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審決分類 審判 一部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備  H02M
審判 一部申し立て 2項進歩性  H02M
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
管理番号 1389381
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-27 
確定日 2022-07-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6828516号発明「電力変換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6828516号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第6828516号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6828516号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成29年3月2日の出願であって、令和3年1月25日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月10日に特許掲載公報が発行された。

その特許についての本件特許異議の申し立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 7月27日 :特許異議申立人 角田 朗(以下、「申立人」という。)による請求項1−3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年10月29日付け:取消理由通知書
令和3年12月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 2月 3日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和4年 4月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 5月27日 :特許異議申立人 角田 朗による意見書の提出

なお、先にした令和3年12月28日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取下げられたものとみなす。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨及び内容
令和4年4月1日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6828516号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。(なお、下線は訂正部分を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接していることを特徴とする」
と記載されているのを、
「前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されていることを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項4を、独立項として書き下し、
「 【請求項4】
交流を直流に変換するコンバータ回路(11)と、
前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)と、
前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)と、
前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)と、を備え、
前記コンデンサ(12)は、フィルムコンデンサで構成され、
前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され、
前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
冷凍サイクルを行う冷媒回路(120)を流れる冷媒によって前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とを冷却する放熱器(50)が設けられ、
前記コンバータ回路(11)よりも前段に、ノイズフィルタ部材(60)が設けられ、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記リアクトル(L)との間に、前記放熱器(50)が配置されていることを特徴とする電力変換装置。」に訂正する。

2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし4について、請求項2ないし4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「コンバータ回路(11)」を、「前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され」と構成を限定し、さらに、「前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」という構成を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下、単に「本件特許明細書」という。)の段落【0024】には「コンバータ回路(11)は、ブリッジ接続された6つのダイオード(D1〜D6)を備え、交流電源(30)から入力された交流を全波整流する。この例では、コンバータ回路(11)は、コモンモードコイル(60)を介して、交流電源(30)に接続されている。すなわち、コモンモードコイル(60)は、コンバータ回路(11)よりも前段に設けられている。コモンモードコイル(60)は、コモンモードノイズを低減する目的で設けたものであり、本発明のノイズフィルタ部材の一例である。コモンモードコイル(60)は、3相分が1つのフェライトコアに巻回されている。すなわち、コモンモードコイル(60)は、回路図上では3つのコイルであるが、後述する回路基板(20)上には、1つの部品として実装されている。」と、また、【0035】には「配線については、図2における左方から交流電源(30)の3相分の電源ラインが伸びてきており、それらの電源ラインは、3つのコモンモードコイル(60)の一端にそれぞれ接続されている。各コモンモードコイル(60)の他端は、回路基板(20)に形成された配線パターンによって、コンバータ回路(11)の端子(T1〜T3)に接続されている。」と、さらに、段落【0034】には、「また、インバータ回路(13)とコンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、コンバータ回路(11)とは別の段に実装されている(図2に示した仮想グリッドの下段を参照)。そして、前記グリッドにおいては、コンバータ回路(11)とインバータ回路(13)とが互いに隣接し、リアクトル(L)とコンデンサ(12)とが互いに隣接している。また、コモンモードコイル(60)とコンバータ回路(11)とは前記グリッドにおける同段に配置されている。これにより、回路基板(20)における、コモンモードコイル(60)からリアクトル(L)までの配線パターンを簡素化できる。」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4を独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の 5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であリ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。


第3 当審の判断
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。

「【請求項1】
交流を直流に変換するコンバータ回路(11)と、
前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)と、
前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)と、
前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)と、を備え、
前記コンデンサ(12)は、フィルムコンデンサで構成され、
前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され、
前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コンデンサ(12)及び前記リアクトル(L)は、前記コンバータ回路(11)から出力された直流電流に含まれるリップル電流成分を通過させ、かつ、前記インバータ回路(13)のキャリア周波数と同じ周波数の電流成分を減衰させるように、前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)による共振回路の共振周波数が設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
冷凍サイクルを行う冷媒回路(120)を流れる冷媒によって前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とを冷却する放熱器(50)が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
交流を直流に変換するコンバータ回路(11)と、
前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)と、
前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)と、
前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)と、を備え、
前記コンデンサ(12)は、フィルムコンデンサで構成され、
前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され、
前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
冷凍サイクルを行う冷媒回路(120)を流れる冷媒によって前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とを冷却する放熱器(50)が設けられ、
前記コンバータ回路(11)よりも前段に、ノイズフィルタ部材(60)が設けられ、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記リアクトル(L)との間に、前記放熱器(50)が配置されていることを特徴とする電力変換装置。」

2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
令和4年2月3日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。

請求項1に係る発明は、引用文献1−5に記載された発明に基いて、また、請求項2、3に係る発明は、引用文献1−6に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1−3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

< 引用文献等一覧 >
引用文献1:特開2009−189459号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開2010―110065号公報(甲第6号証)
引用文献3:特開2004−104860号公報(甲第7号証)
引用文献4:特開2012−151962号公報(甲第14号証)
引用文献5:特開2015−195713号公報(甲第15号証)
引用文献6:特開2017−28825号公報(甲第9号証)

(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1の記載事項
(ア)引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

A 「【0034】
図2は、本実施の第1の実施の形態における炊飯器の主要部システム構成図である。 ・・・中略・・・【0038】 スイッチング手段26は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子と、この半導体素子に逆接続した逆接続ダイオードで構成されている。MOSFETやIGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、大電流を流すことができるという利点がある。
【0039】
本実施の形態において、駆動手段であるインバータ回路27は共振用コンデンサ25、スイッチング手段26で構成されている。
【0040】
整流手段28は、整流素子であるダイオードブリッジ29とチョークコイル30と高周波平滑用コンデンサ31で構成されており、商用電源32を整流平滑し、略直流電圧をインバータ回路27に供給する。
【0041】
また、チョークコイル30は、インバータ回路27の高周波電流成分が商用電源32側に高周波ノイズとして漏れることを防止している。

・・・中略・・・

【0045】
サージアブソーバ36は、商用電源32から侵入する外来ノイズを吸収除去するノイズ除去手段である。また、コンデンサ37は、商用電源32にインバータ回路27から発生する高周波漏洩ノイズを放出するのを防止するフィルタ手段である。」

B 「【0046】
図3は、本実施の第1の実施の形態における炊飯器の加熱基板24の部品実装面から見た外形図である。
【0047】
図3において、加熱基板24は、片面プリント配線板でできており、その片面プリント配線板の部品実装面上には、商用電源32(図示せず)と加熱基板のパターンとを接続するリード線39が実装されている。また、図2で説明した駆動手段であるインバータ回路27を構成する共振用コンデンサ25とスイッチング手段26が実装されている。さらには、整流手段28を構成するダイオードブリッジ29とチョークコイル30と高周波平滑用コンデンサ31や、サージアブソーバ36、コンデンサ37、入力電流検知手段33も実装されている。上記のスイッチング手段26とダイオードブリッジ29は、冷却用のヒートシンク40に密着して取り付けられている。」

C 「【図2】



D 「【図3】



E 上記Aの段落【0034】には、“図2は、炊飯器の主要部システム構成図”であることが記載され、また、図2に関して、段落【0040】には、“整流手段28は、整流素子であるダイオードブリッジ29で構成され、商用電源32を整流平滑し、略直流電圧をインバータ回路27に供給する”ことが記載され、さらに、段落【0039】には、“インバータ回路27はスイッチング手段26で構成される”ことが記載されている。そして、図2(上記C)から、“ダイオードブリッジ29と、ダイオードブリッジ29の一方の出力端子に電気的に接続されたチョークコイル30と、ダイオードブリッジ29の他方の出力端子とチョークコイル30とに電気的に接続された高周波平滑用コンデンサ31と、高周波平滑用コンデンサ31と電気的に接続されたインバータ回路27と、を備えた、炊飯器の回路”が看取できる。
してみると、引用文献1には、“商用電源32を直流に変換するダイオードブリッジ29と、ダイオードブリッジ29の一方の出力端子に電気的に接続されたチョークコイル30と、ダイオードブリッジ29の他方の出力端子とチョークコイル30とに電気的に接続された高周波平滑用コンデンサ31と、前記高周波平滑用コンデンサ31と電気的に接続され、直流電圧が供給されるスイッチング手段26からなるインバータ回路27と、を備えた、炊飯器の回路”が記載されている。

