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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16K
管理番号 1389363
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-15 
確定日 2022-07-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6722576号発明「切換止水弁」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6722576号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕について訂正することを認める。 特許第6722576号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6722576号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成28年12月9日の出願であって、令和2年6月24日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月15日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、概ね、次のとおりである。
令和 3年 1月15日 特許異議申立人TOTO株式会社による特許異議の申立て
令和 3年 5月14日付け 取消理由通知書
令和 3年 7月 2日 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 3年 8月19日 特許異議申立人による意見書の提出
令和 3年 9月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年12月 6日 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 4年 3月15日 特許異議申立人による意見書の提出

第2 令和3年12月6日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、
前記第1開口部と前記第2開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有し、前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記シャワー流路穴を囲む位置と、前記カラン流路穴を囲む位置とに配置されていることを特徴とする切換止水弁。」
と記載されているのを、
「周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してなく、
前記第1開口部と前記第2開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されており、
前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有し、前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記シャワー流路穴を囲む位置と、前記カラン流路穴を囲む位置とに配置されていることを特徴とする切換止水弁。」
に訂正する(請求項1の記載を直接引用する請求項2も同様に訂正する)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載において、「前記外側固定筒は、」「前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してな」いことを付加するものであるが、これは、特許明細書の段落【0014】の「また、外側固定筒20の周面には、第1開口部21Aと第2開口部21B以外の開口部は設けられていない。」の記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載されていた、「外側固定筒」について、「第1開口部、及び第2開口部以外に開口部を有してな」いことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載において、「前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されて」いることを付加するものであるが、これは、特許明細書の段落【0014】の「図2に示すように、外側固定筒20は、ケース11に対して相対回転しない状態でケース11に収容される。」との記載、並びに、図1(b)及び図2の図示内容に基づいて、訂正前の請求項1に記載されていた、「外側固定筒」について、「ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されて」いることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載において、「前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されて」いることを付加するものであるが、これは、特許明細書の段落【0016】の「図4に示すように、内側回転筒30は、外側固定筒20に対して相対回転可能な状態で、外側固定筒20内に配置されている。」との記載、段落【0017】の「内側回転筒30の一方側の端部には、内側回転筒30を回転させるための軸部材32が一体回転可能に接続されている。軸部材32は、ケース11に対して相対回転可能な状態でケース11内に収容されるとともに、その一方側の端部がケース11の一方側の端部から外側に突出している。」との記載、並びに図1及び図2の図示内容に基づいて、訂正前の請求項1に記載されていた、「内側回転筒」及び「軸部材」について、「外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されて」いることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕について訂正することを認める。

第3 本件特許
特許第6722576号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求により訂正された訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2(以下、「本件請求項1」及び「本件請求項2」という。)に記載された下記の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してなく、
前記第1開口部と前記第2開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されており、
前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有し、前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記シャワー流路穴を囲む位置と、前記カラン流路穴を囲む位置とに配置されていることを特徴とする切換止水弁。
【請求項2】
前記外側固定筒の横断面において、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、前記第1開口部は30〜170°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、前記第2開口部は−30〜−170°の範囲において90°以上となる大きさの角度で設けられている請求項1に記載の切換止水弁。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年1月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)第1の申立ての理由(甲第1号証を主引用例とした本件特許発明1の進歩性
本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第5号証に記載された事項ないし従来周知の技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)第2の申立ての理由(甲第1号証を主引用例とした本件特許発明2の進歩性
本件特許発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2号証〜甲第5号証に記載された事項、甲第4号証、甲第7号証、第8号証に記載された事項ないし従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)第3の申立ての理由(甲第2号証を主引用例とした本件特許発明1の進歩性
本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第4号証〜甲第6号証に記載された事項ないし従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)第4の申立ての理由(甲第2号証を主引用例とした本件特許発明2の進歩性
本件特許発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第4号証〜甲第6号証に記載された事項、甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項ないし従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2015−10636号公報
甲第2号証:中国特許出願公開第104806779号明細書
甲第3号証:特開2004−300860号公報
甲第4号証:特開2012−154456号公報
甲第5号証:米国特許第9423038号明細書
甲第6号証:特開2000−28017号公報
甲第7号証:特開2004−211531号公報
甲第8号証:特開2007−16876号公報

2 令和3年5月14日付けの取消理由通知書に記載した取消理由の概要
令和3年5月14日付けの取消理由通知書に記載した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1
本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載されるような周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2
本件特許発明2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載されるような周知技術1及び甲第4号証、甲第8号証に記載されるような周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3 令和3年9月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和3年9月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1
本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証に記載されるような周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2
本件特許発明2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証に記載されるような周知技術1及び甲第4号証、甲第8号証に記載されるような周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

第5 当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、「弁ユニット及び水栓」に関し、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「【0001】
本発明は、例えば、吐出する水の止水を含む流量調節に用いることができる弁ユニット及びこれを備えた水栓に関する。」

イ 「【0003】
また、上記弁ユニットは、クリック機構を具備し、このクリック機構は、スピンドル52の外周部に固着されスピンドル52とともに回動する回動リング57と、ケース内に固着されたカバー58と、このカバー58の内側にセレーション嵌合し、スピンドル52の軸方向の移動が可能であるが軸回りの回動が不能である固定リング59と、この固定リング59を付勢して回動リング57に押しつけるスプリング60とによって構成され、回動リング57と固定リング59には、互いに凹凸嵌合する部位を設けてある。そして、斯かるクリック機構により、スピンドル52の回動にクリック感が付与されることになり、このクリック感によって、弁ユニットが例えば止水状態等の所定の状態になったことを使用者に知らせるようにすることができる。
・・・
(中略)
・・・
【0005】
しかし、上記の構成を有する弁ユニットでは、クリック機構を構成する部材が多く、その組付けに手間が掛かり、製造コストの上昇にも繋がる。そして、このことは、上記弁ユニットに限らず、例えば特許文献1の図13に示されているクリック機構(ハウジング、取付カラー、板バネ、取付リングを用いるクリック機構)を備えた弁ユニット等でも同様である。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、クリック機構を構成する部材を減らすことができ、ひいてはその組付けの簡易化やコストダウンにも資する弁ユニット及び水栓を提供することにある。」

ウ 「【0014】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施の形態に係る弁ユニットを内蔵した湯水混合栓の構成を概略的に示す正面図及び縦断面図である。
【図2】前記湯水混合栓の構成を概略的に示す横断面図である。
【図3】前記弁ユニットの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】(A)〜(D)は、前記弁ユニットの構成を概略的に示す背面図、横断面図、平面図、右側面図であり、(E)は(B)におけるX−X線断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、前記弁ユニットの押圧部の構成を概略的に示す正面図、背面図、平面図及び底面図である。
【図6】(A)〜(D)は、前記弁ユニットの差込部材の構成を概略的に示す正面図、側面図、背面図及び平面図である。
【図7】(A)〜(C)は止水状態からカラン吐水状態へと切り替わる際の各状態におけるスピンドルの構成を概略的に示す斜視図、(D)はシャワー吐水状態におけるスピンドルの構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】(A)〜(C)は止水状態からカラン吐水状態へと切り替わる際の各状態における差込部材と押圧部の構成を概略的に示す説明図である。
【図9】従来の弁ユニットの構成を概略的に示す縦断面図である。」

エ 「【0017】
この湯水混合栓2は、図1(A)に示すように左右方向に延びる略円筒状の水栓本体3を有し、水栓本体3の背面の左右には偏心管4(図2参照)を介して図外の給湯配管(高温水供給配管)、給水配管(低温水供給配管)が接続される。図2に示すように、水栓本体3の内部には、水栓本体3内に別々に導入された給湯配管からの湯(高温水)と給水配管からの水(低温水)とが混合される混合室5と、混合室5の上流側に位置し、混合室5への湯水の流入比を調節するための弁部6と、混合室5の下流側に位置し、混合室5からの湯水の導出流路の切替え及び導出流量の調節を行うための弁ユニット1とが設けられている。
【0018】
また、図1(A)及び図2に示すように、水栓本体3の左右にはハンドル7,8が取り付けられ、一方(左側)のハンドル7は、弁部6と連動して水栓本体3から導出部(吐水口9またはシャワーエルボ10)を経て外部に導出される湯水の温度調節機能を司る。他方(右側)のハンドル8は、水栓本体3内において混合室5の下流側に設けられた弁ユニット1と連動して導出流路の切替え(湯水を吐水口9から導出する状態とシャワーエルボ10から導出する状態との切替え)機能及び吐水流量の調整機能を司る。」

