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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) A47L |
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管理番号 | 1390409 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-01-24 |
確定日 | 2022-11-02 |
事件の表示 | 特願2017−116767号「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月10日出願公開、特開2019−296号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年6月14日に出願されたものであって、令和3年5月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して令和4年1月24日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に、手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <刊行物> 引用文献1:特公昭46−7758号公報 引用文献2:特開平6−30859号公報 引用文献3:特開2001−29280号公報 引用文献4:実願昭63−64737号(実開平1−168241号)のマイクロフィルム 引用文献5:実願平3−5372号(実開平4−103851号)のマイクロフィルム 第3 本願発明 本願の請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和4年1月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 走行輪と、この走行輪の回転軸を含む鉛直面に対して一側と他側と亘る範囲で揺動可能に設けられた本体部とを備えた掃除機本体と、 ホース体と、 このホース体の一端側に取り付けられ、前記ホース体を前記本体部に対して接続する接続体と、 この接続体に対して前記本体部の揺動一方向側の位置と揺動他方向側の位置とにそれぞれ設けられ、床との接触により前記ホース体の一端側が床に対して非接触となる位置に前記本体部の各揺動端を規定する支持部材と、 前記本体部に対する前記接続体の接続方向に沿って前記接続体に固定され、把持される本体把持部と、を具備し、 前記本体把持部は、前記ホース体側の端部が床に対して橇として作用するように前記ホース体の中心に向かう方向に傾斜し、 前記本体把持部に一方の前記支持部材が配置され、この一方の前記支持部材は、前記床と接地する部分に車輪を備える ことを特徴とした電気掃除機。 【請求項2】 支持部材を接続体に対して付勢する付勢部材を具備した ことを特徴とした請求項1記載の電気掃除機。 【請求項3】 支持部材は、弾性体により形成されている ことを特徴とした請求項1または2記載の電気掃除機。 【請求項4】 本体把持部は、掃除機本体の走行輪による走行方向に沿って設けられている ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか一記載の電気掃除機。 【請求項5】 本体把持部は、本体部の揺動一方向側と揺動他方向側とのそれぞれの位置で接続体に設けられている ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか一記載の電気掃除機。」 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 ア 「・・・本発明は前述の如き欠点を除去するためとして90度方向の回転を要する場合には後部後輪の軸を支点として本体部の反転使用可能なるものとなし、更に前記本体部の後面に手押操作用ハンドル取付可能なアダプターを設けて後面方向よりの操作を可能となした電気掃除機の改良創案に関するものである。」(1ページ左欄27〜33行) イ 「1は締結金具2を介して前・後部3,4方向に2分割状に分離可能となせる吸塵機構内蔵用の本体部で、これの前部3の先端方向には、吸塵管5を取付するためのソケツト部6を着脱自在に取付配置せしめてあると共に両側面に跨掛けせる把手7が配置してあり、・・・」(1ページ左欄36行〜右欄3行) ウ 「・・・しかもこの後部両側には、本体部1の厚みより大なる径にして該後部が車輪面より後方に突出せざるような大径状の後輪13,13’を取付配置するためのパイプ形状より成る車軸14を有する・・・」(1ページ右欄11〜14行) エ 「なお前記ソケツト部6の上下には、自由回転可能なそりアーム16,16’を介して夫々前輪17が設けてある。」