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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1390385
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-05 
確定日 2022-10-06 
事件の表示 特願2017− 8436「室内ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018−115831〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月20日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和3年1月28日付けで拒絶理由通知
令和3年4月5日に意見書及び手続補正書の提出
令和3年9月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。;令和3年10月5日発送)
令和4年1月5日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出

第2 令和4年1月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正するものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「 【請求項1】
熱交換器(22)および複数の冷媒管(31〜34)を有しており、冷媒回路(6)を有する冷凍装置(1)を構成可能な室内ユニット(3)において、
前記冷媒回路に封入される冷媒をR32とし、
前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、
(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としており、
前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、2/8インチ以下としており、
前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である、
室内ユニット(3)。
【請求項2】
前記複数の冷媒管は、
液冷媒管(31)と、
ガス冷媒管(32)と、
を含み、
前記管外径は、前記液冷媒管の管外径である、
請求項1に記載の室内ユニット。
【請求項3】
前記熱交換器は冷媒分流器(25)を有し、
前記液冷媒管は前記冷媒分流器に接続されている、
請求項2に記載の室内ユニット。
【請求項4】
前記冷凍装置の定格能力は、7.1kWから16.0kWの範囲にある、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の室内ユニット。
【請求項5】
冷媒が流れることにより冷凍サイクルを実現する冷媒回路(6)を有する冷凍装置(1)であって、
請求項1から4のいずれか1項に係る少なくとも1つの室内ユニット(3)と、
室外ユニット(2)と、
前記室内ユニットおよび前記室外ユニットを接続する連絡配管(4、5)と、
を備える冷凍装置(1)。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年4月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
熱交換器(22)および複数の冷媒管(31〜34)を有しており、冷媒回路(6)を有する冷凍装置(1)を構成可能な室内ユニット(3)において、
前記冷媒回路に封入される冷媒をR32とし、
前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、
(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としている、
室内ユニット(3)。
【請求項2】
前記複数の冷媒管は、
液冷媒管(31)と、
ガス冷媒管(32)と、
を含み、
前記管外径は、前記液冷媒管の管外径である、
請求項1に記載の室内ユニット。
【請求項3】
前記熱交換器は冷媒分流器(25)を有し、
前記液冷媒管は前記冷媒分流器に接続されている、
請求項2に記載の室内ユニット。
【請求項4】
前記冷凍装置の定格能力は、7.1kWから16.0kWの範囲にある、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の室内ユニット。
【請求項5】
冷媒が流れることにより冷凍サイクルを実現する冷媒回路(6)を有する冷凍装置(1)であって、
請求項1から4のいずれか1項に係る少なくとも1つの室内ユニット(3)と、
室外ユニット(2)と、
前記室内ユニットおよび前記室外ユニットを接続する連絡配管(4、5)と、
を備える冷凍装置(1)。」

2 補正の適否
本件補正後の請求項1において、「前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、2/8インチ以下としており、
前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である」との発明特定事項を追加する補正は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)における、請求項2、段落0024及び段落0034の記載に基づくものであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、「複数の冷媒管」について、本件補正後の請求項1において、「複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、2/8インチ以下としており」との事項を加えることにより、冷媒管の管外径の寸法を限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載された、「冷凍装置」について、本件補正後の請求項1において、「前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である」との事項を加えることにより、冷凍装置の定格能力を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

