• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1389430
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-16 
確定日 2022-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6985488号発明「サーバ装置及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6985488号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6985488号の請求項1〜5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年12月14日(遡及出願日平成26年2月28日、優先日平成25年3月1日)に出願され、令和3年11月29日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月22日に特許公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和4年6月16日に特許異議申立人 安孫子勉(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末と共に電子レシートシステムを構成するサーバ装置であって、
前記サーバ装置は、
前記携帯端末が読み取った商品コードに対応する商品データに基づいて決済処理された内容を示す電子レシート情報と、前記会員コードと、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記携帯端末から、電子レシート情報の照会を受けた場合、当該照会があった携帯端末に対して、当該携帯端末に対応付けられた会員コードに対応付けて前記記憶部に記憶された電子レシート情報を閲覧可能に送信する送信手段と、を備える、
サーバ装置。
【請求項2】
前記電子レシート情報を受信する受信手段を、更に備えて、
前記受信手段が電子レシート情報を受信して記憶した場合に、電子レシート情報が記憶されたことを前記携帯端末に通知する、
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記送信手段は、
前記会員コードに対応付けられた携帯端末に対して、当該会員コードに対応付けられている1以上の企業コードを含む電子レシート情報を送信する、
請求項1又は請求項2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記電子レシート情報は、
会員コードと、企業コードと、店舗コードと、商品販売データの一又は複数を含む、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項5】
消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末と共に電子レシートシステムを構成するコンピュータを、
前記携帯端末が読み取った商品コードに対応する商品データに基づいて決済処理された内容を示す電子レシート情報と、前記会員コードと、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記携帯端末から、電子レシート情報の照会を受けた場合、当該照会があった携帯端末に対して、当該携帯端末に対応付けられた会員コードに対応付けて前記記憶部に記憶された電子レシート情報を閲覧可能に送信する送信手段と、
して機能させるプログラム。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は、甲第1号証として特開2013−41354号公報を提出し、甲第2号証として特開2012−216042号公報を提出し、甲第3号証として国際公開第2012/151163号を提出し、甲第4号証として特開2009−59174号公報を提出し、本件発明1〜5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、同法第113条第2項により取り消されるべきものである旨主張する。

第4 文献の記載
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は強調のため当審で付与した。
「【0001】
本発明は、セルフスキャニング機能を有する携帯端末を用いた商品販売システム、携帯端末、管理サーバー、商品販売システムの制御方法およびプログラムに関するものである。」

「【0006】
本発明は、上記の問題に鑑み、セルフショッピングシステムにおける顧客の操作ミスや不正行為を効率的に発見し、店舗の損害額を抑えることが可能な商品販売システム、携帯端末、管理サーバー、商品販売システムの制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の商品販売システムは、顧客によって操作される携帯端末と、1以上の携帯端末と通信可能に構成された管理サーバーと、を備えた商品販売システムであって、携帯端末は、購入対象となる商品の商品情報を取得する商品情報取得部と、取得した全ての商品情報を含む精算情報を、管理サーバーに送信する精算情報送信部と、を備え、管理サーバーは、精算情報に含まれる商品情報に基づいて、各商品名を価格の高い順または低い順に列記したソート明細情報を生成するソート明細情報生成部と、ソート明細情報を出力するソート明細情報出力部と、を備えたことを特徴とする。」

「【0024】
上記の商品販売システムにおいて、管理サーバーは、携帯端末の各部を実現するためのアプリケーションを記憶するアプリケーション記憶部をさらに備え、携帯端末は、ログイン情報の入力により、アプリケーションの利用が許可されると共に、管理サーバー上のアプリケーションを利用することにより、仮想端末として機能することを特徴とする。」

「【0037】
[第1実施形態]
図1は、セルフショッピングシステムSYのシステム構成図である。同図に示すように、セルフショッピングシステムSYは、顧客が操作する携帯端末1と、店員が操作する専用端末2と、無線LAN通信を行うためのアクセスポイント3と、携帯端末1によって入力された精算情報を管理する管理サーバー4と、セルフレジを行うためのセルフレジ端末5と、セルフレジ端末5に接続されたバーコードリーダー6と、を備えている。このうち、携帯端末1および専用端末2とアクセスポイント3は、Wi−Fi(登録商標)などの無線LANを介して接続されている。また、管理サーバー4は、アクセスポイント3およびセルフレジ端末5と、店舗内LAN9(有線通信または無線通信)を介して接続されている。
【0038】
携帯端末1は、例えば顧客が所有するスマートフォンであり、無線LAN通信手段11、バーコード読み取り手段12および撮像手段13を備えている。これらのうち、無線LAN通信手段11およびバーコード読み取り手段12は、セルフスキャン機能(顧客自身で、商品に貼付または印刷された商品バーコードを読み取って精算を行う機能)を実現するための主要部となる。また、撮像手段13は、購入商品が収容された買い物カゴの写真を撮像するための手段である。なお、携帯端末1としては、これらの各手段を備えた情報処理端末であればよく、携帯電話、ノート型パソコンおよびPDAなど、その種類は問わない。」