(1ページ右欄19〜21行) オ 「しかして本発明の電気掃除機は前述の如き構成構造即ち、吸塵機構内装備用としての前面に吸塵管取付用のソケツト部と後面に手押操作用ハンドル取付用のアダプターとを設けた2分割可能な本体部を形成し、且つこれの両側に配置せる後輪の径を該本体部の厚みより大にし、しかもこの本体部後方が車輪面より後方に突出せざるが如き大径車輪となし、更に前記ソケツト部の上下面に自由な方向性を有するそりアームを夫々介して前輪を配設装備するようなした上、この前輪と前記後輪との存在により本体部を後輪の支軸面を支点として反転せしめた際にあつても床面より水平状に遊離使用可能なるようにした事を特徴とするものであるから、従来の如き後方に対する急激な回転使用は、本体部の反転使用により除去し得るものであるから従来応々にして生じた掃除機の転倒は適確に除去出来、しかも、手押操作用ハンドルの着脱利用をも可能となしたので、従来腰を折曲げての使用姿態による利用者の苦痛を一掃し得る等のこの種掃除機としては最適な効果を発揮出来るものである。」(1ページ右欄35行〜2ページ右欄2行) カ 「 」(図1) キ 「 」(図2) (2) 引用文献1から理解できる技術的事項 ク 前記アの「・・・後部後輪の軸を支点として本体部の反転使用可能なる・・・」との記載、ウの「・・・後輪13,13’を取付配置するための・・・車軸14を有する・・・」、前記オの「・・・本体部を後輪の支軸面を支点として反転せしめた・・・」との記載、及び図2の図示内容からみて、本体部は、後輪13,13’の車軸14を支点として一方側と他方側に揺動可能に設けられていることが理解できる。 ケ 前記イの「1は・・・本体部で、これの前部3の先端方向には、吸塵管5を取付するためのソケツト部6を着脱自在に取付配置せしめてある・・・」との記載、及び図2の図示内容からみて、ソケツト部6は、吸塵管5の一端側に取付けられ、吸塵管5を本体部1に取付けることが理解できる。 コ 前記エの「・・・ソケツト部6の上下には、自由回転可能なそりアーム16,16’を介して夫々前輪17が設けてある。」との記載、前記オの「・・・前輪と前記後輪との存在により本体部を後輪の支軸面を支点として反転せしめた際にあつても床面より水平状に遊離使用可能なるようにした・・・」との記載、及び図1〜2の図示内容からみて、前輪17を設けた自由回転可能なそりアーム16,16’が、ソケツト部6に対して、本体部1が後輪13,13’の車軸14を支点として一方側に揺動した際の下方位置と、他方側に揺動した際の下方位置とにそれぞれ設けられ、床面との接触により吸塵管5の一端側が床面より水平状に遊離使用可能なるようにすることが理解できる。 (3) 引用発明 前記ア〜コの事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「後輪13,13’と、 この後輪13,13’の車軸14を支点として一方側と他方側に揺動可能に設けられた本体部1と、 吸塵管5と、 この吸塵管5の一端側に取付けられ、前記吸塵管5を前記本体部1に取付けるソケツト部6と、 このソケツト部6に対して、前記本体部1が前記後輪13,13’の前記車軸14を支点として前記一方側に揺動した際の下方位置と前記他方側に揺動した際の下方位置とにそれぞれ設けられ、床面との接触により前記吸塵管5の一端側が床面より水平状に遊離使用可能なるようにする前輪17を設けた自由回転可能なそりアーム16,16’と、 前記本体部1の両側面に跨掛けせる把手7と、を具備する電気掃除機」 2 引用文献5 (1) 引用文献5の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、以下の記載がある。 ア 「【0009】図2は本考案の他の実施例を示すもので、15は電気掃除機の本体で、一側の上面に吸込口16が真上に向けて設けられ、他側の底面に複数の後輪17が備えられている。18は前記吸込口16に回動自在に枢着された接続筒体で、回転軸19を垂直に形成し、一端部にホース着脱口20を備えると共に、本体15の底面に向けてアーム21を一体に延出している。前記アーム21は先端部に突起22を上方に向けて一体に突出形成すると共に、この突起22を回転軸19に一致させて本体15底面に枢支せしめ、さらに突起22の直下に車軸24を回転軸19に一致せしめた前輪23を備えている。これによると、アーム21を把手として用いることができるので、専用の把手を省略することができる。」 イ 「 」(図2) (2) 引用文献5に記載された技術的事項 前記ア〜イの記載事項を総合すると、引用文献5には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「本体15の一側の上面に真上に向けて吸込口16が設けられ、他側の底面に複数の後輪17が備えられている電気掃除機において、 吸込口16に回動自在に枢着された接続筒体18から本体15の底面に向けて把手として用いることができるアーム21を一体に延出しており、このアーム21の先端部に上方に向けて突出形成した突起22を本体15底面に枢支せしめ、さらに突起22の直下に前輪23を備えていること。」 3 引用文献2 (1) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の記載がある。 ア 「【0014】12は前記掃除機本体1の前方底面に配設されたキャスター、13は前記掃除機本体1の両側部に回転自在に配設された後車輪で、該後車輪13の接地点Aと軸心14とを結ぶ線の側近で且つ前方に、前記掃除機本体1の重心Bが位置している。 