• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
管理番号 1390531
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-15 
確定日 2022-09-02 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6515114号発明「充填材としてガラスを含む透明なポリアミド系組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6515114号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−52〕について訂正することを認める。 特許第6515114号の請求項2及び28に係る本件特許異議の申立てを却下する。 特許第6515114号の請求項1、3ないし27、29ないし52に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6515114号に係る出願(特願2016−555506号、以下「本願」ということがある。)は、平成27年2月27日(パリ条約に基づく優先権主張:2014年3月4日、フランス共和国(FR))の国際出願日に出願人アルケマ フランス(以下「特許権者」ということがある。)によりされたものとみなされる特許出願であり、平成31年4月19日に特許権の設定登録(請求項の数31)がされ、令和元年5月15日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき令和元年11月15日付けで特許異議申立人松井伸一(以下「申立人」という。)により「特許第6515114号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。

3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6515114号の特許請求の範囲の全請求項に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外である請求項はない。

4.以降の手続の経緯
その後の手続の経緯は、以下のとおりである。

令和2年 3月19日付け 取消理由通知
令和2年 6月19日 意見書・訂正請求書
令和2年 8月19日付け 通知書(申立人あて)
令和2年 9月23日 意見書(申立人)
令和2年11月30日付け 訂正拒絶理由通知
令和3年 1月22日 手続補正書(訂正請求書)・意見書
令和3年 3月31日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和3年 7月 2日 意見書・訂正請求書
令和3年 7月 8日付け 通知書(申立人あて)
令和3年 8月10日 意見書(申立人)
令和3年11月29日付け 取消理由通知(決定の予告)(2回目)
令和4年 2月21日 意見書・訂正請求書
令和4年 5月12日付け 通知書(申立人あて)
令和4年 6月13日 意見書(申立人)
(なお、令和4年2月21日に訂正請求がされたことにより、令和2年6月19日付け及び令和3年7月2日付けの各訂正請求は、取り下げられたものとみなす。)

第2 令和4年2月21日付けの訂正請求について

1.訂正請求の内容
令和4年2月21日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1ないし31(以下項番に従い「旧請求項1」などという。)を一群の請求項ごとに訂正することにより、訂正後の請求項1ないし52(以下項番に従い「新請求項1」などという。)にするものであり、以下の訂正事項1ないし31を含むものである。(下線は訂正箇所を表す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「− 5.0から30.0重量%の半結晶性ポリアミド」と記載されているのを、「− 5.0から30. 0重量%の、PA 11、PA12、PA10. 10、PA10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項1に記載の組成物」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1又は2に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項1に記載の組成物」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートヘと成形される場合に、75%以上、特に85%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。」と記載されているのを、「ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートヘと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正し、「ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートヘと成形される場合に、85%以上の透過率を有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。」と記載し、新たに請求項32とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から3及び5のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載の組成物」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)の合計含量を有することを特徴とする、請求項1から3、5及び6のいずれか一項に記載の組成物。」と記載されているのを、
「組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%のPA11、PA12、PA10.10、PA10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。」に訂正し、
従属請求項として、請求項3に対応する「ガラス充填材が、重量%で表して、充填材の全重量に対して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)、23.0から25.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、0.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、0.0から9.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から1.0%の酸化ジルコニウム(Zr2O3)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、6.0から11.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、0.0から0.1%の酸化ナトリウム(Na2O)、0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)及び0.0から0.1%の酸化鉄(Fe2O3)を含む、請求項7から13、及び23から26のいずれか一項に記載の組成物。」に係る請求項33を加え、
請求項5に対応する「ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートヘと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、及び33のいずれか一項に記載の組成物。」に係る請求項34を加え、及び
請求項6に対応する「ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、83.0から90.5%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、33、及び34のいずれか一項に記載の組成物。」に係る請求項35を加える。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から3及び5から7のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7に記載の組成物」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から3及び5から8のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7又は8に記載の組成物」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から3及び5から9のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から3及び5から10のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から3及び5から11のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1から3及び5から12のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項7から12のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14に「ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、7 1.0から76.0%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の組成物。」と記載されているのを、「組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%のPA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、71.0から76.0%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。」と訂正し、
従属請求項として、請求項4に対応する「ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、充填材の全重量に対して、68.0から74.0%の二酸化ケイ素(SiO2)、2.0から5.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、2.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、1.0から5.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、5.0から12.0%の酸化ナトリウム(Na2O)及び0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)を含み、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計量が8.0から12.0%まで変化する、請求項14から26のいずれか一項に記載の組成物。」に係る請求項36を加え、及び
請求項5に対応する「ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートヘと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%末満のヘイズを有することを特徴とする、請求項14から26、及び36のいずれか一項に記載の組成物。」に係る請求項37を加える。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1、2、4、5及び14のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14に記載の組成物」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項16に「請求項1、2、4、5、14及び15のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14又は15に記載の組成物」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項17に「請求項1、2、4、5及び14から16のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項18に「請求項1、2、4、5及び14から17のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項19に「請求項1、2、4、5及び14から18のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14から18のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項20に「請求項1、2、4、5及び14から19のいずれか一項に記載の組成 物」と記載されているのを、「請求項14から19のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項21に「請求項1、2、4、5及び14から20のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14から20のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項22に「請求項1、2、4、5及び14から21のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項14から21のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項23に「請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項1、及び3から22のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項24に「請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物」と記載されているのを、「請求項1、及び3から23のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(25)訂正事項25
特許請求の範囲の請求項25に「ガラス充填材が、ガラスファイバー、ガラス粉末、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスビーズ及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の成分を含むことを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。」と記載されているのを、「ガラス充填材が、ガラスファイバー、ガラス粉末、ガラスフレーク、ガラスビーズ及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の成分を含むことを特徴とする、請求項1、及び3から24のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正し、「ガラスファイバーがミルドファイバーであることを特徴とする、請求項25に記載の組成物。」として、新たに請求項38とする。

(26)訂正事項26
特許請求の範囲の請求項26に「着色剤、特に顔料、染料、エフェクト顔料、例えば回折顔料、干渉顔料、例えばパール光沢剤、反射顔料及びこれらの混合物;UV安定剤、老化防止剤、酸化防止剤;流動化剤、耐磨耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光沢剤;充填剤、例えばシリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト、酸化チタン;繊維;ワックス;及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の添加剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物。」と記載されているのを、「着色剤;UV安定剤、老化防止剤、酸化防止剤;流動化剤、耐磨耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光沢剤;充填剤;繊維;ワックス;及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の添加剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1、及び3から25のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正し、「着色剤が顔料、染料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。」、「顔料がエフェクト顔料、回折顔料、干渉顔料、パール光沢剤、反射顔料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。」及び「充填剤がシリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト又は酸化チタンであることを特徴とする、請求項26、39及び40のいずれか一項に記載の組成物。」と記載して、新たに請求項39、40及び41とする。

