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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03F
管理番号 1390539
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-02 
確定日 2022-09-09 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6756957号発明「ポジ型感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜及び電子部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6756957号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜30〕について訂正することを認める。 特許第6756957号の請求項1〜30に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6756957号の請求項1〜30に係る発明(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2016−571863号)は、2016年(平成28年)1月26日(優先権主張 平成27年1月28日)を国際出願日とする出願であって、令和2年9月1日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和2年9月16日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和3年3月2日に、特許異議申立人 特許業務法人 朝日奈特許事務所(以下「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた。
その後の手続等の経緯は、以下の通りである。
令和3年 6月29日付け:取消理由通知書
令和3年 8月31日付け:訂正請求書
令和3年 8月31日付け:意見書(特許権者)
令和3年11月15日付け:手続補正書
令和3年11月19日付け:120条の5第5項の規定に基づく訂正請求があった旨の通知
令和3年12月 8日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年 2月15日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 4月26日付け:訂正請求書
令和4年 4月26日付け:意見書(特許権者)
令和4年 5月19日付け:120条の5第5項の規定に基づく訂正請求があった旨の通知
令和4年 6月22日付け:意見書(特許異議申立人)


第2 本件訂正請求及び訂正の適否についての判断
令和4年4月26日にされた訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6756957号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜30について訂正することを求める、というものである。

2 訂正の内容
本件訂正請求において、特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正事項1による訂正は、請求項1において、「一般式(1)で表される化合物を含む多段膜厚パターニング用のポジ型感光性樹脂組成物」と記載されているのを、「一般式(1)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物」に訂正するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3〜8についても同様に訂正するものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2による訂正は、請求項2において、「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いるポジ型感光性樹脂組成物」と記載されているのを、「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物」に訂正するものである。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜8についても同様に訂正するものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3による訂正は、請求項3において、「前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

【化6】

【化7】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化8】

」と記載されているもののうち、請求項1を引用する請求項3を、「(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化6】

【化7】

【化8】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化9】

」として、新たに請求項3とするものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4による訂正は、請求項4において、「前記(d)成分が、メチロール基又はアルコキシアルキル基を有する化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。」と記載されているもののうち、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を、「(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化10】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化11】

【化12】

(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化13】

」として、新たに請求項4とするものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5による訂正は、請求項5において、「請求項1〜4のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」と訂正するものである。
請求項5を引用する請求項6についても同様に訂正するものである。

(6)訂正事項6
訂正事項6による訂正は、請求項7において、「請求項1〜4のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」と訂正するものである。
請求項7を引用する請求項8についても同様に訂正するものである。

(7)訂正事項7
訂正事項7による訂正は、請求項2を引用する請求項5を、
「請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項9とするものである。

(8)訂正事項8
訂正事項8による訂正は、請求項2を引用する請求項5を引用する請求項6を、請求項2を引用する請求項5を新たに請求項9とする上記訂正事項7に伴い、
「前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項9に記載のパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項10とするものである。

(9)訂正事項9
訂正事項9による訂正は、請求項2を引用する請求項7を、
「請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。」として、新たに請求項11とするものである。

(10)訂正事項10
訂正事項10による訂正は、請求項2を引用する請求項7を引用する請求項8を、請求項2を引用する請求項7を新たに請求項11とする上記訂正事項9による訂正に伴い、
「請求項11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」として、新たに請求項12とするものである。

(11)訂正事項11
訂正事項11による訂正は、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を、
「請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項13とするものである。

(12)訂正事項12
訂正事項12による訂正は、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を新たに請求項13とする上記訂正事項11に伴い、
「前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項13に記載のパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項14とするものである。

(13)訂正事項13
訂正事項13による訂正は、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を、
「請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。」として、新たに請求項15とするものである。

(14)訂正事項14
訂正事項14による訂正は、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を引用する請求項8を、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を新たに請求項15とする上記訂正事項13による訂正に伴い、
「請求項15に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」として、新たに請求項16とするものである。

(15)訂正事項15
訂正事項15による訂正は、請求項4を引用する請求項5を、
「請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項17とするものである。

(16)訂正事項16
訂正事項16による訂正は、請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を、請求項4を引用する請求項5を新たに請求項17とする上記訂正事項15に伴い、
「前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項17に記載のパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項18とするものである。

(17)訂正事項17
訂正事項17による訂正は、請求項4を引用する請求項7を、
「請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。」として、新たに請求項19とするものである。

(18)訂正事項18
訂正事項18による訂正は、請求項4を引用する請求項7を引用する請求項8を、請求項4を引用する請求項7を新たに請求項19とする上記訂正事項17による訂正に伴い、
「請求項19に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」として、新たに請求項20とするものである。

(19)訂正事項19
訂正事項19による訂正は、請求項2を引用する請求項3を、
「(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化14】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化15】