<特許法第29条第2項進歩性)について>
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013−200090号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は理解の一助として当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)
「【0001】
本発明は、冷凍サイクルを利用した空気調和機や冷凍機などの冷凍サイクル装置に関し、特に、冷凍サイクルに使用する冷媒としてR32(ジフルオロメタン)を使用したものに関する。
・・・
【0003】
しかし、冷媒R410Aは、GWP(地球温暖化係数)の高い冷媒であるため、地球温暖化防止を更に進める観点から、冷媒R410AよりもGWPの低い冷媒を冷凍サイクル装置に使用することが望ましく、候補冷媒としては冷媒R32が考えられる。
この冷媒R32は、微燃性の特性を有しており、万が一の冷媒漏洩時における冷媒漏洩量の削減のため、冷凍サイクル内に封入する冷媒量を可能な限り削減することが好ましい。
【0004】
また、冷媒R410Aから冷媒R32に転換することで室外機と室内機とを接続する接続配管(冷媒配管)の配管径を低減することができれば、封入する冷媒量を低減できるだけでなく、接続配管の材料である銅の使用量の削減も図れ、更に空気調和機などの施工時における接続配管の施工性向上を図ることも可能となる。
・・・
【0012】
本発明の目的は、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を使用しつつ効率低下を抑制し、しかも接続配管の配管径も小さくすることのできる冷凍サイクル装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、圧縮機、熱源機側熱交換器、第1の膨張装置、液側接続配管、第2の膨張装置、利用側熱交換器、ガス側接続配管を順次接続して構成されている冷凍サイクル装置において、前記冷凍サイクルに使用する冷媒をR32とし、
前記液側接続配管と、前記ガス側接続配管の管外径を、
(D0−1)/8インチ
(ここで、「D0/8インチ」は冷媒R410Aを使用した場合の接続配管外径である)
とし、且つ前記液接続配管では前記D0の範囲を「2≦D0≦4」とし、前記ガス接続配管では前記D0の範囲を「3≦D0≦8」としたことを特徴とする。
【0014】
ここで、定格冷凍能力が7.1kWから12.5kWまでの範囲では、前記液接続配管では前記D0を3(即ち配管径が1/4インチ)、前記ガス接続配管では前記D0を5(即ち配管径が1/2インチ)とし、定格冷凍能力が3.6kWから7.1kW未満の範囲では、前記液接続配管では前記D0を2.5(即ち配管径が3/16インチ)、前記ガス側接続配管では前記D0を4(即ち配管径が3/8インチ)とすることが好ましい。

・・・
【0019】
本発明によれば、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を使用しつつ効率低下を抑制し、しかも接続配管の配管径も小さくすることのできる冷凍サイクル装置を得ることができる。」

