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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F28F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F28F
管理番号 1389374
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-17 
確定日 2022-07-20 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6806187号発明「熱交換器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6806187号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3、5−7、9〕について訂正することを認める。 特許第6806187号の請求項3、6、7、9、10に係る特許を取り消す。 特許第6806187号の請求項1、5に係る特許を維持する。 特許第6806187号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6806187号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜11に係る特許についての出願は、令和元年6月13日に出願され、令和2年12月8日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。
これに対して令和3年6月17日に特許異議申立人 小林 敏樹(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1〜3、5〜7、9、10に係る特許について特許異議の申立てがされたものであり、その主な経緯は次のとおりである。
令和3年9月10日付け取消理由通知(発送日:令和3年9月16日)
令和3年11月15日に特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)
令和3年12月27日に申立人による意見書の提出
令和4年3月2日付け取消理由通知(決定の予告)(発送日:令和4年3月7日)

なお、令和4年3月2日付け取消理由通知(決定の予告)において、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求は、願書に添付された特許請求の範囲を令和3年11月15日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜3、5〜7、9について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであって、その内容は以下の訂正事項1〜6のとおりである。なお、下線は特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「・・・形成されることを特徴とする熱交換器。」(「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)と記載されているのを、
「・・・形成され、
前記複数の伝熱管(13)は、前記所定の方向に1列に配列され、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれに、前記複数の伝熱管(13)における前記所定の方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が連通することを特徴とする熱交換器。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項2において、
前記複数の伝熱管(13)は、前記ヘッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列されることを特徴とする熱交換器。」と記載されているのを、独立形式に改め、
「所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成され、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向の内側に2列以上で千鳥配列されることを特徴とする熱交換器。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「・・・さらに備えることを特徴とする熱交換器。」と記載されているのを、
「・・・さらに備え、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、
前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)
を有することを特徴とする熱交換器。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項5において、
前記一対の外側板(43,113)のそれぞれにカシメ用爪(44,114)が設けられることを特徴とする熱交換器。」と記載されているのを、独立形式に改め、
「所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)のそれぞれを前記ヘッダ(21,24)の幅方向の外側から覆う一対の外側板(43,113)をさらに備え、
前記一対の外側板(43,113)のそれぞれにカシメ用爪(44,114)が設けられることを特徴とする熱交換器。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1乃至8のいずれか1つにおいて、」と記載されているのを、
「請求項1、3乃至8のいずれか1つにおいて、」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「複数の伝熱管(13)」及び「複数の差し込み空間(70)」について、訂正後の請求項1において、
「前記複数の伝熱管(13)は、前記所定の方向に1列に配列され、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれに、前記複数の伝熱管(13)における前記所定の方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が連通する」との記載により、
複数の伝熱管及び複数の差し込み空間(70)の構成を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許明細書等における明細書の段落【0081】の「具体的には、例えば図14に示すように、管段方向に1列に配列された複数の伝熱管(13)における管段方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が各差し込み空間(70)と連通するように連結ヘッダを構成してもよい。」との記載及び図14の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記ア、イのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、明細書に記載されており、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3のうち、訂正前の請求項3が、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2の記載をさらに引用する記載であったものを、訂正後の請求項3において、訂正前の請求項1及び2の記載内容を変更することなく取り込み、訂正前の請求項1及び2の記載を引用しない形へと書き換える記載とした訂正(以下「訂正3−1」という。)は、他の請求項の記載を引用しない形へと書き換えるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3のうち、訂正前の請求項3における「前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列される」との記載を、訂正後の請求項3において、「前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向の内側に2列以上で千鳥配列される」とする訂正(以下「訂正3−2」という。)は、複数の伝熱管の配列をさらに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3における訂正3−1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2をさらに引用する訂正前の請求項3の記載内容を変更するものではない。
また、訂正事項3における訂正3−2は、特許明細書等における明細書の段落【0053】の「複数の貫通孔(42)は、複数の伝熱管(13)の配列に合わせて、ヘッダ幅方向に沿って千鳥状に隣り合うように多列(例えば2列)に配置される。」との記載、段落【0057】の「すなわち、複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、管列方向に並び且つ管段方向の位置が異なる2本の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する。」との記載並びに図4及び図6の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正3−1は、訂正前の請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項3の記載内容を変更するものではなく、また、訂正3−2は、上記ア、イのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、明細書に記載されており、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項3は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載された「第3部材(60)」、「複数の差し込み空間(70)」、「複数の伝熱管(13)」及び「仕切り板(52)」について、
訂正後の請求項5において、
「前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、
前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)
を有する」との記載により、
第3部材(60)、複数の差し込み空間(70)、複数の伝熱管(13)及び仕切り板(52)の構成を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4により特定された「前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、」との事項は、特許明細書等における明細書の段落【0055】の「本実施形態では、第3部材(60)つまり平板部(61)は、複数の差し込み空間(70)における第1部材(40)の主壁部(41)の反対側を塞ぐ。」との記載並びに図4及び図5の記載に基づくものである。
また、訂正事項4により特定された「前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、」との事項は、特許明細書等における明細書の段落【0057】の「すなわち、複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、管列方向に並び且つ管段方向の位置が異なる2本の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する。」との記載及び段落【0085】の「また、例えば図18に示すように、ヘッダ幅方向に3列で千鳥状配列された複数の伝熱管(13)におけるヘッダ幅方向に隣り合う3本の伝熱管(13)の端部が各差し込み空間(70)と連通するように連結ヘッダを構成してもよい。」との記載並びに図6及び図18の記載に基づくものである。
また、訂正事項4により特定された「前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、」との事項は、特許明細書等における明細書の段落【0053】の「複数の貫通孔(42)は、複数の伝熱管(13)の配列に合わせて、ヘッダ幅方向に沿って千鳥状に隣り合うように多列(例えば2列)に配置される。」との記載に基づくものである。
さらに、訂正事項4により特定された「前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)を有する」との事項は、特許明細書等における明細書の段落【0057】の「また、本実施形態では、図6に示すように、第2部材(50)の仕切り板(52)は、第1部材(40)の貫通孔(42)つまり伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)を有し、」との記載及び段落【0085】の「また、伝熱管(13)の千鳥配列に対応して、第2部材(50)の仕切り板(52)に、垂直な段差(52b)を設けてもよい。」との記載並びに図6及び図18の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項4は特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記ア、イのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、明細書に記載されており、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6について、訂正後の請求項6において、その記載内容を変更することなく訂正前の請求項5の記載を引用しない形へと書き換える記載としたものである。
したがって、訂正事項5は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、訂正後の請求項6において、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6の記載内容を変更するものではないから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、訂正後の請求項6において、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6の記載内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項9において、請求項1乃至8のいずれか1つを引用する記載であったものを、訂正後の請求項9において、請求項2の削除に伴い、引用する請求項の選択肢である請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1〜3、5〜7及び9について、請求項2、3及び9は、請求項1を引用する関係にあり、それぞれ訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるとともに、請求項6、7及び9は、請求項5を引用する関係にあり、それぞれ訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
そして、共通する請求項9は、訂正される請求項1又は5に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正請求は、訂正前の請求項〔1−3、5−7、9〕の一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3、5−7、9〕について訂正することを認める。

第3 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
本件訂正後の請求項3、6、7、9及び10に係る特許に対して、当審が令和4年3月2日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由(進歩性
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

記 (引用文献等については「2 引用文献等一覧」を参照)
1 本件発明
本件訂正後の請求項3、6、7、9及び10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3、6、7、9及び10に記載された事項(下記第4の1を参照。)により特定されるとおりのものである。

2 引用文献等一覧
取消理由に引用した文献は以下のとおりである。
(1)特開2015−113983号公報(甲第1号証であって、以下「甲1」という。)
(2)特開2007−170718号公報(甲第2号証であって、以下「甲2」という。)
(3)特開2010−249343号公報(甲第3号証であって、以下「甲3」という。)
(4)特開2016−95087号公報(甲第4号証であって、以下「甲4」という。)

3 理由(進歩性)について
(1)請求項3について
請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項6について
請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項7について
請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求項9について
ア 請求項3を引用した場合
請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求項6を引用した場合
請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求項6を引用する請求項7を引用した場合
請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求項10について
請求項10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 当審の判断
1 訂正後の本件発明について
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、本件訂正後の請求項1、3、5〜7、9及び10に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3、5〜7、9及び10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成され、
前記複数の伝熱管(13)は、前記所定の方向に1列に配列され、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれに、前記複数の伝熱管(13)における前記所定の方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が連通することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成され、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向の内側に2列以上で千鳥配列されることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21)は、前記第3部材(130)における前記複数の伝熱管(13)の反対側に配置され且つ主流路(142)を構成する第4部材(140)をさらに備え、
前記第3部材(130)には、前記複数の差し込み空間(160)のそれぞれと前記主流路(142)とを接続する複数の孔(132)が設けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)のそれぞれを前記ヘッダ(21,24)の幅方向の外側から覆う一対の外側板(43,113)をさらに備え、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、
前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)
を有することを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)のそれぞれを前記ヘッダ(21,24)の幅方向の外側から覆う一対の外側板(43,113)をさらに備え、
前記一対の外側板(43,113)のそれぞれにカシメ用爪(44,114)が設けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記一対の外側板(43,113)は、前記第1部材(40,110)の一部として前記主壁部(41,111)と一体に形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の一方側を区画する側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記側板(51,121)と接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の他方側を区画する外側板(43,113)をさらに備え、
前記側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項9】
請求項1、3乃至8のいずれか1つにおいて、
前記複数の伝熱管(13)のそれぞれは、扁平管であることを特徴とする熱交換器。
【請求項10】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記第2部材(50,120)は、別体に形成された複数のブロック(50a〜50d,120a〜120d)を前記所定の方向に沿って接合させて構成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項11】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の一方側を区画する側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記側板(51,121)と接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の他方側を区画する外側板(43,113)をさらに備え、
前記第2部材(50,120)は、別体に形成された複数のブロック(50a〜50d,120a〜120d)を前記所定の方向に沿って接合させて構成されることを特徴とする熱交換器。」