【化16】

【化17】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化18】

」として、新たに請求項21とするものである。

(20)訂正事項20
訂正事項20による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を、請求項2を引用する請求項3を新たに請求項21とする上記訂正事項19による訂正に伴い、
「請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項22とするものである。

(21)訂正事項21
訂正事項21による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を新たに請求項22とする上記訂正事項20に伴い、
「前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項22に記載のパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項23とするものである。

(22)訂正事項22
訂正事項22による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7を、請求項2を引用する請求項3を新たに請求項21とする上記訂正事項19に伴い、
「請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。」として、新たに請求項24とするものである。

(23)訂正事項23
訂正事項23による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7を引用する請求項8を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7を新たに請求項24とする上記訂正事項22による訂正に伴い、
「請求項24に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」として、新たに請求項25とするものである。

(24)訂正事項24
訂正事項24による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を、
「(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、
前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部に10〜12μmの塗布膜及び前記スクライブライン部に20〜30μmの塗布膜で塗布し、前記最外層にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化19】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化20】

【化21】

(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化22】

」として、新たに請求項26とするものである。


(25)訂正事項25
訂正事項25による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を新たに請求項26とする上記訂正事項24に伴い、
「請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項27とするものである。

(26)訂正事項26
訂正事項26による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を新たに請求項27とする上記訂正事項25に伴い、
「前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項27に記載のパターン硬化膜の製造方法。」として、新たに請求項28とするものである。

(27)訂正事項27
訂正事項27による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を新たに請求項26とする上記訂正事項25に伴い、
「請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。」として、新たに請求項29とするものである。

(28)訂正事項28
訂正事項28による訂正は、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7を引用する請求項8を、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7を新たに請求項29とする上記訂正事項27による訂正に伴い、
「請求項29に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」として、新たに請求項30とするものである。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項3〜8は、訂正前の請求項1又は2を直接又は間接的に引用しているところ、訂正事項1による訂正及び訂正事項2による訂正によって、訂正前の請求項1及び訂正前の請求項2がそれぞれ訂正されることにより連動して訂正されることになる。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項である請求項1〜8に対して請求されたものである。

