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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1389424
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-07 
確定日 2022-09-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第6976468号発明「充放電試験装置及び充放電制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6976468号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6976468号の請求項1〜16に係る特許についての出願は、令和3年4月12日に出願され、令和3年11月11日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年6月7日に特許異議申立人 滝沢 純平(以下、「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6976468号の請求項1〜16の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明16」と呼び、合わせて「本件発明」と呼ぶことがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を行うための充放電回路を備えた充放電試験装置であって、
充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備えたことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池に並列接続された前記バイパス回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池の充放電電流の一部を該バイパス回路に分流させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各バイパス回路に流れた電流値から算出されることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項4】
請求項2記載の充放電試験装置において、定電流充放電中に、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項5】
請求項4記載の充放電試験装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて、前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項6】
請求項1記載の充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に接続されたオンオフスイッチ付きの充放電電流調整回路と、該各充放電電流調整回路に共通して接続された共通電源とを有し、充放電試験中に予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池からの放電で前記共通電源を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を減少させ、測定された充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして前記共通電源からの放電で該リチウムイオン電池を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を増加させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項7】
請求項6記載の充放電試験装置において、前記共通電源は、コンデンサ又は二次電池であることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の充放電試験装置において、前記共通電源に接続され、該共通電源から前記充放電回路に一定電圧の電力を供給するDC−DCコンバータを備えたことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1記載の充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各充放電電流調整回路に流れた電流値から算出されることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧の変化量と、前記各リチウムイオン電池に流れる電流の変化量から、前記各リチウムイオン電池の電池内部抵抗値を算出することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電圧充放電中に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧から総電圧を算出し、該総電圧の変動傾向に基づいて、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が定電圧充放電の設定電圧値に近付くように、前記充放電回路の出力電圧を増減させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電流充放電中に前記電圧測定回路によって測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧のいずれか1つが、予め設定された1又は異なる複数の規定電圧に到達する度に、定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1記載の充放電試験装置において、複数の前記リチウムイオン電池は、該各リチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュール又は該電池モジュールが複数直列接続された組電池であることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項14】
直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
充放電中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することを特徴とする充放電制御装置。
【請求項15】
請求項14記載の充放電制御装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出し、過充電を防止することを特徴とする充放電制御装置。
【請求項16】
請求項15記載の充放電制御装置において、前記各リチウムイオン電池の真の電圧に基づいて該各リチウムイオン電池の容量及び電池内部抵抗値を求め、該各リチウムイオン電池の劣化状況を診断することを特徴とする充放電制御装置。」


第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の甲第1号証〜甲第11号証を証拠として提出し、申立ての理由として、以下の申立理由を主張している。
甲第1号証:再公表特許第2018/203509号
甲第2号証:特許第3530519号公報
甲第3号証:特開2012−23802号公報
甲第4号証:特許第3684998号公報
甲第5号証:特許第5733275号公報
甲第6号証;特開2010−127722号公報
甲第7号証:特開2012−220344号公報
甲第8号証:特表2020−502969号公報
甲第9号証:特開2002−270249号公報
甲第10号証:特開2013−172552号公報
甲第11号証:特許第5564561号公報

以下、「甲第1号証」〜「甲第11号証」を、それぞれ、「甲1」〜「甲11」という。

申立理由
理由1 新規性及び進歩性
本件特許の請求項1〜2に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
また、本件特許の請求項1〜16に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許の請求項1〜16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

理由2 実施可能要件、サポート要件、及び明確性
本件特許の請求項1、14に係る発明の「各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する」は、単に「許容ばらつき範囲内に収まるように」という願望を表明したものに過ぎず、具体的な方法や手段、構成については何ら記載されておらず、かつ、周知の事実でもない。
したがって、本件特許の請求項1〜16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。


第4 甲1〜甲11について
1 甲1の記載事項及び甲1発明
(1)甲1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は、当審にて新たに付与したものである。以下同じ。)。
「【0001】
本発明は、微小短絡を検査する技術に関する。」

「【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図5によって説明する。
1.UPS及び蓄電システムの構成
図1は、UPS(無停電電源装置)の電気的構成を示すブロック図である。
UPS10は、コンバータ20と、インバータ30と、充電制御回路41と、ダイオード45と、蓄電システム50を含んで構成されている。
コンバータ20とインバータ30は経路15上に配置されている。コンバータ20は交流を直流に変換し、インバータ30は直流を交流に変換する。充電制御回路41は蓄電システム50への充電を制御する回路である。
【0018】
蓄電システム50は、充電制御回路41を介して、コンバータ20とインバータ30をつなぐ経路15に接続されている。ダイオード45は、充電制御回路41と並列に経路15に接続されている。
【0019】
UPS10は、常時インバータ給電方式である。交流電源が正常である場合、コンバータ20で交流を直流に変換し、インバータ30で直流を交流に変換し、負荷に対して電力を供給する。交流電源が異常な場合、コンバータ20を停止して、蓄電システム50からダイオード45、インバータ30を経由して負荷に電力を供給する。
【0020】
蓄電システム50への充電は、交流電源が正常である場合に行われる。詳細には、交流電源、コンバータ20、充電制御回路41を経由して充電電流が供給され、蓄電システム50を充電する。充電制御回路41は、蓄電システム50の残容量が少ない場合、蓄電システム50を定電流充電制御し、満充電になると、浮動電圧を維持するように定電圧充電制御する。」

「【0021】
図2は蓄電システムの電気的構成を示すブロック図である。蓄電システム50は、複数(図2の例では3つ)の蓄電ブロック60A〜60Cと、統合管理部100とを含む。統合管理部100は、監視サーバであってもよい。以下、蓄電ブロック60A〜60Cを総称して「蓄電ブロック60」とする。
【0022】
蓄電ブロック60A〜60Cは、充電制御回路41やダイオード45に接続される共通線(共通の充放電経路)Loに対して、並列線La〜Lcを介して並列に接続されている。蓄電ブロック60A〜60Cは、直列に接続された複数の二次電池(セル)63と、スイッチ65A〜65Cと、電流センサ67A〜67Cと、放電回路71と、センサユニット75A〜75Cと、個別管理部77A〜77Cとを備える。図2では、二次電池63の一部だけを示しており、実際には、6つ以上の二次電池が直列に接続されている。個別管理部77A〜77Cが本発明の「検査部」に相当する。
図示しないが、並列線Laに、複数の蓄電ブロック60Aが直列に接続されて、いわゆるバンクを形成してもよい。同様に、並列線Lb及び並列線Lcにそれぞれ、複数の蓄電ブロック60B、複数の蓄電ブロック60Cが直列に接続されて、バンクを形成してもよい。バンクでは、共通線Loに最も近い蓄電ブロック(並列線La〜Lcの充電経路における最も上流側の蓄電ブロック)にのみ、スイッチ65A〜65Cが設けられてもよい。
【0023】
スイッチ65A〜65Cは、並列線La〜Lc上に配置されている。各スイッチ65A〜65Cをオンからオフに切り換えることで、各蓄電ブロック60A〜60Cを共通線Loから切り離すことが出来る。スイッチ65A〜65Cをオンからオフに切り換えることで、スイッチ65A〜65Cそれぞれに直列に接続された複数の二次電池63を充放電経路から切り離すことが出来る。スイッチ65A〜65Cはリレーなどの有接点スイッチ(機械式スイッチ)や、FETやトランジスタなどの半導体スイッチにより構成することが出来る。
【0024】
放電回路(バランサー)71は、各二次電池63に対して個別に設けられている。放電回路71は、図3に示すように、放電抵抗72と放電スイッチ73とから構成されている。放電スイッチ73をオンすると、二次電池63は、放電抵抗72を介して放電する。放電回路71は、直列に接続された複数の二次電池63の電圧を均等化するために設けられている。
【0025】
センサユニット75A〜75Cは、複数の二次電池63ごとに設けられている。センサユニット75A〜75Cは、電圧検出回路を有しており、対応する各二次電池63の電圧を検出する。電流センサ67A〜67Cは、各蓄電ブロック60A〜60C又はバンクに流れる電流を検出する。
【0026】
個別管理部77A〜77Cは、電流センサ67A〜67Cの出力、各センサユニット75A〜75Cの出力に基づいて、各蓄電ブロック60A〜60Cの状態を監視する。個別管理部77A〜77Cは、蓄電ブロック60A〜60Cを構成する各二次電池63のSOCを後述する電流積算法により推定する処理や、蓄電ブロック60A〜60Cを構成する各二次電池63の電圧を均等化する処理を行う。個別管理部77A〜77Cは、二次電池63の微小短絡を検査する処理を行う。個別管理部77A〜77Cは、記憶部を有しており、上記した各処理を実行するために必要となるデータが予め記憶されている。
【0027】
統合管理部100は、各蓄電ブロック60A〜60Cの個別管理部77A〜77Cと通信可能に接続されている。統合管理部100は、各蓄電ブロック60A〜60Cの個別管理部77A〜77Cから送信される各種データに基づいて、蓄電システム10全体を監視する。」

「【0028】
2.二次電池の特性
二次電池63は、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いたリン酸鉄系のリチウムイオン電池であってもよい。」

「【0042】
個別管理部77Aは、統合管理部100から実行指令を受けると、二次電池63の電圧を均等化する均等化処理を実行する(S40)。二次電池63の均等化処理では、電圧の高い二次電池63を、電圧の低い二次電池に合わせて、放電回路71により放電する。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】


