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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 発明同一  C03C
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C03C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
管理番号 1390535
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-02 
確定日 2022-09-09 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6719611号発明「光学ガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6719611号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜15〕について訂正することを認める。 特許第6719611号の請求項1〜15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6719611号の請求項1〜15に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)4月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年4月10日、中国(CN))を国際出願日とする特願2017−545639号の一部を平成31年3月13日に特願2019−45569号として新たな特許出願としたものであって、令和2年6月18日にその特許権の設定登録がされ、同年7月8日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年10月 2日 :特許異議申立人 森 一郎(以下、「申立
人1」という。)による請求項1〜15に
係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 1月 7日 :特許異議申立人 岡田 生(以下、「申立
人2」という。)による請求項1〜15に
係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月13日付け:取消理由通知
同年 7月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

同年 9月17日 :申立人2による意見書(以下、「申立人2
意見書」という。)の提出
同年12月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 4年 4月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

同年 5月 2日 :申立人1による意見書(以下、「申立人1
意見書」という。)の提出

なお、令和3年8月17日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を送付したが、申立人1からの応答はなく、また、令和4年4月18日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を送付したが、申立人2からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年4月1日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1〜7からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、本件訂正請求により令和3年7月16日付けの訂正の請求は取下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「La3+:10〜40%;
Y3+:6.5〜15%;
を含有し、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は20〜55%であり、;
(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.5未満であり、;
Nb5+:0〜20%;
Ti4+:0〜15%;
Ta5+:0〜10%;
W6+:0〜5%;
を含有し、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量が0〜20%であり、;
(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.7〜1であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)が0.01〜0.5であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.6であり、;
Zr4+:0〜15%;
Zn2+:0〜10%;
Bi3+:0〜10%を含有し、
ガラス屈折率ndが1.85〜1.95であり、アッベ数νdが32〜40であり、
Al3+を実質的に含有しない」
と記載されているのを、
「La3+:10〜27.4%;
Y3+:6.5〜15%;
を含有し、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は20〜55%であり、;
(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.5未満であり、;
Nb5+:0〜7.4%;
Ti4+:1.6〜15%;
Ta5+:0〜10%;
を含有し、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量が0〜20%であり、;
(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)が0.01〜0.5であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281であり、;
Zr4+:0〜15%;
Zn2+:0〜10%;
Bi3+:0〜10%を含有し、
ガラス屈折率ndが1.85〜1.95であり、アッベ数νdが32〜40であり、
Al3+及びW6+を実質的に含有しない」
に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜15も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「La3+:15〜35%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜15%;及び/又はTi4+:1〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は30〜60%;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)は0.8〜1であり;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.5である」
と記載されているのを、
「La3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は30〜60%;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281である」
に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「La3+:20〜35%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:1〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜10%;及び/又はTi4+:3〜8%;及び/又はZn2+:0〜1.1%(1.1%を含まない);及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜55%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は30〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は3〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)は0.9〜1であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.4である」
と記載されているのを、
「La3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:1〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:3〜8%;及び/又はZn2+:0〜1.1%(1.1%を含まない);及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜55%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は30〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は3〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281である」
に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に
「La3+:13.4〜28.5%;及び/又はY3+:7.1〜14.2%;及び/又はGd3+:1.5〜7.5%;及び/又はYb3+:0〜1.7%;及び/又はNb5+:0〜15.2%;及び/又はTi4+:0〜13.3%;及び/又はTa5+:0〜0.5%;及び/又はZr4+:0〜12.1%;及び/又はZn2+:0〜1.2%;及び/又はBi3+:0〜0.7%;及び/又はW6+:0〜2.3%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40.1〜57.9%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は29.8〜39.9%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.126〜1.943であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は2.4〜15.7%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)は0.783〜1であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.05〜0.36であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.063〜0.47である」
と記載されているのを、
「La3+:13.4〜27.4%;及び/又はY3+:7.1〜14.2%;及び/又はGd3+:1.5〜7.5%;及び/又はYb3+:0〜1.7%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜13.3%;及び/又はTa5+:0〜0.5%;及び/又はZr4+:0〜12.1%;及び/又はZn2+:0〜1.2%;及び/又はBi3+:0〜0.7%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40.1〜57.9%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は29.8〜39.9%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.126〜1.943であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は2.4〜15.7%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.05〜0.36であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.063〜0.281である」
に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に
「La3+:15〜35%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜15%;及び/又はTi4+:0〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.5以上であるが、2.5未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)は0.8〜1であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.5である」
と記載されているのを、
「La3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.5以上であるが、2.5未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281である」
に訂正する。
請求項9の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に
「La3+:20〜35%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:0〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜10%;及び/又はTi4+:0〜5%;及び/又はZn2+:0.5〜5%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は50〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜45%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.7〜2.3であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+とW6+の合計量は0〜8%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)は0.9〜1であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.4である」
と記載されているのを、
「La3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:0〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜5%;及び/又はZn2+:0.5〜5%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は50〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜45%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.7〜2.3であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+とW6+の合計量は0〜8%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281である」
に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に
「Ti4+:0〜3%(3%を含まない)を含有する」
と記載されているのを、
「Ti4+:1.6〜3%(3%を含まない)を含有する」
に訂正する。
請求項11の記載を引用する請求項14及び15も同様に訂正する。

(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜15について、請求項2〜15は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1〜15は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1〜7に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔1〜15〕を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、「光学ガラス」の組成(陽イオン%)に関し、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、La3+の上限値を27.4%に限定し、Nb5+の上限値を7.4%に限定し、Ti4+の下限値を1.6%に限定し、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)の下限値を0.965に限定し、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)の上限値を0.281に限定し、さらに、W6+を実質的に含有しないことを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1における「La3+」が「27.4%」であることは実施例9に記載があり、「Nb5+」が「7.4%」であることは実施例13に記載があり、「Ti4+」が「1.6%」であることは実施例37に記載があり、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)」が「0.965」であることは実施例22に記載があり、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)」が「0.281」であることは実施例27に記載があり、「W6+を実質的に含有しない」ことは実施例9、13に記載があるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正といえる。
そして、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。

(2)訂正事項2〜7について
訂正事項2〜7による訂正は、「光学ガラス」の組成(陽イオン%)に関し、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4、5、8〜11において、La3+、Nb5+、Ti4+及び(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)の各数値範囲を限定するとともに、並列的な記載である(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)及びW6+に係る事項を削除して訂正事項1の訂正内容に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2〜7におけるLa5+、Nb5+、Ti4+、W6+、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)、及び(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)の各数値が実施例に記載されたものであることは、上記(1)で検討したとおりであるから、訂正事項2〜7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正といえる。
そして、訂正事項2〜7は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。

