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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F16B |
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管理番号 | 1389408 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-27 |
確定日 | 2022-09-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6971667号発明「固定具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6971667号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6971667号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年7月11日に出願され、令和3年11月5日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年1月25日に特許異議申立人若井ホールディングス株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)から、全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 特許第6971667号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 [本件発明1] 「細長形状の胴部と、前記胴部の一方の端部に形成される頭部と他方の端部に形成される先細形状の先端部と、を備えた、既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具であって、JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材から形成され、 前記固定具は、40mm以上、50mm以下の長さを有し、 前記固定具の頭部は、7mm以上の径を有する、固定具。」 [本件発明2] 「前記固定具は、釘打機で使用できるように、プラシートに搭載可能な大きさで形成される、または、ワイヤーで連結可能に形成される、請求項1に記載の固定具。」 3 申立理由の概要 特許異議申立人は、次の甲第1号証〜甲第8号証を提出し、請求項1に係る特許は、甲第1号証〜甲第6号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものであり、また、請求項2に係る特許は、甲第1号証〜甲第8号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである旨主張する。 甲第1号証:JIS A 5508:2009「くぎ」 2009年版 甲第2号証:特開平9−67903号公報 甲第3号証:JIS G 3532:2000「鉄線」 2009年版 甲第4号証:JIS G 3505:2004「軟鋼線材」 2009年版 甲第5号証:特開2007−182933号公報 甲第6号証:特開2003−97524号公報 甲第7号証:実願平4−11057号(実開平5−63775号)のCD−ROM 甲第8号証:特開2001−200824号公報 4 甲号証の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証には次の記載がある。 「1 適用範囲 この規格は,主として一般に使用するくぎについて規定する。・・・」 「2 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 ・・・ JIS G 3532 鉄線 JIS G 4309 ステンレス鋼線 ・・・」 「5 形状 くぎの形状は,表2に示す頭部の形状,表3に示す胴部の形状及び表4〜表13に示す先端部の形状による。」 「7 材料 7.1 鉄線 鉄線は、JIS G 3532に規定するくぎ用鉄線又はこれと同等以上の品質をもつものとする。・・・」 「表2 」 「表3 」 「表8 」 (2)甲第2号証 甲第2号証には次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、屋根を構成する既設の旧薄瓦を残存せしめたまま該旧薄瓦の上に敷設される新薄瓦を固着するための薄瓦リフォーム用釘に関する。」 「【0004】そこで、破損した薄瓦を無傷の薄瓦と取替える必要があり、破損した薄瓦を取り除くために、スレーターズ・リッパー等の治具が用いられる。その手順は、先ず、破損した薄瓦の下側にリッパーを差込み、該リッパーの頭部で釘を突き上げつつ該釘を浮き上がらせる。次いで、前記薄瓦の下側からリッパーを抜取り、今度は、リッパーを破損した薄瓦の上側に差込み、該リッパーの耳部で釘の頭部を引張る。釘は、ステンレス等により形成されているが、容易に曲がるので、リッパーを引掛けて引張ると、シャンクを折曲されながら容易に抜出され、これにより破損した薄瓦を取り除くことができる。」 「【0007】この点に関して、既設の旧薄瓦をそのまま残存せしめ、該旧薄瓦の上に重ねて新薄瓦を敷設することによりリフォームを行うのが有利である。このような薄瓦は、肉厚がせいぜい4.5〜7.0mmであるから、旧薄瓦を残存せしめたまま新薄瓦を重ねて敷設しても、外観としては新規に瓦葺きした屋根に比してほとんど遜色がない。 【0008】然しながら、このようなリフォームを行うに際しては、新薄瓦を旧薄瓦の上に重ねた状態で釘により固着しなければならないから、従来の瓦用釘を用いることができない。