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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1390376 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-12-17 |
確定日 | 2022-11-08 |
事件の表示 | 特願2019−204183「表示システム、表示制御方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月20日出願公開、特開2021− 77171、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年11月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 1月12日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 3月22日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 6月 1日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 3年 7月30日 :意見書の提出 令和 3年 9月14日付け:拒絶査定(原査定) 令和 3年12月17日 :拒絶査定不服審判の請求 令和 4年 6月 1日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和 4年 8月 4日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 本願請求項1〜9に係る発明は、以下の引用文献A,Bに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A: 特開2019−96182号公報 引用文献B: 特開2018−84858号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審が令和4年6月1日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 本願請求項1〜9に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1: 特開2013−235568号公報 引用文献2: 特許第5923982号公報 引用文献3: 特開2018−84858号公報(原査定の引用文献B) 第4 本願発明 本願請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明7」という。)は、令和4年8月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものであり、本願発明1,6,7は次のとおりの発明である。 「【請求項1】 タッチスクリーンを有する電子機器に搭載されるコンピュータを、 前記電子機器に対してなされたシェイク操作を検知する操作検知手段と、 前記電子機器の姿勢を検知する姿勢検知手段と、 前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であって前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記シェイク操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新手段として機能させ、 摩擦が相対的に大きい位置と小さい位置とを前記タッチスクリーン上に規定し、 前記姿勢検知手段は、前記電子機器の姿勢として、重力方向に対して垂直な水平面に対する前記タッチスクリーンの横軸の傾斜を、前記タッチ操作領域の移動中に検知し、 前記位置更新手段は、前記タッチ操作領域の移動中に、前記タッチ操作領域の現在の位置に対応する前記摩擦に基づいて、前記タッチスクリーンの前記横軸の傾斜に応じた速度を、前記タッチスクリーン内での前記タッチ操作領域の移動の速度として算出する プログラム。」 「【請求項6】 タッチスクリーンを有する電子機器の制御方法であって、 前記電子機器に対してなされたシェイク操作を検知する操作検知ステップと、 前記電子機器の姿勢を検知する姿勢検知ステップと、 前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であって前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記シェイク操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新ステップとを含み、 摩擦が相対的に大きい位置と小さい位置とを前記タッチスクリーン上に規定し、 前記姿勢検知ステップにおいて、前記電子機器の姿勢として、重力方向に対して垂直な水平面に対する前記タッチスクリーンの横軸の傾斜を、前記タッチ操作領域の移動中に検知し、 前記位置更新ステップにおいて、前記タッチ操作領域の移動中に、前記タッチ操作領域の現在の位置に対応する前記摩擦に基づいて、前記タッチスクリーンの前記横軸の傾斜に応じた速度を、前記タッチスクリーン内での前記タッチ操作領域の移動の速度として算出する 電子機器の制御方法。 