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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1390534
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-16 
確定日 2022-08-15 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6666719号発明「合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6666719号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〜9、12〕、〔2、10、11〕について訂正することを認める。 特許第6666719号の請求項1〜12に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6666719号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、 2015年(平成27年)2月25日(優先権主張 平成26年2月25日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月26日にその請求項1〜12に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 9月16日 :特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事
務所(以下「申立人」という。)による請求
項1〜12に係る特許に対する特許異議の申
立て
同年12月22日付け:取消理由通知
令和3年 3月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月 9日 :申立人による意見書の提出
同年 6月15日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 8月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月15日 :申立人による意見書の提出
同年12月14日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和4年 2月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月22日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年2月7日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1、2からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、令和3年3月2日及び同年8月10日にそれぞれ提出された訂正請求書における訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「合わせガラス用中間膜。」
との記載を、
「合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3〜9、12も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、
「合わせガラス用中間膜の製造方法。」
との記載を、
「合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。」に訂正する。(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項10、11も同様に訂正する。)

(3)一群の請求項について
請求項1の記載を請求項3〜9、12が引用する関係にあるから、請求項1、3〜9、12は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1、3〜9、12を訂正の単位として請求されたものである。
また、請求項2の記載を請求項10、11が引用する関係にあるから、請求項2、10、11は一群の請求項であるところ、本件訂正事項2に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項2、10、11を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「合わせガラス用中間膜」を構成する「プラスチック層」が「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるもの」を除き、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層」が「35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除き、さらに、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層」が「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除く、いわゆる除くクレームであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2の「合わせガラス用中間膜の製造方法」において用いられる「プラスチック層」が「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるもの」を除き、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層」が「35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除き、さらに、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層」が「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除く、いわゆる除くクレームであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

なお、特許異議申立ては、全請求項についてされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3〜9、12〕、〔2、10、11〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について
本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらを纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含み、
前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、かつ前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下であり、
前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、
前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下である、合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項2】
合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程と、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含み、前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、かつ前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下であり、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下である合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項3】
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上である、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第2の樹脂層を備える、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1及び3〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記プラスチック層が単層である、請求項1及び3〜7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第2の樹脂層を備え、
単層の前記プラスチック層の前記第1の表面に前記第1の樹脂層が積層されており、
単層の前記プラスチック層の前記第2の表面に前記第2の樹脂層が積層されている、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記プラスチック層が単層である、請求項2に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項11】
前記第2の樹脂層を備え、単層の前記プラスチック層の前記第1の表面に前記第1の樹脂層が積層されており、単層の前記プラスチック層の前記第2の表面に前記第2の樹脂層が積層されている合わせガラス用中間膜を得る、請求項10に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項12】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1及び3〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラス。」

第4 取消理由の概要
令和3年8月10日付けの訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1〜12に係る特許に対して、令和3年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号
請求項1、2において、「前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く」ことが特定されているが、当該記載は、「第1の樹脂層が35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であり、且つ第2の樹脂層が35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」のみを除くことを意味するのか、それとも、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く」ことを意味するのか明らかでなく、その結果、前記記載により除かれる範囲が不明確である。
したがって、請求項1、2及に係る発明及びこれを直接又は間接的に引用する請求項3〜12に係る発明は明確でない。

2 取消理由2(特許法第29条第2項
請求項1〜12に係る発明は、下記甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第2号証に記載された技術的事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2012−224489号公報
甲第2号証:特開2013−6723号公報
甲第4号証:特表2003−516921号公報

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
本件訂正により、訂正後の請求項1、2には、取消理由1において明確でないとされた、「前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く」という記載は存在しないこととなった。
したがって、請求項1、2及に係る発明及びこれを直接又は間接的に引用する請求項3〜12に係る発明は明確でないとはいえない。

2 取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)甲号証(以下、「甲1」などという。)の記載内容
ア 甲1の記載内容(当審注:下線は当審による。「…」は当審による省略を意味する。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や自動車の窓などの遮光、ガラス飛散防止や防犯に役立つ合わせガラスに好適に用いることのできる二軸延伸ポリエステルフィルム基材に関するものである。

【0009】
本発明によれば、建物や自動車の窓などの遮光とガラス飛散防止や防犯に役立つ、…合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。」

