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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G08G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1390308
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-09 
確定日 2022-10-11 
事件の表示 特願2021−525730「経路生成装置、経路生成方法及び経路生成プログラム」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)12月29日を国際出願日とする出願であって、令和3年7月8日付け(発送日:同年7月20日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月13日付け(発送日:同年8月24日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、これに対し、同年12月3日付けで特許法第164条第3項の報告(以下、「前置報告」という。)がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。
「この出願については、令和3年7月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1、7−8
・引用文献等 1−6
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術(例えば引用文献2−6参照)より当業者が容易に想到し得るものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
同様に、請求項7−8に係る発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術(例えば引用文献2−6参照)より当業者が容易に想到し得るものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 2−4、6
・引用文献等 1−7
請求項2−4、6に係る発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術(例えば引用文献2−7参照)より当業者が容易に想到し得るものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 5
・引用文献等 1−9
請求項5に係る発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術(例えば引用文献2−9参照)より当業者が容易に想到し得るものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2020−131897号公報
2.国際公開第2019/064490号(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2016/024318号(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2017/072878号(周知技術を示す文献)
5.特開平10−62162号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2018−200267号公報(周知技術を示す文献)
7.国際公開第2020/235385号(周知技術を示す文献)
8.米国特許出願公開第2017/0300059号明細書(周知技術を示す文献)
9.米国特許出願公開第2017/0192423号明細書(周知技術を示す文献)」

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年11月9日の手続補正により、限定的減縮を目的として補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりものであるところ、本願発明1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 歩道を走行する移動体の移動経路を生成する経路生成装置であって、
前記移動体が存在する位置から目的地までの経路を構成する道路の画像データであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記画像データに基づき、前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する通行可否判定部と、
前記通行可否判定部によって通行できると判定された道路によって構成された経路を前記移動体に通知する経路通知部と
を備え、
前記通行可否判定部は、前記画像データに加えて、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の図面データに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する経路生成装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献1(特開2020−131897号公報)には、「車両の走行経路表示方法及び車両の走行経路表示装置」に関して、図面(図1ないし図7を参照。)とともに以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【0001】
本発明は、自律走行制御により走行経路を走行する車両の走行経路表示方法、及び走行経路表示装置に関するものである。」

イ 「【0010】
本実施形態に係る無人運転システム1は、自律走行制御機能を備え、自律走行制御により、又は外部からの遠隔操作に基づく自律走行制御により走行する車両V0を、タクシーとして運用するシステムである。本実施形態に係る無人運転システム1は、複数台の車両V0と、複数台の遠隔操作装置3と、車両V0と遠隔操作装置3とを相互に通信可能に接続するネットワークNW1と、を備える。
【0011】
遠隔操作装置3は、車両V0が自律走行制御による走行を行えなくなった場合に、車両V0を遠隔操作する。複数台の遠隔操作装置3は、通信設備を備えた車両管理センタ4に設置されている。車両管理センタ4には、遠隔操作装置3とともにLAN等の構内ネットワークNW2に接続された管理サーバ5が設置されている。管理サーバ5は、ネットワークNW1を通じて複数台の車両V0と接続し、構内ネットワークNW2を通じて複数台の遠隔操作装置3と接続して、複数台の車両V0及び遠隔操作装置3を管理する。
【0012】
ネットワークNW1には、例えば、インターネット等が用いられる。また、各車両V0のネットワークNW1への接続には、広いエリアで普及し、かつ、比較的高速な通信速度が得られる携帯電話通信網等が利用される。なお、無人運転システム1が稼働される所定エリア内に無線通信用の複数のアクセスポイントを設置し、無人運転システム専用の無線通信網を形成して、この無線通信網により車両V0と遠隔操作装置3とを接続してもよい。」