【請求項7】 電子機器に搭載されている、表示装置とタッチセンサを有するタッチスクリーンと、 前記電子機器の姿勢に応じた信号を出力するセンサと、 前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であるタッチ操作領域を前記タッチスクリーンに表示する制御装置とを有し、 前記制御装置は、 前記電子機器に対してなされたシェイク操作を検知する操作検知手段と、 前記電子機器の姿勢を検知する姿勢検知手段と、 前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記シェイク操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新手段とを含み、 摩擦が相対的に大きい位置と小さい位置とをタッチスクリーン上に規定し、 前記姿勢検知手段は、前記電子機器の姿勢として、重力方向に対して垂直な水平面に対する前記タッチスクリーンの横軸の傾斜を、前記タッチ操作領域の移動中に検知し、 前記位置更新手段は、前記タッチ操作領域の移動中に、前記タッチ操作領域の現在の位置に対応する前記摩擦に基づいて前記タッチスクリーンの前記横軸の傾斜に応じた速度を、前記タッチスクリーン内での前記タッチ操作領域の移動の速度として算出する 表示システム。」 なお、本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献の記載、引用発明等 1 引用文献1、引用発明 (1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 「【0017】 図1に示すように、電子装置100は、メモリー110、プロセッサユニット120、オーディオ処理部130、外部ポート140、入出力制御部150、表示部160、入力装置170、カメラシステム180、及びセンシングシステム190を含む。ここで、メモリー110及び外部ポート140は多数個存在することもできる。」 「【0026】 プロセッサユニット120は、メモリーインターフェース121、少なくとも一つのプロセッサ122、及び周辺装置インターフェース123を含む。ここで、プロセッサユニット120に含まれるメモリーインターフェース121、少なくとも一つのプロセッサ122、及び周辺装置インターフェース123は、少なくとも一つの集積化された回路に集積化されるか又は別個の構成要素として実装される。 【0027】 メモリーインターフェース121は、プロセッサ122又は周辺装置インターフェース123のような構成要素のメモリー110アクセスを制御する。 【0028】 周辺装置インターフェース123は、電子装置100の入出力周辺装置とプロセッサ122及びメモリーインターフェース121との接続を制御する。 【0029】 プロセッサ122は、少なくとも一つのソフトウェアプログラムを用いて、電子装置100が多様なマルチメディアサービスを提供するように制御する。この時、プロセッサ122は、メモリー110に保存されている少なくとも一つのプログラムを実行して、該当のプログラムに対応するサービスを提供するように制御する。例えば、プロセッサ122は、プログラム保存部111に保存されたグラフィックユーザーインターフェースプログラム114を実行して、図4に示すように、表示部160に表示された全体画面を移動させる。他の例で、プロセッサ122は、プログラム保存部111に保存されたグラフィックユーザーインターフェースプログラム114を実行して、図6に示すように、表示部160に表示された画面を構成する制御オブジェクトを移動させることもできる。」 「【0062】 図6は、本発明の一実施形態による制御オブジェクトを移動させるための手続きを示すフローチャートである。 【0063】 図6を参照すると、電子装置は、S601段階で画面移動イベントが発生したか否かを確認する。例えば、電子装置は、画面移動アイコンが選択されたか否かを確認する。他の例で、電子装置は、ハードウェアボタンの入力情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認することもできる。また他の例で、ハードウェアボタンの入力情報及び電子装置の動き情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認することもできる。また他の例で、電子装置は、タッチスクリーンに対するタッチ情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認することもできる。