2 引用文献等について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、上下方向に並ぶ複数の扁平管を有する複数の熱交換要素を折り返しヘッダを介して多列配置する熱交換器がある。このような熱交換器の折り返しヘッダは、上流側の熱交換要素における複数の扁平管を通過した冷媒を前記折り返しヘッダ内の1つの空間に集め、下流側の熱交換要素における複数の扁平管に再分配して導入させるものである。
【0003】
しかしながら、上記のような熱交換器では、図9に示すように、上流側の熱交換要素を通過して折り返しヘッダ内に集まった気液2相の冷媒は気液が分離し易く、折り返しヘッダ内の下方に液冷媒が溜まり、所謂液溜まりが発生する。
【0004】
したがって、下流側の熱交換要素における複数の扁平管に折り返しヘッダから再分配される場合に、図10に示すように、上方の扁平管と下方の扁平管とでは気液2相の冷媒が均等に流れなくなり、熱交換器の効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4989979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、上下方向に並ぶ複数の扁平管を有する複数の熱交換要素を折り返しヘッダを介して多列配置する熱交換器において、折り返しヘッダ内に液溜まりが生じることを防止するとともに、下流側の熱交換要素の各扁平管に気液2相の冷媒を均等に流し、熱交換器の効率を維持することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る熱交換器は、上下方向に並ぶ複数の第1扁平管を有する第1熱交換要素と、上下方向に並ぶ複数の第2扁平管を有する第2熱交換要素と、前記第1熱交換要素における前記第1扁平管の延在方向の一方の端部、及び前記第2熱交換要素における前記第2扁平管の延在方向の一方の端部を接続して、前記第1熱交換要素を通過した冷媒を前記第2熱交換要素に折り返して導入させる折り返しヘッダと、を備え、前記折り返しヘッダが、上下方向に仕切られた複数の冷媒折り返し空間を有し、それぞれの前記冷媒折り返し空間に、前記第1扁平管及び前記第2扁平管が、それぞれ1本ずつ連通していることを特徴とする。
【0008】
このように構成した熱交換器によれば、折り返しヘッダが、上下方向において仕切られた複数の冷媒折り返し空間を有しており、冷媒折り返し空間に第1熱交換要素の第1扁平管及び第2熱交換要素の第2扁平管がそれぞれ1本ずつ連通しているので、第1熱交換要素の複数の第1扁平管を通過した冷媒が同じ空間に集まらず、それぞれ対応する冷媒折り返し空間を通って対応する第2扁平管に流れるので、液溜まりが生じにくくなるとともに、第2熱交換要素の複数の第2扁平管に気液2相の冷媒を均等に流すことができ、熱交換器の効率を維持することができる。
【0009】
前記折り返しヘッダが、前記複数の第1扁平管及び前記複数の第2扁平管が挿入される第1板部材と、前記第1板部材と一体となって前記冷媒折り返し空間を形成する第2板部材と備えることが望ましい。これならば、構造を簡略化しながら、折り返しヘッダにおける複数の冷媒折り返し空間を形成することができる。
【0010】
前記第2板部材が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された平板状をなす孔あき部材と、前記孔あき部材における前記貫通孔の一方の開口を閉塞する閉塞部材とを備え、前記第1板部材の側面、前記孔あき部材の前記貫通孔、及び、前記閉塞部材の側面により前記冷媒折り返し空間が形成されることが望ましい。これならば、構造を簡略化しながら、冷媒折り返し空間を確実に形成することができる。」

「【0013】
このように構成した本発明によれば、上下方向に並ぶ複数の扁平管を有する複数の熱交換要素を折り返しヘッダを介して多列配置する熱交換器において、折り返しヘッダ内に液溜まりが生じることを防止するとともに、下流側の熱交換要素の各扁平管に気液2相の冷媒を均等に流し、熱交換器の効率を維持することができる。」

「【0016】
本実施形態に係る熱交換器100は、図1及び図2に示すように、上下方向(鉛直方向)に並ぶ複数の第1扁平管1Aを有する第1熱交換要素1と、上下方向に並ぶ複数の第2扁平管2Aを有する第2熱交換要素2と、第1熱交換要素1における第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び第2熱交換要素2における第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続して、第1熱交換要素1を通過した冷媒を第2熱交換要素2に折り返して導入させる折り返しヘッダ3とを備える。
【0017】
第1熱交換要素1は、図1に示すように、コルゲートフィン1Bを介して上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1Aを有するものである。この第1扁平管1Aは、図2に示すように、断面概略長方形状をなし、その内部に独立して水平方向に並ぶ複数の流体流通孔1Aaを有する多穴管である。本実施形態では、第1扁平管1Aは、7つの流体流通孔1Aaを有する。
【0018】
第2熱交換要素2は、図1に示すように、コルゲートフィン2Bを介して上下方向に並ぶ複数の第2扁平管2Aを有するものである。この第2扁平管2Aは、図2に示すように、断面概略長方形状をなし、その内部に独立して水平方向に並ぶ複数の流体流通孔2Aaを有する多穴管である。本実施形態では、第2扁平管2Aは、7つの流体流通孔2Aaを有する。
【0019】
ここで、本実施形態における第1熱交換要素1及び第2熱交換要素2は、第1扁平管1Aの延在方向(冷媒流通方向)と第2扁平管2Aの延在方向(冷媒流通方向)とが平行となるように、2列に並設されている。また、第1扁平管1Aの本数と、第2扁平管2Aの本数とは同数であり、各第1扁平管1Aと、各第2扁平管2Aとは、水平方向に対向して一対一に対応しており、同じ高さ位置に配置されている。
【0020】
折り返しヘッダ3は、並設された第1熱交換要素1と第2熱交換要素2とを同一端部側で接続するものであり、第1熱交換要素1の一方の端部1Z及び第2熱交換要素2の一方の端部2Zを取り囲むように上下方向に延び設けられている。この折り返しヘッダ3は、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aにおいて、水平方向に互いに隣り合う1本の第1扁平管1Aと1本の第2扁平管2Bとの間で冷媒を折り返して流すものである。
【0021】
そして折り返しヘッダ3には、図2に示すように、上下方向に仕切られた複数の冷媒折り返し空間3Aが形成されている。具体的に折り返しヘッダ3は、図1及び図2に示すように、各熱交換要素1、2の各扁平管1A、2Aが挿入して固定される第1板部材31と、第1板部材31と一体となって密閉された冷媒折り返し空間3Aを形成する第2板部材32とを有する。
【0022】
本実施形態においては、第2板部材32が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、孔あき部材32Aにおける貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bとからなる。ここで、孔あき部材32Aの貫通孔32Zは、第1扁平管1A及び第2扁平管2Aの数と同数設けられており、貫通孔32Zの長手方向が水平方向に沿うように形成され、正面視において概略長方形をなす。なお、この貫通孔32Zには、水平方向に互いに隣り合う1本の第1扁平管1Aと1本の第2扁平管2Bとの開口部が位置することになる。
【0023】
そして、第1板部材31の側面、孔あき部材32Aの貫通孔32Z、及び、閉塞部材32Bの側面により冷媒折り返し空間3Aが形成されている。なお、図1の折り返しヘッダ3は、第1板部材31、孔あき部材32A、及び、閉塞部材32Bを展開した状態を示す。
【0024】
このように構成された折り返しヘッダ3において各冷媒折り返し空間3Aには、第1扁平管1A及び第2扁平管2Aが、それぞれ1本ずつ連通している。これにより、冷媒は、1本の第1扁平管1Aに形成された流体流通孔1Aaを通過して、1つの冷媒折り返し空間3Aを通過した後、1本の第2扁平管2Aに形成された流体流通孔2Aaに流れ込む。つまり、第1熱交換要素1の複数の第1扁平管1Aを通過した冷媒は、同じ空間に集まることなく、1本の第1扁平管1Aと、1本の第2扁平管2Aとが、一対一で接続されることになる。
【0025】
ここで、折り返しヘッダ3の製造方法としては、第1板部材31及び孔あき部材32Aの間と、孔あき部材32A及び閉塞部材32Bの間とに、ろう材を介在させてろう付けすることが考えられる。その一例としては、第1板部材31又は孔あき部材32Aの少なくとも一方、及び、孔あき部材32A又は閉塞部材32Bの少なくとも一方を、その片面又は両面にろう材を被覆したクラッド材により構成することが考えられる。このクラッド材を用いた場合には、ろう付け工程を簡略化することができる。
【0026】
このように構成した熱交換器100によれば、折り返しヘッダ3が、上下方向において仕切られた複数の冷媒折り返し空間3Aを有しており、冷媒折り返し空間3Aに第1扁平管1A及び第2扁平管2Aがそれぞれ1本ずつ連通しているので、第1熱交換要素1の複数の第1扁平管1Aを通過した冷媒が同じ空間に集まらず、それぞれ対応する冷媒折り返し空間3Aを通って対応する第2熱交換要素2の第2扁平管2Aに流れるので、折り返しヘッダ3において液溜まりが生じにくくなるとともに、第2熱交換要素2の各第2扁平管2Aに気液2相の冷媒を均等に流すことができ、熱交換器100の効率を維持することができる。
【0027】
また、折り返しヘッダ3が、第1熱交換要素1及び第2熱交換要素2の各扁平管1A、2Aが挿入される第1板部材31と、第1板部材31と一体となって冷媒折り返し空間3Aを形成する第2板部材32とを有するので、構造を簡略化しながら、折り返しヘッダ3における複数の冷媒折り返し空間3Aを形成することができる。
【0028】
さらに、第2板部材32が、厚み方向に貫通する複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、孔あき部材32Aの貫通孔32Zの一方開口を閉塞する閉塞部材32Bとを有し、第1板部材31の側面、孔あき部材32Aの貫通孔32Z、及び、閉塞部材32Bの側面により冷媒折り返し空間3Aが形成されるので、構造を簡略化しながら、折り返しヘッダ3における複数の冷媒折り返し空間3Aを確実に形成することができる。」