F 上記B、図3(上記D)には、“インバータ回路27とダイオードブリッジ29と高周波平滑用コンデンサ31とチョークコイル30とは、同一の加熱基板24上に実装される”ことが記載されている。

G また、図3(上記D)によれば、“ダイオードブリッジ29、高周波平滑用コンデンサ31、チョークコイル30、及びインバータ回路27のスイッチング手段26は、加熱基板24上において、2段のグリッド状に実装されており、ダイオードブリッジ29とチョークコイル30とがグリッドにおける同段に実装され、インバータ回路27のスイッチング手段26と高周波平滑用コンデンサ31とは、グリッドにおける、ダイオードブリッジ29とは別の段に実装され、グリッドにおいて、ダイオードブリッジ29とインバータ回路27のスイッチング手段26とが互いに隣接し、チョークコイル30と高周波平滑用コンデンサ31とが互いに隣接している”ことが看取できる。

H 上記Aの段落【0045】には、「サージアブソーバ36は、商用電源32から侵入する外来ノイズを吸収除去するノイズ除去手段である。また、コンデンサ37は、商用電源32にインバータ回路27から発生する高周波漏洩ノイズを放出するのを防止するフィルタ手段である」ことが記載され、さらに、図2(上記C)から、“ダイオードブリッジ29は、サージアブソーバ36及びコンデンサ37に電気的に接続され”ていることが看取できる。
してみると、引用文献1には、“ダイオードブリッジ29は、ノイズ除去手段であるサージアブソーバ36、及びフィルタ手段であるコンデンサ37に電気的に接続され”ていることが記載されているといえる。

I また、上記Gの点も考慮すると、図3(上記D)から、“加熱基板24上で、サージアブソーバ36及びコンデンサ37とは、グリッドのダイオードブリッジ29とチョークコイル30の段とは異なる位置に配置されている”ことが看取できる。

(イ)上記AないしIの記載内容(特に、下線部を参照)からすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「商用電源32を直流に変換するダイオードブリッジ29と、
ダイオードブリッジ29の一方の出力端子に電気的に接続されたチョークコイル30と、
ダイオードブリッジ29の他方の出力端子とチョークコイル30とに電気的に接続された高周波平滑用コンデンサ31と、
高周波平滑用コンデンサ31と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路27と、を備え、
インバータ回路27とダイオードブリッジ29と高周波平滑用コンデンサ31とチョークコイル30とは、同一の加熱基板24上に実装され、
ダイオードブリッジ29とチョークコイル30とがグリッドにおける同段に実装され、
インバータ回路27のスイッチング手段26と高周波平滑用コンデンサ31とは、グリッドにおける、ダイオードブリッジ29とは別の段に実装され、
グリッドにおいて、ダイオードブリッジ29とインバータ回路27のスイッチング手段26とが互いに隣接し、チョークコイル30と高周波平滑用コンデンサ31とが互いに隣接し、
ダイオードブリッジ29は、ノイズ除去手段であるサージアブソーバ36、及びフィルタ手段であるコンデンサ37に電気的に接続されており、
加熱基板24上で、サージアブソーバ36及びコンデンサ37とは、グリッドのダイオードブリッジ29とチョークコイル30の段とは異なる位置に配置されている、
炊飯器の回路。」

イ 引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【0002】 電力変換装置の小型化のために、当該装置を構成するコンポーネントをモジュール化する技術は従来から検討されている。例えば、特開2004―104860号公報(特許文献1)に示された技術では、平滑用のフィルムコンデンサを基板に搭載し、さらに混入ノイズを低減するためのラインバイパスコンデンサ、及び放電抵抗も同基板上に搭載される提案がなされている。」

ウ 引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

A 「【0021】
平滑用コンデンサ8には汎用的な基板実装品の小型フィルムコンデンサを,直流電源平滑に必要な静電容量確保のため,複数個並列接続している。これら複数個の小型フイルムコンデンサが平滑用コンデンサ基板31に実装され,平滑用コンデンサ基板31を固定するネジ46にてモジュール直流入力配線29と直流入力配線20へ電気的に接続されている。フイルムコンデンサはアルミ電解コンデンサに比べて高周波抵抗分が約1/10程度であることから,従来のアルミ電解コンデンサに比べて大幅に静電容量を小さくすることができる。また,固体の誘電体を使用しているため,シール劣化に伴う電解液漏れの心配がなく動作寿命が長い。アルミ電解コンデンサは内部抵抗が大きく,コンデンサ自体の発熱抑制のために静電容量を大きくする必要があったが,フイルムコンデンサを使用することにより,電力変換装置の小型・高信頼性化が実現できる。また,静電容量が数百μFまで減少しているので,放電抵抗10は小形の基板実装品が使用可能となり,平滑用コンデンサ基板31への実装が可能となる。
【0022】
また,平滑用コンデンサ8を変換部1に内蔵することでスイッチング素子2と平滑用コンデンサ8間の配線インダクタンスを低減し,平滑用コンデンサ8に周波数特性の良好なフィルムコンデンサを使用することにより,スイッチング時に発生するサージをスイッチング素子2の近傍で抑制することができるため,従来必要であったスナバコンデンサ4及びスナバコンデンサ基板13を廃止することができる。また,平滑コンデンサ基板31にシャシGND99を設けるだけでラインバイパスコンデンサ11の回路が成立するので,回路を大型化せずにラインバイパスコンデンサ11を内蔵することができる。」

B 「【0027】
また、平滑コンデンサとしてフィルムコンデンサをもちいているので、小型化されるとともに、周波数特性の向上によりスナバコンデンサを省略することが出来る。」

エ 引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

「【0029】 〈直流リンク部(3)〉 直流リンク部(3)は、コンデンサ(3a)を備えている。コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力に並列接続され、該コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))がインバータ回路(4)の入力ノードに接続されている。コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成されている。このコンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。そのため、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。」

オ 引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「【0032】 ここで、電源電圧(Vin)の周波数に応じた脈動成分が直流電圧(Vdc)に含まれている理由について説明する。直流リンク部(12)のコンデンサ(C)の容量値は、コンバータ回路(11)の出力をほとんど平滑化することができない一方で、インバータ回路(13)のスイッチング動作に起因するリプル電圧(スイッチング周波数に応じた電圧変動)を抑制することができるように、設定されている。具体的には、コンデンサ(C)は、一般的な電力変換装置においてコンバータ回路(11)の出力の平滑化に用いられる平滑コンデンサ(例えば、電解コンデンサ)の容量値の約0.01倍の容量値(例えば、数十μF程度)を有する小容量コンデンサ(例えば、フィルムコンデンサ)によって構成されている。このようにコンデンサ(C)が構成されているので、直流リンク部(12)においてコンバータ回路(11)の出力がほとんど平滑化されず、その結果、電源電圧(Vin)の周波数に応じた脈動成分(この例では、電源電圧(Vin)の周波数の2倍の周波数を有する脈動成分)が直流電圧(Vdc)に残留することになる。例えば、直流電圧(Vdc)は、その最大値がその最小値の2倍以上になるように脈動している。」