(3)独立特許要件について
特許異議の申立ては、本件訂正前の全ての請求項1〜15についてされているので、訂正事項1〜7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は同第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜15〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について
本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1〜15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
組成を陽イオン%で表すと、
Si4+:1〜20%;
B3+:25〜60%;
を含有し、Si4+及びB3+の合計量は30〜70%であり、;
La3+:10〜27.4%;
Y3+:6.5〜15%;
を含有し、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は20〜55%であり、;
(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.5未満であり、;
Nb5+:0〜7.4%;
Ti4+:1.6〜15%;
Ta5+:0〜10%;
を含有し、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量が0〜20%であり、;
(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)が0.01〜0.5であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281であり、;
Zr4+:0〜15%;
Zn2+:0〜10%;
Bi3+:0〜10%を含有し、
ガラス屈折率ndが1.85〜1.95であり、アッベ数νdが32〜40であり、
Al3+及びW6+を実質的に含有しない、
光学ガラス。
【請求項2】
Li+、Na+及びK+の合計量は、10%未満であり、;
及び/又はBa2+、Mg2+、Ca2+及びSr2+のその合計量は、10%未満である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
Li+、Na+及びK+の合計量は、5%未満であり、;
及び/又はBa2+、Mg2+、Ca2+及びSr2+の合計量は、5%未満である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項4】
Si4+:2〜15%;及び/又はB3+:25〜45%(45%を含まない);及び/又はLa3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は30〜60%;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項5】
Si4+:5〜13%;及び/又はB3+:30〜45%(45%を含まない);及び/又はLa3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:1〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:3〜8%;及び/又はZn2+:0〜1.1%(1.1%を含まない);及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜55%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は30〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は3〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項6】
Gd3+:2.5〜8%;及び/又はTi4+:3〜7%を含有する、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項7】
ガラス透過率が70%に達する際に対応する波長が420nm以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項8】
Si4+:5.2〜18.2%;及び/又はB3+:27.4〜40.7%;及び/又はLa3+:13.4〜27.4%;及び/又はY3+:7.1〜14.2%;及び/又はGd3+:1.5〜7.5%;及び/又はYb3+:0〜1.7%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜13.3%;及び/又はTa5+:0〜0.5%;及び/又はZr4+:0〜12.1%;及び/又はZn2+:0〜1.2%;及び/又はBi3+:0〜0.7%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40.1〜57.9%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は29.8〜39.9%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.126〜1.943であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は2.4〜15.7%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.05〜0.36であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.063〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項9】
Si4+:2〜15%;及び/又はB3+:45〜60%;及び/又はLa3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.5以上であるが、2.5未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項10】
Si4+:5〜13%;及び/又はB3+:45〜55%;及び/又はLa3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:0〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜5%;及び/又はZn2+:0.5〜5%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は50〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜45%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.7〜2.3であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+とW6+の合計量は0〜8%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項11】
Zn2+:1.1〜3%;及び/又はGd3+:0〜2.5%(2.5%を含まない);及び/又はTi4+:1.6〜3%(3%を含まない)を含有する、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項12】
前記組成はTa5+を含有しない、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項13】
ガラス密度が5g/cm3以下であり、ガラス結晶化上限温度が1250℃以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学ガラスにより形成された、ガラスプリフォーム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学ガラスにより形成された、光学素子。」

第4 取消理由通知書に記載した取消理由、及び、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由にについて
1 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和3年4月13日付けの取消理由、及び、同年12月21日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性
請求項1〜15に係る発明は、以下の引用文献1〜4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性
請求項1〜15に係る発明は、以下の引用文献1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(拡大先願)
請求項1〜15に係る発明は、以下の特許出願(先願1〜3)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先1明細書等」などという。)に記載された発明と同一であるから、請求項1〜15に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

2 特許異議申立理由の概要
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性
請求項1〜10、12〜15に係る発明は、以下の引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2014−62024号公報(申立人1提出の甲第1号証、申立人2提出の甲第1号証)
引用文献2:特開2014−62025号公報(申立人1提出の甲第2号証、申立人2提出の甲第2号証)
引用文献3:国際公開第2013/094619号(申立人1提出の甲第3号証)
引用文献4:特開2014−221704号公報(申立人2提出の別紙15)
引用文献5:特開2010−83705号公報(申立人2提出の甲第3号証)
先願1:特願2014−205978号(特開2016−74557号公報)(申立人2提出の別紙16)
先願2:特願2013−273451号(特開2015−127276号公報)(申立人1提出の甲第4号証)
先願3:特願2016−557842号(国際公開第2016/072523号)(申立人1提出の甲第5号証)
以下、各引用文献等を「引1」、「先1」などと略称する。

3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引1(特開2014−62024号公報)
ア 引1の記載事項
引1には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は当審による省略を意味する。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。

【0008】
本発明は、…その目的とするところは、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にあり、且つ光学機器の軽量化に寄与しうる安定なガラスを、より安価に得ることにある。

【0039】
Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、30.0%以上75.0%以下が好ましい。
特に、この和を30.0%以上にすることで、ガラスの分散を小さくできる。従って、Ln2O3成分の質量和は、好ましくは30.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは45.0%、さらに好ましくは54.0%を下限とする。
一方で、この和を70.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、耐失透性を高められる。従って、Ln2O3成分の質量和は、好ましくは70.0%、より好ましくは68.0%、さらに好ましくは65.0%を上限とする。

【0041】
Ta2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、高価なTa2O5成分を15.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。

【0043】
WO3成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。…
【0044】
Nb2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。

【0045】
TiO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、且つ耐失透性を高められる任意成分である。そのため、TiO2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、TiO2の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、ガラスのアッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、TiO2成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO2成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは15.0%を上限とし、さらに好ましくは10.0%未満とする。…
【0046】
ここで、Nb2O5成分及びWO3成分の含有量の和(質量和)は、1.0%以上30.0%以下が好ましい。
特に、この和を1.0%以上にすることで、ガラスの材料コストを低減するためにTa2O5成分や希土類元素を低減しても、ガラスの屈折率を高められ、着色を低減でき、且つ耐失透性を高められる。」

(イ)「【0076】
[ガラス成形体及び光学素子]
…光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、…
【0077】
このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である」

(ウ)「【0078】
…分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ5及びλ70)並びに比重の結果を表1〜表19に示す。