ウ 「【0017】
図2は、車両V0と遠隔操作装置3の機能的な構成を示すブロック図である。なお、図2では、図面の煩雑化を防ぐため、ネットワークNW1の図示は省略している。本実施形態に係る車両V0は、通信部21と、センサ22と、障害物認識部23と、経路設定部24と、走行制御部25と、車両情報取得部26と、パターン生成部27と、パターン表示部28と、を備える。
【0018】
車両V0を構成する各部のうち、障害物認識部23と、経路設定部24と、走行制御部25と、車両情報取得部26と、パターン生成部27とは、一又は複数のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされたソフトウェアにより構成されている。コンピュータは、上述した各部を機能させるためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。なお、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。また、各部を構成するコンピュータは、通信部21と、センサ22と、パターン表示部28とに対し、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0019】
通信部21は、ネットワークNW1を介して車両管理センタ4と通信を行う。具体的には、通信部21は、管理サーバ5から運行情報として送信された乗客Pの顧客情報と、乗車開始時刻と、目的地と、走行順路とを受信する。また、通信部21は、所定時間毎又は所定の走行距離毎に、車両V0の現在位置情報(例えば、緯度、経度等)と、車両V0の前面が向いている方向(以下、車両方向情報ともいう)と、速度情報とを管理サーバ5に送信する。管理サーバ5は、受信した現在位置情報、車両方向情報及び速度情報に基づいて、各車両V0の走行状況を管理する。さらに、通信部21は、車両V0が自律走行制御による走行を行えなくなった場合に、管理サーバ5に支援要求信号を送信する。また、通信部21は、車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3が決定した場合、その遠隔操作装置3に、車両V0の遠隔操作を行うために必要な各種車両情報を送信する。
【0020】
センサ22は、車両V0の周囲の状況を検出する。センサ22は、例えば、カメラと、障害物センサとを備える。カメラは、CCDやCMOS等のイメージセンサにより撮像を行って画像データを生成する撮像装置である。センサ22を構成するカメラは、複数のカメラからなり、例えば、車両V0の上面図である図3に示すように、車両V0の前方を撮像する前方カメラ221Fと、車両V0の後方を撮像する後方カメラ221Bと、車両V0の左右の側方をそれぞれ撮像する左側カメラ221L及び右側カメラ221Rと、車両V0の左右の後方をそれぞれ撮像する左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBと、を含む。
【0021】
センサ22を構成する障害物センサは、車両V0の周囲の障害物を検出する。障害物センサには、レーダ装置や、ライダー装置等の各種センサが、単独であるいは適宜組み合わせて利用される。図3に示すように、レーダ装置222aは、例えば、車両V0の前部に設置されており、ミリ波や超音波を車両V0の前方に照射して反射波を受信することにより、車両V0の周囲に存在する障害物(物体)までの距離や相対速度等を検出する。ライダー装置222b、222cは、例えば、車両V0の前部及び後部に設置されており、レーザ光を車両V0の周囲に照射して反射光を受光し、受光した反射光を三次元にマッピングすることにより、車両V0の周囲に存在する物体までの距離や、物体の形状等を検出する。
【0022】
障害物認識部23は、センサ22のカメラで撮像された画像データと、障害物センサの検出結果である障害物センサ情報とを解析して、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する。障害物認識部23により認識される物体としては、例えば、歩行者、自転車、バイク及び自動車等の移動物体や、停止車両、工事現場、路上落下物及び路上建造物等の静止物体等である。路上建造物としては、ガードレール、路肩、中央分離帯及び信号機等が含まれる。なお、前方カメラ221Fの画像データは、センターラインや車道外側線等のレーンマークや、停止線、横断歩道等の路面標示の検出にも用いられる。
【0023】
経路設定部24は、車両管理センタ4から受信した走行順路に沿って車両V0が実際に走行する経路である走行経路を設定する。経路設定部24は、詳しくは図示しないが、位置検出部と、地図データベースとを備える。」

エ 「【0026】
経路設定部24は、位置検出部により生成された車両V0の現在位置情報と、地図データベースと、障害物認識部23による障害物の認識結果とに基づいて、車両V0が走行する走行順路の道路の幅を特定し、この道路の幅の中央に車両V0の走行経路を設定することにより、車両V0が走行順路の車線からはみ出さずに走行可能な走行経路を設定する。経路設定部24は、本発明の経路設定部に相当する。
【0027】
走行制御部25は、車両V0の自律走行制御機能を司る機能部であり、車両V0の各部を制御して、車両V0を経路設定部24により設定された走行経路に沿って走行させる。より具体的には、走行制御部25は、例えば、エンジンやモータ等の駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御して車両V0の速度を調節するとともに、車両V0の前後方向に沿って設定された車両中心線VL(図3参照)が走行経路上を移動するように操舵機構を制御する。また、走行制御部25は、車両V0が走行経路に沿って右折又は左折をする場合には、駆動機構、変速機構及び制動機構を制御して速度を調節するとともに、操舵機構及び方向指示器等を制御して、車両V0を右折又は左折させる。」