イ 上記アの記載から分かること
(ア)上記アの段落0001〜0010、0013及び0016〜0028並びに図1及び2の記載によれば、甲1には、熱交換器100が記載されていることが分かる。
(イ)上記アの段落0006及び0016並びに図1及び図2記載によれば、熱交換器100は、上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aを備えることが分かる。
(ウ)上記アの段落0016並びに図1及び図2記載によれば、熱交換器100は、複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続する折り返しヘッダ3を備えることが分かる。
(エ)上記アの段落0021並びに図1及び図2記載によれば、折り返しヘッダ3は、複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態に挿入して固定される複数の接続用の孔が形成された主壁部を含む第1板部材31を備えることが分かる。
ここで、第1板部材31の「主壁部」は引用文献1の図1及び図2から見て取れる。
また、第1板部材31の複数の接続用の孔において、複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態であることは、引用文献1の図1及び図2から見て取れる。
(オ)上記アの段落0022、0023、0026及び0027並びに図1及び図2記載によれば、折り返しヘッダ3は、複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通する、厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aを備えることが分かる。
(カ)上記アの段落0021及び0022並びに図1及び図2記載によれば、折り返しヘッダ3は、前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向する、前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bを備えることが分かる。
ここで、閉塞部材32Bが、複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向することは、図1及び図2から見て取れる。
(キ)上記アの段落0021及び0023並びに図1及び図2記載によれば、折り返しヘッダ3において、第1板部材31の側面、孔あき部材32Aの複数の貫通孔32Z及び閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成されることが分かる。
(ク)上記アの図1及び図2記載によれば、孔あき部材32Aにおいて、折り返しヘッダ3の幅方向から複数の冷媒折り返し空間3Aを挟む一対の側方の板状部分を含むことが分かる。
(ケ)上記アの図1及び図2記載によれば、孔あき部材32Aにおいて、複数の冷媒折り返し空間3A同士を仕切るように一対の側方の板状部分のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切りの板状部分を含むことが分かる。
(コ)上記アの段落0022並びに図1及び図2記載によれば、孔あき部材32Aにおいて、一対の側方の板状部分及び仕切りの板状部分は、一体に形成されることが分かる。
(サ)上記アの段落0024及び0026並びに図1及び図2記載によれば、閉塞部材32Bは、複数の冷媒折り返し空間3Aにおける上記(エ)の主壁部の反対側を塞ぎ、複数の冷媒折り返し空間3Aのそれぞれは、複数の第1扁平管1Aのうちの一本の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び複数の第2扁平管2Aのうちの一本の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通することが分かる。
(シ)上記アの段落0020並びに図1及び図2記載によれば、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aは、折り返しヘッダ3の幅方向の内側に2列で配列されることが分かる。
(ス)上記アの段落0021並びに図1及び図2記載によれば、一対の側方の板状部分のそれぞれを折り返しヘッダ3の幅方向の外側から覆う一対の外側板を第1板部材31がさらに備えることが分かる。
(セ)上記アの図1及び図2記載によれば、上記(ス)の一対の外側板は、第1板部材31の一部として上記(エ)の主壁部と一体に形成されることが分かる。

ウ 甲1発明3
上記ア及びイ(ア)〜(シ)を総合して本件発明3に倣って整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明3」という。)が記載されていると認める。
「上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aと、前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続する折り返しヘッダ3とを備えた熱交換器100において、
前記折り返しヘッダ3は、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態に挿入して固定される複数の接続用の孔が形成された主壁部を含む第1板部材31と、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通する、厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、
前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向する、前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bとを備え、
前記第1板部材31の側面、前記孔あき部材32Aの前記複数の貫通孔32Z及び前記閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成され、
前記孔あき部材32Aは、
前記折り返しヘッダ3の幅方向から前記複数の冷媒折り返し空間3Aを挟む一対の側方の板状部分と、
前記複数の冷媒折り返し空間3A同士を仕切るように前記一対の側方の板状部分のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切りの板状部分とを含み、
前記一対の側方の板状部分及び前記仕切りの板状部分は、一体に形成され、
前記閉塞部材32Bは、前記複数の冷媒折り返し空間3Aにおける前記主壁部の反対側を塞ぎ、
前記複数の冷媒折り返し空間3Aのそれぞれは、前記複数の第1扁平管1Aのうちの一本の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aのうちの一本の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通し、
前記複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aは、前記折り返しヘッダ3の幅方向の内側に2列で配列される熱交換器100。」

エ 甲1発明6
上記ア並びにイ(ア)〜(ケ)及び(ス)を総合して本件発明6に倣って整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明6」という。)が記載されていると認める。

「上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aと、前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続する折り返しヘッダ3とを備えた熱交換器100において、
前記折り返しヘッダ3は、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態に挿入して固定される複数の接続用の孔が形成された主壁部を含む第1板部材31と、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通する、厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、
前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向する、前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bとを備え、
前記第1板部材31の側面、前記孔あき部材32Aの前記複数の貫通孔32Z及び前記閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成され、
前記孔あき部材32Aは、
前記折り返しヘッダ3の幅方向から前記複数の冷媒折り返し空間3Aを挟む一対の側方の板状部分と、
前記複数の冷媒折り返し空間3A同士を仕切るように前記一対の側方の板状部分のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切りの板状部分とを含み、
前記一対の側方の板状部分のそれぞれを前記折り返しヘッダ3の幅方向の外側から覆う一対の外側板を前記第1板部材31がさらに備える熱交換器100。」

オ 甲1発明7
上記ア並びにイ(ア)〜(ケ)、(ス)及び(セ)を総合して本件発明7に倣って整理すると、甲1には、甲1発明6に次の事項を追加した発明(以下「甲1発明7」という。)が記載されていると認める。
「前記一対の外側板は、前記第1板部材31の一部として前記主壁部と一体に形成されること」

カ 甲1発明9
上記ア及びイを総合して本件発明9に倣って整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明9」という。)が記載されていると認める。
「甲1発明3、甲1発明6及び甲1発明7のいずれか1つにおいて、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aを備えている熱交換器100。」

キ 甲1発明10
上記ア及びイ(ア)〜(ケ)を総合して本件発明10に倣って整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明10」という。)が記載されていると認める。
「上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aと、前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続する折り返しヘッダ3とを備えた熱交換器100において、
前記折り返しヘッダ3は、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態に挿入して固定される複数の接続用の孔が形成された主壁部を含む第1板部材31と、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通する、厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、
前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向する、前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bとを備え、
前記第1板部材31の側面、前記孔あき部材32Aの前記複数の貫通孔32Z及び前記閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成され、
前記孔あき部材32Aは、
前記折り返しヘッダ3の幅方向から前記複数の冷媒折り返し空間3Aを挟む一対の側方の板状部分と、
前記複数の冷媒折り返し空間3A同士を仕切るように前記一対の側方の板状部分のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切りの板状部分とを含む熱交換器100。」

ク 甲1発明1
上記ア及びイ(ア)〜(コ)を総合して本件発明1に倣って整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。
「上下方向に並ぶ複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aと、前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zを接続する折り返しヘッダ3とを備えた熱交換器100において、
前記折り返しヘッダ3は、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zが貫通した状態に挿入して固定される複数の接続用の孔が形成された主壁部を含む第1板部材31と、
前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと連通する、厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32Aと、
前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態の前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Zと対向する、前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32Bとを備え、
前記第1板部材31の側面、前記孔あき部材32Aの前記複数の貫通孔32Z及び前記閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成され、
前記孔あき部材32Aは、
前記折り返しヘッダ3の幅方向から前記複数の冷媒折り返し空間3Aを挟む一対の側方の板状部分と、
前記複数の冷媒折り返し空間3A同士を仕切るように前記一対の側方の板状部分のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切りの板状部分とを含み、
前記一対の側方の板状部分及び前記仕切りの板状部分は、一体に形成される熱交換器100。」

ケ 甲1発明5
上記ア及びイ(ア)〜(ケ)及び(ス)を総合して本件発明5に倣って整理すると、甲1には、上記エの甲1発明6と同じ事項からなる発明(以下「甲1発明5」という。)が記載されていると認める