「【0023】
図1は冷凍サイクル装置としての空気調和機を示しており、室外機40と室内機20とが液側接続配管7とガス側接続配管8により接続されている。前記室外機40において、1は圧縮機(密閉式圧縮機)、2は四方弁、3は熱源機側熱交換器、4は第1の膨張装置、6は液側の阻止弁、9はガス側の阻止弁、10はアキュームレータである。また、前記室内機20において、21は第2の膨張装置、22は利用側熱交換器である。前記圧縮機1、熱源機側熱交換器3、第1の膨張装置4、液側接続配管7、第2の膨張装置21、利用側熱交換器22、ガス側接続配管8などは順次接続配管(冷媒配管)で接続されて冷凍サイクル装置(本実施例では空気調和機)が構成されている。
【0024】
冷房運転の場合、前記圧縮機1で圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、冷凍機油と共に前記圧縮機1から吐出され、このガス冷媒は前記四方弁2を経て、前記熱源機側熱交換器3へと流入し、ここで熱交換して凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は全開とされた第1の膨張装置4を通り、その後阻止弁6、液側接続配管7を通過して、前記室内機20へ送られる。前記室内機20送られた液冷媒は、第2の膨張装置21へ流入し、ここで減圧されて低圧の二相状態となり、利用側熱交換器22で空気等の利用側媒体と熱交換して蒸発・ガス化する。その後、ガス冷媒はガス側接続配管8、阻止弁9を通過し、四方弁2を経由して再び前記圧縮機1へと戻る。余剰冷媒はアキュムレータ10に貯留されることで、冷凍サイクルの運転圧力、温度が正常な状態に保たれる。
【0025】
暖房運転の場合、圧縮機1で圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、冷凍機油と共に圧縮機1から吐出される。このガス冷媒は、四方弁2により阻止弁9側に流れ、ガス側接続配管8を経て前記室内機20の利用側熱交換器22へ流入する。ここで前記ガス冷媒は空気等の利用側媒体と熱交換して凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は、液側接続配管7、阻止弁6を経て、第1の膨張装置4で減圧され、前記熱源機側熱交換器3で空気や水等の熱源媒体と熱交換して蒸発・ガス化する。蒸発・ガス化した冷媒は、四方弁2を経て再び圧縮機1へと戻る。
【0026】
本実施例の冷凍サイクル装置は冷媒としてR32を使用しており、前記液側接続配管7及びガス側接続配管8の管外径を、冷媒R410Aを使用した同一定格冷凍能力の冷凍サイクル装置よりも1ランク細く設定している。
以下、前記接続配管7,8の管外径の設定について詳しく説明する。なお、本実施例では冷媒量がより多く必要となる冷房運転の場合について説明する。
・・・
【0030】
以下説明するCOP比及び冷媒量比の検討には、冷凍サイクルの運転状態を模擬するサイクルシミュレータ(例えば、第34回空気調和・冷凍連合講演会論文集(2000年4月17〜19日)の13〜16頁、2005年度日本冷凍空調学会年次大会講演論文集(2005年10月23〜27日)のB204−1〜4を参照)による計算値を使用した。
【0031】
図2に示すように、本実施例では、冷媒R32を使用した冷凍サイクル装置の接続配管7,8の管外径は、冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置の接続配管7,8の管外径を「D0/8インチ」としたとき(但し、本実施例では、前記D0の範囲を、液接続配管7では「2≦D0≦4」とし、ガス接続配管8では「3≦D0≦8」とする)、これよりも1ランク細い管外径、即ち「(D0−1)/8インチ」に設定している。
即ち、前記接続配管7,8の管外径は、冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置のものでは、一般に、ガス側接続配管8は5/8インチ(15.88mm)、液側接続配管7は3/8インチ(9.53mm)のものが使用されているので、図2の説明でも前述した管外径のものを使用しているものとする。これに対して、本実施例の冷媒R32を使用した冷凍サイクル装置では、接続配管7,8の管外径はガス側接続配管8及び液側接続配管7共に、1ランク細い管外径のものを使用しているので、ガス側接続配管8では4/8インチ(=1/2インチ:12.7mm)であり、液側接続配管7では2/8インチ(=1/4インチ:6.35mm)のものを使用している。
【0032】
この図2からわかるように、冷媒R32を使用した冷凍サイクル装置においては、接続配管7,8の管外径を、冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置での接続配管7,8の管外径よりも1ランク細く設定することで、以下の効果が得られる。
即ち、図2の表は、COPが冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置のCOPと同等であるから、冷凍空調機器の性能を低下させることなく、銅の使用量の削減や施工時の接続配管の施工性を向上した冷凍サイクル装置を得ることができる。また、冷凍空調機器使用時の電力量は、R410Aを使用した場合と同等であるから、発電に伴う電力使用時の二酸化炭素の排出量を増加させることなく、低GWP(地球温暖化係数)の冷媒R32を使用しているため、地球温暖化防止に効果のある冷凍サイクル装置を得ることができる。更に、接続配管7,8の管外径を細くできることにより、前記接続配管の材料である銅の使用量の削減を図ることができ、しかも冷凍空調機器施工時における接続配管の施工性の向上も図ることのできる冷凍サイクル装置を得ることができる。
【0033】
なお、図2の例では、定格冷凍能力が7.1kWと12.5kWについて説明しているが、これらの間の定格冷凍能力の冷凍サイクル装置についても、ガス側接続配管径及び液側接続配管径は図2に示すものと同様である。」







(イ)上記(ア)の記載から認められる事項
上記(ア)の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の段落0001、0012、0013、0019及び0023には、冷凍サイクル装置の記載がある。
そして、冷凍サイクル装置は、上記(ア)の段落0023及び0024並びに図1の記載によれば、冷房運転の場合、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁2、熱源機側熱交換器3、第1の膨張装置4、阻止弁6、液側接続配管7、第2の膨張装置21、利用側熱交換器22、ガス側接続配管8、阻止弁9、四方弁2、アキュームレータ10を順に経て、再び圧縮機1に戻るように接続配管(冷媒配管)で接続された冷媒の回路を形成しており、また、上記(ア)の段落0023及び0025並びに図1の記載によれば、暖房運転の場合、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁2、阻止弁9、ガス側接続配管8、利用側熱交換器22、第2の膨張装置21、液側接続配管7、阻止弁6、第1の膨張装置4、熱源側熱交換器3、四方弁2、アキュームレータ10を順に経て、再び圧縮機1に戻るように接続配管(冷媒配管)で接続された冷媒の回路を形成しているから、引用文献1には、室外機と室内機とを繋ぐ接続配管と熱交換器とで構成される冷媒が内部を循環する回路、すなわち冷媒回路を有する冷凍サイクル装置が記載されているものと認められる。