「【0042】
商品DB42は、図2(a)に示すように、各商品について、商品コードと、商品名と、商品価格と、商品重量と、不正レベル(不正対象度合い)と、を紐付けて記憶する。商品重量は、セルフレジ端末5で購入商品と精算情報の整合性を判別する際に利用される。また、不正レベルは、不正行為(万引きなど)の対象となる可能性の高さを3段階(レベルA〜C)で示したものである。
【0043】(省略)
【0044】
購入履歴DB43は、図2(b)に示すように、各精算処理について、会員IDと、日付(購入日)と、精算金額と、購入方法と、を紐付けて記憶する。購入方法としては、セルフスキャニングか通常精算(不図示のPOS端末を使用したレジ担当者による精算)か、を記憶する。このように、購入履歴DB43には、セルフスキャニング機能を用いた購入履歴だけでなく、通常精算時の購入履歴も反映される。購入履歴DB43は、セルフスキャニング機能を利用した携帯端末1に対してポイントやクーポンなどのインセンティブを付与する際に、インセンティブの付与の有無を決定したり、インセンティブの種類や量を決定したりするために参照される。
【0045】
精算情報DB44は、図2(c)に示すように、各精算処理について、会員IDと、精算処理IDと、購入対象となる全ての商品コードと、ソート明細情報と、セルフレジ承認結果と、撮像データと、店員照合結果と、を紐付けて記憶する。精算情報DB44は、管理サーバー4が、精算段階を把握するために参照される。ここで、ソート明細情報とは、携帯端末1から送信された精算情報(購入対象となる全ての商品コードが含まれた情報)に基づいて、商品DB42を参照し、各商品名を価格および不正レベルに応じてソートした情報である。また、セルフレジ承認結果、撮像データおよび店員照合結果は、いずれも顧客による商品バーコードの読み取りミスや不正行為を防止すべく管理される情報である。詳細については後述する。
【0046】
次に、図4を参照し、セルフショッピングシステムSYの機能構成について説明する。携帯端末1は、主な機能構成として、商品情報取得部101、精算情報送信部102、付属情報送信部103、精算処理ID出力部104、会計明細情報生成部105および会計明細情報表示部106を備えている。なお、これら各部は、セルフスキャン用アプリケーション41によって実現される。
【0047】
商品情報取得部101は、バーコード読み取り手段12により、購入対象となる商品の商品バーコードを読み取り、商品コードを取得する。また、商品情報取得部101は、商品コードをキーとして、商品DB42から商品名および商品価格を含む商品情報を取得する。
【0048】
精算情報送信部102は、取得した全ての商品情報を含む精算情報を、管理サーバー4に送信する。なお、全ての商品情報は、必ずしも同時に送信される必要はなく、商品バーコードの読み取りごとに送信されても良い。
【0049】
付属情報送信部103は、買い物カゴに収容されている購入商品を撮像手段13によって撮像した撮像データ(付属情報)を管理サーバー4に送信する。管理サーバー4は、撮像データを受信すると、これを精算情報DB44に記録する。このように、顧客に対して撮像データの送信を義務付けることで、顧客は購入商品数を再確認することになるため、商品バーコードの読み取りを忘れていた場合などの操作ミスの軽減に役立つ。なお、撮像データの撮像は、買い物の途中に行われても意味がないため、撮像データの撮像および送信は、精算処理後に制限される(精算処理前には受付けられない)ことが好ましい。
【0050】
精算処理ID出力部104は、精算処理を識別する精算処理IDを、取引バーコードBとしてタッチパネル15上に表示する(出力する)。精算処理IDは、管理サーバー4により、清算処理開始時または精算時(精算ボタン87の押下時(図6(a)参照))に自動付与される。タッチパネル15上に表示された取引バーコードBは、専用端末2やセルフレジ端末5により読み取られる。
【0051】
会計明細情報生成部105は、商品コードの取得順に、商品名およびその価格を列記した会計明細情報を生成する。会計明細情報とは、いわゆる電子レシートである。会計明細情報表示部106は、生成された会計明細情報をタッチパネル15上に表示する(図7(a)の符号91参照)。
【0052】
セルフレジ端末5は、主な機能構成として、精算処理ID取得部501、総重量測定部502、整合性判別部503および判別結果送信部504を備えている。
【0053】
精算処理ID取得部501は、バーコードリーダー6により、携帯端末1のタッチパネル15上に表示された取引バーコードBを読み取ることにより、精算処理IDを取得する。総重量測定部502は、セルフレジ端末5に組み込まれた秤により、全ての購入商品の総重量(以下、「測定総重量」と称する)を測定する。なお、全ての購入商品を買物カゴごと量ることができる秤の場合は、合計重量から予め測定した買い物カゴの重量を差し引いて購入商品の測定総重量とする。
【0054】
整合性判別部503は、総重量測定部502の測定結果に基づいて、購入商品と精算情報の整合性を判別する。具体的には、精算処理ID取得部501によって取得した精算処理IDをキーとして管理サーバー4内の精算情報DB44(図2(c)参照)を参照し、「購入対象となる全ての商品コード」を取得する。また、当該商品コードをキーとして商品DB42(図2(a)参照)を参照し、商品重量を合計することにより、精算情報に基づく購入商品の総重量(以下、「算出総重量」と称する)を算出する。その後、当該「算出総重量」と「測定総重量」の差分を算出し、差分が所定量以下となる場合、「整合性OK」と判定する。判別結果送信部504は、整合性判別部503の判別結果(「整合性OK」/「整合性NG」)を、管理サーバー4に送信する。
【0055】
なお、「購入対象となる全ての商品コード」(精算情報)は、管理サーバー4から取得するのではなく携帯端末1から取得しても良い。
【0056】
管理サーバー4は、主な機能構成として、アプリケーション記憶部401、在庫管理部402、不正対象度合い算出部403、精算情報受信部404、ソート明細情報生成部405、ソート明細情報出力部406および精算処理部407を備えている。
【0057】
アプリケーション記憶部401は、セルフスキャン用アプリケーション41を記憶した記憶領域である。在庫管理部402は、各商品について、在庫数や販売数を管理する。不正対象度合い算出部403は、各商品の在庫数から販売数を差し引いた不明数に基づいて、各商品の不正レベル(不正対象度合い)を算出する。また、当該算出結果を含む不正テーブルを生成し、所定の記憶領域に記憶する。なお、このとき不正が多く発生している商品が、特定の商品群に集中している場合は、その商品群に含まれる商品の不正レベルを高く設定しても良い。あるいは、算出された各商品の不正レベルの結果に対して、過去の不正事例を基に、修正を加えることも可能である。精算情報受信部404は、携帯端末1(精算情報送信部102)から送信された商品コード(精算情報)を受信する。
【0058】
ソート明細情報生成部405は、商品DB42を参照し、精算情報に含まれる各商品の価格および不正レベルに基づいて、ソート明細情報を生成する。本実施形態では、まず不正レベルの高い順(不正テーブルにおいて、不明数の多い順)に各商品を列記し、同じ不正レベルの商品については、価格の高い順に各商品を列記する。生成したソート明細情報は、精算情報DB44に記録する。ソート明細情報出力部406は、専用端末2により指定された精算処理IDに対応するソート明細情報を、精算情報DB44から読み出し、精算処理IDを指定した専用端末2に送信する。このように、店舗にとってリスクが高いものを優先的に列記したソート明細情報を生成し、店員が所有する専用端末2に出力することで、店員が、購入商品と精算情報の照合を効率的に行うことができる。
【0059】
精算処理部407は、携帯端末1から受信した精算情報に基づいて精算処理を行う。但し、精算処理部407は、「携帯端末1(付属情報送信部103)から撮像データが送信されていること」、且つ「セルフレジ端末5(判別結果送信部504)から「整合性OK」を示す判別結果が送信されていること」、且つ「専用端末2から「店員照合OK」を示す照合結果が送信されていること」、の3つの条件から、予め設定した条件を満たした場合のみ精算処理を行う。言い換えれば、設定された条件を満たさない場合、精算処理を行わない。」

