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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1389362
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-20 
確定日 2022-08-01 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6695822号発明「青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及び青果物の鮮度保持方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6695822号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕について訂正することを認める。 特許第6695822号の請求項1、4〜6に係る特許を維持する。 特許第6695822号の請求項2及び3に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6695822号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成29年3月30日を出願日とする特許出願(以下、「本件特許出願」という。)であり、令和2年4月24日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。
令和2年11月20日 : 特許異議申立人森田弘潤(以下「申立人」という。)による請求項1〜6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年3月5日付け : 取消理由の通知
令和3年5月7日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年6月15日付け: 訂正拒絶理由の通知
令和3年7月13日 : 特許権者による意見書の提出
令和3年12月17日 : 申立人による意見書の提出
令和4年1月12日付け: 取消理由の通知(決定の予告)
令和4年3月18日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

上記令和4年3月18日の訂正請求書による訂正の請求がされたから、令和3年5月7日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正
1 訂正の内容
令和4年3月18日の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6695822号の明細書、及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求める、というものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「以下であり、」の直後に「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、」を追加する。
請求項1を引用する請求項4〜6も、同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に記載の「包装体の封止後10℃で」の直前に「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり、」を追加する。
請求項1を引用する請求項4〜6も、同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に記載の「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、5.42〜19.8体積%である」を「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、6.4〜8.91体積%である」との記載に訂正する。
請求項1を引用する請求項4〜6も、同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に記載の「高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、30000mL/m2/atm/24hr以下であり、」を「高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下であり、」との記載に訂正する。
請求項1を引用する請求項4〜6も、同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に記載の「請求項1から3のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1に記載の包装体。」に訂正する。
請求項4を引用する請求項5及び6も、同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に記載の「請求項1から4のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1又は4に記載の包装体。」に訂正する。
請求項5を引用する請求項6も、同様に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に記載の「請求項1から5のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1及び4から5のいずれか一項に記載の包装体。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0054】及び段落【0061】の【表1】にそれぞれ記載の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0055】及び段落【0061】の【表1】にそれぞれ記載の「実施例2」を「参考例2」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0056】及び段落【0061】の【表1】にそれぞれ記載の「実施例3」を「参考例3」に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落【0057】及び段落【0061】の【表1】にそれぞれ記載の「実施例4」を「参考例4」に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の段落【0061】の本文及び【表1】にそれぞれ記載の「実施例7」を「参考例5」に訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の段落【0062】に記載の「実施例1から7」を「参考例1から4、実施例5から6、及び参考例5」に訂正する。
(16)訂正事項16
明細書の段落【0062】に記載の「実施例1から4」を「参考例1から4」に訂正する。
(17)訂正事項17
明細書の段落【0062】に記載の「実施例5から7」を「実施例5から6及び参考例5」に訂正する。

一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜6は、請求項2〜6が本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用し、請求項1の記載の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正事項1〜17は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1〜6〕に対して請求するものである。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1〜4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1に記載された包装体の気体の状態について、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度」が特定されていたところ、訂正後は、「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり」、「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり」、と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3、4は、訂正前の請求項1に数値範囲で特定されていた「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度」、「高分子フィルムの酸素透過度」の当該数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0061】の【表1】には、実施例5、6の封入ガス組成として、酸素が「10」、「15」(体積%)であり、窒素が「90」、「85」(体積%)であることが示され、また、同じく実施例5、6の72時間後の酸素濃度として「6.4」、「8.91」であることが示されているから、訂正事項1、2及び3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項である。
高分子フィルムの酸素透過度の上限に関し、本件明細書等の段落【0022】に「本発明に用いる高分子フィルムの酸素透過度には袋内酸素濃度を一定範囲に保つ観点から、・・・3000mL/m2/atm/24hr以下が特に好ましい。」と記載されているから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1〜4は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、それぞれ特許請求の範囲の請求項2、請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項の削除は、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項7〜9について
訂正事項7〜9は、訂正事項5、6により請求項2、請求項3を削除する訂正と整合させるために、訂正前に請求項2あるいは請求項3を引用する請求項4〜6を、請求項2及び3を引用しないものとする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
訂正事項7〜9は、引用する請求項から一部の請求項を削除する訂正であるから、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項10〜17について
訂正事項10〜17は、訂正事項1〜4により“実施例”と表現するのが適切ではなくなった「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例7」をそれぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」、「参考例5」と表現し直すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、これは一群の請求項1〜6に関係する訂正である。
そして、訂正事項10〜17は、単に表現を変えるだけの訂正であるから、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1〜17は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4〜6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲[1〜6]を、本件訂正の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1、4〜6に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明4」〜「本件発明6」という。)は、令和4年3月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体、から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなり、該高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、6.4〜8.91体積%である、包装体。」
「【請求項4】
前記高分子フィルムの厚みが、15から45μmである、請求項1に記載の包装体。
【請求項5】
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1又は4に記載の包装体。 【請求項6】
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1及び4から5のいずれか一項に記載の包装体。」

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1〜6に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和4年1月12日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
1 サポート要件: 本件請求項1〜6に係る特許は、本件請求項1〜6に記載された発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
明確性: 本件請求項1〜6に係る特許は、本件請求項1〜6の記載が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
進歩性: 本件特許の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



・ 引用文献1:特開平6−105650号公報(申立人が提出した甲第1号証)
・ 引用文献2: 日本工業規格“プラスチック―フィルム及びシート―ガス透過度試験方法―第2部:等圧法”、JIS K 7126−2:2006、2006年、p.8(申立人が提出した甲第10号証)
・ 引用文献3:特開平4−148643号公報(申立人が提出した甲第11号証)
・ 引用文献4:永井耕介 他2名、“レタスの収穫後の呼吸特性と各種機能性フィルムによる鮮度保持”、兵庫県農業技術センター研究報告〔農業編〕、第46号、p.45−p.50、1998年(申立人が提出した甲第2号証)

