。
これに対し、変質現象としては、○1褐変、○2異臭、○3腐敗、○4呼吸の増加、○5微生物の増殖等が挙げられる。
しかしながら、従来のような製造方法では、包装系内の酸素および炭酸ガス濃度は、カットレタスの呼吸量(保存温度)、包材の種類・形態(ガス透過度、表面積)、および残存ガス量に依存しているため、適正ガス濃度にするのに時間がかかる場合や、カットレタスに適した適正ガス濃度にならない場合等の問題があった。例えば、包装系内の酸素濃度が高く推移すると褐変の原因となり、低く推移した場合には、異臭の原因となる。」(3ページ左上欄4行〜右上欄1行)
(エ)「本発明の目的は、約10℃程度の現状可能な流通条件下で、カットレタスの品質の低下を防止し得るカットレタスの包装体、およびカットレタスの包装方法を提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的に鑑み、鋭意研究の結果、本発明者らは、外葉を除去後、芯とり、カット、洗浄・殺菌、脱水工程を経たカットレタスを計量後、吸水性シートとともに、適度な酸素透過性を有し、かつヒートシール性を有するフィルムよりなる袋状包装体に入れ、−旦減圧下に保持した後、窒素および/または炭酸ガスを包装体内に導入し、初期の残存酸素濃度が1%〜5%の範囲内となるようにガス置換包装した後、ヒートシール密封し、冷蔵することにより、カットレタスの鮮度を良好に保持し得ることを見出し、本発明に想到した。」〔3ページ右上欄末5行〜左下欄11行〕
(オ)「本発明において、適度な酸素透過度を有するフィルムとしては、通常の熱可塑性樹脂の厚みを変化させて、酸素透過度を調整したもの、1種以上のフィルムを貼合し酸素透過度を調整したもの等であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン酢ビコポリマー、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリブタジエン等を使用でき、フィルムの23℃における酸素透過度は4000〜10000cc/m2・atm・24hrsのものが望ましい。
酸素透過度が4000cc/m2・atm・24hrs未満であると、カットレタスを包装した際に、包装系内に流入してくる酸素量が少なくなり、カットレタスが窒息する場合や、嫌気的呼吸によりエタノールやアルデヒドを発生し、商品価値が低下する。酸素透過度が10000cc/m2・atm・24hrsを越えると、包装系内に流入してくる酸素量が多くなり、包装系内の酸素濃度が上がるため、カットレタスの呼吸量は低下せず、褐変の原因となる。」〔5ページ右下欄13行〜6ページ左上欄10行〕
カ 「従来のシール密封包装では、包装系内の酸素濃度低下はカットレタスの呼吸量に依存していたため、適正酸素濃度になるのに時間がかかり、その間にカットレタスは褐変する場合が多かったが、初期の残存酸素濃度が1%〜5%の範囲となるように窒素および/または炭酸ガス置換包装することにより包装体内の酸素濃度は、速やかに適正濃度まで低下し、その後、包装体外からの酸素透過量と、呼吸による酸素消費量のバランスが取れ、適正酸素濃度に維持されるため、褐変は発生しない。初期の残存酸素濃度が1%以下であると、保存中にカットレタスは嫌気的呼吸を行い、エタノールまたはアルデヒドを発生し、異臭の原因となる。また、初期の残存酸素濃度が5%以上であると、適正酸素濃度に低下するのに時間がかかり、その間にカットレタスが褐変する場合がある。」〔6ページ右上欄2行〜18行〕
(キ)「実施例2
坪量25g/m2の紙(メーテル(株)社製 MSP25)の上に高吸水性樹脂(住友精化(株)製 アクアキープ1OSHP)を20g/m2、バインダー(東レ(株)社製 ケミットR272S)を2g/m2、抗菌剤(鐘紡(株)製 バクテキラーBM501A)を1g/m2、脱臭剤(ラサ工業(株)製 KD211)を10g/m2の量で均一に散布し、この上をさらに前述の坪量25g/m2の紙で覆い、80℃の加熱エンボスロールで挟着一体化した。
このシートを330mm×330mmにカッティングし、不織布(クラレ(株)製 NA240JP2096)上に載せ、下部の不織布を原紙サイドに折り込んだ。さらに上部より不織布を給紙し、サイド部をギアロールにより120℃でヒートシールした。またエンド部はシルバーにより、130℃でヒートシールし、さらに全体を加熱エンボスロールを通し、80℃で挟着一体化した。一体化後、エンド部において340mm×340mmにカッティングし、上記高吸水性樹脂の層を上部2層、下部2層の積層材料の間に挟着した吸水性シートを作成した。
レタスは、芯を除去し、半分に分割後、その側面よりカッティングし、約5cm四方の形状とし、オゾン濃度5ppmの冷オゾン水(水温:約5℃)に約10分間浸漬し、洗浄・殺菌処理を行い、ザルで脱水した後、1kg計量後、上記吸水性シートをカゴ部分と水受け部分の間に設置した水切りカゴの中に入れた。
上記カットレタス入りの水切りカゴを無延伸ポリプロピレン(CPP)で作成したパウチ(東燃化学(株)社製 F409CEX、サイズ:0.025mm×500mm×500mm、23℃における酸素透過度:4700cc/m2・24hrs・atm)に入れ、250mmHgに一旦減圧し、その後、窒素・炭酸ガス混合ガス(1:1混合ガス)で、ガス置換包装を行った。ガス置換包装時の包装体内の残存酸素濃度は、4.2%であった。」(7ページ右上欄8行〜右下欄2行)
(ク)「

」(8ページ右上欄)

(ケ)「


」(8ページ左下欄)

(コ)「

」(8ページ右下欄)

(サ)「(発明の効果)
本発明は、 記詳記したように構成されているから、本発明のカットレタスの包装方法によれば、吸水性シートとともに、適度な酸素透過性を有し、かつヒートシール性を有するフィルムよりなる袋状包装体カットレタスを入れ、−旦減圧下に保持した後、窒素および/または炭酸ガスを包装体内に導入し、初期の残存酸素濃度が1%〜5%の範囲内となるようにガス置換包装した後、ヒートシール密封しているので、カットレタスの余剰水が除去され、雑菌の繁殖を抑制できるばかりでなく、保存時の褐変や異臭を抑制することができるという効果が奏され、産業上益するところ大である。」(9ページ右上欄5行〜17行)

イ 上記アの摘記事項、特にその実施例2に着目すると、甲1には、“カットレタス包装体”に関する次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されている。
「無延伸ポリプロピレン(CPP)で作成したパウチ(東燃化学(株)社製 F409CEX、サイズ:0.025mm×500mm×500mm、23℃における酸素透過度:4700cc/m2・24hrs・atm)に、カットレタス入りの水切りカゴを入れ、ガス置換後にヒートシール密封することでガス置換包装したカットレタス包装体であって、
10℃で保存した1〜6日目における包装体内のCO2ガス濃度が7.2〜29.2%であり、
10℃で保存した1〜6日目における包装体内のO2ガス濃度が0.5〜2.6%であり、
10℃で保存した1日目における包装体内のCO2ガス濃度が29.2%であり、
10℃で保存した3日目における包装体内のCO2ガス濃度が22.3%であり、
10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度が1.8%であり、
高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シートを水切りカゴの中に入れた、
カットレタス包装体。」
さらに、甲1には、“カットレタスの包装方法”に関する次の発明(以下「甲1発明B」という。)も記載されていると認めることができる。
「無延伸ポリプロピレン(CPP)で作成したパウチ(東燃化学(株)社製F409CEX、サイズ:0.025mm×500mm×500mm、23℃における酸素透過度:4700cc/m2・24hrs・atm)に、カットレタス及び高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シートが入れられた水切りカゴを入れ、ガス置換後にヒートシール密封することでガス置換包装し、10℃で保存した1日目における包装体内のCO2ガス濃度が29.2%、10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度が1.8%である工程を有するカットレタスの包装方法。」

ウ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明Aを対比する。
甲1発明Aの「パウチ」は、本件発明1の「包装容器」に相当し、以下同様に、「カットレタス」は「その全部がカットレタスで構成されている青果物」に、「カットレタス包装体」は「包装体」にそれぞれ相当する。
甲1発明Aの「無延伸ポリプロピレン(CPP)」は「パウチ」を構成するものであるから、「高分子フィルム」である限りにおいて、本件発明1の「延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルム」と一致する。