(2)甲2について
本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2には、次の記載がある。
「【0014】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の熱交換器について説明する。この説明においては、本発明の熱交換器が、高圧側が超臨界となるCO2等の冷媒が流れる車両用冷凍サイクルの放熱器(ガスクーラ)として使用されるものとして説明するが、本発明の熱交換器はこれに限定されるものではない。図1(a)は、本発明の第1実施形態の熱交換器の斜視図であり、図1(b)は、第1実施形態の熱交換器のコアの断面図であり、図1(c)は、第1実施形態の熱交換器の扁平チューブの詳細図である。熱交換器は、複数の扁平チューブ1、この扁平チューブ1間に配置されるコルゲートフィン(波形フィン)2及び一対のヘッダタンク3とから基本的に構成されている。
【0015】
扁平チューブ1は、横断面外周形状が長円状をなし、内部にはチューブの軸方向に延在する複数の仕切壁1aで仕切られた流通路1bが形成されている。この扁平チューブ1は、一般にはアルミニウム製の押出材からなる。扁平チューブ1は、図1(c)に示されるように扁平断面の短辺方向に曲げられてU字形状に形成されると共に、U字形状に曲げられた扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1Aと復路(戻り)側の扁平チューブ部1Bとは、横方向に扁平チューブ1の略長辺長さ分だけずれてUターンしている。
【0016】
また、Uターンした扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1Aと復路側の扁平チューブ部1Bとは、上下方向にコルゲートフィン2の略高さ分に相当する段差dが形成される。複数の扁平チューブ1はチューブ断面の短辺方向に積層されてコア4を形成しており、このコア4が、冷却風の流れ方向にコア列4Bとコア列4Aと有している。即ち、U字形状の複数の扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1Aが積層されて、コア列4Aを形成し、復路側の扁平チューブ部1Bが積層されて、コア列4Bを形成している。本実施形態では、図1(b)に示すように扁平チューブ1間にはコルゲートフィン2が配置されており、扁平チューブ1とコルゲートフィン2とが交互に積み重ねられてコア4を形成している。
【0017】
U字形状に曲げられた複数の扁平チューブ1の各端部は、それぞれ冷媒入口側ヘッダタンク3Aと冷媒出口側ヘッダタンク3Bとに接続していて、一対のヘッダタンク1は、コア4に対して同じ側に配置されている。このようにして、コンプレッサ(図示せず)から入口側ヘッダタンク3Aに導入された高温高圧の冷媒は、冷却風流れの下流側に配置された往路側の扁平チューブ部1Aを通り、Uターンして冷却風流れの上流側に配置された復路側の扁平チューブ部1Bを通り、出口部ヘッダタンク3Bから、図示しない内部熱交換器又は膨張弁へと排出される。この間、冷却風と冷媒とは熱交換が行われ、入口側ヘッダタンク3Aに導入された略150℃だった冷媒の温度が、出口側ヘッダタンク3Bでは、略50℃にまで冷却される。」

「【0021】
図3は、第3実施形態の熱交換器を示している。第3実施形態の熱交換器では、コルゲートフィン2に代えてプレートフィン7を使用している。即ち、多数のプレートフィン7が積層配置(平行に多数並べられて配置)されており、先に述べたように、ずれ及び段差をもってU字状に曲げられた複数の扁平チューブ1が、これらのプレートフィン7を挿通することで、コア4を形成している。図3(a)は、第3実施形態の熱交換器の1つの実施例を示している。この実施例では、プレートフィン7を挿通するU字形状の扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1Aと復路側の扁平チューブ部1Bとが、上下方向に1段分(積層配置される各扁平チューブ間の間隔分)だけずれてプレートフィン7に挿通されている。したがって、上から1番目のU字形の扁平チューブ1の復路側の扁平チューブ部1B1と2番目のU字形の扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1A2とが、冷却風流れの流れ方向に沿って重なって配置されている。同様に2番目のU字形扁平チューブ1の復路側の扁平チューブ部1B2と3番目のU字形扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1A3とが、冷却風流れの流れ方向に沿って重なって配置されている。このように、図3(a)に示される実施例では、往路側の扁平チューブ部1Aと復路側の扁平チューブ部1Bとが、最上段と最下段を除いて、冷却風の流れ方向に沿って重なって配置されている。
【0022】
これに対して、第3実施形態の熱交換器の別の実施例を示している図3(b)では、プレートフィン7を挿通するU字形状の扁平チューブ1の往路側の扁平チューブ部1Aと復路側の扁平チューブ部1Bとは、上下方向に1段分の半分だけずれてプレートフィン7に挿通されている。したがって、この場合は図3(b)に示されるように、プレートフィン7に挿通されている、複数の往路側の扁平チューブ部1Aと複数の復路側の扁平チューブ部1Bとは、冷却風の流れ方向に対して重なることなく千鳥状に配列されている。
図3(c)は、第3実施形態の熱交換器における冷媒の流れと冷却風の流れを説明する図である。図3(a)の実施例と図3(b)の別の実施例とを比較した場合、図3(a)の実施例では、扁平チューブ1をコンパクトに配置することができるが、扁平チューブ部1Aと1Bとが冷却風の流れ方向で重なるために、熱交換効率の面では図3(b)の千鳥状に配置した実施例に劣る。」






(3)甲3について
本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、冷媒と気体等の流体間での熱交換を行うためのフィンチューブ型熱交換器及びこれを用いた空気調和機に関するものである。
・・・
【0004】
特許文献1に記載の従来のフィンチューブ型熱交換器では、背面熱交換器に円管を用いていることで、伝熱性能が前面熱交換器に対し小さく、通風抵抗が大きくなるという問題があった。
また、前面熱交換器の冷媒分配にディストリビュータを用いており、圧損が大きく、大きな構造スペースが必要となり、コストも高いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に述べた問題点を解決するためになされたもので、通風抵抗の減少及び熱交換量の向上を図るとともに、製造性が高くコストの低減化を図ることができるフィンチューブ型熱交換器及びこれを用いた空気調和機を得ることを目的としている。」

「【0012】
次に、空気流れ方向2列目と3列目に配置される主熱交換器について説明する。
前面パネル側に配置される前面主熱交換器4a及び4bは、フィン1の積層方向のピッチFp はFp=0.0011mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また、空気流れ方向のフィン幅はL=0.0137m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管である扁平管の距離Dp はDp=0.0095mである。
また、背面側に配置される背面主熱交換器5a及び5bはFp=0.0012mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また、空気流れ方向のフィン幅はL=0.0127m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管である扁平管の距離Dp はDp=0.014mである。
フィンカラーと伝熱管である扁平管がロウ付けにより、完全接合されている。
また、主熱交換器4a、4b、5a、5bにおいて、扁平管2は千鳥状に配列され、列毎にフィン1は分割されている。また、列数は2列である。
【0013】
円管を用いた補助熱交換器6,7,8は、フィン1の積層方向のピッチFpはFp=0.0013mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また空気の流れ方向のフィン幅はL=0.0127m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管である円管の距離Dp はDp=0.0204m、フィン前縁部まで、フィンカラーと伝熱管である円管が機械拡管により、圧接合されている。
【0014】
上記のように構成されたフィンチューブ型熱交換器において、扁平管2及び円管3はアルミニウム合金製押し出し形材にて形成され、板状フィン1はアルミニウム合金製板材にて形成されている。このように熱交換器全てを同じ材質とすることで、腐食の耐力は向上する。
【0015】
また、主熱交換器4a、4b、5a、5bにおいて、扁平管2を千鳥状に配列することで、扁平管前縁の熱伝達率が向上し、熱交換器性能は向上する。
また、主熱交換器4a、4b、5a、5bにおいて、2列目と3列目のフィン1を分割することで、熱交換器の配置が室内機箱内において様々に対応でき、2列目のフィンにおける前縁効果(空気境界層分断効果)による熱伝達率向上も期待できる。」






(4)甲4について
ア 甲4の記載
本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、熱交換器、特に、所定の管段方向に沿って多段に配置される複数の扁平管が、管段方向及び扁平管の長手方向に交差する管列方向に隣り合うように多列に配置されており、連結ヘッダを介して管列方向に隣り合う扁平管の長手方向の一端部同士が連通している熱交換器に関する。」

「【0073】
(4)室外熱交換器の基本構成
次に、図3〜図6を用いて、室外熱交換器23(熱交換器)の基本構成について説明する。ここで、図5は、室外熱交換器23の概略斜視図である。図6は、図5の熱交換部60の部分拡大図である。尚、以下の説明においては、方向や面を表す文言は、特にことわりのない限り、室外熱交換器23が室外ユニット2に載置された状態を基準とした方向や面を意味する。
【0074】
室外熱交換器23は、主として、室外空気と冷媒との熱交換を行う熱交換部60と、熱交換部60の一端側(ここでは、左前端側)に設けられた連結ヘッダ74と、熱交換部60の他端側(ここでは、右端側)に設けられた冷媒分流器70、出入口ヘッダ71及び中間ヘッダ72と、を有している。室外熱交換器23は、冷媒分流器70、出入口ヘッダ71、中間ヘッダ72、連結ヘッダ74及び熱交換部60のすべてが、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のオールアルミ熱交換器であり、各部の接合は、炉中ロウ付け等のロウ付けによって行われる。」