第5 当審の判断
1 特許権者に通知した取消理由について
(1)理由1(サポート要件)
ア 本件発明の課題について
本件特許明細書には、本件発明が解決しようとする課題について、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景技術の限界に鑑み、包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、当該レタスを含む青果物からの異臭の発生を、長期間に亘って有効に抑制するなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、包装体の封止後所定時間経過後の包装体の内部酸素濃度を所定範囲内に制御することが、レタスを含む青果物からの異臭を長期間に亘り抑制するために特に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。」
そうすると、本件発明は、「・・・当該レタスを含む青果物からの異臭の発生を、長期間に亘って有効に抑制するなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを」を課題とし、そのために、「包装体の封止後所定時間経過後の包装体の内部酸素濃度を所定範囲内に制御する」こととしたものである。

イ 官能評価について
(ア)発明の詳細な説明には、実施例、比較例の評価手法に関し、次の記載がある。
「【0052】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸170mm×235mmの袋を形成した。1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸170mm×235mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次にサンプリング針チューブで袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(799cm2)/0.21(酸素の分圧)
(酸素濃度・二酸化炭素濃度)
Dansensor製食品包装用O2/CO2分析計Check Mate 3を用いて測定した。
(臭い)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:新鮮な状態で全く問題ない
B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態
C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態
D:更に臭いが強く消費者が気にする状態
E:更に臭いが強く販売不可能な状態」
また、各実施例(参考例)、比較例について、臭いの評価としてAからEまでのアルファベットが付されている。
(イ)特許権者は、意見書を提出して、カットレタスという現実の流通で広く販売されている商品について、消費者の容認可否や販売可能性という客観性がある外部基準を採用したものである旨主張する。
(ウ)そこで、合議体として、特許権者の主張を踏まえてさらに検討を進める。
上記「臭い」の評価は、単純に“よい”“わるい”“強い”“弱い”といったようなものではなく、「新鮮」かどうか、「販売可能」かどうか、「消費者が気にする」かどうか、といった事項が検討されたものである。
ところで、食品に関する技術分野における評価手法として、官能評価は、よく用いられるものであり、本件発明1〜6での評価も、これの一態様と考えられる。そして、官能評価は、一定の知識・経験を有した者がパネラーとなり、評価の基準を統一して実施するのが通常である。
そのようなパネラーにとって、「カットレタス」についての上記「新鮮」かどうか、といった事項は、臭いに関するものとして十分明確に認識し得るものであって、パネラー相互間での評価の基準も統一できるものと考えられる。
特に、においの種類でなく単に臭いといった消費者が気にする状態に係る評価基準は、本件明細書の記載されたような統一した評価基準を用いることで、高度の知識ないし経験を有するパネラーでなくとも、客観性の備わった官能評価が可能であるともいえる。
そして、発明の詳細な説明において実施例(参考例)、比較例に対して行われた評価は、その手法が客観性を備えているのだから、それらの評価による結果を伴った実施例は、所与の課題が解決できることを示す上で十分なものというべきである。

ウ 酸素透過度について
発明の詳細な説明には、所与の課題が解決できると確認されている実施例の高分子フィルムとして、22℃及び相対湿度40%で測定した酸素透過度が示されており(【0052】【表1】参照)、その一方で、発明の一般的な説明として高分子フィルムの20℃及び90%RHでの酸素透過度を示した箇所がある(段落【0022】)。
本件発明1、4〜6における高分子フィルムは、酸素透過度の値が特定されたものであるが、この酸素透過度を測定する温度、湿度自体に格別の技術的な意義があるものではない。
特に発明の詳細な説明には、酸素透過度を調整するために、高分子フィルムに開口部を設ける手段についても記載されていることから(段落【0026】)、20℃及び90%RHで測定される高分子フィルムの酸素透過度の値は、22℃及び相対湿度40%で測定した場合と実質的に同程度のものと考えられる。
そうすると、発明の詳細な説明における実施例と同じ値の酸素透過度が20℃及び90%RHで測定した値である高分子フィルムを考えても、所与の課題を解決できるといえる。
したがって、本件発明1、4〜6は、“酸素透過度”の点について、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものといえる。

エ 所定時間経過後における臭気を抑制し得る事項について
(ア)本件訂正によって、「該高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下であり」、「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり」、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、6.4〜8.91体積%である」という事項が本件発明1、4〜6の発明特定事項に含まれることになった。これにより、本件発明1、4〜6は、「20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下」という範囲の酸素透過度を有する高分子フィルムを用いた包装容器の中の酸素濃度、窒素濃度を包装体の封止直後にそれぞれ「10体積%以上15体積%以下」、「85体積%以上90体積%以下」という特定の範囲のものとしておいて、そこにカットレタスを収納して包装体を封止した後「10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度」が「6.4〜8.91体積%」という特定の範囲内にするようにしたものと理解できる。こうした本件発明1、4〜6は、課題が解決することが確認された実施例5、6による開示に照らすと、当業者が課題を解決することができると認識できる範囲を超えたものではない。
なお、本件訂正前の請求項2には、包装体の封止直後の包装容器内の酸素濃度の数値範囲が特定されていたが、本件訂正により、当該請求項2は、削除され、請求項1には、上述のように包装体の封止直後の包装容器内の酸素濃度、窒素濃度の数値範囲がそれぞれ特定されるに至った。
(イ)レタスの種類、レタスのカットの仕方などは、カットレタスの収納後の呼吸に関係する要素であるとはいえるが、本件発明1、4〜6は、(ア)で述べたように、特定の範囲の酸素透過度の高分子フィルムを用いた包装容器の中の酸素濃度、窒素濃度を包装体の封止直後に特定の範囲のものとしておいて、そこにカットレタスを収納して包装体を封止した後「10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度」が特定の範囲内になるようにしたものであり、本件発明1、4〜6の実施に当たってはレタスの種類やカットの仕方に加えて収納される分量なども適宜選定されることも考えれば、これらレタスの種類などが特定されないことをもって当業者が課題を解決することができると認識できる範囲を超えているとするのは相当でない。
(ウ)なお、本件発明1、4〜6は、包装体の封止直後の包装容器内の二酸化炭素濃度についての発明特定事項を含んでいないが、「前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり」という発明特定事項が、実施例5、6に依拠したものであり、実施例5、6でも発明の詳細な説明のその他の記載でも包装体の封止直後に包装容器内に二酸化炭素が含まれることは記載されていないのだから、本件発明1、4〜6は、包装体の封止直後の包装容器内に二酸化炭素が含まれていないものと理解すべきである。そうすると、申立人が特許異議申立書で指摘した二酸化炭素濃度の特定に関する点は、採用し得ない。