カ 引用文献6の記載事項
引用文献6には、以下の事項が記載されている。

A 「【0023】
冷媒回路4の冷媒配管10の一部10Aは、後述するインバータ装置21のパワーデバイス41及びリアクトル27を冷却するための冷媒ジャケット(冷却板)44に取り付けられ、冷却器20を構成している。本実施形態では、冷却能力を考慮して、図1に示すように冷媒配管10のうちの液側配管が冷却器20を構成している。本実施形態では、冷却器20を構成する液側配管は、冷媒回路4における室外熱交換器14と膨張弁15との間の液側配管であるが、これに限られない。
【0024】
冷却器20を構成する液側配管には、冷房運転時には、室外熱交換器14で凝縮した冷媒が流れ、暖房運転時には、室内熱交換器11で凝縮し、膨張弁15で減圧された冷媒が流れる。これらの冷媒の温度は、運転条件等によって異なるが、例えば冷房運転時で40〜45℃程度である。
【0025】
図2は、インバータ装置の概略構成図である。 このインバータ装置21は、空気調和装置における圧縮機12やファンを駆動するモータ(電動機)Mの運転周波数を可変制御するために用いられる。 インバータ装置21は、コンバータ回路(整流回路)22と、フィルタ回路23と、インバータ回路24とを備えている。コンバータ回路22とインバータ回路24とは、後述するパワーデバイス41(図3参照)を構成している。
【0026】
コンバータ回路22は、交流電源31及び直流電源線25,26と接続されている。コンバータ回路22は、交流電源31から入力される交流電圧を整流して脈流電圧に変換し、これを直流電源線25,26に出力する。図2には、コンバータ回路22としてダイオードブリッジが例示されている。但し、これに限らず、例えば同期整流により交流電圧を直流電圧に変換するAC−DCコンバータであってもよい。また、交流電源31は、多相交流電源であってもよいし、単相交流電源であってもよい。
【0027】
フィルタ回路23は、直流電源線25,26を介してコンバータ回路22と接続される。フィルタ回路23は、リアクトル27と、コンデンサ28とを備えている。 リアクトル27は直流電源線25に接続されている。リアクトル27は、主としてインバータ回路24の通常動作時に直流電源線25を流れる直流電流に重畳される高調波を抑制する。
【0028】
コンデンサ28は、リアクトル27の出力側電路と直流電源線26の間に接続される。そして、コンデンサ28は、リアクトル27と共にLCフィルタを構成している。このLCフィルタは、インバータ回路24の制御信号の生成に用いられるキャリアの周波数と同じ周波数の電流成分を減衰させることができ、キャリアの周波数と同じ周波数の電流成分が交流電源31へ流出するのを抑制することができる。
【0029】
本例におけるリアクトル27及びコンデンサ28は、平滑回路を構成するというよりもLCフィルタとして使用される。この場合、コンデンサ28の静電容量やリアクトル27のインダクタンスを小さくすることができ、コンデンサ28及びリアクトル27の小型化が可能となる。リアクトル27は、小型化することによって、後述するようにパワーデバイス41との高さの差を小さくすることができ(図3参照)、パワーデバイス41とともに冷却器20によって容易に冷却することができる。」

B 「【図2】




(3)取消理由についての当審の判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明を対比する。

A 引用発明の「商用電源32」は、本件特許発明1の「交流」に相当する。
そして、引用発明の「ダイオードブリッジ29」は、本件特許発明1の「交流を直流に変換するコンバータ回路(11)」に相当する。

B 引用発明の「チョークコイル30」は、「ダイオードブリッジ29の一方の出力端子に電気的に接続された」ものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)」に相当する。

C 引用発明の「高周波平滑用コンデンサ31」は、「ダイオードブリッジ29の他方の出力端子とチョークコイル30とに電気的に接続された」ものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)」に相当する。

D 引用発明の「インバータ回路27」は、「高周波平滑用コンデンサ31と電気的に接続され、直流を交流に変換する」ものであるから、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)」に相当する。

E 引用発明の「加熱基板24」は、本件特許発明1の「回路基板(20)」に相当する。
そして、引用発明の「インバータ回路27とダイオードブリッジ29と高周波平滑用コンデンサ31とチョークコイル30とは、同一の加熱基板24上に実装され」ることは、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され」ることに相当する。

F そして、引用発明の「ダイオードブリッジ29とチョークコイル30とがグリッドにおける同段に実装され、インバータ回路27のスイッチング手段26と高周波平滑用コンデンサ31とは、グリッドにおける、ダイオードブリッジ29とは別の段に実装され、グリッドにおいて、ダイオードブリッジ29とインバータ回路27のスイッチング手段26とが互いに隣接し、チョークコイル30と高周波平滑用コンデンサ31とが互いに隣接している」ことは、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接している」ことに相当する。

G 引用発明の「コンデンサ37」は、「フィルタ手段であ」り、また、引用発明の「サージアブソーバ36」は、「ノイズ除去手段である」から、引用発明の「コンデンサ37」及び「サージアブソーバ36」は、本件特許発明1の「ノイズフィルタ部材(60)」に相当する。
そして、引用発明の「ダイオードブリッジ29は、ノイズ除去手段であるサージアブソーバ36、及びフィルタ手段であるコンデンサ37に電気的に接続され」ることは、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され」ることに相当する。

H 引用発明の「回路」は、「ダイオードブリッジ29」、「チョークコイル30」、「高周波平滑用コンデンサ31」、「インバータ回路27」を備え、電力変換を行っていることは明らかであるから、引用発明の「回路」と、本件特許発明1の「電力変換装置」とは、後記の点で相違するものの、“電力変換装置”の点では共通する。

そうすると、本件特許発明1と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトルと、
前記コンバータ回路の他方の出力端子と前記リアクトルとに電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路と、を備え、
前記コンデンサと前記リアクトルとは、同一の回路基板上 に実装され、
前記コンバータ回路、前記コンデンサ、前記リアクトル、及び前記インバータ回路は、前記回路基板上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路と前記リアクトルとが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路と前記コンデンサとは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路と前記インバータ回路とが互いに隣接し、前記リアクトルと前記コンデンサとが互いに隣接し、
前記コンバータ回路は、ノイズフィルタ部材に電気的に接続されている、
電力変換装置。」

(相違点1)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「フィルムコンデンサで構成され」るのに対して、引用発明では、「高周波平滑用コンデンサ31」にそのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、「前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」のに対して、引用発明では「加熱基板24上で、サージアブソーバ36及びコンデンサ37とは、グリッドのダイオードブリッジ29とチョークコイル30の段とは異なる位置に配置されている」点。

事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
引用発明は、炊飯器の回路であって、引用文献1には、その加熱基板24が縦長の形状のものが示されているところ(【図3】)、当該加熱基板24上で、ダイオードブリッジ29とチョークコイル30の段の上方に配置されたサージアブソーバ36及びコンデンサ37を、グリッドのダイオードブリッジ29とチョークコイル30の段と同段に配置するように改変を行う動機付けとなる記載は、引用文献1には無く、また、炊飯器の加熱基板の設計において、そのような配置を採用すべき理由も見当たらない。
また、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成が周知の技術であったとも認められない。
したがって、上記相違点1を検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

なお、相違点2に関して、特許異議申立人は、令和4年5月27日提出の意見書において、
甲第18号証(特許第3227175号)、甲第19号証(特開2017−85734号公報)にも記載されるように、コンバータ回路とノイズフィルタ部材を電気的に接続し隣接して一列に配置することは周知の技術であって、コンバータ回路とノイズフィルタ部材を隣接して配置して、電力変換装置をコンパクト化し、コンバータ回路で発生したノイズをすぐにフィルタ部材で除去することは当業者が必要に応じて通常行う設計事項に過ぎない。また、隣接して一列に配置することは、グリッドの同段に配置することに相当する。
このような周知の技術を適用することで引用文献1のノイズ除去手段36をダイオードブリッジ29とグリッドの同段に配置して、上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである、
旨主張している。(意見書4頁下から1行−6頁下から9行)

確かに、コンバータ回路とノイズフィルタ部材を隣接して一列に配置することは周知の技術と認められる。しかしながら、該周知の技術は、グリッドの段の配置を規定するものではないし、さらに、コンバータ回路、コンデンサ、リアクトル、及びインバータ回路からなる2段のグリッドにおける、コンバータ回路の段と同段でなくとも(例えば、段の上または下に配置)、コンバータ回路とノイズフィルタ部材を隣接して一列に配置することは可能であるから、隣接して一列に配置することが、グリッドの同段に配置することに相当するとは認められない。
したがって、周知の技術を適用しても、引用文献1のサージアブソーバ36をダイオードブリッジ29と同段には配置されず、上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであっとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

イ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2、3は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
(1)申立理由の概要
ア 特許法第29条第2項
請求項1に係る発明は、甲第1、3−5号証のいずれか1つに記載された発明、及び、周知技術(甲第6−7号証)に基いて、また、請求項2、3に係る発明は、甲第1、3−5号証のいずれか1つに記載された発明、及び、周知技術(甲第6−9号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1−3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

< 引用文献等一覧 >
甲第1号証:特開2010−40188号公報
甲第3号証:特開平10−284236号公報
甲第4号証:特開2008−21476号公報
甲第5号証:特開平5−21175号公報
甲第6号証:特開2010−110065号公報(引用文献2)
甲第7号証:特開2004−104860号公報(引用文献3)
甲第8号証:特開2016−111746号公報
甲第9号証:特開2017−28825号公報(引用文献6)