また他の例で、電子装置は、タッチスクリーンに対するタッチ情報及び電子装置の動き情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認することもできる。 【0064】 画面移動イベントが発生しない場合、電子装置は本アルゴリズムを終了する。 【0065】 一方、画面移動イベントが発生した場合、電子装置は、S603段階に進行して基準傾きを設定する。例えば、電子装置は、図5Aに示すように、画面移動イベントの発生時に、センシングシステム190を通じて検出した電子装置の傾きを基準傾きに設定する。この時、電子装置は、画面移動イベントの発生情報を表示部160に表示することもできる。他の例で、電子装置は、既に設定された基準傾きを確認することもできる。 【0066】 基準傾きを設定した後、電子装置は、S605段階に進行して電子装置の傾きの変化が検出されたか否かを確認する。 【0067】 傾きの変化が検出された場合、電子装置は、S607段階に進行して傾きの変化に基づいて画面に含まれる制御オブジェクトの位置を移動させる。即ち、電子装置は、傾きの変化に基づいて画面に含まれる制御オブジェクトを再配置する。例えば、下方向への傾きの変化が検出された場合、電子装置は、図7Aに示すように、画面に含まれる制御オブジェクトである“ファイルメニュー”、“編集メニュー”、及び“挿入メニュー”を下方向へ移動させる。この時、電子装置は、制御オブジェクトを表示部160の一番下端に移動させることができる。他の例として、右側への傾きの変化が検出された場合、電子装置は、図7Bに示すように、画面に含まれる制御オブジェクトである“ファイルメニュー”、“編集メニュー”、及び“挿入メニュー”を右側へ移動させることができる。この時、電子装置は、制御オブジェクトを表示部160の一番右側へ移動させることができる。また他の例で、右側の下方向への傾きの変化が検出された場合、電子装置は、図7Cに示すように、画面に含まれる制御オブジェクトである“ファイルメニュー”、“編集メニュー”、及び“挿入メニュー”を右側の下方向へ移動させることもできる。この時、電子装置は、制御オブジェクトを表示部160の右側の下端に移動させることもできる。上述のように、制御オブジェクトの位置を移動させる場合、電子装置は、図7A〜図7Cに示すように、制御オブジェクトを移動させる前の位置を表示部160に表示することもできる。 【0068】 上述した実施形態で、電子装置は、基準傾きを設定した後、傾きの変化が検出されたか否かを確認する。もし、基準傾きを設定した後、基準時間内に傾きの変化が検出されない場合、電子装置は画面を移動させないことを認識し、これによって、電子装置は上述した画面移動アルゴリズムを終了する。 【0069】 上述のように、電子装置の傾きの変化によって制御オブジェクトを移動させる場合、電子装置は、傾きの変化量による移動距離だけ制御オブジェクトの位置を移動させることもできる。例えば、電子装置は、図6のS605段階で傾きの変化が検出された場合、傾きの変化量による制御オブジェクトの移動距離を決定する。その後、電子装置は、S607段階で傾きの変化の方向に傾きの変化量による移動距離だけ制御オブジェクトの位置を移動させる。これによって、電子装置は、傾きの変化量が大きくなるほど制御オブジェクトの移動距離を増加させ、傾きの変化量が減少するほど制御オブジェクトの移動距離を減少させる。 【0070】 また、電子装置は、傾きの変化量によって制御オブジェクトの移動速度を調節することもできる。例えば、電子装置は、図6のS605段階で傾きの変化が検出された場合、傾きの変化量による制御オブジェクトの移動速度を決定する。その後、電子装置は、S607段階で傾きの変化量による移動速度によって傾きの変化の方向に制御オブジェクトの位置を移動させる。これによって、電子装置は、傾きの変化量が大きくなるほど制御オブジェクトの移動速度を増加させ、傾きの変化量が減少するほど制御オブジェクトの移動速度を減少させる。 【0071】 また、電子装置は、傾きの変化量によって制御オブジェクトの移動速度及び移動距離を調節することもできる。例えば、電子装置は、図6のS605段階で傾きの変化が検出された場合、傾きの変化量による制御オブジェクトの移動速度及び移動距離を決定する。その後、電子装置は、S607段階で傾きの変化量による移動速度によって傾きの変化の方向に移動距離だけ制御オブジェクトの位置を移動させる。 【0072】 上述のように、電子装置は、傾きの変化によって全体画面の位置を移動させる。この時、電子装置は、傾きの変化によって全体画面の位置を移動させる動作と同様に、傾きの変化によって表示部160で画面を表示する領域の大きさを変化させることもできる。 【0073】 上述のようにタッチスクリーンを備える電子装置において、傾き情報に基づいて画面を移動させるか又は制御オブジェクトを再配置させることで、電子装置のユーザーは、表示領域に表示された少なくとも一つの制御オブジェクトを片手で手軽に操作することができる。」 