4 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載された「多段膜厚パターニング用」を、「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものに限定するものであるから、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項
本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、「多段膜厚パターニング(厚みが異なる複数箇所の一括同時現像)」(【0009】)、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージに代表される積層デバイス構造の作製において、多段膜厚パターニングを実現できるポジ型感光性樹脂組成物」(【0010】)との記載があり、訂正事項1による訂正が新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項1による訂正により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2に記載された「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いるポジ型感光性樹脂組成物」を「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物」に限定するものであるから、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項
前記(1)イと同様に、訂正事項2による訂正が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項2による訂正により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が、請求項1又は2を引用するものであったのを、請求項1を引用するものに限定するとともに、請求項1の記載を引用しない形式で記載して、新たに請求項3とするものであるから、訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項3による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が、請求項1〜3のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項1を引用する請求項3を引用するものに限定し、さらに「厚みが異なる複数箇所」を「10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜」に限定するとともに、請求項1及び3の記載を引用しない形式で記載するものである。
(イ)また、訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4に記載された「前記(d)成分」が、「メチロール基又はアルコキシアルキル基を有する化合物」であったのを、「N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂」に限定するものである。
以上(ア)及び(イ)により、訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
イ 新規事項
(ア)本件特許明細書には、「10〜20μmの塗布膜」と同時に「20〜30μm」の塗布膜が形成されることが記載されており(【0006】)、「12μm」の膜厚部と「20μm」の膜厚部を同じ現像条件で現像できることが記載(【0077】〜【0079】)されており、当該記載に照らして、上記ア(ア)の訂正事項が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
(イ)本件特許明細書には、「(d)成分」として「N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂が好ましい」ことが記載(【0039】〜【0040】)されており、上記ア(イ)の訂正事項が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
以上(ア)及び(イ)により、訂正事項4による訂正が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項4による訂正により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。
したがって、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項1を引用するものに限定するものであるから、訂正事項5による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的するものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項5による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項1を引用するものに限定するものであるから、訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項6による訂正が、新規事項に追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(7)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用するものに限定し、新たに請求項9とするものであるから、訂正事項7による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項7による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(8)訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項5を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項5を引用するものに限定し、新たに請求項10とするものであるから、訂正事項8による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項8による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(9)訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用するものに限定し、新たに請求項11とするものであるから、訂正事項9による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項9による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(10)訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、訂正前の請求項8が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項7を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項7を引用するものに限定し、新たに請求項12とするものであるから、訂正事項10による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項10による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(11)訂正事項11について
訂正事項11による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項1を引用する請求項3を引用するものに限定し、新たに請求項13とするものであるから、訂正事項11による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項11による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(12)訂正事項12について
訂正事項12による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項5を引用するものであったのを、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するものに限定し、新たに請求項14とするものであるから、訂正事項12による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項12による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(13)訂正事項13について
訂正事項13による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項1を引用する請求項3を引用するものに限定し、新たに請求項15とするものであるから、訂正事項13による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項13による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(14)訂正事項14について
訂正事項14による訂正は、訂正前の請求項8が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項7を引用するものであったのを、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を引用するものに限定し、新たに請求項16とするものであるから、訂正事項14による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項14による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(15)訂正事項15について
訂正事項15による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項4を引用するものに限定し、新たに請求項17とするものであるから、訂正事項15による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項15による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(16)訂正事項16について
訂正事項16による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項5を引用するものであったのを、請求項4を引用する請求項5を引用するものに限定し、新たに請求項18とするものであるから、訂正事項16による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項16による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(17)訂正事項17について
訂正事項17による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項4を引用するものに限定し、新たに請求項19とするものであるから、訂正事項17による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項17による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(18)訂正事項18について
訂正事項18による訂正は、訂正前の請求項8が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項7を引用するものであったのを、請求項4を引用する請求項7を引用するものに限定し、新たに請求項20とするものであるから、訂正事項18による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項18による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(19)訂正事項19について
ア 訂正の目的
訂正事項19による訂正は、訂正前の請求項3が、請求項1又は2を引用するものであったのを、請求項2を引用するものに限定し、さらに、「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いるポジ型感光性樹脂組成物」を、「最外層にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物」に限定するとともに、請求項2の記載を引用しない形式で記載して、新たに請求項21とするものであるから、訂正事項19による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
イ 新規事項
前記(2)イと同様に、訂正事項19による訂正が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項19による訂正により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。
したがって、訂正事項19による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(20)訂正事項20について
訂正事項20による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用するものに限定し、新たに請求項22とするものであるから、訂正事項20による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項20による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(21)訂正事項21について
訂正事項21による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項5を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するものに限定し、新たに請求項23とするものであるから、訂正事項21による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項21による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(22)訂正事項22について
訂正事項22による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用するものに限定し、新たに請求項24とするものであるから、訂正事項22による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項22による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(23)訂正事項23について
訂正事項23による訂正は、訂正前の請求項8が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項7を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7を引用するものに限定し、新たに請求項25とするものであるから、訂正事項23による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項23による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(24)訂正事項24について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項24による訂正は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用するものに限定し、さらに、「厚みが異なる複数箇所」を「10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜」に限定するとともに、請求項2及び3の記載を引用しない形式で記載し、新たな請求項26とするものである。
(イ)また、訂正事項24による訂正は、訂正前の請求項4に記載された「(d)成分」が、「メチロール基又はアルコキシアルキル基を有する化合物」であったのを、「N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂」に限定するものである。
以上(ア)及び(イ)により、訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
イ 新規事項
(ア)本件特許明細書には、「10〜20μmの塗布膜」と同時に「20〜30μm」の塗布膜が形成されることが記載されており(【0006】)、「12μm」の膜厚部と「20μm」の膜厚部を同じ現像条件で現像できることが記載(【0077】〜【0079】)されており、当該記載に照らして、上記ア(ア)の訂正事項が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
(イ)本件特許明細書には、「(d)成分」として「N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂が好ましい」ことが記載(【0039】〜【0040】)されおり、上記ア(イ)の訂正事項が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
以上(ア)及び(イ)により、訂正事項24による訂正が、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
ウ 拡張又は変更
前記アで述べた訂正の内容からみて、訂正事項24による訂正により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。
したがって、訂正事項24による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(25)訂正事項25について
訂正事項25による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するものに限定し、新たに請求項27とするものであるから、訂正事項25による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項25による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(26)訂正事項26について
訂正事項26による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項5を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を引用するものに限定し、新たに請求項28とするものであるから、訂正事項26による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項26による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(27)訂正事項27について
訂正事項27による訂正は、訂正前の請求項7が、請求項1〜4のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するものに限定し、新たに請求項29とするものであるから、訂正事項27による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項27による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

(28)訂正事項28について
訂正事項28による訂正は、訂正前の請求項8が、請求項1〜4のいずれか一項を引用する請求項7を引用するものであったのを、請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7を引用するものに限定し、新たに請求項30とするものであるから、訂正事項28による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、その訂正の内容に照らして、訂正事項28による訂正が、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しないことは明らかである。

5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書及び同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6756957号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜30について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、請求項1〜30に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に合わせて「本件特許発明1」〜「本件特許発明30」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲1〜30に記載された事項によって特定される、以下のものである。
「【請求項1】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(1)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化2】

(一般式(1)中、Xはヒドロキシ化合物又はアミノ化合物の残基を示す)
【請求項2】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(1)で表される化合物を含み、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化4】

(一般式(1)中、Xはヒドロキシ化合物又はアミノ化合物の残基を示す)
【請求項3】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化6】

【化7】

【化8】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化9】

【請求項4】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、
前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化10】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化11】