オ 「【0052】
自律走行制御により走行中の車両V0は、センサ22の前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより、車両V0の周囲を撮像する。また、自律走行中の車両V0は、センサ22のレーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより、車両V0の周囲の物体を検出する。車両V0の障害物認識部23は、センサ22の各カメラで撮像された画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cの検出結果である障害物センサ情報とを解析して、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する(ステップS6)。
【0053】
車両V0の進行方向に、停車車両や工事現場等の路上の障害物が存在し、車両V0が車線からはみ出さずに自律走行制御が行えない場合には(ステップS7でNO)、走行制御部25は、自律走行制御により車両V0を一旦停車させ、管理サーバ5に支援要求信号を送信する(ステップS8)。車両V0から支援要求信号を受信した管理サーバ5は、複数台の遠隔操作装置3のうちから車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3を決定し、決定した遠隔操作装置3に支援要請を行い、支援要請を受け付けた遠隔操作装置3と車両V0とを通信可能に接続する(ステップS9)。
【0054】
車両V0は、支援要請を受け付けた遠隔操作装置3に対し、車両情報取得部26により取得した画像データ等の各種走行情報を送信する(ステップS10)。この各種走行情報とは、前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより撮像された画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより検出された障害物に関する障害物センサ情報と、車両V0の現在位置情報と、車両方向情報等である。
【0055】
遠隔操作装置3は、車両V0から受信した画像データ等の各種データに基づいて、車両V0が障害物を回避して走行するための回避経路を設定する(ステップS11)。具体的には、遠隔操作装置3の表示制御部34は、表示部33に対し、車両V0及び障害物センサ情報FIが衛星画像上に表示された俯瞰画面PVと、左側カメラ221Lにより撮像された左側画面LVと、前方カメラ221Fにより撮像された前方画面FVと、右側カメラ221Rにより撮像された右側画面RVと、左後方カメラ221LBにより撮像された左後方画面LBVと、後方カメラ221Bにより撮像された後方画面BVと、右後方カメラ221RBにより撮像された右後方画面RBVと、を表示する。
【0056】
遠隔操作装置3のオペレータは、表示部33に表示された俯瞰画面PVと、左側画面LVと、前方画面FVと、右側画面RVと、左後方画面LBVと、後方画面BVと、右後方画面RBVと、に基づいて、車両V0の状況を把握し、入力部32を操作して、俯瞰画面PV上で障害物を回避するように複数の経路ポイントPtを設定する。遠隔操作装置3の回避経路設定部35は、設定された複数の経路ポイントPtを接続するようにして回避経路Raを生成する。俯瞰画面PVには、表示制御部34により、設定された複数の経路ポイントPtと、生成された回避経路Raと、回避経路Raに沿って走行する車両V0の移動軌跡Mtとが表示され、オペレータによって確認される。設定された回避経路Raは、通信部31によって車両V0に送信される(ステップS12)。
【0057】
車両V0のパターン生成部27は、遠隔操作装置3から受信した回避経路を、パターン表示部28によって路面に表示するための表示パターンを生成する(ステップS13)。具体的には、パターン生成部27は、回避経路を示す表示パターンを路面に表示するために必要な、左側パターン表示部28Lと右側パターン表示部28Rの発光部と走査機構との制御データを生成する。生成された制御データは、パターン表示部28に入力される。パターン表示部28は、制御データにしたがって、左側パターン表示部28Lと右側パターン表示部28Rの発光部及び走査機構が動作させ、車両V0の進行方向の路面に、回避経路を示す表示パターンPt1を視認可能に表示する(ステップS14)。」

(2)引用発明
上記(1)の記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「 走行する車両の走行経路を設定する走行経路表示装置であって、
前記車両V0の周囲の状況を検出する画像データを生成する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された前記画像データに基づき、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する障害物認識部23による障害物の認識結果とに基づいて、車両V0が走行する道路の幅を特定し、この道路の幅の中央に車両V0の走行経路を設定する経路設定部24と、
前記走行経路設定部24により設定された走行経路に沿って車両V0を走行させる走行制御部25と
を備え、
前記経路設定部24は、前記障害物認識部23による障害物の認識結果と、地図データベースに基づき、車両V0の走行経路を設定する走行経路表示装置。」

2.引用文献2
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献2(国際公開第2019/064490号)の段落[0054]、[0090]及び図4には、「車両制御装置、車両制御方法及びプログラム」に関して、以下の事項(以下、「引用文献2の記載事項」という。)が記載されている。

「自車両Mおよび走行路の形状や大きさ等に基づいて、自車両Mが歩行者の横を通過できるか否かを判定すること。」

3.引用文献3
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献3(国際公開第2016/024318号)の段落[0064]ないし[0068]、[0092]、[0099]及び[0100]並びに図4及び図11には、「車両の走行制御装置および方法」に関して、以下の事項(以下、「引用文献3の記載事項」という。)が記載されている。

「幅W0と自車両V1の幅VWとの和及び安全代d1並びに余裕代d2の和が走行レーン幅LWより小さい値となるよう、対象領域R0の幅W0を算出すること。」

4.引用文献4
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献4(国際公開第2017/072878号)の段落[0037]ないし[0042]及び図4には、「車両進入判定装置および車両進入判定システム」に関して、以下の事項(以下、「引用文献4の記載事項」という。)が記載されている。

「撮像情報から高さ上限を特定し、自車両の高さが高さ上限未満であるか否かを判定すること。」

5.引用文献5
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献5(特開平10−62162号公報)の段落【0046】には、「障害物検出装置」に関して、以下の事項(以下、「引用文献5の記載事項」という。)が記載されている。

「2台のカメラにて撮像した画像から障害物の高さを検出し、自車の車高と比較し、その結果に基づいて警報を発すること。」

6.引用文献6
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献6(特開2018−200267号公報)の段落【0009】、【0044】及び【0045】には、「上方構造物判定装置及び運転支援システム」に関して、以下の事項(以下、「引用文献6の記載事項」という。)が記載されている。