「【図6】 【図7A】 」 (2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「表示部160に表示された画面を構成する制御オブジェクトを移動させるグラフィックユーザーインターフェースプログラム114であって、 制御オブジェクトを移動させるための手続きにおいて、 電子装置は、タッチスクリーンに対するタッチ情報及び電子装置の動き情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認し、 画面移動イベントが発生した場合、電子装置は、電子装置の傾きの変化が検出されたか否かを確認し、 傾きの変化が検出された場合、傾きの変化に基づいて画面に含まれる制御オブジェクトの位置を移動させ、例えば、下方向への傾きの変化が検出された場合、電子装置は、画面に含まれる制御オブジェクトを下方向へ移動させ、この時、電子装置は、制御オブジェクトを表示部160の一番下端に移動させることができ、 電子装置は、傾きの変化量によって制御オブジェクトの移動速度を調節することもでき、例えば、電子装置は、傾きの変化が検出された場合、傾きの変化量による制御オブジェクトの移動速度を決定し、その後、傾きの変化量による移動速度によって傾きの変化の方向に制御オブジェクトの位置を移動させ、 電子装置のユーザーは、表示領域に表示された少なくとも一つの制御オブジェクトを片手で手軽に操作することができる、 グラフィックユーザーインターフェースプログラム114。」 2 引用文献2 当審拒絶理由にて引用された引用文献2の「2回以上連続して振る動作」との記載や、「重力加速度」、「時間間隔」等のパラメータに基づく判定動作についての記載(段落【0021】〜【0022】)から、センサによって検知される電子機器に作用する加速度の時系列変化に基づいて単位シェイク操作を検知し、単位シェイク操作の所定期間内の回数に基づいて、特定のシェイク操作がなされたと判断することは、周知技術である。 3 引用文献3 (1)当審拒絶理由にて引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0020】 <システム構成> 図5は一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図であり、図4に示したように正面、左壁、右壁、天井、テーブル、後壁の6個のディスプレイ(表示部)を備えた環境についての例である。図5において、各ディスプレイ4(4F、4L、4R、4C、4T、4B)を制御する表示制御装置3(3F、3L、3R、3C、3T、3B)が、有線または無線によるネットワーク2を介してサーバ装置1に接続された構成となっている。ディスプレイ4は、プロジェクタによるものや、LCD(Liquid Crystal Display)等の平面パネルによるもの等が用いられる。また、ディスプレイ4の表面にはタッチパネル等が設けられ、ユーザの指やペンによる操作の座標情報が取得可能になっている。なお、ディスプレイ4毎に表示制御装置3を設けているが、複数のディスプレイ4に対してそれらより少ない台数の表示制御装置3で制御を行うようにしてもよい。また、サーバ装置1の機能をいずれかの表示制御装置3に持たせてもよい。 【0021】 図6はサーバ装置1および表示制御装置3の機能構成例を示す図である。図6において、サーバ装置1は、コンテンツ作成指示受信部11とコンテンツ作成部12とコンテンツ位置通知部13とを備えている。また、サーバ装置1は、コンテンツ移動指示受信部14とコンテンツ移動処理部15とディスプレイ接続関係判定部16とコンテンツ移動速度決定部17とループ判定部18とを備えている。また、サーバ装置1は、処理に際して参照・更新するディスプレイ管理テーブルT1とコンテンツ管理テーブルT2とを備えている。 【0022】 コンテンツ作成指示受信部11は、いずれかの表示制御装置3からコンテンツ作成指示を受信する機能を有している。コンテンツ作成指示は、例えば、デジタル付箋紙を作成する指示であり、手書き入力等が行われたディスプレイ4の識別子、入力座標(入力が行われた代表的位置の座標)、入力内容(文字列)等が伴われる。 【0023】 コンテンツ作成部12は、コンテンツ作成指示受信部11により受信されたコンテンツ作成指示に基づいて、コンテンツを作成する機能を有している。作成されたコンテンツの情報はコンテンツ管理テーブルT2に保持される。 【0024】 コンテンツ位置通知部13は、コンテンツ作成部12により作成されたコンテンツの識別子と表示位置を、コンテンツを表示するディスプレイ4に対応する表示制御装置3に通知する機能を有している。また、コンテンツ位置通知部13は、コンテンツ移動処理部15により移動対象となったコンテンツおよび表示位置を、コンテンツを表示するディスプレイ4に対応する表示制御装置3に通知する機能も有している。 【0025】 コンテンツ移動指示受信部14は、いずれかの表示制御装置3からコンテンツ移動指示を受信する機能を有している。