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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1390485
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-08-09 
確定日 2022-11-07 
事件の表示 特願2021− 36184「共有されたキーを使用する無線デバイスの選択的ペアリング」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月17日出願公開、特開2021− 93213、請求項の数(29)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)7月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年7月21日 米国、2016年1月11日 米国)を国際出願日とする特願2018−502779号の一部を、令和3年3月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 3月 8日 上申書の提出
令和3年11月 5日 手続補正書、上申書の提出
令和4年 1月13日付け 拒絶理由通知書
令和4年 3月16日 意見書の提出
令和4年 6月 2日付け 拒絶査定
令和4年 8月 9日 拒絶査定不服審判の請求
令和4年 8月31日 応対記録(作成)
令和4年 9月13日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和4年 9月16日 手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和4年6月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(進歩性)について
・請求項1ないし29に対して、特開2005−204123号公報(以下、「引用例1」という。)、特表2003−516033号公報(以下、「引用例2」という。)、及び特表2015−510743号公報(以下、「引用例3」という。)が引用された。

第3 当審拒絶理由の概要

当審における令和4年9月13日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(サポート要件)
・請求項7、18
請求項7には、「該複数のアドバタイジングパケットのうちの少なくとも1つが該共有されたキーのそれぞれの部分を含まない場合には、該ペアリングデバイスが、該複数のアドバタイジングパケットに応答しない」なる構成が記載されているが、当該構成は発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、請求項18においても同様の不備がある。
したがって、請求項7、18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第4 本願発明について