「【0061】
専用端末2は、主な機能構成として、精算処理ID取得部201、ソート明細情報受信部202、ソート明細情報表示部203および照合結果送信部204を備えている。
【0062】
精算処理ID取得部201は、バーコード読み取り手段22により、携帯端末1のタッチパネル15上に表示された取引バーコードBを読み取ることにより、精算処理IDを取得する。ソート明細情報受信部202は、取得した精算処理IDを管理サーバー4に送信し、当該精算処理IDに対応するソート明細情報を受信する。ソート明細情報表示部203は、受信したソート明細情報をタッチパネル15上に表示する(図9(b)参照)。照合結果送信部204は、店員の操作に基づいて、店員がソート明細情報と、買い物カゴ内の購入商品とを目視によって比較照合したその照合結果(「店員照合OK」/「店員照合NG」)を、管理サーバー4に送信する。」

「【0063】
次に、図5ないし図8を参照し、セルフスキャンの操作手順並びにその操作に伴う携帯端末1の画面表示について説明する。図5(a)は、携帯端末1が管理サーバー4にアクセスした際に表示される初期画面を示す図である。初期画面には、3つのタブを表示する。このうち、「ログイン」タブが選択されると、セルフスキャンを開始するために必要なログイン情報の入力画面を表示する。顧客により、入力ボックス81に会員IDが、また入力ボックス82にパスワードが入力され、さらにログインボタン83が押下されると、メインメニュー画面を表示する(図5(b)参照)。また、初期画面において、「イベント」タブが選択されると、イベント情報を表示する。また、「店内マップ」タブが選択されると、店内マップを表示する。なお、イベント情報や店内マップは、ログイン情報を入力することなく、不特定多数の顧客が閲覧可能となっている。」

