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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1390264
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-06 
確定日 2022-10-06 
事件の表示 特願2017−7978号「排ガス流量測定ユニット及び排ガス分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月26日出願公開、特開2018−115997号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月19日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 9月28日付け:拒絶理由通知書
同年11月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 4月19日付け:拒絶理由通知書
同年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出
同月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 7月 6日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月17日 :手続補正書(方式)の提出
同年12月 8日 :前置報告書
令和4年 4月25日 :上申書の提出
同年 7月 8日 :面接の実施(面接記録の作成)

第2 令和3年10月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月6日にされた補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の補正内容
令和3年10月6日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項5の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「 【請求項1】
複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットであって、
前記複数の排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられている排ガス流量測定ユニット。
(中略)
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の排ガス流量測定ユニットと、
前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備え、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられている、排ガス分析装置。」

(2) 本件補正後
「 【請求項1】
複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置であって、
前記排ガス流量測定ユニットが、
前記複数の排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ、当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられており、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられており、
前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析装置が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置。」

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1において、本件補正前の請求項5を独立請求項の形式にして記載するとともに、「排ガス流量測定ユニット」の「直管部に設けられ」た「前記流量計及び前記整流機構」が、「当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられて」いることを限定したものである。
また、本件補正は、請求項1において、本件補正前の請求項5の「排ガス分析装置」が「前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析装置が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する」ものであることを限定したものである。
そして、本件補正前の請求項5に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)において特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献等
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特表2002−516981号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。
「 【0023】
図1は、車両のテール・パイプ4に対して取り付けられるように成した流量計及びガス・サンプリング・モジュール10と、汚染物質濃度を測定するためのガス分析器30とを包含するものとして、その全システムを示している。図1は、当該テール・パイプ4、マフラー6及び触媒コンバータ7を包含するものとして、その車両排気システムをも示している。当該流量計及びガス・サンプリング・モジュール10及び当該ガス分析器30からの出力は、排気物コンピュータ40によって受信される。排気物コンピュータ40は、キーボード41又はその他のユーザー入力手段からの信号をも受信する。更に、走査器具70は、エンジン・コンピュータ20の搭載ポート又はその他のポート21に対して接続し、直列出力を有し、当該エンジン・コンピュータ20からのデータストリームを解釈し、当該排気物コンピュータ40に対して信号を出力するものである。」
「 【0026】
【流量計モジュール10】
当該モジュール式排気ガス流量計10の設計が、図2に示されている。当該モジュール式の設計は、種々の車両の間における容易な積換えを許容する。直管部分11は、1台の車両からもう1台に対して容易に積換え可能である単一のアセンブリの中にすべてが位置するようにして、整流器8(多数の平行翼板)、流量検出要素13、圧力検出器14、熱電対15、及び端部閉鎖式排気ガス・サンプル管12のためのハウジングとして機能する。直管部分11は、以下で説明されるように、当該流量検出要素13の上流及び下流の必要な直管走路部分を設けるためのものとしても機能する。
【0027】