イ 特許法第36条第4項第1号
本件特許の請求項1の記載の発明を、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をするには、「ノイズフィルタ部材(60)」を備えるものか、また、「フィルムコンデンサ」の容量の大きさ又は機能が、さらに、「回路基板(20)」が4層基板であるか、明確かつ十分に記載したものではないから、本件特許の請求項1−3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

ウ 特許法第36条第6項第2号
本件特許の請求項1の「隣接」、「グリッド」、及び「段」が明確に定義されておらず、本件特許の請求項1の記載は不明確である。また、請求項2、3は、請求項1の記載を引用するものであり、同様の理由で、不明確である。
したがって、本件特許の請求項1−3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(2)各甲号証の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項
(ア)甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A 「【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関し、詳しくは電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路部品を冷却するための冷却手段を備える電磁誘導加熱調理器に関する。」

B 「【0010】
図3および図4において8a、8b、8c、8d、8eは回路部品でIGBTであり、IGBTとは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタという半導体スイッチング素子のことで、大電流を扱う回路に適し使用されている。9は回路部品の一例としてのダイオードブリッジであり、ダイオードブリッジとは、ダイオードを4個使って整流回路を構成しているもので、交流電圧を直流電圧へ変換する回路に使用される。10は取付けた部品の発熱を放熱する放熱部品としてのヒートシンクaであり、IGBT8a、IGBT8b、IGBT8cをそれぞれ下面に取付けている。11は取付けた部品の発熱を放熱する放熱部品としてのヒートシンクbであり、IGBT8d、IGBT8e、ダイオードブリッジ9をそれぞれ下面に取付けている。」

C 「【0012】
12は回路部品の一例としてのチョークコイルであり、チョークコイルとは、ノイズ対策に用いられる回路部品で、所定周波数を上回る高周波電流を阻止するために使用される。13a、13b、13c、13dは回路部品の一例としての電解コンデンサであり、電解コンデンサとは電荷を蓄えたり放出したりする受動素子のことで平滑用・時定数回路用に使用される。14a、14bは絶縁性のある樹脂製のスペーサー、15は配線基板であり、ヒートシンクa10とヒートシンクb11はスペーサー14aとスペーサー14bを介し、冷却風が通過する空間を確保して配線基板15へ取付けられる。スペーサー14aとスペーサー14bは絶縁性のある樹脂であるので、配線基板15とヒートシンクa10、ヒートシンクb11との取付けにおける絶縁が確保される。
【0013】
上述のようにIGBT8a、IGBT8b、IGBT8cを取付けたヒートシンクa10、IGBT8d、IGBT8e、ダイオードブリッジ9を取付けたヒートシンクb11、チョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dが配線基板15の上面に搭載されて、制御部6が構成されている。
【0014】
図1から図5のように構成された加熱調理器において、IGBT8aとIGBT8bとIGBT8cの発熱量の総量をJ1として、IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9の発熱量の総量をJ2とすると発熱量の関係はJ1>J2となり、ヒートシンクa10とヒートシンクb11の放熱量の関係は図5に示すように、ヒートシンクa10<ヒートシンクb11となっていて、IGBT8aとIGBT8bとIGBT8cからなる発熱量の総量が多い回路部品グループが放熱量の小さいヒートシンクa10に取付けられ、IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9からなる発熱量の総量が少ない回路部品グループが放熱量の大きいヒートシンクa11に取付けられている。そして、チョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dは、IGBT8a〜8eとダイオードブリッジ9よりも発熱量は少ない部品である。
【0015】
図3から図5に示すように、ダクト7の吸気側に配置された冷却ファン5から冷却風がダクト7内に供給され、最初に冷却ファン5に近い位置に配置されたIGBT8aとIGBT8bとIGBT8cが取付けられた冷却風の通過がしやすいヒートシンクa10と、配線基板15とスペーサー14a、スペーサー14bとの対向空間とにそれぞれ供給され、発熱量の総量が多い部品グループ(IGBT8aとIGBT8bとIGBT8c)を冷却する。このとき、冷却風はダクト7に覆われた空間を通過するため分散されず、下流に配置された次の部品へ到達する。
【0016】
その後、ヒートシンクa10と、配線基板15とスペーサー14a、スペーサー14bとの対向空間を通過した冷却風が、IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9が取付けられたヒートシンクa11と、配線基板15とスペーサー14a、スペーサー14bとの対向空間に供給され、発熱量の総量が少ない部品グループ(IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9)を冷却、さらにヒートシンクa11と、配線基板15とスペーサー14a、スペーサー14bの空間を通過した冷却風がIGBT8a〜8eとダイオードブリッジ9よりも発熱量の少ないチョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dを冷却するようになっているので、発熱量の多い回路部品グループから冷却し、冷却風が通過しやすく、冷却風がダクト7の下流側排気口まで途中で分散しないので冷却風が確保でき、冷却性能を向上させることができる。
【0017】
なお、ヒートシンクa10とヒートシンクb11の冷却風の通過のしやすさと放熱量の違いを放熱板16aと放熱板16bの間隔を変えることで実現する例を挙げたが、ヒートシンクa10とヒートシンクb11の放熱板の形状を変えることでも同様の効果を得ることができる。」

D 「【図3】



E 上記Aの段落【0001】には、“電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路”が記載されている。

F 上記Bの段落【0010】には、「図3および図4において8a、8b、8c、8d、8eは回路部品でIGBTであ」ること、及び「9は回路部品の一例としてのダイオードブリッジであり、ダイオードブリッジとは、ダイオードを4個使って整流回路を構成しているもので、交流電圧を直流電圧へ変換する回路に使用される」ことが記載されている。
さらに、上記Cの段落【0012】には、「12は回路部品の一例としてのチョークコイルであり、チョークコイルとは、ノイズ対策に用いられる回路部品で、所定周波数を上回る高周波電流を阻止するために使用される」こと、さらに、「13a、13b、13c、13dは回路部品の一例としての電解コンデンサであり、電解コンデンサとは電荷を蓄えたり放出したりする受動素子のことで平滑用・時定数回路用に使用される」こと、また、「15は配線基板であ」ることが記載されている。

G 上記Cの段落【0013】には、「IGBT8a、IGBT8b、IGBT8cを取付けたヒートシンクa10、IGBT8d、IGBT8e、ダイオードブリッジ9を取付けたヒートシンクb11、チョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dが配線基板15の上面に搭載され」ることが記載されている。
また、図3(上記D)より、“配線基板15に、IGBT8aとIGBT8bとIGBT8cからなる列、IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9からなる列、電解コンデンサ13a、13b、13c、13dとチョークコイル12からなる列、の3列が平行になるように、IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、ダイオードブリッジ9、電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、チョークコイル12が実装され”ていることが看取できる
してみると、甲第1号証には、“配線基板15に、ヒートシンクa10を取り付けたIGBT8aとIGBT8bとIGBT8cからなる列、ヒートシンクb11を取り付けたIGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9からなる列、電解コンデンサ13a、13b、13c、13dとチョークコイル12からなる列、の3列が平行になるように、IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、ダイオードブリッジ9、電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、チョークコイル12が実装されて”いることが記載されているといえる。

H 上記Cの段落【0015】−【0016】には、“ダクト7の吸気側に配置された冷却ファン5から冷却風がダクト7内に供給されると、発熱量の総量が多い部品グループ(IGBT8aとIGBT8bとIGBT8c)を冷却し、その後、冷却風が、発熱量の総量が少ない部品グループ(IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9)を冷却し、さらに、冷却風がIGBT8a〜8eとダイオードブリッジ9よりも発熱量の少ないチョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dを冷却することで冷却性能が向上する”ことが記載されている。

(イ)上記AないしHの記載内容からすると、上記甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路であって、
IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、交流電圧を直流電圧へ変換する整流回路であるダイオードブリッジ9、平滑用・時定数回路用に使用される電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、ノイズ対策に用いられるチョークコイル12を備え、
配線基板15に、ヒートシンクa10を取り付けたIGBT8aとIGBT8bとIGBT8cからなる列、ヒートシンクb11を取り付けたIGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9からなる列、電解コンデンサ13a、13b、13c、13dとチョークコイル12からなる列、の3列が平行になるように、IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、ダイオードブリッジ9、電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、チョークコイル12が実装されており、
ダクト7の吸気側に配置された冷却ファン5から冷却風がダクト7内に供給されると、発熱量の総量が多い部品グループ(IGBT8aとIGBT8bとIGBT8c)を冷却し、その後、冷却風が、発熱量の総量が少ない部品グループ(IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9)を冷却し、さらに、冷却風がIGBT8a〜8eとダイオードブリッジ9よりも発熱量の少ないチョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dを冷却することで冷却性能が向上する、
回路。」