甲1発明Aの「パウチ」「に、カットレタス入りの水切りカゴを入れ」た態様は、本件発明1の「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納してなる」態様に相当する。
甲1発明Aの「10℃で保存した1〜6日目における包装体内のCO2ガス濃度が7.2〜29.2%であ」ることは、本件発明1の「包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で」「内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であ」ることに含まれる。
甲1発明Aの「10℃で保存した1〜6日目における包装体内のO2ガス濃度が0.5〜2.6%であ」ることは、本件発明1の「包装体の封止後10℃で保存した際封止後24から144時間のいずれかの時点で」「内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であ」る。
甲1発明Aの「10℃で保存した1日目における包装体内のCO2ガス濃度が29.2%であり、」ることは、本件発明1の「包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であ」ることに含まれる。
以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明Aの一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
高分子フィルムを含む包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなる包装体であって、包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり、内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であり、前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下である、上記包装体。
<相違点1>
高分子フィルムについて、本件発明1は、「延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる」のに対して、甲1発明Aは、「無延伸ポリプロピレン(CPP)」である点。
<相違点2>
包装容器について、本件発明1は、「前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる」ものであるのに対して、甲1発明Aのパウチは、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69〜18.5体積%である」のに対し、甲1発明Aは、「10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度が1.8%であ」る点。
<相違点4>
包装容器の酸素透過度について、本件発明1は、「20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である」のに対して、甲1発明Aは、「23℃における酸素透過度:4700cc/m2・24hrs・atm」である点。
<相違点5>
本件発明1の「包装体」が、「高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート」を備えるものであるか否かが明らかではないのに対し、甲1発明Aの「カットレタス包装体」は、「高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート」を備える点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、<相違点3>から検討を始める。
甲1発明Aは、本件発明1と同様に保存時の褐変や異臭を抑制することができるものであるが(前記ア(サ)参照)、保存時の褐変や異臭の抑制は、甲1発明Aでは、“高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート”を設けたことと相まって実現されたのに対し、本件発明1では、そのような吸水性シートを用いないで実現するものである点で、両者は、異なっている。
また、甲1発明を開示する甲1記載の【表1】(前記ア(ク)参照)からは、10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度がそれぞれ8.8%、7.1%であるものは、比較例1,比較例2とされ、褐変の生成が抑制できないものと位置づけられている。
そうすると、甲1発明Aにおいて、“高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート”に関連した構成を採用するのでなく、10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度に着目してその値を「5.69〜18.5体積%」に高めるような構成とすることは、当業者が容易に着想し得たといえる事柄ではない。さらに、他の証拠方法を参酌しても、甲1発明Aにおいて10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度を「5.69〜18.5体積%」にすることが示唆されるものではない。
すなわち、甲1発明Aにおいて相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
そして、本件発明1は、相違点3に係る発明特定事項を備えたことをもって、所与の課題を解決したと評価し得るものである。
そうすると、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明2、4〜6について
本件発明2、4〜6は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含み他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明Bを対比する。
甲1発明Bの「パウチ」は、本件発明7の「包装容器」に相当する。
甲1発明Bの「無延伸ポリプロピレン(CPP)」は「パウチ」を構成するものであるから、「高分子フィルム」であるという点で、本件発明7の「延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルム」と一致する。
甲1発明Bの「パウチ」に「カットレタス及び高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シートが入れられた水切りカゴを入れ」ることと、本件発明7の「包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている成果物を収納する工程」は、「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納する工程」という限りで一致する。
甲1発明Bの「ガス置換後にヒートシール密封することでガス置換包装」することは、本件発明7の「該包装容器を封止する工程」に相当する。
甲1発明Bの「10℃で保存した1日目における包装体内のCO2ガス濃度が29.2%であ」ることは、本件発明7の「該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下とする」ことに含まれる。
甲1発明Bの「カットレタスの包装方法」は、本件発明7の「青果物の鮮度保持方法」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明7と甲1発明Bの一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
高分子フィルムを含む包装容器内にカットレタスで構成されている青果物を収納する工程、該包装容器を封止する工程、及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下、とする工程を有する、青果物の鮮度保持方法。
<相違点A>
高分子フィルムについて、本件発明7は、「延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる」のに対して、甲1発明Bは、「無延伸ポリプロピレン(CPP)」である点。
<相違点B>
包装容器について、本件発明7は、「前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してな」るものであるのに対して、甲1発明Bのパウチは、そのように特定されていない点。
<相違点C>
本件発明7は、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が5.69体積%〜18.5体積%である」のに対し、甲1発明Bは、「10℃で保存した3日目における包装体内のO2ガス濃度が1.8%であ」る点。
<相違点D>