当該好適な流量検出要素13は、ドーヴァー・インダストリーズ社(Dover Industries)の子会社であるコロラド州ボールダーのディートリッヒ・スタンダード社(Dieterich Standard of Boulder, Colorado)によって製造され、登録商標アニュバー・ダイヤモンド(ANNUBAR DIAMOND)の下において市販されているものであり、差圧形式のものである。当該流量検出要素13は、当該排気ガス・ストリームの中において、当該直管部分11の軸に対して垂直に装着されるプローブ131を包含する。当該プローブ131の廻りを流れる当該排気ガスは、当該プローブ131の上流側と下流側の間において差圧を生じさせることになる。当該差圧の大きさが、当該直管部分11を介して流れる当該排気ガスの流量を表示するのである。
【0028】
【流量検出要素】
図3において更に詳細に示されたように、当該アニュバー流量検出要素13の当該プローブ131は、高圧(上流)の長手方向流路131cと、低圧(下流)の長手方向流路131dとを有する。当該プローブ131は、ダイヤモンド形状の断面を有するものであり、上流に面するエッジ131aと下流に面するエッジ131bとを提示するようにして、直管部分11の中において方向付けされる。当該上流に面するエッジ131aは、その長さに沿って離間配置され、当該排気ガス・ストリームと当該高圧流路131cの間における流体連絡を提供するように成した、多数の開口131eを有する。同様にして、当該下流に面するエッジ131bは、その長さに沿って離間配置され、当該排気ガス・ストリームと当該低圧流路131dの間における流体連絡を提供するように成した、多数の開口131fを有する。131e及び131fの各開口の当該離間配置は、プローブ131の各端部ではその中心部よりも接近している。続いて、131c及び131dの各流路は、当該上流及び下流の圧力を、当該アニュバー流量検出要素13の当該ヘッド132の中における各チャンバ132A及び132Bに対して連絡させ、更には、そこから各ライン134,135を介して電子機器ユニット50の中に収容された単一の差圧トランスデューサ501に対して連絡させるのである。当該圧力トランスデューサ501は、0−10インチのH2O差圧トランスデューサである、PX164−010D5Vである。133では、本質的に、当該プローブ131を捩じ込み可能に受け入れて支持すべく管部分11に対して溶接されるネジ付きのスチール・ニップル即ちラグであるように成した、「溶接Oレット」が示されている。当該プローブは、それぞれに当該プローブ位置における真っ直ぐな流れを保証するに足る十分な長さのものであるように成した、直管長さ部分「A」の下流及び第2の直管長さ部分「B」の上流に配置される。例えば、3.5インチ又は5インチの直径(外径)を有する管部分11の場合、「A」は、好ましくは最小限34インチのものであり、「B」は、好ましくは最小限30インチのものである。3.5インチ以下の外径を有するパイプ又はチューブは、更に短めの最小寸法の「A」及び「B」を有することになる。例えば、2インチの外径のパイプは、最小限17インチの長さ部分「A」と、最小限12インチの長さ部分「B」とを有することになるのである。」
「 【0032】
【ガス分析器】
当該ガス分析器30は、サン/スナップ・オン社(Sun/Snap-on)によって市販されているモデルMT−3505である。それは、当該排気ガス・サンプルのHC、CO、CO2、O2及びNOの濃度だけでなく、エンジンRPM、当該分析器熱電対によって検出される温度、及び当該測定された排気ガス成分に基づいて計算される当該空気燃料比率をも分析して表示するものである。グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)(図10)において示される当該ガス濃度は、常に、実分析器ディスプレイにおいて示されるものと全く同じであることになる。当該サンプル・プローブにおける当該排気物サンプルの出現と当該分析器による当該濃度測定の間にサンプル搬送の時間遅延が存在するので、当該分析器のバーチャル計器は、秒単位における当該時間遅延のためのユーザー入力を有する。当該時間遅延は、図10において示されたようにして適用される。」
「 【0040】
【排気物質量の計算】
当該流量計モジュール10は、規制される各々の汚染物質の排気物質量が1秒当り及び1マイル毎のベースで計算されることを許容する。グラム数/マイル数(gm/mi)における測定は、当該FTPを使用して獲得される連邦検定試験の結果、及び当該EPA排気物基準に対する直接的な比較を許容する。
【0041】
例えば汚染物質iである汚染物質の時間tにおける排気物は、以下の公式によって計算されることが可能である。
Pi(t)=p1Xi(t)Qs(t)・3600/v(t)
(1)
ここで、Pi(t)は、時間tにおいて生成されるgm/miにおける排気物即ち汚染物質iであり、piは、標準条件における汚染物質iの密度であり、Xi(t)は、測定された汚染物質iの濃度であり、Qs(t)は、時間t(t)における標準条件での排気ガスの体積流量であり、v(t)は、時間tにおけるmphでの道路上の車両速度である。それらの変数のすべては、時間従属的なものである。」
「 【0067】
【スモーク・メータ(オプション)】
光学容量計900(図4)が、当該システムと組合せて使用されることも可能である。当該スモーク・メータ・ヘッド900は、当該排気ガスの不透明度を光学的に検出するものであり、コンピュータ40に伝送するためのものとしてアナログ電圧信号を当該A/Dコンバータ16に対して伝送する。テロニック・バークリー・モデル(Telonic Berkeley Model)300の計器は、当該スモーク・メータ即ち光学密度計900として好適に使用される。」
「 【0071】
【排気ガス接続部及びモジュール・サポート】
図7は、乗用車100の後部に装着される流量計/ガス・サンプリング・プローブ・モジュール10を示している。本発明の当該モジュール10を車両100の当該排気管101に対して接続するための接続手段の1つの具体例は、直管部分11の上流端部に対してクランプ取付けされるスチール管エルボー17と、エルボー17の上流端部及び当該排気管101に対してホース・クランプ91及び92によって接続されるエラストマー・ブーツ90との組合せとして示されている。当該エラストマー・ブーツは、車両の排気管を排気物試験において使用される従来的な(固定式の)試験台に対して接続するために使用される形式のものである高温耐性シリコーンゴム管であることが可能である。絶縁コンジット99は、当該モジュール10から当該ガス分析器30まで達する当該サンプル管を担持するものであり、当該圧力トランスデューサ501,502、熱電対15などから当該A/Dコンバータ16に至り、その後、コンピュータ40にまで至ることになる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図7】