イ 甲第3号証の記載事項
(ア)甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A 「【0016】
【実施例】
(実施例1)図1は、本発明の第1の実施例の誘導加熱調理器の斜視図で、1は本体ケース、2は加熱コイル、3はスイッチング素子であるIGBT、4は共振コンデンサ、5は平滑コンデンサ、6は整流器であるダイオードブリッジ、7はフィルタコイル、8はフィルタコンデンサ、9は制御回路、10は冷却ファンであり、IGBT3とダイオードブリッジ6はヒートシンク11に取り付けられ、本体ケース1の最上面には鍋を載置するトッププレート12が取り付けられている。本体ケース1の内部は、しきり板13としきり板14としきり板15により4つの収納部分に分割されている。すなわち、加熱コイル2を収納する部分と、IGBT3とダイオードブリッジ6を収納する部分と、共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御基板9を収納する部分と、フィルタコイル7を収納する部分である。冷却ファン10は、IGBT3とダイオードブリッジ6を収納している部分に配されている。また、本体ケース1の上部には断熱材16が配されている。
【0017】図2は本発明の第1の実施例の誘導加熱調理器の概略回路構成で、17は交流電源である。以上の様に構成された誘導加熱調理器について、その動作を説明する。
【0018】誘導加熱調理器が動作すると、回路部品はその損失により発熱する。加熱コイル2を収納している部分は、断熱材16によりトッププレート12に載置される鍋(図示せず。)からの伝熱を遮断するので、この収納部分は、加熱コイル2の発熱だけを放熱すれば良く、加熱コイル2は、この収納部分の本体ケース1の側面からの放熱で冷却される。
【0019】IGBT3とダイオードブリッジ6は半導体素子であり、部品単体の熱容量が小さい割に発熱量が大きいので、ヒートシンク11に取り付けられて冷却ファン10で強制冷却される。この場合、冷却ファン10は、IGBT3とダイオードブリッジ6だけを冷却すれば良いので、その風量は、従来のように本体ケース内全体を冷却する場合に比べ少なくできる。
【0020】共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御回路9は、損失が比較的小さく自己発熱が比較的小さいので、発熱が比較的多い他の部品の熱の影響を受けないように分けてひとまとめに収納され、この部分の発熱は、この収納部分の本体ケース1の側面から放熱され、共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御回路9は冷却される。
【0021】フィルタコイル7は、発熱が共振コンデンサ4・平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8・制御基板9に比べ多少多く、また、耐熱温度が共振コンデンサ4・平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8・制御基板9に比べ多少高いので、これらの部品と分離して収納され、フィルタコイル7の発熱は、フィルタコイル7を収納している部分の本体ケース1の側面から放熱され、フィルタコイル7は冷却される。」

B 「【図1】



C 「【図2】





D 上記Aの段落【0017】には、“図2は、誘導加熱調理器の回路”であること記載されている。
そして、図2(上記C)より、“誘導加熱調理器の回路が、交流電源17を直流に変換するダイオードブリッジ6と、ダイオードブリッジ6の一方の出力端子に電気的に接続されたフィルタコイル7と、ダイオードブリッジ6の他方の出力端子とフィルタコイル7とに電気的に接続された平滑コンデンサ5と、平滑コンデンサ5と電気的に接続され、スイッチング素子であるIGBT3と、を備え、ダイオードブリッジ6は、フィルタコンデンサ8に電気的に接続されている”ことが看取できる。

E 図1(上記B)より“平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8とフィルタコイル7がほぼ直線上に配置され、また、この直線と平行になるようにダイオードブリッジ6及びIGBT3が配置されて”いることが看取できる。

G 上記Aの段落【0016】には、“しきり板13としきり板14としきり板15により、加熱コイル2を収納する部分と、IGBT3とダイオードブリッジ6を収納する部分と、共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御基板9を収納する部分と、フィルタコイル7を収納する部分に分割され”ることが記載されている。

H 上記Aの段落【0020】には、「平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8・・・は、損失が比較的小さく自己発熱が比較的小さいので、発熱が比較的多い他の部品の熱の影響を受けないように分けてひとまとめに収納され」ることが、また、段落【0021】には、「フィルタコイル7は、発熱が・・・平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8・・・に比べ多少多く、また、耐熱温度が・・・平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8・・・に比べ多少高いので、これらの部品と分離して収納され」ることが記載されている。

(イ)上記AないしHの記載内容からすると、上記甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

「交流電源17を直流に変換するダイオードブリッジ6と、
ダイオードブリッジ6の一方の出力端子に電気的に接続されたフィルタコイル7と、
ダイオードブリッジ6の他方の出力端子とフィルタコイル7とに電気的に接続された平滑コンデンサ5と、
平滑コンデンサ5と電気的に接続され、スイッチング素子であるIGBT3と、
を備え、ダイオードブリッジ6は、フィルタコンデンサ8に電気的に接続されており、
平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8とフィルタコイル7がほぼ直線上に配置され、また、この直線と平行になるようにダイオードブリッジ6及びIGBT3が配置されており、
しきり板13としきり板14としきり板15により、加熱コイル2を収納する部分と、IGBT3とダイオードブリッジ6を収納する部分と、共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御基板9を収納する部分と、フィルタコイル7を収納する部分に分割され、
平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8は、損失が比較的小さく自己発熱が比較的小さいので、発熱が比較的多い他の部品の熱の影響を受けないように分けてひとまとめに収納され、フィルタコイル7は、発熱が平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8に比べ多少多く、また、耐熱温度が平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8に比べ多少高いので、これらの部品と分離して収納される、
誘導加熱調理器の回路。」

ウ 甲第4号証の記載事項
(ア)甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A 「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施例について、図1から図5に従って説明する。
【0018】
図1から図4は本発明の誘導加熱調理器の一実施例を示している。図1に示されている調理器は、以下に詳細に説明するが、トッププレート3上の三個所に鍋載置部6a,6b,6cを設けたビルトイン型の誘導加熱調理器である。

・・・中略・・・

【0035】
この冷却風路26は、右風路ガイド24,左風路ガイド25によって他と区分されており、その風路26内の電子制御基板20上に電子制御部品のうち、冷却ファン15による冷却を必要とする強制放熱部品、すなわち、ヒートシンク27,28,IGBTスイッチング素子29,ダイオードブリッジ30が搭載され、右風路ガイド24,左風路ガイド25より外側の上電子制御基板20上にフィルタコンデンサ31,平滑コンデンサ32,共振コンデンサ33,フィルタコイル34,端子台35等、強制放熱を必要としない自然放熱部品が搭載されている。」

B 「【図4】



C 上記Aの段落【0018】には、“図4は、誘導加熱調理器”であることが記載されている。

D 上記Aの段落【0035】には、“電子制御基板20上に電子制御部品のうち、冷却ファン15による冷却を必要とする強制放熱部品である、ヒートシンク27、28、IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が、右風路ガイド24、左風路ガイド25によって他と区分された風路26内搭載され、右風路ガイド24、左風路ガイド25より外側の上電子制御基板20上にフィルタコンデンサ31、平滑コンデンサ32、共振コンデンサ33、フィルタコイル34、端子台35等、強制放熱を必要としない自然放熱部品が搭載され”ることが記載されている。

E 図4(上記B)によれば、“平滑コンデンサ32、IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にフィルタコイル34が配置されている”ことが看取できる。

(イ)上記AないしEの記載内容からすると、上記甲第4号証には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

「誘導加熱調理器であって、
電子制御基板20上に電子制御部品のうち、冷却ファン15による冷却を必要とする強制放熱部品である、ヒートシンク27、28、IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が、右風路ガイド24、左風路ガイド25によって他と区分された風路26内に搭載され、右風路ガイド24、左風路ガイド25より外側の上電子制御基板20上にフィルタコンデンサ31、平滑コンデンサ32、共振コンデンサ33、フィルタコイル34、端子台35等、強制放熱を必要としない自然放熱部品が搭載され、
平滑コンデンサ32、IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にフィルタコイル34が配置されている、
誘導加熱調理器。」