包装容器の酸素透過度について、本件発明7は、「20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である」のに対して、甲1発明Bは、「23℃における酸素透過度:4700cc/m2・24hrs・atm」である点。
<相違点E>
「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納する工程」について、本件発明7は、カットレタスとともに「高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート」も収納されるか、明らかではないのに対し、甲1発明Bは、「包装容器内にカットレタスを含む青果物を収納する工程」において、カットレタスとともに「高吸水性樹脂と抗菌剤を一体化したシートを含む吸水性シート」も収納される点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、<相違点C>から検討を始める。
この相違点Cは、本件発明1と甲1発明Aを対比した際の相違点3と同様のものであって、既に前記「ウ(イ)」で述べたと同様の判断が成り立つものである。
そうすると、甲1発明Bにおいて相違点Cに係る本件発明7の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4〜7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
したがって、請求項1、2、4〜7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。

2 特許権者に通知しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、本件各発明が実施可能でない旨指摘する(「(4−3)申立理由2(実施可能要件違反)」)。
しかし、既に前記「1(1)」で述べたように、本件発明1、2、4〜7は、所与の課題を解決することが確認された実施例2〜4の開示に照らして当業者が課題を解決することができたと認識することができる範囲のものである。
そして、本件明細書等には、実施例2〜4という具体的な構成の開示があり、これらの開示を踏まえれば、当業者は、本件各発明を実施することができる。
したがって、本件請求項1、2、4〜7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、2、4〜7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできず、また他に本件請求項1、2、4〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項3は、本件訂正により削除され、本件請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】レタスを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及びレタスを含む青果物の鮮度保持方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、レタスを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体に関し、より具体的には、高分子フィルムを有する包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなり、該レタスを含む青果物の褐変及び異臭の発生を有効に抑制することができる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルム基材に気体透過部を設けて、この気体透過部から酸素、二酸化炭素、水蒸気等の気体を透過させる気体透過性フィルムは、食品分野において、青果物、特にカット野菜等の生鮮野菜の包装材として好適に使用されている。このような気体透過性フィルムを用いて、例えば野菜、果物等を包装すると、内容物である野菜、果物の鮮度保持に適した酸素濃度、例えば1から4%程度の酸素濃度、を保つことで、比較的長い期間にわたり鮮度を保持して内容物を保管することができることが知られている。
例えば特許文献1には、青果物を密封した高分子フィルムよりなる青果物入り包装体において、前記包装体が(A)有孔高分子フィルムと(B)無孔高分子フィルムにより構成されており、前記(A)、(B)の少なくとも一方のフィルム特性が25℃、相対湿度75%の条件下で測定した水蒸気透過率が前記包装体の有効表面積を基準にして50〜800gm−2d−1であり、前記(A)の開孔面積比率は前記包装体の有効表面積に対し3×10−6〜7×10−4%であることを特徴とする青果物入り包装体が記載されており、より具体的には、(A)有孔高分子フィルムとして、厚さ35μmの延伸ポリプロピレンからなり、平均孔径30μmの孔を95個あけたもの、平均孔径が60μmの孔を9個開けたもの等が使用されている。
【0003】
しかしながら、一部の青果物については、上記技術を適用しても変色を十分に抑制することができず、その改善が望まれていた。例えばレタスは褐変(褐色又は赤色に変色する現象)を生じ易く、特に切断面を多く有するカットレタスにおいて、その傾向が顕著である。カットレタスは、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、またレタスがサラダ用などとして最も一般的な野菜の一つであることから、高い経済的価値を有する。この様な背景から、褐変、異臭等を長期間にわたって抑制できる等、レタスを含む青果物の鮮度保持が可能な技術が提案されており、例えば特許文献2には、1袋/レタス1Kg当たりの酸素透過量が所定の上限値と下限値の間の値であるフィルムからなる袋にカットレタスを入れ、包装時に酸素をレタス1Kg当たり所定の上限値と下限値の間の量充填する技術が記載されている。しかしながら上記技術によっても、依然としてカットレタスの褐変の抑制と臭気の防止とを長期間にわたって両立させることは、必ずしも容易ではなかった。例えば、酸素透過量及び酸素充填量をより低いものとし、袋内を低酸素濃度の環境とすれば、褐変が抑制されることは知られていたが、その場合無酸素呼吸に伴う異臭が生ずることが避けがたく、従来技術ではその褐変の抑制と異臭の防止との両立は必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5−168400号公報
【特許文献2】 特開平8−228674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術の限界に鑑み、包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、当該レタスを含む青果物の褐変が抑制される低酸素濃度の環境においても、異臭を効果的に防止することが可能であるなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、所定濃度の二酸化炭素を導入することで、低酸素濃度の環境においてもレタスを含む青果物からの異臭が防止され、これを利用することで従来技術の限界を超えた高いレベルでのレタスを含む青果物の褐変の抑制及び異臭の防止の両立が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
[1]
高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、内部二酸化炭素濃度が1〜98体積%であり、内部酸素濃度が1〜19体積%である、上記包装体、である。
【0007】
以下、[2]から[12]は、それぞれ本発明の一態様又は好ましい実施形態の一つである。
[2]
前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下である、[1]に記載の包装体。
[3]
前記レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で72時間にわたって抑制する、[1]又は[2]に記載の包装体。
[4]
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が、6〜90体積%である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の包装体。
[5]
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、19体積%以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の包装体。
[6]
前記包装容器が、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さない、[1]から[5]のいずれか一項に記載の包装体。
[7]
前記高分子フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の包装体。