【0096】
【表13】



イ 引1に記載された発明
引1(上記ア(ウ)の【表13】)の実施例91に注目して整理すると、引1には、「質量%で、B2O3成分14.05%、SiO2成分7.02%、La2O3成分49.15%、Y2O3成分10.50、Gd2O3成分0%、TiO2成分3.83%、Nb2O5成分8.30%、ZrO2成分6.10%、Ta2O5成分0%、Al2O3成分0%、WO3成分1.03%、BaO成分0%、Li2O成分0%、Na2O成分0%、ZnO成分0%、Bi2O3成分0%、Sb2O3成分0.02%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.8900、アッベ数(νd)が37.2であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が396nmである、光学ガラス。」(以下、「引1発明」という。)の発明が記載されている。

(2)引2(特開2014−62025号公報)
ア 引2の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。

【0007】
本発明は、…その目的とするところは、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にある安定なガラスを、より安価に得ることにある。

【0040】
Ta2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、高価なTa2O5成分を15.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、Ta2O5成分の含有量を15.0%以下にすることで、原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストをも低減できる。従って、Ta2O5成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは13.0%、さらに好ましくは8.0%を上限とする。特に、より安価な光学ガラスを作製する観点では、Ta2O5成分の含有量は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.0%を上限とし、さらに好ましくは1.0%未満とする。

【0043】
WO3成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。…
【0044】
Nb2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
【0045】
TiO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、且つ耐失透性を高められる任意成分である。そのため、TiO2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、TiO2の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、ガラスのアッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、TiO2成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO2成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは28.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。

【0046】
ここで、Nb2O5成分及びWO3成分の含有量の和(質量和)は、1.0%以上30.0%以下が好ましい。
特に、この和を1.0%以上にすることで、ガラスの材料コストを低減するためにTa2O5成分や希土類元素を低減しても、ガラスの屈折率を高められ、着色を低減でき、且つ耐失透性を高められる。」

(イ)「【0074】
[ガラス成形体及び光学素子]
…光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、…
【0075】
このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である」

(ウ)「【0076】
…分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ5及びλ70)の結果を表1〜表21に示す。

【0086】
【表6】



イ 引2に記載された発明
引2(上記ア(ウ)の【表6】)の実施例44に注目して整理すると、引2には、「質量%で、B2O3成分12.40%、SiO2成分7.02%、La2O3成分49.70%、Y2O3成分10.50%、Gd2O3成分1.80%、TiO2成分3.30%、Nb2O5成分7.90%、ZrO2成分6.10%、Ta2O5成分0%、Al2O3成分0%、WO3成分1.20%、ZnO成分0%、Bi2O3成分0%、Sb2O3成分0.08%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.8984、アッベ数(νd)が37.4であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が404nmである、光学ガラス。」(以下、「引2発明」という。)の発明が記載されている。

(3)引3(国際公開第2013/094619号)
ア 引3の記載事項
(ア)「[0001] 本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。

[0008] 本発明は、…その目的とするところは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら、耐失透性が高く安定なガラスを、より安価に得ることにある。

[0064] Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、30.0%以上75.0%以下が好ましい。
特に、この和を30.0%以上にすることで、ガラスの分散を小さくできる。従って、Ln2O3成分の質量和は、好ましくは30.0%、より好ましくは35.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは45.0%、さらに好ましくは48.0%、さらに好ましくは54.0%を下限とする。
一方で、この和を75.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、耐失透性を高められる。従って、Ln2O3成分の質量和は、好ましくは75.0%、より好ましくは70.0%、より好ましくは68.0%、さらに好ましくは65.0%、さらに好ましくは60.0%を上限とする。

[0066] Ta2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を高め、且つ熔融ガラスの粘性を高められる任意成分である。
一方で、高価なTa2O5成分を15.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。

[0071] WO3成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。…
[0072] Nb2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。

[0073] TiO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、且つ耐失透性を高められる任意成分である。そのため、特に第1及び第2の光学ガラスでは、TiO2成分の含有量は、好ましくは0%超とし、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、TiO2の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、ガラスのアッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、TiO2成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO2成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは28.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。特に、第1の光学ガラスでは、TiO2成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは15.0%を上限とし、さらに好ましくは10.0%未満としてもよい。また、第3の光学ガラスでは、TiO2成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限としてもよい。…[0074] 特に第1及び第2の光学ガラスでは、Nb2O5成分及びWO3成分の含有量の和(質量和)は、1.0%以上30.0%以下が好ましい。
特に、この和を1.0%以上にすることで、ガラスの材料コストを低減するためにTa2O5成分や希土類元素を低減しても、ガラスの屈折率を高められ、着色を低減でき、且つ耐失透性を高められる。」

(イ)「[0111] [ガラス成形体及び光学素子]
…光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、…
[0112] このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である」

(ウ)「[0113] …分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ5及びλ70)並びに比重の結果を表1〜表56に示す。

[0131]
【表13】



イ 引3に記載された発明
引3(上記ア(ウ)の【表13】)の実施例91に注目して整理すると、引3には、「質量%で、B2O3成分14.05%、SiO2成分7.02%、La2O3成分49.15%、Y2O3成分10.50、Gd2O3成分0%、TiO2成分3.83%、Nb2O5成分8.30%、ZrO2成分6.10%、Ta2O5成分0%、Al2O3成分0%、WO3成分1.03%、BaO成分0%、Li2O成分0%、Na2O成分0%、ZnO成分0%、Bi2O3成分0%、Sb2O3成分0.02%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.8900、アッベ数(νd)が37.2であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が396nmである、光学ガラス。」(以下、「引3発明」という。)の発明が記載されている。

(4)引4(特開2014−221704号公報)
ア 引4の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。

【0006】
本発明は、…その目的とするところは、1.85以上の屈折率(nd)及び20以上40以下のアッベ数(νd)を有しながらも、高い可視光透過率を有する光学ガラスと、これを用いた光学素子とガラス成形体の製造方法を提供することにある。

【0030】
Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、20.0%以上70.0%以下である。

【0033】
Nb2O5成分及びTiO2成分の含有量は、合計で50.0%以下である。これにより、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ、ガラスのアッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、これらの成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、質量和(Nb2O5+TiO2)は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは24.0%を上限とする。
一方で、Nb2O5成分及びTiO2成分を合計で0%超含有してもよい。これにより、ガラスの屈折率を高められ、アッベ数を低く調整でき、且つ耐失透性を高められる。従って、質量和(Nb2O5+TiO2)は、好ましくは0%超、より好ましくは2.0%超、さらに好ましくは4.0%超、さらに好ましくは7.0%超、さらに好ましくは9.0%超とする。

【0037】
Gd2O3成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つアッベ数を高められる任意成分である。
一方で、希土類元素の中でも特に高価なGd2O3成分を30.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これによりガラスのアッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Gd2O3成分の含有量は、それぞれ好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。
Gd2O3成分は、原料としてGd2O3、GdF3等を用いることができる。