本願の請求項1ないし29に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明29」という。)は、令和4年9月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。(下線は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
ペアリングデバイスにおいて実行される方法であって、該方法は、
該ペアリングデバイスが、通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信することと、
該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれているか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれる場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致する場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットに応答することによって該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間の通信を確立することと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致しない場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットに応答しないことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アドバタイジングパケットは、前記ペアリングデバイスのアドレスを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共有されたキーは、ペアリングデバイスを製造または出荷するときに割り当てられるキー、または、ペアリングデバイスの出荷後に割り当てられるキーである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記共有されたキーは、1つのペアリングデバイスと前記通信デバイスとの間で共有されたキー、または、複数のペアリングデバイスと該通信デバイスとの間で共有されたキーである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記共有されたキーは、前記ペアリングデバイスと前記通信デバイスとの間で同じビット/バイト形式である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アドバタイジングパケットは、BLUETOOTH(登録商標)技術を介して送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペアリングデバイスが、複数のアドバタイジングパケットを受信することと、
該ペアリングデバイスが、該複数のアドバタイジングパケットのそれぞれが前記共有されたキーの一部を含むか否かをチェックすることと、
該複数のアドバタイジングパケットにおいて該共有されたキーの全体が発見される場合のみ、該ペアリングデバイスが、該複数のアドバタイジングパケットに応答することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ペアリングデバイスが、前記共有されたキーに基づいてユーザをオーソライズすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記応答することは、データ属性、名前、シリアル番号、MACアドレスのうちの1つ以上を前記通信デバイスまたはサーバに送信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アドバタイジングパケットは、暗号化されており、該アドバタイジングパケットは、前記共有されたキーと付加的データとを含み、該付加的データは、該共有されたキーおよび該付加的データが暗号化される前に該共有されたキーに付加される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記付加的データは、前記ペアリングデバイスとの各ペアリングに対して異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
システムであって、
該システムは、ペアリングデバイスと、該ペアリングデバイスと通信可能な通信デバイスとを備え、
該ペアリングデバイスは、
少なくとも1つのデータプロセッサと、
命令を格納するメモリと
を備え、
該命令は、該少なくとも1つのデータプロセッサによって実行されると、
該通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信することと、
該アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれているか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれる場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致する場合には、該アドバタイジングパケットに応答することによって該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間の通信を確立することと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致しない場合には、該アドバタイジングパケットに応答しないことと
を含む動作を該ペアリングデバイスに行わせる、システム。
【請求項13】
前記アドバタイジングパケットは、前記ペアリングデバイスのアドレスを含まない、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記共有されたキーは、ペアリングデバイスを製造または出荷するときに割り当てられるキー、または、ペアリングデバイスの出荷後に割り当てられるキーである、請求項12または請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記共有されたキーは、1つのペアリングデバイスに割り当てられているキー、または、複数のペアリングデバイスに割り当てられているキーである、請求項12〜14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記共有されたキーは、前記ペアリングデバイスと前記通信デバイスとの間で同じビット/バイト形式である、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記アドバタイジングパケットは、BLUETOOTH(登録商標)技術を介して送信される、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記動作は、
複数のアドバタイジングパケットを受信することと、
該複数のアドバタイジングパケットのそれぞれが前記共有されたキーの一部を含むか否かをチェックすることと、
該複数のアドバタイジングパケットにおいて該共有されたキーの全体が発見される場合のみ、該複数のアドバタイジングパケットに応答することと
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記動作は、
前記共有されたキーに基づいてユーザをオーソライズすること
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、前記ペアリングデバイスと通信可能なサーバをさらに備え、
前記応答することは、データ属性、名前、シリアル番号、MACアドレスのうちの1つ以上を前記通信デバイスまたは該サーバに送信することをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記アドバタイジングパケットは、暗号化されており、該アドバタイジングパケットは、前記共有されたキーと付加的データとを含み、該付加的データは、該共有されたキーおよび該付加された付加的データが暗号化される前に該共有されたキーに付加される、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
前記付加的データは、前記ペアリングデバイスとの各ペアリングに対して異なる、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
命令を含むコンピュータプログラムであって、該命令は、ペアリングデバイスの少なくとも1つのデータプロセッサによって実行されると、
通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信することと、
該アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれているか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれる場合には、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致する場合には、該アドバタイジングパケットに応答することによって該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間の通信を確立することと、
該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致しない場合には、該アドバタイジングパケットに応答しないことと
を含む動作を該ペアリングデバイスに行わせる、コンピュータプログラム。
【請求項24】
前記アドバタイジングパケットは、前記ペアリングデバイスのアドレスを含まない、請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記共有されたキーは、ペアリングデバイスを製造または出荷するときに割り当てられるキー、または、ペアリングデバイスの出荷後に割り当てられるキーである、請求項23または請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記共有されたキーは、1つのペアリングデバイスに割り当てられているキー、または、複数のペアリングデバイスに割り当てられているキーである、請求項23〜25のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記受信することは、前記通信デバイスと接続する前に、前記共有されたキーを使用して前記アドバタイジングパケットを受信することを含み、
前記応答することは、
該ペアリングデバイスが、該通信デバイスと接続することと、
該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間のデータ送信を開始することと
を含み、
該接続は、有線接続および無線接続のうちの少なくとも一方を含み、
該共有されたキーは、
該共有されたキーが、該通信デバイスによって格納されること、
該共有されたキーが、サーバおよび/または格納場所と該通信デバイスとの間で共有され、該サーバおよび/または格納場所が、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合されること、
該共有されたキーが、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合されるサーバおよび/または格納場所によって生成され、該通信デバイスに送信されること、および
それらの任意の組み合わせ
のうちの少なくとも1つによって、該通信デバイスに提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記システムは、前記ペアリングデバイスと通信可能なサーバおよび/または格納場所をさらに備え、
前記受信することは、前記通信デバイスと接続する前に、前記共有されたキーを使用して前記アドバタイジングパケットを受信することを含み、
前記応答することは、
該ペアリングデバイスが、該通信デバイスと接続することと、
該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間のデータ送信を開始することと
を含み、
該接続は、有線接続および無線接続のうちの少なくとも一方を含み、
該共有されたキーは、
該共有されたキーが、該通信デバイスによって格納されること、
該共有されたキーが、該サーバおよび/または格納場所と該通信デバイスとの間で共有され、該サーバおよび/または格納場所が、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合されること、
該共有されたキーが、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合される該サーバおよび/または格納場所によって生成され、該通信デバイスに送信されること、および
それらの任意の組み合わせ
のうちの少なくとも1つによって、該通信デバイスに提供される、請求項12に記載のシステム。
【請求項29】
前記受信することは、前記通信デバイスと接続する前に、前記共有されたキーを使用して前記アドバタイジングパケットを受信することを含み、
前記応答することは、
該ペアリングデバイスが、該通信デバイスと接続することと、
該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間のデータ送信を開始することと
を含み、
該接続は、有線接続および無線接続のうちの少なくとも一方を含み、
該共有されたキーは、
該共有されたキーが、該通信デバイスによって格納されること、
該共有されたキーが、サーバおよび/または格納場所と該通信デバイスとの間で共有され、該サーバおよび/または格納場所が、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合されること、
該共有されたキーが、該ペアリングデバイスおよび該通信デバイスのうちの少なくとも一方に通信可能に結合されるサーバおよび/または格納場所によって生成され、該通信デバイスに送信されること、および
それらの任意の組み合わせ
のうちの少なくとも1つによって、該通信デバイスに提供される、請求項23に記載のコンピュータプログラム。」