(イ)「【0025】
本発明のフィルムは透明樹脂を介して、ガラスに接着されることが一般的である。透明樹脂は、例えばポリビニルブチラール(PVB)…が用いられるが、これら透明樹脂との接着性を向上させるため、本発明のフィルム表面にコロナ処理を行うことが好ましい。コロナ処理されたフィルム表面のぬれ指数は52dyne/cm以上が好ましい。」

(ウ)「【0036】
(6)合わせガラスの光学歪み
曲面を持った2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムおよびポリエステルフィルムを挟み込み、ガラス温度80〜100℃、減圧度650mmHg以上で予備圧着し、次いで、温度120〜150℃、圧力10〜15kg/cm2のオートクレーブ中で20〜40分間の本接着を行うことにより、合わせガラスとした。」

イ 甲2の記載内容
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2層の多層構造を有する合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、各層がそれぞれポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。

【0013】
本発明の広い局面によれば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、上記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、…合わせガラス用中間膜が提供される。」

(イ)「【0058】
表面層である上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は27モル%、更に好ましい下限は28モル%、特に好ましい下限は29モル%…上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。」

(ウ)「【0147】
(紫外線遮蔽剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、…上記第1の層と上記第2の層との双方が、紫外線遮蔽剤を含有していてもよい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率が低下し難くなる。」

(エ)「【0163】
上記紫外線遮蔽剤の含有量は特に限定されない。経時後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記第1〜第3の層のうちの上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、…である。」

(オ)「【0165】
(酸化防止剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は酸化防止剤を含有することが好ましく、上記第2、第3の層は酸化防止剤を含有することが好ましい。」

ウ 甲4の記載内容
(ア)「【請求項9】 順に、(a)第1のガラスシート、(b)第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、(c)0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート、(d)第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層、及び(e)第2のガラスシートを含み、約350ニュートン/cmを超える最大曲げ弾性率を示すことを特徴とする改善された剛性を有する合わせガラス。」

(イ)「【0006】
本発明の目的は、例えば建築用及び自動車用窓ガラスのような安全ガラス分野で使用するためのより高い耐侵入性を有する合わせガラスを提供することである。この目的は、より高い合わせガラス剛性を与える硬質なプラスチックシート及び/または補強PVB接着層を含む複合中間膜を使用することにより達成される。
【0007】
(発明の要旨)
…本発明の1つの態様において、可塑化PVBの高剛性を可塑化PVBのガラス転移温度(Tg)が高い、例えば市販品の典型的な値よりも約2〜3℃高いことにより示される可塑剤の減量により付与することが有利である。例えば、自動車分野では、可塑化PVBシートが通常約30〜33℃のTgを有する場合には、本発明の高剛性PVBは少なくとも35℃のTgを有する。可塑化PVBの剛性が、PVBを含む合わせガラスの曲げ弾性率に寄与する。本発明の合わせガラスの高い曲げ弾性率は、合わせガラスに打ち込んだラムヘッドに対する耐性により示される。本発明の合わせガラスは、好ましくは少なくとも350ニュートン/センチメーター(N/cm)の最大曲げ弾性率を有する。

【0009】
本発明の別の態様は、少なくとも350N/cmの高剛性を示す本発明の複合中間膜を含む耐侵入性合わせガラスを提供する。

【0019】
前記シートのPVB樹脂は、通常樹脂100部あたり約20〜80部、より一般的には25〜45部の可塑剤で可塑化されている。通常使用されている可塑剤は多塩基酸または多価アルコールのエステルである。好適な可塑剤はトリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートの混合物、ジブチルセバケート、高分子可塑剤(例えば、油変性セバシン酸アルキド)、米国特許第3,841,890号明細書に記載されているホスフェートとアジペートの混合物、及び米国特許第4,144,217号明細書に記載されているアジペート及びアルキルベンジルフタレートである。米国特許第5,013,779号明細書に記載されているC4−9アルキルアルコール及びシクロC4−10アルコールから製造される混合アジペートも好ましい。C6−8アジペート(例えば、ヘキシルアジペート)が好ましい可塑剤である。より好ましい可塑剤はエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)である。可塑剤の使用量はPVBの剛性を向上させ、コントロールするための慣用量である。剛性に対する有用な代理特性はTgであり、これは可塑剤の量に直接関連する。本発明の合わせガラスに使用される可塑化PVBシートは少なくとも35℃以上(例えば、少なくとも37℃)、好ましくは少なくとも39℃以上(例えば、少なくとも41℃)、最も好ましくは少なくとも43℃以上(例えば、少なくとも45℃)のTgを有する。