「カメラ等のセンサ40を用いて物標Tの物標高さHtを算出し、上方構造物か否かを高精度に判定すること。」

第5 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「車両」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「移動体」に相当し、以下同様に、「走行経路」は「移動経路」に、「設定」は「生成」に、「撮像装置」は「画像取得部」に、「撮像」は「取得」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する障害物認識部23による障害物の認識結果とに基づいて、車両V0が走行する道路の幅を特定し、この道路の幅の中央に車両V0の走行経路を設定する」ことと前者の「前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」こととは、その機能、構成及び技術的意義からみて「判定する」ことという限りで一致する。そうすると後者の「経路設定部24」と前者の「通口可否判定部」とは、「判定部」という限りで一致する。
そうすると、前者の「走行経路設定部24により設定された走行経路に沿って車両V0を走行させる走行制御部25」は、走行経路設定部24により設定された走行経路が走行制御部25に「通知」されることで走行経路に沿って車両V0が走行経路に沿って操向させるものであるから、後者の「通行可否判定部によって通行できると判定された道路によって構成された経路を前記移動体に通知する経路通知部」とは、「判定部によって判定された経路を前記移動体に通知する経路通知部」という限りで一致する。
さらに、後者の「前記経路設定部24は、障害物認識部23による障害物の認識結果と地図データベースに基づき、走行経路を設定する」ことと前者の「前記通行可否判定部は、前記画像データに加えて、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の図面データに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」こととは、「前記判定部は、前記画像データに加えて、道路の図面データに基づき、判定する」という限りで一致する。
そして、後者の「走行経路表示装置」は前者の「経路生成装置」に相当する。

したがって、両者は、
「 走行する移動体の移動経路を生成する経路生成装置であって、
画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記画像データに基づき、判定する判定部と、
前記判定部によって判定された経路を前記移動体に通知する経路通知部と
を備え、
前記判定部は、前記画像データに加えて、道路の図面データに基づき、判定する、
経路生成装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「移動体」に関し、前者は「歩道を走行する移動体」であるのに対し、後者は係る事項が不明な点。

[相違点2]
「画像データ」に関し、前者は「移動体が存在する位置から目的地までの経路を構成する道路の画像データであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データ」であるのに対し、後者は「車両V0の周囲の状況を検出する画像データ」である点。

[相違点3]
「判定部」に関し、前者は「画像取得部によって取得された前記画像データに基づき、前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する通行可否判定部」であるのに対し、後者は「撮像装置によって撮像された前記画像データに基づき、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する障害物認識部23と、障害物認識部23による障害物の認識結果とに基づいて、車両V0が走行する道路の幅を特定し、この道路の幅の中央に車両V0の走行経路を設定する経路設定部24」である点

[相違点4]
「経路通知部」に関し、前者は「通行可否判定部によって通行できると判定された道路によって構成された経路を前記移動体に通知する経路通知部」であるのに対し、後者は「走行経路設定部24により設定された走行経路に沿って車両V0を走行させる走行制御部25」である点。

[相違点5]
「判定部」における「判定」に関し、前者は「前記画像データに加えて、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の図面データに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」のに対し、後者は「前記障害物認識部23による障害物の認識結果と地図データベースに基づき、走行経路を設定する」点。

事案に鑑み先ず相違点5について検討するに、引用文献1には「道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の図面データに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」ことは記載されておらず示唆もない。また、原査定において引用された引用文献2の記載事項ないし引用文献6の記載事項にも当該事項は記載されておらず、示唆もない。したがって、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲内で相違点5に係る発明特定事項を想起し得たこととはいえない。

そして、本願発明1は、相違点5にかかる本願発明1の発明特定事項により引用発明にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、他の相違点の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2. 本願発明2ないし本願発明5
本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、加えて本願発明2ないし5に記載された発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本願発明1が引用発明に基づいて容易に発明できたものではない以上、本願発明2ないし本願発明5も引用発明に基づいて容易に発明できたものではない。

3. 本願発明6及び本願発明7
本願発明6は、「経路生成装置」の発明に係る本願発明1のカテゴリを「経路生成方法」という方法の発明としたものである、また、本願発明7は、「経路生成装置」の発明に係る本願発明1を「経路生成プログラム」としたものである。
そうすると、本願発明6及び本願発明7と引用発明とは、いずれも,本願発明1の検討において上述した相違点1ないし5に係る相違点を有し、その余の点で一致する。
そして、相違点5については、引用発明に基づき容易に想起し得たこととはいえないことは、本願発明1の検討において上述したとおりである。
したがって、本願発明6及び本願発明7についても、本願発明1と同様、引用発明に基づいて容易に発明できたものではない。

第6 前置報告
前置報告の概要は次のとおりである。
「・根拠条文 特許法第29条第2項
・請求項 1、6、7
・引用文献等 1−7
当該補正後の請求項1、6、7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