【化12】

(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化13】

【請求項5】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項6】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項5に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項8】
請求項7に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項9】
請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項10】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項9に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項12】
請求項11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項13】
請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項14】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項13に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項15】
請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項16】
請求項15に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項17】
請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項18】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項17に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項19】
請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項20】
請求項19に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項21】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化14】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化15】

【化16】

【化17】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化18】

【請求項22】
請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項23】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項22に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項24】
請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項25】
請求項24に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項26】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、
前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部に10〜12μmの塗布膜で塗布及び前記スクライブライン部に20〜30μmの塗布膜で塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化19】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化20】

【化21】

(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化22】

【請求項27】
請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項28】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項27に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項29】
請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項30】
請求項29に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。」


第4 取消しの理由の概要
令和4年2月15日付の取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消しの理由の要旨は、以下のとおりである。
新規性
本件特許の(本件訂正請求前の)請求項1〜8に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

進歩性
本件特許の(本件訂正請求前の)請求項1〜8に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

甲1:国際公開第2008/111470号
甲2:特開2014−127649号公報
文献1:特開2011−14605号公報
甲1及び甲2は、ともに主引例であり、文献1は、令和4年2月15日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、当合議体が追加した周知技術を示す文献である。

また、特許異議申立人が、令和4年6月22日付け意見書(以下「意見書」という。)において提出した甲第5号証〜甲第7号証は、以下のものである。
甲第5号証:米国特許出願公開第2015/0021754号明細書
甲第6号証:米国特許出願公開第2013/0037950号明細書
甲第7号証:特開2008−211213号公報
以下、甲号証の番号に合わせて「甲5」〜「甲7」という。

明確性
本件特許請求の範囲の(本件訂正請求前の)請求項1〜8における「厚膜」との記載は、その厚さの程度が明らかでないから、特許を受けようとする発明が明確でない。したがって、特許法36条6項2号の規定する要件を満たしていない。


第5 甲号証及び文献1の記載
1 甲1の記載及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下同様である。
ア 「技術分野
[0001]
本発明は、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する耐熱性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関し、特に、感度、解像度、現像時の密着性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、良好な形状のパターンが得られるポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関するものである。」

イ 「発明を実施するための最良の形態
[0044]
以下に、本発明による感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[0045][感光性樹脂組成物]
まず、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物について説明する。本発明による感光性樹脂組成物は、(a)一般式(I):
[0046]
[化9]

(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、及び(d)加熱により架橋または重合し得る架橋剤とを含有する。なお、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体、(b)感光剤、(c)溶剤及び(d)加熱により架橋または重合し得る架橋剤を、本明細書の記載において、場合によりそれぞれ単に(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分と記す。」

ウ 「[0049]
以下、本発明による感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体は、通常、アルカリ水溶液で現像するので、アルカリ水溶液可溶性であることが好ましい。本発明においては、例えば、前記一般式(I)、(III)以外のポリベンゾオキサゾール前駆体ではないポリアミドの構造、ポリベンゾオキサゾールの構造、ポリイミドやポリイミド前駆体(ポリアミド酸やポリアミド酸エステル)の構造を、前記一般式(I)、(III)のポリオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の構造と共に有していても良い。
・・・中略・・・
[0078]((b)成分:感光剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体とともに(b)感光剤を含む。この感光剤とは、光に反応して、その組成物から形成された膜の現像液に対する機能を有するものである。本発明で(b)成分として用いられる感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
[0079]
ポジ型感光性樹脂組成物の場合は、(b)感光剤は、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることがより好ましい。光酸発生剤は、ポジ型感光性樹脂組成物においては、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としてはo−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、o−キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。
・・・中略・・・
[0087]((c)成分:溶剤)
本発明に使用される(c)成分(溶剤)としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
・・・中略・・・
[0089]((d)成分:加熱により架橋または重合し得る架橋剤)
本発明に使用される(d)成分である加熱により架橋または重合し得る架橋剤は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において化合物がポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリベンゾオキサゾールと反応、すなわち橋架けする。または加熱処理する工程において化合物自身が重合する。これによって、比較的低い温度、例えば200℃以下の硬化において懸念される膜の脆さを防ぎ、機械特性や薬品耐性、フラックス耐性を向上させることができる。」

エ 「[0121][パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程、前記露光後の感光性樹脂膜を現像してパターン樹脂膜を得る現像工程、及び前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を経て、ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜を得ることができる。以下、各工程について説明する。
[0122](感光性樹脂膜形成工程)
まず、この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
[0123](露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射することにより露光を行う。
[0124](現像工程)
現像工程では、活性光線が露光した感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することによりパターン硬化膜が得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
[0125](加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、オキサゾール環や他の官能基を有する耐熱性のポリオキサゾールのパターンを形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、280℃以下、望ましくは120〜280℃、より望ましくは、160〜250℃である。」