図3を参照すると、放電抵抗72と放電スイッチ73とから構成される放電回路71は、各二次電池63に対して個別に設けられ、並列に配置されることが見て取れる。


(2)上記記載より、甲1には、「蓄電ブロック60A〜60C」に着目すると、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「直列に接続された複数の二次電池63と、スイッチ65A〜65Cと、電流センサ67A〜67Cと、放電回路71と、センサユニット75A〜75Cと、個別管理部77A〜77Cとを備えた蓄電ブロック60A〜60Cであって(【0022】)、
二次電池63は、リチウムイオン電池であってもよく(【0028】)、
放電回路71は、各二次電池63に対して個別に設けられて、直列に接続された複数の二次電池63の電圧を均等化するために設けられており(【0024】)、
個別管理部77A〜77Cは、蓄電ブロック60A〜60Cを構成する各二次電池63のSOCを電流積算法により推定する処理や、蓄電ブロック60A〜60Cを構成する各二次電池63の電圧を均等化する処理を行い、二次電池63の微小短絡を検査する処理を行い(【0026】)、
二次電池63の均等化処理では、電圧の高い二次電池63を、電圧の低い二次電池に合わせて、放電回路71により放電する(【0042】)、
蓄電ブロック60A〜60C」

(3)また、甲1には、「UPS(無停電電源装置)10」に着目すると、次の発明(以下、甲1発明2)という。)が記載されていると認められる。
「コンバータ20と、インバータ30と、充電制御回路41と、ダイオード45と、蓄電システム50を含んで構成されたUPS(無停電電源装置)10であって(【0017】)、
蓄電システム50は、複数の蓄電ブロック60A〜60Cと、統合管理部100とを含み(【0021】)、
蓄電ブロック60A〜60Cは、直列に接続された複数の二次電池63と、スイッチ65A〜65Cと、電流センサ67A〜67Cと、放電回路71と、センサユニット75A〜75Cと、個別管理部77A〜77Cとを備え(【0022】)、
二次電池63は、リチウムイオン電池であってもよく(【0028】)、
放電回路71は、各二次電池63に対して個別に設けられ、放電抵抗72と放電スイッチ73とから構成されて、並列に配置され、直列に接続された複数の二次電池63の電圧を均等化するために設けられており(【0024】、【図3】)、
センサユニット75A〜75Cは、電圧検出回路を有しており、対応する各二次電池63の電圧を検出し(【0025】)、
二次電池63の均等化処理では、電圧の高い二次電池63を、電圧の低い二次電池に合わせて、放電回路71により放電するものであり(【0042】)、
充電制御回路41は蓄電システム50への充電を制御する回路であり(【0017】)、
充電制御回路41は、蓄電システム50の残容量が少ない場合、蓄電システム50を定電流充電制御し、満充電になると、浮動電圧を維持するように定電圧充電制御する(【0020】)、
UPS10」


2 甲2の記載事項及び甲2発明
(1)甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオン電池等の二次電池を直列接続してなる蓄電装置に係り、特に、二次電池の電圧のバラツキを均等化する蓄電装置の電圧均等化装置及び該装置を備えた電力貯蔵システムに関する。」

「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、直列接続された複数の二次電池を1以上の二次電池からなるブロックに分割し、該ブロックを1単位として二次電池の充電状態を管理する蓄電装置の電圧均等化装置であって、前記二次電池の各々に対応して設けられるバイパス回路と、前記ブロック毎に設けられ、対応するブロックを構成する全ての二次電池の電池電圧を検出し、該検出結果を出力する電池回路と、前記電池回路から前記検出結果を取得し、該検出結果に基づいて、前記バイパス回路を作動させる二次電池を決定するユニット監視回路とを具備し、前記ユニット監視回路は、基準電圧と電池電圧との差が所定電圧値以上である二次電池のバイパス回路を作動させるとともに、前記バイパス回路を作動させる二次電池の数が、予め設定した所定数を上回った場合には、電池電圧が高い二次電池のバイパス回路を優先させて作動させることを特徴とする蓄電装置の電圧均等化装置を提供する。
【0008】このように、蓄電装置を構成する多数の二次電池を1以上の二次電池からなるブロックに分割し、そのブロックを1単位として電池回路を設けるため、各電池回路当たりの管理電圧を低く抑えることができる。これにより、電池回路として高圧系仕様の特別な回路や素子を用いることなく、一般的な回路構成により、高電圧系の蓄電装置にも適用可能な電圧均等化装置を実現することができる。なお、前記ブロックを構成する二次電池の数は、前記ブロックを構成する全ての二次電池を満充電状態としたときの前記ブロックの電池電圧が前記電池回路の許容電圧以内となるように制限されていることを前提とする。また、基準電圧との差が所定電圧値以上の二次電池については、バイパス回路を作動させることにより、充電を一定期間停止させ、一方、バイパス回路が作動されなかった二次電池については充電を引き続き行う。このようにして、電池電圧の低い二次電池においては、引き続き充電を行うことにより徐々に電池電圧が上昇し、徐々にバイパス回路が作動した二次電池の電池電圧に近づくことになるため、蓄電装置を構成する二次電池の電池電圧のバラツキを小さくすることができる。また、このような構成によれば、電圧のバラツキを均等化させながら、充電を行うことができるので、非常に効率よく蓄電装置の充電を実施することが可能となる。なお、上記基準電圧としては、最低電池電圧を採用しても良いし、それ以外の比較的電池電圧の低いものを採用するようにしてもよい。また、例えば、基準電圧との電圧差が所定値以上となった二次電池については、全てバイパス回路を作動させるようにした場合、この所定値を小さく設定してしまうと、バイパス回路を作動させる二次電池の数が非常に多くなってしまう虞がある。この場合、充電が効率よく行われず、満充電状態になるまでに長時間要することとなり、好ましくない。このような場合に備えて、バイパス回路を作動させる二次電池の数を予め設定し、バイパス回路を作動させる二次電池の数を制限することにより、二次電池の電圧の均等化を行いながらも、充電を効率よく実施することができる。」

「【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。ここでは、本発明の一実施形態として本発明の蓄電装置の電圧均等化装置を電力貯蔵システムに適用した場合について説明する。
【0020】図1は本発明の一実施形態に係る電力貯蔵システム150の概略構成を示す図である。図1に示す電力貯蔵システム150において、蓄電装置1は、複数のセルBが直列に接続されたモジュール電池6が、複数直列に接続されて構成される。なお、本実施形態では、1つのモジュール電池6は、4つのセルBにより構成されているものとする。また、上記セルBとしては、リチウムイオン電池、ニッケルカドニウム電池、ニッケル水素電池が使用される。
【0021】上記各モジュール電池には、電池回路11がそれぞれ設けられている。電池回路11は、対応するモジュール電池6を構成する全てのセルBの電池電圧を検出し、検出結果をユニット監視回路13へ通知する。また、各電池回路11とユニット監視回路13とは、信号線12によって互いに接続され、情報を送受することができる。なお、信号線12は、有線、無線に拘わらず、情報を伝達できる手段であれば、どのようなものでも良い。
【0022】更に、直列電池ユニット5は、上記電池回路11の他、蓄電装置1の信頼性、安全性を高めるために、セルの過充電保護、過放電保護、過電流保護、過昇温保護等を行うそれぞれの保護回路(図示略)を備えている。また、直列電池ユニット5内には、モジュール電池6を構成する各セル電圧を検出する電圧センサ、蓄電装置1の端子間電圧、即ち蓄電装置1全体の電池電圧を検出する電圧センサ、蓄電装置1に流れる電流を計測する電流センサ、蓄電装置の温度を検出する温度センサ等が備えられており、これら各種センサによって、所定のタイミングで電池電圧等が検出され、検出結果が充放電制御装置3へ通知される。
【0023】電力変換装置2は、電力系統から供給される交流電力から直流電力を生成し、蓄電装置1へ出力するとともに、蓄電装置1から供給される直流電力から交流電力を生成し、負荷系統又は電力系統へ供給する機能を備える、いわゆる双方向インバータである。この電力変換装置2は、複数のスイッチング素子(例えば、サイリスタ、IGBT、パワーMOS FET等)から構成されており、このスイッチング素子を充放電制御装置3が所定のタイミングでスイッチング駆動することにより、蓄電装置1の充電時には、電力系統からの交流電力を整流して蓄電装置1へ供給する整流器として機能し、放電時には蓄電装置1からの電力を交流変換して負荷系統等へ出力するインバータとして機能する。また、このスイッチングのオンオフのデューティ比を代えることにより、一定期間における出力電力量を増減させることができる。」

「【0025】次に、本発明の一実施形態に係る蓄電装置の電圧均等化装置について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置の電圧均等化装置の内部構成を示す図である。なお、ここでは、図1に示したモジュール電池6のうちの1つを例に挙げて説明する。
【0026】同図に示すように、電圧均等化装置は、各セルBa〜Bdに対応して設けられるバイパス回路14a〜14dと、モジュール電池6に1つ設けられ、モジュール電池6を構成する全てのセルBa〜Bdの電池電圧を検出し、検出結果をユニット監視回路13へ出力する電池回路11aとを備えている。上記電池回路11aは、セル毎に対応して設けられ、各セルの電池電圧をそれぞれ計測する電圧計測器15a〜15dと、各電池計測器15a〜15dからの計測結果を取得し、計測結果をA/D変換してユニット監視回路6へ出力するCPU16aとから構成されている。
【0027】次に、上記構成からなる電圧均等化装置の動作について説明する。まず、電圧計測器15a〜15dは、所定のタイミングで対応するセルBa〜Bdの電池電圧を計測し、計測結果をCPU16aへ出力する。CPU16aは、各セルの電池電圧を受信すると、この電池電圧情報をA/D変換して、図1に示す信号線12を介してユニット監視回路13へ出力する。上述したような処理を、図1に示した蓄電装置1を構成する各モジュール電池に対応して設けられている各電池回路11が行うことにより、ユニット監視回路13には、蓄電装置1を構成する全てのセルの電池電圧情報が収集される。
【0028】ユニット監視回路13は、取得した全ての電池電圧情報の中から、最も低い電池電圧(最低電池電圧)を抽出し、この最低電池電圧よりも所定電圧値以上高い電池電圧を示しているセルを抽出する。例えば、今、最低電池電圧が3.8Vであり、所定電圧値として0.3mVが設定されていた場合、ユニット監視回路13は、3.83V以上の電池電圧を示しているセルを抽出する。そして、抽出したセルが属するモジュール電池6に対応する電池回路11に対して、当該セルのバイパス回路を作動させる旨の指令を出力する。これにより、信号線12を介して、該当する電池回路11のCPU16に、バイパス回路を作動させるセルの情報が送信される。
【0029】係る指令を受けた電池回路11のCPU16は、指令を受けたセルのバイパス回路14のトランジスタをオンさせることにより、バイパス回路を作動させ、該セルに流れていた充電電流をバイパスさせる。これにより、基準電圧(ここでは、最低電池電圧を基準電圧とした)よりも所定電圧値以上高い電池電圧が計測されたセルの充電を停止させる。一方、バイパス回路14が作動されていないセルについては、引き続き充電が行われる。これにより、電池電圧が低いセルについては、電池電圧が徐々に上昇するので、電池電圧が高くバイパス回路が作動されたセルと、電池電圧が低くバイパス回路が作動されなかったセルとの電池電圧の差を縮めることができる。これにより、蓄電装置を構成する全体のセルの電圧が均等化される。」