(27)訂正事項27
特許請求の範囲の請求項27に「請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物の使用」と記載されているのを、「請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用」に訂正する。

(28)訂正事項28
特許請求の範囲の請求項28を削除する。

(29)訂正事項29
特許請求の範囲の請求項29に「請求項1から26のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の成形、射出成形、押出成形、共押出成形、ホットプレス、マルチ射出成形、回転成形、焼結及び/又はレーザー焼結によって製造されることを特徴とする、ポリアミド系の成形品。」と記載されているのを、「請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の成形によって製造されることを特徴とする、ポリアミド系の成形品。」に訂正し、
「成形が、射出成形、押出成形、共押出成形、ホットプレス、マルチ射出成形、回転成形、あるいは焼結及び/又はレーザー焼結である、請求項29に記載のポリアミド系の成形品。」と記載して、新たに請求項42とする。

(30)訂正事項30
特許請求の範囲の請求項30に「− 前記半結晶性ポリアミドを、少なくとも1種類の透明な非晶質PA及び少なくとも1種類のガラス充填材ならびに任意選択的に少なくとも1種類の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、及び/又は少なくとも1種類の添加剤と混合して、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物を製造する工程;
− 50から120℃、好ましくは60から100℃、好ましくは60から95℃の範囲内の温度T0で、特に金型又はダイス内で、組成物を加工する工程;
− 及びその後、透明物品を回収する工程
を含む方法。」と記載されているのを、
「− 前記半結晶性ポリアミドを、少なくとも1種類の透明な非晶質PA及び少なくとも1種類のガラス充填材ならびに任意選択的に少なくとも1種類の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、及び/又は少なくとも1種類の添加剤と混合して、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物を製造する工程;
− 50から120℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
− 及びその後、透明物品を回収する工程
を含む方法。」に訂正し、
「− 60から100℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30に記載の方法。」、
「− 60から95℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項43に記載の方法。」及び
「− 金型又はダイス内で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30、43及び44のいずれか一項に記載の方法。」
と記載して、新たに請求項43、44及び45とする。

(31)訂正事項31
特許請求の範囲の請求項31に「ガラス、フレーム及び/又はレンズなどの透明な装置、弾道用窓ガラス(ballistic glazing)、透明なシート、ヘルメット、バイザー、シールド、防護服;スポーツ用装置;時計用ガラス;宇宙用機器、特に衛星又はスペースシャトル装置;風防ガラス、窓ガラス、舷窓、コックピット、航空機のキャノピー、窓、窓ガラスなどの航空又は自動車装置、特に車又は構造物用、スポットライト又はヘッドライト用ガラス;ディスプレイウィンドウ用ガラス、特に広告、電子又はコンピュータ用ガラス;スクリーン部品;熱、ソーラー又は光起電のパネル用のガラス;建設、家具、電気器具又は装飾的な産業用の物品;ゲーム及びおもちゃ産業用;靴のヒール又は宝石などのファッション産業用;テーブル、座席シート又はアームチェア部品などの家具産業用;化粧又は製薬産業のための展示、包装、収納、箱、容器又はフラスコ物品又は部品、香料用物品;手荷物;輸送の間の保護のための部品;コンピュータ、電子又は通信機器、特に電話の保護シェルの製造のための、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。」と記載されているのを、「透明な装置、弾道用窓ガラス(ballistic glazing)、透明なシート、ヘルメット、バイザー、シールド、防護服;
スポーツ用装置;
時計用ガラス;
宇宙用機器;
航空又は自動車装置、スポットライト又はヘッドライト用ガラス;
ディスプレイウィンドウ用ガラス;
スクリーン部品;
熱、ソーラー又は光起電のパネル用のガラス;
建設、家具、電気器具又は装飾的な産業用の物品;
ゲーム及びおもちゃ産業用の物品;
ファッション産業用の物品;
家具産業用の物品;
化粧又は製薬産業のための展示、包装、収納、箱、容器又はフラスコ物品又は部品;
香料用物品;
手荷物;輸送の間の保護のための部品;
コンピュータ、電子又は通信機器の保護シェルの製造のための、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。」に訂正し、
「透明な装置が、ガラス、フレーム及び/又はレンズである、請求項31に記載の使用。」、「宇宙用機器が、衛星又はスペースシャトル装置である、請求項31に記載の使用。」、「航空又は自動車装置が、風防ガラス、窓ガラス、舷窓、コックピット、航空機のキャノピー、窓、構造物、スポットライト又はヘッドライト用ガラスである、請求項31に記載の使用。」、「ディスプレイウィンドウ用ガラスが、広告、電子又はコンピュータ用ガラスである、請求項31に記載の使用。」、「ファッション産業の物品が靴のヒール又は宝石である、請求項31に記載の使用。」、「家具産業の物品が、テーブル、座席シート又はアームチェア部品である、請求項31に記載の使用。」及び「通信機器が電話である、請求項31に記載の使用。」として、新たに請求項46、47、48、49、50、51及び52とする。

2.各訂正事項に係る訂正の適否について

(1)各訂正の目的について

ア.訂正事項1及び2に係る訂正
訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1につき、旧請求項2に記載された半結晶性ポリアミドの種類に係る事項の並列的選択肢の一部を付加することにより、半結晶性ポリアミドの種類を限定して、特許請求の範囲を実質的に減縮して新請求項1とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る訂正では、旧請求項2の内容を全て削除して新請求項2としているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.訂正事項3及び4に係る訂正
訂正事項3及び4に係る訂正では、旧請求項3又は4における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを、単に正して新請求項3又は4にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を引用する新請求項3又は4についても、旧請求項1を引用する旧請求項3又は4に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

ウ.訂正事項5に係る訂正
訂正事項5に係る訂正では、旧請求項5における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項5における透過率に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、85%以上という事項を削除して新請求項5にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項5を引用する新請求項32を設けた点につき検討すると、旧請求項5における透過率に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、85%以上という事項を抽出して新請求項32にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項5又は32を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項5に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

エ.訂正事項6に係る訂正
訂正事項6に係る訂正では、旧請求項6における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項5を引用する点につき、引用関係が不明瞭であるという明瞭でない記載につき、旧請求項5を引用する点を削除して引用関係を正して新請求項6にしているものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。

オ.訂正事項7に係る訂正
訂正事項7に係る訂正では、旧請求項1を引用する旧請求項7について、旧請求項1に記載された事項を書き下して独立請求項とした上で、訂正事項1に係る半結晶性ポリアミドの種別についての限定を付加して新請求項7としているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、新請求項7をいずれも引用する新請求項33、34及び35を設けた点につき検討すると、旧請求項7で引用する旧請求項3、5又は6に記載された事項を追加でそれぞれ書き下し、単に新請求項7を引用する新請求項33、34及び35としたものであり、上記のとおり、新請求項7は、旧請求項7に対して訂正事項1に係る半結晶性ポリアミドの種別についての限定を付加して減縮されたものであるから、新請求項7、33、34及び35を合一化したものであっても、旧請求項7に対して特許請求の範囲が減縮されているものと認められ、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