コンテンツ移動指示は、移動対象のコンテンツの識別子、移動方向、移動操作の速さ等が伴われる。 【0026】 コンテンツ移動処理部15は、コンテンツ移動指示受信部14により受信されたコンテンツ移動指示に基づいて、コンテンツを移動させる機能を有している。移動されたコンテンツの情報はコンテンツ管理テーブルT2に保持される。 【0027】 ディスプレイ接続関係判定部16は、コンテンツ移動処理部15における処理に際して、コンテンツが、あるディスプレイ4から隣のディスプレイ4に跨って移動するか否かを判定する機能を有している。ディスプレイ接続関係判定部16は、処理に際してディスプレイ管理テーブルT1およびコンテンツ管理テーブルT2を参照する。 【0028】 コンテンツ移動速度決定部17は、コンテンツ移動処理部15における処理に際して、コンテンツの移動速度を決定する機能を有している。コンテンツ移動速度決定部17は、処理に際してコンテンツ管理テーブルT2を参照する。移動速度は、地上の平面上を所定の動摩擦係数により減速しながら滑走する物体を模したものとしている。すなわち、コンテンツを移動するための操作が行われた方向に対し、操作の速さに対応した初速から始まり、徐々に減速していくものとする。」 「【0053】 <第1の処理例> 第1の処理例では、いずれかのディスプレイ4上に縦方向または横方向に固定の境界(境界線)を設定しておき、その境界に移動してきたコンテンツを停止させるようにしている。なお、境界で停止したコンテンツは、境界の停止がいったん解除されて移動が可能になるとともに、境界を通過した後に再び次の通過時には停止されるようになる。 【0054】 図10は第1の処理例における動作例を示す図であり、図4で示したのと同様に、正面、左壁、右壁、天井、テーブル、後壁にディスプレイ4が配置されたものとしている。また、この例では、左壁の一部に破線で示すような縦方向の境界が設けられている。この状態で、例えば、右壁に表示されていたコンテンツを右方向に勢いよく移動する操作が行われると、太線で示すように、後壁を経由して左壁に入る。その後、コンテンツが境界に到達すると、「×」で示すように停止される。これにより、加減が分からずに移動操作が強すぎても、コンテンツが回り続けるということが防止される。図11は、図3(c)と同様に平面展開した状態で図10と同様の動作を示したものである。」 「【0081】 <第4の処理例> 第4の処理例では、上述した処理例における境界や移動開始位置において急激にコンテンツの移動を停止させるのではなく、境界や移動開始位置に動摩擦係数の極大値がくるような動摩擦係数の設定を行うことで、自然に移動が停止するようにしたものである。また、境界等の付近では動摩擦係数が大きくなることで、移動開始に支障を与えるため、移動開始直後は動摩擦係数を低減するようにしている。 【0082】 図22は第4の処理例における境界付近の動摩擦係数の設定の例を示す図である。図22(a)は、境界等の付近において直線的に動摩擦係数が増大するようにしたものである。この場合、コンテンツの位置座標による線形の式で動摩擦係数を設定することができる。図22(b)は、境界等の付近において曲線的に動摩擦係数が増大するようにしたものである。この場合、コンテンツの位置座標に対する正規分布等の式で動摩擦係数を設定することができる。図23は正規分布の例を示す図であり、平均や分散の値を変えることで、様々な特性を得ることができる。」 「【図10】 」 「【図22】 」 (2)上記(1)から、引用文献3には、次の発明が記載されていると認められる。 「正面、左壁、右壁、天井、テーブル、後壁の6個のディスプレイ(表示部)である各ディスプレイ(4F、4L、4R、4C、4T、4B)を制御する表示制御装置3(3F、3L、3R、3C、3T、3B)が、有線または無線によるネットワーク2を介してサーバ装置1に接続されたシステムであって、 サーバ装置1は、コンテンツ移動指示受信部14とコンテンツ移動処理部15とコンテンツ移動速度決定部17とを備え、 コンテンツ移動指示受信部14は、いずれかの表示制御装置3からコンテンツ移動指示を受信する機能を有し、 コンテンツ移動処理部15は、コンテンツ移動指示受信部14により受信されたコンテンツ移動指示に基づいて、コンテンツを移動させる機能を有し、 コンテンツ移動速度決定部17は、コンテンツ移動処理部15における処理に際して、コンテンツの移動速度を決定する機能を有し、移動速度は、地上の平面上を所定の動摩擦係数により減速しながら滑走する物体を模したものとしており、 いずれかのディスプレイ4上に縦方向または横方向に固定の境界(境界線)を設定しておき、 境界に動摩擦係数の極大値がくるような動摩擦係数の設定を行うことで、自然に移動が停止するようにした、 システム。」 3 引用文献A 原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0022】 図3は、本発明の第1の実施形態に係る電子装置1の機能構成の一例を示す概略ブロック図である。 