「【0036】また、本発明の蓄電装置の電圧均等化装置によれば、基準電圧との差が所定電圧値以上の二次電池については、バイパス回路を作動させることにより、充電を一定期間停止させ、一方、バイパス回路が作動されなかったセルについては充電が継続して行わせる。これにより、充電を継続して行っているセルの電池電圧は徐々に上昇し、バイパス回路が作動されなかったセルの電池電圧に徐々に近づくこととなるため、蓄電装置を構成するセルの電池電圧のバラツキを所定範囲内に抑えることができる。更に、電圧のバラツキを均等化させながら、充電を行うことができる。」

「【符号の説明】
6 モジュール電池
11、11a 電池回路
12 信号線
13 ユニット監視回路
14a、14b、14c、14d バイパス回路
15a、15b、15c、15d 電圧計測器
16a CPU
150 電力貯蔵システム
B、Ba、Bb、Bc、Bd…セル(二次電池)」

「【図1】



「【図3】



【図1】より、モジュール電池6に含まれる4つのセルBは、直列接続されていることが見てとれる。
【0026】の「各電池計測器15a〜15dからの」との記載は、【符号の説明】における「15a、15b、15c、15d 電圧計測器」との記載を鑑み、「各電圧計測器15a〜15dからの」の誤記と認める。

(2)上記記載より、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「蓄電装置の電圧均等化装置であって(【0025】)、
蓄電装置1は、複数のセルBが直列に接続されたモジュール電池6が、複数直列に接続されて構成され、1つのモジュール電池6は、4つのセルBが直列接続により構成され、上記セルBとしては、リチウムイオン電池が使用されるものであり(【0020】、【図1】)、
電圧均等化装置は、各セルBa〜Bdに対応して設けられるバイパス回路14a〜14dと、
モジュール電池6に1つ設けられ、モジュール電池6を構成する全てのセルBa〜Bdの電池電圧を検出し、検出結果をユニット監視回路13へ出力する電池回路11aとを備え、
上記電池回路11aは、セル毎に対応して設けられ、各セルの電池電圧をそれぞれ計測する電圧計測器15a〜15dと、各電圧計測器15a〜15dからの計測結果を取得し、計測結果をA/D変換してユニット監視回路6へ出力するCPU16aとから構成され(【0026】)、
電池回路11のCPU16は、セルのバイパス回路14のトランジスタをオンさせることにより、バイパス回路を作動させ、該セルに流れていた充電電流をバイパスさせて、最低電池電圧よりも所定電圧値以上高い電池電圧が計測されたセルの充電を停止させ(【0029】)、
蓄電装置を構成するセルの電池電圧のバラツキを所定範囲内に抑える(【0036】)、
蓄電装置の電圧均等化装置」

3 甲3の記載事項
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、直列接続された多数のキャパシタや二次電池等のセルを用いたエネルギー蓄積装置に関する。」

「【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係るエネルギー蓄積装置は、直列接続された複数のメインセルと、当該メインセルを過充電及び過放電の少なくとも一方から保護するセル保護手段と、を備えるエネルギー蓄積装置であって、前記メインセルとそれぞれ個別に並列接続可能な予備セルと、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に順次並列接続することで前記予備セルから前記メインセルを充電し、前記メインセル間の電圧均等化を行う電圧均等化手段と、を備えることを特徴としている。
このように、予備セルを用いて充電によるメインセルの電圧均等化を行うので、従来装置のように放電による電圧均等化を行う必要がない。そのため、放電エネルギーが熱に変換されることがなく、エネルギー効率が良い。
【0010】
また、請求項2に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1に係る発明において、前記メインセルの各セル電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に並列接続可能なスイッチ群と、を備え、前記電圧均等化手段は、前記電圧検出手段で検出した前記メインセルの電圧に基づいて、前記各セル電圧を均等化するように、前記スイッチ群のオンオフを制御することを特徴としている。
これにより、比較的簡易な回路構成で適切にメインセルの各セル電圧を均等化することができる。」

「【0023】
次に、蓄電モジュール1の具体的構成について説明する。
図2は、蓄電モジュール1の構成を示す回路図である。
蓄電モジュール1は、上記蓄電セル1Aとしてのメインセル部2と、セルマネージメント部3と、スイッチ部4と、バランスコントロール部5と、予備セル充電回路6と、予備セル7と、を備える。また、図中符号8は蓄電モジュールのプラス端子、符号9は蓄電モジュールのマイナス端子である。
メインセル部2は、複数(本実施形態では4つ)のメインセル21〜24を直列に接続して構成する。」

「【0027】
バランスコントロール部5は、コントロール回路51と、電源レギュレータ52と、を備える。
コントロール回路51は、スイッチ部4を構成する各スイッチ41A〜44A、41B〜44B及び後述する予備セル充電回路6の予備セル充電スイッチ62のオン/オフ制御を行う。また、コントロール回路51は、予備セル7の電圧を監視し、予備セル7の過充電保護および過放電保護を行うようになっている。このコントロール回路51は、一般的な論理回路で構成することも可能であるが、マイクロコントローラを用いるとスイッチ部4の各スイッチのオン/オフ制御がプログラムによって容易に調整できる。
【0028】
予備セル充電回路6は、定電流源61と、予備セル充電スイッチ62と、を備える。予備セル充電スイッチ62がコントロール回路51によってオン状態に制御されているとき、予備セル7への充電が行われる。本実施形態では、外部充電器11からメインセル21〜24への充電期間に、外部充電器11から予備セル7を充電するものとする。
予備セル7は、メインセル21〜24のセル間電圧の差を無くすようにセルバランスを行うためのものであり、メインセル21〜24と同一構成のセルを複数(本実施形態では2つ)直列接続して構成する。このように、予備セル7は、一つのメインセルよりも容量及び/または最大電圧の高いセルで構成する。」