即ち、従来の瓦用釘は、前述のように容易に曲がるので、新薄瓦に挿通せしめた状態で旧薄瓦に打ちつけると、折曲されてしまうからである。 【0009】そこで、本発明者は、リフォーム用の釘として、ステンレス素材を選択しつつ更に焼入れすることにより、折曲のない高強度の釘を提供することが有利であることを知見した。このように高強度に構成したリフォーム用の釘によれば、新薄瓦に挿通せしめた状態で、打ちつけると、折曲することなく旧薄瓦を貫通して野地板に刺突せしめられる。」 「【0016】図1に示すように、薄瓦リフォーム用釘を構成する釘1は、先端に尖鋭部2を備えたシャンク3の尾端に頭部4を備えており、ステンレス(例えばSUS410)により形成され、焼入れされている。従って、従来の薄瓦用釘のように容易に曲がることはなく、高強度である。」 「【0023】新薄瓦12を挿通した釘1は、ステンレスにより形成され且つ焼入れされているので、該釘1の頭部4をハンマーで打撃すると、尖鋭部2が旧薄瓦10を貫通して下部の野地板に刺突される。この間、釘1が曲がることはない。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には次の記載がある。 「1.適用範囲 この規格は,普通鉄線,くぎ用鉄線,なまし鉄線及びコンクリート用鉄線(以下,線という。)について規定する。」 「2.引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 JIS A 5508 くぎ JIS G 3505 軟鋼線材 ・・・」 「3.定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 ・・・ c)くぎ用鉄線 JIS G 3505に適合した線材に冷間加工を行った,くぎに用いられる断面形状が円形の線。 ・・・」 (4)甲第4号証 甲第4号証には次の記載がある。 「1.適用範囲 この規格は,鉄線,亜鉛めっき鉄線などの製造に用いられる軟鋼線材(以下,線材という。)について規定する。・・・」 「3.種類及び記号 線材の種類は8種とし,その記号は表1による。」 「表1 」 (5)甲第5号証 甲第5号証には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、木材に使用される釘及び釘の製造方法に関するものである。」 「【0002】 木造住宅に使用される鉄丸釘、太め鉄丸釘、細め鉄丸釘等のJISマーク表示釘(JIS A 5508)には、図14の工程図に示すように、金属線を製釘工程で所定の形状、寸法に加工した後、磨釘工程で研磨処理をして製品化したもの、あるいは研磨を行った釘に着色塗装を施して製品化したもの、あるいはまためっき処理を施して製品化したもの、更にこれらの釘を樹脂バンド、シート、針金等の連結材によって釘をコイル状又はスティック状に連結して製品化したものがある。これらの釘は、木材と木材、木材と石膏ボード又は木材と金物等を緊結する際に、ハンマーを用いた手打ちにより又は自動釘打ち機により木材中に打ち込まれる。」 「【0062】 本発明に係る釘Nに用いる金属線としては、SWRM10K〜SWRM22K(軟鋼線材:JIS G 3505)を冷間伸線した線が一般的であるが、その用途により、十分な強度を必要とする場合は、SWRH27〜SWRH42B(硬鋼線材:JIS G 3506)にも適用できる。」 (6)甲第6号証 甲第6号証には次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、釘やネジ等のファスナーを複数連結した連結ファスナーに関する。」 「【0002】 【従来の技術】建築用の釘打機やねじ締機等に利用される連結ファスナーは、金属製のワイヤで連結する場合、各ファスナーをワイヤに溶接している。この連結方式はコストが低くなる反面、打ち込まれるファスナーと次のファスナーとの間でワイヤが破断されるため、金属のワイヤの一部が打ち込み時に飛散することがあり、作業に危険が伴うという問題がある。」 「【0025】最大サイズの釘11では、t=1.9、r=1.0、d=4.03、D=8.15であるから、上記式により角度α=26゜となる。また、最小サイズの釘11では、t=1.28、r=0.6、d=2.84、D=6.65であるから、上記式により角度α=22゜となる。」 (7)甲第7号証 甲第7号証には次の記載がある。 「 【0001】 【産業上の利用分野】 コイル状に巻かれた異なる連結態様の連結釘を収容して釘打込部へ順次送り出す釘打機のマガジン装置に関する。」 「 【0005】 本考案は、ワイヤーによって連結され巻回されたワイヤ連結釘と、プラスチックシートによって連結され巻回されたシート連結釘の両態様の釘を収容でき、これら両タイプの連結釘がマガジン内で釘軸が絡み合ったり、また連結シートを変形させることなく確実に釘打ち部へ供給できる釘打機のマガジンを提供することを課題とするものである。」 (8)甲第8号証 甲第8号証には次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、連結ねじや連結釘のような連結ファスナーに関するものである。」 「【0041】また、図7に示す例では、釘群は、プラスチック製や紙製等の連結体24に接着又は嵌着によって固定されている。他方、図8に示す例では、隣合った釘21の相互間を接着剤25で接着している。」 5 当審の判断 (1)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の表3より、くぎの胴部は細長形状であることが看取できる。 甲第1号証の表8より、くぎの先端部は先細形状であることが看取できる。 