オ 小括
以上のとおり、本件発明1、4〜6は、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、本件請求項1、4〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

(2)理由2(明確性)について
酸素透過度、課題を解決するための手段については、既に上記(1)ウ、エで述べたとおりであり、本件発明1、4〜6は明確である。
したがって、本件請求項1、4〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

(3)理由3(進歩性)について
ア 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】抗菌性を有する金属あるいは金属イオンを担持させた物質あるいは化合物を少なくともカット野菜と接するフィルム面に練り込んだ袋において、酸素透過度が5,000〜50,000cc/m2・atm・dayの範囲となるように袋内面側より、未貫通孔を形成させたことを特徴とするカット野菜の鮮度保持用袋。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカット野菜の鮮度を保持するための包装用袋に関し、特にフィルムが抗菌性を有し、かつガス透過性を適度に保つことによりカット野菜の鮮度を保持する袋に関する。」
(ウ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明はカット野菜の包装用フィルムに関し、低濃度の抗菌性物質で高い抗菌効果を有し、かつ袋内の酸素濃度をカット野菜の鮮度を保持するのに適した濃度に制御できるカット野菜の鮮度保持用袋を供給することを課題とする。」
(エ)「【0008】以下、詳細に説明する。抗菌性物質としては、プラスチックフィルムに対して練り込むことが可能で、かつそのプラスチックフィルムが抗菌性を有しているものであれば何でも良い。例えば、従来から用いられている金属あるいは金属イオン担持させた物質等が使用できる。ここで、金属あるいは金属イオンとしては銀、銅、鉄あるいはそれらのイオンがあげられる。」
(オ)「【0012】使える樹脂の種類としては抗菌性フィルム用の樹脂としては、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、積層体で抗菌性物質を含まない樹脂は他にナイロン、ポリエステル、延伸ポリプロピレンなどがフィルムの強度等を増すために用いることができる。」
(カ)「【0014】本発明においては、上記抗菌性増大のための未貫通孔の部分の膜厚が薄くなり、その部分では酸素透過度が増大する。従って、未貫通孔の数と孔の深さを制御することにより、酸素透過度をも必要な範囲に制御できる。」
(キ)「【0028】<実施例3>ポリエステル(12μm)を基材として銀ゼオライト(銀イオン含量:10wt%,練り込み量:ポリメチルペンテンに対し10wt%)を練り込んだポリメチルペンテン(20μm)を押出して積層体フィルムを得た。このフィルムに対し、フィルムの酸素透過度を10,000cc/m2・atm・dayとなるように数μm径の未貫通孔を形成させた。作製したフィルムを銀ゼオライト練り込みフィルム面が内側になるように10×20cmの大きさの袋に製袋し、その中に2.0×2.0cmの大きさに切断し、冷水洗浄したカットレタスを50g量り、包装し、以下、実施例1と同様に実験を行った。実験結果を(表5)及び(表6)に示す。」
(ク)「【0033】 【表6】


(ケ)「【0034】<実施例4>ポリエステル(12μm)を基材としてLDPE(50μm)銀ゼオライト(銀イオン含量:10wt%,練り込み量:LDPEに対し5wt%)を練り込んだLDPE(10μm)を、共押出しして積層体フィルムを得た。このフィルムに対し、フィルムの酸素透過度を5,000cc/m2・atm・dayとなるように数μm径の未貫通孔を形成させた。作製したフィルムを銀ゼオライト練り込みフィルム面が内側になるように10×20cmの大きさの袋に製袋し、その中に1/4にカットし、冷水洗浄したカットレタスを50g量り、包装し、以下、実施例1と同様に実験を行った。実験結果を(表7)及び(表8)に示した。」
(コ)「【0039】 【表8】