オ 「[0137][半導体装置の製造工程]
次に、本発明によるパターンの製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
[0138]
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
[0139]
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして前記層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6Aの層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられている。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
[0140]
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
[0141]
次に、表面保護膜層8を形成する。図1〜図5の例では、この表面保護膜層8を次のようにして形成する。すなわち、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としてのポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。この表面保護膜層(ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
[0142]
本発明では、従来は350℃前後の高温を必要としていた上記ポリベンゾオキサゾール膜を形成する加熱工程において、280℃以下の低温の加熱を用いて硬化が可能である。280℃以下の硬化においても、本発明の感光性樹脂組成物は環化脱水反応が十分に起きることから、その膜物性(伸び、吸水率、重量減少温度、アウトガス等)が300℃以上で硬化したときに比べて物性変化は小さいものとなる。したがって、プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置(電子部品)を高収率で得ることができる。
なお、上記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
[0143][電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記パターンの製造方法によって形成されるパターンを有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。特に、耐熱性の低いMRAM(磁気抵抗メモリ:Magnet Resistive Random Access Memory)が好ましいものとして挙げられる。
[0144]
また、上記パターンは、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。例えば、本発明の感光性樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。」

カ 「実施例
[0145]
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[0146](合成例1) ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、マロン酸ジクロリド5.64gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーP1とする)。ポリマーP1のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は11,500、分散度は1.7であった。
・・・中略・・・
[0152](合成例7)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーP7とする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は31,600、分散度は2.0であった。
・・・中略・・・
[0175](実施例20〜38及び比較例4〜6)
(感光特性評価)
前記(a)成分であるポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、(b)、(c)、(d)成分及びその他の添加成分を表2に示した所定量にて配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
[0176][表2]

[0177]
表2中、BLOはγ−ブチロラクトンを表し、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表し、NMPはN−メチルピロリドンを表し、BLO/PGMEAは両者を混合して用いたことを表す。()内はポリマー100重量部に対する添加量を重量部で示した。表2中、各NMPは150重量部を添加し、各BLO/PGMEAは135重量部/15重量部の割合で混合して添加した。
[0178]
また、表2中、B1、D1、D2、D3、E1は、それぞれ下記の化学式(X)、(XI)、(XII)に示す化合物である。
[0179][化27]

[0180][化28]



キ 「図5



(2)甲1に記載された発明
甲1の[0146]〜[0180](特に[0176][表2]の「実施例26」)に記載された「感光性樹脂組成物」の発明を「甲1組成物発明」という。
ア 「甲1組成物発明」の成分
「甲1組成物発明」は、「(a)成分」であるポリベンゾオキサゾール前駆体として「P7」、「(b)成分」である感光剤として「B1」、「(c)成分」である溶剤として「BLO/PGMEA」、「(d)成分」である架橋剤として「D2」を含有する。

イ 「甲1組成物発明」の(a)成分
「(a)成分」であるポリベンゾオキサゾール前駆体である「P7」は、合成例1の「攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、マロン酸ジクロリド5.64gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得」る工程で使用した「マロン酸ジクロリド」を、「ドデカン二酸ジクロリド」に置き換えて合成されたものである([0146]、[0152])。

ウ 「甲1組成物発明」の(b)成分
「(b)成分」である「B1」は、[0179]に記載されている下記式(X)で表される感光剤である。

そして、感光剤として光酸発生剤が用いられていることから、「甲1組成物発明」が「ポジ型」の感光性樹脂組成物であることは明らかである。

エ 甲1組成物発明
上記ア〜ウの事項を総合すると、「甲1組成物発明」は以下のものである。
「(a)成分として、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを反応させて得られたポリベンゾオキサゾール前駆体と、
(b)成分として、下記式(X)で表される感光剤と、

(c)成分である溶剤として「BLO/PGMEA」と、
(d)成分である架橋剤として下記式で表される「D2」と、

を含有するポジ型感光性樹脂組成物。」

2 甲2の記載及び甲2に記載された発明
(1)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂膜、ポリベンゾオキサゾール樹脂膜等が用いられている(例えば、特許文献1)。これらのポリイミド樹脂膜、ポリベンゾオキサゾール樹脂膜は、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物により形成することができる。
【0003】
近年、デジタルカメラ、携帯電話等の電子デバイスは小型化、薄型化、軽量化が急激に進んでおり、これに伴い半導体装置も小型化、高密度化が進んでいる。このような小型化、高密度化に対応する半導体装置としてCSP(chip size package)と呼ばれるパッケージング方式の普及が進んでいる。一般にCSPはシリコンウエハー上に再配線としての配線パターン、層間絶縁層、外部接続のための導電性ボール等を有する。
・・・中略・・・
【0007】
本発明の目的は、パターン樹脂膜(絶縁膜)のパターン開口部に発生する残渣を低減し、再配線と絶縁層との接着性に優れる半導体装置を提供することである。また、本発明の目的は、パターン樹脂膜のパターン開口部における残渣の発生を低減することができ、再配線と絶縁層との接着性を十分に確保することができる半導体装置の製造方法を提供することである。」