「【0065】
図6(a)は、セルフスキャンメニュー画面の表示例を示す図である。セルフスキャンメニュー画面は、「バーコード読み取り」ボタン、「明細表示」ボタン、「クーポン選択」ボタンを含むメニューボタン群86と、精算ボタン87を表示する。ここで、「バーコード読み取り」ボタンが選択されると、商品バーコードを読み取るための商品バーコード読み取り画面を表示する。また、「明細表示」ボタンが選択されると、お買い上げ明細画面を表示する(図6(b)参照)。また、「クーポン選択」ボタンが選択されると、クーポン表示画面を表示する。顧客は、クーポン表示画面でクーポンを選択すると、割引等のインセンティブを受けることができる。一方、精算ボタン87が選択されると、会計明細画面(図7(a)参照)を表示する。
【0066】
図6(b)は、お買い上げ明細画面の表示例を示す図である。お買い上げ明細画面は、お買い上げ明細88と、セルフスキャンメニューボタン89を表示する。お買い上げ明細88としては、商品名、数量および商品価格からなる商品データを、商品バーコードの読み取り順に表示すると共に、現時点での合計額を表示する。また、セルフスキャンメニューボタン89が押下されると、セルフスキャンメニュー画面(図6(a)参照)に戻る。
【0067】
図7(a)は、会計明細画面の表示例を示す図である。会計明細画面は、会計明細91と、取引バーコードBを表示する。会計明細91としては、お買い上げ明細88に、小計および合計を含めた会計情報を表示する。また、セルフスキャンメニューで「クーポン選択」ボタンの押下後、クーポンが選択された場合は、そのクーポンに基づく割引情報も表示する。一方、取引バーコードBは、セルフレジ端末5に接続されたバーコードリーダー6により読み取られる。
【0068】
図7(b)は、セルフレジ承認結果表示画面の表示例を示す図である。セルフレジ承認結果表示画面は、セルフレジ端末5の承認結果を示すメッセージ92と、カメラ撮像ボタン93を表示する。カメラ撮像ボタン93が押下されると、撮像画面(図示省略)を表示する。顧客は、買い物カゴを所定の場所に配置し、正面および裏面など、予め指定された方向から所定枚数の写真を撮像する。撮像データは、管理サーバー4に送信される。
【0069】
図8(a)は、撮像データ確認結果表示画面の表示例を示す図である。撮像データ確認表示画面は、管理サーバー4による撮像データの確認結果および店員照合方法を示すメッセージ94と、取引バーコードBを表示する。取引バーコードBは、店員による照合を行うため、専用端末2により読み取られる。
【0070】
図8(b)は、店員照合結果表示画面の表示例を示す図である。店員照合確認表示画面は、店員による購入商品とソート明細情報の照合結果を示すメッセージ95と、メインメニューボタン96を表示する。メインメニューボタン96が押下されると、メインメニュー画面(図5(b)参照)に戻る。
【0071】
次に、図9を参照し、専用端末2の画面表示について説明する。図9(a)は、取引バーコード読み取り画面を示す図である。専用端末2は、不図示の初期画面にて読み取り開始を指示すると、当該取引バーコード読み取り画面を表示した状態となる。専用端末2は、取引バーコード読み取り画面が表示された状態でバーコードを認識すると、ソート明細画面(図9(b)参照)を表示する。
【0072】
図9(b)は、ソート明細画面を示す図である。ソート明細画面は、ソート明細97と、OKボタン98と、NGボタン99を表示する。ソート明細97には、読み取った精算処理IDを表示すると共に、会計明細91(図7(a)参照)の各商品データ(商品名、数量および商品価格)を、価格および不正レベルに基づく順序でソートしたソート明細情報を表示する。また、不正レベル「A」の商品データについては強調表示される。なお、強調表示としては、太字表示、カラー表示、フォントサイズの拡大等が考えられる。また、各商品データに関連付けて不正レベルを表示しても良い。店員は、買い物カゴ内の商品と、ソート明細情報の内容が一致していると判断した場合は、OKボタン98を押下する。また、一致していないと判断した場合はNGボタン99を押下する。ここで、OKボタン98が押下された場合は、管理サーバー4にて精算処理が行われる。また、NGボタン99が押下された場合は、店員により、専用端末2に搭載されたセルフスキャン機能、または不図示のPOS端末を用いて、買い物カゴ内に収容されている全商品の商品バーコード再読み取りが行われる。」

「【0084】
なお、上記の各実施形態に示したセルフショッピングシステムSY(携帯端末1、専用端末2、管理サーバー4など)の各機能・各処理をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリー等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターを、携帯端末1および管理サーバー4の各構成要素として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれる。」

(2)甲1発明
上記(1)の記載より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(甲1発明)
顧客が操作する携帯端末1と、店員が操作する専用端末2と、セルフレジを行うためのセルフレジ端末5ともにセルフショッピングシステムを構成する管理サーバー4(【0037】)であって、
管理サーバー4は、
各精算処理について、会員IDと、精算処理IDと、購入対象となる全ての商品コードと、ソート明細情報と、セルフレジ承認結果と、撮像データと、店員照合結果と、を紐付けて記憶する精算情報DB44(【0045】)と、
携帯端末1(精算情報送信部102)から送信された商品コード(精算情報)を受信する精算情報受信部404(【0057】)と、
商品DB42を参照し、精算情報に含まれる各商品の価格および不正レベルに基づいて、ソート明細情報を生成して清算情報DBに記録するソート明細情報生成部405(【0058】)と、ここで、ソート明細情報とは、携帯端末1から送信された精算情報(購入対象となる全ての商品コードが含まれた情報)に基づいて、商品DB42を参照し、各商品名を価格および不正レベルに応じてソートした情報であり(【0045】)、
専用端末2により指定された精算処理IDに対応するソート明細情報を、精算情報DB44から読み出し、精算処理IDを指定した専用端末2に送信するソート明細情報出力部406(【0058】)と、
携帯端末1から受信した精算情報に基づき、「携帯端末1から撮像データが送信されていること」、且つ「セルフレジ端末5から「整合性OK」を示す判別結果が送信されていること」、且つ「専用端末2から「店員照合OK」を示す照合結果が送信されていること」、の3つの条件から、予め設定した条件を満たした場合のみ精算処理を行う精算処理部407(【0059】)と、
を備え、
携帯端末1は、会員IDを含むログイン情報の入力によりセルフスキャン用アプリケーション41の利用が許可され(【0024】、【0046】、【0063】)、セルフスキャン用アプリケーション41によって、購入対象となる商品の商品バーコードを読み取り、商品コードを取得し、商品コードをキーとして、商品DB42から商品名および商品価格を含む商品情報を取得し、取得した全ての商品情報を含む精算情報を、管理サーバー4に送信する機能(【0046】〜【0048】)と、商品コードの取得順に、商品名およびその価格を列記した会計明細情報(いわゆる電子レシート)を生成し、生成された会計明細情報とともに、精算処理を識別する精算処理IDを、取引バーコードBとしてをタッチパネル15上に表示する機能(【0046】、【0050】、【0051】、【0067】)を実現し、
専用端末2は、受信したソート明細書情報を表示し、店員の操作に基づいて、店員がソート明細書情報と、買い物カゴ内の購入商品とを目視によって比較照合した結果を管理サーバー4に送信し(【0061】、【0062】)、
セルフレジ端末5は、バーコードリーダー6により、携帯端末1のタッチパネル15上に表示された取引バーコードBを読み取ることで精算処理IDを取得し、取得した清算処理IDをキーとして参照した管理サーバー4内の清算情報に基づく購入商品の総重量と、測定したすべての購入商品の総重量との差分を算出し、差分が所定量以下となる場合「整合性OK」と判定して判定結果を管理サーバー4に送信する(【0052】〜【0054】)、
管理サーバー4。