「【0080】
<連結ヘッダ(基本構成のみ)>
連結ヘッダ74は、熱交換部60の一端側(ここでは、左前端側)に設けられている。そして、連結ヘッダ74には、熱交換部60を構成する伝熱管63(扁平管)の一端部(ここでは、左前端部)が接続されている。連結ヘッダ74は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の鉛直方向(管段方向)に延びる部材である。連結ヘッダ74には、風上側熱交換部61を構成する伝熱管63(扁平管)の一端部(ここでは、左前端部)と風下側熱交換部62を構成する伝熱管63(扁平管)の一端部(ここでは、左前端部)とを連通させるための連結路(後述)が形成されており、これにより、管列方向に隣り合う伝熱管63(扁平管)の長手方向の一端部(ここでは、左前端部)同士が連通している。そして、連結ヘッダ74は、風上側熱交換部61と風下側熱交換部62との間で冷媒をやりとりするようになっている。
【0081】
このような構成を有する室外熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する場合には、図5の冷媒の流れを示す矢印のように、液冷媒管35から流入する冷媒が、冷媒分流器70及び出入口ヘッダ71の下部を通じて、風上側サブ熱交換部61bに導かれる。そして、風上側サブ熱交換部61bを通過した冷媒は、連結ヘッダ74の下部を通じて、風下側サブ熱交換部62bに導かれる。そして、風下側サブ熱交換部62bを通過した冷媒は、中間ヘッダ72を通じて、風下側メイン熱交換部62aに導かれる。そして、風下側メイン熱交換部62aを通過した冷媒は、連結ヘッダ74の上部を通じて、風上側メイン熱交換部61aに導かれる。そして、風上側メイン熱交換部61aを通過した冷媒は、出入口ヘッダ71の上部を通じて、第1ガス冷媒管33に流出される。このような冷媒の流れの過程で室外空気との熱交換によって冷媒が蒸発するのである。また、室外熱交換器23が冷媒の放熱器として機能する場合には、図5の冷媒の流れを示す矢印のように、第1ガス冷媒管33から流入する冷媒が、出入口ヘッダ71の上部を通じて、風上側メイン熱交換部61aに導かれる。そして、風上側メイン熱交換部61aを通過した冷媒は、連結ヘッダ74の上部を通じて、風下側メイン熱交換部62aに導かれる。そして、風下側メイン熱交換部62aを通過した冷媒は、中間ヘッダ72を通じて、風下側サブ熱交換部62bに導かれる。そして、風下側サブ熱交換部62bを通過した冷媒は、連結ヘッダ74の下部を通じて、風上側サブ熱交換部61bに導かれる。そして、風上側サブ熱交換部61bを通過した冷媒は、出入口ヘッダ71の下部及び冷媒分流器70を通じて、液冷媒管35に流出される。このような冷媒の流れの過程で室外空気との熱交換によって冷媒が放熱するのである。
・・・
【0083】
(5)連結ヘッダの詳細構成
次に、図5〜図12を用いて、連結ヘッダ74の詳細構成について説明する。ここで、図7は、図5の連結ヘッダ74付近を示す部分拡大図である。図8は、連結ヘッダ74の分解斜視図である。図9は、連結ヘッダ74の平面断面図である。図10は、連結ヘッダ74の第2部材90同士が管段方向に接触する部分を示す縦断面図である。図11は、連結ヘッダ74の管段方向の端部を構成する第2部材90付近を示す縦断面図(第2部材90の配置方向を正しく組み付けた状態)である。図12は、連結ヘッダ74の管段方向の端部を構成する第2部材90付近を示す縦断面図(第2部材90の配置方向を間違えて組み付けた状態)である。
【0084】
連結部材74は、第1部材80と第2部材90とが接合されることによって構成されている。第1部材80は、複数の伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔82が形成された部材である。第2部材90は、第1部材80と接合することによって管列方向(ここでは、水平方向)に隣り合う伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75を形成する部材である。
【0085】
第1部材80は、主として、第1主壁部81を有している。第1主壁部81は、管段方向に長い板状部であり、複数の貫通孔82が形成されている。複数の貫通孔82は、多段多列に配置される複数の伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部に対応するように第1主壁部81に配置されている。ここでは、第1主壁部81は、管段方向及び管列方向に沿う面をなしており、複数の貫通孔82は、第1主壁部81を管段方向及び管列方向に交差する方向に貫通している。また、第1部材80は、第1主壁部81の管列方向の端部から伝熱管61(扁平管)の長手方向に沿って第2部材90を管列方向間に挟むように延びる一対の第1副壁部83を有している。第1副壁部83は、管段方向に長い板状部であり、伝熱管61(扁平管)の長手方向及び管段方向に沿う面をなしている。また、第1副壁部83の端部(ここでは、第1主壁部81から遠い側の端部)には、折曲部84が形成されている。折曲部84は、第1主壁部81との伝熱管61(扁平管)の長手方向間に第2部材90を挟むように折り曲げられている。すなわち、一対の第1副壁部83の一方側に形成された折曲部84は、一対の第1副壁部83の他方側に向かって折り曲げられおり、一対の第1副壁部83の他方側に形成された折曲部84は、一対の第1副壁部83の一方側に向かって折り曲げられている。ここでは、折曲部84は、管段方向に沿って複数配置されている板状部である。
【0086】
第2部材90は、第2壁部91と複数の連結路仕切部92とを有している。第2壁部91は、貫通孔82を貫通した状態の複数の伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部に対向する部分である。第2壁部91は、管段方向に長い板状部である。連結路仕切部92は、第2壁部91から第1主壁部81側に向かって突出するように形成されており管段方向に隣り合う伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部間を仕切る凸部である。連結路仕切部92は、管列方向に長い板状部である。これらの第2壁部91及び連結路仕切部92、すなわち、第2部材90は、押し出し成形によって一体に形成されている。第1主壁部81、第2壁部91及び複数の連結路仕切部92(凸部)は、管列方向に隣り合う伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75を形成している。ここで、一対の第1副壁部83は、連結路仕切部92(凸部)及び第2壁部91の管列方向の両端部に接触している。また、折曲部84が第2壁部91に接触するように折り曲げられており、これにより、第1部材80と第2部材90とが仮止めされるようになっている。そして、第1部材80と第2部材90とは、連結路仕切部92(凸部)の表面に設けられたロウ材によって接合されている。
【0087】
また、第2部材90は、管段方向に並ぶ複数(ここでは、7つ)の第2部材90a〜90gに分けて形成されている。このため、連結ヘッダ74は、貫通孔82が形成された第1部材80に、第1部材80と接合することによって管列方向に隣り合う伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75を形成する第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)を、管段方向に複数(ここでは、7つ)接合することによって構成されている。すなわち、連結路仕切部92(凸部)の表面に設けられたロウ材によって、第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)間及び第1部材80と第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)とが接合されている。ここでは、連結ヘッダ74の管段方向の一端部(ここでは、上端部)を構成する第2部材90が一端側第2部材90aであり、連結ヘッダ74の管段方向の他端部(ここでは、下端部)を構成する第2部材90が他端側第2部材90gであり、連結ヘッダ74の端側第2部材90a、90g間の部分を構成する第2部材90が中間側第2部材90b〜90fである。そして、第2部材90a〜90gは、第2壁部91の一部をなす第2壁部91a〜91gと複数の連結路仕切部92とを有している。尚、ここでは、第2部材90を7つの第2部材90a〜90gに分けて形成しているが、これに限定されるものではなく、連結ヘッダ74の管段方向のサイズに応じた数で形成すればよい。」

「【0094】
<C>
また、連結ヘッダ74は、複数の伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔82が形成された第1部材80に、第1部材80と接合することによって管列方向に隣り合う伝熱管61(扁平管)の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75を形成する第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)を、管段方向に複数(ここでは、7つ)接合することによって構成されている。このように、連結ヘッダ74を構成する第2部材90を管段方向に複数(ここでは、7つ)接合した2種類部材構造を採用しているため、連結ヘッダ74の長尺化に対応することができる。このため、管段方向のサイズが大きい室外熱交換器23(熱交換器)にも対応することができる。
【0095】
また、第2部材90を押し出し成形によって形成する場合には、押し出し成形が可能な金型サイズに制限があるため、単一の部材で長尺の第2部材90を得ることは難しいが、押し出し成形した第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)を管段方向に複数(ここでは、7つ)接合することによって、長尺の第2部材90を得ることができる。
【0096】
<D>
また、連結ヘッダ74は、連結路仕切部92(凸部)の表面に設けられたロウ材によって、第1部材80と第2部材90とが接合されている。このため、ここでは、第2部材90の連結路仕切部92(凸部)を利用したロウ付けによって、第1部材80と第2部材90とを接合することができる。具体的には、第1部材80が、第1主壁部81の管列方向の端部から伝熱管61(扁平管)の長手方向に沿って第2部材90を管列方向間に挟むように延びる一対の第1副壁部83をさらに含んでいる。このため、第1部材80と第2部材90とを、第1主壁部81及び一対の第1副壁部83と連結路仕切部92(凸部)とのロウ付けによって接合することができる。
【0097】
また、ここでは、第2部材90(ここでは、第2部材90a〜90g)間も、連結路仕切部92(凸部)の表面に設けられたロウ材によって接合されている。このため、ここでは、第2部材90の連結路仕切部92(凸部)を利用したロウ付けによって、第1部材80と第2部材90とを接合することができる。
【0098】
また、ここでは、第1部材80に、第1副壁部81の第2壁部91側の端部に折曲部84が形成されており、折曲部84が、第2壁部91に接触するように折り曲げられている。このため、ここでは、第1部材80と第2部材90とをロウ付けによって接合するにあたり、折曲部84によって第1部材80と第2部材90とを仮止めすることができる。」









イ 甲4の記載事項1
上記アの段落0074及び0083〜0086並びに図7〜9の記載によれば、甲4には次の事項(以下「甲4の記載事項1」という。)が記載されている。
「室外熱交換器23の連結ヘッダ74において、複数の貫通孔82が複数の伝熱管61の長手方向の一端部に対応するように配置された第1主壁部81を有する第1部材80に、前記第1主壁部81の管列方向の端部から伝熱管61の長手方向に沿って、第2壁部91と複数の連結路仕切部92とを有する第2部材90を管列方向間に挟むように延びる一対の第1副壁部83を備え、前記一対の第1副壁部83のそれぞれに折曲部84を設けること」