カ.訂正事項8ないし13に係る訂正
訂正事項8ないし13に係る各訂正では、旧請求項1から3及び5から7を直接又は間接的に引用する旧請求項8ないし13につき、独立項形式に改められ、旧請求項7に対して特許請求の範囲が減縮された新請求項7を直接又は間接的に引用する新請求項8ないし13にそれぞれ訂正するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

キ.訂正事項14に係る訂正
訂正事項14に係る訂正では、旧請求項1を引用する旧請求項14について、旧請求項1に記載された事項を書き下して独立請求項とした上で、訂正事項1に係る半結晶性ポリアミドの種別についての限定を付加して新請求項14としているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、新請求項14をいずれも引用する新請求項36及び37を設けた点につき検討すると、旧請求項14で引用する旧請求項4又は5に記載された事項を追加でそれぞれ書き下し、単に新請求項14を引用する新請求項36及び37としたものであり、上記のとおり、新請求項14は、旧請求項14に対して訂正事項1に係る半結晶性ポリアミドの種別についての限定を付加して減縮されたものであるから、新請求項14、36及び37を合一化したものであっても、旧請求項14に対して特許請求の範囲が減縮されているものと認められ、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

ク.訂正事項15ないし22に係る訂正
訂正事項15ないし22に係る各訂正では、旧請求項1、2、4、5及び14を直接又は間接的に引用する旧請求項15ないし22につき、独立項形式に改められ、旧請求項14に対して特許請求の範囲が減縮された新請求項14を直接又は間接的に引用する新請求項15ないし22にそれぞれ訂正するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

ケ.訂正事項23及び24に係る訂正
訂正事項23及び24に係る各訂正では、旧請求項23又は24における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正して新請求項23及び24にしているものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。

コ.訂正事項25に係る訂正
訂正事項25に係る訂正では、旧請求項25における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項25におけるガラスファイバーに係る多重規定なる明瞭でない記載につき、ミルドファイバーという下位概念に係る事項を削除して新請求項25にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項25を引用する新請求項38を設けた点につき検討すると、旧請求項25におけるガラスファイバーに係る多重規定なる明瞭でない記載につき、ミルドファイバーという下位概念に係る事項を抽出して新請求項38にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項25又は38を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項25に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

サ.訂正事項26に係る訂正
訂正事項26に係る訂正では、旧請求項26における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項26における着色剤、顔料及び充填剤に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、各技術事項の下位概念に係る事項を削除して新請求項26にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項26を引用する新請求項39ないし41を設けた点につき検討すると、旧請求項26における着色剤、顔料及び充填剤に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、それぞれ、各技術事項の下位概念に係る事項を抽出して新請求項39ないし41にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項26及び39ないし41を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項26に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

シ.訂正事項27に係る訂正
訂正事項27に係る訂正では、旧請求項27における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正して新請求項27にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。

ス.訂正事項28に係る訂正
訂正事項28に係る訂正では、旧請求項28の内容を全て削除して新請求項28としているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

セ.訂正事項29に係る訂正
訂正事項29に係る訂正では、旧請求項29における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項29における成形(方法)に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、各成形方法の下位概念に係る事項を削除して新請求項29にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項29を引用する新請求項42を設けた点につき検討すると、旧請求項29における成形(方法)に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、各成形方法の下位概念に係る事項を抽出して新請求項42にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項29又は42を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項29に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

ソ.訂正事項30に係る訂正
訂正事項30に係る訂正では、旧請求項30における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項30における温度T0及び加工方法に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、各技術事項の下位概念に係る事項を削除して新請求項30にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項30を引用する新請求項43ないし45を設けた点につき検討すると、旧請求項30における温度T0及び加工方法に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、それぞれ、各技術事項の「60から100℃」又は「60から95℃」なる温度T0に係る事項及び「金型又はダイス内」で加工するという事項を抽出して新請求項43ないし45にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項30及び43ないし45を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項30に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

タ.訂正事項31に係る訂正
訂正事項31に係る訂正では、旧請求項31における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項2に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正すと共に、旧請求項31における透明な装置、宇宙用機器、航空又は自動車装置、ディスプレイウィンドウ用ガラス、ファッション産業の物品、家具産業あるいは通信機器に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、各技術事項の下位概念に係る事項を削除して新請求項31にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、新請求項31を引用する新請求項46ないし52を設けた点につき検討すると、旧請求項31における各技術事項に係る多重規定なる明瞭でない記載につき、それぞれ、各技術事項の下位概念に係る事項を抽出して新請求項46ないし52にしているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
なお、訂正事項1により旧請求項1は減縮されて新請求項1となっているから、新請求項1を直接又は間接的に引用する新請求項31及び46ないし52を合一化したものについても、旧請求項1を引用する旧請求項31に対して特許請求の範囲が減縮されているものとも認められる。

チ.各訂正の目的のまとめ
以上のとおり、本件訂正における各訂正事項に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件を満たしているものと認められる。

(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
本件訂正に係る各訂正事項に係る訂正は、上記(1)でそれぞれ検討したとおり、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、各訂正によって本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)独立特許要件
なお、本件特許異議の申立ては、本件の旧請求項1ないし31、すなわち全請求項に係る発明についての特許に対してされたものであるところ、本件訂正では、旧請求項1ないし31に基づき、分割などが行われて新請求項1ないし52とされたものであるから、本件特許異議の申立ては、訂正後の全ての請求項に対してされたものとみなすことができ、申立てが行われていない請求項に係る特許は存するものでなく、独立特許要件につき検討すべき請求項は存するものではない。

3.本件訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件も満たすものであるから、本件訂正を認める。

第3 当審の判断
上記第2で説示したとおりの理由により、令和4年2月21日付けの訂正請求による本件訂正は適法であるところ、訂正後の請求項1、3ないし27及び29ないし52に係る特許は、申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由では、いずれも取り消すことはできない。
なお、訂正後の請求項2及び28に対する本件特許異議の申立ては、本件訂正により各請求項に記載された事項が全て削除されたことによって、申立ての対象を欠くものとなり、不適法なものとなったから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
以下、詳述する。