【0041】
Nb2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。

【0043】
Ta2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、高価なTa2O5成分を20.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これにより原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストをも低減できる。従って、Ta2O5成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。
Ta2O5成分は、原料としてTa2O5等を用いることができる。

【0053】
WO3成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、ガラス転移点を低くでき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。」

(イ)「【0069】
[ガラス成形体及び光学素子]
…光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、…
【0070】
このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である」

(ウ)「【0071】
…分光透過率が70%を示す波長(λ70)を表1〜表3に示す。

【0075】
【表1】



イ 引4に記載された発明
引4(上記ア(ウ)の【表1】)の実施例6に注目して整理すると、引4には、「質量%で、B2O3成分12.571%、SiO2成分6.537%、La2O3成分48.272%、Y2O3成分10.057%、Gd2O3成分0%、Yb2O3成分0%、TiO2成分5.531%、Nb2O5成分7.543%、ZrO2成分6.034%、Ta2O5成分0%、Li2O成分0%、Na2O成分0%、K2O成分0%、MgO成分1.006%、CaO成分1.445%、SrO成分0%、BaO成分1.006%、ZnO成分0%、P2O5成分0%、GeO2成分0%、Al2O3成分0%、Ga2O3成分0%、WO3成分0%、Bi2O3成分0%、TeO2成分0%、SnO2成分0%、Sb2O3成分0%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.89243、アッベ数(νd)が36.4であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が396nmである、光学ガラス。」(以下、「引4発明」という。)の発明が記載されている。

(5)引5(特開2010−83705号公報)
ア 引5の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は高屈折率低分散特性を有する光学ガラス、前記光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブおよび光学素子、ならびに光学素子ブランクおよび光学素子のそれぞれの製造方法に関する。

【0006】
本発明はこのような事情のもとで、安定供給が可能であって、優れたガラス安定性を有し、しかも着色が少ない高屈折率低分散光学ガラス、このガラスからなるプレス成形用ガラスゴブおよび光学素子、ならびに光学素子ブランクおよび光学素子のそれぞれの製造方法を提供することを目的とするものである。

【0024】
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量が45%未満であると所望の屈折率、分散を実現することが困難になるとともに化学的耐久性が低下する。一方、前記合計含有量が65%を超えると液相温度が上昇し、耐失透性が悪化する。また、熔融ガラスを成形する際の粘性も低下するため、成形性も低下してしまう。したがって、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量を45〜65%とする。La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の好ましい範囲は47〜63%、より好ましい範囲は49〜61%、さらに好ましい範囲は51〜60%である。
【0025】
La2O3、Gd2O3、Y2O3のうち、ガラス安定性を維持しつつ屈折率を高める効果が最も大きい成分はLa2O3である。しかし、本発明の光学ガラスは、低分散性を維持しつつ、屈折率が極めて高いため、上記3成分のうちLa2O3のみの使用では、十分なガラス安定性を確保することが困難となる。そこで、本発明では、3成分のうち、La2O3の含有量を最も多くしつつ、La2O3とGd2O3を共存させたり、La2O3とY2O3を共存させることにより、高屈折率低分散ガラスでありながら、優れたガラス安定性を実現している。

【0028】
本発明の光学ガラスの好ましい態様において、La2O3の含有量は25〜65%、Gd2O3の含有量は0〜25%、Y2O3の含有量は0〜20%とする。La2O3、Gd2O3、Y2O3の合計含有量およびLa2O3、Gd2O3、Y2O3の配分比を前記範囲にすることにより、好ましくは、La2O3、Gd2O3、Y2O3の各含有量を前記範囲内とすることにより、ガラス安定性がより改善され、熔融ガラスの成形性もより改善される。また、ガラス熔融温度の上昇を抑えることができ、熔融容器を構成する白金や白金合金がガラスによって侵蝕され、ガラス中にイオンとして溶け込んでガラスが着色したり、固形物として混入することを防止することができる。
【0029】
La2O3の含有量の好ましい範囲は30〜60%、より好ましい範囲は30〜58%、さらに好ましい範囲は32〜55%であり、Gd2O3の含有量の好ましい範囲は0.1〜20%、より好ましい範囲は1〜18%、さらに好ましい範囲は2〜15%、一層好ましい範囲は5〜15%、より一層好ましい範囲は7〜15%であり、Y2O3の含有量の好ましい範囲は0.1〜18%、より好ましい範囲は0.1〜16%、さらに好ましい範囲は0.1〜10%である。」

(イ)「【0104】



イ 引5に記載された発明
引5(上記ア(イ)の【表1】)の実施例2に注目して整理すると、引5には、「質量%で、B2O3成分10.55%、SiO2成分8.03%、La2O3成分43.53%、Y2O3成分3.48%、Gd2O3成分10.71%、Yb2O3成分0%、TiO2成分6.16%、Nb2O5成分6.22%、ZrO2成分4.69%、Ta2O5成分0%、Li2O成分0%、Na2O成分0%、K2O成分0%、MgO成分0%、CaO成分0%、SrO成分0%、BaO成分0%、ZnO成分5.44%、GeO2成分0%、Al2O3成分0%、WO3成分1.19%、Bi2O3成分0%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.9107、アッベ数(νd)が35.12であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が422nmである、光学ガラス。」(以下、「引5発明」という。)の発明が記載されている。

(6)先1(特願2014−205978号(特開2016−74557号公報))
ア 先1明細書等の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。

【0008】
本発明の目的は、…屈折率(nd)1.70以上の高屈折率の光学ガラスにおいて、紫外線等の照射の際に発生する蛍光の強度が小さく、さらに内部品質に優れた安定な光学ガラスを提供することにある。

【0042】
Nb2O5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。…
【0043】
WO3成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら、屈折率を高め、ガラス転移点を低くでき、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。」

(イ)「【0077】
[プリフォーム材及び光学素子]
…光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体
を作製したり、…
【0078】
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用である。」

(ウ)「【0079】
…分光透過率が5%、70%及び80%を示す波長(λ5、λ70、λ80) 、泡の程度、脈理の程度、並びに比重の結果を表1〜表2に示す。

【0087】
【表1】



イ 先1明細書等に記載された発明
先1明細書等(上記ア(ウ)の【表1】)の実施例6に注目して整理すると、先1明細書等には、「質量%で、B2O3成分11.110%、SiO2成分6.020%、La2O3成分50.090%、Y2O3成分8.400%、Gd2O3成分0%、TiO2成分9.500%、Nb2O5成分7.710%、ZrO2成分6.100%、Ta2O5成分0%、ZnO成分1.070%、Al2O3成分0%、WO3成分0%、MgO成分0%、CaO成分0%、SrO成分0%、BaO成分0%、Li2O成分0%、Sb2O3成分0%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.950、アッベ数(νd)が32.2であり、比重が4.91g/cm3であり、ガラスの分光透過率70%を示す波長(λ70)が424nmである、光学ガラス。」(以下、「先1発明」という。)の発明が記載されている。