イ 上記アに摘記した事項、特にその実施例4に注目すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステル(12μm)を基材としてLDPE(50μm)銀ゼオライト(銀イオン含量:10wt%,練り込み量:LDPEに対し5wt%)を練り込んだLDPE(10μm)を、共押出しした積層体フィルムに対し、フィルムの酸素透過度を5,000cc/m2・atm・dayとなるように数μm径の未貫通孔を形成させ、作製したフィルムを銀ゼオライト練り込みフィルム面が内側になるように10×20cmの大きさの袋に製袋し、その中に1/4にカットし、冷水洗浄したカットレタス50gを包装し、10℃の条件下で貯蔵した貯蔵日数が0日である時、袋内の酸素濃度が20.8%であり、貯蔵日数が3日である時、袋内の酸素濃度が6.2%である包装体。」
ウ 本件発明1
(ア)本件発明1と引用発明を対比する。
a 引用発明の「積層体フィルム」のうち「ポリエステル(12μm)」の「基材」は、「フィルム」という限りにおいて本件発明1の「延伸フィルム」と一致する。
引用発明の「積層体フィルム」のうち「LDPE(10μm)」は、本件発明1の「ポリエチレン系フィルム」に相当する。
そうすると、引用発明の「ポリエステル(12μm)を基材としてLDPE(50μm)銀ゼオライト(銀イオン含量:10wt%,練り込み量:LDPEに対し5wt%)を練り込んだLDPE(10μm)を、共押出しした積層体フィルム」は、「フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である高分子フィルム」という限りにおいて、本件発明1の「延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体、から選ばれる高分子フィルム」に一致する。
b 引用発明の「袋」は、本件発明1の「包装容器」に相当する。
そして、引用発明の「カットレタス」は本件発明1の「カットレタス」に相当し、引用発明は、「カットレタス50g」を包装するものであるから、本件発明1の用語で記載するところの「包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してな」るものである。
c 引用発明の「酸素透過度」は本件発明1の「酸素透過度」に相当する。
d 引用発明の「貯蔵日数が3日」は、本件発明1の「72時間保持した後」に相当し、同様に、「袋内の酸素濃度」は「内部酸素濃度」に相当する。
そうすると、引用発明の「10℃の条件下で」「貯蔵日数が3日である時、袋内の酸素濃度が6.2%」と本件発明1の「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、5.42〜19.8体積%」は、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度」が特定のものであるという限りで一致する。
e 以上を踏まえると、本件発明1と引用発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である高分子フィルムを含む包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が特定のものである、包装体。」
<相違点1>
ポリエチレン系フィルムと積層体を構成するフィルムに関し、本件発明1は「延伸フィルム」であるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
<相違点2>
包装容器について、本件発明1は「前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
高分子フィルムの酸素透過度に関し、本件発明1は、「20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下」であるのに対し、引用発明は、「5,000cc/m2・atm・day」である点。
<相違点4>
本件発明1は「包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5>
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度について、本件発明1では「6.4〜8.91体積%である」のに対し、引用発明では「6.2%」である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、<相違点4>から検討する。
引用発明は、包装体の封止前に包装容器内の気体の組成を調整するものとはいえず、包装容器内には大気が充満したもの、すなわち酸素濃度は約21%であると考えるのが相当である。
そして、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は、他の証拠を参照しても導き出せるものではなく、周知の事項ともいえない。
したがって、引用発明において、包装体の封止直後に包装容器内を、大気とは異なった、酸素濃度が10体積%以上15体積%以下で窒素濃度が85体積%以上90体積%以下という組成にすることは、到底示唆されるものではなく、引用発明において相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件発明1は、相違点4に発明特定事項を備えたことをもって所与の課題を解決すると評価されるものである。
そうすると、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明4〜6について
本件発明4〜6は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含み他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 小括
以上を踏まえると、本件発明1、4〜6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
したがって、請求項1、4〜6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。