上記【図4】から、「整流器8(多数の平行翼板)」は、「流量検出要素13」の「プローブ131」よりも上流に設けられていることが読み取れる。

(イ) 引用発明の認定
上記(ア)の摘記事項及び認定事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「車両のテール・パイプ4に対して取り付けられるように成した流量計及びガス・サンプリング・モジュール10と、汚染物質濃度を測定するためのガス分析器30とを包含するシステムであって、(【0023】)
当該流量計及びガス・サンプリング・モジュール10及び当該ガス分析器30からの出力は、排気物コンピュータ40によって受信され、(【0023】)
モジュール式排気ガス流量計10の直管部分11は、1台の車両からもう1台に対して容易に積換え可能である単一のアセンブリの中にすべてが位置するようにして、整流器8(多数の平行翼板)、流量検出要素13、圧力検出器14、熱電対15、及び端部閉鎖式排気ガス・サンプル管12のためのハウジングとして機能し、当該流量検出要素13の上流及び下流の必要な直管走路部分を設けるためのものとしても機能するものであり、(【0026】)
当該流量検出要素13は、当該排気ガス・ストリームの中において、当該直管部分11の軸に対して垂直に装着されるプローブ131を包含するものであり、当該プローブ131の廻りを流れる当該排気ガスは、当該プローブ131の上流側と下流側の間において差圧を生じさせることになり、当該差圧の大きさが、当該直管部分11を介して流れる当該排気ガスの流量を表示し、(【0027】)
前記整流器8(多数の平行翼板)は、前記流量検出要素13のプローブ131よりも上流に設けられており、(【図2】)
直管長さ部分「A」は、例えば、3.5インチ又は5インチの直径(外径)を有する管部分11の場合、好ましくは最小限34インチのものであり、例えば、2インチの外径のパイプは、最小限17インチの長さであり、(【0028】)
当該ガス分析器30は、当該排気ガス・サンプルのHC、CO、CO2、O2及びNOの濃度だけでなく、エンジンRPM、当該分析器熱電対によって検出される温度、及び当該測定された排気ガス成分に基づいて計算される当該空気燃料比率をも分析して表示するものであり、(【0032】)
当該流量計モジュール10は、規制される各々の汚染物質の排気物質量が1秒当り及び1マイル毎のベースで計算されることを許容するものであり、(【0040】)
汚染物質iである汚染物質の時間tにおける排気物は、以下の公式によって計算されることが可能であり、
Pi(t)=p1Xi(t)Qs(t)・3600/v(t)
ここで、Pi(t)は、時間tにおいて生成されるgm/miにおける排気物即ち汚染物質iであり、piは、標準条件における汚染物質iの密度であり、Xi(t)は、測定された汚染物質iの濃度であり、Qs(t)は、時間t(t)における標準条件での排気ガスの体積流量であり、v(t)は、時間tにおけるmphでの道路上の車両速度であり、(【0041】)
当該排気ガスの不透明度を光学的に検出するスモーク・メータ・ヘッドが、当該システムと組合せて使用されることも可能であり、(【0067】)
流量計/ガス・サンプリング・プローブ・モジュール10は、乗用車100の後部に装着され、当該モジュール10を車両100の当該排気管101に対して接続するための接続手段は、直管部分11の上流端部に対してクランプ取付けされるスチール管エルボー17と、エルボー17の上流端部及び当該排気管101に対してホース・クランプ91及び92によって接続されるエラストマー・ブーツ90との組合せである、(【0071】)
システム。」

イ 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開平4−27846号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。
(ア) 引用文献2に記載された事項
a 1頁左欄下から3行〜最終行
「本発明は、ディーゼル機関及びガソリン機関の排気ガスのスモーク濃度を測定するスモーク濃度測定装置に関する。」

b 2頁左下欄9行〜同頁右下欄6行
「第1図は本発明に係る微粒子濃度測定装置(以後スモークメータという)の一実施例を示す全体概略図である。第1図において、マフラ後部には円管状の取り付けブロック1が差し込まれており、このブロック1の側面の対向する位置に、地面と平行に貫通孔1a、lbに嵌入する形式の光ファイバセンシング部2、3がそれぞれの側に装着されている。そして、一方の光ファイバセンシング部2よりの光ファイバケーブル201は、発光素子たとえばLED4に接合され、他方の光ファイバセンシング部3の光ファイバケーブル301は、受光素子、例えばフォトトランジスタ5に接合されている。また、光ファイバケーブル201、301の光ファイバセンシング部側の末端は、セラミックスヒータ202、302に嵌入されている。この光ファイバケーブル201、301は側面から外乱光が入射しないよう、図示しない遮光性の被覆で覆われている。」

c 6頁左上欄16行〜同頁右上欄12行
「第15図は取り付けブロック1の車両装着における第3の実施例であり、マフラからテールパイプが2本出ている場合の実施例である。この場合、取り付けブロック1は、Y字形のアダプタ13によってテールパイプを1本にまとめることによって装着可能である。Y字アダプタ13のマフラ側は、内径がテールパイプの外径より最大1mm大きめの円管であり、テールパイプに差し込まれた後にボルト13a及びロックナット13bで四方向からテールパイプを挟み込まれて固定される。Y字アダプタ13の取り付けブロック側は、外径が取り付けブロック1の内径より最大1mm小さめの円管であり、取り付けブロック1に差し込まれた後に、ボルト101a及び、ロックナット101bにて四方向から挟み込まれて固定される。なお、Y字アダプタ13は第1の実施例ないしは第2の実施例に示す手段でバンパに固定しても良い。」

d 第15図




(イ) 引用文献2技術事項
前記(ア)に摘記した事項から、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「排ガスのスモークメータの取り付けブロック1を車両のマフラ後部に差し込む際、マフラからテールパイプが2本出ている場合には、取り付けブロック1は、Y字形のアダプタ13によってテールパイプを1本にまとめることによって装着可能とすること。」