(7)先2(特願2013−273451号(特開2015−127276号公報))
ア 先2明細書等の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、光学ガラス、特に、屈折率が高く低分散の光学ガラスに関する。

【0007】
そこで本発明は、Sb2O3成分(アンチモン)の添加量を抑えつつ、脱泡を促進することのできる、高屈折率低分散の光学ガラスを得ることを目的とする。」

(イ)「【0061】
このように作製した光学ガラスから光学素子を作成する手段は、リヒートプレスした後に研削及び研磨する方法、或いはプリフォームを作成してモールドプレスを行う方法を用いることができる。」

(ウ)「【実施例】
【0063】
本発明の実施例(No.1〜No.23)及び比較例の組成(質量%)、並びに、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、分光透過率が80%、70%及び5%を示す波長(λ80、λ70、λ5)の結果、比重d、液相温度(℃)、1250℃での粘性(粘度)η(単位dPa・s)、ガラス中の硫黄Sの量(ppm)、及び、ガラス中の泡(気泡)の数(個/100g)を表1〜表3に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。

【0072】



イ 先2明細書等に記載された発明
先2明細書等(上記ア(ウ)の【表3】)の実施例17に注目して整理すると、先2明細書等には、「質量%で、B2O3成分12.450%、La2O3成分47.320%、Y2O3成分10.010%、Gd2O3成分0%、Yb2O3成分0%、Ta2O5成分0%、WO3成分2.230%、Nb2O5成分7.090%、TiO2成分3.580%、SiO2成分7.310%、ZrO2成分5.180%、ZnO成分4.830%、Al2O3成分0%、Bi2O3成分0%、Sb2O3成分0%、Li2O成分0%、Na2O成分0%、K2O成分0%、MgO成分0%、CaO成分0%、SrO成分0%、BaO成分0%の酸化物換算組成からなり、屈折率(nd)が1.89051、アッベ数(νd)が37.17であり、分光透過率が70%を示す波長(λ70)が384nmであり、比重が4.87g/cm3であり、液相温度が1160℃である、光学ガラス。」(以下、「先2発明」という。)の発明が記載されている。

(8)先3(特願2016−557842号(国際公開第2016/072523号))
ア 先3明細書等の記載事項(対応する国際公開公報の該当箇所を示す。)
(ア)「[0001] 本発明は、ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子に関する。

[0008] 本発明の一態様は、アッベ数νdが39.5〜41.5であり、nd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たし、安定供給が可能であり、かつ光学系の作製に好適なガラスを提供することを目的とする。」

(イ)「[0295] (実施例1)
下記の表に示す組成を有するガラスが得られるように、原料として酸化物、ホウ酸などの化合物を秤量し、充分、混合してバッチ原料を作製した。
このバッチ原料を白金坩堝中に入れ、1350〜1450℃の温度に坩堝ごと加熱し、2〜3時間かけてガラスを熔融、清澄した。熔融ガラスを攪拌して均質化した後、予熱した成形型に熔融ガラスを鋳込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちに、成形型ごとガラスをアニール炉内に入れた。それから、ガラス転移温度付近で約1時間アニールした。アニールした後、アニール炉内で室温まで放冷した。
このようにして作製したガラスを観察したところ、結晶の析出、泡、脈理、原料の熔け残りは認められなかった。このようにして、均質性の高いガラスを作ることができた。
下記の表中、No.1−1〜1−52は、ガラスA、ガラスDであり、No.1−9、1−11〜1−52は、ガラスCであり、No.2−1〜2−52は、ガラスBである。」

【0298】







(ウ)「[0302] (実施例2)
実施例1で得られた各種ガラスを使用し、プレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。」

イ 先3明細書等に記載された発明
先3明細書等(上記ア(イ)の【表126−1】、【表126−2】、【表126−5】、【表126−6】、)の実施例1のNo.1−1に注目して整理すると、先3明細書等には、「カチオン%で、Si4+が7.4%、B3+が45.7%、La3+が25.0%、Y3+が7.6%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Nb5+が7.8%、Ti4+が0%、Ta5+が0%、W6+が0%、Zr4+が4.4%、Zn2+が2.1%、Bi3+が0%、Al3+が0%、Li+が0%、Na+が0%、K+が0%、Ba2+が0%、Mg2+が0%、Ca2+が0%、Sr2+が0%、Ga4+が0%、P5+が0%、Al3+が0%、Bi3+が0%の組成を有し、屈折率(nd)が1.8611、アッベ数(νd)が40.00であり、分光透過率が70%になる波長λ70が380nmであり、比重が4.68g/cm3であり、液相温度が1200℃である、光学ガラス。」(以下、「先3発明」という。)の発明が記載されている。

4 当審の判断
(1)引1を主たる証拠とした場合(取消理由1、2)
ア 本件発明1
(ア)対比
引1発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が37.40%、Si4+が10.82%、La3+が27.93%、Y3+が8.61%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Ti4+が4.44%、Nb5+が5.79%、Zr4+が4.59%、Ta5+が0%、Zn2+が0%、Al3+が0%、W6+が0.41%、Bi3+が0%となり、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が48.22%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が36.55%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が10.64%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.32、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.22、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29になる。
また、引1発明の屈折率(nd)が1.8900、アッベ数(νd)が37.2であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と引1発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点1−1>
本件発明1は、「La3+:10〜27.4%」であるのに対し、引1発明は、「La3+が27.93%」である点。

<相違点1−2>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1」であるのに対し、引1発明は、「Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96」である点。

<相違点1−3>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281」であるのに対し、引1発明は、「Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29」である点。

<相違点1−4>
本件発明1は、「W6+を実質的に含有しない」のに対し、引1発明は、「W6+を0.41%含有する」点。

(イ)判断
事案にかんがみ、上記相違点1−3から検討する。
まず、引1発明において、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29であるから、相違点1−3は実質的なものである。
次に、相違点1−3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。
引1には、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にあり、且つ光学機器の軽量化に寄与しうる安定なガラスを、より安価に得ることを目的として、光学ガラスの各成分の含有割合を特定範囲内とすることが記載されているから(前記3(1)ア(ア))、引1発明において、光学ガラスを構成する各成分の割合を当該特定範囲内で調整することは、当業者であれば容易に想起することである。
しかしながら、引1を子細にみても、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲に調整することの記載はないし、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0045】)にあるように、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲にすることにより、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすことができることを示唆するような記載もない。
そうすると、引1発明において、光学ガラスにおいて、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすようにするため、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を0.02〜0.281とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、引1に記載された発明であるといえないし、また、引1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、引1を主たる証拠とした取消理由1及び取消理由2に理由はない。
なお、引1に記載された実施例46、50、53、54、58〜62、66〜68、73〜75、92〜94、96、97、118〜131の「光学ガラス」に注目して引1に記載された発明を認定しても同様である。