ウ 甲4の記載事項2
上記アの段落0074、0085、0087、0094及び0095並びに図7〜9の記載によれば、甲4には次の事項(以下「甲4の記載事項2」という。)が記載されている。
「室外熱交換器23の連結ヘッダ74において、伝熱管61の長手方向の一端部に対応するように配置された貫通孔82が形成された第1部材80に、第1部材80と接合することによって管列方向に隣り合う伝熱管61の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75を形成する第2部材90を、管段方向に複数接合すること」

(5)参考資料1について
ア 参考資料1の記載
申立人によって令和3年12月27日付け意見書とともに提出され、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願平3−50647号(実開平5−25185号)のCD−ROM(以下「参考資料1」という。)には、次の記載がある。
「 【0033】
図17はこの考案の第四実施例の要部の分解斜視図が示されている。
第四実施例の熱交換器のヘッダーパイプは、ヘッダーパイプ部材を3分割にして、強度の向上及び組立の容易化を図れるようにした場合である。すなわち、ヘッダーパイプ部材を上下に対峙する上部片21、下部片22と左右に対峙する仕切板11、盲板12とからなる矩形枠状の第1のヘッダーパイプ部材23と、この第1のヘッダーパイプ部材23の開口側両端に接合される第2及び第3のヘッダーパイプ部材24,25とで構成し、かつ第2及び第3のヘッダーパイプ部材24,25のうちの一方24の垂直壁24aに、長手方向に沿って等間隔に熱交換挿入孔7,7...を穿設した場合である。このように構成することにより、矩形枠状に形成される第1のヘッダーパイプ部材23の上下部片21,22の上面、下面に第2及び第3のヘッダーパイプ部材24,25の上下部片24b,25b及び24c,25cを重ねた状態でろう付接合することができるので、強度の向上が図れ、また、第1のヘッダーパイプ部材21の加工が容易であると共に、組立が容易となる。更には、第1のヘッダーパイプ部材21の強度を大きくすなわち肉厚にすることにより、第2及び第3のヘッダーパイプ部材24,25を比較的薄くすることができ、軽量化を図ることもできる。
なお、第2及び第3のヘッダーパイプ部材24,25は、それぞれ垂直壁24a,25aの上下縁部にそれぞれ上部片24b,25b及び下部片24c,25cを有するコ字状に形成されている。
【0034】
なお、第四実施例は図17に図示の構成に限定されるものではなく、例えば熱交換管挿入孔7,7...の穿設場所を第2のヘッダーパイプ部材24から第1のヘッダーパイプ部材23の上部片21に変更。あるいは第1のヘッダーパイプ部材23に設けた盲板12を第2のヘッダーパイプ部材24の両端部もしくは第3のヘッダーパイプ部材25の両端部に変更。もしくは、第2のヘッダーパイプ部材24に設けた熱交換管挿入孔7,7...と第1のヘッダーパイプ部材23に設けた盲板12を夫々第1のヘッダーパイプ部材23の上部片21ならびに第2あるいは第3のヘッダーパイプ部材24,25に夫々変更等可能である。」





(6)参考資料2について
ア 参考資料2の記載
申立人によって令和3年12月27日付け意見書とともに、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の文献(以下「参考資料2」という。)が提出された。
参考資料2:山口 文雄,「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいプレス加工の本」,日刊工業新聞社,2019年4月26日,p.36−37
そして、参考資料2には、以下の記載がある。
「接合加工は、材料の縁を折り曲げてつなぐ曲げ接合(はぜ折、シーミング) 、フランジ部分を利用して接合するフランジ接合およびリベットや接合に適した形状を成形加工で作り、その部分を相手部品と合わせて、その後、リベット、成形形状部分を潰して(かしめて)接合するかしめ接合、穴にピンや成形で作った形状を押し込んで(圧入)、摩擦力接合する圧入接合があります。」(36ページ下欄1〜8行)



」(37ページの表の一部)


3 対比・判断
(1)請求項3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明3とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(ア)後者の「上下方向に並ぶ」は、前者の「所定の方向に沿って多段に配置される」に相当し、以下同様に、「複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A」は「複数の伝熱管(13)」に、「前記複数の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Z」は「前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部」に、「接続する」は「保持する」に、「折り返しヘッダ3」は「ヘッダ(21,24)」に、「熱交換器100」は「熱交換器」に、「貫通した状態に挿入して固定される」は「貫通する」に、「複数の接続用の孔」は「複数の貫通孔(42,112)」に、「主壁部」は「主壁部(41,111)」に、「第1板部材31」は「第1部材(40,110)」に、「厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32A」は「第2部材(50,120)」に、「前記複数の接続用の孔に貫通した状態に挿入して固定された状態」は「前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態」に、「前記孔あき部材32Aにおける前記貫通孔32Zの一方の開口を閉塞する閉塞部材32B」は「第3部材(60,130)」に、それぞれ相当する。

(イ)後者の「複数の冷媒折り返し空間3A」は、前者の「複数の差し込み空間(70,160)」に相当する。
そして、後者は「前記第1板部材31の側面、前記孔あき部材32Aの前記複数の貫通孔32Z及び前記閉塞部材32Bの側面により複数の冷媒折り返し空間3Aが形成され」るものであり、後者の「厚み方向に貫通し、正面視において概略長方形をなす複数の貫通孔32Zが形成された平板状をなす孔あき部材32A」は、「複数の冷媒折り返し空間3A」を構成しているから、前者の「複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)」に相当する。

(ウ)後者の「一対の側方の板状部分」は、前者の「一対の側板(51,121)」に相当し、以下同様に、、「仕切りの板状部分」は「仕切り板(52,122)」に、「前記複数の第1扁平管1Aのうちの一本の第1扁平管1Aの延在方向の一方の端部1Z及び前記複数の第2扁平管2Aのうちの一本の第2扁平管2Aの延在方向の一方の端部2Z」は「前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部」に、それぞれ相当する。

(エ)後者の「前記複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2Aは、前記折り返しヘッダ3の幅方向の内側に2列で配列される」態様は、前者の「前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向の内側に2列以上で千鳥配列される」態様に、「前記複数の伝熱管は、前記へッダの幅方向の内側に2列以上で配列される」という点で一致する。

以上のことから、本件発明3と甲1発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の長手方向の一端部を保持するヘッダとを備えた熱交換器において、
前記ヘッダは、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔が形成された主壁部を含む第1部材と、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間を構成する第2部材と、
前記複数の貫通孔を貫通した状態の前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と対向する第3部材とを備え、
前記第2部材は、
前記ヘッダの幅方向から前記複数の差し込み空間を挟む一対の側板と、
前記複数の差し込み空間同士を仕切るように前記一対の側板のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板とを含み、
前記一対の側板及び前記仕切り板は、一体に形成され、
前記第3部材は、前記複数の差し込み空間における前記主壁部の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間のそれぞれは、前記複数の伝熱管のうちの少なくとも2本以上の伝熱管の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管は、前記へッダの幅方向の内側に2列以上で配列される熱交換器。」

[相違点3−1]
「前記複数の伝熱管は、前記へッダの幅方向の内側に2列以上で配列される」ことに関し、本件発明3では、「2列以上で千鳥配列される」のに対して、甲1発明3では、「2列で配列される」ものの、千鳥配列されていない点。

イ 判断
例えば、甲2の上記2(2)の記載(段落0022、図1及び図3)及び甲3の上記2(3)の記載(段落0012及び0015、図1及び図4)から理解できるように、熱交換器において、風の流れ方向にみて、複数の風上側の列の扁平管と複数の風下側の列の扁平管とを千鳥状に配列することは、本件特許の出願前に周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
そして、周知技術により熱交換効率は向上するところ(甲2の段落0022及び甲3の段落0015を参照。)、同じく熱交換器である甲1発明3においても、熱交換効率の向上は内在する課題であるから(本件特許明細書の段落0013を参照。)、甲1発明3に周知技術を適用し、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A(複数の伝熱管)が、風の流れの方向とされる折り返しヘッダ3(ヘッダ)の幅方向に2列で千鳥配列されるようにし、上記相違点3−1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、令和3年11月15日に提出された意見書において、特許権者は次の主張をする。
「以上説明したように、甲1〜甲3のいずれも、発明特定事項3の「ヘッダ(24)の幅方向の内側に複数の伝熱管(13)が2列以上で千鳥配列される」構成を開示も示唆もしていない。また、甲1は、課題解決を目的として折り返しヘッダ内の冷媒が流れやすくするためには、1本の第1扁平管1Aと1本の第2扁平管2Aとが水平方向に互いに隣り合う構成が最も好ましいことを示唆しているので、そもそも、甲1の熱交換器において第1扁平管1Aと第2扁平管2Aとを折り返しヘッダ3の幅方向の内側に2列で千鳥配列することには阻害要因があると思料する。」(11ページ15〜22行)
しかしながら、甲1発明3において、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A(複数の伝熱管)は、折り返しヘッダ3(ヘッダ)の幅方向の内側に2列で配列される構成を有しており、これに周知技術を適用することにより、折り返しヘッダ3(ヘッダ)の幅方向の内側に複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A(複数の伝熱管)が2列以上で千鳥配列される構成となる。
また、甲1の段落0012において、「前記冷媒折り返し空間に挿入された前記第1扁平管の端面及び前記第2扁平管の端面の少なくとも一部が、互いに対向するように構成されているが望ましい。これならば、第1熱交換要素の扁平管から出た冷媒を第2熱交換要素の扁平管に流れやすくすることができる。」との記載があり、折り返しヘッダ3内の冷媒が流れやすくするためには、1本の第1扁平管1Aと1本の第2扁平管2Aとが水平方向に互いに隣り合う構成が好ましいとしても、千鳥配列により折り返しヘッダ内の冷媒の流れに支障があるとはいえず、甲1発明3において、熱交換効率の向上のために周知技術を適用し、第1扁平管1Aと第2扁平管2Aとを折り返しヘッダ3の幅方向の内側に2列で千鳥配列することに阻害要因があるとは認められないから、特許権者の上記主張は採用することができない。
そして、本件発明3は、全体としてみても、甲1発明3及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件発明3は、甲1発明3及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ まとめ
したがって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項3に係る特許は、取り消されるべきものである。