「【0032】
すなわち、先ず、コントロール回路51は、CMS31からメインセル21の電圧を取得し、メインセル21の電圧が所定電圧(満充電電圧あるいは満充電電圧近傍の一定電圧)を下回っているか否かを判定する。そして、メインセル21の電圧が所定電圧を下回っている場合には、スイッチ41A及び41Bをオン状態、その他のスイッチ42A〜44A及び42B〜44Bをオフ状態とし、メインセル21と予備セル7とを並列に接続する。こうして、予備セル7からメインセル21へ充電を行う。なお、メインセル21の電圧が所定電圧に達している場合には、予備セル7からメインセル21への充電は行う必要はない。
【0033】
メインセル21の電圧が所定電圧に達すると、コントロール回路51はスイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替え、予備セル7からメインセル21への充電を終了する。
次に、コントロール回路51は、CMS31からメインセル22の電圧を取得し、メインセル22の電圧が所定電圧を下回っているか否かを判定する。そして、メインセル22の電圧が所定電圧を下回っている場合には、スイッチ42A及び42Bをオン状態に切り替え、メインセル22と予備セル7とを並列に接続する。こうして、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。このとき、メインセル22の電圧がメインセル21の電圧に一致するまで充電を行う。
【0034】
このような動作をメインセル24まで繰り返す。これにより、すべてのメインセル21〜24が予備セル7によって充電され、セルバランスが終了したときには、メインセル21〜24の電圧が所定電圧以上となる。
なお、セルマネージメント部3がセル保護手段に対応し、セルマネージメントシステム31が電圧検出手段に対応し、スイッチ部4がスイッチ群に対応し、バランスコントロール部5が電圧均等化手段に対応し、外部充電器11が外部電源に対応し、負荷11が外部機器に対応している。
【0035】
(動作)
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図3は、第1の実施形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここで、図3(a)はメインセル電圧であり、図3(b)は予備セル電圧である。なお、図3(a)では、メインセル21及び22の電圧のみを記しており、V1がメインセル21のセル電圧、V2がメインセル22のセル電圧である。なお、タイミングチャートにおいては、セルバランスを行っている期間をコンディショニング期間と記載している。
【0036】
先ず、エネルギー蓄積装置10は、蓄電モジュール1に外部充電器11を接続した状態で、メインセル21〜24の充電動作を行う。このとき、図3の時刻t1で、蓄電モジュール1のCMS31は、充放電制御スイッチ32をオン状態とする。これにより、外部充電器11からメインセル21〜24へ充電が行われ、メインセル21〜24の電圧が上昇していく。そして、一定の充電期間が経過した時刻t2で、CMS31は充放電制御スイッチ32をオフ状態に切り替え、蓄電モジュール1から外部充電器11を取り外すことで、メインセル21〜24の充電を終了する。
【0037】
本実施形態では、この時刻t1〜時刻t2の充電期間に、予備セル7の充電も行う。すなわち、蓄電モジュール1のコントロール回路51は、時刻t1で予備セル充電スイッチ62をオン状態に切り替えることで、外部充電器11から予備セル充電回路6を介して予備セル7への充電を行う。予備セル7のセル電圧は、コントロール回路51で監視しており、メインセル充電期間内に予備セル7が満充電された場合には、その時点でコントロール回路51は予備セル充電スイッチ62をオフ状態に切り替え、予備セル7の充電を終了する。
【0038】
その後、メインセル21〜24の充電動作が終了している状態の時刻t3で、蓄電モジュール1は、メインセル21〜24のセルバランスを行う。先ず、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t3におけるメインセル21のセル電圧V1を取得し、このセル電圧V1が所定電圧(図3では、満充電電圧である最大充電電圧Vmax)に達しているか否かを判定する。このとき、メインセル21は満充電されておらず、V1<Vmaxであるため、コントロール回路51は、スイッチ41A及び41Bをオン状態とし、それ以外のスイッチ部4のスイッチをオフ状態に制御することで、メインセル21と予備セル7とを並列に接続する。これにより、予備セル7からメインセル21へ充電を行う。
【0039】
予備セル7はメインセル21〜24の外部充電器11からの充電期間に満充電されているため、予備セル7の電圧は、メインセル21の電圧よりも確実に高いものとなっている。そのため、この時刻t3からメインセル21の電圧V1は上昇し、一方、予備セル7の電圧は低下していく。
そして、時刻t4で、メインセル21のセル電圧V1が最大充電電圧Vmaxに達すると、これがCMS31で検出される。すると、CMS31から検出信号を受け取ったコントロール回路51は、予備セル7からメインセル21への充電を終了するべく、スイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替える。
【0040】
次に、コントロール回路51は、時刻t5で、CMS31で検出したメインセル22のセル電圧V2を取得し、このセル電圧V2が上記所定電圧に達しているか否かを判定する。このとき、V2<Vmaxであるため、コントロール回路51は、スイッチ42A及び42Bをオン状態とする。これにより、メインセル22と予備セル7とを並列に接続し、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。そのため、この時刻t5からはメインセル22の電圧V2が上昇し、予備セル7の電圧が低下していく。
【0041】
この場合にも、メインセル22の電圧V2はCMS31で監視され、メインセル22の電圧V2が時刻t6で最大充電電圧Vmaxに達すると、予備セル7からメインセル22への充電を終了するべく、コントロール回路51はスイッチ42A及び42Bをオフ状態に切り替える。
その後は、メインセル23及び24についても同様に予備セル7からの充電を行う。これにより、セルバランス終了時には、すべてのメインセル21〜24の電圧が満充電によって均等化された状態となる。
【0042】
セルバランスが終了すると、蓄電モジュール1には負荷11が接続される。そして、時刻t7〜t8の放電期間において、メインセル21〜24の放電が行われる。その後、CMS31が、何れかのメインセル電圧が下限電圧を下回ったことを検出すると、充放電制御スイッチ32をオフ状態に切り替えて、メインセル21〜24の放電動作を終了する。
その後は、時刻t8で、再び蓄電モジュール1に外部充電器11を接続し、外部充電器11からメインセル21〜24への充電を行う。この時刻t8〜t9のメインセル充電期間では、上述した時刻t1〜t2の充電期間と同様に、予備セル7への充電も行われる。
ところで、本実施形態のように予備セル7を用いたセルバランスを行わないエネルギー蓄積装置では、一般に、充放電が繰り返されると各セルの電圧にばらつきが生じる。これは、セル間容量や内部抵抗のばらつき、セルの配置による動作温度の差などが原因である。」

「【0067】
また、上記各実施形態においては、予備セル7を、メインセル21〜24と同一構成のセルを2つ直列接続して構成する場合について説明したが、3つ以上のセルを接続することもできる。
さらに、上記各実施形態においては、予備セル7としてメインセル21〜24と同一構成のセルを用いる場合について説明したが、予備セル7の容量若しくは最大電圧が一つのメインセルよりも高く設定されていればよく、メインセル21〜24とは異なる構成のセルを予備セル7として用いることもできる。予備セル7の電圧が低い場合には、コントロール回路51内にDC−DCコンバータを設けて昇圧した上でメインセル21〜24の充電に使用することもできる。予備セル7としては、二次電池の他に、一次電池や太陽電池、燃料電池などを用いることも可能である。」

「【図2】



「【図3】



以上の記載より、甲3には、「直列接続された複数のメインセルと、当該メインセルを過充電及び過放電の少なくとも一方から保護するセル保護手段と、を備えるエネルギー蓄積装置であって、前記メインセルとそれぞれ個別に並列接続可能な予備セルと、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に順次並列接続することで前記予備セルから前記メインセルを充電し、前記メインセル間の電圧均等化を行う電圧均等化手段と、前記メインセルの各セル電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に並列接続可能なスイッチ群と、を備え、前記電圧均等化手段は、前記電圧検出手段で検出した前記メインセルの電圧に基づいて、前記各セル電圧を均等化するように、前記スイッチ群のオンオフを制御すること」が記載されていると認められる。

4 甲4の記載事項
甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は組電池の容量調整方法に係り、特に直列に単電池が複数個接続され、単電池に該単電池の電圧を測定する電圧測定回路とスイッチを介して該単電池の容量を調整するための容量調整用抵抗とがそれぞれ並列に接続された組電池の容量調整方法に関する。」

「【0023】
(動作)
次に、フローチャートを参照して本実施形態のバッテリパック10の動作について、組電池1が充電状態にある場合を想定して説明する。なお、初期状態においてマイコン4に電源が投入されると、ROMに格納された種々の設定値はRAMに移行されルーチン処理が可能な状態となり、充放電判別部2から出力された組電池1が充電状態にある場合に、以下の充電制御ルーチンが実行される。
【0024】
図2に示すように、充電制御ルーチンでは、まずステップ102において、マイコン4の出力ポートから出力する2値信号の出力レベルをすべてローレベルとする。これによりリチウムイオン電池11、12・・・1mに接続されたスイッチSWはすべてオフとなる(図1に示す状態)。
【0025】
次のステップ104では、全てのスイッチSWをオフとするオフ設定時間(例えば、全スイッチSWをオフとした後の1秒間)が経過するまで待機し、ステップ106において、電圧検出回路31、32・・・3mから出力された電圧値をリチウムイオン電池11、12・・・1mのそれぞれの両端電圧値として取り込む。これにより、スイッチSWによる過渡現象を排除して各リチウムイオン電池の正確な電圧を検出することができる。なお、オフ設定時間は、マイコン4内の図示しない内部時計で計測することができる。
【0026】
次にステップ108では、全てのスイッチSWのオン時間の時間幅を下記演算式(1)〜(4)のうちいずれか1つの演算式で演算してRAMに格納する。すなわち、例えば演算式(2)を使用する場合には、全てのスイッチSWのオン時間の時間幅を演算式(2)で演算して、RAMに格納する。」

「【0029】
ステップ110では、演算されたオン時間が負の値をとることがあるため負の値を採る場合にはリチウムイオン電池の容量調整が実現不能なことから、ステップ108でRAMに格納したオン時間が負の値をとるときに、オン時間を0とする補正を行う。
【0030】
次のステップ112では、オン時間が正の値を採るスイッチSW(以下、対象スイッチという。)をオン時間の間オン状態として対象スイッチに接続されたリチウムイオン電池の容量を調整するために、対象スイッチに接続された出力ポートから2値ハイレベル信号を出力する。次にステップ114において、オン設定時間(例えば、対象スイッチSWをオンとした後の9秒間)が経過したか否かを判断し、否定判断のときは、次のステップ116においてオン時間が経過したか否かを判断し、否定判断されたときはステップ112へ戻る。一方、ステップ116で肯定判断されたときは、調整すべきリチウムイオン電池の容量調整が完了したので、次のステップ118において対象スイッチSWをオフとしてステップ102へ戻る。
【0031】
これにより、例えば、リチウムイオン電池11では、スイッチSWがオンとなるので、リチウムイオン電池11、スイッチSW、容量調整用抵抗Rの間で閉回路が形成される。従って、リチウムイオン電池11の容量はオン時間の間容量調整用抵抗Rで熱消費され、リチウムイオン電池11の容量が調整される。なお、他の容量調整が必要なリチウムイオン電池でも同様にオン時間の間出力ポートからスイッチSWに2値ハイレベル信号が出力され、容量の調整がなされる。
【0032】
一方、ステップ114で肯定判断されたときは、ステップ102へ戻る。このステップ114及びステップ102では、上述した演算式によるオン時間がオン設定時間を越える場合に、オン時間をオン設定時間に制限するものである。
【0033】
従って、図2に示した充電制御ルーチンでは、各リチウムイオン電池11、12・・・1mは(オフ設定時間+オン設定時間)の一定時間(例えば、10秒)毎に電圧が測定され、容量調整用抵抗Rで容量がほぼ均等に調整される。」

「【図1】



以上の記載より、甲4には、「直列に単電池が複数個接続され、単電池に該単電池の電圧を測定する電圧測定回路とスイッチを介して該単電池の容量を調整するための容量調整用抵抗とがそれぞれ並列に接続された組電池の容量調整方法であって、一定時間(例えば、10秒)毎に電圧が測定され、容量調整用抵抗Rで容量がほぼ均等に調整される」ことが記載されていると認められる。

5 甲5の記載事項
甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、複数の電池を有する組電池の制御装置等に関するものである。」