(2)引2を主たる証拠とした場合(取消理由1、2)
ア 本件発明1
(ア)対比
引2発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が34.35%、Si4+が11.27%、La3+が29.42%、Y3+が8.97%、Gd3+が0.96%、Yb3+が0%、Ti4+が3.98%、Nb5+が5.73%、Zr4+が4.77%、Ta5+が0%、Zn2+が0%、Al3+が0%、W6+が0.50%、Bi3+が0%となり、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が45.61%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が39.34%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が10.22%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.16、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.95、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.22、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.26になる。
また、引2発明の屈折率(nd)が1.8984、アッベ数(νd)が37.4であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と引2発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点2−1>
本件発明1は、「La3+:10〜27.4%」であるのに対し、引2発明は、「La3+が29.42%」である点。

<相違点2−2>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1」であるのに対し、引2発明は、「Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.95」である点。

<相違点2−3>
本件発明1は、「W6+を実質的に含有しない」のに対し、引2発明は、「W6+を0.5%含有する」点。

(イ)判断
事案にかんがみ、上記相違点2−2から検討する。
まず、引2発明において、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.95であるから、相違点2−2は実質的なものである。
次に、相違点2−2に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。
引2には、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にある安定なガラスを、より安価に得ることを目的として、光学ガラスの各成分の含有割合を特定範囲内とすることが記載されているから(前記3(2)ア(ア))、引2発明において、光学ガラスを構成する各成分の割合を当該特定範囲内で調整することは、当業者であれば容易に想起することである。
しかしながら、引2を子細にみても、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)を所定の数値範囲に調整することの記載はないし、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0044】)にあるように、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)を所定の数値範囲にすることにより、光学特性とガラスの熱安定性を実現することができるが、圧縮成形金型との酸化還元反応を引き起こし難くできることを示唆するような記載もない。
そうすると、引2発明において、光学ガラスにおいて、光学特性とガラスの熱安定性を実現することができるが、圧縮成形金型との酸化還元反応を引き起こし難くするため、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)を0.965〜1とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、引2に記載された発明であるといえないし、また、引2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、引2を主たる証拠とした取消理由1及び取消理由2に理由はない。
なお、引2に記載された実施例47〜49、52〜56、60〜62、87、107、108、139〜142、147〜149の「光学ガラス」に注目して引2に記載された発明を認定しても同様である。

(3)引3を主たる証拠とした場合(取消理由1、2)
ア 本件発明1
(ア)対比
引3発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が37.40%、Si4+が10.82%、La3+が27.93%、Y3+が8.61%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Ti4+が4.44%、Nb5+が5.79%、Zr4+が4.59%、Ta5+が0%、Zn2+が0%、Al3+が0%、W6+が0.41%、Bi3+が0%となり、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が48.22%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が36.55%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が10.64%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.32、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.22、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29になる。
さらに、引3発明の屈折率(nd)が1.8900、アッベ数(νd)が37.2であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と引3発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点3−1>
本件発明1は、「La3+:10〜27.4%」であるのに対し、引3発明は、「La3+が27.93%」である点。

<相違点3−2>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1」であるのに対し、引3発明は、「Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96」である点。

<相違点3−3>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281」であるのに対し、引3発明は、「Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29」である点。

<相違点3−4>
本件発明1は、「W6+を実質的に含有しない」のに対し、引3発明は、「W6+を0.41%含有する」点。

(イ)判断
事案にかんがみ、上記相違点3−3から検討する。
まず、引3発明において、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29であるから、相違点3−3は実質的なものである。
次に、相違点3−3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、当該相違点3−3は、上記(1)ア(ア)の相違点1−3と同じであるし、引3にも、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲に調整することの記載はないから、同(イ)での検討と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、引3に記載された発明であるといえないし、また、引3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、引3を主たる証拠とした取消理由1及び取消理由2に理由はない。
なお、引3に記載された実施例46、50、53、54、58〜62、66〜68、73〜75、92〜94、96、97、118〜131の「光学ガラス」に注目して引3に記載された発明を認定しても同様である。

(4)引4を主たる証拠とした場合(取消理由1、2)
ア 本件発明1について
(ア)対比
引4発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が33.2%、Si4+が10.0%、La3+が27.2%、Y3+が8.2%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Ti4+が6.4%、Nb5+が5.2%、Zr4+が4.5%、Ta5+が0%、Mg2+が2.3%、Ca2+が2.4%、Ba2+が0.6%、Zn2+が0%、Al3+が0%、W6+が0%、Bi3+が0%となり、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が43.2%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が35.44%、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量が11.58%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.22、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が1、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.27、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.33になる。
また、引4発明の屈折率(nd)が1.89243、アッベ数(νd)が36.4であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と引4発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点4−1>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281」であるのに対し、引4発明は、「Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.33」である点。

(イ)判断
上記相違点4−1について検討する。
まず、引4発明において、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.33であるから、相違点4−1は実質的なものである。
次に、相違点4−1に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。
引4には、1.85以上の屈折率(nd)及び20以上40以下のアッベ数(νd)を有しながらも、高い可視光透過率を有する光学ガラスを目的として、光学ガラスの各成分の含有割合を特定範囲内とすることが記載されているから(前記3(4)ア(ア))、引4発明において、光学ガラスを構成する各成分の割合を当該特定範囲内で調整することは、当業者であれば容易に想起することである。
しかしながら、引4を子細にみても、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲に調整することの記載はないし、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0045】)にあるように、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲にすることにより、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすことができることを示唆するような記載もない。
そうすると、引4発明において、光学ガラスにおいて、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすようにするため、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を0.02〜0.281とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、本件発明1は、引4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、引4に記載された発明であるといえないし、また、引4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、引4を主たる証拠とした取消理由1及び取消理由2に理由はない。