(2)請求項6ついて
ア 対比
本件発明6と甲1発明6とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者の「一対の外側板」は、前者の「一対の外側板(43,113)」に相当し、それ以外は上記(1)アの本件発明3についての対比を参照。
そうすると、本件発明6と甲1発明6との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の長手方向の一端部を保持するヘッダとを備えた熱交換器において、
前記ヘッダは、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔が形成された主壁部を含む第1部材と、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間を構成する第2部材と、
前記複数の貫通孔を貫通した状態の前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と対向する第3部材とを備え、
前記第2部材は、
前記ヘッダの幅方向から前記複数の差し込み空間を挟む一対の側板と、
前記複数の差し込み空間同士を仕切るように前記一対の側板のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板とを含み、
前記一対の側板のそれぞれを前記ヘッダの幅方向の外側から覆う一対の外側板をさらに備える熱交換器。」

[相違点6−1]
本件発明6では、「前記一対の外側板(43,113)のそれぞれにカシメ用爪(44,114)が設けられる」ものであるのに対して、甲1発明6では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
上記2(4)イの甲4の記載事項1は、本件発明6の対応する用語や表現を括弧内に示すと次のとおりであり、上記相違点6−1に係る本件発明6の構成を有するものである。
「室外熱交換器23(熱交換器)の連結ヘッダ74(ヘッダ)において、複数の貫通孔82(複数の貫通孔)が複数の伝熱管61(複数の伝熱管)の長手方向の一端部に対応するように配置された第1主壁部81(主壁部)を有する第1部材80(第1部材)に、前記第1主壁部81の管列方向の端部から伝熱管61の長手方向に沿って、第2壁部91と複数の連結路仕切部92とを有する第2部材90(第2部材、第3部材)を管列方向間に挟むように延びる(ヘッダの幅方向の外側から覆う)一対の第1腹壁部83(一対の外側板)を備え、前記一対の第1腹壁部83のそれぞれに折曲部84(カシメ用爪)を設けること」
そして、甲4の段落0096〜0098の記載によれば、甲4の記載事項1における折曲部84は、第1部材80と第2部材90とをロウ付けによって接合するにあたり、仮止めをするためのものであるところ、甲1発明6においても、折り返しヘッダ3(ヘッダ)の各部材の接合はろう付けによって行われることから(甲1の段落0025)、ろう付けを容易に行えるように、甲1発明6に甲4の記載事項1を適用し、上記相違点6−1に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、令和3年11月15日に提出された意見書において、特許権者は次の主張をする。
「甲4では、段落0004、0005に記載されているように、連結へッダの管段方向のサイズ拡大(長尺化)への対応を課題としているため、折曲部84を用いて第1部材80と第2部材90とを仮止めする必要が生じるものと思われる。
それに対して、甲1には、長尺化について何らの開示も示唆もされておらず、また、甲1のいずれの図面にも、甲4記載のような長尺化構成は開示されていない。さらに、上記の通り、甲1には、クラッド材を用いて、ろう付け工程を簡略化することが記載されている。
以上に説明したように、長尺化を想定していない甲1記載の発明に甲4記載の折曲部84を適用することは、当業者にとって動機付けがないものと思料する。
また、「クラッド材を用いてろう付け工程を簡略化する」ことが記載された甲1の熱交換器構成において甲4記載の折曲部84を適用した場合にはカシメ作業によってろう付け工程が複雑化してしまう点で、甲1記載の発明に甲4の折曲部84を適用することには阻害要因があると思料する。」(14ページ6〜18行)
しかしながら、甲1発明6において、求められる熱交換性能や設置条件等に応じて熱交換器100の管段方向のサイズ拡大による折り返しヘッダ3(ヘッダ)の長尺化は適宜行われるものといえ、また、甲1の段落0025の記載によれば、甲1発明6において、ろう付けの手段としてろう材を被覆したクラッド材を用いることは一例にすぎず、ろう付けの際にろう材を被覆したクラッド材を用いること及び一方の部材にカシメ用爪を設けて他方の部材との仮止めを行うことはいずれもよく用いられる手段であり、いずれを採用するかは、工程の容易さ、コスト、ろう付け後の製品の寸法精度等を考慮して当業者が適宜選択することであるから、甲1発明6に甲4の記載事項1を適用することが格別困難であるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張は採用することができない。
そして、本件発明6は、全体としてみても、甲1発明6及び甲4の記載事項1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件発明6は、甲1発明6及び甲4の記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ まとめ
したがって、本件発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項6に係る特許は、取り消されるべきものである。

(3)請求項7について
ア 対比・判断
本件発明7と甲1発明7とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者の「前記一対の外側板は、前記第1板部材31の一部として前記主壁部と一体に形成されること」は、前者の「前記一対の外側板(43,113)は、前記第1部材(40,110)の一部として前記主壁部(41,111)と一体に形成されること」に相当し、それ以外は上記(1)アの本件発明3についての対比及び上記(2)アの本件発明6についての対比を参照。
そうすると、両者は上記相違点6−1で相違し、その余の点は一致する。
そして、上記(2)イの相違点6−1についての判断を踏まえると、本件発明7は、甲1発明7及び甲4の記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ まとめ
したがって、本件発明7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項7に係る特許は、取り消されるべきものである。

(4)請求項9について
ア 甲1発明9において引用する甲1発明3、甲1発明6及び甲1発明7
甲1発明9において引用する甲1発明3、甲1発明6及び甲1発明7は、それぞれ順に上記2(1)ウ〜〜オに示したとおりであり、いずれも、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A(複数の扁平管)を備えている。

イ 対比・判断
(ア)請求項3を引用した場合
上記(1)アの対比を踏まえて本件発明9と甲1発明3を引用した甲1発明9とを対比すると、両者は相違点3−1で相違し、その余の点で一致する。
上記(1)イの本件発明3についての検討を踏まえると、本件発明9は、甲1発明9及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)請求項6を引用した場合
上記(2)アの対比を踏まえて本件発明9と甲1発明6を引用した甲1発明9とを対比すると、両者は上記相違点6−1で相違し、その余の点で一致する。
上記(2)イの相違点6−1についての判断を踏まえると、本件発明9は、甲1発明6及び甲4の記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)請求項6を引用する請求項7を引用した場合
上記(3)アの対比を踏まえて本件発明9と甲1発明6及び甲1発明7を順次引用する甲1発明9とを対比すると、上記相違点6−1で相違し、その余の点で一致する。
上記(2)イの相違点6−1についての判断を踏まえると、本件発明9は、甲1発明9及び甲4の記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ まとめ
したがって、本件発明9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項9に係る特許は、取り消されるべきものである。

(5)請求項10について
ア 対比
本件発明10と甲1発明10とを、上記(1)アの本件発明3についての対比を踏まえて対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の長手方向の一端部を保持するヘッダとを備えた熱交換器において、
前記ヘッダは、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔が形成された主壁部を含む第1部材と、
前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間を構成する第2部材と、
前記複数の貫通孔を貫通した状態の前記複数の伝熱管の長手方向の一端部と対向する第3部材とを備え、
前記第2部材は、
前記ヘッダの幅方向から前記複数の差し込み空間を挟む一対の側板と、
前記複数の差し込み空間同士を仕切るように前記一対の側板のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板とを含む熱交換器。」

[相違点10−1]
本件発明10では、「前記第2部材(50,120)は、別体に形成された複数のブロック(50a〜50d,120a〜120d)を前記所定の方向に沿って接合させて構成される」のに対して、甲1発明10では、孔あき部材32A(第2部材)はそのように構成されていない点。