1.本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし52には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
透明なポリアミド系組成物であって、組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%のPA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
ガラス充填材が、重量%で表して、充填材の全重量に対して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素 (SiO2)、23.0から25.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、0.0から5.0%の酸化ホウ素 (B2O3)、0.0から9.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から1.0%の酸化ジルコニウム(Zr2O3)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、6.0から11.0%の酸化マグネシウム(Mg0)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、0.0から0.1%の酸化ナトリウム(Na2O)、0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)及び0.0から0.1%の酸化鉄(Fe2O3)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、充填材の全重量に対して、68.0から74.0%の二酸化ケイ素(SiO2)、2.0から5.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、2.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、1.0から5.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、5.0から12.0%の酸化ナトリウム(Na2O)及び0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)を含み、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計量が8.0から12.0%まで変化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、83.0から90.5%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。
【請求項8】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から0.1%のNa2O含量を有することを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、23.0から25.0%のAl2O3含量を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から9.0%のCaO含量を有することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、6.0から11.0%のMgO含量を有することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から5.0%のB2O3含量を有することを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から0.1%の、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計含量を有することを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドプロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、71.0から76.0%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。
【請求項15】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、68.0から72.0%の二酸化ケイ素(SiO2)含量を有することを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、8.0から11.0%のNa2O含量を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、2.0から4.0%のAl2O3含量を有することを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、6.0から9.0%のCaO含量を有することを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、1.0から3.0%のMgO含量を有することを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、2.0から4.0%のB2O3含量を有することを特徴とする、請求項14から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、4.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化バリウム(BaO)の合計含量を有することを特徴とする、請求項14から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、8.0から11.0%の酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計含量を有することを特徴とする、請求項14から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
ガラス充填材が酸化チタン(TiO2)を含まないことを特徴とする、請求項1、及び3から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
非晶質ポリアミド樹脂組成物が、組成物の全重量に対して5.0から30.0重量%のガラス充填材含量を有することを特徴とする、請求項1、及び3から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ガラス充填材が、ガラスファイバー、ガラス粉末、ガラスフレーク、ガラスビーズ及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の成分を含むことを特徴とする、請求項1、及び3から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
着色剤;UV安定剤、老化防止剤、酸化防止剤;流動化剤、耐磨耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光沢剤;充填剤;繊維;ワックス;及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の添加剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1、及び3から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
顆粒又は粉末を形成するための請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】(削除)
【請求項29】
請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の成形によって製造されることを特徴とする、ポリアミド系の成形品。
【請求項30】
ガラス充填材で強化された透明物品の製造方法であって、
− 半結晶性ポリアミドを供給する工程;
− 前記半結晶性ポリアミドを、少なくとも1種類の透明な非晶質PA及び少なとも1種類のガラス充填材ならびに任意選択的に少なくとも1種類の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、及び/又は少なくとも1種類の添加剤と混合して、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物を製造する工程;
− 50から120℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
− 及びその後、透明物品を回収する工程
を含む方法。
【請求項31】
透明な装置、弾道用窓ガラス(ballistic glazing)、透明なシート、ヘルメット、バイザー、シールド、防護服;
スポーツ用装置;
時計用ガラス;
宇宙用機器;航空又は自動車装置、スポットライト又はヘッドライト用ガラス;
ディスプレイウィンドウ用ガラス;
スクリーン部品;
熱、ソーラー又は光起電のパネル用のガラス;
建設、家具、電気器具又は装飾的な産業用の物品;
ゲーム及びおもちゃ産業用の物品;
ファッション産業用の物品;
家具産業用の物品;
化粧又は製薬産業のための展示、包装、収納、箱、容器又はフラスコ物品又は部品;
香料用物品;
手荷物;輸送の間の保護のための部品;
コンピュータ、電子又は通信機器の保護シェルの製造のための、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項32】
ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、85%以上の透過率を有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項33】
ガラス充填材が、重量%で表して、充填材の全重量に対して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)、23.0から25.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、0.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、0.0から9.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から1.0%の酸化ジルコニウム(Zr2O3)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、6.0から11.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、0.0から0.1%の酸化ナトリウム(Na2O)、0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)及び0.0から0.1%の酸化鉄(Fe2O3)を含む、請求項7から13、及び23から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、及び33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、83.0から90.5%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、33、及び34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、充填材の全重量に対して、68.0から74.0%の二酸化ケイ素(SiO2)、2.0から5.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、2.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、1.0から5.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、5.0から12.0%の酸化ナトリウム(Na2O)及び0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)を含み、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計量が8.0から12.0%まで変化する、請求項14から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項14から26、及び36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
ガラスファイバーがミルドファイバーであることを特徴とする、請求項25に記載の組成物。
【請求項39】
着色剤が、顔料、染料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項40】
顔料が、エフェクト顔料、回折顔料、干渉顔料、パール光沢剤、反射顔料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
充填剤が、シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト又は酸化チタンであることを特徴とする、請求項26、39及び40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
成形が、射出成形、押出成形、共押出成形、ホットプレス、マルチ射出成形、回転成形、あるいは焼結及び/又はレーザー焼結である、請求項29に記載のポリアミド系の成形品。
【請求項43】
− 60から100℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
− 60から95℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
一 金型又はダイス内で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30、43及び44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
透明な装置が、ガラス、フレーム及び/又はレンズである、請求項31に記載の使用。
【請求項47】
宇宙用機器が、衛星又はスペースシャトル装置である、請求項31に記載の使用。
【請求項48】
航空又は自動車装置が、風防ガラス、窓ガラス、舷窓、コックピット、航空機のキャノピー、窓、構造物、スポットライト又はヘッドライト用ガラスである、請求項31に記載の使用。
【請求項49】
ディスプレイウィンドウ用ガラスが、広告、電子又はコンピュータ用ガラスである、請求項31に記載の使用。
【請求項50】
ファッション産業の物品が靴のヒール又は宝石である、請求項31に記載の使用。
【請求項51】
家具産業の物品が、テープル、座席シート又はアームチェア部品である、請求項31に記載の使用。
【請求項52】
通信機器が電話である、請求項31に記載の使用。」
(以下、上記請求項1ないし52に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明52」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

2.取消理由の概要

(1)当審が通知した取消理由
当審が本件の審理で通知した取消理由は以下のとおりである。

ア.令和2年3月19日付けで通知した理由
●本件の請求項1ないし31の記載は、いずれも下記の理由により記載不備であり、特許法第36条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし31に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1−1」という。)
●本件特許の請求項1、2、4、5、10、12、14ないし31に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、本件特許の請求項1、2、4、5、10、12、14ないし31に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1−2」という。)

イ.令和3年3月31日付けで通知した理由
上記令和2年3月19日付けで通知した理由と同一の理由である。

ウ.令和3年11月29日付けで通知した理由
●本件の請求項3ないし13及び15ないし47の記載は、いずれも下記の理由により記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項3ないし13及び15ないし47に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2−1」という。)
●本件の請求項1、3ないし27及び29ないし47の記載は、いずれも下記の理由により記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1、3ないし27及び29ないし47に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2−2」という。)

(2)申立人が主張する取消理由
申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第12号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下のア.ないしエ.が存するとしている。