第5 引用発明について

1 引用例1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(特開2005−204123号公報)には、次の記載がある。(下線は当審が付与した。)

(1)「【0027】
図1に示すように、本発明の実施の形態1における無線ネットワークシステムには、第1の無線ネットワーク2と第2の無線ネットワーク4の二つの無線ネットワークが含まれている。第1の無線ネットワーク2には、電子装置であるコードレス電話機の親機3と、第2の無線ネットワーク4との間の中継装置として動作するリピータ5と、第2の無線ネットワーク4内で通話をしている移動体電子装置であるコードレス電話機の子機6aとを有している。また第1の無線ネットワーク2には、その他の電子装置として、携帯電話7や、通信機能を有するデジタルカメラ8や、親機3の子機6bなどが、通信を行っている。
(略)
【0029】
コードレス電話機の親機3と、リピータ5と、子機6と、携帯電話7と、デジタルカメラ8と、子機6は、ブルートゥースの規格に準拠した手順で通信を行っている。従って、ブルートゥースでは、第1の無線ネットワーク2と第2の無線ネットワーク4のような通信ネットワークをピコネットと呼んでいる。
(略)
【0032】
また、親機3及び子機6a,6b,6cは、同じメーカであるA社製のコードレス電話機の親機及び子機であり、これら親機及び子機はコードレス電話機として1セットである。また、リピータ5およびデジタルカメラ8もA社製とし、携帯電話7はB社製とする。」

(2)「【0053】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係る移動体電子装置の動作を図に基づいて説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る移動体電子装置の動作を説明する図である。なお、子機6aはまだ、どこの無線ネットワークであるピコネットとも同期を取っていない状態である。
【0054】
まず、子機6aは、リピータに対して、ピコネット内の同期をとるため、「問い合わせ」であるInquiryパケットを送信する。その際のInquiryパケットは、子機6aが接続可能なピコネット内の全ての電子装置が対象となるよう、「問い合わせアクセスコード」であるGIAC(General Inquiry Access Code)を示すブルートゥースアドレス(BD_ADDR)をパケットの先頭部であるアクセスコードに格納して送信される。しかし、ピコネット内の子機6aから送信されたInquiryパケットは、リピータ5 および親機3 へ到達しているが、周波数ホッピングで通信を行っているため、問い合わせ周波数ホッピングパターンが合わなければ応答はない(S10)。
(略)
【0056】
次に、再度、子機6は、Inquiryパケットを送信するが、今度は各電子装置が任意に決定することができるブルートゥースアドレスを使用してInquiryパケットを送信する。すなわち子機6は、接続対象装置を絞り込んだ「問い合わせアクセスコード」であるDIAC(Dedicated Inquiry Access Code)をパケットに付加して送信を試みる。
【0057】
子機6aおよび親機3やリピータ5は同じA社製なので、互いにDIACを待っている。また子機6aは、同じA社製のリピータ5のブルートゥースアドレスが予め判っている。従って子機6aは、通信制御部21に設定されたA社製のリピータ5のブルートゥースアドレスを使用したDIACをInquiryパケットとして、前述のGIACと同様に通信制御部21が送信パケット生成部37へ送信指示を出すことで送信することができる。
【0058】
これにより、A社製の子機6aから発したInquiryに対してはリピータ5を始めとする同じA社製の電子装置のみが応答するため、それだけ通信相手である電子装置がInquiryパケットを受信できる確率が高くなり、通信確立が早くなる。子機6aはこのDIACを用いたInquiryパケットを数回繰り返して送信する(S20)。」