イ 「【0021】
本発明の半導体装置の一例の断面構造を図2に示す。
シリコン基板10上には集積回路(図示せず)が設けられ、アルミニウム系金属からなる接続パッド11が集積回路に接続されるように形成されている。この上に絶縁層20及び表面保護膜層30が設けられ、露出により設けられたパッド11部分に再配線40が形成されている。
【0022】
再配線40の表面には酸化銅層41が形成され、その上に、絶縁層50が形成されている。絶縁層50に設けられた開口部に接続パッド、バリアメタルが形成され、はんだボール(導電性ボール)60が設けられている。
【0023】
本発明の半導体装置の他の一例の断面構造を図3に示す。この半導体装置は多層配線構造である。層間絶縁層101の上にはAl配線層102が形成され、その上部にはさらに絶縁層103(例えば、P−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護膜層104が形成されている。Al配線層102のパッド部105からは再配線106が形成されている。再配線106の表面上には、酸化銅層106aが形成されている。酸化銅層106aは、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール107との接続部分であるコア108の上部まで伸びている。さらに表面保護膜層104の上には、絶縁層109が形成されている。
【0024】
再配線106は、バリアメタル110を介して導電性ボール107に接続され、この導電性ボール107を保持するためにカラー111が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際の応力を緩和するために、アンダーフィル112が設けられている。
【0025】
上記図2、3に示す本発明の半導体装置は、再配線、酸化銅層及び絶縁層を有すること以外は特に制限されず、様々な構造とすることができる。
【0026】
本発明に用いる絶縁層は、好ましくはポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物を加熱硬化することで形成される。このように形成することで、耐熱性、機械特性、電気特性に優れる。
【0027】
[感光性樹脂組成物]
以下、本発明に用いることができる感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
(1)ポリベンゾオキサゾール前駆体
ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)は、好ましくは、下記式(1)で表される。
【化3】

(式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す。) 式(1)におけるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、硬化時の脱水閉環により、最終的には耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
・・・中略・・・
【0035】
式(1)、(4)において、Uで表される4価の有機基は、4価の芳香族基(芳香環を含む基)が好ましく、炭素数としては6〜40のものが好ましく、炭素数6〜40の4価の芳香族基がより好ましい。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
また、Uで表される4価の有機基は、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるために、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する2個のヒドロキシ基と2個のアミノ基をそれぞれ芳香環上に有し、ヒドロキシ基とアミノ基がオルト位に位置した構造を2組有するジアミンの残基である。【0036】
このようなジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・中略・・・
【0042】
(2)光の照射を受けて酸を発生する化合物
上記の感光性樹脂組成物は、光の照射を受けて酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤ともいう)を含有していてもよい。光酸発生剤は、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。
光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、中でもジアゾナフトキノンは感度が高く好ましいものとして挙げられる。
【0043】
ジアゾナフトキノンは、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0044】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。
・・・中略・・・
【0049】
(3)熱によりポリベンゾオキサゾール前駆体と架橋又は重合し得る化合物
上記の感光性樹脂組成物は、熱によりポリベンゾオキサゾール前駆体と架橋又は重合し得る化合物(以下、架橋剤ともいう)を含有していてもよい。 架橋剤は、上記のポリベンゾオキサゾール前駆体と効率よく架橋反応をする置換基を有するものが好ましい。架橋剤の架橋しうる温度としては、感光性樹脂組成物が塗布、乾燥、露光、現像の各工程で架橋が進行しないように、150℃以上であることが好ましい。架橋剤はポリベンゾオキサゾール前駆体の末端基と架橋するが、これと併せて分子間で重合するような化合物であってもよい。中でも、下記式(3)に挙げられるものが、220℃以下の低温で硬化した際でも膜物性の落ち込みが小さく、膜の物性に優れ、より好ましい。
・・・中略・・・
【0058】
(4)溶剤
上記の感光性樹脂組成物には、通常、溶剤が含まれ、上記各成分が溶解又は分散している。溶剤は特に制限はなく、γ−ブチロラクトン(BLO)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アルコール等が使用できる。上記溶剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは固形分(溶剤以外の成分)が5〜50重量%となるように使用する。」