【0021】
米国特許第5,618,863号明細書に記載されているように、PVB中にUV吸収剤を配合することも有用であり、または望ましい。…PVBシートは他の性能強化添加剤、例えばシートの全部または一部を着色するための顔料または染料、酸化防止剤等を含み得る。

【0022】
本発明の複合中間膜に使用されるPETシートは、好ましくは強度を改善するために二軸延伸されており、高温に曝したきに低い収縮特性(例えば、150℃で30分後、両方向で2%未満の収縮率)を与えるために予め熱安定化されている。ポリエチレンテレフタレートの(21〜25℃での)引張り弾性率は、安全ガラスに使用されているタイプの可塑化ポリビニルブチラールの場合約107Paであるのに対して約1010Paである。…
【0023】
本発明の複合中間膜は公知の方法により作成される。表面処理したPETシートへの可塑化PVBのラミネート方法については、例えば援用により本明細書に含まれるとする米国特許第4,973,511号明細書、同第5,024,895号明細書及び同第5,091,258号明細書を参照されたい。…
【0024】
本発明のシートを用いる合わせガラスは、…公知方法により作成される。複合中間膜を2枚のガラスシートの間に配置し、真空下約85〜120℃の温度に、温度に応じて約10〜30分間加熱して、合わせガラスの層間から空気を除去する。脱気後、合わせガラスをオートクレーブにおいて高温(約90〜160℃)及び高圧(約1000〜2000kPa)で合わせガラスの層をしっかり結合するのに十分な時間加熱することが好ましい。…
【0025】
…PVBに対する所望の接着のために、例えば粗面とするかまたは表面の材料を化学的に改質することによりPETの表面を改質することが好ましい。前記改質は火炎処理、化学的酸化、コロナ放電、炭素スパッタリング、真空または空気中でのプラズマ処理、または当業者に公知の他の処理により実施され得る。好ましい表面処理は空気中でのプラズマ処理である。

【0031】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明を限定乃至減縮するものではない。ここで使用した材料は次の通りである。
3GEH:トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤、ガラス:厚さ2.2mmのアニールしたフロートガラス;、
PET1:厚さ0.1mm(4ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート、
PET2:厚さ0.177mm(7ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート、
PVB1:厚さ0.38mm(15ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB2:厚さ0.76mm(30ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、

【0032】
実施例1〜15
表1に示す材料から約45×60cm(18×24インチ)の合わせガラスを作成した。
【0033】
【表1】


【0034】
…振子衝撃試験後、合わせガラスをラムヘッド貫通試験にかけて曲げ弾性率を測定した。実施例1〜15の合わせガラスの「荷重対耐性」曲線を図6〜8に示す(番号は実施例番号である)。合わせガラスの最大曲げ弾性率を表2に示す。
【0035】
【表2】



(2)甲4に記載の発明について
ア 甲4発明1
甲4には、「順に、(a)第1のガラスシート、(b)第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、(c)0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート、(d)第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層、及び(e)第2のガラスシートを含み、約350ニュートン/cmを超える最大曲げ弾性率を示すことを特徴とする改善された剛性を有する合わせガラス」(上記(1)ウ(ア))に使用される「複合中間膜」(同(イ)【0009】)が記載され、この「複合中間膜」について、例4(同(イ)【表1】及び【表2】のNo.4)には、「PVB1/PET2/PVB1」の積層構造を有し、前記「PVB1」が「厚さ0.38mm(15ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB」であり、前記「PET2」が「厚さ0.177mm(7ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート」であることが記載されている(同(イ)【0031】)。
また、同(イ)【0025】によれば、前記「PET2」の表面に対してなされた炭素スパッタリング処理について、PVBに対する所望の接着のための改質処理であることが記載されている。
加えて、可塑剤について、同(イ)【0019】において「前記シートのPVB樹脂は、通常樹脂100部あたり約20〜80部、より一般的には25〜45部の可塑剤で可塑化されている。」と記載されていることからみて、前記例4の「PVB1」中の可塑剤は、PVB樹脂100重量部あたり38重量部含まれるものといえる。
したがって、これらの記載を本件発明1の記載にならって整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認められる。