ウ 引用文献3に記載された事項及び周知技術の認定
当審において新たに引用する文献である特開2015−165202号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。
(ア) 引用文献3に記載された事項
「【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の整流装置用多孔板、整流装置および流量計測装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の整流装置を備えた配管構成を説明する斜視図である。
配管構成1は、例えば空間二重曲り管路であり、管路入口10から管路出口15までが円形断面(例えば内径D=100mm)である。管路入口10は図1に示すZ軸の負方向に向けて開口し、管路出口15はY軸の正方向に向けて開口している。
【0018】
配管構成1は、管路入口10と管路出口15との間に、第1エルボ11、第2エルボ12、整流装置13、流量計14を有している。
管路入口10から第1エルボ11の始端までの距離は例えば発達流が得られる助走区間25Dで示すことができる。第1エルボ11の始端はZ軸の負方向に向けて開口し、第1エルボ11の終端はX軸の負方向に向けて開口している。第1エルボ11の終端から第2エルボ12の始端までの距離は例えばDで示すことができる。第2エルボ12の始端はX軸の正方向に向けて開口し、第2エルボ12の終端はY軸の正方向に向けて開口している。なお、第1,2エルボ11,12の曲率半径は、比較的強い旋回流を発生するために、例えば0.62Dに設定されている。
【0019】
整流装置13は、詳細な構造は図2等で説明するが、第2エルボ12の終端から例えば距離2Dの位置に配置されている。整流装置13から管路出口15までは直管で形成されており、流量計14は整流装置13の終端から例えば距離8Dの位置に配置されている。なお、整流装置13の終端から管路出口15までの距離は例えば10Dで示すことができる。」
「【図1】


「【図2】



(イ) 周知技術
前記(ア)に摘記した事項において「流量計14は整流装置13の終端から例えば距離8Dの位置に配置されている」と例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知なものであったと認められる(以下「周知技術」という。)。
[周知技術]
「整流装置から管路出口までは直管で形成された配管構成において、配管の円形断面の内径をDとして、流量計は整流装置の終端からDの所定倍以上の距離の位置に配置されていること。」

(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a(a) 引用発明の「車両のテール・パイプ4」は、本件補正発明の「車両」が有する「排気管」に相当するから、引用発明の「車両のテール・パイプ4に対して取り付けられるように成した流量計及びガス・サンプリング・モジュール10」は、本件補正発明の「排気管を有する車両に搭載され」、「排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニット」に相当する。
(b) 引用発明の「汚染物質濃度を測定するためのガス分析器30」は、本件補正発明の「前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計」に相当する。
(c) 引用発明では、「当該流量計及びガス・サンプリング・モジュール10及び当該ガス分析器30からの出力は、排気物コンピュータ40によって受信され」ており、このような「排気物コンピュータ40」を含む「システム」は、排ガスの分析を行う装置であるといえる。
(d) 上記(a)〜(c)を踏まえると、本件補正発明の「複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置」と、引用発明の「車両のテール・パイプ4に対して取り付けられるように成した流量計及びガス・サンプリング・モジュール10と、汚染物質濃度を測定するためのガス分析器30とを包含するシステム」は、「排気管を有する車両に搭載されて、前記排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置」という点で共通する。

b 引用発明の「乗用車100の後部に装着され」る「流量計/ガス・サンプリング・プローブ・モジュール10」の「直管部分11の上流端部に対してクランプ取付けされるスチール管エルボー17」は、「車両100の当該排気管101に対して接続するための接続手段」であるから、引用発明の「直管部分11」と「スチール管エルボー17」の組み合わせは、本件補正発明の「排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管」に相当する。

c 引用発明の「スチール管エルボー17」は、本件補正発明の「排ガスが流れる曲管部」に相当し、引用発明の「直管部分11」は、本件補正発明の「前記曲管部の下流側に設けられた直管部」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「取付配管」が「排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部」とを備えている点で共通する。

d 引用発明の「当該流量計及びガス・サンプリング・モジュール10」の「流量検出要素13」は、「当該排気ガス・ストリームの中において、当該直管部分11の軸に対して垂直に装着されるプローブ131を包含するものであり、当該プローブ131の廻りを流れる当該排気ガスは、当該プローブ131の上流側と下流側の間において差圧を生じさせることになり、当該差圧の大きさが、当該直管部分11を介して流れる当該排気ガスの流量を表示」するから、本件補正発明の「前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計」に相当する。

e 引用発明の「当該流量計及びガス・サンプリング・モジュール10」の「整流器8(多数の平行翼板)」は、「前記流量検出要素13のプローブ131よりも上流に設けられて」いるから、本件補正発明の「前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構」に相当する。

f 引用発明の「当該モジュール式排気ガス流量計10の直管部分11」は、「整流器8(多数の平行翼板)、流量検出要素13、圧力検出器14、熱電対15、及び端部閉鎖式排気ガス・サンプル管12のためのハウジングとして機能」しているから、「整流器8(多数の平行翼板)」と「流量検出要素13」は、「直管部分11」に設けられたものであるといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ」るという点で共通する。

g 引用発明の「直管部分11」の「端部閉鎖式排気ガス・サンプル管12」は、本件補正発明の「取付配管」に「設けられ」た「前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部」に相当するから、本件補正発明と引用発明は「前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられて」いる点で一致する。