オ 「【0020】
弁ユニット1は、図3、図4(A)〜(E)に示すように、筒状のケース11と、ケース11内に固定配置される筒状のガイド体12と、ガイド体12内に回動可能に挿入されるスピンドル13とを具備し、スピンドル13の一端側には、該一端側に開放され他端側が閉塞された筒状の弁体部14が一体成形されている。
【0021】
一方、ケース11及びガイド体12は、弁体部14を含むスピンドル13の一部を覆う内外二重の筒状壁として水栓本体2内に固定配置されるものであり、ケース11及びガイド体12の周壁には、両者11,12の内外にわたって連通する流出孔15,16が形成されている(図4(B)及び(E)参照)。これに対して、弁体部14の周壁には、流出孔15,16に対面可能な位置に連通孔17が開設されている。
【0022】
また、弁ユニット1は、図2に示すように、混合室5(上流側)からの水(低温水、高温水及びこれらの混合水を含む)が弁体部14の一端14aから弁体部14内に流入するように水栓本体3に組み込まれるものであり、スピンドル13の他端側のハンドル取付部(アウターセレーション部)13a(図3、図4(A)〜(D)参照)に取り付けられたハンドル8を操作してスピンドル13を軸回りに回動させると、弁体部14がスピンドル13と一体的に回動し、弁体部14の周壁に設けられた連通孔17の軸回りの位置(位相)が変わる。
【0023】
従って、ハンドル8を回動操作してスピンドル13を軸回りに回動させると、スピンドル13の軸回りの回動に伴って、各流出孔15,16と連通孔17との 連通度合が変わり、これにより、スピンドル13の一端側から弁体部14内に流入し連通孔17を経て各流出孔15,16から下流側に流出する水の流量が変わる。そして、流出孔15から流出した水は吐水管18(図1(A)及び(B)参照)を経てその先端(下流端)の吐水口9から外部に吐出され、流出孔16から流出した水はシャワーエルボ10を経てその下流側に接続される図外のシャワーホースの先端のシャワーヘッドから外部に吐出される。すなわち、連通孔17が流出孔15に連通しているときにはカラン吐水状態となり、連通孔17が流出孔16に連通しているときにはシャワー吐水状態となる。
【0024】
弁ユニット1はまた、ガイド体12内に挿入されたスピンドル13の回動を妨げないように、ガイド体12の周壁において連通孔17が連通しない位置に設けられた開口19からガイド体12の内部に差し込まれる差込部材20を具備し(図3参照)、差込部材20に設けられた板ばね部21と、スピンドル13の外周部において弁体部14に干渉しない位置に装着され、板ばね部21をスピンドル13の軸方向に押圧する押圧部22とに、互いに凹凸嵌合する部位23,24を設けることにより、スピンドル13の軸回りの回動にクリック感を付与するようにしてある。」

カ 上記オの特に【0021】の記載から、ガイド体12は、周壁に流出孔15,16が形成されていることが理解できる。

キ 上記オの特に【0020】には、スピンドル13は、ガイド体12内に回動可能に挿入され、当該スピンドル13の一端側には、筒状の弁体部14が一体成形されていることが記載されており、また、上記オの特に【0021】には、ケース11及びガイド体12が、弁体部14を含むスピンドル13の一部を覆う内外二重の筒状壁であることが記載されており、これらの記載を総合すると、弁体部14は、ガイド体12内に回動可能に設けられていることが理解できる。

ク 上記オの特に【0021】には、弁体部14の周壁には、流出孔15,16に対面可能な位置に連通孔17が開設されていることが記載されており、当該記載と図3の図示内容とをあわせてみると、弁体部14の周壁には、周方向の一箇所に連通孔17が開設されていることが理解できる。

ケ 上記エの特に【0018】には、ハンドル8は、湯水を吐水口9から導出する状態とシャワーエルボ10から導出する状態との切替え機能を司ることが記載され、また、上記オの特に【0022】には、ハンドル8を操作してスピンドル13を軸回りに回動させると、弁体部14がスピンドル13と一体的に回動し、弁体部14の周壁に設けられた連通孔17の軸回りの位置(位相)が変わることが記載されており、さらに、上記オの特に【0023】には、連通孔17が流出孔15に連通しているときにはカラン吐水状態となり、連通孔17が流出孔16に連通しているときにはシャワー吐水状態となることが記載されており、これらの記載を総合すると、弁体部14が回動して、連通孔17が流出孔15に連通しているときにはカラン吐水状態となり、連通孔17が流出孔16に連通しているときにはシャワー吐水状態となることが理解できる。

コ 上記オの特に【0021】及び【0023】の記載から、前記ガイド体12は、前記流出孔15,16として、前記弁体部14がシャワー吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔16と、前記弁体部14がカラン吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔15が形成されていることが理解できる。

サ 図4(A)、(B)及び(E)の図示内容から、流出孔16と流出孔15は同一円周上に設けられること、及び、流出孔16と流出孔15との間には、弁体部14が止水位置にあるときに連通孔17を塞ぐ壁部が設けられていることが看取できる。

シ 上記オの特に【0020】には、ガイド体12は、ケース11内に固定配置されることが記載され、上記オの特に【0021】には、ケース11及びガイド体12が、弁体部14を含むスピンドル13の一部を覆う内外二重の筒状壁であることが記載されており、これらの記載を総合すると、ケース11は、弁体部14とガイド体12とが収容されることが理解できる。

ス 上記オの特に【0020】には、筒状のケース11と、ケース11内に固定配置される筒状のガイド体12と、ガイド体12内に回動可能に挿入されるスピンドル13とを具備し、スピンドル13の一端側には、該一端側に開放され他端側が閉塞された筒状の弁体部14が一体成形されていることが記載されており、当該記載と、図4(A)〜(C)の図示内容から、弁体部14の一方側の端部には、弁体部14を回動させるためのスピンドル13が、ケース11の一方側の端部から外側に突出して設けられていることが理解できる。

セ 上記オの特に【0021】の記載から、ケース11は、径方向においてガイド体12の流出孔16と連通する流出孔16を有するとともに、ガイド体12の流出孔15と連通する流出孔15を有することが理解できる。

ソ 図4(B)の図示内容から、ガイド体12は、ケース11の一方側の端部から外側に突出した状態でケース11に収容されていることが看取できる。

タ 図4(B)の図示内容から、弁体部14、及びスピンドル13は、ガイド体12の他方側から当該ガイド体12に収容されて、当該ガイド体12の一方側からは抜け落ちないように構成されていることが看取できる。

チ 図4(E)の図示内容から、ガイド体12の横断面において、弁体部14が止水位置にあるときに連通孔17の中心が向く方向線を0°としたとき、ガイド体12の流出孔16は90〜180°の範囲において約90°以上となる大きさで設けられ、ガイド体12の流出孔15は−90〜−180°の範囲において約90°以上となる大きさの角度で設けられていることが看取できる。

上記ア〜タ及び図1〜9の記載を総合すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。

「周壁に流出孔15,16が形成されたガイド体12と、該ガイド体12内に回動可能に設けられて、周方向の一箇所に連通孔17が開設されている弁体部14とを備え、弁体部14が回動して、連通孔17が流出孔15に連通しているときにはカラン吐水状態となり、連通孔17が流出孔16に連通しているときにはシャワー吐水状態となる水栓において、
前記ガイド体12は、前記流出孔15,16として、前記弁体部14がシャワー吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔16と、前記弁体部14がカラン吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔15が形成され、前記ガイド体12の周壁において連通孔17が連通しない位置に開口19を有しており、
前記流出孔16と前記流出孔15は同一円周上に設けられるとともに、前記流出孔16と前記流出孔15との間には、前記弁体部14が止水位置にあるときに前記連通孔17を塞ぐ壁部が設けられており、
前記弁体部14と前記ガイド体12とが収容される筒状のケース11を備え、
前記弁体部14の一方側の端部には、前記弁体部14を回動させるためのスピンドル13が、前記ケース11の一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記ガイド体12は、前記ケース11の一方側の端部から外側に突出した状態で前記ケース11に収容されており、
前記弁体部14、及び前記スピンドル13は、前記ガイド体12の他方側から当該ガイド体12に収容されて、当該ガイド体12の一方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記ケース11は、径方向においてガイド体12の流出孔16と連通する流出孔16を有するとともに、ガイド体12の流出孔15と連通する流出孔15を有する水栓。」

また、上記ア〜チ及び図1〜9の記載を総合して、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ガイド体12の横断面において、弁体部14が止水位置にあるときに連通孔17の中心が向く方向線を0°としたとき、前記ガイド体12の流出孔16は90〜180 °の範囲において約90°以上となる大きさで設けられ、前記ガイド体12の流出孔15は−90〜−180°の範囲において約90°以上となる大きさの角度で設けられている甲1発明1の水栓。」