上記4(1)の摘記事項及び上記看取事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] 「細長形状の胴部と、前記胴部の一方の端部に形成される頭部と他方の端部に形成される先細形状の先端部と、を備えたくぎであって、JIS G 3532に規定するくぎ用鉄線から形成される、 くぎ。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「くぎ」は、部材に打ち付けることによって部材と他の部材を固定するものであるから、本件発明1の「固定具」に相当する。 してみると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「細長形状の胴部と、前記胴部の一方の端部に形成される頭部と他方の端部に形成される先細形状の先端部と、を備えた固定具。」 [相違点] 本件発明1は、「既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具であって、JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材から形成され、前記固定具は、40mm以上、50mm以下の長さを有し、前記固定具の頭部は、7mm以上の径を有する」とされているのに対し、甲1発明は、「JIS G 3532に規定するくぎ用鉄線から形成される」と材料を特定するにとどまる点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 a 本件特許の明細書には以下のとおり記載されている(下線は当審で付与した。)。 「【0002】 屋根に敷設された住宅屋根用化粧スレート(既存の屋根材、以下、既存スレート)を改修する際、既存スレートの上に新規の下葺き材が施工され、その後、既存スレートにかぶさるよう新規の屋根材が施工される。このような改修は、かぶせ改修と呼ばれる。新規の屋根材には金属系の部材又はアスファルトシングル等が用いられる。そして、新規の屋根材を固定する際、既存スレートを貫通し、既存スレートの下にある野地板まで到達する釘やビス(固定具)が使用される。特許文献1には、例えば、瓦、屋根、下葺材、ハウスラップ等の基材を固定する際に、使用される釘が開示されている。 【0003】 しかしながら、かぶせ改修で多く用いられる釘はその硬さが不足しているため、新規の屋根材は貫通するものの既存スレートまで打ち抜くことができない、または途中で曲がってしまう場合があった。そのため施工性が悪く、再度打ち込むと新規の下葺材に形成された釘穴を広げてしまう場合があるため漏水事故が発生する危険性があった。また、打ち込まれた釘が途中で曲がると、野地板まで到達しない場合があり、新規の屋根材が充分に固定されずその耐風性能を損なうこともある。 【0004】 一方、コンクリートネイル等、既存の釘でも、硬い線材を用いたものがある。しかしながら、硬い材料を用いた場合、製造上、釘の頭部の径が小さくなり、アスファルトシングル等の新規の屋根材が充分に固定されず、充分な耐風性能を得ることが難しい。」 「【0006】 例えば住宅屋根用化粧スレートからなる既存の屋根材のかぶせ改修用として、充分な硬さを有する固定具が望まれている。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、細長形状の胴部と、前記胴部の一方の端部に形成される頭部と他方の端部に形成される先細形状の先端部とを備える固定具であって、JIS規格のG3505でSWRM15に相当する硬さ以上の硬さを有する軟鋼線材から形成される、固定具が提供される。 【発明の効果】 【0008】 本発明に係る固定具は、既存スレートである住宅屋根用化粧スレートのかぶせ改修用として充分な硬さを有していることから、従来のものと比較して確実に既存スレートまで打ち抜くことができ、また、施工時に途中で曲がる危険性が減少する。」 b 当該記載によれば、「既存スレートの上に新規の下葺き材が施工され、その後、既存スレートにかぶさるよう新規の屋根材が施工される」「かぶせ改修」においては、 (a)「新規の屋根材を固定する際、既存スレートを貫通し、既存スレートの下にある野地板まで到達する釘やビス(固定具)が使用される」ことから、相応の長さの固定具が求められること、 (b)「かぶせ改修で多く用いられる釘はその硬さが不足している」ことにより「途中で曲がってしまう場合」があり「施工性が悪く」、漏水事故の危険性、耐風性能を得ることができないなどの不具合が生じること、 (c)固定具に「硬い材料を用いた場合、製造上、釘の頭部の径が小さくなり」、「新規の屋根材が充分に固定されず、充分な耐風性能を得ることが難しい」こと、 を課題とし、その課題解決のための手段として、本件発明1では、「既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具」において、「固定具は、40mm以上、50mm以下の長さを有し」、「JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材から形成され」、「固定具の頭部は、7mm以上の径を有する」ことを特定することで、「かぶせ改修用として充分な硬さを有していることから」、「確実に既存スレートまで打ち抜くことができ」るよう、相違点に係る構成としたものと理解できる。 そうすると、相違点に係る本件発明1の構成は、かぶせ回収用の固定具として、その用途に適した長さとしたときに、充分な曲がりにくさ・硬さを備えつつも、屋根材の固定に適した頭部径を備えたものであることを特定するものであり、相互に関連した技術的事項であり一体の構成として判断するのが適当であり、分割して個別に判断するのは適当でないといえる。 c 甲第2号証には、薄瓦リフォーム用釘としてステンレス素材を用い、折曲のない高強度の釘を提供することは記載されているが(段落【0009】参照。)