(5)引5を主たる証拠とした場合(申立理由1)
ア 本件発明1について
(ア)対比
引5発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が29.5%、Si4+が13.0%、La3+が26.0%、Y3+が3.0%、Gd3+が5.7%、Yb3+が0%、Ti4+が7.5%、Nb5+が4.6%、Zr4+が3.7%、Ta5+が0%、Zn2+が6.5%、Al3+が0%、W6+が0.5%、Bi3+が0%となり、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が42.5%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が34.7%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が12.60%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.22、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.30、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.36になる。
また、引5発明の屈折率(nd)が1.9107、アッベ数(νd)が35.12であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と引5発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点5−1>
本件発明1は、「Y3+:6.5〜15%」であるのに対し、引5発明は、「Y3+が3.0%」である点。

<相違点5−2>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1」であるのに対し、引5発明は、「Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.96」である点。

<相違点5−3>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281」であるのに対し、引5発明は、「Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.36」である点。

<相違点5−4>
本件発明1は、「W6+を実質的に含有しない」のに対し、引5発明は、「W6+を0.5%含有する」点。

(イ)判断
事案にかんがみ、上記相違点5−3から検討する。
まず、引5発明において、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.36であるから、相違点5−3は実質的なものである。
次に、相違点5−3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。
引5には、安定供給が可能であって、優れたガラス安定性を有し、しかも着色が少ない高屈折率低分散光学ガラスを提供することを目的として、光学ガラスの各成分の含有割合を特定範囲内とすることが記載されているから(前記3(5)ア(ア))、引5発明において、光学ガラスを構成する各成分の割合を当該特定範囲内で調整することは、当業者であれば容易に想起することである。
しかしながら、引5を子細にみても、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲に調整することの記載はないし、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0045】)にあるように、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を所定の数値範囲にすることにより、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすことができることを示唆するような記載もない。
そうすると、引5発明において、光学ガラスにおいて、ガラス形成性を維持すると同時に必要な光学特性を果たすようにするため、(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)を0.02〜0.281とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、引5に記載された発明であるといえないし、また、引5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、引5を主たる証拠とした申立理由1に理由はない。

(6)先1を主たる証拠とした場合(取消理由3)
ア 本件発明1について
(ア)対比
先1発明の組成を陽イオン%で表すと、
B3+が30.58%、Si4+が9.60%、La3+が29.46%、Y3+が7.13%、Gd3+が0%、Ti4+が11.39%、Nb5+が5.56%、Zr4+が4.74%、Ta5+が0%、Zn2+が1.26%、Al3+が0%、W6+が0%、Bi3+が0%、S4+が0.27%となり、さらに当該組成にY2O3成分及びBi2O3成分を含有していないことは明らかであるから、Yb3+及びBi3+は0%となる。そして、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が40.18%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が36.59%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が16.95%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.10、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が1、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.42、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.46になる。
また、先1発明の屈折率(nd)が1.950、アッベ数(νd)が32.2であることは、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と先1発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点6−1>
本件発明1は、「La3+:10〜27.4%」であるのに対し、先1発明は、「La3+が29.46%」である点。

<相違点6−2>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281」であるのに対し、先1発明は、「Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.46」である点。

(イ)判断
先1発明において、La3+は29.46%であり、また、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.29であるから、相違点6−1、6−2は実質的なものである。また、これらの相違点が、先1発明を具体化する際に生じる微差程度のものということもできない。
よって、本件発明1は、先1発明と同一又は実質同一なものとはいえない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、先1発明と実質同一なものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、先1を主たる証拠とした取消理由3に理由はない。

(7)先2を主たる証拠とした場合(取消理由3)
ア 本件発明1について
(ア)対比
先2発明の組成を陽イオン%で表すと、
Si4+が11.39%、B3+が33.48%、La3+が27.19%、Y3+が8.37%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Nb5+が4.99%、Ti4+が4.20%、Ta5+が0%、W6+が0.90%、Zr4+が3.93%、Zn2+が5.55%、Bi3+が0%、Al3+が0%、Li+が0%、Na+が0%、K+が0%、Ba2+が0%、Mg2+が0%、Ca2+が0%、Sr2+が0%になるし、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が44.87%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が35.56%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が10.09%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.26、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.91、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.22、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.28になる。
また、先2発明の屈折率(nd)が1.89051、アッベ数(νd)が37.17であるから、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と先2発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点7−1>
本件発明1は、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1」であるのに対し、先2発明は、「Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.91」である点。

<相違点7−2>
本件発明1は、「W6+を実質的に含有しない」のに対し、先2発明は、「W6+を0.90%含有する」点。

(イ)判断
先2発明において、W6+は0.90%であり、また、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が0.91であるから、相違点7−1、7−2は実質的なものである。また、これらの相違点が、先2発明を具体化する際に生じる微差程度のものということもできない。
よって、本件発明1は、先2発明と同一又は実質同一なものとはいえない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、先2発明と実質同一なものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、先2を主たる証拠とした取消理由3に理由はない。

(8)先3を主たる証拠とした場合(取消理由3)
ア 本件発明1について
(ア)対比
上記2(8)イのとおり、先3発明の組成は、陽イオン%で、Si4+が7.4%、B3+が45.7%、La3+が25.0%、Y3+が7.6%、Gd3+が0%、Yb3+が0%、Nb5+が7.8%、Ti4+が0%、Ta5+が0%、W6+が0%、Zr4+が4.4%、Zn2+が2.1%、Bi3+が0%、Al3+が0%、Li+が0%、Na+が0%、K+が0%、Ba2+が0%、Mg2+が0%、Ca2+が0%、Sr2+が0%、Ga4+が0%、P5+が0%、Al3+が0%、Bi3+が0%の組成を有し、当該陽イオン%から「合計量」や「合計量比」を算出すると、Si4+及びB3+の合計量が53.1%、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が32.6%、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が7.8%、Si4+及びB3+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が1.63、Nb5+及びTi4+の合計量/Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量が1.00、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/Si4+及びB3+の合計量が0.15、Nb5+、Ti4+、Ta5+、及びW6+の合計量/La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量が0.24になる。
また、先3発明の屈折率(nd)が1.8611、アッベ数(νd)が40.00であるから、本件発明1の屈折率及びアッベ数の規定を満足する。
そうすると、本件発明1と先3発明と対比したとき、両者は、光学ガラスの組成に関し、以下の点で相違する。

<相違点8−1>
本件発明1は、「Nb5+:0〜7.4%」であるのに対し、先3発明は、「Nb5+が7.8%」である点。

<相違点8−2>
本件発明1は、「Ti2+:1.6〜15%」であるのに対し、先3発明は、「Ti4+が0%」である点。

(イ)判断
先3発明において、Nb5+は7.8%であり、また、Ti4+は0%であるから、相違点8−1、8−2は実質的なものである。また、これらの相違点が、先3発明を具体化する際に生じる微差程度のものということもできない。
よって、本件発明1は、先3発明と同一又は実質同一なものとはいえない。