電子装置1は、制御部11と、ジャイロセンサ12と、表示部13と、タッチセンサ14と、記憶部15と、を含んで構成される。 【0023】 ジャイロセンサ12は、少なくともX軸方向及びY軸方向の2軸それぞれに対する角速度を検出するジャイロセンサである。なお、ジャイロセンサ12は、X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向を加えた3軸それぞれに対する角速度を検出する3軸ジャイロセンサであってもよい。また、ジャイロセンサ12は、角速度を検出可能なセンサであればジャイロセンサ以外の各種センサであってもよい。 【0024】 タッチセンサ14は、ユーザの指等での入力を受け付けるタッチセンサである。例えば、タッチセンサ14は、静電方式や抵抗膜方式等によりユーザの指等を検出する。タッチセンサ14は、表示部13の表示面上に重ねて配置され、表示部13の表示に対する操作を検出する。 【0025】 制御部11は、電子装置1を制御する。制御部11は、センサ読取部111と、信号処理部112と、表示制御部113と、タッチ制御部114と、を含んで構成される。センサ読取部111は、ジャイロセンサ12が検出した角速度(以下、「測定値」とする。)を定期的に読み取り、読み取った測定値を信号処理部112に出力する。 【0026】 信号処理部112は、センサ読取部111から入力されたジャイロセンサ12の測定値を処理してユーザの回転ジェスチャを検出し、検出した回転の軸に応じて、表示部13における表示モード(表示部13の表示に対する操作)を決定する。回転ジェスチャとは、ユーザが電子装置1を片手で把持したまま、その手の前腕を軸にして電子装置1を所定回数(例えば、2回)以上回転させるように左右に振る操作である。回転ジェスチャの検出方法及び表示モードの切り替え方法についての詳細は後述する。」 「【0029】 続いて、表示部13における表示モードについて説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示モードを説明するための図である。本図に示す上下左右方向は、表示部13に表示している画面の方向(以下、「表示部13における表示方向」とする。)を示す。表示モードには、通常モードと、右モードと、左モードとの3つのモードがある。 【0030】 電子装置1は、起動時には通常モードで動作する。表示制御部113は、通常モード時には、表示部13の表示面全体に画面を表示する(図4(A)参照)。しかしながら、ユーザが片手で電子装置1を把持しながらその手の親指で操作する場合には、その反対方向の上部にあるアイテム(例えば、ボタンやアイコン等)に指が届かない場合がある。例えば、ユーザが右手で電子装置1を把持している場合には、右手の親指は画面の左上部分に届き難い。一方、ユーザが左手で電子装置1を把持している場合には、左手の親指は画面の右上部分に届き難い。そのため、ユーザは、その部分にあるアイテムを操作する場合には、電子装置1を把持していない手の指で操作しなければならない。 【0031】 そこで、電子装置1は、通常モード時にユーザが回転ジェスチャをした場合に、ユーザが左右どちらの手で電子装置1を把持しているかを判定し、把持している手の方向へ画面(表示部13の表示)を移動させる。これにより、ユーザは、電子装置1を把持している手の親指でその反対方向にあるアイテムを操作できるようになる。例えば、表示制御部113は、ユーザが右手で電子装置1を把持している場合には、表示部13の表示を右手の方向へ移動させる。また、表示制御部113は、ユーザが左手で電子装置1を把持している場合には、表示部13の表示を左手の方向へ移動させる。ここで、右モードは、ユーザが右手で電子装置1を把持している場合の表示モードであり、左モードは、ユーザが左手で電子装置1を把持している場合の表示モードである。 【0032】 より具体的には、表示制御部113は、右モード時には、表示部13の表示方向において右下部にある一部領域AR11に画面を移動させる(図4(B)参照)。このように、右モード時には、右下部にある領域AR11に画面を表示させることにより、右手で電子装置1を把持したときに、右手の親指で画面の左上部にあるアイテムを操作することができる。なお、ある一部の領域に画面を移動させるには、画面全体を移動させることに限られず、背景画像と該背景画像上に配置されたアイコンなどにより構成される画面において、背景画像を移動させずアイコン等の画面の一部のみを移動させる場合も含まれる。 【0033】 一方、表示制御部113は、左モード時には、表示部13の表示方向において左下部にある一部領域AR21に画面を移動させる(図4(C)参照)。このように、左モード時には、左下部にある領域AR21に画面を表示させることにより、左手で電子装置1を把持したときに、左手の親指で画面の右上部にあるアイテムを操作することができる。」 