(2)甲第2号証について
甲第2号証には、「

(流体弁アセンブリと流体弁アセンブリに用いる封止スリーブ)」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。なお、()内の翻訳文は、当審による仮訳である。

ア 「


([0046]図1に示すように、流体弁アセンブリ1は、管状本体またはバルブ本体10、一体型シールスリーブ20、スピンドルまたは弁棒40、シールリング50、弁カバー60およびハンドル70を含む。一体型シールスリーブ20およびバルブ本体10は、凹凸整合構造30を含むことができ、それにより一体型シールスリーブ20を、回転不能で相対的に軸方向に変位可能な方法でバルブ本体10の受入れポート(図示せず)に取り付けることができる。以下で詳しく説明する。弁棒40は、バルブ本体10とシールスリーブ20に対して回転可能に取り付けられている。弁カバー60は、そのねじ部602を介してバルブ本体10の受容ポートにねじ結合され、弁棒40をバルブ本体10に押し付けて取り付ける。ハンドル70は、断面を有する係合部分420(図4A)を介して回転不能な方法で弁棒40に固定することができる。必要に応じて、ハンドル70は、ねじなどの固定機構によって弁棒40に固定することができる(図5〜8) 。)

イ「


([0049]図3A〜Eを参照すると、本発明の実施形態による一体型シールスリーブ20が示されている。一体型シールスリーブ20は、好ましくは耐摩耗性材料で作られ、より好ましくは自己潤滑性材料で作られる。シールスリーブ20は、シリンダー200を有し、シリンダー200には第1の側部開口部202、第1の側部開口部202の反対側の第2の側部開口部204、およびシリンダー200によって画定された軸方向貫通孔208が形成されている。前記シールスリーブ20は、凹凸整合構造30の一部を形成する一体的に形成された軸方向リブ302も備えている。図示の実施形態では、シールスリーブ20は、一対の半径方向に対向する軸方向リブ302を備えることができる。前記軸方向リブ302は、バルブ本体10の対応する軸方向溝304に嵌合され、それにより、シールスリーブ20が弁本体10に対して軸方向に移動し、それらの間の相対的回転を防止する。
[0050]図示の実施形態では、シールスリーブ20は、外周フランジ112の上部に配置された周辺フランジ212と、底部に隣接して配置されたリング溝804とを任意選択でさらに備える。また、シリンダー200には、筒状体の外側と内側の両方の側面開口を完全に囲むシールリブ206が一体に形成されている。
[0051]図4Aおよび図4Bを参照して、本発明の実施形態による流体弁アセンブリ1の弁棒40が示されている。示されている実施形態では、弁棒40は、側方に第1の流体ポート402および底部に第2の流体ポート404を有する。そして、軸方向に延びる内孔(図示なし)、該内孔の流体は前記第1の流体ポート402と第2の流体ポート404とを連通している。図示の実施形態では、側方の第1の流体ポート402は、上下に並んで配置された一対の開口部408と、一対の開口部408の間に形成されたウェブ410とを備える。図示の実施形態では、開口部408のサイズは、バルブ本体10のバルブポートサイズよりもかなり小さく、シールスリーブ20の側面開口サイズよりも小さい。)

ウ 「


([0057]図6を参照すると、2つの流体出口と1つの流体入口とを有する流体弁構造、特に蛇口弁が示されている。この実施形態は、分流弁、特に蛇口弁として有利に構成することができる。この実施形態では、流体弁組立体1はまた、第1のバルブポート102に対向する第3のバルブポート106と、第1の流体ポートに対向する第3の流体ポートとを含む。第1および第3のバルブポート102、106は流体出口として構成され、第2のポートバルブ104は流体入口として構成され、流体、例えば液体、例えば水は、矢印Aの方向に流体入口から流入し、2つの流体出口からそれぞれ流出することができる。)

エ 上記イの記載及び図3Aないし図3Eの図示内容から、シールスリーブ20は周面に開口部を有していることが看取でき、また、図3Aないし図3Eに図示されたシールスリーブ20の構造と、上記ウの記載及び図6に図示された2つの流体出口と1つの流体入口とを有する流体弁構造とをあわせみれば、シールスリーブ20は、弁棒40が第1の吐水位置にあるときに第1の流体ポート402と重なる第1の側部開口部202と、前記弁棒40が第2の吐水位置にあるときに前記第1の流体ポート402と重なる第2の側部開口部204とを有し、前記第1の側部開口部202、及び前記第2の側部開口部204以外に開口部を有してないことが理解できる。

オ 上記アの記載及び図6の図示内容から、弁棒40は、シールスリーブ20内に回転可能に設けられていることが理解できる。また、上記イの記載及び図4Bの図示内容から、周方向の一箇所に第1の流体ポート402を有することが理解できる。

カ 上記ウの記載及び図6の図示内容から、弁棒40の回転に基づいてシールスリーブ20の開口部と第1の流体ポート402との位置関係が変化することにより第1の吐水と第2の吐水とが切り換わることが理解できる。

キ 図3Bの図示内容から、第1の側部開口部202と第2の側部開□部204は同一円周上に設けられることが看取でき、また、図3Bと図6の図示内容をあわせみると、弁棒40の第1の流体ポート402が第1の側部開口部202と第2の側部開□部204の間の位置するときに弁棒40が止水位置にあるといえ、第1の側部開口部202と第2の側部開□部204との間には、弁棒40が止水位置にあるときに第1の流体ポート402を塞ぐ壁部が設けられているといえる。

ク 図1及び図6の図示内容から、弁棒40とシールスリーブ20とはバルブ本体10に収容され、また、シールスリーブ20は、バルブ本体10の上方側の端部よりも下方側に位置するようにバルブ本体10に収容されていることが看取でき、また、図6の図示内容から、バルブ本体10は筒状であることが看取できる。

ケ 上記アの記載並びに図4A及び図6の図示内容から、弁棒40の上方側の端部には、弁棒40を回転させるための係合部分420が、前記バルブ本体10の上方側の端部から外側に突出して設けられていることが理解できる。

コ 上記ウの記載及び図6の図示内容から、バルブ本体10は、径方向において第1の側部開口部202と重なる位置に第1のバルブポート102を有するとともに、前記第2の側部開口部204と重なる位置に第3のバルブポート106を有していることが理解できる。

サ 上記ア及びウの記載並びに図3C、図3E及び図6の図示内容から、シールスリーブ20の側部開口部202,204には、当該側部開口部202,204の各内周に沿って個別に配置されるとともにバルブ本体10の内面に接する環状のシールリブ206を備え、当該シールリブ206は、バルブ本体10の第1のバルブポート102を囲む位置と、バルブ本体10の第3のバルブポート106を囲む位置とに配置されていることが理解できる。

シ 図1及び図6の図示内容から、弁棒40、及び係合部分420は、シールスリーブ20の上方側から当該シールスリーブ20に収容されて、当該シールスリーブ20の下方側からは抜け落ちないように構成されていることが看取できる。

上記ア〜シ及び図1〜10の記載を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「周面に開口部を有するシールスリーブ20と、該シールスリーブ20内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に第1の流体ポート402を有する弁棒40とを備え、前記弁棒40の回転に基づいて前記開口部と前記第1の流体ポート402との位置関係が変化することにより第1の吐水と第2の吐水とが切り換わる流体弁アセンブリにおいて、
前記シールスリーブ20は、前記開口部として、前記弁棒40が第1の吐水位置にあるときに前記第1の流体ポート402と重なる第1の側部開口部202と、前記弁棒40が第2の吐水位置にあるときに前記第1の流体ポート402と重なる第2の側部開口部204とを有し、前記第1の側部開口部202、及び前記第2の側部開口部204以外に開口部を有してなく、
前記第1の側部開口部202と前記第2の側部開□部204は同一円周上に設けられるとともに、前記第1の側部開口部202と前記第2の側部開口部204との間には、前記弁棒40が止水位置にあるときに前記第1の流体ポート402を塞ぐ壁部が設けられており、
前記弁棒40と前記シールスリーブ20とが収容される筒状のバルブ本体10を備え、
前記弁棒40の上方側の端部には、前記弁棒40を回転させるための係合部分420が、前記バルブ本体10の上方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記シールスリーブ20は、バルブ本体10の上方側の端部よりも下方側に位置するようにバルブ本体10に収容されており、
前記弁棒40、及び前記係合部分420は、前記シールスリーブ20の上方側から当該シールスリーブ20に収容されて、当該シールスリーブ20の下方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記バルブ本体10は、径方向において前記第1の側部開口部202と重なる位置に第1のバルブポート102を有するとともに、前記第2の側部開口部204と重なる位置に第3のバルブポート106を有しており、前記シールスリーブ20は、前記第1の側部開口部202と前記第2の側部開口部204の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記バルブ本体10の内面に接する環状のシールリブ206を備え、該シールリブ206は、前記第1のバルブポート102を囲む位置と、前記第3のバルブポート106を囲む位置とに配置されている流体弁アセンブリ。」