「【0006】
上記課題を解決するために、本願発明に係る制御装置は、(1)直列に接続された複数の電池からなる使用済みの組電池に対して取り付けられる制御装置であって、前記組電池を充放電させる充放電装置と、前記各電池に並列に接続され、前記組電池を充放電するときの電流経路から前記各電池を切り離すための複数のバイパス回路と、前記各電池の電圧値に関する情報を取得する電圧センサと、前記組電池の電流値に関する情報を取得する電流センサと、前記各電池における開放電圧値と、内部抵抗値と、満充電容量とを評価パラメータとして、前記組電池のリユースが可能であるか否かを判定するコントローラと、を備え、前記コントローラは、全ての前記電池を充電して、いずれかの前記電池の電圧値が充電終止電圧に到達した場合、前記組電池の充電を停止し、前記電圧センサを用いて前記各電池の開放電圧値を取得し、全ての前記電池を放電して、いずれかの前記電池が放電終止電圧に到達した場合、前記組電池の放電を停止し、放電中の電流値および前記各電池の電圧値から前記各電池の内部抵抗値を算出し、前記バイパス回路を用いて、前記各電池の電圧値が充電終止電圧から放電終止電圧に低下するまで前記各電池を放電し、この間の電流値を積算することにより、前記各電池の満充電容量を算出することを特徴とする。」

「【0021】
コントローラ41は、各電池モジュール11A〜11Nの開放電圧値、内部抵抗値、満充電容量値を組電池2の再利用の可否を判別するための評価パラメータとして取得する。コントローラ41は、CPU、MPUであってもよいし、CPU等が行う処理の少なくとも一部を回路的に実行するASIC回路を含んでいてもよい。」

「【0025】
各電池モジュール11A〜11Nの満充電容量値の測定方法について説明する。電池モジュール11Aの満充電容量値は、電池モジュール11A〜11Nのうち電池モジュール11Aのみを満充電状態とし、電池モジュール11Aのみを放電終止電圧まで放電させたときの、電流積算量から算出することができる。」

「【0055】
ここで、コントローラ41は、開放電圧値、内部抵抗値及び満充電容量値の全ての評価項目がAクラスの電池モジュールを、Aクラスと評価することができる。コントローラ41は、開放電圧値、内部抵抗値及び満充電容量値のうち一つの評価項目がCクラスの電池モジュールを、Cクラスと評価することができる。コントローラ41は、評価項目が他の場合には、Bクラス又はCクラスと評価することができる。上述の電池モジュールのクラス分け基準は、一例であり、組電池2を再利用する目的に応じて、当業者が適宜変更することができる。」

「【図1】



以上の記載より、甲5には、「複数の電池を有する組電池の制御装置において、各電池モジュール11A〜11Nの開放電圧値、内部抵抗値、満充電容量値を組電池2の再利用の可否を判別するための評価パラメータとして取得する」こと、及び「電池モジュール11Aの満充電容量値は、電池モジュール11A〜11Nのうち電池モジュール11Aのみを満充電状態とし、電池モジュール11Aのみを放電終止電圧まで放電させたときの、電流積算量から算出する」ことが記載されていると認められる。

6 甲6の記載事項
甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適なバッテリシステムに関する。」

「【0022】
図1に示すバッテリシステムは、ハイブリッドカー、燃料電池車、電気自動車等の車両に搭載されて、負荷20として接続されるモーター22を駆動して車両を走行させる。電池1の負荷20となるモーター22は、インバータ23を介して電池1に接続される。インバータ23は、電池1の直流を3相の交流に変換して、モーター22への供給電力をコントロールする。
【0023】
この図のバッテリシステムは、充電できる複数の電池セル2を直列に接続している電池1と、この電池1を構成する電池セル2の電圧を検出する電圧検出回路3と、各々の電池セル2を放電する放電回路4と、電圧検出回路3で検出される放電回路4で放電される電池セル2の放電電圧を正常電圧に比較して電池セル2と電圧検出回路3との接続状態を判定する判定回路5とを備える。」

「【0037】
放電スイッチ16をオフとする状態で、電圧検出回路3が検出する電池セル2の非放電電圧は、ほぼ電池セル2の電圧となる。接触抵抗(R)の電流が小さく、接触抵抗(R)による電圧降下が極めて小さいからである。ところが、この状態で放電スイッチ16がオンに切り換えられて電池セル2の放電電圧が検出される状態になると、検出される放電電圧は非放電電圧から著しく低下する。放電抵抗15によって接触抵抗(R)の電流が大きくなって、接触抵抗(R)の電圧降下が大きくなるからである。したがって、判定回路5は、非放電電圧と放電抵抗15の電圧差から接触抵抗(R)の電圧降下を検出して、接触抵抗(R)による電圧降下が設定値よりも大きくなることを検出して、電池セル2と電圧検出回路3との接続異常を判定できる。
【0038】
したがって、判定回路5は、放電スイッチ16をオフからオンに切り換えて、非放電電圧と放電電圧の電圧差から電池セル2と電圧検出回路3との接続異常を判定できる。電圧検出回路3は、放電スイッチ16をオフにする状態で検出する電池セル2の非放電電圧と、放電スイッチ16をオンに切り換える状態で検出する電池セル2の放電電圧を検出して判定回路5に出力する。判定回路5は、電圧検出回路3で検出される電池の非放電電圧と放電電圧との電圧差を正常電圧に比較し、電圧差が正常電圧よりも大きい状態で接続異常と判定する。電圧差が接触抵抗(R)による電圧降下となるからである。電圧差に相当する接触抵抗(R)の電圧降下は、接触抵抗(R)の電気抵抗に比例して大きくなるので、電圧差が大きいことは、接触抵抗(R)が大きく、接続状態が異常な状態と判定できる。この正常電圧は、電池セル2の最低電圧よりも小さく、たとえば、電池セル2をリチウムイオン電池とするバッテリシステムにあっては、1.9Vに設定される。
【0039】
判定回路5は、放電スイッチ16をオンに切り換えて放電される電池セル2の放電電圧から、接続異常を判定することもできる。この判定回路5は、電圧検出回路3で検出される電池の放電電圧を正常電圧に比較し、放電電圧が正常電圧よりも小さい状態で接続異常と判定する。正常電圧は電池セル2の最低電圧よりも小さく、接続異常と判定する接触抵抗(R)から特定される。たとえば、正常電圧は、0.2Vに設定される。この判定回路5は、放電電圧を正常電圧の0.2Vに比較し、放電電圧が0.2Vよりも小さいと、接続異常と判定する。電池セル2の電圧を2V、接触抵抗(R)を1kΩ、放電抵抗15を100Ωとする状態で、電圧検出回路3が検出する放電電圧は約0.2Vとなる。したがって、正常電圧を0.2Vと設定する判定回路5は、電池セル2の電圧が2Vの状態で、接触抵抗(R)が1kΩよりも大きくなる状態で接続異常と判定できる。また、電池セル2の電圧が4Vの状態では、接触抵抗(R)が2kΩよりも大きくなる状態で接続異常と判定できる。電池セル2をリチウムイオン電池とするバッテリシステムは、電池セル2の電圧が2V〜4Vの範囲で変化するので、この判定回路5は、2kΩよりも大きな接続異常を確実に判定できる。」

「【図1】



以上の記載より、甲6には、「充電できる複数の電池セル2を直列に接続している電池1と、この電池1を構成する電池セル2の電圧を検出する電圧検出回路3と、各々の電池セル2を放電する放電回路4と、電圧検出回路3で検出される放電回路4で放電される電池セル2の放電電圧を正常電圧に比較して電池セル2と電圧検出回路3との接続状態を判定する判定回路5とを備えるバッテリシステムにおいて、放電スイッチ16をオフにする状態で検出する電池セル2の非放電電圧と、放電スイッチ16をオンに切り換える状態で検出する電池セル2の放電電圧を検出し、電池の非放電電圧と放電電圧との電圧差を正常電圧に比較し、電圧差が正常電圧よりも大きい状態で接続異常と判定する」ことが記載されていると認められる。

7 甲7の記載事項
甲7には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
直列に接続された複数のセルを電気的に接続する複数の接続部に対応して設けられた複数の端子と、
前記複数の端子から前記セルの電圧の値を順次測定する電圧測定部と、
前記端子に生じる接触抵抗の値を順次算出する接触抵抗算出部と、
前記接触抵抗の値と前記電圧の値とを用いて、セルの電圧の値を算出するセル電圧演算部と、
を有することを特徴とするセル電圧測定装置。
【請求項2】
前記接触抵抗算出部は、コンデンサを有し、
前記接触抵抗の値は、前記コンデンサへの充電時における時定数と前記コンデンサの容量の値とを用いて算出される、請求項1に記載のセル電圧測定装置。」

「【0001】
本発明は、セル電圧測定装置に関し、特に複数のセルを直列に接続した電池を構成する個々のセルの電圧を測定するセル電圧測定装置に関する。」

「【0014】
本発明のセル電圧測定装置は、直列に接続された複数のセルを電気的に接続する複数の接続部に対応して設けられた複数の端子と、複数の端子からセルの電圧の値を順次測定する電圧測定部と、端子に生じる接触抵抗の値を順次算出する接触抵抗算出部と、接触抵抗の値と電圧の値とを用いて、セルの電圧の値を算出するセル電圧演算部と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、複数のセルを含むスタック型の電池を構成する個々のセルと、個々のセルの電圧を測定するための端子との間に接触抵抗が存在する場合であっても、個々のセルの電圧を正確に測定することができる。」

以上の記載より、甲7には、「直列に接続された複数のセルを電気的に接続する複数の接続部に対応して設けられた複数の端子と、前記複数の端子から前記セルの電圧の値を順次測定する電圧測定部と、前記端子に生じる接触抵抗の値を順次算出する接触抵抗算出部と、前記接触抵抗の値と前記電圧の値とを用いて、セルの電圧の値を算出するセル電圧演算部と、を有し、前記接触抵抗算出部は、コンデンサを有し、前記接触抵抗の値は、前記コンデンサへの充電時における時定数と前記コンデンサの容量の値とを用いて算出される、セル電圧測定装置」が記載されていると認められる。