ア.本件特許の請求項1ないし31に係る発明は、いずれも甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由A」という。)
イ.本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、記載不備であり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし31に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由B」という。)
ウ.本件の請求項1ないし31の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし31に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由C」という。)
エ.本件の請求項6ないし17、19及び30の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項6ないし17、19及び30に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由D」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開昭58−17155号公報
甲第2号証:特開2008−280483号公報
甲第3号証:再公表WO2008/047672号公報
甲第4号証:特開2007−153729号公報
甲第5号証:国際公開第2005/110695号
甲第6号証:特開2006−22236号公報
甲第7号証:特開2006−169324号公報
甲第8号証:特開2006−312706号公報
甲第9号証:特開平8−142051号公報
甲第10号証:特開2009−1316号公報
甲第11号証:特表2009−514773号公報
甲第12号証:特開2011−63695号公報
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第12号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲12」と略す。)

3.各取消理由に係る検討

(1)取消理由1−1、取消理由2−1及び取消理由Dについて
取消理由1−1、取消理由2−1及び取消理由Dは、いずれも特許法第36条第6項第2号に係る当否についてのものであるから、併せて検討する。

ア.各取消理由の概要
各取消理由の概要は以下のとおりである。

(ア)取消理由1−1
(a)単一請求項内の物性値などに係る多重規定によって、各請求項に記載された発明が明確でない。
(b)化学組成が異なる2種のガラス充填材を使用する請求項間の対応関係が不明であることにより、各請求項に記載された発明が明確でない。
(c)「半結晶性ポリアミド」の定義が不明であり、各請求項に記載された発明が明確でない。

(イ)取消理由2−1
(a)請求項3及び20の化学式表記の誤りにより、発明が明確でない。
(b)請求項35の引用元の請求項との対応関係が不明であり、発明が明確でない。
(c)化学組成が異なる2種のガラス充填材を使用する請求項間の対応関係が不明であることにより、各請求項に記載された発明が明確でない。

(ウ)取消理由D
(a)化学組成が異なる2種のガラス充填材を使用する請項間の対応関係が不明であることにより、各請求項に記載された発明が明確でない。
(b)「T0」が樹脂温度を表すのか、金型温度を表すのか不明であり、発明が明確でない。

イ.検討
上記第2で示したとおり、本件の特許請求の範囲は、適法に訂正されたことにより、上記各取消理由で指摘した記載不備は、以下の(ア)ないし(ウ)のとおり、いずれも解消されたものと認められる。

(ア)取消理由1−1、取消理由2−1及び取消理由Dにおける表現誤り
取消理由1−1の(c)で指摘した「半結晶性ポリアミド」の定義については、ポリアミドの種別が規定されることにより明確になると共に、取消理由2−1の(a)で指摘した化学式表記及び(b)の対応関係についても正された。
また、取消理由Dの(b)に係るT0の点も加工時の樹脂温度であると認められるので、不備が解消された。

(イ)取消理由1−1における多重規定による不備
取消理由1−1の(a)で指摘した各物性値などの多重規定による不備は、請求項を分割して多重規定を排除する訂正がされたことにより、不備が解消された。

(ウ)取消理由1−1、取消理由2−1及び取消理由Dにおける請求項の対応関係に係る不備
各取消理由で指摘した化学組成が異なる2種のガラス充填材を使用することに基づく請求項の引用の対応関係についての不備((ア)(b)、(イ)(c)及び(ウ)(a))は、特許請求の範囲が訂正されたことにより、対応関係が明確となり、不備が解消された。

(2)取消理由2−2、取消理由B及び取消理由Cについて
取消理由2−2及び取消理由Cは、いずれも本件特許請求の範囲の特許法第36条第6項第1号に係る当否についてのものであるから、併せて検討する。
また、当該検討に先立ち、取消理由Bは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の特許法第36条第4項第1号の規定に対する適否に係るものであるから、まず検討する。

ア.取消理由Bについて
申立人が主張する取消理由Bは、本件申立書の記載からみて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、部分的に脂環式の非晶性ポリアミドと半結晶性ポリアミドとの組合せにつき、本件発明1の課題が解決される具体的組合せ手法が記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載したものではない、というものと認められる。
しかしながら、甲1にも記載されている(下記「甲1発明」参照。)とおり、PA 6などの半結晶性ポリアミドと脂環式構造を有する非晶性ポリアミドとを組み合わせて透明性の高いポリアミド樹脂組成物及び成形体を構成することは、本願出願前に少なくとも公知の技術であり、また、本件特許明細書の実施例に係る記載からみて、PA 11なる半結晶性ポリアミドと脂環式構造を有する「PAam1」などの非晶性ポリアミドとを組み合わせて透過率が高くヘイズが低い、すなわち透明性が高いポリアミド樹脂組成物が得られることも記載されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1のPA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12又はそれらの混合物である半結晶性ポリアミド(訂正によりPA 6.12は除外されている。)と脂環式構造を有する非晶性ポリアミドとを組み合わせて透明性が高いポリアミド樹脂組成物及びその成形体を実施できるように記載されているものといえる。
したがって、上記取消理由Bは、理由がない。

イ.取消理由2−2及び取消理由Cについて

(ア)本件発明の解決しようとする課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0010】及び【0011】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「より透明で(可能な限り高い透過率及び可能な限り低いヘイズを有する)、より硬く、かつポリマーを成形するための既存の方法又は装置を用いた処理が簡便な材料」及び当該材料を用いた「単純で、実施しやすく、かつ迅速(すなわち可能な限り少ない工程数を表す)、及び、特に射出成形後における、収縮の問題を回避するような物品の製造方法」の提供にあるものと認める。

(イ)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、「半結晶性ポリアミド」につき、本件訂正により削除された「PA6」又は「PA6.6」や「PA6.12」を含む極めて多種多岐にわたるポリアミドが使用されることが記載されている(【0017】〜【0018】)が、本件訂正により「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」と規定され、「非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド」についても、物性により規定されている(【0020】)。
そして、実施例としては、半結晶性ポリアミドとして「PAsc」又は「PAsc2」なるいずれも「PA11」であるものを使用した例のみが記載され、他の半結晶性ポリアミドを使用した例については記載されていない。

(ウ)検討
上記本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、「半結晶性ポリアミド」を使用することにより、上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる作用機序につき具体的に記載されておらず、さらに、実施例に係る記載を検討しても、PA11を半結晶性ポリアミドとして使用した極めて限られた例のみであるものの、請求項1に記載された「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」を使用した場合に、これらのポリアミドがいずれも炭素数8〜11個の比較的長鎖の直鎖状アルキレン基からなる主鎖構造を有する点でPA 11と共通するもののみであり、当該共通の主鎖構造を有する化学構造の類似性からみて、請求項1に記載された「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」を、脂環式構造を有する非晶性ポリアミドと組み合わせれば、実施例におけるPA 11と脂環式構造を有する非晶性ポリアミドとを組み合わせた場合と同様に、本件発明に係る上記(1)で示した課題を解決できるものと当業者が認識することができるものと認められる。
そして、本件訂正により独立項形式に改められた請求項7及び請求項14においても、「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」を使用することが規定されているから、本件発明7又は14についても、本件発明1と同様に本件発明に係る上記(ア)で示した課題を解決できるものと当業者が認識することができるものと認められる。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件請求項1、7又は14に記載された事項を具備する発明が、本件発明の課題を解決できるであろうと当業者が認識することができるように記載したものということができる。
さらに、本件請求項1、7又は14を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6、8ないし13、15ないし27及び29ないし52についても同様である。
したがって、本件の請求項1、3ないし27及び29ないし52の記載では、同各項に係る発明が明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる(必要ならば知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)から、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているものといえる。