(3)甲第3号証について
甲第3号証には、「浄水器付湯水混合水栓及び浄水器専用湯水混合水栓」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0040】
次に、切替弁41の切替機構について図5、図6を用いて詳細に説明する。図5に示すように、切替弁41は、円筒形状の弁ケース48内を回転する弁棒44に固定された円筒形状の弁46が、ナット43により固定されている。弁ケース48には水栓本体4(または本体104)に形成された給水分岐路15に連通する側に弁パッキン45Aと、給湯分岐路16に連通する側に弁パッキン45Bとが装着されている。弁棒44には切替ハンドル40がネジ42により固定されている。弁46は、回転軸方向の浄水路31に連通する側に開口47C、および図6に示すように円筒面上に開口47A、47Bを有する。」

イ 上記アの記載及び図5の図示内容から、円筒形状の弁ケース48が、水栓本体4内に設けられており、弁ケース48内を円筒形状の弁46が回転自在に設けられていることが理解できる。

ウ 図5の図示内容から、弁ケース48は、2つの開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに水栓本体4の内面に接する環状の弁パッキン45A,45Bを備えること、さらに、当該弁パッキン45A,45Bは、水栓本体4に設けられた一方側の流路穴を囲む位置と、水栓本体4に設けられた他方側の流路穴を囲む位置とに配置されていることが看取できる。

上記ア〜ウ及び図1〜6の記載を総合すると、甲第3号証には、次の技術的事項(以下、「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

「円筒形状の弁ケース48が、水栓本体4内に設けられており、弁ケース48内を円筒形状の弁46が回転自在に設けられている湯水混合水栓において、弁ケース48は、2つの開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに水栓本体4の内面に接する環状の弁パッキン45A,45Bを備えること、さらに、当該弁パッキン45A,45Bは、水栓本体4に設けられた一方側の流路穴を囲む位置と、水栓本体4に設けられた他方側の流路穴を囲む位置とに配置されていること。」

(4)甲第4号証について
甲第4号証には、「シリンダ式弁装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0021】
図2に示しているように、水栓本体12は横断面の内面形状が円形をなす略円筒状の金属製の外ハウジング30を本体ボデーとして有しており、またその内側において、同じく横断面の内面形状が円形をなす樹脂製の略円筒状の内ハウジング32を有している。
即ちこの実施形態の混合水栓10は、水栓本体12が2重ハウジング構造をなしている。
【0022】
内ハウジング32の内部且つ図1中の右端側には、内ハウジング32の内部を図中右向きに流れて来た混合水を、吐水管16側又はシャワー側に流路切替えするための、シリンダ式弁装置から成る切替弁装置34が設けられている。
【0023】
尚、内ハウジング32には吐水管16側の流出開口36が設けられていて、この流出開口36 から、吐水管16側の流出口部38が外ハウジング30を貫通して突き出しており、この流出口部38に対して、吐水管16が締結ナット40によって回転可能に連結されている。
【0024】
上記切替弁装置34は、図4に示しているように円筒形状をなすシリンダ弁体42と、これを回転可能に嵌入させる弁ケース44とを有している。
ここで弁ケース44は、シリンダ弁体42に対して直接接触するインナケース46と、その外側のアウタケース48とから成っている。
【0025】
シリンダ弁体42は、吐水管16側の通水用の一対の弁体側開口50,50と、シャワー側の通水用の一対の弁体側開口52,52を有しており、図中右端において軸体54を介し上記の切替ハンドル24に一体回転状態に連結されている。」

イ 「【0026】
シリンダ弁体42に対して直接外嵌状態に接触するインナケース46は、シール保持部材としての働きを有しており、図5に示しているように一対のシール押え56,58と本体部60とを有していて、それらの間に環状溝62,64を形成し、そこにOリングから成るシール部材66,68を挟持状態に保持している。
【0027】
詳しくは、本体部60が一対のシール部材66,68を外周側から挟圧し、またシール押え56,58がシール部材66,68を内周側から挟圧し、それらによってシール部材66,68を弾性圧縮状態に挟持している。」

ウ 「【0030】
上記シール部材66は、ケース側開口70(及び後述のケース側開口74)周りをシールするもので、ケース側開口70を取り囲む位置において、シリンダ弁体42とアウタケース48とで挟まれている。他方のシール部材68は、シャワー側のケース側開口72(及び後述のケース側開口76(図6及び図8参照))の周りをシールするもので、ケース側開口72を取り囲む位置において、シリンダ弁体42とアウタケース48とで挟まれている。」

エ 上記イ及びウの記載並びに図2、図6ないし図8の図示内容から、インナケース46は、2つの開口部の内周の環状溝62,64に沿って個別に配置されるとともにアウタケース48の内面に接する環状のシール部材66,68を備え、該シール部材66,68は、アウタケース48のケース側開口74を囲む位置と、アウタケース48のケース側開口76を囲む位置とに配置されていることが理解できる。

オ 上記アの記載及び図2ないし図5の図示内容から、シリンダ弁体42の回転により、シリンダ弁体42が有する弁体側開口50,50とインナケース46側に設けられたケース側開口70との連通と、シリンダ弁体42が有する弁体側開口52,52とケース側開口72との連通を切替えることにより、吐水管16側又はシャワー側に流路切替えすることが理解できる。

カ 図5、図7及び図8の図示内容から、インナケース46の横断面において、シリンダ弁体42が止水位置にあるときに弁体側開口50、52の中心が向く方向線を0°としたとき、インナケース46の環状溝62が設けられた第1開口部は約55〜180 °の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、インナケース46の環状溝64が設けられた第2開口部は約−55〜−180 °の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられていることが看取できる。(参考図A参照)

参考図A

上記ア〜エ及び図1〜10の記載を総合すると、甲第4号証には、次の技術的事項(以下、「甲4技術1」という。)が記載されていると認められる。

「インナケース46及びアウタケース48とからなる弁ケース44と、弁ケース44に回転可能に嵌入されるシリンダ弁体42とを備えたシリンダ式弁装置において、インナケース46は、2つの開口部の内周の環状溝62,64に沿って個別に配置されるとともにアウタケース48の内面に接する環状のシール部材66,68を備え、該シール部材66,68は、アウタケース48のケース側開口74を囲む位置と、アウタケース48のケース側開口76を囲む位置とに配置されていること。」

また、上記ア〜オ及び図1〜10の記載を総合すると、甲第4号証には、次の技術的事項(以下、「甲4技術2」という。)が記載されていると認められる。
「インナケース46及びアウタケース48とからなる弁ケース44と、弁ケース44に回転可能に嵌入されるシリンダ弁体42とを備えたシリンダ式弁装置において、シリンダ弁体42の回転により、シリンダ弁体42が有する弁体側開口50,50とインナケース46側に設けられたケース側開口70との連通と、シリンダ弁体42が有する弁体側開口52,52とインナケース46側に設けられたケース側開口72との連通を切替えることにより、吐水管16側又はシャワー側に流路切替えすること。」

さらに、上記ア〜カ及び図1〜10の記載を総合すると、甲第4号証には、次の技術的事項(以下、「甲4技術3」という。)が記載されていると認められる。

「インナケース46及びアウタケース48とからなる弁ケース44と、弁ケース44に回転可能に嵌入されるシリンダ弁体42とを備えたシリンダ式弁装置において、インナケース46の横断面において、シリンダ弁体42が止水位置にあるときに弁体側開口50、52の中心が向く方向線を0°としたとき、インナケース46の環状溝62が設けられた第1開口部は約55〜180°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、インナケース46の環状溝64が設けられた第2開口部は約−55〜−180°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられていること。」

(5)甲第5号証について
甲第5号証には、「Switching valve structure for a faucet(水栓用切換弁構造)」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。なお、()内の翻訳文は、当審による仮訳である。