8 甲8の記載事項
甲8には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、過充電防止装置及び方法に関し、より詳しくは、バッテリーパックに含まれる複数のセルスタックの各々を過充電から保護するための装置及び方法に関する。」

「【0005】
電気自動車などに搭載されるバッテリーパックは、相互直列または並列に接続する複数のセルスタックを含むことが通常である。この際、各セルスタックは、一つまたは相互直列接続した二つ以上の電池セルを含む。
【0006】
このようなバッテリーパックに含まれた各々のセルスタックの状態は、BMS(Battery Management System)が搭載されたコントローラによってモニタリングされる。コントローラは、各セルスタックからモニタリングされた状態に基づき、バランシング動作、冷却動作、充電動作、放電動作などを制御するための信号を出力し得る。」

「【0018】
また、前記コントローラは、前記電圧測定部からの第1モニタリング信号及び前記電流測定部からの第2モニタリング信号に基づき、前記複数のセルスタックのうち少なくとも一つの内部抵抗値を算出し得る。」

「【0098】
コントローラ170は、電圧測定部110からの第1モニタリング信号及び電流測定部150からの第2モニタリング信号に基づき、複数のセルスタック20のうち少なくとも一つの内部抵抗値を算出する。望ましくは、コントローラ170は、各セルスタック20が過充電されていない状態である間、各セルスタック20の内部抵抗値を算出した方が良い。また、コントローラ170は、各セルスタック20の内部抵抗値を周期的にアップデートする。内部抵抗値を算出する技法は周知であるので、これについての詳細な説明は省略する。」

以上の記載より、甲8には、「一つまたは相互直列接続した二つ以上の電池セルを含むセルスタックを複数相互直列または並列に接続したバッテリーパックにおいて、電圧測定部110からの第1モニタリング信号及び電流測定部150からの第2モニタリング信号に基づき、複数のセルスタック20のうち少なくとも一つの内部抵抗値を算出する」ことが記載されていると認められる。

9 甲9の記載事項
甲9には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は組電池を評価する組電池評価試験システムにおいて、組電池を構成する各セルの電圧を検出して組電池総電圧を求め、あるセルが除外された場合でも、定電流−定電圧充放電制御を適切に行うのに好適な組電池評価試験システムに関する。」

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、従来技術における組電池評価試験システムにおいて、組電池評価試験装置からの電圧検出線による電圧検出では、除外装置の内部抵抗による電圧降下が発生し、正確な組電池総電圧が検出できない。そのため、電子負荷装置による定電流−定電圧充放電制御が正確に実行できないという問題点がある。
【0008】さらに、セルが除外された場合は、組電池総電圧が変化する。そのため、組電池総電圧が変化した場合、定電圧状態か否かの判断を行うことが困難であるという問題点がある。本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑み為されたもので、組電池を構成する各セルの電圧を検出して組電池総電圧を求め、あるセルが除外された場合でも、定電流−定電圧充放電制御を正確に行うことが可能な組電池評価試験システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の組電池評価試験システムは、複数のセルから成る組電池に対して定電流−定電圧充放電制御を行って組電池の評価を行う組電池評価試験システムにおいて、各セルの出力電圧を検出するセル電圧検出線を各セル毎に収容し、かつ各セルの除外/接続をセル毎に行う除外装置を備えた組電池評価試験装置と、前記各セル電圧検出線から各セルの出力電圧を検出し、検出された出力電圧を合計して得られる組電池総電圧を検出する充放電部と、前記充放電部に対して組電池総電圧の検出を指令する制御部とから構成されることを特徴とする。
【0010】請求項1記載の発明によれば、各セル電圧検出線から各セルの出力電圧を検出して、検出された出力電圧を合計して組電池総電圧を検出しているため、組電池総電圧を正確に検出することができる。請求項2に記載の組電池評価試験システムは、請求項1記載の組電池評価試験システムにおいて、前記制御部は、前記充放電部を制御するコンピュータの制御アプリケーションであることを特徴とする。
【0011】請求項2記載の発明によれば、制御部がコンピュータの制御アプリケーションによって構成されるため、セルが除外装置によって除外された場合でも、組電池総電圧を正確に検出することができる。請求項3に記載の組電池評価試験システムは、請求項2記載の組電池評価試験システムにおいて、前記制御アプリケーションは、組電池評価試験装置の出力電圧の目標値である定電圧設定値と、前記検出された組電池総電圧と、組電池評価試験装置の出力電流の目標値とに基づいて、前記組電池評価試験装置の出力電流の次の目標値である定電流設定値を決定することを特徴とする。」

以上の記載より、甲9には、「複数のセルから成る組電池に対して定電流−定電圧充放電制御を行って組電池の評価を行う組電池評価試験システムにおいて、組電池評価試験装置の出力電圧の目標値である定電圧設定値と、前記検出された組電池総電圧と、組電池評価試験装置の出力電流の目標値とに基づいて、前記組電池評価試験装置の出力電流の次の目標値である定電流設定値を決定する」ことが記載されていると認められる。

10 甲10の記載事項
甲10には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、二次電池を複数直列に接続した組電池の充放電を制御する、組電池制御システムおよび組電池制御方法に関する。」

「【0020】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る組電池制御システム1を、1組のリチウムイオン組電池20を備えた直流電源システムに適用した状態を示す概略構成図である。この組電池制御システム1は、単電池であるリチウムイオンセル(リチウムイオン二次電池)2が複数直列に接続されたリチウムイオン組電池20を制御するシステムであり、主として、整流器(充電手段)3と、各リチウムイオンセル2に設けられたバイパス回路4および切離スイッチ(切離手段)5と、セルコントローラ(制御手段)6と、システムコントローラ(制御手段)7とを備えている。また、バイパス回路4および切離スイッチ5とセルコントローラ6、セルコントローラ6とシステムコントローラ7、およびシステムコントローラ7と整流器3とは、それぞれ通信(信号伝送)可能に接続されている。」

「【0022】
バイパス回路4は、抵抗(負荷)とスイッチとを備えたセル電圧調整器であり、該当するリチウムイオンセル2の充電電圧が所定の電圧に達した場合に、セルコントローラ6によってスイッチがオンされ、このセル2への充電電流がバイパスされるとともに、このセル2が抵抗によって放電(バイパス放電)される。これにより、このセル2の充電電圧を下げて、電圧が低いンセル2の充電を促進するものである。」

「【0024】
セルコントローラ6は、各セル2の充電電圧に基づいて上記のようにバイパス回路4を制御するとともに、各リチウムイオンセル2の電圧や温度を含む電池状態を常時測定、監視し、各セル2の電池状態に基づいて、各切離スイッチ5を制御するとともに、整流器3の制御に必要な情報をシステムコントローラ7に送信する装置である。すなわち、電圧や温度などを計測する計測器を備え、充電中において、いずれかのセル2の電池状態が所定の異常状態に達した場合に、このセル2の切離スイッチ5の第2の端子52をオン(第1の端子51をオフ)して、このセル2を組電池20から切り離す。これと同時に、組電池20からセル2を切り離した旨およびそのセル数を含む切離情報をシステムコントローラ7に伝送する。これを受けて、システムコントローラ7によって、後述するように整流器3の出力電圧が調整される。
【0025】
このように、異常状態のセル2を組電池20から切り離すとともに、整流器3の出力電圧を調整することで、組電池20に接続されているセル数に適合した出力電圧で、残りのセル2を充電するものである。ここで、所定の異常状態には、短絡、開放、異常な電圧上昇・下降、異常な温度上昇、異常な圧力(内圧)上昇などが含まれる。」

「【図1】



以上の記載より、甲10には、「単電池であるリチウムイオンセル(リチウムイオン二次電池)2が複数直列に接続されたリチウムイオン組電池20を制御する組電池制御システム1において、異常状態のセル2を組電池20から切り離すとともに、整流器3の出力電圧を調整することで、組電池20に接続されているセル数に適合した出力電圧で、残りのセル2を充電する」ことが記載されていると認められる。

11 甲11の記載事項
甲11には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、複数の二次電池セルによって構成される組電池およびその制御装置に関する。」

「【0038】
次に、本実施形態による組電池におけるセルの劣化診断の原理を説明する。セルの劣化診断は、各セルの直流内部抵抗値(以下、DCR(Direct Current Resistance)と称する)を測定することによって行うことができる。二次電池セルの劣化(容量低下)の度合いは、SoH(State of Health)と呼ばれる値を用いて表すことができる。SoHは、新品時のセル容量を基準として、現在のセル容量の大きさを百分率で表した値であり、セルが劣化するとSoHは低下していく。」

「【0064】
劣化診断を行う際に、信号発生回路11は、信号分配回路12を通じて第一の電流制御素子222をOFF状態とし、充放電電流を遮断する。この状態で、電圧測定回路13は、切替回路15を通じてセル群221の開放電圧V1を測定する。なお、このとき第二の電流制御素子225はOFF状態である。次に、充放電電流を遮断したままの状態で、信号発生回路16は第二の電流制御素子225を短期間だけON状態とすることで、セル群221から放電用抵抗226へ強制的に放電させる。このとき電圧測定回路13は、切替回路15を通じてセル群221の負荷時電圧V2を測定する。こうして測定された各電圧値と、放電用抵抗226の抵抗値(RLとする)とに基づいて、演算部10において以下の式2を用いてセル群221のDCRを算出し、算出したDCRに基づいて電池ユニット22の劣化度を診断することができる。
DCR = RL(V1/V2−1) (式2)」