エ 甲第5号証の記載事項
(ア)甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A 「【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2は電子安定器のプリント基板1に実装した状態のブロック図を示している。このように、電子安定器は、交流電源からヒューズ、サージ吸収素子(ZNR)などの保護回路2、雑音低減のためのフィルタ回路3、交流を整流する整流回路4、整流出力を平滑する平滑回路5、インバータ回路6、負荷回路7等で構成されている。
【0010】インバータ回路6は、平滑回路5の出力を電源としてスイッチング素子のオンオフにより高周波の交流に変換するものであり、負荷回路(共振回路)により雑音の少ない正弦波に近い波形としてランプを点灯させるものである。特に、直管形の蛍光灯に用いられる場合は、プリント基板1に対して図2に示すように、電源側からランプ側に配置されることが一般的である。しかしながら、実際、部品を実装する場合、平滑回路5とインバータ回路6とは複雑に実装される。それは、インバータ回路6には、ランプ寿命を上げるための先行予熱、及びタイマー回路、出力制御回路等小さな部品の制御回路が実装されるためである。」

B 「【0016】すなわち、負荷回路7は部品点数が少ないが、L2 ,L3 、C6 ,C7 ,C8 ,C9 は、チョークコイル及び高圧のコンデンサと大物部品であるため、寸法は短くはない。大きい(重い)部品を短いプリント基板1bに配置でき、プリント基板1bのそり、たわみを極力少なくでき、振動、落下に強くなる。図1はこのようにしてプリント基板1を1aと1bに分割して各部品を実装した配置図を示し、図示の部品は図3の回路における大物部品を示している。また、両プリント基板1a,1bの合わせた大きさは、安定器のケースの長さLと幅Wとほぼ同じ大きさとしている。
【0017】尚、本実施例においては、平滑回路5にチョッパ回路を用いているが、図4に示すような、ダイオードブリッジDBとコンデンサCからなる一般の平滑回路においても、特に薄型化の場合、安定器の高さH(図6)が小さいため、電解コンデンサC4 は細長い寸法となり、平滑回路5とインバータ回路6で分けることは実装面で非効率的となる。すなわち、電解コンデンサC4 の周囲には、インバータ回路6の制御部の小さい部品が実装できる。」

C 「【図1】



D 「【図3】



E 図3(上記D)を参照すると、「平滑回路5」部分のコンデンサに「C4」となっているものはなく、右側のコンデンサに「C6」と記載されているが、また、「負荷回路7」部分の「コンデンサ」には、「C6」、「C7」、「C8」、「C9」と記載されている。一方、上記Bの段落【0016】には、“負荷回路が、L2 、L3 、C6、C7、C8、C9からなる”ことが記載され、また、段落【0014】には、“平滑回路に、コンデンサC4がある”ことが記載されている。
してみると、図3(上記D)の「平滑回路5」部分の右側のコンデンサに「C6」と記載されるは「C4」の誤記と認められる。

F 上記Aの段落【0009】には、“交流電源からヒューズ、サージ吸収素子(ZNR)などの保護回路2、雑音低減のためのフィルタ回路3、交流を整流する整流回路4、整流出力を平滑する平滑回路5、インバータ回路6、負荷回路7等で構成されている電子安定器”が記載されている。

G そして、上記Eの点を踏まえると、図3(上記D)から、“交流電源に接続された整流回路4の一方の出力端子に電気的にチョークコイルL1が接続され、整流回路4の他方の出力端子とチョークコイルL1とに電気的にコンデンサC4が接続され、コンデンサC4と直流を交流に変換するインバータ回路6が接続され、整流回路4は、フィルタ回路3に電気的に接続されて”いることが看取できる。

H さらに、図1(上記C)より、“整流回路4、チョークコイルL1、コンデンサC4、が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にインバータ回路6が配置されている”ことが看取できる。

(イ)上記AないしHの記載内容からすると、上記甲第5号証には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

「交流電源からヒューズ、サージ吸収素子(ZNR)などの保護回路2、雑音低減のためのフィルタ回路3、交流を整流する整流回路4、整流出力を平滑する平滑回路5、インバータ回路6、負荷回路7等で構成されている電子安定器であって、
交流電源に接続された整流回路4の一方の出力端子に電気的にチョークコイルL1が接続され、整流回路4の他方の出力端子とチョークコイルL1とに電気的にコンデンサC4が接続され、コンデンサC4とインバータ回路6が接続され、整流回路4は、フィルタ回路3に電気的に接続されており、
整流回路4、チョークコイルL1、コンデンサC4、が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にインバータ回路6が配置されている、
電子安定器。」

オ 甲第6号証の記載事項
甲第6号証の記載事項に関しては、上記「2(2)イ 引用文献2の記載事項」に記載のとおりである。

カ 甲第7号証の記載事項
甲第7号証の記載事項に関しては、上記「2(2)ウ 引用文献3の記載事項」に記載のとおりである。

キ 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A 「【0031】
図2は、電力変換装置3の電気的な構成を示す回路図である。図2では交流電源13と、圧縮機1の電気的部品である交流回転機14も併記されている。交流電源13は、三相交流電源として示されているが、単相交流電源でもよい。
【0032】
電力変換装置3は整流器たる整流回路61、逆変換器62を備えており、これらは図1においてSiCデバイス6として纏めて示されている。少なくとも逆変換器62はSiC素子を採用して構成される。整流回路61がSiC素子を採用して構成されてもよい。
【0033】
整流回路61は交流電源13から供給される交流電圧を整流して(つまり交直変換を行って)整流電圧Vrを得て、これを直流リアクトル4の一端と、直流コンデンサ7の一端とに与える。但し直流リアクトル4の他端と、直流コンデンサ7の他端とは接続されており、当該接続箇所は逆変換器62の高電位側の入力端62aと接続される。」

B 「【0063】
他方、直流コンデンサ7の静電容量を小さく選定するほど、サイズが大きなリアクトルが必要となる。これは、逆変換器62からのスイッチングノイズを電源側に伝搬させにくくするためのカットオフ周波数を得る要求があり、よって直流コンデンサ7の静電容量が小さいほど、これとともにローパスフィルタを構成するリアクトルに要求されるインダクタンスは大きくなるからである。このようなリアクトルのインダクタンスについて要求は、当該リアクトルを直流リアクトル4として実現する場合のみならず、交流電源13と整流回路61との間に設けられる、いわゆる交流リアクトル(不図示)として実現する場合にも妥当する。当該交流リアクトルは整流回路61を介して、等価的に直流リアクトル4として機能するからである。」

C 「【図2】



ク 甲第9号証の記載事項
甲第9号証の記載事項に関しては、上記「2(2)カ 引用文献6の記載事項」に記載のとおりである。

(3)対比・判断
ア 取消理由ア(特許法第29条第2項)について
(ア)甲第1号証との対比・判断
A 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明(甲1発明)を対比する。

a 甲1発明の「ダイオードブリッジ9」は、「交流電圧を直流電圧へ変換する整流回路である」から、本件特許発明1の「交流を直流に変換するコンバータ回路(11)」に相当する。

b 甲1発明の「チョークコイル12」と、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)」とは、後記の点で相違するものの、“リアクトル”の点では共通する。

c 甲1発明の「電解コンデンサ13a、13b、13c、13d」と、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)」とは、後記の点で相違するものの、“コンデンサ”の点では共通する。

d 通常、電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路におけるIGBTが直流を交流に変換するためのものであるから、甲1発明の「IGBT8a、8b、8c、8d、8e」と、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)」とは、後記の点で相違するものの、“直流を交流に変換するインバータ回路”の点では共通する。

e 電磁誘導式の加熱コイルは、加熱コイルに高周波電流(交流)を流すものであるから、甲1発明の「電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路」は、ダイオードブリッジ9で交流電圧を直流電圧へ変換し、この直流電圧をIGBT8a、8b、8c、8d、8eで交流に変換するように電力変換しているものと認められることから、本件特許発明1の「電力変換装置」に対応するものである。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流を直流に変換するコンバータ回路と、
リアクトルと、
コンデンサと、
直流を交流に変換するインバータ回路と、を備えた、
電力変換装置。」

(相違点1)
「リアクトル」が、本件特許発明1では、「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続された」ものであるのに対して、甲1発明では、「チョークコイル12」にその旨の特定がされていない点。

(相違点2)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続された」ものであるのに対して、甲1発明では、「電解コンデンサ13a、13b、13c、13d」にその旨の特定がされていない点。