・請求項 2
・引用文献等 1−8
請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

・請求項 3
・引用文献等 1−9
請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

・請求項 4及び5
・引用文献等 1−11
請求項4及び5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2019−190975号公報(新たに引用された文献)
2.国際公開第2019/064490号(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2016/024318号(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2017/072878号(周知技術を示す文献)
5.特開平10−062162号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2018−200267号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2015−184804号公報(周知技術を示す文献)
8.国際公開第2020/235385号(周知技術を示す文献)
9.特開2020−131897号公報
10.米国特許出願公開第2017/0300059号明細書(周知技術を示す文献)
11.米国特許出願公開第2017/0192423号明細書(周知技術を示す文献)」

上記のとおり、前置報告において、原査定で引用された引用文献1とは異なる新たな引用文献1(特開2019−190975号公報)(以下、「新引用文献1」という。)を審査官は提示し、本願発明1ないし本願発明7は独立して特許を受けることができない旨報告している。
そこで、念のため、本願発明1ないし本願発明7と新引用文献1に記載された発明について、対比及び判断を行う。

1.新引用文献1
(1)新引用文献1の記載事項
前置報告に引用され、本願出願前に頒布された新引用文献1(特開2019−190975号公報)には、「経路探索装置、運転制御装置および自動走行装置」に関して、図面(図1ないし図6を参照。)とともに以下の記載がある。

カ 「【0001】
本発明は経路探索装置、運転制御装置および自動走行装置に関するものである。」

キ 「【0008】
本発明は、高精度な3次元マップ情報に基づいてユーザの必要とする条件に合致した経路を探索することができる経路探索装置、およびこの探索結果を用いた運転制御装置、自動走行装置を提供することを目的とする。」

ク 「【0009】
本発明の一態様は、移動体の出発地から目的地までの経路を求める経路探索装置である。この経路探索装置は、点群データを有する3次元マップ情報を記憶するマップ記憶部と、移動体が通行する道路に関する通行条件を記憶する通行条件記憶部と、3次元マップ情報および通行条件に基づき経路を作成する経路作成部と、経路作成部で作成された複数の経路から最適な経路を検索する経路検索部と、を備える。
【0010】
この経路探索装置において、点群データは、MMS(Mobile Mapping System:モービルマッピングシステム)およびRTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)で取得された緯度、経度および楕円体高を含む。通行条件は、移動体が道路の右側および左側のいずれかを通行するのかを示す通行方向情報を含む。経路作成部は、点群データから通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。経路検索部は、経路作成部で作成された複数の経路の候補の中から少なくとも最短の経路を検索する。
【0011】
このような構成によれば、3次元マップ情報に含まれる点群データには、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれているため、この点群データから、移動体が左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0012】
上記の経路探索装置において、通行条件は、移動体が道路の車道および歩道のいずれかを通行するのかを示す通行区分情報を含み、経路作成部は、点群データから通行方向情報および通行区分情報の両方の条件に対応した複数の経路の候補を作成するようにしてもよい。これにより、点群データから、移動体の左右の通行方向と通行区分との両方の条件に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0013】
上記の経路探索装置において、経路作成部は、作成した基本経路に沿って移動体が通行すると仮定した場合に、点群データで表される物体と移動体とが干渉する可能性があると判断した場合、干渉しないように基本経路を補正するようにしてもよい。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報で示される物体と移動体との干渉を防止できる経路(仮想軌道)を作成することができる。」

ケ 「【0026】
(自動走行装置)
図1は、自動走行装置の構成を例示する模式図である。
図1に示すように、自動走行装置100は、モータやエンジン等の駆動源121によって移動体110を走行させる駆動機構120を備える。移動体110は、駆動機構120から例えばタイヤに動力が伝えられ、所定方向に走行する。
【0027】
自動走行装置100は、経路探索装置1と、運転制御装置2と、を備えている。自動走行装置100は、GPS(Global Positioning System)や外部との通信を行うためのアンテナ150を備えており、電子基準点200や人工衛星300からの信号を受信して、移動体110の現在地を取得する。自動走行装置100には、カメラを含む画像取得部160や、レーザ検知部170が設けられていてもよい。
【0028】
自動走行装置100は、経路探索装置1で検索された出発地から目的地までの経路に沿って自動的に走行する。経路に沿った走行では、運転制御装置2によって駆動源121が制御される。
【0029】
移動体110の現在地は、GPS衛星や準天頂衛星等の人工衛星300からの信号を利用したGPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System)や、電子基準点200を利用したRTKによって高精度に把握される。例えば、RTKでは、移動体110の現在地を数cm程度の誤差範囲で検出することができる。
【0030】
移動体110の走行中においては、RTK等によって取得された現在地と、予め設定された経路(仮想軌道)とのずれを修正するように、運転制御装置2が駆動機構120を制御する。また、走行中の周辺の画像を画像取得部160で取り込んだり、障害物と移動体110との距離をレーザ検知部170で取り込んだりすることで、人や物体との衝突や異常接近を回避しながら移動体110が進んでいく。
【0031】
本実施形態に係る自動走行装置100では、後述する経路探索装置1によって、高精度の3次元マップ情報から移動体110の通行条件に合致した最適な経路が検索される。また、後述する運転制御装置2によって、経路探索装置1で検索された経路(仮想軌道)に沿って移動体110が走行するように駆動源121等の駆動機構120が制御され、移動体110の速度や進行方向が決定される。
【0032】
具体的には、経路探索装置1は、移動体110が通行する道路に関する通行条件として、移動体110が左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。経路の候補を作成する際、詳細な3次元マップ情報が用いられる。例えば、通行方向情報が左側通行であった場合、3次元マップ情報から道路の左側を通行する経路が作成される。また、同じ道路であっても、通行方向情報が右側通行であった場合には、3次元マップ情報から道路の右側を通行する経路が作成される。
【0033】
また、通行条件として、移動体110が道路の車道を走行するものか、歩道を走行するものかを示す通行区分情報が含まれている場合、経路探索装置1は、通行方向情報および通行区分情報の両方の条件に対応した経路を作成する。例えば、通行方向情報が右側通行であり、通行区分情報が歩道であった場合、3次元マップ情報から道路の右側に設けられた歩道の上を走行する経路が作成される。
【0034】
このように、本実施形態に係る自動走行装置100では、移動体110の通行条件に基づいて、ユーザの必要とする条件に合致した経路(仮想軌道)に沿って移動体110を自動走行させることができる。
【0035】
なお、自動走行装置100において、経路探索装置1、運転制御装置2の少なくともいずれかは、移動体110の内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。外部に設けられている場合には、移動体110に通信手段を設けておき、外部から送信さえる情報を通信手段で受けて、移動体110を走行させればよい。」