2 特許権者に通知しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、本件発明1、4〜6が実施可能でない旨指摘する(「(4−3)申立理由2(実施可能要件違反)」)。
しかし、既に上記1(1)で述べたように、本件発明1、4〜6は、所与の課題を解決することが確認された実施例5、6の開示に照らして当業者が課題を解決することができたと認識できる範囲のものである。
そして、当業者は、実施例5、6という具体的な構成の開示を参酌して、本件発明1、4〜6を実施することができる。
したがって、本件請求項1、4〜6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、4〜6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、4〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2及び3は、本件訂正により削除され、本件請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及び青果物の鮮度保持方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、レタスを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体に関し、より具体的には、高分子フィルムを有する包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなり、特定の酸素濃度を有する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルム基材に気体透過部を設けて、この気体透過部から酸素、二酸化炭素、水蒸気等の気体を透過させる気体透過性フィルムは、食品分野において、青果物、特にカット野菜等の生鮮野菜の包装材として好適に使用されている。このような気体透過性フィルムを用いて、例えば野菜、果物等を包装すると、内容物である野菜、果物の鮮度保持に適した酸素濃度、例えば1から4%程度の酸素濃度、を保つことで、比較的長い期間にわたり鮮度を保持して内容物を保管することができることが知られている。
例えば特許文献1には、青果物を密封した高分子フィルムよりなる青果物入り包装体において、前記包装体が(A)有孔高分子フィルムと(B)無孔高分子フィルムにより構成されており、前記(A)、(B)の少なくとも一方のフィルム特性が25℃、相対湿度75%の条件下で測定した水蒸気透過率が前記包装体の有効表面積を基準にして50〜800gm−2d−1であり、前記(A)の開孔面積比率は前記包装体の有効表面積に対し3×10−6〜7×10−4%であることを特徴とする青果物入り包装体が記載されており、より具体的には、(A)有孔高分子フィルムとして、厚さ35μmの延伸ポリプロピレンからなり、平均孔径30μmの孔を95個あけたもの、平均孔径が60μmの孔を9個開けたもの等が使用されている。
【0003】
カットレタスは、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、またレタスがサラダ用などとして最も一般的な野菜の一つであることから、高い経済的価値を有する。この様な背景から、褐変、異臭等を長期間にわたって抑制できる等、レタスを含む青果物の鮮度保持が可能な技術が提案されており、例えば特許文献2には、1袋/レタス1Kg当たりの酸素透過量が所定値であるフィルムからなる袋にカットレタスを入れ、包装時に酸素をレタス1Kg当たり所定量充填する技術が記載されている。しかしながら上記技術によっても、依然としてカットレタスからの異臭を十分に抑制できない場合があり、その解決が求められていた。例えば上記技術によれば、包装から長期間に亘って保管した場合に異臭の問題が顕著になることが知られており、その解決が特に強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5−168400号公報
【特許文献2】 特開平8−228674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術の限界に鑑み、包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、当該レタスを含む青果物からの異臭の発生を、長期間に亘って有効に抑制するなど、該青果物の鮮度保持機能に優れた包装体を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、包装体の封止後所定時間経過後の包装体の内部酸素濃度を所定範囲内に制御することが、レタスを含む青果物からの異臭を長期間に亘り抑制するために特に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
[1]
高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、4〜20体積%である、包装体である。
【0007】
以下、[2]から[12]は、それぞれ本発明の一態様又は好ましい実施形態の一つである。
[2]
前記レタスを含む青果物からの異臭の発生を、包装体の封止後10℃で96時間以上にわたって抑制する、[1]に記載の包装体。
[3]
包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上である、[1]又は[2]に記載の包装体。
[4]
前記包装容器内に更に窒素が封入されている、[1]から[3]のいずれか一項に記載の包装体。
[5]
前記高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の包装体。
[6]
前記高分子フィルムの厚みが、15から45μmである、[1]から[5]のいずれか一項に記載の包装体。
[7]
前記高分子フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の包装体。
[8]
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、[1]から[7]のいずれか一項に記載の包装体。
[9]
前記レタスがカットレタスである、[1]から[8]のいずれか一項に記載の包装体。
[10]
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、[1]から[9]のいずれか一項に記載の包装体。
[11]
高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納する工程、及び該包装容器内の酸素濃度を、2〜15℃で包装体の封止後72時間以上にわたって4〜20体積%に維持する工程、を有する、青果物の鮮度保持方法。
[12]
封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上である、[11]に記載の、青果物の鮮度保持方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、包装体の封止後所定時間経過後の包装体内部の酸素濃度を所定範囲内に制御することで、レタスを含む青果物からの異臭の発生を有効に抑制し、レタスを含む青果物の鮮度を有効に保つことができる包装体、及び青果物の鮮度保持方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器内に、レタスを含む青果物を収納してなり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、4〜20体積%である、包装体である。すなわち、本発明の包装体は、少なくとも、包装容器と、そこに収納されたレタスを含む青果物と、を有するものである。
【0010】
包装容器
本発明の包装体を構成する包装容器は、高分子フィルムを含んでなるものである。ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
【0011】
包装容器がいわゆる包装袋である実施形態においては、例えば、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の高分子フィルムを折り重ねた状態で、3辺または2辺を熱シールにより融着させる等して包装袋を形成することができる。残る1辺は、青果物等の内容物を包装袋内に配置した後、同様に熱シールにより融着させるなどして封止することができる。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
【0012】
本発明で用いる包装容器は、以上説明した高分子フィルムを含んでなるものであり、その酸素透過度には特に限定は無いが、例えば500から50000mL/24hr/atmの範囲内であるものを好ましく使用することができ、収納される青果物の量、種類及び包装後72時間における所望の内部酸素濃度に合わせて適正な酸素透過度を選択することができる。
【0013】
青果物
本発明の包装体は、上記包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる。ここで、ほう青果物がレタスを「含む」とは、当該青果物の全部がレタスで構成されている場合、及び当該青果物の一部がレタスで構成されている場合、の双方を包含する趣旨である。従って、包装容器内に収納される青果物は、レタス以外の野菜、果物等を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。更には、レタスを含んでいる限りにおいては、青果物以外の成分、例えば青果物以外の食品、調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の包装体を構成する(包装容器に収納される)「レタス」は、キク科アキノノゲシ属チシャ種に属する野菜一般を包含する概念であり、「レタス」の名称そのもので流通する野菜には限定されない。
すなわち、ここでいう「レタス」は、サンチュなどに代表される、掻きチシャまたはカッティングレタスと呼ばれるもので茎から葉を掻き採るタイプ;ロメインレタスなどに代表される、葉がほとんど巻かず立っている立ちチシャと呼ばれるタイプ;サニーレタスやグリーンリーフなどに代表される、非結球のリーフレタス(葉チシャ);及び一般的にレタスと呼ばれるものに代表される、結球する玉レタス(玉チシャ);の全てを包含する概念である。
ここでいう「レタス」の好ましい具体例としては、レタス(玉レタス)、グリーンリーフ、ロメインレタス(コスレタス)、サニーレタス、シルクレタス、ピンクロウスター、サラダ菜、ブーケレタス、グリーンオークリーフ(サラノバレタス)、フリルレタス、(チマ)サンチュ、茎レタス(ステムレタス)等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0015】
本発明において包装容器内に、レタスとともに収納することができるレタス以外の青果物には特に制限は無く、レタスとともに食用に供され得る、非加熱又は加熱の青果物を適宜収納することができる。その様な青果物の具体例としては、バナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、アスパラガスのような葉茎菜類、花卉または苗を挙げることができるが、これらには限定されない。酸素濃度を制御し、これにより鮮度を保持するという本実施形態の作用からは、実質的に呼吸を行っている形態の青果物の鮮度保持に特に有効である。
【0016】
本発明において包装容器に収納され鮮度保持されるレタスをの形態にも特に制限は無い。従って、レタスを含む青果物は、収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜(カットレタス)であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
なお、収納され鮮度保持されるレタスがカットされたレタスの場合には、カット、洗浄、脱水および/または乾燥処理を行い、適正な水分量に調整されていることが好ましい。より具体的には、例えばカットされたレタスを「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量を20〜30%の範囲にすることが、臭気発生の防止および褐変等外観の劣化の防止のバランスの観点から特に好ましい。
【0017】
カット野菜は、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、高い経済的価値を有する。カットレタスは、カット野菜の代表的なものであり、そのままサラダ等として簡便に食事に供することができるので、特に高い経済的価値を有する。一方、野菜、特にレタスはカットされることにより呼吸作用や代謝反応が急激に活発化し、品質が急激に低下する傾向がある。本実施形態は、この様なカットレタスの鮮度保持に有効に用いることができるので、特に高い経済的価値を有する。
【0018】
レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)の種類及び形態により、鮮度保持に好ましい酸素濃度は、本発明の範囲内である程度異なり、それに伴い好ましい酸素透過度、並びにその様な酸素透過度を与える高分子フィルムの態様も異なるが、これらを適切に設定することで、上記レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)のいずれについても、本発明によって有効に鮮度保持を行うことができる。
【0019】
包装体
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、4〜20体積%である。包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が4〜20体積%であることによって、包装容器内に収容されたレタスを含む青果物からの異臭の発生を有効に抑制することができる。本発明の包装体の好ましい実施形態においては、レタスを含む青果物からの異臭の発生を、包装体の封止後長期間、好ましくは10℃で96時間以上にわたって抑制することができる。
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、4.5体積%以上であることが好ましく、5.0体積%以上であることがより好ましく、5.3体積%以上であることが特に好ましい。
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、15.0体積%以下であることが好ましく、10.0体積%以下であることがより好ましく、7.0体積%以下であることが更に好ましく、6.5体積%以下であることが特に好ましい。
包装体の内部の酸素濃度は、例えば、包装体内部の気体を、サンプリング針チューブでサンプリングして、食品包装用ジルコニア酸素濃度計にて酸素濃度を測定することにより、測定することができる。
ここで、「包装体の封止後」とは、包装容器内にレタスを含む青果物を収納した後、包装を封止してから所定温度で保持したときの経過時間をいい、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後」とは、包装容器内にレタス、好ましくは、洗浄、脱水または乾燥処理を行い、適正な水分量に調整されたレタスを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してから10℃で72時間保持した直後の状態をいう。
【0020】
包装体内の酸素濃度を所定範囲とする方法には特に制限は無いが、例えば包装容器の酸素透過率を、青果物の呼吸とバランスするように適宜調整することで、酸素濃度を調整してもよいし、また包装体の作成時に包装容器内に封入するガスの酸素濃度を、所定期間に青果物が呼吸する量とバランスするように適宜調整することで、酸素濃度を調整してもよいし、或いはこれらの手法を組み合わせてもよい。
包装体の作成時に包装容器内に封入するガスの酸素濃度は、25体積%以下であることが好ましく、23体積%以下であることがより好ましい。
【0021】
上述した所望の内部酸素濃度を実現する観点から、包装容器内には、更に窒素が封入されていることが好ましい。包装容器の封止時に窒素を封入することで、包装直後の内部酸素濃度を、独立に調整して所望の範囲内に保つことができるからである。また、更に窒素を封入することで、包装容器内の圧力を高く保つことが可能となり、通常酸素濃度がより高い外気の流入を防ぎ、包装体の封止後72時間における内部酸素濃度を所定範囲内に保つことが容易になる。
【0022】
高分子フィルム
上述した所望の内部酸素濃度を実現するためには、酸素透過度が所定値以上である高分子フィルムを用いて、包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、500mL/m2/atm/24hr以上であることが好ましい。20℃、90%RHにおける酸素透過度が上記値以上であることによって、外気から適当な量の酸素が導入されるので、包装体の封止後10℃で72時間保持した後において、4〜20体積%という所望の酸素濃度を実現するのに好適である。本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、800mL/m2/atm/24hr以上であることがより好ましく、1000mL/m2/atm/24hr以上であることが特に好ましい。
本発明に用いる高分子フィルムの酸素透過度には袋内酸素濃度を一定範囲に保つ観点から、50000mL/m2/atm/24hr以下が好ましく、30000mL/m2/atm/24hr以下がより好ましく、15000以下がより好ましく、7000mL/m2/atm/24hr以下がより好ましく、3000mL/m2/atm/24hr以下が特に好ましい。
【0023】
本発明で用いる高分子フィルムの酸素透過度は、例えば以下方法によって測定することができる。
まず、次の方法で内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
次にサンプリング針チューブで約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出する。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(2×a×bcm2)/0.21(酸素の分圧)
【0024】
高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、高分子フィルムの酸素透過度を適宜調節することができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの場合には、厚みを10μm以下とすることで、20℃、90%RHにおける酸素透過度を、例えば5000mL/m2/atm/24hr以上とすることができるが、より包装袋の強度を確保する観点から、より厚いフィルムを用い、これに100〜500μφの孔を空けることで酸素透過度を向上することも可能である。目安としては、100φの孔1つで1000mL/m2/atm/24hr程度酸素透過度は増大する。例えば30μのOPP袋の酸素透過度は約1000mL/m2/atm/24hrであるが100φ孔1つ空けると約2000mL/m2/atm/24hrとなる。
機械的強度等も併せて考慮すれば、高分子フィルムの厚みは、15〜45μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0025】
上述の様に、高分子フィルムの酸素透過度は、高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、調節することができるので、必ずしも、酸素透過度の調節のために高分子フィルムに開口部を設けることを要しない。特に、高分子フィルムをポリエチレン等で構成した場合には、本発明の好ましい実施形態における、20℃、90%RHにおける500mL/m2/atm/24hr以上の酸素透過度は、高分子フィルムに開口部を設けることなしに実現することができる。
高分子フィルムに開口部を設ける必要が無いため、製造プロセスがより簡便、低コストなものとなり、また開口部の大きさ、形状等を精密に制御することも不要となる。
高分子フィルム中に開口部が存在しないことは、例えば、包装容器を構成する高分子フィルムが、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さないことにより、確認することができる。
【0026】
一方で、上述の様に、本発明の一実施形態においては所望の酸素透過度を実現するために、高分子フィルムに開口部を設けることが好ましい。開口部の形状には特に限定は無く、円形、略円形であってもよく、スリット状であってもよい。円形、略円形の開口部は、加工が容易である点等において好ましく、スリット状での開口部は、異物の侵入を有効に防止できる点等において好ましい。
微孔を設ける方法としては、加熱針等の物理的手段および、レーザー等の光学的手段のいずれも用いることができる。100〜300μmの孔径であれば、物理的手段を用いても十分に開孔可能な範囲であり、コスト的にも有利である。もちろんレーザー等でも開孔可能であり、この場合には、更に、精密な孔径の制御が可能となる。本発明において、微孔開孔にレーザーを用いる場合には、対象フィルムが効率良くレーザー光を吸収することが好ましい。例えば、二酸化炭素レーザー、YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、エキシマレーザー、UVレーザー光発振機、半導体レーザー光発振機、を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、本発明の包装体の製造において好ましく用いられるレーザー孔加工はスリット加工と異なり、金属による物理的接触がないため、欠落した刃、針等の混入のおそれがなく、また開口面積はスリットに比べて一定の為品質管理(ガス透過度の管理)がしやすく、好ましい。
個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、高分子フィルムの酸素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば2mmの長さのスリット状の開口部であって、閉じた状態では光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)にて倍率4倍による観察では貫通口としての幅は視認することができないものを設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して開口部が1つ存在するごとに約1000mL/m2/24hr/atmの酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。
【0027】
本実施形態で用いる高分子フィルムの厚みには特に制限は無く、好適な酸素透過度、包装容器を形成した際の可撓性、強度、透明性、経済性、開口部の形成の際の精度や容易性、等の観点から、高分子フィルムを形成する材料との関係において適宜好適な厚みを選択すればよい。典型的には、高分子フィルムの厚みは、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましく、15〜45μmであることが更に好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0028】
上記高分子フィルムの材質には、特に制限は無いが、従来の青果物包装用のフィルムにに用いられる高分子を適宜使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、例えば、セロハン等の天然高分子を用いることもできる。更にこれらのうちのいずれかの材質を単独で用いても良く、これらの複数をブレンドして、及び/又はラミネートして用いてもよい。
【0029】
加工の容易さやコストの観点からは、上記高分子フィルムの材質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロンー6、ナイロンー66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0030】
〈プロピレン系重合体〉
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0031】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0032】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890〜0.930g/cm3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTMD1238荷重2160g、温度230℃)は、0.5〜60g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましく、1〜5g/10分がさらに好ましい。
【0033】
〈エチレン系重合体〉
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチルー1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
【0034】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0035】
前記エチレン系重合体の密度は0.910〜0.940g/cm3が好ましく、0.920〜0.930g/cm3がより好ましい。該密度が0.910g/cm3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm3以下であることにより、加工性および透明性が向上する
【0036】