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項5】
2次元コードに含まれるネットワークアドレスによって携帯電話から通信ネットワークを介してアクセス可能な電子レシート管理装置とからなり、
前記電子レシート管理装置は、
商品販売データ処理装置からレシート識別情報を含むレシートデータを受信するレシートデータ受信手段と、
このレシートデータ受信手段により受信した前記レシートデータを蓄積保存するレシートデータ保存手段と、
前記携帯電話のコード読取機能によりレシートの2次元コードから読取られた当該レシート識別情報が前記通信ネットワークを介して受信するレシート識別情報受信手段と、
このレシート識別情報受信手段により受信した当該レシート識別情報により前記レシートデータ保存手段によって保存されているレシートデータの中から当該レシートデータを抽出するレシートデータ抽出手段と、
このレシートデータ抽出手段により抽出した当該レシートデータに基づいて電子レシートのデータを編集する電子レシート編集手段と、
この電子レシート編集手段により編集した当該電子レシートのデータが前記通信ネットワークを介し送信元の携帯電話へ送信する電子レシート送信手段と、を備え、
前記携帯電話は、
2次元コードを読取るコード読取機能と、
このコード読取機能により読取った2次元コードをデコードしネットワークアドレスと当該レシート識別情報によって前記電子レシート管理装置に対してアクセス要求するアクセス要求手段と、
前記電子レシート管理装置から前記アクセス要求に応答する閲覧ウェブページの前記電子レシートを閲覧するブラウザ機能と、
を備えたことを特徴とする電子レシート管理システム。」

「【0016】
図1に示すように、電子レシート管理システム11は、インターネット通信網12上に接続されたPOSシステム13と電子レシート管理ウェブサーバ14とから構成されている。また、携帯電話15がインターネット通信網12上に基地局(不図示)を介して接続可能となっている。」

【0019】
POS端末16は、1商品販売取引における取引明細データの販売点数が予め設定された設定値を超えた場合には、2次元コード21で印字したレシート20(図5参照)を発行するようになっている。
【0020】
レシート20は、2次元コード21が印字されている。この2次元コード21には、インターネット通信網12上の電子レシート管理ウェブサーバ14へアクセスするためのネットワークアドレス(URL)とレシート識別情報であるレシートコードがセットされている。」

「【0032】
レシートコードは、店舗を識別する店コードと、POS端末16を識別する端末番号および取引番号等からなる組み合わせたコードを記憶する。なお、取引番号は、1商品販売取引ごとにCPU31によってインクリメントされる。」

「【0041】
図6は、携帯電話15のディスプレイ506(図8参照)に表示される電子レシート23のイメージである。この電子レシート23は、携帯電話15から電子レシート管理ウェブサーバ14へアクセス要求したレシート識別情報に基づき電子レシート管理ウェブサーバ14から応答された情報である。」

「【0067】
CPU31は、1商品販売取引の商品販売データ処理を実行する毎に、レシートデータM2に格納されているレシートコード、店コード、端末番号、担当者コード、取引番号、商品コード、商品名、単価、販売点数、販売金額、小計金額、税額、合計金額、預かり金額、釣銭額等のレシートデータがLAN18を介して接続されたストアコンピュータ17へ送信する(ステップST18)。
【0068】
このようにして、ストアコンピュータ17の記憶装置に記憶保存されるとともに、インターネット通信網12を通じて電子レシート管理ウェブサーバ14に送信され、レシートデータベース19に蓄積保存されるものとなっている。」

「【0078】
図11は、電子レシート管理ウェブサーバ14のCPU501が実行する処理のステップのフローチャートである。すなわち、CPU101は、携帯電話15から通信ネットワークとしてのインターネット通信網12を介してアクセス要求信号を受信すると(ステップST501のYES)、CPU101は、携帯電話15からインターネット通信網12を介して発信されたアクセス要求信号に組み込まれている電子レシート23のレシートコードを取得する(ステップST502)。
【0079】
CPU101は、携帯電話15から受信したレシートコードでレシートデータベース19から当該レシートデータを抽出する(ステップST503)。【0080】
CPU101は、レシートデータベース19に保存されているレシートデータから抽出された当該レシートデータを携帯電話15で閲覧可能な閲覧ウェブページの電子レシート23に編集する(ステップST504)。
【0081】
そして、CPU101は、編集された電子レシート23のイメージを送信元の携帯電話15へインターネット通信網12を介して送信し応答処理を行うようになっている(ステップST505)。CPU101は、応答処理を行い携帯電話15からの電子レシート23のアクセス要求を終了することになる。」

「【0083】
携帯電話15のCPU501は、電子レシート管理ウェブサーバ14から電子レシート23の閲覧ウェブページを受信する(ステップST105)。
【0084】
CPU501は、受信した閲覧ウェブページの電子レシート23のイメージがディスプレイ506に表示させる(ステップST106)。
【0085】
携帯電話15のディスプレイ506には、図6に示すように、取引情報データのレシートコード、店コード、端末番号、担当者コード、取引番号と、登録商品明細データの商品名、単価、販売点数と、決済明細データの小計金額、合計金額、預り金額、釣銭額等の1商品販売取引のレシートデータが表示される。」