ウ 「【0059】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置の製造方法は、再配線を有する基板を140〜160℃で加熱して再配線上に酸化銅層を形成する工程と、酸化銅層の上に、ポリベンゾオキサゾールを含む絶縁層を形成する工程とを含む。
【0060】
以下、図を用いて、本発明の半導体装置の製造方法を説明する。
本発明の一実施形態である半導体装置の断面図を図2に示す。
集積回路(図示せず)が設けられたシリコン基板10上に、アルミニウム系金属からなる接続パッド11を集積回路に接続するように形成する。この上に絶縁層20を形成し、パッド11部分を開口させる。次に、表面保護膜層30を塗布し、露光、現像工程により、パッド11部分を露出する。次に、スパッターやめっき等により再配線40を形成する。
再配線40の表面には、通常、酸化皮膜が形成されているため、好ましくは、酸化銅層41を形成する前に、再配線を酸により洗浄して酸化皮膜を除去する。
【0061】
通常、銅を主成分とする再配線の表面には、空気中の酸素により酸化皮膜が形成されているが、その厚さは40nm以上と厚かったり、厚さが不均一であったりする。従って、再配線の上に絶縁層をそのまま形成すると、絶縁層と再配線の接着性が不十分となる。
従って、再配線40表面の酸化皮膜を一度除去した後、適正な厚さの酸化銅層41を形成する、即ち、厚さを制御して酸化銅層41を用いることが好ましい。
【0062】
再配線40の表面に形成されている酸化皮膜の除去は、酢酸、クエン酸といった有機酸や、塩酸、硫酸といった無機酸を適度な濃度にして再配線表面を洗浄することで、効率的に行うことができる。
【0063】
酸化銅層41は、好ましくは上記のように酸化皮膜を除去した後に、130〜170℃に加熱したホットプレートやオーブンで0.5〜10分処理を行うことで、適度な厚さに形成することができる。
加熱温度は、好ましくは140〜160℃であり、加熱時間は、好ましくは1〜5分である。
【0064】
その後、再配線40(酸化銅層41)上に、上記の樹脂組成物を用いて、塗布、露光、現像工程により、絶縁層50を形成する。次いで、絶縁層50に開口部を設け、その開口部に接続パッド、バリアメタルを形成し、はんだボール(導電性ボール)60を形成する。
【0065】
樹脂組成物の再配線40(酸化銅層41)への塗布方法としては、スピンコート、スリット塗布等が挙げられる。また樹脂組成物塗布後、操作性の観点から、乾燥を行なってもよい。
【0066】
樹脂膜の露光は、樹脂組成物を塗布して形成した樹脂膜にステッパーやアライナー等を用いて行なう。露光後の樹脂膜は2.38%TMAH水溶液等のアルカリ現像液により現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得られる。
パターン樹脂膜を加熱硬化することで、パターン硬化膜を形成できる。加熱硬化は、160〜400℃で行なうことが好ましく、例えば、石英チューブ炉、ホットプレート、縦型拡散炉、赤外線硬化炉及びマイクロ波硬化炉等の装置を用いることができる。」

エ 「【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を記載するが、本発明は以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0068】
[ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成]
合成例1
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g(60mmol)、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した。その後、塩化チオニル23.9g(120mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドの溶液を得た。
【0069】
次いで、撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(50mmol)を撹拌溶解した。その後、ピリジン9.48g(120mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドの溶液を30分間で滴下し、30分間撹拌を続けた。
【0070】
撹拌した溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミドを得た(ポリマーI)。ポリマーIについて、下記の測定条件によるGPC測定を行い、得られた測定値をGPC法標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。得られた重量平均分子量は17,600、分散度は1.6であった。
・・・中略・・・
【0072】
合成例2
ジフェニルエーテルジカルボン酸の代わりにドデカン二酸を用いた他は合成例1と同様にしてポリヒドロキシアミドを合成した(ポリマーII)。ポリマーIIの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は27,200であり、分散度は1.9であった。
・・・中略・・・
【0074】
合成例4
[感光性樹脂組成物の調製]
後述する実施例1〜8、比較例1〜4で用いるため、合成例1〜3で調製したポリマーI〜III、光の照射を受けて酸を発生する化合物(光酸発生剤)及び熱によりポリベンゾオキサゾール前駆体と架橋又は重合し得る化合物(架橋剤)を、表1に記載の配合量(重量部)で、γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤に溶解し、感光性樹脂組成物を調製した。
尚、表1において、ポリベンゾオキサゾール前駆体以外の成分の各欄において、各数値は特に記載が無ければポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対する添加量(重量部)を示す。溶剤の使用量は、いずれもポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して200重量部である。
【0075】
尚、光酸発生剤として下記B1、架橋剤として下記C1を用いた。

【0076】
実施例1
シリコンウエハー(厚さ625μm)上にスパッタリングにより、1.5μmの銅層を形成させた後、フォトエッチングにより、所望の配線パターン(パターン形成された再配線)を得た。次に、この配線パターンの形成されたシリコンウエハーを、酸化銅除去剤(ワールドメタル製:Z−200)を使用して2分間洗浄し、純水でリンスした後、140℃に加熱したホットプレートで3分間加熱処理を行い、銅配線パターン上に酸化銅皮膜を形成した。酸化銅皮膜の厚さは、後述する条件でオージェ分光法(AES)により測定した。
【0077】
次に、上記条件で作成した配線パターンが形成されたシリコンウエハーの配線パターンが形成された面上に、表1に示す組成の感光性樹脂組成物をスピンコートし、120℃で3分間加熱し、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に、超高圧水銀灯を光源とし、干渉フィルターを介して、300mJ/cm2で、所定のパターンをウエハに照射して、露光を行った。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハーが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得た。このとき、スルーホール部分に現像後残渣の形成は無かった。
・・・中略・・・
【0094】
【表1】