「順に、厚さ0.38mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.38mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(「甲4発明1」という。)

イ 甲4発明2
甲4には、上記アの記載に加えて、複合中間膜は公知の方法により作成されるもので、表面処理したPETシートに可塑化PVBをラミネートすることで得られるものであること、すなわち、PETシートの表面に対してPVBに対する所望の接着のための改質処理を行うことと、当該改質処理したPETシートに可塑化PVBをラミネートすることにより、複合中間膜を製造することが記載されているといえる(上記(1)ウ(イ)【0023】)。
そうすると、当該記載及び上記アの記載を本件発明2の記載にならって整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認められる。

「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程と、
順に、厚さ0.38mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmの前記ポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.38mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される合わせガラス用複合中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(以下、「甲4発明2」という。)

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明1とを対比する。
甲4発明1における「ポリエチレンテレフタレートシート」は、本件発明1における「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する。
甲4発明1における「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」は、「約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」ものであって、且つ「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」、「ポリエチレンテレフタレートシート」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」の順に積層されたものであるから、本件発明1における「前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層」及び「前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層」「(但し、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)」に相当する。
甲4発明1における「前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、」は、本件発明1における「前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、」に相当し、甲4発明1における「合わせガラス用複合中間膜」は、本件発明1における「合わせガラス用中間膜」に相当し、甲4発明1における「3GEH」は、本件発明1における「トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲4発明1とは、
「プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されている、合わせガラス用中間膜(但し、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1は、「前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含」むことが特定されているのに対して、
甲4発明1は、前記「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、酸化防止剤を含むのか明らかでない点。

<相違点2>
本件発明1は、「前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、」「前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下」であることが特定されているのに対して、
甲4発明1は、前記「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、紫外線遮蔽剤を含むことが特定されていない点。

<相違点3>
プラスチック層のぬれ張力に関して、
本件発明1は、「前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されて」いることが特定されているのに対して、
甲4発明1は、ポリビニルブチラールに対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されているものの、当該表面処理後の前記シート表面のぬれ張力が40mN/m以上であるのか明らかでない点。

<相違点4>
本件発明1は、「前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下」であり、「前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除」くことが特定されているの対して、
甲4発明1は、「ポリエチレンテレフタレートシート」であり、これらの点が明らかでない点。

<相違点5>
本件発明1は、「前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く」ことが特定されているのに対して、
甲4発明1は、「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」点。

(イ)相違点についての検討
各相違点について検討する。
<相違点1について>
甲4(上記(1)ウ(イ)【0021】)には、PVBシートには、性能強化添加剤として酸化防止剤等を含み得ることが記載されているから、甲4発明1において、可塑化ポリビニルブチラール接着層の性能強化のために酸化防止剤を添加することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
甲4(同【0021】)には、PVB中にUV吸収剤を配合することが有用であることが記載されている。
また、甲2(上記(1)イ(ウ)、(エ))に記載されるように、合わせガラス用中間膜の表面に設けた表面層用樹脂について、紫外線遮蔽剤を樹脂100重量%中0.1重量%〜2.5重量%程度の割合で配合することは、周知技術であったと認められるから、甲4発明1の可塑化ポリビニルブチラール接着層において、甲2、甲4に記載された事項ないし周知技術を適用して、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3について>
甲4の記載(上記(1)ウ(イ)【0025】)によれば、甲4発明1の「炭素スパッタリング処理」は、ポリエチレンテレフタレートシートとそれに隣接するポリビニルブチラール接着層との接着性を向上するために行われるものであるから、甲4発明1において、かかる接着性が良好なものとなるようにすべく、接着性の指標であるぬれ張力の数値範囲を好適化又は最適化することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
また、甲1(同ア(イ))には、ポリビニルブチラール等の透明樹脂層を介してガラスに接着される合わせガラス用フィルムにおいて、前記フィルムと前記透明樹脂層との接着性を向上させるために、コロナ処理(コロナ放電処理)によって前記フィルム表面のぬれ指数を52dyne/cm以上(ぬれ張力52mN/m以上)にすることが記載されている。そして、当該記載にかんがみると、本件発明1に記載のぬれ張力の数値範囲(40mN/m以上)は、接着性の指標であるぬれ張力として採用される一般的な数値範囲であると解釈できる。
そして、甲4(同ウ(イ)【0025】)には、炭素スパッタリングと等価な表面処理として、コロナ放電処理することも記載されているから、甲4発明1において、接着性改善のためにコロナ放電等の処理により前記シート表面のぬれ張力を40mN/m以上とすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