(3)「【図3】



上記記載及び当業者における無線通信分野の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記「(1)」の段落29に「コードレス電話機の親機3と、リピータ5と、子機6と、携帯電話7と、デジタルカメラ8と、子機6は、ブルートゥースの規格に準拠した手順で通信を行っている。」と記載されていることから、携帯電話7はブルートゥースの規格に準拠した手順で通信する携帯電話7である。
また、上記「(1)」の段落32に「携帯電話7はB社製とする。」と記載されていることから、携帯電話7は、B社製の携帯電話7といえる。
そして、引用例1からは、以下の「イ」及び「ウ」の携帯電話7の動作を読み取ることができるから、引用例1には、ブルートゥースの規格に準拠した手順で通信するB社製の携帯電話7において実行される方法が記載されているといえる。

イ 上記「(2)」の段落54に「子機6aは、・・・「問い合わせ」であるInquiryパケットを送信する。その際のInquiryパケットは、子機6aが接続可能なピコネット内の全ての電子装置が対象となるよう、「問い合わせアクセスコード」であるGIAC(General Inquiry Access Code)を示すブルートゥースアドレス(BD_ADDR)をパケットの先頭部であるアクセスコードに格納して送信される。」と記載され、また、上記「(1)」の段落27に「無線ネットワークシステムには、第1の無線ネットワーク2と第2の無線ネットワーク4の二つの無線ネットワークが含まれている。第1の無線ネットワーク2には、・・・第2の無線ネットワーク4内で通話をしている移動体電子装置であるコードレス電話機の子機6aとを有している。また第1の無線ネットワーク2には、・・・携帯電話7・・・が、通信を行っている。」と記載され、更に、段落29に「子機6と、携帯電話7・・・は、ブルートゥースの規格に準拠した手順で通信を行っている。従って、ブルートゥースでは、第1の無線ネットワーク2と第2の無線ネットワーク4のような通信ネットワークをピコネットと呼んでいる。」と記載されていることから、Inquiryパケットはピコネット内の電子装置に送信されるものであって、ピコネット内の電子機器として携帯電話7があるから、携帯電話7がInquiryパケットを受信するといえる。
よって、携帯電話7が、子機6から「問い合わせアクセスコード」を先頭部に格納したInquiryパケットを受信するといえる。

ウ 上記「(2)」の段落54に「子機6aは、・・・「問い合わせ」であるInquiryパケットを送信する。その際のInquiryパケットは、子機6aが接続可能なピコネット内の全ての電子装置が対象となるよう、「問い合わせアクセスコード」であるGIAC(General Inquiry Access Code)を示すブルートゥースアドレス(BD_ADDR)をパケットの先頭部であるアクセスコードに格納して送信される。」と記載されていることから、「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットは全ての電子装置が送信対象となっている。ここで、ブルートゥースの規格ではInquiryパケットの送信対象となった装置が、Inquiryパケットを受信した場合に応答を返すことは技術常識であるから、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを先頭部に格納したInquiryパケットに対して、当該該Inquiryパケットを受信した全ての電子装置が応答するといえる。
また、上記「(2)」の段落56に「再度、子機6は、Inquiryパケットを送信するが、今度は各電子装置が任意に決定することができるブルートゥースアドレスを使用してInquiryパケットを送信する。すなわち子機6は、接続対象装置を絞り込んだ「問い合わせアクセスコード」であるDIAC(Dedicated Inquiry Access Code)をパケットに付加して送信を試みる。」、段落57に「子機6aおよび親機3やリピータ5は同じA社製なので、互いにDIACを待っている。」及び段落58に「A社製の子機6aから発したInquiryに対してはリピータ5を始めとする同じA社製の電子装置のみが応答する」と記載されていることから、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては全ての電子装置が応答するのに対し、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを付加したInquiryパケットに対しては同じA社製の電子装置のみが応答する。
ここで、「問い合わせアクセスコード」はパケットの先頭部であるアクセスコードに格納されて送信されるものであるから、「問い合わせアクセスコード」であるDIACを付加したInquiryパケットは、「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットといえる。
そして、上記「(1)」の段落32に「携帯電話7はB社製とする。」と記載されていることから、B社製の携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しないといえる。