(エ)小括
以上のとおり、本件の請求項1、3ないし27及び29ないし52の記載は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしているから、取消理由2−2及び取消理由Cはいずれも理由がない。

ウ.取消理由2−2、取消理由B及び取消理由Cに係る検討のまとめ
よって、取消理由2−2、取消理由B及び取消理由Cは、いずれも理由がない。

(3)取消理由1−2及び取消理由Aについて
取消理由1−2及び取消理由Aは、いずれも甲1に記載された発明を主たる引用発明として、本件発明が甲1に記載された発明に基づいて又は甲1に記載された発明に基づき甲2ないし甲12に記載された事項を組み合わせることにより、容易に発明をすることができたとする特許法第29条に係る理由であるから、併せて検討する。

ア.甲1に記載された発明
甲1には、その記載(特許請求の範囲第1項、第2項及び第7項並び第8頁左上欄「実施例4」)からみて、少なくとも、
「約5乃至40重量%間のフィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド、並びに補充としてi)存在する全酸を基準として40〜98モル%単位のイソフタル酸、ii)存在する全酸を基準として2〜60モル%単位のテレフタル酸、iii)存在する全アミンを基準として50〜98モル%単位のヘキサメチレンジアミン;及びiv)存在する全アミンを基準として2〜50モル%単位の、8乃至20の炭素原子を含みかつ少なくとも1個のシクロヘキサン核を含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンからなる約95乃至60重量%間の熱可塑性の非晶性コポリアミドからなる熱可塑性成形用樹脂に追加としてガラス繊維である強化剤を含んでなる配合物。」に係る発明(以下「甲1発明1」という。)、及び、
「66ナイロン 41重量%、コポリアミドI26重量%、IV0.73、(平均)直径0.00035インチ、(平均)長さ3/16インチのガラス繊維33重量%からなる配合物であり、上記コポリアミドIは、6I/6T/PACM I/PACM T(66.8/28.6/3.2/1.4の塩比)の固有粘度は0.7乃至0.8間のテトラポリマーである配合物。」に係る発明(以下「甲1発明2」という。)、
がそれぞれ記載されているものといえる。

イ.本件の各発明に係る検討
事案に鑑み、以下、本件の発明ごとに、甲1発明1に基づく検討及び甲1発明2に基づく検討について必要に応じて分けて、詳述する。

(ア)本件発明1について

(ア−1)甲1発明1に基づく検討

(a)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「フィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド」、「i)存在する全酸を基準として40〜98モル%単位のイソフタル酸、ii)存在する全酸を基準として2〜60モル%単位のテレフタル酸、iii)存在する全アミンを基準として50〜98モル%単位のヘキサメチレンジアミン;及びiv)存在する全アミンを基準として2〜50モル%単位の、8乃至20の炭素原子を含みかつ少なくとも1個のシクロヘキサン核を含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンからなる」「熱可塑性の非晶性コポリアミド」及び「ガラス繊維である強化剤」は、それぞれ、本件発明1における「半結晶性ポリアミド」、「少なくとも1種類の非晶質で」「少なくとも部分的に脂環式のポリアミド」及び「ガラス充填材」に相当するものといえる。
また、甲1発明1における「フィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド、並びに補充としてi)存在する全酸を基準として40〜98モル%単位のイソフタル酸、ii)存在する全酸を基準として2〜60モル%単位のテレフタル酸、iii)存在する全アミンを基準として50〜98モル%単位のヘキサメチレンジアミン;及びiv)存在する全アミンを基準として2〜50モル%単位の、8乃至20の炭素原子を含みかつ少なくとも1個のシクロヘキサン核を含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンからなる・・熱可塑性の非晶性コポリアミドからなる熱可塑性成形用樹脂に追加としてガラス繊維である強化剤を含んでなる配合物」は、「半結晶性ポリアミド」、「非晶性コポリアミド」及び「ガラス繊維である強化剤」の3成分を必須に含むポリアミド(系)組成物である点で、本件発明1における「ポリアミド系組成物であって、」「半結晶性ポリアミド」、「少なくとも1種類の非晶質で・・少なくとも部分的に脂環式のポリアミド」及び「ガラス充填材」「を含む組成物」に相当するものといえる。
してみると、本件発明1と甲1発明1とは、
「ポリアミド系組成物であって、
− 半結晶性ポリアミド、
− 少なくとも1種類の非晶質で少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− ガラス充填材、
を含む組成物。」
で一致し、下記の点で相違する。

相違点a1:「半結晶性ポリアミド」につき、本件発明1では「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」であるのに対して、甲1発明1では「フィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド」である点

相違点a2:本件発明1では「組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の」「半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材」「を含む」のに対して、甲1発明1では「約5乃至40重量%間のフィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド、並びに補充としてi)存在する全酸を基準として40〜98モル%単位のイソフタル酸、ii)存在する全酸を基準として2〜60モル%単位のテレフタル酸、iii)存在する全アミンを基準として50〜98モル%単位のヘキサメチレンジアミン;及びiv)存在する全アミンを基準として2〜50モル%単位の、8乃至20の炭素原子を含みかつ少なくとも1個のシクロヘキサン核を含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンからなる約95乃至60重量%間の熱可塑性の非晶性コポリアミドからなる熱可塑性成形用樹脂に追加としてガラス繊維である強化剤を含んでなる」点

相違点a3:本件発明1は「透明なポリアミド系組成物」であって、「少なくとも1種類の非晶質で透明」「のポリアミド」を含むのに対して、甲1発明1は「配合物」及び「少なくとも1個のシクロヘキサン核を含む・・熱可塑性の非晶性コポリアミド」が透明であることにつき特定されていない点

相違点a4:本件発明1では「任意選択的に:」「0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー」及び「0.0から5.0重量%の添加剤、を含む」のに対して、甲1発明1では上記「コポリマー」及び「添加剤」を「任意選択的に」含むことにつき特定されていない点