ここで、令和3年3月2日付けの特許権者による意見書(第12頁下から12行〜第13頁第2行)において、「甲4発明では高剛性のPVB層により耐侵入性を達成しているのであるから、接着性の好適化又は最適化は、所望の接着性、すなわち、耐侵入性とは関係なく、接着自体が達成されていればいいのであるから、ぬれ張力を40mN/m以上に特定する動機付けも無く」との主張がなされている。しかしながら、一般に、ポリビニルブチラール樹脂は、ガラスとの接着性に優れる反面、ポリエステル等のプラスチックフィルムとの接着性に劣るために何らかの易接着処理が必要とされることは、技術常識(必要に応じて、特開2010−215496号公報の段落【0004】を参照)であることに加え、上述のとおり、40mN/m以上というぬれ張力の数値範囲は、接着性の指標であるぬれ張力の値として採用される一般的な数値範囲であると解釈できることにかんがみると、甲4発明1において、ポリエチレンテレフタレートシートと可塑化ポリビニルブチラール接着層との接着性を向上するために、シート表面のぬれ張力を40mN/m以上とすることの動機付けはあるといえるから、上記主張は採用することができない。

<相違点4について>
甲4発明1に記載の「ポリエチレンテレフタレートシート」である「PET2」は、甲4(上記(1)ウ(イ)【0031】)の記載によれば、厚さ0.177mmのPETシートであり、その記載ぶりからみて「ポリビニルアセタール樹脂を含むものではなく、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム」でもないから、相違点4は実質的なものではない。

<相違点5について>
甲4(上記(1)ウ(イ)【0019】)には、可塑剤について、ポリビニルブチラール樹脂100部あたり約20〜80部含有させること、また、多塩基酸または多価アルコールのエステルを使用でき、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)の他、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートの混合物、ジブチルセバケート等の使用が好適であることが記載される。
そして、甲4発明1の「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」は、両層とも「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」ものであるが、上記【0019】の記載に基づいて、甲4発明1の「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」において、Tg(32℃)を維持しつつ可塑剤の種類や含有量を変更することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎないものである。すなわち、甲4発明1において、甲4に記載された事項を適用して上記相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ここで、令和4年2月7日付けの特許権者による意見書(第9頁下から7行〜第10頁第1行)において、「甲4に記載の発明は、ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層が35℃を超えるガラス転移温度を有することを特定し、かかるガラス転移温度とすることで、高剛性の可塑化PVB層を設けることができるというものである。したがって、仮に、当業者が甲4発明1において、ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層のガラス転移温度を変更しようとすれば、ガラス転移温度を35℃を超える値とすることはできても、35℃を超えない範囲で、ポリビニルブチラール接着層を、約32℃のガラス転移温度から変更することはできない」との主張がされている。
しかしながら、甲4には、少なくとも350N/cmの高剛性を示す複合中間膜が別の態様として記載されているところ(上記(1)ウ(イ)【0009】)、甲4発明1に対応する実施例(同(イ)【0035】表2のNo.4)を参照すると、約32℃のTgを有する「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」を含む複合中間膜が、662N/cmの高剛性を得られることが示されている。
そうすると、甲4において、ポリビニルブチラール接着層のTgが35℃を超えることは、高剛性を示す複合中間膜を得るための一態様であって、それが必須の事項であるとまではいえないから、甲4の複合中間膜を構成する「ポリビニルブチラール接着層」のTgが35℃を超えることを論拠とした特許権者の上記主張は採用することができない。

(ウ)本件発明1の効果について
本件発明1が、上記相違点1〜5に係る構成を具備することにより、相乗的な効果を奏するものとは認められず、本件発明1の効果は、甲4発明1などからみて格別なものとはいえない。