[8]
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、[1]から[7]のいずれか一項に記載の包装体。
[9]
前記レタスがカットレタスである、[1]から[8]のいずれか一項に記載の包装体。
[10]
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、[1]から[9]のいずれか一項に記載の包装体。
[11]
高分子フィルムを含んでなり、酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内にレタスを含む青果物を収納する工程、及び該包装容器内の二酸化炭素濃度を50体積%以上とする工程、及び該包装容器を封止する工程、を有する、青果物の鮮度保持方法。
[12]
前記包装容器内の二酸化炭素濃度を50体積%以上とする工程において、酸素濃度を20体積%以下とする、[13]に記載の、青果物の鮮度保持方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、包装体内部に所定濃度の二酸化炭素を導入することで、レタスの褐変の抑制及び異臭の防止を従来技術の限界を超えた高いレベルで両立し、レタスを含む青果物の鮮度を有効に抑制することができるという、実用上高い価値を有する包装体、及び青果物の鮮度保持方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、内部二酸化炭素濃度が1〜98体積%である、上記包装体である。すなわち、本発明の包装体は、少なくとも、包装容器と、そこに収納された青果物と、を有するものである。
【0010】
包装容器
本発明の包装体を構成する包装容器は、高分子フィルムを含んでなるものである。ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
【0011】
包装容器がいわゆる包装袋である実施形態においては、例えば、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の高分子フィルムを折り重ねた状態で、3辺または2辺を熱シールにより融着させる等して包装袋を形成することができる。残る1辺は、青果物等の内容物を包装袋内に配置した後、同様に熱シールにより融着させるなどして封止することができる。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
【0012】
本発明で用いる包装容器は、以上説明した様に高分子フィルムを含んでなるものであり、その酸素透過度には特に限定は無いが、酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器を用いることが望ましい。
酸素透過度が上記範囲にある包装容器を用いることで、内部ガス、とりわけ二酸化炭素の流出、外気、とりわけ酸素の流入等による内部ガス組成の変動が抑制、又は緩和され、レタスを含む青果物の鮮度保持に適した環境の維持が容易となる。包装容器の酸素透過度は、15000mL/m2/atm/24hr以下であることがより好ましく、12000mL/m2/atm/24hr以下であることが特に好ましい。
包装容器の酸素透過度には特に下限は存在しないが、レタスを含む青果物にある程度の呼吸を許容し、異臭の発生を一層効果的に防止する観点からは、500mL/m2/atm/24hr以上であることが好ましく、800mL/m2/atm/24hr以上であることが特に好ましい。また、コスト等を考慮して、通常入手可能な高分子フィルムを用い、比較的単純な構造で包装容器を構成する限り、その酸素透過度は、500mL/m2/atm/24hr以上となることが一般的である。
【0013】
包装容器の酸素透過度は、例えば以下の方法により測定することができる。
まず、次の方法で内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になれば袋内のガスを連通部からほぼすべて排出する。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールする。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置する。
次にサンプリング針チューブで約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出する。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(2×a×b×cm2)/酸素の分圧(0.21atm)
包装容器の酸素透過度は、包装容器を構成する高分子フィルムの材質、厚み、層構成、コーティングの有無、種類、適用面積などを適宜選択、調整することで、所望の範囲に調整することができる。高分子フィルムの詳細については、後述する。
また、高分子フィルムに開口部を設ける(或いは設けない)ことによっても、包装容器の酸素透過度を適宜調整することができる。酸素透過度は、この開口部の、大きさ、形状、個数によっても適宜調整することができる。開口部の詳細についても、後述する。
【0014】
青果物
本発明の包装体は、上記包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる。ここで、同青果物がレタスを「含む」とは、当該青果物の全部がレタスで構成されている場合、及び当該青果物の一部がレタスで構成されている場合、の双方を包含する趣旨である。従って、包装容器内に収納される青果物は、レタス以外の野菜、果物等を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。更には、レタスを含んでいる限りにおいては、青果物以外の成分、例えば青果物以外の食品、調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の包装体を構成する(包装容器に収納される)「レタス」は、キク科アキノノゲシ属チシャ種に属する野菜一般を包含する概念であり、「レタス」の名称そのもので流通する野菜には限定されない。
すなわち、ここでいう「レタス」は、サンチュなどに代表される、掻きチシャまたはカッティングレタスと呼ばれるもので茎から葉を掻き採るタイプ;ロメインレタスなどに代表される、葉がほとんど巻かず立っている立ちチシャと呼ばれるタイプ;サニーレタスやグリーンリーフなどに代表される、非結球のリーフレタス(葉チシャ);及び一般的にレタスと呼ばれるものに代表される、結球する玉レタス(玉チシャ);の全てを包含する概念である。
ここでいう「レタス」の好ましい具体例としては、レタス(玉レタス)、グリーンリーフ、ロメインレタス(コスレタス)、サニーレタス、シルクレタス、ピンクロウスター、サラダ菜、ブーケレタス、グリーンオークリーフ(サラノバレタス)、フリルレタス、(チマ)サンチュ、茎レタス(ステムレタス)等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0016】
本発明において包装容器内に、レタスとともに収納することができるレタス以外の青果物には特に制限は無く、レタスとともに食用に供され得る、非加熱又は加熱の青果物を適宜収納することができる。その様な青果物の具体例としては、バナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、アスパラガスのような葉茎菜類、花卉または苗を挙げることができるが、これらには限定されない。酸素濃度を制御し、これにより保持するという本実施形態の作用からは、実質的に呼吸を行っている形態の青果物の鮮度保持に特に有効である。
【0017】
本発明において包装容器に収納され鮮度保持されるレタスを含む青果物の形態にも特に制限は無い。従って、レタスを含む青果物は、収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜(カットレタス)であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
なお、収納され鮮度保持されるレタスがカットされたレタスの場合には、カット、洗浄、脱水および/または乾燥処理を行い、適正な水分量に調整されていることが好ましい。より具体的には、例えばカットされたレタスを「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量が20〜30%未満の範囲にすることが、臭気発生の防止および褐変等外観の劣化の防止のバランスの観点から特に好ましい。
【0018】
カット野菜は、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、高い経済的価値を有する。カットレタスは、カット野菜の代表的なものであり、そのままサラダ等として簡便に食事に供することができるので、特に高い経済的価値を有する。一方、野菜、特にレタスはカットされることにより呼吸作用や代謝反応が急激に活発化し、品質が急激に低下する傾向がある。本実施形態は、この様なカットレタスの鮮度保持に有効に用いることができるので、特に高い経済的価値を有する。