b 上記(ア)の段落0023の「図1は冷凍サイクル装置としての空気調和機を示しており、室外機40と室内機20とが液側接続配管7とガス側接続配管8により接続されている。」との記載によれば、液側接続配管7とガス側接続配管8は、室外機40と室内機20とを接続するものとして説明がされており、空気調和機等の冷凍サイクル装置において、室外機と室内機とを接続する液側接続配管とガス側接続配管は、設置現場に応じて長さを調節できるように、また、室内機と室外機の設置作業が容易にできるように、室外機及び室内機とは別体にされることは本願の出願前に技術常識であることを考慮すると、引用文献1に記載された液側接続配管7とガス側接続配管8においても室外機40及び室内機20とは別体にされるものと認められる。
そして、上記(ア)の段落0023の「前記圧縮機1、熱源機側熱交換器3、第1の膨張装置4、液側接続配管7、第2の膨張装置21、利用側熱交換器22、ガス側接続配管8などは順次接続配管(冷媒配管)で接続されて冷凍サイクル装置(本実施例では空気調和機)が構成されている。」との記載、上記(ア)の段落0024の「凝縮液化した冷媒は全開とされた第1の膨張装置4を通り、その後阻止弁6、液側接続配管7を通過して、前記室内機20へ送られる。前記室内機20送られた液冷媒は、第2の膨張装置21へ流入し、ここで減圧されて低圧の二相状態となり、利用側熱交換器22で空気等の利用側媒体と熱交換して蒸発・ガス化する。」との記載及び上記(ア)の図1の記載を合わせて考慮すると、液側接続配管7と第2膨張装置21とを接続する液側の接続配管(冷媒配管)及びガス側接続配管8と利用側熱交換器22とを接続するガス側の接続配管(冷媒配管)が別途、室内機20に設けられていることが認められる。
そうすると、上記(ア)の段落0023〜0025及び図1の記載によれば、室内機20は、利用側熱交換器22、第2の膨張装置21、前記第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管、前記第2の膨張装置21と前記利用側熱交換器22との間に接続された接続配管及び前記利用側熱交換器22に接続されたガス側の接続配管を有しており、冷媒回路を有する冷凍サイクル装置を構成可能なものであることが認められる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「利用側熱交換器22、第2の膨張装置21、前記第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管、前記第2の膨張装置21と前記利用側熱交換器22との間に接続された接続配管及び前記利用側熱交換器22に接続されたガス側の接続配管を有しており、冷媒回路を有する冷凍サイクル装置を構成可能な室内機20において、
前記冷媒回路に封入される冷媒をR32とし、
室外機40との間で前記室内機20に接続される液側接続配管7の管外径を、
(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としており、
前記液側接続配管7の管外径を、1/4インチとしており、
前記冷凍サイクル装置の定格冷凍能力は、7.1KWから12.5KWの範囲である、
室内機20。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11−63710号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)引用文献2の記載
「【0037】図1において、空気調和機Zは、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、電子式自動膨張弁4を冷媒配管により接続し、筐体内に収容した室外機Z1と、室外熱交換器5を筐体内に収容した室内機Z2とからなり、室内機の接続部C2,C4と室外機Z1の接続部C1,C3を接続配管P1,P2で接続することにより、冷媒管を介したヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成する。
・・・
【0044】室内冷媒配管6、冷媒管9a,9b,9c,9d及び室内熱交換器5に対し上流側となる接続配管P1、接続部C1から室外熱交換器5までの冷媒管9fの管径は、5mm乃至7mmとすることが好ましく、この実施形態では6.35mm(2/8インチ)を用いている。また、冷媒管9c,9dの合流部f3と室内機Z2の接続部C4との間を接続する冷媒管9e、及び室内熱交換器5に対して下流側となる接続配管P2の管径は、8mm乃至10mmであり、この実施形態では、9.52mm(3/8インチ)を用いている。また、室外熱交換器5と圧縮器1の間の冷媒管9gや接続部C3と圧縮機1の間の冷媒管9hは、127mmの管径となっている。因みに従来では、冷房能力が28クラス(2.8KW)までの低い出力パワーの空気調和機に対してのみ、6.35mm(2/8インチ)と9.52mm(3/8インチ)の管径の接続配管が用いられている一方、冷房能力が4KW以上の空気調和機に対してはR22の圧力損失による冷房・暖房能力の低下を防止するために、6.35mm(2/8インチ)と12.7mm(4/8インチ)の管径の接続配管が用いられていたので接続配管の管径差が大きく、空気調和機の据付時の管接続作業がやりにくいという欠点があった。
【0045】以上のように構成される空気調和機においては、冷房モードにおいて電子式自動膨張弁4を経た冷媒は補助熱交換器5b2に形成された入口部7に送られ、補助熱交換器5b2の室内冷媒配管6を経て接続冷媒配管9を通り第1熱交換器部5Aの室内冷媒配管6へ送られ、第1熱交換器部5Aに設けられた分岐部8において流路eから流路g,hに分流する。流路gを経た冷媒は第1熱交換器部5Aの出口流路f1に至り、流路hを経た冷媒は補助熱交換器5b2の出口流路f2に至り、出口流路f1から出た冷媒と出口流路f2から出た冷媒は合流し、四方弁2へ送られる。」