h(a) 引用発明では、「ガス分析器30」は「排気ガス・サンプルのHC、CO、CO2、O2及びNOの濃度」を「分析して表示するもの」であり、「流量計モジュール10」は「規制される各々の汚染物質の排気物質量」を「1秒当り及び1マイル毎のベースで計算」するものである。
(b) ここで、引用発明では、「汚染物質iである汚染物質の時間tにおける排気物は、以下の公式によって計算されることが可能であり、
Pi(t)=p1Xi(t)Qs(t)・3600/v(t)
ここで、Pi(t)は、時間tにおいて生成されるgm/miにおける排気物即ち汚染物質iであり、piは、標準条件における汚染物質iの密度であり、Xi(t)は、測定された汚染物質iの濃度であり、Qs(t)は、時間t(t)における標準条件での排気ガスの体積流量であり、v(t)は、時間tにおけるmphでの道路上の車両速度であり」、流量計モジュール10が測定した排ガスの流量と、ガス分析器30が測定した排気ガス・サンプルの成分濃度とから、所定成分の排出質量を算出しているといえる。
(c) よって、本件補正発明と引用発明は、「前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析装置が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置」という点で一致する。

(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点1及び2において相違する。
a 一致点
「排気管を有する車両に搭載されて、前記排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置であって、
前記排ガス流量測定ユニットが、
前記排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられており、
前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析装置が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置。」

b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明では、「車両」の「排気管」が「複数」あり、「前記取付配管が、前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており」、「前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部を有する」のに対して、引用発明では、「車両のテール・パイプ4」が「複数」ではなく、「車両100の当該排気管101に対して接続するための接続手段」も、「複数の枝管」や、「当該複数の枝管が合流する合流管」を有していない点。

(b) 相違点2
「流量計の上流側に設けられて」いる「整流機構」の「前記流量計からの距離」が、本件補正発明では「4D以上」であるのに対して、引用発明では「4D以上」であると明記されてはいない点で一応相違する。

イ 判断
(ア) 相違点1について
a 引用文献2には、「排ガスのスモークメータの取り付けブロック1を車両のマフラ後部に差し込む際、マフラからテールパイプが2本出ている場合には、取り付けブロック1は、Y字形のアダプタ13によってテールパイプを1本にまとめることによって装着可能とすること」が開示されており(前記引用文献2技術事項を参照)、テールパイプが複数本、車両から出ている場合に、当該複数本を1本にまとめるようなアダプタを介して測定ユニットを装着するようにしている。
b ここで、テールパイプが複数本出ているような車両は、特に例を示すまでもなく本願出願当時広く知られていたものであるから、出願時の技術常識を考慮すれば、引用発明において「テール・パイプ4」が複数本ある車両を想定することは可能である。
c そして、引用発明では「当該排気ガスの不透明度を光学的に検出するスモーク・メータ・ヘッドが、当該システムと組合せて使用されることも可能」であるとしているから、引用文献2技術事項を適用することに困難性はなく、「テール・パイプ4」が複数本ある車両の場合、当該複数本のテールパイプを1本にまとめるような複数の枝管と合流管を備えたアダプタを接続手段(取付配管)とすることは、当業者が容易になし得たことであって、その場合に、引用発明の「スチール管エルボー17」が、合流管の曲管部になることは自明な設計事項にすぎない。

(イ) 相違点2について
a 引用発明では、「直管長さ部分「A」は、例えば、3.5インチ又は5インチの直径(外径)を有する管部分11の場合、好ましくは最小限34インチのものであり、例えば、2インチの外径のパイプは、最小限17インチの長さ」であるから、直管部分11の直径(外径)が3.5インチの場合には、Aの長さは、直径(外径)の少なくとも9倍以上あるといえる。
そうすると、引用発明において、「前記流量検出要素13のプローブ131よりも上流に設けられて」いる「整流器8(多数の平行翼板)」は、直径(外径)の長さを単位としてプローブ131から十分離れた位置にあるように設けられていると考えるのが普通であるから、前記相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。
b 仮に相違点であっても、前記(2)ウ(イ)において周知技術として認定したとおり、「整流装置から管路出口までは直管で形成された配管構成において、配管の円形断面の内径をDとして、流量計は整流装置の終端からDの所定倍以上の距離の位置に配置されていること」は周知技術であるから、引用発明の「整流器8(多数の平行翼板)」と「プローブ131」の距離が、直径(外径)の長さを単位として何倍以上であるかは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないというべきである。