「【0094】
また、本実施の形態では、レシート識別情報としてのレシートコードを、店コード、端末番号、取引番号の各データとしたがレシートデータを特定できるものであればこれに限定されないのは言うまでもなく、たとえば、店コード、端末番号、取引番号、担当者コード、取引日時等、他の組み合わせにしてもよい。」



」(【図5】)



」(【図6】)



」(【図11】)

(2)上記(1)の記載からみて、甲2には、
「電子レシート管理ウェブサーバ14は、携帯電話15からアクセス要求信号を受信すると、アクセス要求信号に組み込まれている電子レシート23のレシートコードを取得し、取得したレシートコードに対応したレシートデータをレシートデータベース19から抽出し、当該レシートデータを携帯電話15で閲覧可能な閲覧ウェブページの電子レシート23に編集し、編集した電子レシート23のイメージを送信元の携帯電話15に送信すること、及び、レシートコードは、店舗を識別する店コードと、POS端末16を識別する端末番号および取引番号等からなる組み合わせたコードであること。」(以下「甲2記載事項」という。)
が記載されている。

3 甲第3号証について
(1)甲第3号証(以下「甲3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、訳文は、特表2014−520301号公報に基づく。
「[0019] Fig. 1 is a flowchart showing a process for making a payment at a POS according to one embodiment. At step 102, the customer, consumer, or user selects items for purchase from a POS, such as a merchant store, location, or site. For example, the customer may place desired items into a basket or cart. In another example, the customer may select desired items electronically or have items retrieved/delivered by a store clerk or employee.
(訳文)図1は、一実施形態による、POSにおいて支払いを行うプロセスを示すフローチャートである。ステップ102において、顧客、消費者、またはユーザは、販売者の店舗、ロケーション、サイトなどのPOSから購入する商品を選択する。例えば、顧客は所望する商品をカゴまたはカートに入れてもよい。別の例では、顧客は所望する商品を電子的に選択する、あるいは、店員または従業員に商品を取り出し/運搬してもらってもよい。」

「[0027] Next, at step 116, the merchant or consumer may send a call or request, such as to a database storing the transaction information, for a status of the transaction payment. The call or request may be sent from the merchant device, the consumer device, or a third party device. The merchant may then be notified on the merchant device, through a return call, such as from the database, that the payment has been completed. In other embodiments, the merchant and/or consumer may be notified of a successful payment directly by the payment provider after the consumer has confirmed the payment in step 114.
(訳文)次に、ステップ116において、販売者または消費者は、取引情報を格納しているデータベースなどに、取引の支払いの状態についてコールまたはリクエストを送ることができる。コールまたはリクエストは、販売者の機器、消費者の機器、またはサードパーティの機器から送ってもよい。そして販売者は、販売者の機器において、データベースからなどの、リターンコールを通して、支払い完了の通知を受けることができる。別の実施形態では、販売者および/または消費者は、ステップ114において消費者が支払いを確定した後、決済プロバイダから直接、支払い成功の通知を受けることもできる。」

「[0028] After the items have been paid for, a digital receipt may be stored, at step 118, for later use or reference. The receipt may be stored on the consumer's device or in the consumer's account with the payment provider, such as in a cloud or on a merchant server or database. Thus, the consumer may be able to retrieve details of the transaction, such as specific items purchased, price, date, and merchant information, either on the user mobile device or through the user account page with the payment provider. Note that one or more of the above steps may be combined, omitted, or performed in a different sequence as desired.
(訳文)商品に対する支払いが済んだ後、ステップ118において、後ほど使用または参照するため、電子レシートを保存することができる。レシートは消費者の機器、または決済プロバイダにおける消費者のアカウント、例えばクラウド、または販売者のサーバまたはデータベースに保存することができる。このようにして、消費者は購入した特定の商品、価格、日付、販売者情報などの取引の詳細を、ユーザのモバイル機器または決済プロバイダのユーザアカウントページ経由で取得することができる。ここで、必要に応じ、以上に述べた1つ以上のステップの組み合わせ、省略、または異なる順序での実行、が可能である。」

(2)上記(1)の記載からみて、甲3には、次の事項(以下、まとめて「甲3記載事項」という。)が記載されている。
・POSにおいて支払いを行うプロセスのステップ116において、消費者は、消費者が支払いを確定した後、決済プロバイダから、支払い成功の通知を受け、商品に対する支払いが済んだ後、ステップ118において、電子レシートをサーバに保存すること。([0019]、[0027]、[0028])
・必要に応じ、1つ以上のステップの異なる順序での実行が可能である。([0028])

4 甲第4号証について
(1)甲第4号証(以下「甲4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0017】
以下、この点を含み、各部の構成について詳細に説明する。初めに、携帯端末8の要部構成を、図2のブロック図を用いて説明する。携帯端末8は、CPU(Central Processing Unit)11、ワークメモリ12、記録部13、非接触ICカードインターフェイス14、非接触ICカードメモリ15、表示部16、入力部17、公衆網接続インターフェイス18及び鳴動部19等で構成されている。」

「【0020】
これらのプログラムP1〜P3は、例えばインターネット5を介して記録部13にダウンロードすることができる。そして、これらのプログラムP1〜P3を記録部13にダウンロードすることによって、買物メモ領域A1と電子レシート保存領域A2とが記録部13に形成される。」