なお、ブレンド、及び/又はラミネートは、上記の高分子のうちのいずれか同士のブレンド、及び/又はラミネートであってもよく、また上記の高分子のうちのいずれかと、高分子以外の材料とのブレンド、及び/又はラミネートであってもよい。すなわち、高分子フィルムは、高分子以外の素材、例えば耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでいてもよいし、高分子フィルムと金属箔、紙、不織布等とのラミネートであってもよい。
【0037】
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムは、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよい。
機械的強度等の観点からは、各種高分子の延伸フィルムを好適に用いることができる。特に、プロピレン系重合体を用いた延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)は、機械的強度、透明性、耐熱性等に優れるため、本発明に用いる包装容器において、特に好ましく使用することができる。
また、エチレン系重合体を用いたフィルム(ポリエチレン系フィルム)も、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよいが、ヒートシール性等の観点から、無延伸のものを、特に好ましく使用することができる。
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムとして特に好適なものの例として、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を挙げることができる。
【0038】
〈延伸ポリプロピレンフィルム〉
本発明において好ましく用いられる延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
〈ポリエチレン系フィルム〉
本発明において好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。ポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
【0039】
〈延伸フィルム〉
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
【0040】
〈延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体〉
本発明において好ましく用いられる延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
【0041】
また、これらの高分子フィルムは、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002〜0.5g/m2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001〜3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
【0042】
透明性、可撓性、コスト等の観点からは、従来当該技術分野において広く用いられていた延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を高分子フィルムとして用いることが特に好ましい。これらのフィルムは一般にヒートシール性に優れるので、包装容器の製造において生産性が良好である。 延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
【0043】
なお、ヒートシールに必ずしも適さない高分子フィルムを用いる場合には、該高分子フィルムの全部又は一部にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで形成すればよい。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを好適な高分子フィルムとして用いることができる。
【0044】
包装体の製造方法、及び鮮度保持方法
レタスを含む青果物を本発明の包装容器に収納し、その内部酸素濃度を適宜調整することで、本発明の包装体を製造することができ、また本発明の一実施形態である青果物の鮮度保持方法を実施することができる。
以下、本発明の包装体の製造方法を、カット、洗浄、脱水、および/または乾燥処理を行い、適正な水分量に調整されたカットレタスの鮮度保持用の包装体を例に説明する。
【0045】
まず前処理工程において、手作業で外葉を取り除き、2〜4分割し、芯を取り除くなどしたレタスをコンベヤーに供給する。コンベヤーで搬送されたレタスは、スライサーでカットされ、冷水を満たした洗浄槽で冷却を兼ねて「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸で洗浄され、水切り後遠心脱水機等で脱水される。脱水されたカットレタスは、本実施形態で用いる高分子フィルムを含んでなる包装容器(一辺が封止されていないもの)に詰められ、計量後包装容器が封止され、カットレタスの鮮度保持用包装体が製造される。
【0046】
カットレタスの鮮度保持の観点からは、切れ味の良い刃を用い、切断面に生ずる傷をより少なくすることが好ましい。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、カットレタスに当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、カットレタスをよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後にカットレタス表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。洗浄後静置して水切りを行っても、カットレタス表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去することが有効である。
これは水分を適正にすることで余分に付着した微小水滴中での雑菌の増殖が抑制できるからである。より具体的には、例えば「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量を20〜30%の範囲とすることが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体は、レタスを含む青果物の収納及び包装容器の封止後に、窒素封入及び/又は脱気を行ってもよい。窒素封入及び/又は脱気を行うことにより、包装容器の酸素透過度と青果物の呼吸量の平衡状態として設計される所望の酸素濃度に速やかに到達することが可能となり、鮮度保持に有利である。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点からも、包装容器の封止後に脱気を行ってもよい。
【0048】
上述の様な方法に従って高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納する工程を実施した後、該包装容器内の酸素濃度を、包装体の封止後72時間以上にわたって4〜20体積%に維持する工程を実施することで、レタスを含む青果物からの異臭を有効に抑制することができる。
該包装容器内の酸素濃度を、包装体の封止後72時間以上にわたって4〜20体積%に維持する工程は、2〜15℃、より好ましくは3〜10℃、特に好ましくは約10℃で、℃の温度で実施することが好ましく、10℃前後の温度で実施することが特に好ましい。
【0049】
本発明の包装体は、包装容器中にレタスを含む青果物のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0050】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸170mrn×235mmの袋を形成した。1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸170mm×235mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次にサンプリング針チューブで袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(799cm2)/0.21(酸素の分圧) (酸素濃度・二酸化炭素濃度)
Dansensor製食品包装用O2/CO2分析計Check Mate 3を用いて測定した。
(臭い)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:新鮮な状態で全く問題ない
B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態
C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態
D:更に臭いが強く消費者が気にする状態
E:更に臭いが強く販売不可能な状態
【0053】
(比較例1)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム2枚を重ね合わせて、3辺をヒートシールで封止のうえ切断して、1辺が未封止の包装袋(170mm×235mm、内寸の面積:799cm2)を作製した。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、1000mL/m2/atm/24hrであった。
〈カットレタス〉
レタスを汚れ、傷み部分を除いた後に概ね4cm角に切り、大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき100ppm、10分の次亜塩素酸洗浄を行った。その後、水分管理を行い、適正に脱水、乾燥処理をおこなった。ここで水分を適正にすることで余分に付着した微小水滴中での雑菌の増殖が抑制できるからである。
また、「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量は24%であった。
包装容器に上記のカットレタス78gを封入し、窒素充填後、ヒートシールして包装体を作製した。該包装体を10℃で保管し、1日毎に内部酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定し、カットレタスの臭いを評価した。
結果を表1に示す。
【0054】
(参考例1)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに代えて厚さ30μmのポリエチレンフィルムを使用したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、5000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0055】
(参考例2)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの針孔を1個設けたことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。フィルムの酸素透過率は、10000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0056】
(参考例3)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの針孔を3個設けたことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。フィルムの酸素透過率は、15000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0057】
(参考例4)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの針孔を10個設けたことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。フィルムの酸素透過率は、30000mL/m2/atm/24hrであった。
結果を表1に示す。
【0058】
(比較例2)
窒素ガスに代えて窒素:95体積%/酸素:5体積%の混合ガスを充填したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【0059】
(実施例5)
窒素ガスに代えて窒素:90体積%/酸素:10体積%の混合ガスを充填したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【0060】
(実施例6)
窒素ガスに代えて窒素:85体積%/酸素:15体積%の混合ガスを充填したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【0061】
(参考例5)
窒素ガスに代えて空気を充填したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【表1】