「【図4】 」 第6 当審拒絶理由について(引用発明との対比・判断) 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の 「表示部160に表示された画面を構成する制御オブジェクトを移動させるグラフィックユーザーインターフェースプログラム114であって、 制御オブジェクトを移動させるための手続きにおいて、 電子装置は、タッチスクリーンに対するタッチ情報及び電子装置の動き情報に基づいて画面移動イベントの発生の有無を確認」する との構成によれば、引用発明の「電子装置」は、「タッチスクリーン」を有するものであり、当該「電子装置」には、「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」に基づく処理を実行する手段が搭載され、「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」は、当該手段を、ユーザーによる「電子装置の動き情報」の入力操作、すなわち「電子装置」を動かす操作を検知する手段として機能させるといえる。 そして、引用発明の「タッチスクリーン」、「電子装置」、上記処理を実行する手段は、それぞれ、本願発明1の「タッチスクリーン」、「電子機器」、「コンピュータ」に相当する。 また、引用発明における上記の「電子装置」を動かす操作を検知する手段と、本願発明1の 「前記電子機器に対してなされたシェイク操作を検知する操作検知手段」 とは、 「前記電子機器を動かす操作を検知する操作検知手段」 である点で共通している。 (イ)引用発明は、上記(ア)で述べた構成とともに、 「画面移動イベントが発生した場合、電子装置は、電子装置の傾きの変化が検出されたか否かを確認し、 傾きの変化が検出された場合、傾きの変化に基づいて画面に含まれる制御オブジェクトの位置を移動させ、例えば、下方向への傾きの変化が検出された場合、電子装置は、画面に含まれる制御オブジェクトを下方向へ移動させ、この時、電子装置は、制御オブジェクトを表示部160の一番下端に移動させることができ」る との構成を備えるものであるから、引用発明の「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」は、上記(ア)で検討した「電子装置」を動かす操作を検知する手段に加えて、「電子装置の傾きの変化」を「検出」する手段としても機能させるといえる。そして、当該手段は、本願発明1の 「前記電子機器の姿勢を検知する姿勢検知手段」 に相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)で述べた引用発明の構成は、引用発明の「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」が更に、「制御オブジェクト」を、ユーザーによる「電子装置の動き情報」の入力操作があった場合に、「電子装置の傾きの変化」に応じた、「下方向」等の方向に「移動」する手段としても機能させることを示すものといえる。 また、引用発明は、「電子装置のユーザーは、表示領域に表示された少なくとも一つの制御オブジェクトを片手で手軽に操作することができる」ものであり、ここで、「表示領域」は、「片手」の「操作」を受け付ける「タッチスクリーン」上の領域であって、「操作」がタッチ操作であることが明らかである。 そして、引用発明の「制御オブジェクト」、上記「移動」する手段は、それぞれ、本願発明1の「タッチ操作領域」、「位置更新手段」に相当する。 以上の点について、上記(ア)で検討した点を踏まえると、引用発明における、「制御オブジェクト」を、ユーザーによる「電子装置の動き情報」の入力操作があった場合に、「電子装置の傾きの変化」に応じた、「下方向」等の方向に「移動」する手段と、本願発明1の 「前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であって前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記シェイク操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新手段」 とは、 「前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であって前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記動かす操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新手段」 である点で共通している。 (エ)引用発明の「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」は、後述する相違点は別として、本願発明1の「プログラム」に相当する。 イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。 (一致点) 「タッチスクリーンを有する電子機器に搭載されるコンピュータを、 前記電子機器を動かす操作を検知する操作検知手段と、 前記電子機器の姿勢を検知する姿勢検知手段と、 前記タッチスクリーンに対するタッチ操作を受け付ける領域であって前記タッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を、前記動かす操作が検知された場合に、前記電子機器の姿勢に応じた方向に移動する位置更新手段として機能させる、 プログラム。」 ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。 (相違点1) 「操作検知手段」の検知対象について、本願発明1では「シェイク操作」であるのに対して、引用発明では「電子装置の動き」である点。 (相違点2) 本願発明1の「プログラム」は、「摩擦が相対的に大きい位置と小さい位置とをタッチスクリーン上に規定」するのに対して、引用発明の「グラフィックユーザーインターフェースプログラム114」は、そのように特定されるものではない点。 (相違点3) 「姿勢検知手段」について、本願発明1では、「前記電子機器の姿勢として、重力方向に対して垂直な水平面に対する前記タッチスクリーンの横軸の傾斜を、前記タッチ操作領域の移動中に検知」するのに対して、引用発明では、そのように特定されるものではない点。 (相違点4) 「位置更新手段」について、本願発明1では、「前記タッチ操作領域の移動中に、前記タッチ操作領域の現在の位置に対応する前記摩擦に基づいて、前記タッチスクリーンの前記横軸の傾斜に応じた速度を、前記タッチスクリーン内での前記タッチ操作領域の移動の速度として算出する」のに対して、引用発明では、そのように特定されるものではない点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点4について先に検討する。 電子機器のタッチスクリーンに表示されているタッチ操作領域を電子機器の姿勢に応じた方向に移動させる際に、タッチ操作領域の移動中に、タッチ操作領域の現在の位置に対応する摩擦に基づいて、タッチスクリーンの横軸の傾斜に応じた速度を、タッチスクリーン内でのタッチ操作領域の移動の速度として算出して、当該速度でタッチ操作領域を移動させることは、引用文献1〜3には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。 引用文献3には、上記第5の2(2)のとおりの発明が記載されていると認められるが、上記の事項についてまでは記載されていない。 また、仮に上記の事項が周知技術であったとしても、引用発明は、「傾きの変化が検出された場合、傾きの変化量による制御オブジェクトの移動速度を決定し、その後、傾きの変化量による移動速度によって傾きの変化の方向に制御オブジェクトの位置を移動させ」るものであることからすれば、制御オブジェクトの移動中(移動開始後)にユーザーによる移動速度を変化させる操作を受け付けることが想定されるものではなく、引用文献1には、制御オブジェクトの移動中にユーザーの操作に応じて移動速度を変化させることについては記載も示唆もされていないから、引用発明に当該周知技術を適用する動機付けがあるとはいえない。 よって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2〜7について 本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6,7は、それぞれ、本願発明1に対応する「電子機器の制御方法」、「表示システム」の発明であって、いずれも、相違点4に係る技術的事項を有する。 そうすると、本願発明2〜7も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 小括 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。 第7 原査定についての判断 令和4年8月4日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜7は、相違点4に係る技術的事項を有するものとなった。 そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A,Bには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜7は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。 よって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-10-25 |
出願番号 | P2019-204183 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
石井 則之 富澤 哲生 |
発明の名称 | 表示システム、表示制御方法、プログラム |
代理人 | 弁理士法人はるか国際特許事務所 |