コ 「【0036】
(経路探索装置)
図2は、経路探索装置の構成を例示するブロック図である。
経路探索装置1は、マップ記憶部11、通行条件記憶部12、経路作成部13および経路検索部14を備える。経路探索装置1は、入力部15、出力部16、位置取得部17、通信部18およびアンテナ171を備えていてもよい。入力部15は、タッチパネルやマイク(音声入力手段)などである。出力部16は、ディスプレイやスピーカ(音声出力手段)などである。位置取得部17は、現在地を取得するGPSなどである。通信部18は、外部機器との通信を行う部分である。アンテナ171は、図1に示す自動走行装置100のアンテナ150と兼用であってもよい。
【0037】
マップ記憶部11は、点群データを有する3次元マップ情報を記憶する。ここで、点群データは、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高を含む。
【0038】
図3(a)および(b)は、点群データの一例を示す模式図である。
図3(a)には点群データに基づく画像Gの例が示され、図3(b)には点群データの要素の例が示される。
点群データは、図3(a)に示す画像の各点のそれぞれについて、図3(b)に示す緯度、経度、高度、楕円体高が対応付けされたデータである。点群データは、道路(車道、歩道)、縁石、建物、樹木、街灯、センターライン、白線など、取り込んだ画像の複数点における位置情報が対応付けされている。点群データには、世界座標が対応付けされていてもよい。マップ記憶部11は、MMSおよびRTKによって得られた高精度な点群データを記憶している。
【0039】
通行条件記憶部12は、移動体110が通行する道路に関する通行条件を記憶する。本実施形態において、通行条件は、移動体が道路の右側および左側のいずれかを通行するのかを示す通行方向情報、および移動体110が道路の車道および歩道のいずれかを通行するのかを示す通行区分情報を含む。通行条件としては、上記の通行方向情報および通行区分情報のほか、移動体110の大きさ、重量、速度制限、最大積載重量など、他の通行条件を含んでいてもよい。
【0040】
経路作成部13は、マップ記憶部11に記憶された3次元マップ情報および通行条件記憶部12に記憶された通行条件に基づき、出発地から目的地までの経路を作成する。経路作成部13は、3次元マップ情報に含まれる点群データから、通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。
【0041】
経路検索部14は、経路作成部13で作成された複数の経路から最適な経路を検索する。経路検索部14は、経路作成部13で作成された複数の経路の候補の中から少なくとも最短の経路を検索する。なお、経路検索部14は、最短の経路以外、予め設定された条件に合致した経路を検索してもよい。例えば、到着時間が最も早い経路や、道路料金が最も安い経路や、移動体110の走行費用が最も安い経路などを検索するようにしてもよい。
【0042】
先に説明したように、3次元マップ情報に含まれる点群データ(図3参照)には、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれている。したがって、経路作成部13は、この点群データから、移動体110の通行条件に対応した経路の候補を抽出することができる。例えば、移動体110が左側通行なのか、右側通行なのかといった通行方向情報に対応した複数の経路の候補や、移動体110が車道走行などか歩道走行なのかといった通行区分情報に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0043】
経路探索装置1において、経路作成部13は、作成した基本経路を補正する機能を有している。すなわち、経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて基本となる経路(基本経路)を作成した後、この基本経路に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、移動体110の走行中に物体と干渉する可能性を回避するため、基本経路の補正を行う。
【0044】
3次元マップ情報には、点群データによって道路や歩道のほか、建物、電柱、樹木などの物体も表されている。経路作成部13は、基本経路に沿って移動体110が走行すると仮定して、この点群データで表される物体と移動体110とが干渉する可能性があると判断した場合、干渉しないように(物体を避けるように)基本経路を補正する。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報で示される物体と移動体110との干渉を防止できる経路(仮想軌道)を作成することができる。
【0045】
また、経路探索装置1において、経路作成部13は、作成した基本経路を候補から除外する機能を有している。すなわち、経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて基本経路を作成した後、この基本経路に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、移動体110の通行が困難な場所があると経路を候補から除外する。
【0046】
3次元マップ情報には、点群データによって道路環境が表されている。道路環境としては、例えば、道路の形状(路面状況、道幅、段差、傾斜、轍、溝、側溝、グレーティング、マンホールなど)や、物体(建物の壁、ガードレール、電柱、標識や信号の支柱、踏切など)である。経路作成部13は、この道路環境から移動体110の通行が困難であると判断した場合、基本経路を複数の経路の候補に含めないようにする。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報に基づいて移動体110の通行が困難と考えられる経路を候補から除外することができる。
【0047】
経路作成部13は、道路環境から移動体110の通行が困難であるか否かの判断として、移動体110の種別や走行性能によって判断基準を切り替えるようにする。例えば、道路環境として段差があった場合、移動体110として歩道を走行する電動カートの場合と、車道を走行する自動車の場合とでは、走行困難であると判断する段差の大きさを切り替える。また、移動体110に応じた段差の走行限界高さや登坂能力を予め登録(設定)しておき、通行困難か否かの判断基準に用いてもよい。また、電動カートでは踏切を渡る経路は走行困難であると判断してもよい。
【0048】
また、経路作成部13は、点群データから移動体110の走行特性に合わせた曲率の曲線を含む経路(仮想軌道)を作成する。移動体110の走行特性とは、移動体110の種類に応じた走行の性能であり、例えば、最高速度、加速特性、回転半径、サイズ(車幅、全長、ホイールベース等)、重量などである。同じ経路であっても、移動体110の走行特性に応じて走行の軌道が異なる。
【0049】
経路作成部13は、点群データから通行方向情報に対応して出発地から目的地まで連続した経路を作成する。これにより、移動体110の特性や通行条件に合致した移動体110の経路を求めることができる。」