(ウ) 総合評価
前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術から当業者が予測できる程度のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張について
a 審判請求書の主張の要点
請求人は、審判請求書において次の主張をしている。
「(1)各引用発明との相違点について
本願発明と各引用発明とを比較した場合、本願発明は少なくとも以下の相違点A及び相違点Bにおいてその構成が全く相違する。
・相違点A:「合流管が、合流した複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、当該曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
流量計及び整流機構が直管部に設けられている」点
・相違点B:「直管部において、当該直管部の流路径をDとして、整流機構が流量計からの距離が4D以上となるように流量計の上流側に設けられている」点
このような特徴的構成は、各引用文献のいずれにも開示されていない。
(2)各引用文献について
(2−1)引用文献1について
引用文献1には上記した相違点A及びBに係る構成が開示も示唆もされていない。
具体的に説明すると、まず引用文献1には、複数の排気管を有する車両が開示も示唆もされていない。そして引用文献1には、「車両の複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管が合流する合流管」の構成が全く開示されておらず、「合流管が、複数の枝管からの排ガスが合流して流れる曲管部と、その下流側に位置する直管部とを備える」構成も記載されていない。当然ながら、「合流管における、曲管部の下流側に位置する直管部に流量計及び整流機構を設ける構成」は開示も示唆もされていない。故に、引用文献1に相違点Aに係る構成が記載されていないことは明らかである。
さらに引用文献1には、整流機構と流量計と間の距離について一切記載されておらず、当然ながら、「整流機構を、流量計からの距離が4D以上となるようにその上流に設ける構成」については開示も示唆もされていない。故に、引用文献1には相違点Bに係る構成が記載されていないのは明らかである。
(2−2)引用文献2について
引用文献2にも上記した相違点A及びBに係る構成が開示も示唆もされていない。
具体的に説明すると、引用文献2は、図15からも明らかなように、「合流した複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部」の構成が存在せず、当然ながら「曲管部の下流側に設けられた直管部」の構成も存在しない。当然ながら「曲管部の下流側に位置する直管部に流量計及び整流機構を設ける構成」は開示も示唆もされていない。故に、引用文献2には上記相違点Aの構成が開示も示唆もされていないことは明らかである。
また引用文献2には、整流機構と流量計の構成が一切開示されておらず、当然ながら整流機構と流量計との間の距離について一切記載されていない。故に、引用文献2には相違点Bに係る構成が記載されていないのは明らかである。
(3)本願発明の効果
複数の排気管から排出される排ガスの合計流量をまとめて測定する場合、複数の分岐管からの排ガスが合流管内に流入するため、合流管の流路では、合流した排ガスの流速分布の乱れや、螺旋状の流れが発生しやすく、流れの状態が複雑になるという問題が生じる。また合流管内において、各排気管から排出された複数の排ガスがしっかりと混ざり合わず、測定精度が低下するという問題が生じる。
本願発明の排ガス分析装置が備える排ガス流量測定ユニットは、合流管における流量計及び整流機構の上流側に、複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部を備えているので、この曲管部において複数の排ガスの方向を転換させることで渦等をさらに生じさせ、各排ガスの混合を促進することができる。この曲管部によりその下流側では流速分布に乱れが生じるが、曲管部の下流側に位置する直管部に流量計及び整流機構を備えているので、曲管部で流速分布の乱れが生じた排ガスを整流機構により整流し、この整流された排ガスをその状態を維持したまま流量計に流入させることができる。しかも、直管部において整流機構を、流量計からの距離が4D以上となるようにその上流側に設けているので、整流機構による整流効果を十分に発揮させることができる。つまり、整流機構を通過した直後の排ガスには、曲管部において生じた流速分布の乱れが僅かに残っていることがあるが、整流機構と流量計との間の距離を4D以上にして、整流機構から流量計までの距離を十分に取ることで、直管部内を排ガスが進むにつれてその流速分布の乱れが緩和され、流路断面内における圧力差が緩和されるのである。これにより、排ガス流量測定ユニットは、複数の排気管から排出される排ガスをしっかりと混合させ、且つ流速分布の乱れも低減させることにより、その合計流量を精度よく測定することができる。
そしてこのようにして、複数の排気管から排出される排ガスの合計流量を排ガス流量測定ユニットにより精度よく測定することができるため、本願発明の排ガス分析装置は、排ガス流量測定ユニットにより測定した排ガスの合計流量と、排ガス分析計により測定した所定成分の濃度とを用いて、排ガス中の所定成分の排出質量を高精度に得ることができ、例えばRDE試験の信頼性を向上させることができる。
かかる効果は、各引用文献からは得られない格別のものである。」

b 審判請求書の主張の検討
(a) 相違点A、Bについて
請求人の主張する相違点A及び相違点Bは、それぞれ当審において認定した相違点1及び相違点2に概ね対応するものであるところ、前記イ(ア)及び(イ)において説示したとおり、相違点1については、引用発明に引用文献2技術事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものであり、相違点2については、実質的な相違点であるとはいえない。

(b) 発明の効果について
引用文献3の段落【0018】に「第1,2エルボ11,12の曲率半径は、比較的強い旋回流を発生するために、例えば0.62Dに設定されている。」と記載されているように、曲管部(エルボ)において流体の方向を転換させることで渦等をさらに生じさせることは、技術常識であるといえるから、引用発明の「スチール管エルボー17」(本件補正発明の「排ガスが流れる曲管部」に相当)において、複数の排ガスの方向を転換させることで渦等をさらに生じさせ、各排ガスの混合を促進することができることは、当業者にとって自明な効果にすぎない。
また、引用発明では、直管部分11の直径(外径)が3.5インチの場合には、直管部分11の上流からプローブ131までの距離Aの長さは直径(外径)の少なくとも9倍以上あるところ、引用発明の整流器8がプローブ131から直径(外径)の4倍以上離れた位置にあるように設けられていることは自明であるから、整流機構から流量計までの距離を十分に取ることで、直管部内を排ガスが進むにつれてその流速分布の乱れが緩和され、流路断面内における圧力差が緩和されることも、当業者にとって自明な効果にすぎない。