(b)検討
●相違点a1について
上記相違点a1につき検討すると、甲1には、半結晶性ポリアミドとして、「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」を使用することにつき記載又は示唆されておらず、また、甲1ないし甲12の記載を検討しても、甲1発明1における「半結晶性ポリアミド」として上記特定のポリアミドを使用すべきことを示唆するような記載が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点a1は実質的な相違点であり、さらに甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせても、甲1発明1において、当業者が容易に想到することができたともいえない。

(c)小括
したがって、その余の点につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(アー2)甲1発明2に基づく検討

(a)対比
本件発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「66ナイロン」、「6I/6T/PACM I/PACM T(66.8/28.6/3.2/1.4の塩比)の固有粘度は0.7乃至0.8間のテトラポリマーである」「コポリアミドI」及び「ガラス繊維」は、それぞれ、本件発明1における「半結晶性ポリアミド」、「少なくとも1種類の非晶質で」「少なくとも部分的に脂環式のポリアミド」及び「ガラス充填材」に相当するものといえる。
また、甲1発明2における「66ナイロン・・、コポリアミドI・・、・・ガラス繊維・・からなる配合物」は、「半結晶性ポリアミド」、「非晶性コポリアミド」及び「ガラス繊維である強化剤」の3成分を必須に含むポリアミド(系)組成物である点で、本件発明1における「ポリアミド系組成物であって、」「半結晶性ポリアミド」、「少なくとも1種類の非晶質で・・少なくとも部分的に脂環式のポリアミド」及び「ガラス充填材」「を含む組成物」に相当するものといえる。
してみると、本件発明1と甲1発明2とは、
「ポリアミド系組成物であって、
− 半結晶性ポリアミド、
− 少なくとも1種類の非晶質で少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− ガラス充填材、
を含む組成物。」
で一致し、下記の点で相違する。

相違点b1:「半結晶性ポリアミド」につき、本件発明1では「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」であるのに対して、甲1発明2では「66ナイロン」である点

相違点b2:本件発明1では「組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、・・を含む」のに対して、甲1発明2では「66ナイロン 41重量%、コポリアミドI26重量%、・・ガラス繊維33重量%からなる配合物」である点

相違点b3:本件発明1では「透明なポリアミド系組成物」であって、「少なくとも1種類の非晶質で透明・・のポリアミド」であるのに対して、甲1発明2では「配合物」及び「コポリアミドI」が透明であることにつき特定されていない点

相違点b4:本件発明1では「任意選択的に:」「0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー」及び「0.0から5.0重量%の添加剤、を含む」のに対して、甲1発明2では上記「コポリマー」及び「添加剤」を「任意選択的に」含むことにつき特定されていない点

(b)検討
●相違点b1について
上記相違点b1につき検討すると、甲1には、半結晶性ポリアミドとして、「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」を使用することにつき記載又は示唆されておらず、また、甲1ないし甲12の記載を検討しても、甲1発明2における「ナイロン66」に代えて、上記特定のポリアミドを使用すべきことを示唆するような記載が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点b1は実質的な相違点であり、さらに甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせても、甲1発明2において、当業者が容易に想到することができたともいえない。

(c)小括
したがって、その余の点につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(アー3)本件発明1に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち、いずれにしても甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ)本件発明3ないし6について
本件発明1を引用する本件発明3ないし6についても、上記(ア)で説示した理由と同一の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ)本件発明7について
本件発明7と甲1発明1又は甲1発明2とを対比すると、少なくとも以下の点で相違するものと認められる。

相違点ab1:「半結晶性ポリアミド」につき、本件発明7では「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」であるのに対して、甲1発明1では「フィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド」であり、甲1発明2では「ナイロン66」である点

そして、上記相違点ab1は、上記(ア)(アー1)で示した相違点a1又は上記(ア)(アー2)で示した相違点b1と同一の事項であるから、同一の理由により甲1発明1又は甲1発明2において、実質的な相違点であり、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものでもない。
したがって、その余の点につき検討するまでもなく、本件発明7は、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(エ)本件発明8ないし13について
本件発明7を引用する本件発明8ないし13についても、上記(ウ)で説示した理由と同一の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(オ)本件発明14について
本件発明14と甲1発明1又は甲1発明2とを対比すると、少なくとも以下の点で相違するものと認められる。

相違点ab2:「半結晶性ポリアミド」につき、本件発明14では「PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド」であるのに対して、甲1発明1では「フィルム形成可能な分子量の熱可塑性の半結晶性ポリアミド」であり、甲1発明2では「ナイロン66」である点

そして、上記相違点ab2は、上記(ア)(アー1)で示した相違点a1又は上記(ア)(アー2)で示した相違点b1と同一の事項であるから、同一の理由により甲1発明1又は甲1発明2において、実質的な相違点であり、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものでもない。
したがって、その余の点につき検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(カ)本件発明15ないし22について
本件発明14を引用する本件発明15ないし22についても、上記(オ)で説示した理由と同一の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(キ)本件発明23ないし27及び29ないし52について
本件発明1、本件発明7又は本件発明14のいずれかを直接又は間接的に引用する本件発明23ないし27及び29ないし52についても、上記(ア)、(ウ)又は(オ)で説示した理由と同一の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ.取消理由1−2及び取消理由Aについての検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1、3ないし27及び29ないし52は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、取消理由1−2及び取消理由Aはいずれも理由がない。