以上を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ブルートゥースの規格に準拠した手順で通信するB社製の携帯電話7において実行される方法であって、該方法は、
携帯電話7が、子機6から「問い合わせアクセスコード」を先頭部に格納したInquiryパケットを受信することと、
携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しないことと
を含む、方法。」

2 引用例2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例2(特表2003−516033号公報)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与した。)
【0014】
INQUIRYプロシージャに関連するものとして、PAGE(呼び出し)プロシージャがある。PAGEプロシージャは、2つのBTユニット間で実際のコネクションを確立するために使用されるプロシージャである。INQUIRYプロシージャの実行結果として、一旦、隣接BTユニットのBD_ADDRが取得できれば、PAGEメッセージを使用することで隣接BTユニットを呼び出すことが可能となる。呼び出されているBTユニットの内部クロック値を知ることで、PAGEプロシージャをスピードアップできる。これは、隣接BTユニットがPAGEメッセージをリッスンするタイミングと周波数ホップチャネルとを、呼び出す側のユニットが推定できるようになるからである。PAGEメッセージは、デバイスアクセスコード(DAC)を含んでおり、これは呼び出されるBTユニットのBD_ADDRから導き出される。DACを含むPAGEメッセージを受信したBTユニットは、同一のパケットを用いて応答する。呼び出す側のBTユニットは、FHSパケットを用いて返答する。このFHSパケットには、呼び出す側のBTユニットのBD_ADDR、その現在の内部クロック値、呼び出される側のBTユニットに割り当てられたAM_ADDR及び他のパラメータが含まれている。呼び出されるBTユニットは、もう一度DACを用いて応答し、二つのBTユニット間のコネクションが確立される。」

以上のことから、引用例2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「INQUIRYプロシージャに関連するPAGEプロシージャは、2つのBTユニット間でコネクションを確立するために使用される。」

3 引用例3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例3(特表2015−510743号公報)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与した。)

(1)「【0014】
(略)
たとえば、ある実施形態のブロードキャストメッセージのペイロードは、全体で80ビットであってよく、バッテリ状態情報を示す4ビットとローリング識別子を示す76ビットとを含む。別の例として、ある実施形態のブロードキャストメッセージは、ノンスまたはカウンタを表す20ビットと、擬似ランダム関数または暗号化アルゴリズムにより生成されるようなローリング識別子を表す60ビットとを含み得る。」

(2)「【0239】
[0268]ブロック2216において、中心サーバは、ローリング識別子を含むメッセージを受信し得る。たとえば、受信されたメッセージは、ブロック2210の動作によりワイヤレス識別送信機によってブロードキャストされるローリング識別子を含む、近隣ブロードキャスト受信機からのサイティングメッセージであり得る。ブロック2018において、中心サーバは、たとえば、受信されたメッセージを解析してローリング識別子のペイロードを識別することによって、ローリング識別子を抽出することができる。」

(3)「【0244】
[0272]決定ブロック2222において、中心サーバは、生成されたサーバ暗号化データ(C’)が受信されたローリング識別子と同じかどうかを決定し得る。言い換えれば、中心サーバは、受信されたローリング識別子を生成されたサーバにより暗号化されたデータと比較して、それらが一致するかどうかを決定し得る。ローリング識別子および生成されたサーバにより暗号化されたデータが一致する場合(すなわち、決定ブロック2222=「はい」)、ブロック2024において、中心サーバは、受信されたメッセージは、選択されたワイヤレス識別送信機から発信されたものと識別し得る(たとえば、選択されたワイヤレス識別送信機のユニーク識別子に対応する)。」