【0019】
レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)の種類及び形態により、鮮度保持に好ましい二酸化炭素濃度は、本発明の範囲内である程度異なり、それに伴い好ましい二酸化炭素透過度を間接的に規定する酸素透過度、並びにその様な酸素透過度を与える高分子フィルムの態様も異なるが、これらを適切に設定することで、上記レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)のいずれについても、本発明によって有効に鮮度保持を行うことができる。
【0020】
包装体
本発明の包装体の、内部二酸化炭素酸素濃度は1〜98体積%であり、内部酸素濃度は1〜19体積%である。内部二酸化炭素酸素濃度が1〜98体積%であることによって、褐変の抑制に適した低酸素濃度環境にある包装容器内に収容された青果物中のレタスからの異臭の発生を有効に防止し、レタスを含む青果物の褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立することができる。
包装体内の酸素濃度を所定範囲内に調整することで、包装体内に収納された青果物の褐変等の外観の劣化を抑制し得ることは、従来から知られていた。しかし、酸素濃度を所定値以下とすると、青果物の無酸素呼吸により、アルコール臭等の異臭が発生するという問題があった。青果物のなかでもレタスは特に褐変が生じ易く、その抑制のための低酸素濃度の要請が強いため、レタスを含む青果物の鮮度保持においては、褐変の抑制と異臭の防止とを両立させることは、従来特に困難であった。
本発明においては、レタスを含む青果物を収納した包装体において、二酸化炭素を導入し、内部二酸化炭素濃度を所定範囲内とすることで、褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えて高いレベルで両立させるという、驚くべき効果が実現される。
本発明において、内部二酸化炭素酸素濃度が所定範囲内であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスの褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、通常呼吸の生成物である二酸化炭素量を過剰とすることで、レタスを含む青果物の呼吸に関する平衡状態に何らかの影響を与え得ることと、なんらかの関係があるものと推定される。
【0021】
包装体の内部二酸化炭素濃度は3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。
包装体の内部二酸化炭素濃度は、50体積%以下であることが、より好ましい。
包装体の内部二酸化炭素濃度は、包装直後の二酸化炭素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、50体積%以上とすることが好ましく、70体積%以上とすることがより好ましく、90体積%以上とすることが特に好ましい。
また、包装体の内部二酸化炭素濃度は、包装体外に流出する二酸化炭素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器のガス透過度を調整することで、包装体外に流出する二酸化炭素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/または包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することが可能である。
包装容器内の酸素濃度および二酸化炭素濃度は、例えば、Dansensor製食品包装用O2/CO2分析計Check Mate 3により測定することができる。
【0022】
包装体の内部酸素濃度の上限は19体積%であるが、レタスを含む青果物の褐変等の外観の劣化を一層有効に抑制するなどの観点からは、18.5体積%以下であることが、より好ましい。
包装体の内部酸素濃度の下限は1体積%であるが、レタスを含む青果物の最低限の呼吸を許容し、無酸素呼吸による異臭を一層効果的に抑制する観点等から、1.2体積%以上であることが好ましく、1.3体積%以上であることが、より好ましい。
包装体の内部酸素濃度は、包装直後の酸素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を、19体積%以下とすることが好ましい。
また、包装体の内部酸素濃度は、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器の酸素透過度を調整することで、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/又は包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することが可能である。
【0023】
本発明の包装体においては、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で保持した場合、72時間にわたって抑制することが好ましい。
この好ましい実施形態は、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後72時間にわたって抑制することで、流通上十分と考えられる長期間にわたって、レタスを含む青果物の鮮度を高いレベルで維持することができるので、実用上、経済上高い価値を有する。
この好ましい実施形態においては、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で保持した場合、96時間にわたって抑制することがより好ましく、包装体の封止後120時間にわたって抑制することが更に好ましく、包装体の封止後144時間にわたって抑制することが特に好ましい。
【0024】
本発明の包装体の、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、6〜90体積%であることが好ましい。封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が6〜90体積%であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスの褐変の抑制と異臭の防止とを、長期間にわたって一層高いレベルで両立することができる。
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は6.5〜90体積%であることがより好ましく、6.8〜89体積%であることが特に好ましい。
ここで、「包装体の封止後」とは、包装容器内にレタスを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してからの経過時間をいう。すなわち、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後」とは、包装容器内にレタスを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してから10℃の条件下で72時間保持した直後の状態をいう。
【0025】
本発明の包装体においては、内部二酸化炭素濃度が、大気の二酸化炭素濃度よりも高いいため、外部への二酸化炭素の流出により、内部二酸化炭素濃度が経時的に減少する場合が多い。従って、封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が6体積%以上である本実施形態においては、封止後0から72時間にわたって、内部二酸化炭素濃度が6体積%以上である可能性が高い。この様な二酸化炭素濃度の履歴は、青果物中のレタスの褐変及び異臭の発生を一層有効に抑制するうえで、特に好ましい。
【0026】
包装体封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、包装直後の二酸化炭素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、50体積%以上とすることが好ましい。
また、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、包装体外に流出する二酸化炭素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器のガス透過度を調整することで、包装体外に流出する二酸化炭素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/または包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することが可能である。
【0027】