「【図3】



以上の記載より、甲11には、「セル群221の開放電圧V1を測定し、セル群221から放電用抵抗226へ強制的に放電させ、セル群221の負荷時電圧V2を測定し、演算部10においてセル群221の直流内部抵抗値を算出し、算出した直流内部抵抗値に基づいて電池ユニット22の劣化度を診断する」ことが記載されていると認められる。


第5 当審の判断
第5−1 理由1(新規性及び進歩性)について
1 本件発明1について
(1) 甲1を主たる証拠とした場合
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア) 甲1発明1の「二次電池63」は、「リチウムイオン電池であってもよ」いことから、本件発明1の「リチウムイオン電池」に相当する。よって、甲1発明1の「直列に接続された複数の二次電池63」は、本件発明1の「直列接続された複数のリチウムイオン電池」に相当する。

(イ) 甲1発明1の「蓄電ブロック60A〜60C」が備えている「個別管理部77A〜77C」は、直列に接続された複数の二次電池63の微小短絡を検査する処理を行うものである。
そして、検査は試験に含まれる概念であるから、甲1発明1の「蓄電ブロック60A〜60C」が備えている「個別管理部77A〜77C」と、本件発明1の「充放電試験を行うための充放電回路を備えた充放電試験装置」とは、「試験回路」である点で共通する。

(ウ) 甲1発明1の「放電回路71」は、「直列に接続された複数の二次電池63の電圧を均等化するために設けられ」、「電圧の高い二次電池63を、電圧の低い二次電池に合わせて、放電回路71により放電する」ものであり、複数の二次電池の電圧を、電圧の低い二次電池の電圧となるように調整することから、「前記各リチウムイオン電池の充電電圧を調整する電圧バランス調整手段」といえる。
しかしながら、甲1発明1の「放電回路71」は、「蓄電ブロック60A〜60C」が備えるものであり、「個別管理部77A〜77C」が備えるものではない。

そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「直列接続された複数のリチウムイオン電池の試験回路」

である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
試験回路について、本件発明1は、「充放電試験を行うための充放電回路を備えた充放電試験装置」であるのに対して、甲1発明1は、二次電池63の微小短絡を検査するものであり、蓄電ブロック60A〜60Cが備える個別管理部77A〜77Cである点。

相違点2
本件発明1は、充放電試験装置が「充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え」ているのに対して、甲1発明1の「個別管理部77A〜77C」は、当該構成を備えていない点。

イ 判断
上記相違点1及び2について、合わせて検討する。
異議申立の証拠である甲2〜甲11には、充放電試験を行うことについて記載されていないから、甲1発明1において、蓄電ブロック60A〜60Cが備えている個別管理部77A〜77Cを、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験装置とすることは、当業者が容易になしえたものとはいえない。
また、仮に、直列接続された複数のリチウムイオン電池において充放電試験を行うことが、本件特許出願時に周知であったとしても、試験回路が「充放電試験を行うための充放電回路を備え」(相違点1)、「充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え」(相違点2)ていることが、周知あるいは技術常識であるとの証拠はないから、相違点1及び2は、当業者が容易になし得る事項とはいえない。

したがって、本件発明1と甲1発明1とは、相違点1及び2を有するものであり、また、本件発明1は、また、甲1発明1及び甲2〜甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(2) 甲2を主たる証拠とした場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア) 甲2発明の「蓄電装置」は、「複数のセルBが直列に接続されたモジュール電池6が、複数直列に接続されて構成され、1つのモジュール電池6は、4つのセルBが直列接続により構成され、上記セルBとしては、リチウムイオン電池が使用されるもの」であるから、複数のリチウムイオン電池が直列接続されたものである。
そして、甲2発明の「電圧均等化装置」と本件発明1の「充放電試験装置」とは、いずれも「装置」である点で共通するから、本件発明1と甲2発明とは、「直列接続された複数のリチウムイオン電池の装置」である点で共通する。

(イ) 甲2発明は、「電池回路11」及び「バイパス回路14」により「セルの電池電圧のバラツキを所定範囲内に抑える」ものであり、セルの電池電圧のバラツキを抑えることは、電圧のバランスを調整することであるから、「電池回路11」及び「バイパス回路14」は、「所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」といえる。
そして、甲2発明は、「充電電流をバイパスさせて」「セルの充電を停止させ」るというセルの充電中の制御であるから、「所定範囲内に抑え」られる「セルの電池電圧」は、セルの「充電電圧」といえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」を備えている点で一致する。

以上より、本件発明1と甲2発明とは、

「直列接続された複数のリチウムイオン電池の装置であって、
前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備えた装置」

である点で一致し、次の点で相違する。
相違点3
「装置」について、本件発明1は、「充放電試験装置」であり、「充放電試験を行うための充放電回路を備え」ているのに対して、甲2発明は、「電圧均等化装置」であり、充放電試験を行うための充放電回路を備えていない点。

相違点4
「前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」について、本件発明1は、「充放電試験中に」前記各リチウムイオン電池の「充放電電圧」が「予め設定した許容」ばらつき範囲内に収まるように調整するのに対して、甲2発明は、「充放電試験中」であることの特定がなく、セルの「充電電圧」のバラツキを「所定」範囲内に抑えるように調整する点。

イ 判断
相違点3及び4について、合わせて検討する。
異議申立の証拠である甲1には、「個別管理部77A〜77C」が、直列に接続された複数の二次電池63の微小短絡を検査する処理を行うことが記載されているが、充放電試験を行うものではない。また、甲3〜甲11にも、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を行うことについて記載されていない。
そうすると、甲1、甲3〜甲11の記載された事項をみても、甲2発明の電圧均等化装置を充放電試験装置とすることは、当業者が容易になしえたものとはいえない。
仮に、蓄電装置において充放電試験を行うことが、本件特許出願時に周知であったとしても、電圧均等化装置が「充放電試験を行うための充放電回路を備え」(相違点3)、バイパス回路が、「充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する」(相違点4)ことが、周知あるいは技術常識であるとの証拠はないから、相違点3及び4は、当業者が容易になし得る事項とはいえない。

したがって、本件発明1と甲2発明とは、相違点3及び4を有するものであり、また、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3〜甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(3) 小括
前記(1)、(2)のとおり、本件発明1は、甲1又は甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものである。
したがって、本件発明2は、上記1と同じ理由により、甲1又は甲2に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明2は、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本件発明3〜13について
本件発明3〜13は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものである。
したがって、本件発明3〜13は、上記1と同じ理由により、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本件発明14について
(1) 甲1を主たる証拠とした場合
ア 対比
本件発明14と甲1発明2とを対比する。
(ア) 甲1発明2の「二次電池63」は、「リチウムイオン電池であってもよ」いことから、本件発明14の「リチウムイオン電池」に相当する。よって、甲1発明2の「直列に接続された複数の二次電池63」は、本件発明14の「直列接続された複数のリチウムイオン電池」に相当する。

(イ) 甲1発明2の「UPS10」が含む「充電制御回路41」は、蓄電システム50の充電を制御する回路である。
そして、蓄電システム50は、複数の蓄電ブロック60A〜60Cを含むものであり、蓄電ブロック60A〜60Cは、直列に接続された複数の二次電池63を備えたものであって、さらに、二次電池63は、リチウムイオン電池であってもよいから、甲1発明2の「充電制御回路41」は、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充電を制御する回路である。
そうすると、本件発明14と甲1発明2の「UPS10」が含む「充電制御回路41」とは、「直列接続された複数のリチウムイオン電池の充電を制御する充電制御回路」である点で共通する。

(ウ)a 甲1発明2の「放電回路71」は、「放電抵抗72と放電スイッチ73とから構成」されるものであり、「放電スイッチ73」はオンオフスイッチといえるから、「放電回路71」は、二次電池63に「並列接続されるオンオフスイッチ付きの回路」といえる。

b 甲1発明2において、「センサユニット75A〜75Cは、電圧検出回路を有しており、対応する各二次電池63の電圧を検出」するものであり、「電圧検出回路」は「電圧センサ」といえるから、甲1発明2の「センサユニット75A〜75C」は、「前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の電圧を測定する電圧測定回路」といえる。

c 甲1発明2の「放電回路71」は、「直列に接続された複数の二次電池63の電圧を均等化するために設けられ」、「電圧の高い二次電池63を、電圧の低い二次電池に合わせて、放電回路71により放電する」ものであり、「センサユニット75A〜75C」で検出される電圧に基づいて均等化処理が行われることは明らかである。

d 前記a〜cによると、甲1発明2は、「放電回路71」及び「センサユニット75A〜75C」により、複数の二次電池の電圧を、電圧の低い二次電池の電圧となるように調整されるから、「放電回路71」及び「センサユニット75A〜75C」は、「前記各リチウムイオン電池の電圧を調整する電圧バランス調整手段」といえる。
しかしながら、甲1発明2は、「放電回路71」及び「センサユニット75A〜75C」は、いずれも「蓄電ブロック60A〜60C」が備えるものであり、「充電制御回路41」が「放電回路71」及び「センサユニット75A〜75C」を備えるものではない。

以上より、本件発明14と甲1発明2とは、
「直列接続された複数のリチウムイオン電池の充電を制御する充電制御回路」

である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本件発明14は、「充放電制御装置」であるのに対して、甲1発明2は、充電制御回路であり、放電を制御することについて特定がない点。

相違点2
本件発明14は、「充放電中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し」ているのに対して、甲1発明2の「充電制御回路」は、当該事項が特定されていない点。

相違点3
本件発明14は、「前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する」のに対して、甲1発明2は、当該特定事項を有しない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
甲6には、上記のように、「電池の非放電電圧と放電電圧との電圧差を正常電圧に比較し、電圧差が正常電圧よりも大きい状態で接続異常と判定する」ことが記載されているものの、接触抵抗値を算出することは記載されていない。
甲7には、「前記コンデンサへの充電時における時定数と前記コンデンサの容量の値とを用いて」接触抵抗の値を算出することが記載されているものの、バイパスオン時測定電圧と、バイパスオフ時測定電圧と、内部抵抗値と、バイパス抵抗値から、接触抵抗値を算出する相違点3に係る構成は記載されていない。