(2)新引用発明
上記(1)の記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、新引用文献1には、以下の発明(以下、「新引用発明」という。)が記載されている。

「 歩道を走行する移動体の経路を作成する経路探索装置であって、
前記移動体の出発地から目的地までの経路を構成する道路の点群データを記憶するマップ記憶部11と、
前記マップ記憶部11の前記点群データに基づき、前記道路において前記移動体が走行すると仮定して、道路環境から移動体の通行が困難か否かを判断する経路作成部13と、
前記経路作成部13によって通行できると判断された道路によって構成された経路を前記移動体に送信することと
を備え、
前記経路作成部13は、道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の点群データに基づき、前記道路の段差の大きさにより、前記道路を前記移動体が通行困難か否かを判断する経路探索装置。」

2 対比・判断
(1) 本願発明1
本願発明1と新引用発明とを対比すると、後者の「経路」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「移動経路」に相当し、以下同様に、「作成」は「生成」に、「記憶」は「取得」に、「経路作成部13」は「通行可否判定部」に、「判断」は「判定」に、「送信」は「通知」に、「経路探索装置」は「経路生成装置」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「移動体の出発地」と前者の「移動体が存在する位置」とは、その機能、構成及び技術的意義からみて「移動体の位置」という限りで一致する。同様に、後者の「点群データ」と前者の「画像データ」とは、「データ」という限りで一致する。また、後者の「点群データ」は、MMS及びRKTで取得されたものであるから、前者の「移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域の「データ」であることは明らかである。そうすると、後者の「移動体の出発地から目的地までの経路を構成する道路の点群データを記憶する」ことと前者の「移動体が存在する位置から目的地までの経路を構成する道路の画像データであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データを取得する」こととは、「移動体の位置から目的地までの経路を構成する道路のデータであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域のデータを取得する」ことという限りで一致し、「マップ撮影部11」と「画像取得部」とは、「取得部」という限りで一致する。
また、後者の「マップ記憶部11の点群データに基づき、前記道路において前記移動体が走行すると仮定して、道路環境から移動体の通行が困難か否かを判断する」ことは、「道幅、段差等」の「道路の形状」及び「建物」である「道路環境」から「移動体の通行が困難か否かを判断する」ものであって、その機能、構成及び技術的意義からみると前者の「道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」ことに相当するから、前者の「画像取得部によって取得された前記画像データに基づき、前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」こととは「取得部によって取得された前記データに基づき、前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」という限りで一致する。
さらに、後者の「経路作成部13によって通行できると判断された道路によって構成された経路を前記移動体に送信する」ことは、前者の「通行可否判定部によって通行できると判定された道路によって構成された経路を前記移動体に通知する」ことに相当するから、後者の経路作成部13によって通行できると判断された道路によって構成された経路を前記移動体に送信すること」は、前者の「経路通知部」に相当するものを備えるといえる。
加えて、後者の「道路の段差の大きさにより、通行困難か否かを判断する」ことは、前者の「道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」ことに相当するから、後者の「道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の点群データに基づき、前記道路の段差の大きさにより、通行困難か否かを判断する」ことと前者の「画像データに加えて、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の図面データに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」こととは、「前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路のデータに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」ことという限りで一致する。