(エ)小括
したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に対して、「前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み」、「中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む」ことをさらに特定したものであるところ、甲4発明1の第1及び第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層は、可塑剤である「3GEH」を含有するものであるから、本件発明3と甲4発明1とを対比したとき、上記アで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明3は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に対して、「前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上であり」、「中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上である」ことをさらに特定したものであり、甲4発明1は、当該特定事項を特定していない点で本件発明4と相違する。
当該相違点について検討すると、甲2(上記(1)イ(イ))には、合わせガラス用中間膜の表層に用いられるポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が29モル%以上であると、中間膜の接着力をより一層高くできることが記載されているところ、甲4発明1の可塑化ポリビニルブチラール接着層において、甲2の記載事項を適用して、水酸基の含有率を29モル%以上とすることにより、中間膜の接着性を向上させようとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件発明4は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、3及び4のいずれかに対して、「前記第2の樹脂層を備える」ことを特定したものであるが、甲4発明1の中間膜は、「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」、「ポリエチレンテレフタレートシート」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」の順に積層されたものであるから、本件発明5と甲4発明1とを対比したとき、上記ア〜ウで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明5は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1及び3〜5のいずれかに対して、「第2の樹脂層を備え」、「第2の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む」ことを特定したものであるが、甲4発明1のポリビニルブチラール樹脂層に紫外線遮蔽剤を配合することが容易想到な事項であることは、上記アで検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1及び3〜6のいずれかに対して、「第2の樹脂層を備え」、「第2の樹脂層が酸化防止剤を含む」ことを特定したものであるが、甲4発明1のポリビニルブチラール樹脂層に酸化防止剤を配合することが容易想到な事項であることは、上記アで検討したとおりである。
よって、本件発明7は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1及び3〜7のいずれかに対して、「プラスチック層が単層である」ことを特定したものであるが、甲4には前記ポリエチレンテレフタレートシートが複層であることは特段記載されておらず、当該ポリエチレンテレフタレートシートは単層であると認められるから、本件発明8と甲4発明1とを対比したとき、上記ア〜カで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明8は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明9について
本件発明9は、本件発明8に対して、「第2の樹脂層を備え」、「単層のプラスチック層の第1の表面に第1の樹脂層が積層されており」、「単層のプラスチック層の第2の表面に第2の樹脂層が積層されている」ことを特定したものであるが、甲4発明1の中間膜は、「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」、「ポリエチレンテレフタレートシート」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」の順に積層されたものであるから、本件発明9と甲4発明1とを対比したとき、上記キで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明9は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明12について
本件発明12は、本件発明1及び3〜9のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜を備えた合わせガラスの発明であって、「第1の合わせガラス部材と」、「第2の合わせガラス部材と」を備え、「合わせガラス用中間膜が、第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置されている」ことを特定したものであるが、甲4(上記(1)ウ(ア))には、ガラス用複合中間膜を第1のガラスシートと第2のガラスシートの間に配置して合わせガラスにすることが記載されているから、甲4発明1のガラス用複合中間膜を、第1のガラスシートと第2のガラスシートの間に配置して合わせガラスとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
よって、本件発明12は、甲4に記載された発明(甲4発明1)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲4発明2とを対比する。
甲4発明2の「炭素スパッタリング処理する」前の「ポリエチレンテレフタレートシート」は、本件発明2の「処理前プラスチックシート」に相当する。そして、上記ア(ア)で検討した相当関係もふまえると、本件発明2と甲4発明2とは、

「合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の第1の表面と第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程と、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下である合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点6>
本件発明2は、「前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含」むことが特定されているのに対して、
甲4発明2は、前記「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、酸化防止剤を含むのか明らかでない点。

<相違点7>
本件発明2は、「前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、」「前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下」であることが特定されているのに対して、
甲4発明2は、前記「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、紫外線遮蔽剤を含むことが特定されていない点。

<相違点8>
プラスチック層のぬれ張力に関して、
本件発明2は、「第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程」を備えるのに対し、
甲4発明2は、ポリビニルブチラールに対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの表面が炭素スパッタリング処理されているものの、当該処理前の前記シートの表面のぬれ張力が40mN/m未満であり、当該表面処理後の前記シート表面のぬれ張力が40mN/m以上であるのか明らかでない点。

<相違点9>
本件発明2は、「前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下」であり、「前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除」くことが特定されているの対して、
甲4発明2は、「ポリエチレンテレフタレートシート」であり、これらの点が明らかでない点。

<相違点10>
本件発明2は、「前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く」ことが特定されているのに対して、
甲4発明2は、「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」が、「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」点。