(イ) 上申書の主張について
a 上申書の主張の要点
請求人は、令和4年4月25日に提出した上申書において次の主張をしている。
「2.審査官殿の主張の誤りについて
(1)相違点1の認定の誤りについて
前置報告書において審査官殿は、本願発明と引用文献1に記載の発明(以下、引用発明という)との相違点1を、
「本願発明においては、取付配管が、複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しているのに対して、引用発明においては、取付配管90,17,11,16が、枝管と合流管とを有していない点」
として認定し、当該相違点1に係る構成は引用文献2に記載されていると主張している。しかしながら、審査官殿の当該主張は、当該相違点1に対する誤った認定に基づくものであると思料する。
補正後の本願の請求項1の記載から明らかなように、本願発明は、引用発明との対比において、
「取付配管が、複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
合流管が、合流した複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
流量計及び整流機構が直管部に設けられている点」
において、その構成が大きく相違していると思料する。
つまり本願発明のものは、複数の排気管に接続され枝管が合流する合流管に、“曲管部”と“その下流側の直管部”とをわざわざ設け、下流側の直管部に流量計と整流機構とを設けるようにしているのである。審判請求書にも記載しているように、本願発明では、合流管において敢えて曲管部を設けることで、各排気管から排出された複数の排ガスの混合を促進するようにしているのである。複数の枝管が合流する合流管に曲管部とその下流側の直管部とを設け、下流側の直管部に流量計及び整流機構を設ける構成は、引用文献1及び2のいずれにも記載されていない。
(2)引用文献1にY字形アダプタを採用することはあり得ない
また前置報告書において審査官殿は、「引用文献1に記載された排気ガス流量計モジュール10において、測定対象の車両100が複数の排気管101,4を有する場合に、排気管101,4の後段のエラストマー・ブーツ90に代えて、引用文献2に記載された枝管と合流管とからなる公知のY字形のアダプタを採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである」と主張するが、当該主張は誤りであると思料する。
微粒子濃度測定を目的として単にスモークメータだけを取付配管に設置すればよい引用文献2のものとは異なり、引用文献1のものは、図1、2、4の記載からも分かるように、整流機構8、流量検出要素13、圧力検出器14、熱電対15、ガスサンプル管12(さらにはオプションでスモークメータ900,ガスプローブ801)等の多くの要素を、排気管に接続した取付配管に設置する必要があるものである。そして車両に搭載されて実路上で試験を行うのに用いられる引用文献1のものでは、当然ながら取付配管が車両の後方に飛び出し過ぎるのは道路交通法による制限があり好ましくない。それゆえ引用文献1では、図7のように、排気管から出た直後に取付配管をエルボー17で車幅方向に曲げ、その下流の直管部分11に前記した複数の要素を設けるように構成されている。
そのため、多くの測定要素を取付配管に設定して路上を走行する引用文献1のものにおいては、たとえ車両100が複数の排気管を有していたとしても、当業者であれば、車両の後方に突き出る構成となるY字形アダプタを採用するなどありえず、エルボー17の下流の直管部分11で複数の排気管を合流させるのが常識である。
それゆえ、引用文献1においてY字形アダプタを採用するのは当業者が容易に想到し得たとする審査官殿の認定は誤りであると思料する。」

b 上申書の主張の検討
(a) 合流管の曲管部について
前記(ア)b(b)において検討したとおり、引用発明の「スチール管エルボー17」(本件補正発明の「排ガスが流れる曲管部」に相当)において、複数の排ガスの方向を転換させることで渦等をさらに生じさせ、各排ガスの混合を促進することができることは、当業者にとって自明な効果にすぎない。 また、前記イ(ア)において説示したとおり、引用発明において「テール・パイプ4」が複数本ある車両を想定することは可能であり、その場合には、当該複数本のテールパイプを1本にまとめるような複数の枝管と合流管を備えたアダプタを接続手段(取付配管)とすることは、当業者が容易になし得たことであり、引用発明の「スチール管エルボー17」が、合流管の曲管部になることは自明な設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、複数の排気管に接続され枝管が合流する合流管に、曲管部とその下流側の直管部を設け、下流側の直管部に流量計と整流機構を設けることは、当業者が容易に想到し得たことであり、排気管から排出された複数の排ガスの混合を促進するという効果も、当業者が容易に予測し得たものにすぎない。

(b) Y字形アダプタの採用について
車両に搭載されて実路上で試験を行う場合、取付配管が車両の後方に飛び出し過ぎると、道路交通法等による制限に抵触し好ましくないのであれば、かかる制限に抵触しないように複数本のテールパイプを1本にまとめるアダプタ(取付配管)の全体形状に設計変更を加えるのは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

(ウ) 補正案について
a 補正案1〜3の内容
令和4年7月8日に実施された面接において、請求人は以下に示す請求項1の補正案1〜3を提示した(補正案1〜3は面接記録に添付した)。
<補正案1>
【請求項1】
複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置であって、
前記排ガス流量測定ユニットが、
前記複数の排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
前記複数の枝管が、前記複数の排気管のそれぞれから前記車両の前後方向に沿って伸びた後、前記車両の幅方向に曲がってから当該幅方向に伸びて合流するよう構成されており、
前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ、当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられており、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられており、
前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析計が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置。