したがって、両者は、
「 歩道を走行する移動体の移動経路を生成する経路生成装置であって、
前記移動体の位置から目的地までの経路を構成する道路のデータであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域のデータを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記データに基づき、前記道路において前記移動体が通行可能な領域の幅及び高さを特定し、特定された幅と前記移動体の幅とを比較するとともに、特定された高さと前記移動体の高さとを比較することにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する通行可否判定部と、
前記通行可否判定部によって通行できると判定された道路によって構成された経路を前記移動体に通知する経路通知部と
を備え、
前記通行可否判定部は、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路のデータに基づき、前記道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する経路生成装置。」
である点で一致し、次の3点で相違する。

[相違点6]
「移動体の位置」に関し、前者は「移動体が存在する位置」であるのに対し、後者は「移動体の出発地」である点。

[相違点7]
「データ」及び「取得部」に関し、前者は「移動体が存在する位置から目的地までの経路を構成する道路の画像データであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データを取得する画像取得部」であるのに対し、後者は「移動体の出発地から目的地までの経路を構成する道路の点群データ記憶するするマップ記憶部11」である点。

[相違点8]
「道路の段差が前記移動体が超えられる高さであるか否かにより、前記道路を前記移動体が通行できるか否かを判定する」ことについて、前者は「画像データに加えて、前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の点群データに基づき」判定を行うのに対し、後者は「前記道路の段差の有無と前記段差の高さとを示す情報を含む前記道路の点群データに基づき」判定を行うこと。

事案に鑑み先ず相違点7について検討するに、新引用発明は「移動体が存在する位置から目的地までの経路を構成する道路の画像データであって、前記移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データを取得」ことは開示も示唆もない。新引用発明の「カメラを含む画像取得部160」は移動体に搭載されたセンサその物であり、「走行中の周辺の画像を取り込んだり」する(上記ケの段落【0030】を参照)ものであるから、「移動体が存在する位置(の出発地)から目的地までの経路を構成する道路の画像データ」を取得するものでもなく、「移動体に搭載されたセンサの検知範囲外の領域を含む領域を撮影して得られた画像データを取得」するものでもない。そして、点群データは、高精度なマップ情報を構成するもの(上記キ及びクの段落【0009】参照。)であるから、これを画像データに置き換え、画像データに基づきマップ情報を構成することは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たこととはいえない。
また、前置報告で引用された引用文献2ないし引用文献6(原査定の引用文献2ないし引用文献6)及び引用文献7(特開2015−184804号公報)にも、相違点7に係る本願発明1の発明特定事項は記載されておらず、示唆もない。なお、引用文献7は、「画像表示装置において、車両と、高さを考慮した障害物との距離を把握しやすくすること。」を開示するものである。
そうすると、当業者の通常の創作能力の範囲内で、新引用発明から相違点7に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

さらに、本願発明1は、相違点7にかかる本願発明1の発明特定事項により、新引用発明にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、他の相違点の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、新引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2) 本願発明2ないし本願発明5
本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、加えて本願発明2ないし5に記載された発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本願発明1が新引用発明に基づいて容易に発明できたものではない以上、本願発明2ないし本願発明5も新引用発明に基づいて容易に発明できたものではない。

(3) 本願発明6及び本願発明7
本願発明6は、「経路生成装置」の発明に係る本願発明1のカテゴリを「経路生成方法」という方法の発明としたものである、また、本願発明7は、「経路生成装置」の発明に係る本願発明1を「経路生成プログラム」としたものである。
そうすると、本願発明6及び本願発明7と新引用発明とは、いずれも,本願発明1の検討において上述した相違点6ないし8に係る相違点を有し、その余の点で一致する。
そして、相違点7については、新引用発明に基づき容易に想起し得たこととはいえないことは、本願発明1の検討において上述したとおりである。
したがって、本願発明6及び本願発明7についても、本願発明1と同様、新引用発明に基づいて容易に発明できたものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明7は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明1ないし本願発明7は、新引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-27 
出願番号 P2021-525730
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
P 1 8・ 575- WY (G08G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 木村 麻乃
水野 治彦
発明の名称 経路生成装置、経路生成方法及び経路生成プログラム  
代理人 弁理士法人クロスボーダー特許事務所  

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