ア 「Referring to FIGS. 1-6, a switching structure for a faucet according to a preferred embodiment of the present invention comprises: a body 1, a stopping sleeve 2, a switch valve 3, and a rotatable control knob 4, wherein the body 1 includes a cold-water inlet 11 and a hot-water inlet 12 which are disposed on two sides of the body 1, a chamber 13 defined between the cold-water inlet 11 and the hot-water inlet 12, an outlet pipe 14 connected with the body 1, and an outlet connector 15 for connecting with outlet equipment, such as a showerhead or a spray gun.(第3欄第17〜26行)」
(図1-6を参照すると、本発明の好適な実施の形態に係る水栓用切換構造は、本体1、スリーブ2、切換弁3、および回転可能な制御ノブ4を備え、本体1は、冷水入口11および温水入口12とを含み、それらは本体1の両側に配置されており、冷水入口11と、温水入口12との間にチャンバ13が規定されており、本体1に接続された出口管14が接続されており、シャワーまたはスプレーガンなどの出口装置と接続するための出口コネクタ15がある。)

イ 「The first close washer 26 has a first aperture 261 defined on a central position thereof and has a first seal ring 262 arranged on an inner wall thereof to surround around the first aperture 261, and the second close washer 27 has a second aperture 271 formed on a central position thereof and has a second seal ring 272 arranged on an inner wall thereof to surround around the second aperture 271, wherein the first aperture 261 aligns and communicates with the first hole 22 of the stopping sleeve 2, and the second aperture 271 aligns and communicates with the second hole 23 of the stopping sleeve 2, such that the first hole 22 of the stopping sleeve 2 is in communication with the first opening 133 of the body 1 via the first aperture 261 of the first close washer 26, and the second hole 23 of the stopping sleeve 2 is in communication with the second opening 134 of the body 1 via the second aperture 271 of the second close washer 27, the first seal ring 262 of the first close washer 26 is fitted with the first hole 22 of the stopping sleeve 2 to extend into a first part of the stopping sleeve 2, and the second seal ring 272 of the second close washer 27 is fitted with the second hole 23 of the stopping sleeve 2 to extend into a second part of the stopping sleeve 2.(第3欄51行〜第4欄5行)」
(第1ワッシャ26は、その中央位置に規定された第1の開口261を有し、当該第1の開口261の周囲を取り囲むようにその内壁に配置された第1のシールリング262を有し、第2閉鎖ワッシャ27は、その中央位置に形成された第2の開口271を有し、当該第2の開口部271の周囲を取り囲むようにその内壁に配置された第2のシールリング272を有する。第1の開口部261は、停止スリーブ2の第1の穴22と整列して連絡し、第2の開口271は、停止スリーブ2の第2の穴23と整列して連絡する。停止スリーブ2の第1の穴22は、第1の閉鎖ワッシャ26の第1の開口261を介して本体1の第1の開口部133と連絡しており、停止スリーブ2の第2の穴23は、第2の閉鎖ワッシャ27の第2の開口271を介して本体1の第2の開口134と連絡している。第1の閉鎖ワッシャ26の第1のシールリング262は、停止スリーブ2の第1の部分内に延びている。第2の閉鎖ワッシャ27の第2のシールリング272は、停止スリーブ2の第2の穴23に取り付けられていて、停止スリーブ2の第2の部分内に延在する。)

ウ 「As desiring to flow water out of the outlet pipe 14 of the body 1, as shown in FIG. 7, the rotatable control knob 4 is rotated forward to a front end of the body 1, and the affix projection 31 of the switch valve 3 abuts against a first side of the shoulder 1311 of the circular intake 131 of the body 1, the first vent 3 of the switch valve 3 is in communication with the first opening 133 of the body 1 through the first hole 22 of the stopping sleeve 2 and the first aperture 261 of the first close washer 26, such that a cold water and a hot water flow into the channel 32 of the switch valve 3 from the cold-water inlet 11 and the hot-water inlet 12 of the body 1 through the circular intake 131 of the chamber 13, and then the cold water and the hot water flow out of the outlet pipe 14 from the first vent 34 of the switch valve 3 via the first hole 22 of the stopping sleeve 2, the first aperture 261 of the first close washer 26, and the first opening 133 of the body 1.(第4欄33〜48行)

(本体1の出口管14から水を流出させようとすると、図7に示すように、回転可能な制御ノブ4が、本体1の前端に向かって前方に回転され、切換弁3の取り付け突起31が、本体1の円形入口131の肩部1311の第1の側に当接する。切換弁3の第1のベント34は、停止スリーブ2の第1の穴22及び第1の閉鎖ワッシャ26の第1の開口261を介して、本体1の第1の開口133と連絡している。冷水及び温水が、本体1の冷水入口11及び温水入口12からチャンバ13の円形入口311を通って切換弁3のチャネル32内に流れ込み、冷水及び温水は、切換弁3の第1のベント34から、停止スリーブ2の第1の穴22、第1の閉鎖ワッシャ26の第1の開口261及び本体1の第1の開口133を介して、出口管14から流出する。)

エ 「As desiring to flow the water out of the outlet equipment which is joined with the second opening 134 of the body 1, as illustrated in FIGS. 8 and 9, the rotatable control knob 4 is rotated toward one of the two sides of the body 1, and then the affix projection 31 of the switch valve 3 abuts against a second side of the shoulder 1311 of the circular intake 131 of the body 1, in the meantime, the second vent 35 of the switch valve 3 communicates with the second opening 134 of the body 1 through the second hole 23 of the stopping sleeve 2 and the second aperture 271 of the second close washer 27, hence the cold water and the hot water flow into the channel 32 of the switch valve 3 from the cold-water inlet 11 and the hot-water inlet 12 of the body 1 via the circular intake 131 of the chamber 13, and then the cold water and the hot water flow out of the outlet equipment from the second vent 35 of the switch valve 3 through the second hole 23 of the stopping sleeve 2, the second aperture 271 of the second close washer 27, the second opening 134 of the body 1, and the outlet connector 15.(第4欄49〜67行)」
(本体1の第2の開口部134と結合された出口装置から水を流出させようとすると、図8及び図9に示すように、回転可能な制御ノブ4が、本体1の両側面のうちの1つに向かって回転され、次いで、切換弁3の取り付け突起31が、本体1の円形入口131の肩部1311の第2の側に当接する。その間、切換弁3の第2のベント35は、停止スリーブ2の第2の穴23及び第2の閉鎖ワッシャ27の開口271を介して、本体1の第2の開口134と連絡している。これにより、冷水及び温水は、本体1の冷水入口11及び温水入口12からチャンバ13の円形入口311を通って切換弁3の第2のベント35から、停止スリーブ2の第2の穴23、第2の閉鎖ワッシャ27の第2の開口271、本体1の第2の開口134及び出口コネクタ15を介して、出口装置から流出する。)

オ 上記ア、ウ及びエ並びに図5ないし9の図示内容から、制御ノブ4を回転させることにより、切換弁3の第1のベント34を本体1の第1の開口133と連絡させて水を出口管14から流出させる状態と、切換弁3の第2のベント35を本体1の第2の開口134と連絡させて水をシャワーまたはスプレーガンなどの出口装置と接続するための出口コネクタ15から流出させる状態とを切り換えることが理解できる。

上記ア〜オ及び図1〜9の記載を総合すると、甲第5号証には、次の技術的事項(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

「本体1、停止スリーブ2、切換弁3、および回転可能な制御ノブ4とを備えた水栓用切換弁構造において、制御ノブ4を回転させることにより、切換弁3の第1のベント34を本体1の第1の開口133と連絡させて水を出口管14から流出させる状態と、切換弁3の第2のベント35を本体1の第2の開口134と連絡させて水をシャワーまたはスプレーガンなどの出口装置と接続するための出口コネクタ15から流出させる状態とを切り換えること。」

(6)甲第8号証について
甲第8号証には、「弁装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0057】
次に、本弁装置Bについて説明する。この弁装置Bは、図1に示すように、ハウジング10と、固定弁体20と、可動弁体30と、スピンドル40と、取付カラー60と、取付リング61と、操作部(操作ハンドル)Tとを備えている。尚、本弁装置Bにおいて、操作部(操作ハンドル)Tが装着される端部側を「前端側」若しくは「前方側」と称し、この端部側とは「反対の端部側」を、「後端側」若しくは「後方側」と称する。」

イ 「【0062】
固定弁体20は、図3及び図5に示すように、本体部材21と、2つの装着部材50、50と、2つのシール部材55、55とを備えている。このうち、本体部材21は略円筒体を用いて構成されている。尚、本実施例では、固定弁体20全体によって、「固定筒状部」の具体例を構成する。
【0063】
本体部材21は、合成樹脂製で、薄肉の略円筒体である。この本体部材21も、軸心方向に沿った両端に開口部22a、22bを備える。また、本体部材21の周壁23の前端側と後端側には、各々1つずつの被装着孔23a、23bが、当該周壁部(周壁)23を「本体部材21の半径方向」に貫通する状態で設けられている(図10等も参照)。尚、これらの被装着孔23a、23bは、「被装着部」の具体例を構成する。
【0064】
つまり、本体部材21の後端側には、1つの被装着孔(以下、「カラン側の被装着孔」という。)23aが設けられ、本体部材21の前端側にも、1つの被装着孔(以下、「シャワー側の被装着孔」という。)23bが設けられている(図10等も参照)。また、両被装着孔23a、23bは、本体部材21を周回する方向に沿って、約120度隔てた位置に設けられている。」