以上のことから、引用例3には、以下の二つの技術事項が記載されていると認められる。

ア 「ブロードキャストメッセージのペイロードにローリング識別子が含まれる。」(以下「技術事項1」という。)

イ 「中心サーバは、ブロードキャストされるローリング識別子を含むメッセージを受信し、受信されたメッセージを解析してローリング識別子のペイロードを識別することによって、ローリング識別子を抽出し、生成されたサーバにより暗号化されたデータとローリング識別子を比較して、それらが一致する場合、メッセージは、選択されたワイヤレス識別送信機から発信されたものと識別する。」(以下「技術事項2」という。)

第6 対比及び判断

1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1) 引用発明の「携帯電話7」は、デバイスといえることから、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通する。
また、引用発明の「子機6」は、携帯電話7と通信するデバイスといえることから、本願発明1の「通信デバイス」に相当する。
そして、引用発明の「Inquiryパケット」は1つのデバイスを宛先として特定して送信しているパケットではないので周囲のデバイスに向けたパケットといえ、また、Inquiryパケットを受信したデバイスではInquiryパケットを受信することでInquiryパケットを送信するデバイスが周囲に存在していることが認識されるのであるから、引用発明の「Inquiryパケット」はInquiryパケットを送信するデバイスの存在を周囲のデバイスに知らせる広告パケットであるといえる。
したがって、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれる。

(2) 上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通することから、本願発明1の「ペアリングデバイスにおいて実行される方法」と引用発明の「携帯電話7において実行される方法」とは、「デバイスにおいて実行される方法」である点で共通する。

(3) 上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通し、引用発明の「子機6」は本願発明1の「通信デバイス」に相当し、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれることから、本願発明1の「該ペアリングデバイスが、通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信すること」と引用発明の「携帯電話7が、子機6から「問い合わせアクセスコード」を先頭部に格納したInquiryパケットを受信すること」は、「デバイスが、通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信する」点で共通する。

(4) 引用発明では「携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことから、携帯電話7が、InquiryパケットがGIACを含むか否かをチェックして応答するかしないか判断しているといえる。そして、InquiryパケットがGIACを含むか否かをチェックするということはInquiryパケットが「問い合わせアクセスコード」を含むか否かもチェックしているといえる。よって、引用発明の携帯電話7が、Inquiryパケットが「問い合わせアクセスコード」を含むか否かをチェックしているといえる。
ここで、上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通し、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれる。
また、引用発明の「問い合わせアクセスコード」は、GIACでは全ての電子装置が送信対象であり、DIACではA社製の電子装置のみが送信対象であることから、複数の電子装置で「共有されたキー」といえる。
したがって、本願発明1の「アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれているか否かをチェックする」ことと、引用発明の「全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことは、「アドバタイジングパケットに共有されたキーが含まれているか否かをチェックする」点で共通する。
よって、本願発明1の「該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれているか否かをチェックする」ことと、引用発明の「携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことは、「デバイスが、アドバタイジングパケットに共有されたキーが含まれているか否かをチェックする」点で共通する。