(イ)引用文献2の記載事項
上記(ア)から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。(括弧内は本件補正発明又は本願明細書の対応する用語を示す。)
「空気調和機Z(冷凍装置)において、室内機Z2(室内ユニット)が有する液側の冷媒管9a(冷媒管)の管外径を、室外機Z1(室外ユニット)と室内機Z2とを接続する液側の接続配管P1(液冷媒連絡配管)の管外径と同じ2/8インチとし、また、室内機Z2が有するガス側の冷媒管9eの管外径を、室外機Z1と室内機Z2とを接続するガス側の接続配管P2(ガス冷媒連絡配管)の管外径と同じ3/8インチとすること。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「利用側熱交換器22」は、前者の「熱交換器」に相当し、以下同様に、「前記第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管、前記第2の膨張装置21と前記利用側熱交換器22との間に接続された接続配管及び前記利用側熱交換器22に接続されたガス側の接続配管」は「複数の冷媒管」に、「冷媒回路」は「冷媒回路」に、「冷凍サイクル装置」は「冷凍装置」に、「室内機20」は「室内ユニット」に、「R32」は「R32」に、「定格冷凍能力」は「定格能力」にそれぞれ相当する。

イ 後者の「利用側熱交換器22」、「前記第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管、前記第2の膨張装置21と前記利用側熱交換器22との間に接続された接続配管及び前記利用側熱交換器22に接続されたガス側の接続配管を有しており」は、前者の「熱交換器および複数の冷媒管を有しており」に相当する。

ウ 後者の「前記冷凍サイクル装置の定格冷凍能力は、7.1KWから12.5KWの範囲である」は、前者の「前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「熱交換器および複数の冷媒管を有しており、冷媒回路を有する冷凍装置を構成可能な室内ユニットにおいて、
前記冷媒回路に封入される冷媒をR32とし、
前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である、
室内ユニット。」