4.当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由は、いずれも理由がない。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は適法であるから、これを認める。
本件の請求項2及び28に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、適法にされた本件訂正により各請求項に記載された事項が全て削除されたことによって、申立ての対象を欠くもので不適法なものとなり、その治癒ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。
本件の請求項1、3ないし27及び29ないし52に係る特許は、申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由では、いずれも取り消すことはできない。
他に本件の請求項1、3ないし27及び29ないし52に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なポリアミド系組成物であって、組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
ガラス充填材が、重量%で表して、充填材の全重量に対して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)、23.0から25.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、0.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、0.0から9.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から1.0%の酸化ジルコニウム(Zr2O3)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、6.0から11.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、0.0から0.1%の酸化ナトリウム(Na2O)、0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)及び0.0から0.1%の酸化鉄(Fe2O3)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、充填材の全重量に対して、68.0から74.0%の二酸化ケイ素(SiO2)、2.0から5.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、2.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、1.0から5.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、5.0から12.0%の酸化ナトリウム(Na2O)及び0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)を含み、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計量が8.0から12.0%まで変化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、83.0から90.5%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。
【請求項8】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から0.1%のNa2O含量を有することを特微とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、23.0から25.0%のAl2O3含量を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から9.0%のCaO含量を有することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、6.0から11.0%のMgO含量を有することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から5.0%のB2O3含量を有することを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、0.0から0.1%の、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計含量を有することを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の全重量に対して、
− 5.0から30.0重量%の、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、及びこれらの混合物から選択される半結晶性ポリアミド、
− 20.0から80.0重量%の少なくとも1種類の非晶質で透明かつ少なくとも部分的に脂環式のポリアミド、
− 5.0から30.0重量%のガラス充填材、
及び、任意選択的に:
− 0.0から5.0重量%の、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー、
− 0.0から5.0重量%の添加剤、
を含む透明なポリアミド系組成物であって、
ガラス充填材が、酸化物に関してガラス充填材の重量%として表して、71.0から76.0%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、組成物。
【請求項15】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、68.0から72.0%の二酸化ケイ素(SiO2)含量を有することを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、8.0から11.0%のNa2O含量を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、2.0から4.0%のAl2O3含量を有することを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、6.0から9.0%のCaO含量を有することを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、1.0から3.0%のMgO含量を有することを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、2.0から4.0%のB2O3含量を有することを特徴とする、請求項14から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、4.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化バリウム(BaO)の合計含量を有することを特徴とする、請求項14から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ガラス充填材が、ガラス充填材の全重量に対して、8.0から11.0%の酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計含量を有することを特徴とする、請求項14から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
ガラス充填材が酸化チタン(TiO2)を含まないことを特徴とする、請求項1、及び3から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
非晶質ポリアミド樹脂組成物が、組成物の全重量に対して5.0から30.0重量%のガラス充填材含量を有することを特徴とする、請求項1、及び3から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ガラス充填材が、ガラスファイバー、ガラス粉末、ガラスフレーク、ガラスビーズ及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の成分を含むことを特徴とする、請求項1、及び3から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
着色剤;UV安定剤、老化防止剤、酸化防止剤;流動化剤、耐磨耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光沢剤;充填剤;繊維;ワックス;及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の添加剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1、及び3から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
顆粒又は粉末を形成するための請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】(削除)
【請求項29】
請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の成形によって製造されることを特徴とする、ポリアミド系の成形品。
【請求項30】
ガラス充填材で強化された透明物品の製造方法であって、
− 半結晶性ポリアミドを供給する工程;
− 前記半結晶性ポリアミドを、少なくとも1種類の透明な非晶質PA及び少なくとも1種類のガラス充填材ならびに任意選択的に少なくとも1種類のPEBA及び/又は少なくとも1種類の添加剤と混合して、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物を製造する工程;
− 50から120℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
− 及びその後、透明物品を回収する工程
を含む方法。
【請求項31】
透明な装置、弾道用窓ガラス(ballistic glazing)、透明なシート、ヘルメット、バイザー、シールド、防護服;
スポーツ用装置;
時計用ガラス;
宇宙用機器;
航空又は自動車装置、スポットライト又はヘッドライト用ガラス;
ディスプレイウィンドウ用ガラス;
スクリーン部品;
熱、ソーラー又は光起電のパネル用のガラス;
建設、家具、電気器具又は装飾的な産業用の物品;
ゲーム及びおもちゃ産業用の物品;
ファッション産業用の物品;
家具産業用の物品;
化粧又は製薬産業のための展示、包装、収納、箱、容器又はフラスコ物品又は部品;
香料用物品;
手荷物;輸送の間の保護のための部品;
コンピュータ、電子又は通信機器の保護シェルの製造のための、請求項1、及び3から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項32】
ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、85%以上の透過率を有することを特徴とする、請求項5に記載の組織物。
【請求項33】
ガラス充填材が、重量%で表して、充填材の全重量に対して、60.0から65.5%の二酸化ケイ素(SiO2)、23.0から25.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、0.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、0.0から9.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から1.0%の酸化ジルコニウム(Zr2O3)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、6.0から11.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、0.0から0.1%の酸化ナトリウム(Na2O)、0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)及び0.0から0.1%の酸化鉄(Fe2O3)を含む、請求項7から13、及び23から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、及び33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、83.0から90.5%の、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の合計含量を有することを特徴とする、請求項7から13、23から26、33、及び34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
ガラス充填材が、酸化物に関して重量%として表して、充填材の全重量に対して、68.0から74.0%の二酸化ケイ素(SiO2)、2.0から5.0%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.0から5.0%の酸化ホウ素(B2O3)、2.0から10.0%の酸化カルシウム(CaO)、0.0から5.0%の酸化亜鉛(ZnO)、0.0から5.0%の酸化ストロンチウム(SrO)、0.0から1.0%の酸化バリウム(BaO)、1.0から5.0%の酸化マグネシウム(MgO)、0.0から5.0%の酸化リチウム(Li2O)、5.0から12.0%の酸化ナトリウム(Na2O)及び0.0から10.0%の酸化カリウム(K2O)を含み、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)の合計量が8.0から12.0%まで変化する、請求項14から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
ガラス充填材と本発明の組成物の屈折率の差が、589nmの波長を有する光に関して0.006以下であり・486nmの波長を有する光に関して0.006以下であり、かつ656nmの波長を有する光に関して0.006以下であり;ポリアミド組成物が、2mmの厚さを有するシートへと成形される場合に、75%以上の透過率、及び15%未満のヘイズを有することを特徴とする、請求項14から26、及び36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
ガラスファイバーがミルドファイバーであることを特徴とする、請求項25に記載の組成物。
【請求項39】
着色剤が、顔料、染料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項40】
顔料が、エフェクト顔料、回折顔料、干渉顔料、パール光沢剤、反射顔料又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
充填剤が、シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト又は酸化チタンであることを 特徴とする、請求項26、39及び40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
成形が、射出成形、押出成形、共押出成形、ホットプレス、マルチ射出成形、回転成形、あるいは焼結及び/又はレーザー焼結である、請求項29に記載のポリアミド系の成形品。
【請求項43】
− 60から100℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
− 60から95℃の範囲内の温度T0で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
− 金型又はダイス内で、組成物を加工する工程;
を含む、請求項30、43及び44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
透明な装置が、ガラス、フレーム及び/又はレンズである、請求項31に記載の使用。
【請求項47】
宇宙用機器が、衛星又はスペースシャトル装置である、請求項31に記載の使用。
【請求項48】
航空又は自動車装置が、風防ガラス、窓ガラス、舷窓、コックピット、航空機のキャノピー、窓、構造物、スポットライト又はヘッドライト用ガラスである、請求項31に記載の使用。
【請求項49】
ディスプレイウィンドウ用ガラスが、広告、電子又はコンピュータ用ガラスである、請求項31に記載の使用。
【請求項50】
ファッション産業の物品が靴のヒール又は宝石である、請求項31に記載の使用。
【請求項51】
家具産業の物品が、テーブル、座席シート又はアームチェア部品である、請求項31に記載の使用。
【請求項52】
通信機器が電話である、請求項31に記載の使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-08-22 
出願番号 P2016-555506
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 井上 政志
橋本 栄和
登録日 2019-04-19 
登録番号 6515114
権利者 アルケマ フランス
発明の名称 充填材としてガラスを含む透明なポリアミド系組成物  
代理人 園田・小林弁理士法人  
代理人 園田・小林弁理士法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