(5) 引用発明では「携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことから、携帯電話7が、InquiryパケットがGIACを含むか否かをチェックして応答するかしないか判断しているといえる。そして、携帯電話7が、InquiryパケットがGIACを含むか否かをチェックする上では、当該GIACが携帯電話7に格納されている必要があることは明らかである。してみれば、引用発明の携帯電話7が、InquiryパケットがGIACを含むかチェックすることは、Inquiryパケットが「問い合わせアクセスコード」を含む場合には、携帯電話7が、Inquiryパケットに格納した「問い合わせアクセスコード」が「携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」であるGIAC」と一致するか否かチェックすることであるといえる。
ここで、上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通し、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれる。
また、上記「(4)」で説示したように、引用発明の「問い合わせアクセスコード」は、複数の電子装置で「共有されたキー」といえることから、本願発明1の「アドバタイジングパケットのペイロード内に含まれる共有されたキー」と、引用発明の「Inquiryパケットに格納した「問い合わせアクセスコード」」は、「アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキー」である点で共通する。
そして、引用発明のGIACも、全ての電子装置が対象となる「問い合わせアクセスコード」であって、複数の電子装置で「共有されたキー」といえることから、本願発明1の「ペアリングデバイスに格納されている共有されたキー」と、引用発明における「携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」であるGIAC」とは、「デバイスに格納されている共有されたキー」である点で共通する。
よって、本願発明1の「アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれる場合」と、引用発明における、Inquiryパケットに「問い合わせアクセスコード」が含まれる場合は、「アドバタイジングパケットに共有されたキーが含まれる場合」である点で共通する。そして、本願発明1の「アドバタイジングパケットのペイロード内に含まれる共有されたキーが、ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックすること」と、引用発明における、Inquiryパケットに格納した「問い合わせアクセスコード」が「携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」であるGIAC」と一致するか否かチェックすることとは、「アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、デバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックする」点で共通する。
よって、本願発明1の「該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれる場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックする」ことと、引用発明の「携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことは、「アドバタイジングパケットに共有されたキーが含まれる場合には、デバイスが、該アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、該デバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックする」点で共通する。

(6) 引用発明の「携帯電話7は、全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答する」ことは、Inquiryパケットに格納した「問い合わせアクセスコード」が、携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」であるGIACと一致する場合には、携帯電話7が、Inquiryパケットに応答するといえる。
ここで、上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通し、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれる。
また、上記「(5)」で説示したように、本願発明1の「アドバタイジングパケットのペイロード内に含まれる共有されたキー」と、引用発明の「Inquiryパケットに格納した「問い合わせアクセスコード」」は、「アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキー」である点で共通する。
よって、本願発明1の「該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致する場合には、該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットに応答する」ことと、引用発明の「全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答する」ことは、「アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、デバイスに格納されている共有されたキーと一致する場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに応答する」点で共通する。

(7) 引用発明の「B社製の」「携帯電話7は、」「A社製の電子装置のみが送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるDIACを格納したInquiryパケットに対しては応答しない」ことは、Inquiryパケットに格納した問い合わせアクセスコードが、携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」と一致しない場合には、携帯電話7が、Inquiryパケットに応答しないことといえる。
ここで、上記「(1)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイス」と引用発明の「携帯電話7」は「デバイス」である点で共通し、引用発明の「Inquiryパケット」は、広告パケットである本願発明1の「アドバタイジングパケット」に含まれる。
また、上記「(5)」で説示したように、本願発明1の「ペアリングデバイスに格納されている共有されたキー」と、引用発明における「携帯電話7に格納されている「問い合わせアクセスコード」であるGIAC」とは、「デバイスに格納されている共有されたキー」である点で共通する。
よって、本願発明1と引用発明では、「アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、該デバイスに格納されている共有されたキーと一致しない場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに応答しない」点で共通する。

そして、本願発明1では「該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に該共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致しない場合」と択一的記載であるから、「該アドバタイジングパケットの該ペイロード内に含まれる該共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている該共有されたキーと一致しない場合」は「該アドバタイジングパケットが該共有されたキーを含まない場合、または、該アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、該ペアリングデバイスに格納されている共有されたキーと一致しない場合」に含まれる。

よって、本願発明1と引用発明とは、「アドバタイジングパケットのペイロード内に共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、デバイスに格納されている共有されたキーと一致しない場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに応答しない」点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 デバイスにおいて実行される方法であって、該方法は、
該デバイスが、通信デバイスからアドバタイジングパケットを受信することと、
該デバイスが、該アドバタイジングパケットに共有されたキーが含まれているか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットに該共有されたキーが含まれる場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに含まれる該共有されたキーが、該デバイスに格納されている共有されたキーと一致するか否かをチェックすることと、
該アドバタイジングパケットに含まれる共有されたキーが、該デバイスに格納されている共有されたキーと一致する場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに応答することと、
該アドバタイジングパケットのペイロード内に該共有されたキーが含まれない場合、または、該アドバタイジングパケットに含まれる該共有されたキーが、該デバイスに格納されている共有されたキーと一致しない場合には、該デバイスが、該アドバタイジングパケットに応答しないことと
を含む、方法。」