[相違点1]
本件補正発明では、室内ユニット(3)の「前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、
(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としており、
前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、2/8インチ以下として」いるのに対して、
引用発明では、「室外機40との間で前記室内機20に接続される液側接続配管7の管外径を、
(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としており、
前記液側接続配管7の管外径を、1/4インチとして」いるものの、第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管、第2の膨張装置21と前記利用側熱交換器22との間に接続された接続配管及び利用側熱交換器22に接続されたガス側の接続配管について、管径の特定はされていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
引用発明は、上記相違点1に係る液側接続配管7の管外径についての構成(すなわち、液側接続配管7の管外径を1/4インチと定めること)により、「接続配管7,8の管外径を細くできることにより、前記接続配管の材料である銅の使用量の削減を図ることができ、しかも冷凍空調機器施工時における接続配管の施工性の向上も図ることのできる冷凍サイクル装置を得ることができる。」(引用文献1の段落0032)との効果を奏するものである。
そして、引用発明の「第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管」は、「液側接続配管7」に直列に接続され、「液側接続配管7」と同じく室外機40の第1の膨張装置4と室内機20の第2の膨張装置21とを連絡する接続配管を構成するものであるから、上記の効果を十分に発揮するためには、引用発明の「第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管」の管外径を「液側接続配管7」の管外径と同様にする必要があるといえる。
また、引用文献2の記載事項において、室内ユニットが有する液側の冷媒管の管外径を、室外ユニットと室内ユニットとを接続する液冷媒連絡配管の管外径と同じ(2/8インチ、すなわち1/4インチ)にすることが示されていることから、引用発明において、「第2の膨張装置21に接続された液側の接続配管(本願発明の「複数の冷媒管のうち、少なくとも1つ」に相当。以下括弧内は同様。)」の管外径を、
「(Do−1)/8インチ
(ここで、「Do/8インチ」は前記冷媒回路に封入される冷媒をR410Aとした場合の管外径である)
としており、
前記複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、1/4インチ(2/8インチ以下)」とし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書の「4−6.理由1(進歩性)について」において、「すなわち、引用文献2のこの段落には、「連絡配管(液管)P1と室内ユニット内部配管の一部を2分管とし、連絡配管(ガス管)P2と室内ユニット内部配管の一部を3分管とする」という知見が記載されていると理解するのが自然であると考えられます。したがって、審査官殿がお示しになった、引用文献2の同段落に“連絡配管と室内ユニット内部配管の両方を同じ管径にする”という知見が記載されているという見解は、引用文献2の内容の恣意的な抽出によって特定の含意を持たせようとするものです。
引用文献2の知見を引用文献1に組み合わせても、室内ユニットの冷媒管の管外径は「2分管」又は「3分管」になるのであって「室外ユニットと同じ」になるわけではありません。」(6ページ8行〜同ページ17行)と主張する。
しかしながら、引用文献2の図1の記載から分かるように、室内機Z2(室内ユニット)が有する液側の冷媒管9a(冷媒管)は室外機Z1(室外ユニット)と室内機Z2とを接続する液側の接続配管P1(液冷媒連絡配管)と接続され、また、室内機Z2(室内ユニット)が有するガス側の冷媒管9eは、室外機Z1と室内機Z2とを接続するガス側の接続配管P2と接続された構成が看て取れ、引用文献2の段落0044の記載から、冷媒管9a及び液側の接続配管P1は同じ2/8インチとされ、冷媒管9e及びガス側の接続配管P2は同じ3/8インチとされることが認められ、このことは、「連絡配管(液管)P1と室内ユニット内部配管の一部を2分管とし、連絡配管(ガス管)P2と室内ユニット内部配管の一部を3分管とする」こととは別に認定することが可能であるから、上記(2)イ(イ)に示した引用文献2の記載事項に誤りはない。

ウ 効果について
そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2の記載事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和3年4月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由1は、以下のとおりである。
<理由1(特許法第29条第2項)について>
本願の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013−200090号公報
引用文献2:特開平11−63710号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2、それらの記載並びに引用発明及び引用文献2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数の冷媒管」について、「複数の冷媒管のうち、少なくとも1つの管外径を、2/8インチ以下としており」との限定事項を削除するとともに、「冷凍装置」について、「前記冷凍装置の定格能力は、7.1kW以上である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-07-28 
結審通知日 2022-08-02 
審決日 2022-08-24 
出願番号 P2017-008436
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
発明の名称 室内ユニット  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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