イ 本件発明2〜15
本件発明2〜15は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記アで検討した理由により、本件発明2〜15は、先3発明と実質同一なものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、先3を主たる証拠とした取消理由3に理由はない。

第5 申立人の主張
申立人1意見書では、訂正要件に関して、「訂正後の請求項1に係る発明の技術的範囲を満たす実施例を確認したところ、実施例5、27、36、38、39、45の6つであるが、特許権者は、これらの実施例からどうすればLa3+の上限値:27.4%、Nb5+の上限値:7.4%、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)の上限値:0.965を実施し得るのか、開示も示唆もしていない。さらに、訂正事項1の「Ti4+:1.6〜15%」は、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量の下限値0%と矛盾し、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量の範囲を不明瞭にする」と説示し、訂正事項1は訂正要件を満たしていない旨を主張する。
しかしながら、訂正事項1における「La3+」が「27.4%」であることは実施例9に記載があり、「Nb5+」が「7.4%」であることは実施例13に記載があり、「Ti4+」が「1.6%」であることは実施例37に記載があり、「(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)」が「0.965」であることは実施例22に記載があり、「(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)」が「0.281」であることは実施例27に記載があり、これらの事情は、前記第2の2(1)で検討したとおりである。
また、訂正事項1のTi4+の下限値1.6%が、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量の一部範囲と整合しないとの主張に関しても、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量の数値範囲のうち、Ti4+の下限値との関係で整合しない数値範囲(0%以上1.6%未満)が本件発明1に含まれないことは明かであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正といえる。
さらに、申立人1意見書では、「なお、訂正事項1のLa3+の上限値:27.4%、Nb5+の上限値:7.4%、(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)の上限値:0.965、Ti4+の下限値:1.6%は、サポート要件及び明確性要件にも違反」すると説示し、訂正事項1が訂正要件を満たしていないことを論拠に、サポート要件及び明確性要件を満たしていない旨を主張するが、訂正事項1が訂正要件を満たしていることは上述の検討のとおりであり、当該主張はその前提において誤りがある。
したがって、申立人1意見書の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜15に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成を陽イオン%で表すと、
Si4+:1〜20%;
B3+:25〜60%;
を含有し、Si4+及びB3+の合計量は30〜70%であり、;
La3+:10〜27.4%;
Y3+:6.5〜15%;
を含有し、La3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は20〜55%であり、;
(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.5未満であり、;
Nb5+:0〜7.4%;
Ti4+:1.6〜15%;
Ta5+:0〜10%;
を含有し、Nb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量が0〜20%であり、;
(Nb5++Ti4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が0.965〜1であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)が0.01〜0.5であり、;
(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が0.02〜0.281であり、;
Zr4+:0〜15%;
Zn2+:0〜10%;
Bi3+:0〜10%を含有し、
ガラス屈折率ndが1.85〜1.95であり、アッベ数νdが32〜40であり、
Al3+及びW6+を実質的に含有しない、
光学ガラス。
【請求項2】
Li+、Na+及びK+の合計量は、10%未満であり、;
及び/又はBa2+、Mg2+、Ca2+及びSr2+のその合計量は、10%未満である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
Li+、Na+及びK+の合計量は、5%未満であり、;
及び/又はBa2+、Mg2+、Ca2+及びSr2+の合計量は、5%未満である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項4】
Si4+:2〜15%;及び/又はB3+:25〜45%(45%を含まない);及び/又はLa3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は30〜60%;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2.2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項5】
Si4+:5〜13%;及び/又はB3+:30〜45%(45%を含まない);及び/又はLa3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:1〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:3〜8%;及び/又はZn2+:0〜1.1%(1.1%を含まない);及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜55%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は30〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1超2未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は3〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項6】
Gd3+:2.5〜8%;及び/又はTi4+:3〜7%を含有する、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項7】
ガラス透過率が70%に達する際に対応する波長が420nm以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項8】
Si4+:5.2〜18.2%;及び/又はB3+:27.4〜40.7%;及び/又はLa3+:13.4〜27.4%;及び/又はY3+:7.1〜14.2%;及び/又はGd3+:1.5〜7.5%;及び/又はYb3+:0〜1.7%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜13.3%;及び/又はTa5+:0〜0.5%;及び/又はZr4+:0〜12.1%;及び/又はZn2+:0〜1.2%;及び/又はBi3+:0〜0.7%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40.1〜57.9%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は29.8〜39.9%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.126〜1.943であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は2.4〜15.7%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.05〜0.36であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.063〜0.281 である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項9】
Si4+:2〜15%;及び/又はB3+:45〜60%;及び/又はLa3+:15〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜13%;及び/又はGd3+:0〜10%;及び/又はYb3+:0〜10%;及び/又はNb5+:0〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜8%;及び/又はTa5+:0〜7%;及び/又はZr4+:0〜10%;及び/又はZn2+:0〜5%;及び/又はBi3+:0〜6%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は40〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜50%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.5以上であるが、2.5未満であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+及びW6+の合計量は0〜15%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.02〜0.4であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.03〜0.281 である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項10】
Si4+:5〜13%;及び/又はB3+:45〜55%;及び/又はLa3+:20〜27.4%;及び/又はY3+:6.5〜10%;及び/又はGd3+:0〜8%;及び/又はYb3+:0〜5%;及び/又はNb5+:0.5〜7.4%;及び/又はTi4+:1.6〜5%;及び/又はZn2+:0.5〜5%;及び/又はSi4+とB3+の合計量は50〜65%であり、;及び/又はLa3+、Y3+、Gd3+及びYb3+の合計量は25〜45%であり、;及び/又は(Si4++B3+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は1.7〜2.3であり、;及び/又はNb5+、Ti4+、Ta5+とW6+の合計量は0〜8%であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(Si4++B3+)は0.03〜0.35であり、;及び/又は(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)は0.04〜0.281 である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項11】
Zn2+:1.1〜3%;及び/又はGd3+:0〜2.5%(2.5%を含まない);及び/又はTi4+:1.6〜3%(3%を含まない)を含有する、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項12】
前記組成はTa5+を含有しない、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項13】
ガラス密度が5g/cm3以下であり、ガラス結晶化上限温度が1250℃以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学ガラスにより形成された、ガラスプリフォーム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学ガラスにより形成された、光学素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-08-29 
出願番号 P2019-045569
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 851- YAA (C03C)
P 1 651・ 113- YAA (C03C)
P 1 651・ 853- YAA (C03C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 関根 崇
後藤 政博
登録日 2020-06-18 
登録番号 6719611
権利者 成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
発明の名称 光学ガラス  
代理人 家入 健  
代理人 家入 健  

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