ウ 「【0075】
つまり、可動弁体30の後端側には、2つの可動弁孔(以下、「カラン側の可動弁孔」という。)32a、32aが併設され、可動弁体30の前端側にも、2つの可動弁孔(以下、「シャワー側の可動弁孔」という。)32b、32bが併設されている。また、カラン側の可動弁孔32aと、シャワー側の可動弁孔32 bとは、可動弁体30を周回する方向に沿って、約120度隔てた位置に設けられている。」

エ 「【0082】
次に、本弁装置Aに組み付けの手順の一具体例を説明する。先ず、本体部材21の後端側の開口部22a(固定弁体20の後端の開口部)と、可動弁体30の前端の開口部31bとを同心状に位置合わせし、本体部材21の内部に可動弁体30を挿入する。この挿入は、可動弁体30の抜け防止用のフランジ部35が、本体部材21の後端面に当接するまで行われる。これにより、可動弁体30は、本体部材21の内部において、本体部材21を基準に回動可能となる。尚、この回動は、可動弁体30の軸心を、本体部材21の軸心と一致させ、可動弁体30の外周部を本体部材21の内周部に摺動させた状態で行われる。」

オ 図10の図示内容から、可動弁体30が止水位置にあるときに可動弁孔32a、32bの中心が向く方向線を0°としたとき、固定弁体20の被装着孔23aは約40〜150 °の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、固定弁体20の被装着孔23bは約−35〜−145 °の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられていることが看取できる。(参考図B参照)

参考図B


上記ア〜オ及び図1〜10の記載を総合すると、甲第8号証には、次の技術的事項(以下、「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

「ハウジング10と、固定弁体20と、可動弁体30とを備え、可動弁体30は固定弁体20内で回動可能である弁装置において、可動弁体30が止水位置にあるときに可動弁孔32a、32bの中心が向く方向線を0°としたとき、固定弁体20の被装着孔23aは約40〜150 °の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、固定弁体20の被装着孔23bは約−35〜−145°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられていること」

2 対比・判断
(1)第1の申立ての理由・令和3年5月14日付けの取消理由通知書に記載した取消理由1(甲第1号証を主引用例とした本件特許発明1の進歩性)について
ア 本件特許発明1と甲1発明1との対比
本件特許発明1と甲1発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明1における「周壁」は、本件特許発明1における「周面」に相当し、以下同様に、「流出孔15,16」は「開口部」に、「流出孔15,16が形成された」ことは「開口部を有する」ことに、「ガイド体12」は「外側固定筒」に、「回動」は「回転」に、「連通孔17」は「流路穴」に、「連通孔17が開設されている」は「流路穴を有する」に、「弁体部14」は「内側回転筒」に、「弁体部14が回動して、連通孔17が流出孔15に連通しているときにはカラン吐水状態となり、連通孔17が流出孔16に連通しているときにはシャワー吐水状態となる」ことは「前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる」ことに、「水栓」は「切換止水弁」に、「流出孔16」は「第1開口部」に、「流出孔15」は「第2開口部」に、「前記弁体部14がシャワー吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔16と、前記弁体部14がカラン吐水状態となるときに前記連通孔17と連通する流出孔15が形成され」ることは「前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有」することに、「ケース11」は「ケース」に、「スピンドル13」は「軸部材」に、「前記ケース11は、径方向においてガイド体12の流出孔16と連通する流出孔16を有するとともに、ガイド体12の流出孔15と連通する流出孔15を有する」ことは「前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有」することにそれぞれ相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点1−1>
「周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、
前記第1開口部と前記第1開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有する切換止水弁。」

<相違点1−1>
本件特許発明1においては、「前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記シャワー流路穴を囲む位置と、前記カラン流路穴を囲む位置とに配置されている」のに対し、甲1発明1においては、ガイド体12が、流出孔15,16の各内周に沿って個別に配置されるとともにケース11の内面に接する環状のシール部材を備えるか否か不明である点。

<相違点1−2>
本件特許発明1においては、「前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してな」いのに対し、甲1発明1においては、前記ガイド体12の周壁において連通孔17が連通しない位置に開口19を有している点。

<相違点1−3>
本件特許発明1においては、「前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されて」いるのに対し、甲1発明1においては、前記ガイド体12は、前記ケース11の一方側の端部から外側に突出した状態で前記ケース11に収容されている点。

イ 相違点1−1についての判断
ケース内に外側固定筒と内側回転筒が収容され、内側回転筒が外側固定筒に対して回転可能な切換止水弁において、外側固定筒における第1開口部と第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともにケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、ケースに設けられた第1開口部に重なる位置の流路穴を囲む位置と、第2開口部に重なる位置の流路穴を囲む位置とに配置されていることは、例えば、甲2発明(上記1(2))、甲3技術(上記1(3))及び甲4技術1(上記1(4))があるとおり、周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
そして、引用文献1の図4(B)及び(E)を参照すると、符号は示されていないものの、ガイド体12の流出孔15,16の内周には、シール部材と思われる部材が看取でき、仮に、これがシール部材でないとしても、弁装置において、流体が流通する孔にシール部材を配置することは慣用手段である。そして、甲1発明1において、ガイド体12の流出孔15,16にシール部材を配置する具体的構成として周知技術1を採用して、流体が流通する複数の孔の内周に個別にシール部材を配置し、該シール部材は、ガイド体12の流出孔16に重なる位置のケース11の流出孔16を囲む位置と、ガイド体12の流出孔15に重なる位置のケース11の流出孔15を囲む位置とに配置されているものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点1−2及び1−3についての判断
ケース内に外側固定筒と内側回転筒が収容され、内側回転筒が外側固定筒に対して回転可能な切換止水弁において、外側固定筒は、第1開口部、及び第2開口部以外に開口部を有していない構成は、例えば、甲第2号証(特に、図3Aないし図3E参照。)、甲第4号証(特に、図5のインナケース46を参照。)、甲第8号証(特に、図3の本体部材21を参照。)に記載されるとおり周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であり、また、ケース内に外側固定筒と内側回転筒が収容され、内側回転筒が外側固定筒に対して回転可能な切換止水弁において、外側固定筒は、ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するようにケースに収容されていることは、例えば、甲第2号証(特に、図6参照。)、甲第4号証(特に、図2参照。)甲第8号証(特に、図1参照。)に記載されるように周知の技術(以下、「周知技術3」という。)である。
そして、甲第1号証には、図9に甲1発明1の従来技術となる水栓が示されており、当該図9の図示内容から、ガイド体54は、流出孔56や連通孔53に対向する開口部以外に開口部を有していないことが看取できるとともに、ガイド体54は、ケース55の一方側の端部よりも他方側に位置するようにケース55に収容されていることが看取できるから、甲1発明1が前提とする従来の水栓は、周知技術2や周知技術3の構成を備えたものである。
そうすると、本件特許発明1における相違点1−2及び相違点1−3に係る発明特定事項は、いずれも周知の構成であるとともに、甲1発明1を単に従来技術に戻したものであるといえるが、甲1発明1を課題解決のために改良を加える以前の従来技術の構成に戻すことは、当業者にとって格別の創意を要するものとはいえない。
なお、引用発明を従来の技術に戻すことに格別の動機付けが必要とはいえないことは、平成17年(行ケ)10026号の判決に判示されている。

エ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1の効果について検討しても、甲1発明1、周知技術1、周知技術2及び周知技術3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 特許権者の主張について
特許権者は、本件特許発明1における相違点1−2及び相違点1−3に係る発明特定事項に関して、令和3年7月2日付けの意見書において、甲1発明1は、クリック機構を構成する部材を減らして、組付けの簡易化やコストダウンをはかっているため、ガイド体の周壁に連通孔17が連通しない位置に開口19を有することが必須構成となっている旨、及び、甲1発明1は、ガイド体12がスピンドル13の一部を覆うことによってスピンドル13をガイドするものであり、ケース11の他端11bから外側に突出したスピンドル13をガイドするためには、ガイド体12もケース11の他端11bから外側に突出している必要があるため、ガイド体12がケース11の他端11bから外側に突出していることは必須構成である旨、主張している。
しかしながら、上記ウで示したとおり、甲1発明1を周知の技術でもある従来技術に戻したものであるといえ、甲1発明1において、ガイド体の周壁に連通孔17が連通しない位置に開口19を有することが必須構成であり、また、ガイド体12がケース11の他端11bから外側に突出していることは必須構成であるとしても、甲1発明1を従来技術に戻すことは、当業者にとって格別の創意を要するものとはいえない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