「【0032】
図10は、抽出条件項目が「店名で絞り込み」であったときの絞込み条件設定画面G3の一例である。図示するように、この絞込み条件設定画面G3には、予め設定された店舗名リストL1と、「レシート一覧表示」ボタンB2とが表示されている。リストL1の各店舗名には、チェックボックスが個々に表示されている。ユーザは、買物メモの作成に利用する購入店舗を選択し、その1又は複数の購入店舗に対応したチェックボックスをチェックした後、「レシート一覧表示」ボタンB2を入力(クリック)する。」

「【0036】
ここで、電子レシートのデータ構造について、図12を用いて説明する。図示するように、電子レシート情報40はXML(extensible markup language)形式で作成され、電子レシート保存領域A2に保存される。電子レシート情報40の先頭には、固有のレシートID41が記録されている。続いて、購入店舗に関する情報42として、店舗名、レジID及びレジ担当が記録されている。さらに、購入日付に関する情報43として、取引日時及び取引IDが記録されている。最後に、商取引内容に関する情報44として、購入商品毎の商品名及び購入数量と、購入数量分の価格と、取引金額とが記録されている。なお、電子レシートのデータ構造がこれに限定されないのは言うまでもない。」

「【0038】
すなわち、抽出条件が「すべてのレシート」であった場合には、電子レシート保存領域A2に保存されている全ての電子レシート情報40を表示対象として抽出してワークメモリ12に記憶する。抽出条件が「日付で絞り込み」であった場合には、電子レシート保存領域A2に保存されている全ての電子レシート情報40のうち、絞込み条件設定画面G2で設定された期間内を購入日時とする電子レシート情報40を表示対象として抽出してワークメモリ12に記憶する。抽出条件が「店舗で絞り込み」であった場合には、電子レシート保存領域A2に保存されている全ての電子レシート情報40のうち、絞込み条件設定画面G3で選択された店舗を購入店舗とする電子レシート情報40を表示対象として抽出してワークメモリ12に記憶する。抽出条件が「品目で絞り込み」であった場合には、電子レシート保存領域A2に保存されている全ての電子レシート情報40のうち、絞込み条件設定画面G4で選択された品目を購入品目として含む電子レシート情報40を表示対象として抽出してワークメモリ12に記憶する。」



」(【図10】)



」(【図12】)

(2)上記(1)の記載からみて、甲4には、次の事項(以下、まとめて「甲4記載事項」という。)が記載されている。
・携帯端末8に保存される電子レシート情報40は、店舗名を含むこと。(【0017】、【0020】、【0036】、【図12】)
・○○ストア、◎◎マート、△△書店、××デパートといった店名(企業名)で電子レシートを抽出できること。(【0032】、【0038】、【図10】)

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「顧客」は、本件発明1の「消費者」に相当する。そして、甲1発明の「顧客が操作する携帯端末1」は、「会員IDを含むログイン情報の入力によりセルフスキャン用アプリケーション41の利用が許可され」るから、この「会員ID」は「顧客」を識別するコードといえ、「携帯端末1」は該「会員ID」に対応付けられたものといえるから、甲1発明の「携帯端末1」は、本件発明1の「消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末」といえる。
また、甲1発明の「セルフショッピングシステム」と本件発明1の「電子レシートシステム」とは、「所定のシステム」である点で共通する。
したがって、甲1発明の「顧客が操作する携帯端末1とともにセルフショッピングシステムを構成する管理サーバー4」と本件発明1の「消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末と共に電子レシートシステムを構成するサーバ装置」は、「消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末と共に所定のシステムを構成するサーバ装置」である点で共通する。

イ 甲1発明の「商品コード」は、「携帯端末1」が、「購入対象となる商品の商品バーコードを読み取」って「取得」したものであるから、本件発明1の「前記携帯端末が読み取った商品コード」といえる。また、甲1発明の「商品情報」は、「商品コードをキーとして、商品DB42から」「取得」したものであるから、本件発明1の「商品コードに対応する商品データ」といえる。
また、甲1発明の「ソート明細情報」は、「携帯端末1から送信された精算情報(購入対象となる全ての商品コードが含まれた情報)に基づいて、商品DB42を参照し、各商品名を価格および不正レベルに応じてソートした情報」であって、専用端末2に送信され、専用端末2は、受信したソート明細情報を表示し、店員の操作に基づいて、店員がソート明細情報と、買い物カゴ内の購入商品とを目視によって比較照合した結果を管理サーバー4に送信し、管理サーバー4は、「専用端末2から「店員照合OK」を示す照合結果が送信されていること」を条件の一つとして精算処理がなされる。したがって、甲1発明の「ソート明細情報」と、本件発明1の「決済処理された内容を示す電子レシート情報」とは、「所定の情報」である点で共通するが、本件発明1の「電子レシート情報」が「決済処理された内容を示す」ものであるのに対し、甲1発明の「ソート明細情報」は精算処理がなされる前の情報である点で異なる。
以上より、甲1発明の「各精算処理について、会員IDと、精算処理IDと、購入対象となる全ての商品コードと、ソート明細情報と、セルフレジ承認結果と、撮像データと、店員照合結果と、を紐付けて記憶する精算情報DB44」と、本件発明1の「前記携帯端末が読み取った商品コードに対応する商品データに基づいて決済処理された内容を示す電子レシート情報と、前記会員コードと、を対応付けて記憶する記憶部」は、「前記携帯端末が読み取った商品コードに対応する商品データに基づく所定の情報と、前記会員コードと、を対応付けて記憶する記憶部」である点で共通する。