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は19体積%以下であることが好ましい。封止後10℃で72時保持した後間における内部酸素濃度が19体積%以下であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスからの異臭の発生が長期間にわたって一層有効に抑制される。
本発明の包装体の、封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は18体積%以下であることがより好ましく、17体積%以下であることが特に好ましい。
本発明の包装体の、封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましく、3体積%以上であることが特に好ましい。
【0028】
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、包装直後の酸素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を、20体積%以下とすることが好ましい。
また、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器の酸素透過度を調整することで、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/又は包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することが可能である。
【0029】
上述した所望の内部二酸化炭素濃度、及び内部酸素濃度を実現する観点から、包装容器内には、更に窒素等の他のガスを封入してもよい。包装容器の封止時に窒素等の他のガスをともに封入することで、内部二酸化炭素濃度、及び内部酸素濃度を独立に調整することができるからである。
【0030】
高分子フィルム
また、本発明に用いる包装容器において上述した好ましい酸素透過度を実現するためには、酸素透過度が所定値以下である高分子フィルムを用いて、包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下であることが好ましい。20℃、90%RHにおける酸素透過度が上記値以下である高分子フィルムを用いることによって、好ましい実施形態である、酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、20000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器を、比較的簡単な構成及び製法で、比較的低コストで製造することができる。
本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、15000mL/m2//atm/24hr以下であることがより好ましく、12000mL/m2/atm/24hr以下であることが特に好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度には特に下限は存在しないが、ガスバリアコーティング等を行っていない、通常の高分子フィルムを使う限りにおいて、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上となることが一般的である。
また、収納された青果物からの異臭の発生を一層効果的に防ぐ観点からは、高分子フィルムは、青果物の最低限度の呼吸が可能な程度の酸素透過率を有することが好ましい。この観点からは、高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、750mL/m2/atm/24hr以上であることが好ましく、900mL/m2/atm/24hr以上であることが特に好ましい。
【0031】
本発明で用いる高分子フィルムの酸素透過度の測定方法は、例えば包装容器の酸素透過度の測定方法に関して上記で説明した方法と同様の方法により、測定することができる。
【0032】
高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、高分子フィルムの酸素透過度を適宜調節することができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの場合には、厚みを10μm以上とすることで、20℃、90%RHにおける酸素透過度を、5000mL/m2/atm/24hr以下とすることができるので好ましい。機械的強度等も併せて考慮すれば、高分子フィルムの厚みは、15〜45μmであることがより好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0033】
上述の様に、高分子フィルムの酸素透過度は、高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜線多雨することで、調節することができるので、必ずしも、酸素透過度の調節のために高分子フィルムに開口部を設けることを要しない。特に、本発明の好ましい実施形態における、20℃、90%RHにおける20000mL/m2/24hr以下の酸素透過度のうち比較的低い酸素透過度は、高分子フィルムに開口部を設けることなしに実現することができる。
高分子フィルムに開口部を設ける必要が無ければ、製造プロセスがより簡便、低コストなものとなり、また開口部の大きさ、形状等を精密に制御することも不要となる。
高分子フィルム中に開口部が存在しないことは、例えば、包装容器を構成する高分子フィルムが、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さないことにより、確認することができる。
【0034】
一方で、本発明の一実施形態においては、20℃、90%RHにおける20000mL/m2/24hr以下の酸素透過度のうち比較的高い酸素透過度を実現する必要がある場合や、厚い高分子フィルムや、酸素透過度の低い高分子素材を使用する必要がある場合等に、所望の酸素透過度を実現するために、高分子フィルムに設けた開口部を併用しても良い。開口部の形状には特に限定は無く、円形、略円形であってもよく、スリット状であってもよい。円形、略円形の開口部は、加工が容易である点等において好ましく、スリット状での開口部は、異物の侵入を有効に防止できる点等において好ましい。
個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、高分子フィルムの酸素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば2mmの長さのスリット状の開口部であって、閉じた状態では光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)にて倍率4倍による観察では貫通口としての幅は視認することができないものを設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して1つ存在するごとに約1000mL/m2/24hr/atmの酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。
【0035】
本実施形態で用いる高分子フィルムの厚みには特に制限は無く、好適な酸素透過度、包装容器を形成した際の可撓性、強度、透明性、経済性、開口部によってもたらされる酸素透過量、開口部の形成の際の精度や容易性、等の観点から、高分子フィルムを形成する材料との関係において適宜好適な厚みを選択すればよい。典型的には、高分子フィルムの厚みは、10から50μmであることが好ましく、15〜45μmであることがより好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0036】
高分子フィルムの材質には、特に制限は無いが、従来の青果物包装用のフィルムに用いられる高分子を適宜使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、例えば、セロハン等の天然高分子を用いることもできる。更にこれらのうちのいずれかの材質を単独で用いても良く、これらの複数をブレンドして、及び/又はラミネートして用いてもよい。
【0037】
加工の容易さやコストの観点からは、上記高分子フィルムの材質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0038】
〈プロピレン系重合体〉
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0039】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0040】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890〜0.930g/cm3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTMD1238荷重2160g、温度230℃)は、0.5〜60g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましく、1〜5g/10分がさらに好ましい。