カ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明1、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)第2の申立ての理由・令和3年5月14日付けの取消理由通知書に記載した取消理由2(甲第1号証を主引用例とした本件特許発明2の進歩性)について
ア 本件特許発明2と甲1発明2との対比
本件特許発明2と甲1発明2との間には、上記(1)の一致点1−1に加え、次の一致点1−2があり、また、上記(1)の相違点1−1〜1−3に加え、次の相違点1−4があるといえる。

<一致点1−2>
「前記外側固定筒の横断面において、前記第1開口部は90°以上の角度となる大きさで設けられ、前記第2開口部は90°以上となる大きさの角度で設けられている切換止水弁。」

<相違点1−4>
本件特許発明2においては、「前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、前記第1開口部は30〜170°の範囲において設けられ、前記第2開口部は−30〜−170°の範囲において設けられている」のに対し、甲1発明2においては、弁体部14が止水位置にあるときに連通孔17の中心が向く方向線を0°としたとき、流出孔16は90〜180°の範囲において設けられ、流出孔15は−90〜−180°の範囲において設けられている点。

イ 相違点1−1〜1−3についての判断
上記(1)イ及びウで示したと同様の理由により、当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点1−4についての判断
甲1発明2において、流出孔15,16の位置をどのように配置するかは、流出孔15,16の大きさ、連通孔17の大きさ、止水位置とカラン吐水位置、シャワー吐水位置とを切り換える際のガイド体12の回動量などによって、当業者が適宜設定すべき事項であるところ、内側回転筒が止水位置にあるときに流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、第1開口部は30〜170°の近傍の範囲において設けられ、第2開口部は−30〜−170°の近傍の範囲において設けられていることは、例えば、甲4技術3(上記1(4))及び甲8技術(上記1(6))があるとおり、周知の技術(以下、「周知技術4」という。)である。
そうすると、甲1発明2において、流出孔15,16は、弁体部14が止水位置にあるとき連通孔17の中心が向く方向線から±90°〜180°の範囲にあるが、止水位置とカラン吐水位置、シャワー吐水位置とを切り換える際の弁体部14の回動量が少なくてすむような範囲として、より0°に近い周知技術4のような範囲にすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 本件特許発明2の効果について
本件特許発明2の効果について検討しても、甲1発明2及び周知技術1〜4の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲1発明2及び周知技術1〜4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)第3の申立ての理由・令和3年9月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由1(甲第2号証を主引用例とした本件特許発明1の進歩性)について
ア 本件特許発明1と甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲2発明における「シールスリーブ20」は、本件特許発明1における「外側固定筒」に相当し、以下同様に、「第1の流体ポート402」は「流路穴」に、「弁棒40」は「内側回転筒」に、「流体弁アセンブリ」は「切換止水弁」に、「第1の側部開口部202」は「第1開口部」に、「第2の側部開口部204」は「第2開口部」に、「バルブ本体10」は「ケース」に、「係合部分420」は「軸部材」に、「上方」は「一方」に、「下方」は「他方」に、「シールリブ206」は「シール部材」にそれぞれ相当する。
甲2発明における「前記弁棒40が第1の吐水位置にあるときに前記第1の流体ポート402と重なる第1の側部開口部202と、前記弁棒40が第2の吐水位置にあるときに前記第1の流体ポート402と重なる第2の側部開口部204とを有」することと本件特許発明1における「前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有」することは「前記内側回転筒が第1の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒が第2の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有」することという限りにおいて一致し、また、甲2発明における「第1の吐水」と本件特許発明1における「シャワー吐水」とは「第1の吐水」という限りにおいて一致し、以下同様に、「第2の吐水」と「カラン吐水」とは「第2の吐水」という限りにおいて一致し、「第1の吐水位置」と「シャワー吐水用の吐水位置」とは「第1の吐水位置」という限りにおいて一致し、「第2の吐水位置」と「カラン吐水用の吐水位置」とは「第2の吐水位置」という限りにおいて一致し、「第1のバルブポート102」と「シャワー吐水用のシャワー流路穴」あるいは「シャワー流路穴」とは「第1の流路穴」という限りにおいて一致し、「第3のバルブポート106」と「カラン吐水用のカラン流路穴」あるいは「カラン流路穴」とは「第2の流路穴」という限りにおいて一致する。

したがって、本件特許発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点2>
「周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することにより第1の吐水と第2の吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒が第1の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒が第2の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してなく、
前記第1開口部と前記第1開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置に第1の流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置に第2の流路穴を有し、前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記第1の流路穴を囲む位置と、前記第2の流路穴を囲む位置とに配置されている
切換止水弁。」

<相違点2−1>
本件特許発明1においては、第1の吐水及び第2の吐水が「シャワー吐水」及び「カラン吐水」であり、第1の吐水位置及び第2の吐水位置が「シャワー吐水用の吐水位置」及び「カラン吐水用の吐水位置」であり、さらに、第1の流路穴及び第2の流路穴が「シャワー吐水用のシャワー流路穴」あるいは「シャワー流路穴」及び「カラン吐水用のカラン流路穴」あるいは「カラン流路穴」であるのに対し、甲2発明においては、第1の吐水及び第2の吐水が、シャワー吐水及びカラン吐水であるか不明であり、第1の吐水位置及び第2の吐水位置がシャワー吐水用の吐水位置及びカラン吐水用の吐水位置であるか不明であり、さらに、第1の流路穴及び第2の流路穴がシャワー吐水用のシャワー流路穴あるいはシャワー流路穴及びカラン吐水用のカラン流路穴あるいはカラン流路穴であるか不明である点。

<相違点2−2>
本件特許発明1においては、「前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されて」いるのに対し、甲2発明においては、前記弁棒40、及び前記係合部分420は、前記シールスリーブ20の上方側から当該シールスリーブ20に収容されて、当該シールスリーブ20の下方側からは抜け落ちないように構成されている点。

イ 相違点2−1についての判断
甲2発明の流体弁アセンブリの第1の吐水及び第2の吐水を、それぞれどのような吐水態様とするかは、その用途に応じて当業者が適宜選択し得る事項であるところ、シャワー吐水とカラン吐水とを切り換える切換止水弁は、例えば、甲1発明1、甲4技術2及び甲5技術にあるように周知の技術(以下、「周知技術5」という。)であり、甲2発明を周知技術の切換止水弁に採用して、第1の吐水及び第2の吐水をそれぞれシャワー吐水及びカラン吐水となるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、第1の吐水位置及び第2の吐水位置をシャワー吐水用の吐水位置及びカラン吐水用の吐水位置とし、さらに、第1の流路穴及び第2の流路穴がシャワー吐水用のシャワー流路穴あるいはシャワー流路穴及びカラン吐水用のカラン流路穴あるいはカラン流路穴とすることは、第1の吐水及び第2の吐水を、周知技術5の切換止水弁のようにそれぞれシャワー吐水及びカラン吐水とすることにより必然的に得られる構成である。

ウ 相違点2−2についての判断
本件特許発明1や甲2発明と同様に、外側固定筒と当該外側固定筒内に回転可能に設けられた内側回転筒とを備え、内側回転筒の回転に基づいて外側固定筒の周面に設けられた開口部と内側回転筒の周面に設けられた流路穴を切り換えるようにした切換止水弁において、内側回転筒、及び軸部材は、外側固定筒の他方から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されていることは、甲1発明1のほか、例えば、特開2006−275248号公報(特に図1参照)、実願昭50−17003号(実開昭51−79728号公報)のマイクロフィルム(特に明細書7ページ6〜15行、第1〜3図参照)、特開2008−185159号公報(特に図3参照)、特開2004−11815号(特に図2、3参照)、特開2002−323154号公報(特に図2、5参照)に記載されるように周知の技術(以下、「周知技術6」という。)である。
上記周知例として示した切換止水栓の軸部材はいずれも外側固定筒の一方側において、外側固定筒の内径よりも小さな外径を有していることにより、外側固定筒の他方から当該外側固定筒に収容されるものであるところ、甲2発明は、シールスリーブ20の一方側となる上部周辺フランジ412、414(当審注:図4Aの上部周辺フランジを示す符号「416」は「414」の誤記と認められる。)及びシーリング溝418の外径がシールスリーブ20の内径よりも大きいため、シールスリーブ20の他方側から弁棒40を収容することは困難なものとなっている。そして、甲第2号証には、フランジ412、414及びシーリング溝418がシールスリーブ20の内径よりも大きいことが必須の構成であると解し得る記載は見あたらず、甲2発明において、フランジ412、414及びシーリング溝418に相当する部分の外径とシールスリーブ20の内径との大小関係を適宜設定してシールスリーブ20に対して一方側と他方側のどちら側から収容するかは、当業者が必要に応じて適宜定める設計事項にすぎず、甲2発明において、上記周知技術6の切換止水栓の軸部材のように、外側固定筒の一方側において、外側固定筒の内径よりも小さな外径を有していることにより、外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されるものとすることは当業者が容易になし得たことである。