<補正案2>
【請求項1】
左右に分けて配置された複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置であって、
前記排ガス流量測定ユニットが、
前記複数の排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、前記車両の右側と左側に分けて配置された前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
前記複数の枝管が、前記複数の排気管のそれぞれから前記車両の前後方向に沿って伸びた後、前記車両の幅方向に曲がり、当該幅方向に沿って互いに相寄るように伸びてから合流するよう構成されており、
前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ、当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられており、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられており、
前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析計が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置。

<補正案3>
【請求項1】
左右に分けて配置された複数の排気管を有する車両に搭載されて、前記複数の排気管から排出される排ガスの流量を測定する排ガス流量測定ユニットと、前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備える排ガス分析装置であって、
前記排ガス流量測定ユニットが、
前記複数の排気管に接続されるとともに、前記排ガスが流れる流路を形成する取付配管と、
前記流路に設けられて、前記流路を流れる前記排ガスの流量を測定する流量計と、
前記流路において前記流量計の上流側に設けられた整流機構とを備え、
前記取付配管が、前記幅方向において前記車両の中心を挟んで右側と左側に分けて配置された前記複数の排気管にそれぞれ接続される複数の枝管と、当該複数の枝管が合流する合流管とを有しており、
前記複数の枝管が、前記複数の排気管のそれぞれから前記車両の前後方向に沿って伸びた後、前記車両の幅方向に曲がり、当該幅方向に沿って互いに相寄るように真っすぐ伸びてから合流するよう構成されており、
前記合流管が、合流した前記複数の枝管からの排ガスが流れる曲管部と、前記曲管部の下流側に設けられた前記幅方向に沿って伸びる直管部とを備えており、
前記流量計及び前記整流機構が前記直管部に設けられ、当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられており、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられており、
前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析計が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する排ガス分析装置。

b 補正案の検討
(a) 上記補正案1〜3については、面接記録に記載されているとおり、合議体は、原査定の拒絶の理由を解消するものではないとの見解を請求人に伝えた。すなわち、これらの補正案は、要するに、本件補正発明において、車両の複数の排気管の具体的な配置に対応した取付配管(枝管及び合流管)の全体形状を限定したものにすぎず、引用発明に引用文献2技術事項を適用する際に、取付配管が車両の後方に飛び出しすぎることのないように(道路交通法等による制限に抵触しないという自明の課題を解決し得るように)取付配管の全体形状に設計変更を加えたものにすぎない。
(b) 上記補正案1〜3に関し、請求人は、令和4年7月28日に上申書を提出し、「少なくとも出願人は、本発明の出願時点において、車両が複数の排気管を有する場合に上記した構成のようにして複数の排気管からの排ガスを合流させるようにした技術や文献を見たことがなく、出願時の技術常識を考慮すると上記構成を取ることは設計的事項ではないと思料する。」と主張している。
しかしながら、上記(a)において説示したとおり、補正案1の「前記複数の枝管が、前記複数の排気管のそれぞれから前記車両の前後方向に沿って伸びた後、前記車両の幅方向に曲がってから当該幅方向に伸びて合流するように構成された構成されており」という構成や、補正案2及び補正案3の「前記複数の枝管が、前記複数の排気管のそれぞれから前記車両の前後方向に沿って伸びた後、前記車両の幅方向に曲がり、当該幅方向に沿って互いに相寄るように(真っすぐ)伸びてから合流するように構成されており」という構成は、取付配管が車両の後方に飛び出しすぎることのないように(道路交通法等による制限に抵触しないという自明の課題を解決し得るように)取付配管の全体形状に設計変更を加えたものにすぎないから、請求人の上記主張を採用することはできない。
なお、請求人の上申書における上記主張は、補正案1〜3についてのものであって、本件補正発明についてのものではないから、本件補正発明が、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるという結論に影響を与えるものではない。

エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、上記第2のとおり却下したので、本願の請求項1〜6に係る発明は、令和3年6月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1: 特表2002−516981号公報
引用文献2: 特開平4−27846号公報

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
上記引用文献2には、第2の3(2)イ(イ)において認定したとおりの技術事項が記載されていると認められる。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「排ガス流量測定ユニット」の「直管部に設けられ」た「前記流量計及び前記整流機構」が、「当該直管部において、当該直管部の流路径をDとして、前記整流機構が前記流量計からの距離が4D以上となるように前記流量計の上流側に設けられて」いるという限定、「排ガス分析装置」が「前記排ガス流量測定ユニットが測定した前記排ガスの流量と、前記排ガス分析装置が測定した前記所定成分の濃度とから、前記所定成分の排出質量を算出する」ものであるという限定を省いたものである。
そうすると、前記第2の3(3)ア(ア)と同様の検討により、本願発明と引用発明の相違点は、前記相違点1と実質的に同じものである。
そして、相違点1に係る構成は、前記第2の3(3)イ(ア)において説示したとおり、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-07-29 
結審通知日 2022-08-02 
審決日 2022-08-22 
出願番号 P2017-007978
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱野 隆
濱本 禎広
発明の名称 排ガス流量測定ユニット及び排ガス分析装置  
代理人 齊藤 真大  
代理人 西村 竜平  
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