(相違点3)
「インバータ回路」が、本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され」たものであるのに対して、甲1発明では、「IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e」にその旨の特定がされていない点。

(相違点4)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「フィルムコンデンサで構成され」るのに対して、甲1発明では、「高周波平滑用コンデンサ31」にそのような特定がされていない点。

(相違点5)
本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上 に実装され、前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され、前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」のに対して、甲1発明では、その旨の特定がされていない点。

事案に鑑み、相違点5について先に検討する。
甲1発明は、「配線基板15に、ヒートシンクa10を取り付けたIGBT8aとIGBT8bとIGBT8cからなる列、ヒートシンクb11を取り付けたIGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9からなる列、電解コンデンサ13a、13b、13c、13dとチョークコイル12からなる列、の3列が平行になるように、IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、ダイオードブリッジ9、電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、チョークコイル12が実装される」ことで、「ダクト7の吸気側に配置された冷却ファン5から冷却風がダクト7内に供給されると、発熱量の総量が多い部品グループ(IGBT8aとIGBT8bとIGBT8c)を冷却され、その後、冷却風が、発熱量の総量が少ない部品グループ(IGBT8dとIGBT8eとダイオードブリッジ9)を冷却し、さらに、冷却風がIGBT8a〜8eとダイオードブリッジ9よりも発熱量の少ないチョークコイル12、電解コンデンサ13a〜13dを冷却することで冷却性能が向上する」ものであるから、IGBT8a8a、8b、8c、8d、8e、ダイオードブリッジ9、電解コンデンサ13a、13b、13c、13d、チョークコイル12を配線基板15上において、2段のグリッド状に実装する理由が存在しない。
また、甲第6号証、甲第7号証には、フィルムコンデンサに関しては記載されているが、2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていない。
さらに、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成が周知の技術であったとも認められない。
したがって、他の上記相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲第6、7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

B 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであって、また、甲第8、9号証にも2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていないことから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2、3は、甲1発明、甲第6−9号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲第3号証との対比・判断
A 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明(甲3発明)を対比する。

a 甲3発明の「交流電源17」は、本件特許発明1の「交流」に相当する。
そして、甲3発明の「ダイオードブリッジ6」は、本件特許発明1の「交流を直流に変換するコンバータ回路(11)」に相当する。

b 甲3発明の「フィルタコイル7」は、「ダイオードブリッジ6の一方の出力端子に電気的に接続された」ものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)」に相当する。

c 甲3発明の「平滑コンデンサ5」は、「ダイオードブリッジ6の他方の出力端子とフィルタコイル7とに電気的に接続された」ものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)」に相当する。

d 甲3発明の「スイッチング素子であるIGBT3」は、「平滑コンデンサ5と電気的に接続され」るものであって、また、通常、誘導加熱調理器の回路では、IGBTが直流を交流に変換し加熱コイルに供給するものであるから、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)」に相当する。

e 甲3発明の「ダイオードブリッジ6は、フィルタコンデンサ8に電気的に接続されて」いることは、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され」ていることに相当する。

f 甲3発明の「誘導加熱調理器の回路」は、「ダイオードブリッジ6」、「フィルタコイル7」、「平滑コンデンサ5」、「IGBT3」を備え、電力変換を行っていることは明らかであるから、甲3発明の「誘導加熱調理器の回路」は、本件特許発明1の「電力変換装置」に対応するものである。

そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトルと、
前記コンバータ回路の他方の出力端子と前記リアクトルとに電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路と、を備え、
前記コンバータ回路は、ノイズフィルタ部材に電気的に接続されている、
電力変換装置。」

(相違点1)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「フィルムコンデンサで構成され」るのに対して、甲3発明では、「平滑コンデンサ5」にそのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上 に実装され、前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し」、さらに「前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」のに対して、甲3発明では、その旨の特定がされていない点。

事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
甲3発明は、「しきり板13としきり板14としきり板15により、加熱コイル2を収納する部分と、IGBT3とダイオードブリッジ6を収納する部分と、共振コンデンサ4と平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8と制御基板9を収納する部分と、フィルタコイル7を収納する部分に分割」することで、「損失が比較的小さく自己発熱が比較的小さい」「平滑コンデンサ5とフィルタコンデンサ8」を、「発熱が比較的多い他の部品の熱の影響を受けないように分けてひとまとめに収納」し、「発熱が平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8に比べ多少多く、また、耐熱温度が平滑コンデンサ5・フィルタコンデンサ8に比べ多少高い」「フィルタコイル7」を、「これらの部品と分離して収納」できればよいものであるから、あえて、「ダイオードブリッジ6」、「フィルタコイル7」、「平滑コンデンサ5」、「IGBT3」を、あえて2段のグリッド状とする理由が認められない。また、仮に、「ダイオードブリッジ6」、「フィルタコイル7」、「平滑コンデンサ5」、「IGBT3」を、2段のグリッド状に配置しても、「平滑コンデンサ5」と「フィルタコンデンサ8」はまとめて配置されるものであって、「フィルタコンデンサ8」は「平滑コンデンサ5」と同段に配置され、「ダイオードブリッジ6」と「フィルタコイル7」の段と同段に配置されるものではない。
また、甲第6号証、甲第7号証には、フィルムコンデンサに関しては記載されているが、2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていない。
さらに、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成が周知の技術であったとも認められない。
したがって、他の上記相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明、甲第6、7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

B 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであって、また、甲第8、9号証にも2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていないことから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2、3は、甲3発明、甲第6−9号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)甲第4号証との対比・判断
A 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第4号証に記載された発明(甲4発明)を対比する。

a 通常、ダイオードブリッジは交流を直流へ変換する回路である。
したがって、甲4発明の「ダイオードブリッジ30」は、本件特許発明1の「交流を直流に変換するコンバータ回路(11)」に相当する。

b 甲4発明の「フィルタコイル34」と、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)」とは、後記の点で相違するものの、“リアクトル”の点では共通する。

c 甲4発明の「平滑コンデンサ32」と、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)」とは、後記の点で相違するものの、“コンデンサ”の点では共通する。

d 通常、電磁誘導式の加熱コイルに大電流を供給する回路におけるIGBTが直流を交流に変換するためのものであるから、甲4発明の「IGBTスイッチング素子29」と、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)」とは、後記の点で相違するものの、“直流を交流に変換するインバータ回路”の点では共通する。

e 誘導加熱調理器は、加熱コイルに高周波電流(交流)を流すものであるから、甲4発明の「誘導加熱調理器」は、ダイオードブリッジ30で交流を直流へ変換し、この直流をIGBTスイッチング素子29で交流に変換するように電力変換しているものと認められることから、本件特許発明1の「電力変換装置」に対応するものである。

そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流を直流に変換するコンバータ回路と、
リアクトルと、
コンデンサと、
直流を交流に変換するインバータ回路と、を備えた、
電力変換装置。」

(相違点1)
「リアクトル」が、本件特許発明1では、「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続された」ものであるのに対して、甲4発明では、「フィルタコイル34」にその旨の特定がされていない点。

(相違点2)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続された」ものであるのに対して、甲4発明では、「平滑コンデンサ32」にその旨の特定がされていない点。

(相違点3)
「インバータ回路」が、本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され」たものであるのに対して、甲4発明では、「IGBTスイッチング素子29」にその旨の特定がされていない点。

(相違点4)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「フィルムコンデンサで構成され」るのに対して、甲4発明では、「平滑コンデンサ32」にそのような特定がされていない点。

(相違点5)
本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上 に実装され、前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され、前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」のに対して、甲4発明では、その旨の特定がされていない点。

事案に鑑み、相違点5について先に検討する。
甲4発明は、「平滑コンデンサ32、IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にフィルタコイル34が配置され」るものであって、また、「IGBTスイッチング素子29、ダイオードブリッジ30が、右風路ガイド24、左風路ガイド25によって他と区分された風路26内に搭載され」れば、「平滑コンデンサ32」、「フィルタコイル34」は「右風路ガイド24、左風路ガイド25より外側の上電子制御基板20上」にあればよいものであって、「ダイオードブリッジ30」、「フィルタコイル34」、「平滑コンデンサ32」、「IGBTスイッチング素子29」を、2段のグリッド状に実装する理由が存在しない。
また、甲第6号証、甲第7号証には、フィルムコンデンサに関しては記載されているが、2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていない。
さらに、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成が周知の技術であったとも認められない。
したがって、他の上記相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明、甲第6、7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