(相違点1)
本願発明1では、「アドバタイジングパケット」の「ペイロード内」に「共有されたキー」が含まれるのに対し、引用発明では、Inquiryパケットの先頭部に「問い合わせアクセスコード」が格納される点。

(相違点2)
本願発明1では、「ペアリングデバイス」であって、「該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットに応答することによって該ペアリングデバイスと該通信デバイスとの間の通信を確立する」のに対し、引用発明では、携帯電話7であって、携帯電話7は全ての電子装置が送信対象となる「問い合わせアクセスコード」であるGIACを格納したInquiryパケットに対しては応答するが、その後、子機6と通信を確立することは特定されていない点。

まず上記相違点1について検討する。
引用発明の「「問い合わせアクセスコード」であるGIAC」は「全ての電子装置」を「送信対象」としたものであり、「「問い合わせアクセスコード」であるDIAC」は「A社製の電子装置のみ」を「送信対象」としたものであるから、「Inquiryパケット」に格納された「「問い合わせアクセスコード」」は、Inquiryパケットの送信先を識別するための情報である。
他方、引用例3に記載された技術事項1のローリング識別子は、無線通信分野における技術常識や引用例3に記載の技術事項2を考慮すると、送信機、すなわちメッセージの送信元を識別するための情報である。
そうすると、引用発明における「問い合わせアクセスコード」と、引用例3の技術事項1のローリング識別子とは、情報の性質が大きく異なるから、引用発明における「問い合わせアクセスコード」の格納方法として、引用例3の技術事項1のローリング識別子のごとくペイロードに含ませる構成を採用する動機付けが見いだせず、また、Inquiryパケットの先頭部に格納される「問い合わせアクセスコード」をペイロードに含ませることが周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明に基づいて、「アドバタイジングパケット」の「ペイロード内」に「共有されたキー」が含まれる構成とすることは、当業者であっても、容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし11、27について
本願発明2ないし11、27は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明12について
本願発明12は、本願発明1に対応するペアリングデバイスを備えたシステムの発明であり、本願発明1の上記相違点1に対応する「該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットのペイロード部に共有されたキーが含まれているか否かをチェックすること」を含むことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明13ないし22、28について
本願発明13ないし22、28は、本願発明12の発明特定事項を全て含むから、本願発明12と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明23について
本願発明23は、本願発明1に対応するコンピュータプログラムの発明であり、本願発明1の上記相違点1に対応する「該ペアリングデバイスが、該アドバタイジングパケットのペイロード部に共有されたキーが含まれているか否かをチェックすること」を含むことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明24ないし26、29について
本願発明24ないし26、29は、本願発明23の発明特定事項を全て含むから、本願発明23と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断

上記「第6」で説示したとおり、本願発明1ないし29は、引用発明及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第8 当審拒絶理由についての判断

令和4年9月16日にされた手続補正前の請求項7における「該複数のアドバタイジングパケットのうちの少なくとも1つが該共有されたキーのそれぞれの部分を含まない場合には、該ペアリングデバイスが、該複数のアドバタイジングパケットに応答しない」という記載、及び請求項18における「該複数のアドバタイジングパケットのうちの少なくとも1つが該共有されたキーのそれぞれの部分を含まない場合には、該複数のアドバタイジングパケットに応答しない」という記載が、当該手続補正により削除されたから、当該拒絶理由は解消した。

第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-10-25 
出願番号 P2021-036184
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 圓道 浩史
石田 紀之
発明の名称 共有されたキーを使用する無線デバイスの選択的ペアリング  
代理人 山本 健策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 大塩 竹志  
代理人 石川 大輔  
代理人 飯田 貴敏  
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