(イ)相違点についての検討
事案にかんがみ、相違点8から検討する。
甲4発明2において、ポリエチレンテレフタレートシートとそれに隣接するポリビニルブチラール接着層との接着性を向上すべく、ポリエチレンテレフタレートシートの表面のぬれ張力をコロナ放電等の処理により40mN/m以上とすることが容易であることは、上記ア(イ)の相違点3に対して検討したのと同様である。
そして、当該コロナ放電等の処理は、処理前の接着性が不十分であるがためになされるものであるから、コロナ放電等の処理前のぬれ張力は40mN/m未満である蓋然性が高く、実質的な相違点とはならない。
仮に、実質的な相違点であったとしても、上記ア(イ)の相違点3に対して検討したのと同様に、ポリビニルブチラール樹脂は、一般に、ポリエステル等のプラスチックフィルムとの接着性に劣るものであるから、甲4発明2において、コロナ放電等の処理前のぬれ張力が40mN/m未満であるポリエチレンテレフタレートシートを用い、当該シートに対してコロナ放電等の処理をすることによりぬれ張力を40mN/m以上とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、相違点6、7、9、10について検討するに、これらの相違点は相違点1、2、4、5と同じであるから、上記ア(イ)での検討と同様に判断される。

(ウ)本件発明2の効果について
本件発明2が、上記相違点6〜10に係る構成を具備することにより、相乗的な効果を奏するものとは認められず、本件発明2の効果は、甲4発明2などからみて格別なものとはいえない。

(エ)小括
したがって、本件発明2は、甲4に記載された発明(甲4発明2)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

サ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明2に対して、「プラスチック層が単層である」ことを特定したものであるが、甲4には前記ポリエチレンテレフタレートシートが複層であることは特段記載されておらず、甲4発明2のポリエチレンテレフタレートシートは単層であると認められるから、本件発明10と甲4発明2とを対比したとき、上記コで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明10は、甲4に記載された発明(甲4発明2)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

シ 本件発明11について
本件発明11は、本件発明10に対して、「第2の樹脂層を備え」、「単層のプラスチック層の第1の表面に第1の樹脂層が積層されており」、「単層のプラスチック層の第2の表面に第2の樹脂層が積層されている合わせガラス用中間膜を得る」ことを特定したものであるが、上述のとおり、甲4発明2は、合わせガラス用複合中間膜の製造方法に係るものであり、前記複合中間膜は、「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」、「ポリエチレンテレフタレートシート」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」の順に積層されたものであるから、本件発明11と甲4発明2とを対比したとき、上記サで検討したことに加えて新たな相違点は存在しない。
よって、本件発明11は、甲4に記載された発明(甲4発明2)並びに甲1、2及び4に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、請求項1〜12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含み、
前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、かつ前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下であり、
前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、
前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下である、合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項2】
合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程と、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記第1の樹脂層が、酸化防止剤を含み、前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含み、かつ前記第1の樹脂層100重量%中の前記第1の樹脂層に含まれる前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.1重量%以上、2.5重量%以下であり、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含まないか、又は、前記プラスチック層がポリビニルアセタール樹脂を含みかつ前記プラスチック層100重量%中の前記プラスチック層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%以下である合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0〜30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤を含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項3】
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上である、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第2の樹脂層を備える、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1及び3〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記プラスチック層が単層である、請求項1及び3〜7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第2の樹脂層を備え、
単層の前記プラスチック層の前記第1の表面に前記第1の樹脂層が積層されており、
単層の前記プラスチック層の前記第2の表面に前記第2の樹脂層が積層されている、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記プラスチック層が単層である、請求項2に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項11】
前記第2の樹脂層を備え、単層の前記プラスチック層の前記第1の表面に前記第1の樹脂層が積層されており、単層の前記プラスチック層の前記第2の表面に前記第2の樹脂層が積層されている合わせガラス用中間膜を得る、請求項10に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項12】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1及び3〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-07-06 
出願番号 P2015-512942
審決分類 P 1 651・ 537- ZAA (C03C)
P 1 651・ 121- ZAA (C03C)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 関根 崇
後藤 政博
登録日 2020-02-26 
登録番号 6666719
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス  
代理人 田口 昌浩  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 田口 昌浩  
代理人 虎山 滋郎  
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