【0015】15は前記掃除機本体1の後車輪13より後方底面部に形成された後上がりの傾斜面、16は前記傾斜面15の後端部に配設された補助車輪で、前記掃除機本体1前方が浮き上がった際に床面に当接し、該補助車輪16により前記掃除機本体1前方が浮き上がった状態で移動できるようになっている。」 イ 「 」(図1、図4) (2) 引用文献2に記載された技術的事項 前記ア〜イの記載事項を総合すると、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「掃除機本体1の前方底面にキャスター12が配設され、掃除機本体1の両側部に後車輪13が回転自在に配設された掃除機において、 掃除機本体1の後車輪13より後方底面部に後上がりの傾斜面15が形成され、傾斜面15の後端部に補助車輪16が配設され、掃除機本体1前方が浮き上がった際に補助車輪16が床面に当接し、該補助車輪16により掃除機本体1前方が浮き上がった状態で移動できること。」 4 引用文献3 (1) 引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、以下の記載がある。 ア 「【0008】図4に本発明の一実施例に係る掃除機の外観の斜視図を示す。 【0009】同図において、401は制御回路や電動送風機が内蔵された掃除機本体、402は掃除機本体401の吸込口部に接続された継手部、403は一端を前記継手部に取付けられたホース、404は前記ホースの他端に接続された手元部、406は該手元部に接続され前記ホースに連通する延長管、405は前記延長管406に連通する吸口を示している。」 イ 「【0021】掃除機本体に取付けられた車輪1001の軸心が、電動送風機510の重心より掃除機本体401の進行方向に対して後部にあることで、掃除機本体401を安定した状態で立てることができる。・・・」 ウ 「【0022】図1に本発明の一実施例に係る縦収納状態を示す。 【0023】継手部402は、掃除機本体401の吸込口503に差し込まれる継手101、該継手の上部に設けられた把手部102とからなり、把手部102は継手101に着脱自在に取付けられ、把手部102には延長管406の連結部105を底面方向に抑制し、操作部201と係止部202からなるツマミ104を有し、該ツマミ104の係止部202は、延長管406に取付けられた連結部105と係合する。ツマミカバー103は、縦収納状態におけるツマミ104を延長管406が抜ける上方向とは反対の下方向に保持をしている。」 エ 「 」(図1、図4) (2) 引用文献3に記載された技術的事項 前記ア〜エの記載事項を総合すると、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「掃除機本体401、掃除機本体401の吸込口503に接続された継手部402、一端を継手部402に取付けられたホース403、ホース403に連通する延長管406を備え、掃除機本体401に取付けられた車輪1001の軸心が、電動送風機510の重心より掃除機本体401の進行方向に対して後部にある掃除機において、 継手部402は、掃除機本体401の吸込口503に差し込まれる継手101、該継手101の上部に設けられた把手部102とからなり、把手部102はツマミ104を有し、該ツマミ104の係止部202は、延長管406に取付けられた連結部105と係合すること。」 5 引用文献4 (1) 引用文献4の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、以下の記載がある。 ア 「また、本体前部2aの上面2eと下面2fとに自在車輪4a,4bを設け、本体後部2bの左右両側面2g,2hの後端部に支持軸3aを介して支持車輪3,3を設けている。」(明細書5ページ17〜20行) イ 「一方、掃除機本体2の重心に近い上面2eと下面2fとにそれぞれ凹部2j,2kを設け、これら凹部2j,2k内に収納可能にハンドル5a,5bを設けている。・・・」(明細書6ページ11〜14行) ウ 「まず、通常の使用状態では、第1図に示すように、掃除機本体2は、該掃除機本体2の下面2fに設けた自在車輪4aと、支持車輪3,3とによって支持されている。・・・(中略)・・・この際、掃除機本体2の下面2fに設けたハンドル5aは、床面7に接触しないように、凹部2k内に収納しておくものとする。 次に、この状態から掃除機本体2を反転させるには、第3図に示すように、掃除機本体2を支持車輪3,3の支持軸3aを中心として180°回転させればよい。・・・(中略)・・・こうして反転した掃除機本体2は、第2図に示すように、上記支持車輪3,3と掃除機本体2の上面2eに設けた自在車輪4bとによって支持され通常の使用状態となる。この際、上面2eに設けたハンドル5bは凹部2j内に収納しておくものとする。」(明細書7ページ1行〜8ページ8行) エ 「掃除機本体2を持ち運ぶ際には、上面側に位置するハンドル5a,5bを引起して持ち運ぶことができる。」