そして、甲2〜甲5、甲8〜甲11にも、相違点3に係る「前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する」ことは記載されておらず、他に周知であるとの証拠もないから、当業者が容易になし得る事項とはいえない。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明2、及び甲2〜甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(2) 甲2を主たる証拠とした場合
ア 対比
本件発明14と甲2発明とを対比する。
(ア) 甲2発明の「蓄電装置の電圧均等化装置」は、「バイパス回路を作動させ、該セルに流れていた充電電流をバイパスさせて、最低電池電圧よりも所定電圧値以上高い電池電圧が計測されたセルの充電を停止させ」ることから、蓄電装置の充電を制御しているといえる。
そして、「蓄電装置」は、「複数のセルBが直列に接続されたモジュール電池6が、複数直列に接続されて構成され、1つのモジュール電池6は、4つのセルBが直列接続により構成され、上記セルBとしては、リチウムイオン電池が使用されるもの」であるから、本件発明14と甲2発明とは、「直列接続された複数のリチウムイオン電池の充電を制御する充電制御装置」である点で一致する。

(イ)a 甲2発明の「バイパス回路14のトランジスタ」は、「オンさせること」ができるからオフの状態を有するものであり、「オンオフスイッチ」といえる。
そして、「バイパス回路14」は、「バイパス回路14a〜14d」を総称したものであることは明らかであり、「バイパス回路14a〜14d」は、各セルBa〜Bdに対応して設けられるものであるから、甲2発明の「バイパス回路14a〜14d」は、本件発明14の「各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路」に相当する。

b 甲2発明の「電圧計測器15a〜15d」は、「各セルの電池電圧をそれぞれ計測する」ものであるから、本件発明14の「前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサ」に相当する。
そして、「電池回路11」は、「各電圧計測器15a〜15dからの計測結果を取得」するものであり、計測結果は、「バイパス回路を作動させ」、「充電電流をバイパスさせて」「セルの充電を停止させ」るという充電の制御に用いられるから、電圧計測器15a〜15dで計測される各セルの電池電圧は、各セルの「充電電圧」といえる。
そうすると、甲2発明の「電池回路11」と本件発明14の「前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路」とは、「各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充電電圧を測定する電圧測定回路」である点で一致する。

c 甲2発明は、「電池回路11」及び「バイパス回路14」により「セルの電池電圧のバラツキを所定範囲内に抑える」ものであり、セルの電池電圧のバラツキを抑えることは、電圧のバランスを調整することであるから、「電池回路11」及び「バイパス回路14」は、「所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」といえる。
そして、甲2発明は、「充電電流をバイパスさせて」「セルの充電を停止させ」るというセルの充電中の制御であるから、「所定範囲内に抑え」られる「セルの電池電圧」は、セルの「充電電圧」といえる。

d 上記a〜cをまとめると、本件発明14と甲2発明とは、「充電中に、前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有する」点で一致する。

以上をまとめると、本件発明14と甲2発明とは、
「直列接続された複数のリチウムイオン電池の充電を制御する充電制御装置であって、
充電中に、前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有する、充電制御装置」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点4
本件発明14は、「充放電を制御する充放電制御装置」であるのに対して、甲2発明は、「充電を制御する充電制御装置」であり、放電を制御することについて特定されていない点。

相違点5
「充電中に、前記各リチウムイオン電池の充電電圧が所定のばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」について、本件発明14は、「充放電中に」前記各リチウムイオン電池の「充放電電圧」が「予め設定した許容」ばらつき範囲内に収まるように調整するのに対して、甲2発明は、「放電中」についての特定がなく、セルの「充電電圧」のバラツキを「所定」範囲内に抑えるように調整する点。

相違点6
「電圧測定回路」について、本件発明14は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の「充放電」電圧を測定するのに対して、甲2発明は、充電電圧を測定する点。

相違点7
本件発明14は、「前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する」のに対して、甲2発明は、当該特定事項を有しない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点7について検討する。
甲6には、上記のように、「電池の非放電電圧と放電電圧との電圧差を正常電圧に比較し、電圧差が正常電圧よりも大きい状態で接続異常と判定する」ことが記載されているものの、接触抵抗値を算出することは記載されていない。
甲7には、「前記コンデンサへの充電時における時定数と前記コンデンサの容量の値とを用いて」接触抵抗の値を算出することが記載されているものの、バイパスオン時測定電圧と、バイパスオフ時測定電圧と、内部抵抗値と、バイパス抵抗値から、接触抵抗値を算出する相違点7に係る構成は記載されていない。

そして、甲1、甲3〜甲5、甲8〜甲11にも、相違点7に係る「前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する」ことは記載されておらず、他に周知であるとの証拠もないから、当業者が容易になし得る事項とはいえない。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲2発明、及び甲1、甲3〜甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(3)小括
前記(1)、(2)のとおり、本件発明14は、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 本件発明15〜16について
本件発明15〜16は、本件発明14の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記3と同じ理由により、本件発明15〜16は、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第5−2 申立理由の理由2(実施可能要件、サポート要件、及び明確性)について
実施可能要件及びサポート要件について)
本件明細書の発明の詳細な説明には、「電圧バランス調整手段」に関して、以下の記載がある。
「【0040】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る充放電試験装置10は、直列接続された複数のリチウムイオン電池11を試験体として充放電試験を行うための充放電回路13を備えており、生産されたリチウムイオン電池11の活性化及び品質検査に用いられる。
以下、充放電試験装置10の詳細について説明する。
図1に示すように、充放電試験装置10では、充放電回路13に直列接続された複数のリチウムイオン電池11が同時に試験される。
充放電回路13は、例えば充電試験時に交流の商用電源を所望の充電電圧に変圧し、直流に変換して出力する回路を有している。そして、充放電試験装置10は、充放電試験中に、各リチウムイオン電池11の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段15を有している。
【0041】
電圧バランス調整手段15は、各リチウムイオン電池11と並列に電気接続される電圧センサ16で各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定する電圧測定回路17と、各リチウムイオン電池11に並列接続されるオンオフスイッチ18付きのバイパス回路19とを有している(図1は、全てのオンオフスイッチ18がオンになった状態を示している)。また、電圧バランス調整手段15は、電圧測定回路17(各電圧センサ16)及び各バイパス回路19(オンオフスイッチ18)を制御する制御部20を有しており、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路17により各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池11に並列接続されたバイパス回路19を一定時間オンにしてリチウムイオン電池11の充放電電流の一部をバイパス回路19に分流させる。各バイパス回路19にはオンオフスイッチ18と直列に抵抗22が接続されている。なお、本実施の形態では、機械式のリレー接点でオンオフスイッチ18を構成した場合を示したが、オンオフスイッチ18は、バイパス回路19の開閉を切り替えることができるものであればよく、電子式のスイッチング素子を用いてもよい。特に、半導体スイッチは信頼性が高く、メンテナンス性にも優れる。また、オンオフスイッチ18としてトランジスタを用いる場合は、抵抗22の代わりにトランジスタの内部抵抗を利用することができるので、別途、抵抗22を接続する必要はない。
【0042】
本実施の形態では、充放電回路13と制御部20の間に設けられた充放電信号スイッチ23をオンにすると、充放電回路13が作動すると共に、制御部20によってコンタクタ24がオンにされ、充放電回路13と各リチウムイオン電池11の間に電流が流れて充放電試験が行われる構成としたが、充放電試験装置10の構成はこれに限定されるものではない。
定電流充放電が開始されると、電圧バランス調整手段15は、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路17の各電圧センサ16により各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定する。そして、測定したリチウムイオン電池11の充放電電圧が基準電圧値(例えば、測定した全てのリチウムイオン電池11の充放電電圧の最低値)より高い時に、そのリチウムイオン電池11のバイパス回路19をオンオフスイッチ18によって一定時間オンにしてリチウムイオン電池11の充放電電流を分流させる。これにより、充放電電圧が基準電圧値より高かったリチウムイオン電池11に流れる充放電電流が減少して充放電が抑制されることになり、全体としての充放電電圧のばらつきが減少する。このとき、バイパス回路19に分流した電流は抵抗22で放電され、熱エネルギーとなって消費される。なお、バイパス回路19(抵抗22)に流れる電流が、充放電電流の0.1〜10%(好ましくは1〜5%)の範囲となるように抵抗22を設定することにより、リチウムイオン電池11の特性(電池内部抵抗値)ばらつきを効果的に吸収することができるが、この範囲に限定されるものではない。」

上記のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定し、基準電圧値より高い時に、そのリチウムイオン電池11のバイパス回路19をオンオフスイッチ18によって一定時間オンにしてリチウムイオン電池11の充放電電流を分流させる」ことにより、「充放電電圧のばらつきが減少する」「電圧バランス調整手段」が、当業者がその実施をすることができる程度に具体的に記載されている。

したがって、本件発明1、14の「各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

明確性について)
本件発明1、14は、「前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段」を備えることを特定している。
当該特定事項は、その記載のとおり、電圧バランス調整手段が、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整するものであることを、明確に理解することができるものであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

したがって、本件発明1〜16は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、発明の詳細な説明に、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、明確であるから、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしている。


第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-09-07 
出願番号 P2021-067195
審決分類 P 1 651・ 537- Y (H01M)
P 1 651・ 113- Y (H01M)
P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 536- Y (H01M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 寺谷 大亮
衣鳩 文彦
登録日 2021-11-11 
登録番号 6976468
権利者 佐藤 裕之
発明の名称 充放電試験装置及び充放電制御装置  
代理人 中前 富士男  

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