イ 判断
上記2(4)ウの甲4の記載事項2は、本件発明10の対応する用語や表現を括弧内に示すと次のとおりであり、上記相違点10−1に係る本件発明10の構成を有するものである。
「室外熱交換器23(熱交換器)の連結ヘッダ74(ヘッダ)において、伝熱管61(伝熱管)の長手方向の一端部に対応するように配置された貫通孔82(貫通孔)が形成された第1部材80(第1部材)に、第1部材80と接合することによって管列方向に隣り合う伝熱管61の長手方向の一端部同士が連通する複数の連結路75(差し込み空間)を形成する第2部材90(第2部材、第3部材)を、管段方向に複数接合する(別体に形成された複数のブロックを前記所定の方向に沿って接合させて構成する)こと」
そして、甲4の段落0094及び0095の記載によれば、甲4の記載事項2は、連結ヘッダ74(ヘッダ)の長尺化に対応し、管段方向のサイズが大きい室外熱交換器23(熱交換器)に対応することができるところ、甲1発明10においても、管段方向のサイズが大きい熱交換器100(熱交換器)に対応することは内在する課題であるから、甲1発明10に甲4の記載事項2を適用し、上記相違点10−1に係る本件発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、令和3年11月15日に提出された意見書において、特許権者は次の主張をする。
「甲4では、段落0004、0005に記載されているように、連結へッダの管段方向のサイズ拡大(長尺化)への対応を課題とし、その課題を解決するために、「第2部材90を管段方向に複数接合する」構成を採用している。
それに対して、甲1には、長尺化について何らの開示も示唆もされておらず、また、甲1のいずれの図面にも、甲4記載のような長尺化構成は開示されていない。さらに、上記の通り、甲1には、クラッド材を用いて、ろう付け工程を簡略化することが記載されている。
以上に説明したように、長尺化を想定していない甲1記載の発明に甲4記載の「第2部材90を管段方向に複数接合する」構成を適用することは、当業者にとって動機付けがないものと思料する。また、「クラッド材を用いてろう付け工程17を簡略化する」ことが記載された甲1の熱交換器構成において甲4記載の「第2部材90を管段方向に複数接合する」構成を適用した場合には第2部材90同士の接合に起因してろう付け工程が複雑化してしまう点で、甲1記載の発明に甲4記載の「第2部材90を管段方向に複数接合する」構成を適用することには阻害要因があると思料する。
さらに、甲4では、「第2壁部91から第1主壁部81側に向かって突出すると共に管列方向に長い板状部である連結路仕切部92の表面に設けられたロウ材によって、第2部材90(第2部材90a〜90g)間が接続される」ことによって、「第2部材90を管段方向に複数接合する」ことが可能に構成されているところ、甲1記載の「平板状をなす孔あき部材32A」には、甲4記載の「板状部である連結路仕切部92」に相当する部材が存在しないため、「平板状をなす孔あき部材32A」を管段方向に複数接合することは困難であると思料する。」(16ページ19行〜17ページ12行)
しかしながら、甲1発明10において、求められる熱交換性能や設置条件等に応じて熱交換器100の管段方向のサイズ拡大による折り返しヘッダ3(ヘッダ)の長尺化は適宜行われるものといえるから、甲1発明10に甲4の記載事項2を適用する動機付けがないとはいえない。
また、甲1発明10に甲4の記載事項2を適用することによって、「クラッド材を用いてろう付け工程17を簡略化する」ことができないとはいえないから、当該適用に阻害要因があるとはいえない。
さらに、甲1発明10における「平板状をなす孔あき部材32A」は、管段方向の上端面及び下端面を有しており、管段方向に複数接合することが技術的に困難であるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張は採用することができない。
そして、本件発明10は、全体としてみても、甲1発明10及び甲4の記載事項2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件発明10は、甲1発明10及び甲4の記載事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ まとめ
したがって、本件発明10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項10に係る特許は、取り消されるべきものである。

4 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)請求項1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを、上記3(1)アの本件発明3についての対比を踏まえて対比すると、両者は次の点で相違し、その余の点で一致する。

[相違点1−1]
本件発明1では、「前記複数の伝熱管(13)は、前記所定の方向に1列に配列され、前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれに、前記複数の伝熱管(13)における前記所定の方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が連通する」のに対して、甲1発明1では、複数の第1扁平管1A及び複数の第2扁平管2A(複数の伝熱管)について、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲2〜4、参考資料1及び参考資料2には、上記(2)〜(6)の記載をみても、上記相違点1−1に係る本件発明1の発明特定事項は記載されておらず、示唆もされていない。
ここで、申立人は、令和3年12月27日付け意見書において、「参考資料1の図17から、出入り口ヘッダにおいて、第1のヘッダーパイプ部材23(第2部材(50,120)に相当)の内部(差し込み空間い相当)に、所定方向に隣り合う複数本の伝熱管の端部が連通することが看取できる。」とし、「差し込み空間に連通する伝熱管を2本とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。」と主張するが、参考資料1のヘッダパイプ部材は集合管又は分流管というべきもので、その内部の空間は本件発明1における複数の差し込み空間のような冷媒折り返し流路を構成するものとは異なり、内部の空間に連通する伝熱管を2本とすることが、当業者が適宜なし得たものとはいえない。
また、参考資料2は、本件発明6におけるかしめ接合が周知技術であることの例証として示されたものであって、上記相違点1−1に係る本件発明1の発明特定事項を示すものではない。
そして、本件発明1は、上記相違点1−1に係る発明特定事項を備えることにより、ヘッダ幅方向寸法の低減を図れることはその構成上明らかであり、熱交換性能の向上(段落0013、0014、0080、0081、図14)という所期の効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1は、甲1発明1と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲1発明1並びに甲2〜4、参考資料1及び参考資料2に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消されるべきものとすることはできない。

(2)請求項5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明5とを、上記3(1)アの本件発明3についての対比及び上記3(2)アの本件発明6についての対比を踏まえて対比すると、両者は次の点で相違し、その余の点で一致する。

[相違点5−1]
本件発明1では、「前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、前記複数の伝熱管(13)は、前記へッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)を有する」のに対して、甲1発明5では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲2〜4、参考資料1及び参考資料2には、上記(2)〜(6)の記載をみても、上記相違点5−1に係る本件発明5の発明特定事項は記載されておらず、示唆もされていない。
そして、本件発明5は、上記相違点5−1に係る発明特定事項を備えることにより、ヘッダ幅方向寸法の低減(段落0084〜0086、図6、図17〜19)、熱交換性能の向上(段落0013、0014、0071)という所期の効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1は、甲1発明5と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲1発明5並びに甲2〜4、参考資料1及び参考資料2に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消されるべきものとすることはできない。

(3)請求項2について
請求項2が本件訂正により削除されたことにより、請求項2に係る特許は存在しないものとなった。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項3、6、7、9及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項3、6、7、9及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては取り消すことはできず、他に本件特許の請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件特許の請求項2が本件訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成され、
前記複数の伝熱管(13)は、前記所定の方向に1列に配列され、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれに、前記複数の伝熱管(13)における前記所定の方向に隣り合う2本の伝熱管(13)の端部が連通することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,12)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,30)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成され、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記ヘッダ(24)の幅方向の内側に2列以上で千鳥配列されることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21)は、前記第3部材(130)における前記複数の伝熱管(13)の反対側に配置され且つ主流路(142)を構成する第4部材(140)をさらに備え、
前記第3部材(130)には、前記複数の差し込み空間(160)のそれぞれと前記主流路(142)とを接続する複数の孔(132)が設けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)のそれぞれを前記ヘッダ(21,24)の幅方向の外側から覆う一対の外側板(43,113)をさらに備え、
前記第3部材(60)は、前記複数の差し込み空間(70)における前記主壁部(41)の反対側を塞ぎ、
前記複数の差し込み空間(70)のそれぞれは、前記複数の伝熱管(13)のうちの少なくとも2本以上の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通し、
前記複数の伝熱管(13)は、前記ヘッダ(24)の幅方向に2列以上で千鳥配列され、
前記仕切り板(52)は、前記複数の伝熱管(13)の千鳥状配列に対応した段差(52a)を有することを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記一対の側板(51,121)のそれぞれを前記ヘッダ(21,24)の幅方向の外側から覆う一対の外側板(43,113)をさらに備え、
前記一対の外側板(43,113)のそれぞれにカシメ用爪(44,114)が設けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記一対の外側板(43,113)は、前記第1部材(40,110)の一部として前記主壁部(41,111)と一体に形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の一方側を区画する側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記側板(51,121)と接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の他方側を区画する外側板(43,113)をさらに備え、
前記側板(51,121)及び前記仕切り板(52,122)は、一体に形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項9】
請求項1、3乃至8のいずれか1つにおいて、
前記複数の伝熱管(13)のそれぞれは、扁平管であることを特徴とする熱交換器。
【請求項10】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)を挟む一対の側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記一対の側板(51,121)のそれぞれと接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記第2部材(50,120)は、別体に形成された複数のブロック(50a〜50d,120a〜120d)を前記所定の方向に沿って接合させて構成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項11】
所定の方向に沿って多段に配置される複数の伝熱管(13)と、前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部を保持するヘッダ(21,24)とを備えた熱交換器において、
前記ヘッダ(21,24)は、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部が貫通する複数の貫通孔(42,112)が形成された主壁部(41,111)を含む第1部材(40,110)と、
前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と連通する複数の差し込み空間(70,160)を構成する第2部材(50,120)と、
前記複数の貫通孔(42,112)を貫通した状態の前記複数の伝熱管(13)の長手方向の一端部と対向する第3部材(60,130)とを備え、
前記第2部材(50,120)は、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の一方側を区画する側板(51,121)と、
前記複数の差し込み空間(70,160)同士を仕切るように前記側板(51,121)と接続する少なくとも1つの仕切り板(52,122)とを含み、
前記ヘッダ(21,24)の幅方向から前記複数の差し込み空間(70,160)の他方側を区画する外側板(43,113)をさらに備え、
前記第2部材(50,120)は、別体に形成された複数のブロック(50a〜50d,120a〜120d)を前記所定の方向に沿って接合させて構成されることを特徴とする熱交換器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-10 
出願番号 P2019-110322
審決分類 P 1 652・ 121- ZDA (F28F)
P 1 652・ 113- ZDA (F28F)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
登録日 2020-12-08 
登録番号 6806187
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 熱交換器  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 弁理士法人前田特許事務所  

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