(明細書8ページ17〜19行) オ 「 」(図1、図2) (2) 引用文献4に記載された技術的事項 前記ア〜オの記載事項を総合すると、引用文献4には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「通常の使用状態では、掃除機本体2の下面2fに設けた自在車輪4aと支持車輪3,3とによって掃除機本体2が支持され、支持車輪3,3の支持軸3aを中心として180°回転させた使用状態では、掃除機本体2の上面2eに設けた自在車輪4bと支持車輪3,3とによって掃除機本体2が支持される電気掃除機において、 掃除機本体2の上面2eと下面2fとにそれぞれ凹部2j,2kを設け、これら凹部2j,2k内に収納可能にハンドル5a,5bを設け、使用状態では、ハンドル5a,5bを凹部2j,2k内に収納しておき、掃除機本体2を持ち運ぶ際には、上面側に位置するハンドル5a,5bを引起して持ち運ぶこと。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「後輪13,13’」は本願発明1の「走行輪」に相当し、以下同様に、「車軸14」は「回転軸」に、「本体部1」は「本体部」に、「後輪13,13’の車軸14を支点として一方側と他方側に揺動可能に設けられた」との事項は「走行輪の回転軸を含む鉛直面に対して一側と他側と亘る範囲で揺動可能に設けられた」との事項に、「後輪13,13’」と「本体部1」をあわせたものは「掃除機本体」に、それぞれ相当する。 イ 引用発明の「吸塵管5」は本願発明1の「ホース体」に相当し、以下同様に、「吸塵管5の一端側に取付けられ」るとの事項は「ホース体の一端側に取り付けられ」るとの事項に、「前記吸塵管5を前記本体部1に取付ける」との事項は「前記ホース体を前記本体部に対して接続する」との事項に、「ソケツト部6」は「接続体」に、それぞれ相当する。 ウ 引用発明の「前記本体部1が前記後輪13,13’の前記車軸14を支点として前記一方側に揺動した際の下方位置と前記他方側に揺動した際の下方位置」は本願発明1の「前記本体部の揺動一方向側の位置と揺動他方向側の位置」に相当する。 エ 引用発明の「床面」は本願発明1の「床」に相当し、以下同様に、「床面との接触により前記吸塵管5の一端側が床面より水平状に遊離使用可能なるようにする」との事項は「床との接触により前記ホース体の一端側が床に対して非接触となる位置に前記本体部の各揺動端を規定する」との事項に、「前輪17を設けた自由回転可能なそりアーム16,16’」は「支持部材」に、それぞれ相当する。 オ 引用発明の「把手7」は本願発明1の「本体把持部」に相当し、この引用発明の「把手7」は、利用者により把持される部位であることは明らかであるから、引用発明の「前記本体部1の両側面に跨掛けせる把手7」と本願発明1の「前記本体部に対する前記接続体の接続方向に沿って前記接続体に固定され、把持される本体把持部」とは、「把持される本体把持部」である限りにおいて一致する。 カ 前記エのとおり、引用発明の「前輪17を設けた自由回転可能なそりアーム16,16’」は、本願発明1の「支持部材」に相当し、「床面との接触により前記吸塵管5の一端側が床面より水平状に遊離使用可能なるようにする」ものであるから、引用発明は、本願発明1の「一方の前記支持部材は、前記床と接地する部分に車輪を備える」との事項に相当する構成を有するといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、 「走行輪と、この走行輪の回転軸を含む鉛直面に対して一側と他側と亘る範囲で揺動可能に設けられた本体部とを備えた掃除機本体と、 ホース体と、 このホース体の一端側に取り付けられ、前記ホース体を前記本体部に対して接続する接続体と、 この接続体に対して前記本体部の揺動一方向側の位置と揺動他方向側の位置とにそれぞれ設けられ、床との接触により前記ホース体の一端側が床に対して非接触となる位置に前記本体部の各揺動端を規定する支持部材と、 把持される本体把持部と、を具備し、 一方の前記支持部材は、前記床と接地する部分に車輪を備える電気掃除機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本体把持部について、 本願発明1では、本体把持部は「前記本体部に対する前記接続体の接続方向に沿って前記接続体に固定され」ており、「前記本体把持部は、前記ホース体側の端部が床に対して橇として作用するように前記ホース体の中心に向かう方向に傾斜し、前記本体把持部に一方の前記支持部材が配置され」るのに対して、 引用発明では、把手7は「前記本体部1の両側面に跨掛けせ(られ)る」点。 (2) 判断 前記相違点について検討する。 ア 引用文献1には、把手7は「本体部1に対するソケツト部6の接続方向に沿ってソケツト部6に固定され」、「把手7は、吸塵管5側の端部が床面に対して橇として作用するように吸塵管5の中心に向かう方向に傾斜し、把手7に前輪17を設けたそりアーム16,16’の一方が配置され」ることについて記載も示唆もない。 