ウ 甲1発明は、本件発明1の「前記携帯端末から、電子レシート情報の照会を受けた場合、当該照会があった携帯端末に対して、当該携帯端末に対応付けられた会員コードに対応付けて前記記憶部に記憶された電子レシート情報を閲覧可能に送信する送信手段」は備えていない。

上記ア〜ウより、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
消費者を識別する会員コードが対応付けられた携帯端末と共に所定のシステムを構成するサーバ装置であって、
前記サーバ装置は、
前記携帯端末が読み取った商品コードに対応する商品データに基づく所定の情報と、前記会員コードと、を対応付けて記憶する記憶部を備える、
サーバ装置。

(相違点1)
「所定のシステム」について、本件発明1は、「電子レシートシステム」であるのに対し、甲1発明は、「セルフショッピングシステム」である点。

(相違点2)
記憶部に記憶する「所定の情報」について、本件発明1は、「決済処理された内容を示す電子レシート情報」であるのに対し、甲1発明は、清算処理がなされる前の「ソート明細情報」である点。

(相違点3)
本件発明1は、「前記携帯端末から、電子レシート情報の照会を受けた場合、当該照会があった携帯端末に対して、当該携帯端末に対応付けられた会員コードに対応付けて前記記憶部に記憶された電子レシート情報を閲覧可能に送信する送信手段」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような「送信手段」を備えていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2及び相違点3について検討する。
ア 相違点2について
相違点2は、本件発明1の「記憶部」が、「決済処理された内容を示す電子レシート情報」を記憶するものである一方、甲1発明の「清算情報DB」が、精算処理がなされる前の「ソート明細情報」を記憶するものである点で相違するものである。
ここで、甲1発明は、「セルフショッピングシステムにおける顧客の操作ミスや不正行為を効率的に発見し、店舗の損害額を抑える」(甲1【0006】)という課題を解決するための発明であって、「ソート明細情報」は、精算処理の前に管理サーバー4から、専用端末2に送信され、専用端末2に表示することで、店員がソート明細情報と、買い物カゴ内の購入商品とを目視によって比較照合することに用いられ、これにより、上記課題を解決するものであるから、精算処理がなされる前の情報を、本件発明1のように「決済処理された内容を示す」ものとすることには、阻害要因があり、甲1発明に基づいて相違点2に係る本件発明の構成を導出することはできない。

イ 相違点3について
甲2には、上記第4の2(2)のとおり、「電子レシート管理ウェブサーバ14は、携帯電話15からアクセス要求信号を受信すると、アクセス要求信号に組み込まれている電子レシート23のレシートコードを取得し、取得したレシートコードに対応したレシートデータをレシートデータベース19から抽出し、当該レシートデータを携帯電話15で閲覧可能な閲覧ウェブページの電子レシート23に編集し、編集した電子レシート23のイメージを送信元の携帯電話15に送信すること、及び、レシートコードは、店舗を識別する店コードと、POS端末16を識別する端末番号および取引番号等からなる組み合わせたコードであること。」(甲2記載事項)が記載されている。
ここで、甲1発明の「携帯端末1」は「商品コードの取得順に、商品名およびその価格を列記した会計明細情報(いわゆる電子レシート)を生成し、生成された会計明細情報をタッチパネル15上に表示する機能」を備えるところ、会計明細情報(いわゆる電子レシート)とともに取引バーコードBが表示され、セルフレジ端末5が、バーコードリーダー6により、取引バーコードBを読み取ることで精算処理を識別する精算処理IDを取得し、取得した清算処理IDをキーとして参照した管理サーバー4内の清算情報に基づく購入商品の総重量と、測定したすべての購入商品の総重量との差分を算出し、差分が所定量以下となる場合「整合性OK」と判定して判定結果を管理サーバー4に送信し、管理サーバー4は、「セルフレジ端末5から「整合性OK」を示す判別結果が送信されていること」を条件の一つとして精算処理がなされるから、「ソート明細情報」と同様に「会計明細情報(いわゆる電子レシート)」は、精算処理の前に顧客に対して表示されるものであり、精算処理の後も会計明細情報(いわゆる電子レシート)の内容は変わらないから、顧客が精算処理の後に照会する必要はない。したがって、甲1発明に甲2記載事項を適用する動機付けがない。
さらに、甲1発明の「ソート明細情報」は、上記アのとおり、店員が購入商品と清算情報とを照合するために管理サーバー4から専用端末2に送信されるものであって、顧客が操作する携帯端末1に、閲覧可能に送信することは想定されていない。
また、甲2には、「携帯端末に対応付けられた会員コードに対応付けて前記記憶部に記憶された電子レシート情報を閲覧可能に送信する」ことは記載されておらず、この点は、甲3及び甲4にも記載がなく、さらに自明なものでもない。
したがって、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲1発明と甲2〜4記載事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(3)小括
したがって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2〜4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、いずれも本件発明1を減縮した発明であり、上記1(1)の相違点2及び相違点3に係る構成を備えるものであるから、本件発明1についての上記1(2)と同じ理由により、甲1発明及び甲2〜4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を「プログラム」の発明として表現したものであり、上記1(1)の相違点2及び相違点3に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、本件発明1についての上記1(2)と同じ理由により、甲1発明をプログラムとして表現した発明及び甲2〜4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、特許6985488号の請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許6985488号の請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-09-28 
出願番号 P2020-206849
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 中野 浩昌
梶尾 誠哉
登録日 2021-11-29 
登録番号 6985488
権利者 東芝テック株式会社
発明の名称 サーバ装置及びプログラム  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