【0062】
比較例1及び2においては、時間の経過に伴い異臭が強くなり、カットレタスの商品価値が一部損なわれた。
一方、参考例1から4、実施例5から6、及び参考例5においては、長期間に亘って異臭の発生が有効に抑制された。参考例1から4における様に、包装容器を構成する高分子フィルムに酸素透過率が所定値以上であるものを使用することも、実施例5から6及び参考例5における様に、包装体に充填するガスの酸素濃度を所定値以上とすることも、包装容器内の酸素濃度を所定値以上に保つことができる限りにおいて、ともにレタスの異臭抑制のための有効な手段であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の包装体及び鮮度保持方法は、高い経済的価値を有するレタス等のレタスを含む青果物の異臭の発生を効果的に防止し、その鮮度を保つなど、実用上高い価値を有するものであり、食品加工、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体、から選ばれる高分子フィルムを含み、前記高分子フィルムを2枚互いに重ね合わせた状態、または前記高分子フィルム一枚を折り重ねた状態で融着してなる包装容器内にその全部がカットレタスで構成されている青果物を収納してなり、該高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、1000mL/m2/atm/24hr以上、3000mL/m2/atm/24hr以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の酸素濃度が、10体積%以上15体積%以下であり、前記包装体の封止直後の前記包装容器内の窒素濃度が、85体積%以上90体積%以下であり、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度が、6.4〜8.91体積%である、包装体。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記高分子フィルムの厚みが、15から45μmである、請求項1に記載の包装体。
【請求項5】
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1又は4に記載の包装体。
【請求項6】
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1及び4から5のいずれか一項に記載の包装体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-07-22 
出願番号 P2017-069111
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 536- YAA (B65D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 藤井 眞吾
久保 克彦
登録日 2020-04-24 
登録番号 6695822
権利者 三井化学株式会社 三井化学東セロ株式会社
発明の名称 青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及び青果物の鮮度保持方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
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