【0041】
〈エチレン系重合体〉
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
【0042】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0043】
前記エチレン系重合体の密度は0.910〜0.940g/cm3が好ましく、0.920〜0.930g/cm3がより好ましい。該密度が0.910g/cm3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm3以下であることにより、加工性および透明性が向上する
【0044】
なお、ブレンド、及び/又はラミネートは、上記の高分子のうちのいずれか同士のブレンド、及び/又はラミネートであってもよく、また上記の高分子のうちのいずれかと、高分子以外の材料とのブレンド、及び/又はラミネートであってもよい。すなわち、高分子フィルムは、高分子以外の素材、例えば耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでいてもよいし、高分子フィルムと金属箔、紙、不織布等とのラミネートであってもよい。
【0045】
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムは、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよい。
機械的強度等の観点からは、各種高分子の延伸フィルムを好適に用いることができる。特に、プロピレン系重合体を用いた延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)は、機械的強度、透明性、耐熱性等に優れるため、本発明に用いる包装容器において、特に好ましく使用することができる。
また、エチレン系重合体を用いたフィルム(ポリエチレン系フィルム)も、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよいが、ヒートシール性等の観点から、無延伸のものを、特に好ましく使用することができる。
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムとして特に好適なものの例として、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を挙げることができる。
【0046】
〈延伸ポリプロピレンフィルム〉
本発明において好ましく用いられる延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
〈ポリエチレン系フィルム〉
本発明において好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。ポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
【0047】
〈延伸フィルム〉
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
【0048】
〈延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体〉
本発明において好ましく用いられる延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
【0049】
また、これらの高分子フィルムは、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002〜0.5g/m2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001〜3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
【0050】
透明性、可撓性、コスト等の観点からは、従来当該技術分野において広く用いられていた延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を高分子フィルムとして用いることが特に好ましい。これらのフィルムは一般にヒートシール性に優れるので、包装容器の製造において生産性が良好である。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
【0051】
なお、ヒートシールに必ずしも適さない高分子フィルムを用いる場合には、該高分子フィルムの全部又は一部にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで形成すればよい。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを好適な高分子フィルムとして用いることができる。
【0052】
包装体の製造方法、及び鮮度保持方法
レタスを含む青果物を本発明の包装容器に収納し、その内部二酸化炭素濃度を適宜調整することで、本発明の包装体を製造することができ、また本発明の一実施形態である青果物の鮮度保持方法を実施することができる。
以下、本発明の包装体の製造方法を、包装容器内に収納するレタスを含む青果物がカットレタスである場合を例に説明する。
【0053】
まず前処理工程において、手作業で外葉を取り除き、2〜4分割し、芯を取り除くなどしたレタスをコンベヤーに供給する。コンベヤーで搬送されたレタスは、スライサーでカットされ、冷水を満たした洗浄槽で冷却を兼ねて「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸で洗浄され、水切り後遠心脱水機等で脱水される。脱水されたカットレタスは、本実施形態で用いる高分子フィルムを含んでなる包装容器(一辺が封止されていないもの)に詰められ、計量後包装容器が封止され、カットレタスの鮮度保持用包装体が製造される。
【0054】
カットレタスの鮮度保持の観点からは、切れ味の良い刃を用い、切断面に生ずる傷をより少なくすることが好ましい。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、カットレタスに当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、カットレタスをよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後にカットレタス表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。
これは水分を適正にすることで余分に付着した微小水滴中での雑菌の増殖が抑制できるからである。より具体的には、例えば「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量を20%以上30%未満の範囲とすることが好ましい。洗浄後静置して水切りを行っても、カットレタス表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去し、ドライエアをあてて乾燥することが有効である。
【0055】
なお、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体の製造にあたっては、レタスを含む青果物の収納後に、所定の組成のガス、例えば二酸化炭素濃度50体積%以上のガスを導入してから封止を行ってもよい。所定の組成のガスの導入を行うことにより、包装容器の所望の二酸化炭素濃度に速やかに到達することが可能となり、鮮度保持に有利である。
上記実施形態において導入されるガスの二酸化炭素濃度は、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが特に好ましい。上記所定の組成のガスの酸素濃度には特に制限は無いが、レタスを含む青果物の外観保持等に有利であることから、15体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることが更に好ましく、1体積%以下であることが一層好ましく、0.5体積%以下であることが特に好ましい。上記実施形態において導入されるガスのそれ以外の成分には特に限定は無いが、入手のし易さや、人体、青果物等への影響の小ささなどの観点から、窒素を用いることが好ましい。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点から、包装容器の封止前、又は封止の際に脱気を行ってもよい。
【0056】
本発明の包装体は、包装容器中にレタスを含む青果物のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0057】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0059】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(開口部の有無)
赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製、商品名:エージレスシールチェックスプレー)を包装容器内に注入後、インパルスシーラーで加熱条件の目盛を3に設定し、約5mm幅でヒートシールして、紙(コクヨ PPC用紙 共用紙 A4)を押しあて、紙へのインクの転写の有無により、開口部の有無を確認した。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸170mm×235mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸170mm×235mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次に、袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(799cm2)/0.21(酸素の分圧) (二酸化炭素濃度・酸素濃度)
Dansensor製食品包装用O2/CO2分析計Check Mate 3により測定した。
(外観)
包装体の封を開けて、取り出した青果物を並べ、レタス断面を中心に全体的な褐変部分の面積を目視にてn=3で評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:褐変が全くなく問題ない。
A×:褐変はないが断面の一部が薄く赤くなっているがほとんど目立たない状態
B:褐変はあるが断面全体の10%以下で少し目立つ状態
B×:褐変はあるが断面全体の20%以下で目立つ状態
C:褐変はあるが断面全体の30%以下であり、かなり目立つが販売可能な状態
D:褐変はあるが断面全体の50%以下であり、著しく目立ち消費者により販売不可能な状態
(異臭)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:新鮮な状態で全く問題ない
B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態
C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態
D:更に臭いが強く消費者が気にする状態
E:更に臭いが強く販売不可能な状態
なお、本願では、CとDとEの評価の場合に異臭が発生したと評価し、DとEの場合に商品価値を失う異臭が発生したと評価する。
【0060】
(比較例1)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム2枚を重ね合わせて、3辺をヒートシールで封止のうえ切断して、1辺が未封止の包装袋(170mm×235mm、内寸の面積:799cm2)を作製した。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、1000mL/m2/atm/24hrであった。
包装容器にカットレタス78gを封入し、窒素充填後、ヒートシールして包装体を作製した。該包装体を10℃で保管し、1日毎に内部酸素濃度、及び内部二酸化炭素濃度を測定し、カットレタスの異臭及び外観を評価した。
結果を表1に示す。
【0061】
(参考例1)
窒素に代えて、二酸化炭素を封入したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに代えて厚さ30μmのポリエチレンフィルムを使用したことを除くほか、参考例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、5000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を1個設けたことを除くほか、参考例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、10000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を3個設けたことを除くほか、参考例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、15000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を10個設けたことを除くほか、参考例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、30000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。

【0066】
本発明所定の内部二酸化炭素濃度及び内部酸素濃度の条件を満たす、各実施例の包装体においては、封止後少なくとも72時間にわたって、カットレタスの褐変及び異臭の発生が有効に抑制され、異臭については144時間までその発生が抑制された。一方、比較例1においては、96時間経過時に異臭が発生し、比較例2においては、72時間経過時に外観が悪化し、いずれもカットレタスの商品価値が一部損なわれた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の包装体は、高い経済的価値を有するカットレタス等のレタスを含む青果物の褐変の抑制及び異臭の防止を、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立し、鮮度保持に特に有効であるなど、実用上高い価値を有するものであり、食品加工、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなる包装体であって、包装体の封止後10℃で保持した際封止後24から144時間のいずれかの時点で、内部二酸化炭素濃度が1.0〜40.3体積%であり、内部酸素濃度が1.31〜20.2体積%であり、
前記包装体の封止後10℃で24時間保持した後の内部二酸化炭素濃度が23.3体積%以上40.3体積%以下であり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、5.69〜18.5体積%であり、
前記包装容器の酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である、上記包装体。
【請求項2】
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が、3.0〜87.8体積%である、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記包装容器が、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さない、請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項5】
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項7】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなり、酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、5000mL/m2/atm/24hr以上15000mL/m2/atm/24hr以下である包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納する工程、該包装容器を封止する工程、及び該包装容器の封止後24時間における内部二酸化炭素濃度を23.3体積%以上40.3体積%以下、包装体の封止後72時間における内部酸素濃度が、5.69体積%以上18.5体積%以下、とする工程を有する、青果物の鮮度保持方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-07-22 
出願番号 P2017-069121
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 536- YAA (B65D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 久保 克彦
藤井 眞吾
登録日 2020-04-22 
登録番号 6694846
権利者 三井化学株式会社 三井化学東セロ株式会社
発明の名称 レタスを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及びレタスを含む青果物の鮮度保持方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
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代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
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