仮に、引用発明におけるそりアーム16,16’が、床面に対して橇として作用すると考えた場合でも、引用発明が、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えるためには、「自由回転可能な」そりアーム16,16’に把手7を兼ねさせるようにすることと、把手7を「本体部1に対するソケツト部6の接続方向に沿ってソケツト部6に固定」することが必要となるが、これらは両立するものではなく、結局のところ、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項に到達することはできない。 イ 引用文献5には、前記「第4」の2(2)のとおり、「吸込口16に回動自在に枢着された接続筒体18から本体15の底面に向けて把手として用いることができるアーム21を一体に延出しており、このアーム21の先端部に上方に向けて突出形成した突起22を本体15底面に枢支せしめ、さらに突起22の直下に前輪23を備えている」という、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項の一部(本体把持部は「前記接続体に固定され」ており、「前記本体把持部は」「前記ホース体の中心に向かう方向に傾斜し」、「前記本体把持部に一方の前記支持部材が配置され」)に相当する技術的事項が記載されている。 しかしながら、引用文献5に記載の「電気掃除機」は、その「本体15の一側の上面に真上に向けて吸込口16が設けられ、他側の底面に複数の後輪17が備えられている」構造からみて、後輪17の回転軸を中心に180°反転させた状態で使用可能なものではないことは明らかであり、本体部1を後輪13,13’の車軸14を支点として一方側と他方側に揺動可能に設けた引用発明とは技術の前提となる構成が異なるものである。 そうすると、当業者において、本体部1を後輪13,13’の車軸14を支点として一方側と他方側に揺動可能に設けた引用発明において、後輪17の回転軸を中心に180°反転させた状態では使用しないことを前提とする引用文献5に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。 ウ また、引用文献2〜4には、前記「第4」の3(2)〜5(2)に示した技術的事項がそれぞれ記載されているが、これら引用文献2〜4に記載された技術的事項はいずれも、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項に相当する構成を備えておらず、引用文献2〜4には、そのような構成を示唆する記載もない。 エ さらに、本願発明1は、「前記本体把持部は、前記ホース体側の端部が床に対して橇として作用するように前記ホース体の中心に向かう方向に傾斜し」との事項を備えることにより、「本体把持部35を下側とする位置・・・において、床Fに対向する本体把持部35のホース体31側の端部(前部連結部56)が床F上の凹凸や小さい障害物O・・・などに対していわば橇として作用し、これらを容易に乗り越えて掃除機本体13を円滑に走行させることが可能になる。」(本願明細書の段落【0046】)という特有の作用効果を奏するものである。 オ そうすると、当業者といえども、引用発明及び引用文献2〜5に記載された技術的事項から、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を、容易に想到することはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2〜5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2〜5について 本願発明2〜5は、本願発明1を特定するための事項のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2〜5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 原査定について 本願発明1〜5は、本体把持部は「前記本体部に対する前記接続体の接続方向に沿って前記接続体に固定され」、「前記本体把持部は、前記ホース体側の端部が床に対して橇として作用するように前記ホース体の中心に向かう方向に傾斜し、前記本体把持部に一方の前記支持部材が配置され」との事項を有するものであり、前記「第5」において検討したとおり、当業者であっても、原査定において引用された引用発明及び引用文献2〜5に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1〜5は、引用発明及び引用文献2〜5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-10-19 |
出願番号 | P2017-116767 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WYF
(A47L)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
佐々木 芳枝 |
特許庁審判官 |
田合 弘幸 冨永 達朗 |
発明の名称 | 電気掃除機 |
代理人 | 樺澤 襄 |
代理人 | 樺澤 聡 |
代理人 | 山田 哲也 |