、軟鋼線材で特定の曲がりにくさとすること及び特定の寸法関係とすることについては何ら記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明に甲第2号証に記載の事項を適用しても、ステンレス素材のリフォーム用釘が得られるだけであり、相違点に係る本件発明1の「既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具であって、JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材」とすることはできないし、特定の寸法関係とすることもできない。 甲第1号証及び甲第3〜6号証には釘について個別に材質、寸法が記載されているものの、個別の材質の中からかぶせ改修用に適したものとして、JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材を選択し、さらに、特定の寸法関係とすることについては記載も示唆されていない。 d 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の主張をしている。 (a)本件発明1と甲1発明とは、本件発明1が既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具との用途が特定されているのに対し、甲1発明は、既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具との用途が特定されていない点で相違するが、かかる相違点は甲第2号証にリフォーム用のくぎが記載されているから、当業者が容易に想到しうる旨主張する(第7頁第13〜15行、第7頁第24〜16行)。 (b)本件発明1は、「JIS規格のG3505でSWRM15に相当する線材の曲がりにくさ以上の曲がりにくさを有する軟鋼線材から形成され」ているのに対し、甲1発明はこのような特定がされていない点で相違するが、かかる相違点は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証から、くぎの線材としてJIS規格のG3505でSWRM15に相当するものの採用は当業者にとって通常選択しうるものであり、甲第2号証には、くぎを既存の屋根材のかぶせ改修用の固定具として利用するために、所望の曲がりにくさとすることが記載されているから、甲1発明のくぎの線材としてJIS規格のG3505でSWRM15に相当するものの採用は当業者にとって容易に想到しうる旨主張する(第7頁第16行〜第10頁第3行)。 (c)本件発明1は、「前記固定具は、40mm以上、50mm以下の長さを有し、前記固定具の頭部は、7mm以上の径を有する」とされているのに対し、甲1発明は、このような具体的な寸法関係が特定されていない点で相違するが、くぎの長さや頭部径は、使用する条件に適した寸法を選択すればよく、しかも、甲第1号証には、長さが40mm程度、50mm程度のくぎが記載されており、甲第1号証および甲第8号証に頭部の径が7〜8mm程度のくぎが記載されているように、くぎ(固定具)の長さ、頭部の径として本件発明1で特定する寸法は当業者にとって格別なものではなく設計的事項にすぎない旨主張する(第7頁第20〜23行、第10頁第4〜25行)。 上記(a)〜(c)のように、特許異議申立人は、本件発明1の固定具について、用途、材質及び寸法について個別に細分化して、引用発明との対比におけるそれぞれの相違点は当業者が容易に想到しうる事項であるか、または、設計事項である旨主張する。 しかしながら、相違点に係る本件発明1の構成は、用途に適した、曲がりにくさを備えた材質、寸法関係を特定するものであり、課題を解決する上で技術的に相互に関連していて、それらを分割して判断することが適当でないことは上記bで述べたとおりである。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 e 以上のとおりであるので、甲1発明を、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証〜甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。 本件発明1が甲1発明及び甲第2号証〜甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは上記(2)で述べたとおりであるから、本件発明2も同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証〜甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、甲第7号証及び甲第8号証にも、上記相違点に係る本件発明2の構成は記載も示唆もされていないから、本件発明2は、甲1発明及び甲第1号証〜甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 上記5のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-09-07 |
出願番号 | P2017-135692 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(F16B)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 段 吉享 |
登録日 | 2021-11-05 |
登録番号 | 6971667 |
権利者 | 田島ルーフィング株式会社 |
発明の名称 | 固定具 |
代理人 | 廣瀬 繁樹 |
代理人 | 前島 一夫 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 青木 篤 |