エ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1の効果について検討しても、甲2発明、周知技術5及び周知技術6の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 特許権者の主張について
特許権者は、本件特許発明1における相違点2−2に係る発明特定事項に関して、令和3年12月6日付けの意見書において、甲2発明において、上記相違点2−2の構成を採用すると、参考図1のように、ステム40の一方側の径を細くして、一体化シールスリーブ20の他方側から収容できるようにする必要があるが、そうすると、ステム40とバルブボデー10との間に空間が形成されてしまうため、ステム40とバルブボデー10の間の水密性を確保することが困難になることや、ステム40とバルブボデー10の間の水密性を確保するために、参考図2のように、一体化シールスリーブ20をバルブボデー10の一方側に延ばし、延ばした一体化シールスリーブ20の外周に別途シールリングを配置して、一体化シールスリーブ20とバルブボデー10の間で水密性を確保することが考えられるが、参考図2の態様は、二段階の改変に当たるため、いわゆる容易の容易であって、当業者に容易想到とはいえない旨主張している。

参考図1


参考図2

しかしながら、甲第2号証の記載によれば、甲2発明のシールスリーブ20は、シールリブ206が一体に形成されているものであるから(上記1(2)イ[0049]、[0050])、シールスリーブ20自体がシール性を備えたもの、あるいは、一体的にシールを設けることが可能であることが理解でき、そうすると、ステム40の一方側の径を細くして、ステム40とバルブボデー10との間に空間が形成されたとしても、シールスリーブ20をバルブボデー10の一方側に延ばして一体のシールを形成すれば足り、別個のシールリングを設ける必要性は生じないことが明らかであり、特許権者が主張するような「二段階の改変」や「容易の容易」が生じることはない。
また、同意見書において、特許権者は、参考図2の態様では、一体化シールスリーブ20の移動を規制するために、一体化シールスリーブ20の一方側の端部を、バルブボデー10の一方側の端部と面一にして、弁カバー60に当接させる必要があるため、参考図2の態様では、「前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されており」という本件特許発明1の構成から外れることになると主張している。
しかしながら、甲第2号証の図4A等を参照すると、甲2発明の弁棒40の下部には、シールスリーブ20の下面を受けるための下部周辺フランジ416を備えていることが看取でき、このことから弁棒40をシールスリーブ20の上方側から収容する際に、シールスリーブ20を弁棒40の下部周辺フランジ416よりも広げることができる程度に、シールスリーブ20に弾力性が備わっていることが理解できるから、弁軸40にシールスリーブ20の上面に接するような下部周辺フランジ416と同様の大きさのフランジを設けて、弁棒40をシールスリーブ20の下方側からも収容可能とすることは、甲2発明に周知技術6の技術思想を適用するに際し、その具体的な構成として甲第2号証に接した当業者が普通に採用し得るものにすぎない。(参考図C参照)
参考図C

そして、このように構成すれば、シールスリーブ20の一方側の端部を参考図2にあるようなバルブボデー10の一方側の端部と面一にはならない。
なお、参考図Cのように構成すると、弁棒40はシールスリーブ20の上方側からも下方側からも収容可能となるが、弁棒40は、いずれの側からも抜け落ちないように構成されていることは明らかである。

カ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲2発明、周知技術5及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)第4の申立ての理由・令和3年9月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由2(甲第2号証を主引用例とした本件特許発明2の進歩性)について
ア 本件特許発明2と甲2発明との間には、上記(3)の一致点2で一致し、また、上記(3)の相違点2−1、2−2に加え、次の相違点2−3があるといえる。

<相違点2−3>
本件特許発明2においては、「前記外側固定筒の横断面において、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、前記第1開口部は30〜170°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、前記第2開口部は−30〜−170°の範囲において90°以上となる大きさの角度で設けられている」のに対し、甲2発明においては、第1の側部開口部202及び第2の側部開口部204が、どのような範囲でどのような角度となる大きさで設けられているか不明である点。

イ 相違点2−1、2−2についての判断
上記(3)の<相違点2−1についての判断>、<相違点2−2についての判断>で示したと同様の理由により、当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点2−3についての判断
甲2発明において、第1の側部開口部202及び第2の側部開口部204の位置をどのような範囲で配置するかは、第1の側部開口部202及び第2の側部開口部204の大きさ、第1の流体ポート402の大きさ、止水位置と第1の吐水位置、第2の吐水位置とを切り換える際の弁棒40の回動量などによって、当業者が適宜設定すべき事項であるところ、内側回転筒が止水位置にあるときに流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、第1開口部は30〜170°の近傍の範囲において90°以上となる大きさの角度で設けられ、第2開口部は−30〜−170°の近傍の範囲において90°以上となる大きさの角度で設けられていることは、甲4技術3(上記1(4))及び甲8技術(上記1(6))があるとおり、周知の技術(以下、「周知技術7」という。)である。
そうすると、甲2発明において、第1の側部開口部202及び第2の側部開口部204を、止水位置と第1の吐水位置、第2の吐水位置とを切り換える際の弁棒40の回動量が少なくてすむように、より0°に近い周知技術7のような範囲とし、大きさを90°以上にすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 本件特許発明2の効果について
そして、本件特許発明2の効果について検討しても、甲2発明、周知技術5、周知技術6及び周知技術7の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明2は、甲2発明、周知技術5、周知技術6及び周知技術7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明1、周知技術1〜3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明1は、甲2発明、周知技術5及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件特許発明2は、甲1発明2及び周知技術1〜4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明2は、甲2発明及び周知技術5〜7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。



 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に開口部を有する外側固定筒と、該外側固定筒内に回転可能に設けられて、周方向の一箇所に流路穴を有する内側回転筒とを備え、前記内側回転筒の回転に基づいて前記開口部と前記流路穴との位置関係が変化することによりシャワー吐水とカラン吐水とが切り換わる切換止水弁において、
前記外側固定筒は、前記開口部として、前記内側回転筒がシャワー吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第1開口部と、前記内側回転筒がカラン吐水用の吐水位置にあるときに前記流路穴と重なる第2開口部とを有し、前記第1開口部、及び前記第2開口部以外に開口部を有してなく、
前記第1開口部と前記第2開口部は同一円周上に設けられるとともに、前記第1開口部と前記第2開口部との間には、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴を塞ぐ壁部が設けられており、
前記内側回転筒と前記外側固定筒とが収容される筒状のケースを備え、
前記内側回転筒の一方側の端部には、前記内側回転筒を回転させるための軸部材が、前記ケースの一方側の端部から外側に突出して設けられており、
前記外側固定筒は、前記ケースの一方側の端部よりも他方側に位置するように前記ケースに収容されており、
前記内側回転筒、及び前記軸部材は、前記外側固定筒の他方側から当該外側固定筒に収容されて、当該外側固定筒の一方側からは抜け落ちないように構成されており、
前記ケースは、径方向において前記第1開口部と重なる位置にシャワー吐水用のシャワー流路穴を有するとともに、前記第2開口部と重なる位置にカラン吐水用のカラン流路穴を有し、前記外側固定筒は、前記第1開口部と前記第2開口部の各内周に沿って個別に配置されるとともに前記ケースの内面に接する環状のシール部材を備え、該シール部材は、前記シャワー流路穴を囲む位置と、前記カラン流路穴を囲む位置とに配置されていることを特徴とする切換止水弁。
【請求項2】
前記外側固定筒の横断面において、前記内側回転筒が止水位置にあるときに前記流路穴の中心が向く方向線を0°としたとき、前記第1開口部は30〜170°の範囲において90°以上の角度となる大きさで設けられ、前記第2開口部は−30〜−170°の範囲において90°以上となる大きさの角度で設けられている請求項1に記載の切換止水弁。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-10 
出願番号 P2016-239201
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (F16K)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 熊谷 健治
佐々木 芳枝
登録日 2020-06-24 
登録番号 6722576
権利者 株式会社KVK
発明の名称 切換止水弁  
代理人 弟子丸 健  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 恩田 博宣  
代理人 渡邊 誠  
代理人 恩田 誠  
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