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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60L
管理番号 1390423
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-07 
確定日 2022-11-08 
事件の表示 特願2017−125997「貨物自動車」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月17日出願公開、特開2019−9954、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月28日の出願であって、令和2年9月9日付け(発送日:同年9月15日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和2年10月27日に意見書が提出され、令和3年3月30日付け(発送日:同年4月6日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和3年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年11月12日付け(発送日:同年11月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年2月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。
「この出願については、令和3年3月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 1−4
請求項1、2には、それぞれ、「・・・前記制御装置は、前記駆動モータの回転数がゼロである場合、前記インバータに流れる電流値を、予め定められた前記踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に50%以上100%未満の任意の一定値である所定割合を乗じた値である制限値以下に制御する貨物自動車。」、「・・・前記制御装置は、前記踏み込み量が100%である場合、前記回転数がゼロよりも小さい第1回転数のとき、及び前記回転数がゼロよりも大きい第2回転数のとき、予め定められた前記踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に前記電流値を制御し、前記回転数がゼロのとき、前記最大値に50%以上100%未満の任意の一定値である所定割合を乗じた値である制限値に前記電流値を制御する貨物自動車。」と記載されている。
しかしながら、踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値の定め方次第で、駆動モータの回転数がゼロである場合にインバータに流れる電流値が変わることになるところ、具体的にどのような電流値に制御されるのか不明確であるとともに、当該発明特定事項によって、どのような技術的効果が奏されるのかも不明確である。
なお、出願人は、意見書において、技術的効果は当業者にとって明確である旨を主張しているが、前述のとおりであるから、当該主張は採用できない。

また、請求項1、2に従属する請求項3、4についても同様である。
よって、請求項1−4に係る発明は明確でない。」

第3 審判請求人の主張の概要
上記拒絶査定の拒絶に理由に対する審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
「しかしながら、拒絶査定における上記認定は、本願の発明者が着目している、
・トルク不足の場合にモータが回転しない(ゼロ回転)ことにより生じ得る課題(段落0004)、
・スイッチング素子の温度による電流値を強制的にゼロとする制御により生じる課題(段落0005)、
・乗用車と比較して車重変化が大きい貨物自動車において、スイッチング素子の温度を用いたフィードバック制御を実行する場合における課題(段落0006〜0008)、
について何ら考慮していまない。
本願発明の上記課題は、踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に対して、50%以上100%未満の一定の所定割合を乗じた制限された電流値を用いることによって解消し得る課題である。すなわち、50%以上100%未満の一定の所定割合を乗じた制限された電流値を用いるという構成は、電流値を最大値に維持することによる課題、電流値を0とすることによる課題、フィードバック制御により電流値を可変にすることの課題のいずれをも解消し得る構成である。
したがって、本願発明の上記課題は、具体的な電流値によって解決の有無が左右される課題ではなく、「踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に対する50%以上100%未満の一定の値」に電流値を抑制するという発明特定事項により解決され得ることは当業者にとって明白である。
さらに、この発明特定事項により、段落0004、0057〜0060に記載されている技術的効果を得ることが可能となり、当該技術的効果は、有用な技術的効果であることも当業者にとって明らかである。」

第4 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年6月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりものであると認める。

第5 判断
審判請求人の上記主張を参酌しつつ改めて本願発明1ないし本願発明5及び本願の発明の詳細な説明の記載をみると、本願発明1ないし本願発明5は、具体的な電流値を特定することによって課題を解決するものではなく、「踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に対して50%以上100%未満の任意の一定の制限値」に電流値を抑制するということにより課題を解決するものであることは、本願の発明の詳細な説明及び本願発明1ないし本願発明5の記載から明確に理解できるものである。
そして、上記の事情を踏まえれば、「踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値の定め方」に係る事項が本願発明1ないし5に明記されたか否かに関わらず、本願発明1における「予め定められた前記踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に50%以上100%未満の任意の一定値である所定割合を乗じた値である制限値以下に制御する」及び本願発明2の「予め定められた前記踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値に前記電流値を制御し」との事項は明確に理解できるのであるから、原査定における「踏み込み量が100%である場合における電流値の最大値の定め方次第で、駆動モータの回転数がゼロである場合にインバータに流れる電流値が変わることになるところ、具体的にどのような電流値に制御されるのか不明確であるとともに、当該発明特定事項によって、どのような技術的効果が奏されるのかも不明確である。」との拒絶の理由は、審判請求人の上記主張により解消されたと解するのが相当である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明5は明確である。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-10-26 
出願番号 P2017-125997
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 水野 治彦
河端 賢
発明の名称 貨物自動車  
代理人 弁理士法人明成国際特許事務所  

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