B 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであって、また、甲第8、9号証にも2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていないことから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2、3は、甲4発明、甲第6−9号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)甲第5号証との対比・判断
A 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明(甲5発明)を対比する。

a 甲5発明の「交流電源」は、本件特許発明1の「交流」に相当する。
そして、甲5発明の「整流回路4」は、本件特許発明1の「交流を直流に変換するコンバータ回路(11)」に相当する。

b 甲5発明の「チョークコイルL1」は、「整流回路4の一方の出力端子に電気的に」「接続され」たものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)」に相当する。

c 甲5発明の「コンデンサC4」は、「整流回路4の他方の出力端子とチョークコイルL1とに電気的に」「接続され」たものであるから、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)」に相当する。

d 甲5発明の「インバータ回路6」は、「コンデンサC4と」「接続され」るものであって、また、通常、電子安定器のインバータ回路は直流を交流に変換するものであるから、本件特許発明1の「前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)」に相当する。

e 甲5発明の「整流回路4は、フィルタ回路3に電気的に接続されて」いることは、本件特許発明1の「前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され」ていることに相当する。

f 甲5発明の「電子安定器」は、「整流回路4」、「チョークコイルL1」、「コンデンサC4」、「インバータ回路6」を備え、電力変換を行っていることは明らかであるから、甲5発明の「整流回路4」は、本件特許発明1の「電力変換装置」に対応するものである。

そうすると、本件特許発明1と甲5発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトルと、
前記コンバータ回路の他方の出力端子と前記リアクトルとに電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路と、を備え、
前記コンバータ回路は、ノイズフィルタ部材に電気的に接続されている、
電力変換装置。」

(相違点1)
「コンデンサ」が、本件特許発明1では、「フィルムコンデンサで構成され」るのに対して、甲5発明では、「コンデンサC4」にそのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、「前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上 に実装され、前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し」、さらに「前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とが前記グリッドにおける同段に配置されている」のに対して、甲5発明では、その旨の特定がされていない点。

事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
甲5発明は、「整流回路4、チョークコイルL1、コンデンサC4、が同一直線上に配置され、この直線上でない位置にインバータ回路6が配置されて」おり、これを、あえて、「整流回路4」、「チョークコイルL1」、「コンデンサC4」、「インバータ回路6」が2段のグリッド状とする理由が存在しない。
また、甲第6号証、甲第7号証には、フィルムコンデンサに関しては記載されているが、2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていない。
さらに、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成が周知の技術であったとも認められない。
したがって、他の上記相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明、甲第6、7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

B 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであって、また、甲第8、9号証にも2段のグリッド状に実装することに関しては記載されていないことから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2、3は、甲5発明、甲第6−9号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 取消理由イ(特許法第36条第4項1号)について
本件特許明細書には、段落【0024】に、「コンバータ回路(11)は、ブリッジ接続された6つのダイオード(D1〜D6)を備え、交流電源(30)から入力された交流を全波整流する。この例では、コンバータ回路(11)は、コモンモードコイル(60)を介して、交流電源(30)に接続されている。すなわち、コモンモードコイル(60)は、コンバータ回路(11)よりも前段に設けられている。コモンモードコイル(60)は、コモンモードノイズを低減する目的で設けたものであり、本発明のノイズフィルタ部材の一例である。コモンモードコイル(60)は、3相分が1つのフェライトコアに巻回されている。すなわち、コモンモードコイル(60)は、回路図上では3つのコイルであるが、後述する回路基板(20)上には、1つの部品として実装されている。」と記載され、本件特許明細書の段落【0026】に、「本実施形態のコンデンサ(12)には、フィルムコンデンサが採用されている。コンデンサ(12)は、インバータ回路(13)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(12)は、コンバータ回路(11)によって整流された電圧(電源電圧に応じて変動する電圧)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。より詳しくは、コンデンサ(12)とリアクトル(L)によって形成される共振回路が、コンバータ回路(11)から出力された直流電流に含まれるリップル電流成分を通過させ、かつ、後述のインバータ回路(13)のキャリア信号の周波数(キャリア周波数)と同じ周波数の電流成分を減衰させるように、該共振回路の共振周波数が設定、すなわちコンデンサ(12)の静電容量とリアクトル(L)のインダクタンスが設定されている。」と記載され、さらに、段落【0026】に、「また、回路基板(20)として4層基板を採用したので、回路基板(20)の更なる小型化が可能になる。」と記載されている。
したがって、発明の詳細な説明の記載が、請求項1のものを、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとは認められず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとまではいえない。

ウ 取消理由ウ(特許法第36条第6項2号)について
(ア)「隣接」について
請求項1の記載には「前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し」と記載されるものであり、「隣接」は、「コンバータ回路(11)」、「コンデンサ(12)」、「リアクトル(L)」、「インバータ回路(13)」からなる「2段のグリッド」において、「コンバータ回路(11)」と「インバータ回路(13)」とが互いに、「コンデンサ(12)」、「リアクトル(L)」より近くにある、また、「リアクトル(L)」と「コンデンサ(12)」とが互いに、「コンバータ回路(11)」と「インバータ回路(13)」より、近くにあると理解でき、距離がどういう範囲にあるものかなどを規定していなくとも不明確であるとまではいえない。
(イ)「グリッド」、「段」について
請求項1の記載には「2段のグリッド」とあり、「グリッド」が、縦2ます横2ますの格子状のものであることが想起でき、「段」が、その格子における下段と上段であることは明らかであって、不明確であるとまではいえない。
(ウ)したがって、本件特許の請求項1−3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとまではいえない。


第4 むすび
以上のとおり、本件特許発明1ないし3に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に変換するコンバータ回路(11)と、
前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)と、
前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)と、
前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)と、を備え、
前記コンデンサ(12)は、フィルムコンデンサで構成され、
前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され、
前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
前記コンバータ回路(11)は、ノイズフィルタ部材(60)に電気的に接続され、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記コンバータ回路(11)とは前記グリッドにおける同段に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コンデンサ(12)及び前記リアクトル(L)は、前記コンバータ回路(11)から出力された直流電流に含まれるリップル電流成分を通過させ、かつ、前記インバータ回路(13)のキャリア周波数と同じ周波数の電流成分を減衰させるように、前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)による共振回路の共振周波数が設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
冷凍サイクルを行う冷媒回路(120)を流れる冷媒によって前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とを冷却する放熱器(50)が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
交流を直流に変換するコンバータ回路(11)と、
前記コンバータ回路(11)の一方の出力端子に電気的に接続されたリアクトル(L)と、
前記コンバータ回路(11)の他方の出力端子と前記リアクトル(L)とに電気的に接続されたコンデンサ(12)と、
前記コンデンサ(12)と電気的に接続され、直流を交流に変換するインバータ回路(13)と、を備え、
前記コンデンサ(12)は、フィルムコンデンサで構成され、
前記コンデンサ(12)と前記リアクトル(L)とは、同一の回路基板(20)上に実装され、
前記コンバータ回路(11)、前記コンデンサ(12)、前記リアクトル(L)、及び前記インバータ回路(13)は、前記回路基板(20)上において、2段のグリッド状に実装されており、
前記コンバータ回路(11)と前記リアクトル(L)とが前記グリッドにおける同段に実装され、
前記インバータ回路(13)と前記コンデンサ(12)とは、前記グリッドにおける、前記コンバータ回路(11)とは別の段に実装され、
前記グリッドにおいて、前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とが互いに隣接し、前記リアクトル(L)と前記コンデンサ(12)とが互いに隣接し、
冷凍サイクルを行う冷媒回路(120)を流れる冷媒によって前記コンバータ回路(11)と前記インバータ回路(13)とを冷却する放熱器(50)が設けられ、
前記コンバータ回路(11)よりも前段に、ノイズフィルタ部材(60)が設けられ、
前記ノイズフィルタ部材(60)と前記リアクトル(L)との間に、前記放熱器(50)が配置されていることを特徴とする電力変換装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-07-11 
出願番号 P2017-039199
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (H02M)
P 1 652・ 121- YAA (H02M)
P 1 652・ 538- YAA (H02M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 新田 亮
山澤 宏
登録日 2021-01-25 
登録番号 6828516
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 電力変換装置  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 弁理士法人前田特許事務所  

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