オ 「図2

図3



(2)甲2に記載された発明
甲2の【0067】〜【0074】及び【0094】【表1】の「実施例7」に記載されている「感光性樹脂組成物」の発明を「甲2組成物発明」という。
ア 甲2組成物発明の成分
「甲2組成物発明」は、ポリベンゾオキサゾール前駆体として「ポリマーII」、光酸発生剤として「B1」、架橋剤として「C1」、溶剤として「γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤」、を含有する。

イ ポリベンゾオキサゾール前駆体
「甲2組成物発明」のポリベンゾオキサゾール前駆体である「ポリマーII」は、以下の合成過程により得られたものである。
「撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g(60mmol)、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した。その後、塩化チオニル23.9g(120mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドの溶液を得た。
次いで、撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(50mmol)を撹拌溶解した。その後、ピリジン9.48g(120mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドの溶液を30分間で滴下し、30分間撹拌を続けた。
撹拌した溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミドを得た(ポリマーI)。」そして、以上の合成例1において、「ジフェニルエーテルジカルボン酸の代わりにドデカン二酸を用いた他は合成例1と同様にしてポリヒドロキシアミドを合成した(ポリマーII)。」(【0068】〜【0072】)。

ウ 光酸発生剤
「甲2組成物発明」の光酸発生剤である「B1」は以下のものである。

そして、感光剤として光酸発生剤が用いられていることから、「甲2組成物発明」が「ポジ型」の「感光性樹脂組成物」であることは明らかである。

エ 甲2組成物発明
上記ア〜ウの事項を総合すると、「甲2組成物発明」は以下のものである。
「ポリベンゾオキサゾール前駆体として「ポリマーII」と、
光酸発生剤として下記式で表される「B1」と、
架橋剤として下記式で表される「C1」と、
溶剤として「γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤」と、
を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【B1】及び【C1】



3 文献1の記載
文献1には、以下の記載がある。
(1)「【背景技術】
【0002】
従来、電子機器にセットされる回路装置は、携帯電話、携帯用のコンピューター等に採用されるため、小型化、薄型化、軽量化が求められている。これらの条件を満たすために、CSP(Chip Scale Package)と呼ばれる、内蔵される半導体素子と同等のサイズを有する半導体装置が開発されている。
【0003】
これらのCSPの中でも特に小型化なものとしてWLPがある。従来のWLPの製造方法の一実施例として、下記の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。先ず、半導体素子の拡散層等が形成された半導体ウエハ上に窒化シリコン膜から成る第1の保護膜を成膜する。第1の保護膜上等に第1の配線層を形成した後、第1の保護膜上にポリイミド膜から成る第2の保護膜を成膜する。そして、第2の保護膜上等に第2の配線層を形成した後、ポリイミド膜から成る第3の保護膜を成膜する。このとき、半導体素子形成領域の周囲に、第1の配線層と第2の配線層から成る周縁パターンを形成する。その後、周縁パターン間の第1〜第3の保護膜を除去し、開口することでスクライブラインを形成した後、開口領域から露出する半導体ウエハをダイシング・ソーで切断し、チップ状態にする。」

(2)「【0072】
図7(A)を参照して、次に、第3絶縁層28の上面に第1樹脂層30を形成する。第1樹脂層30としては、例えば、回転塗布法により形成されるPBO膜またはポリイミド樹脂膜等が用いられる。そして、第3配線層26から成るパッド電極が露出するように、第1樹脂層30を部分的に除去して開口部が設けられる。また、スクライブ領域34では、切断時に第1樹脂層30がダイシングブレードに粘着して捲くれ上がることを防止するため、スクライブセンター近傍領域の第1樹脂層30も除去される。ここで、形成される第1樹脂層30の厚みは例えば10μm程度である。
【0073】
また、除去領域38から露出する半導体基板12の上面および各絶縁層の側面は第1樹脂層30により被覆される。このことにより、異種材料の界面が第1樹脂層30により被覆されて耐湿性が向上する利点がある。
【0074】
次に、第1樹脂層30の上面に再配線48を形成する。再配線48は、メッキ用金属層を形成した後に、このメッキ用金属層に電解メッキ法でCuメッキ層を成膜することにより形成される。
【0075】
次に、図7(B)に示すように、第1樹脂層30の上面および再配線48が被覆されるように第2樹脂層32を形成する。第2樹脂層32としては、例えば、回転塗布法により形成されるPBO膜またはポリイミド樹脂膜等が用いられる。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて部分的に第2樹脂層32を除去することにより、パッドとなる部分の再配線48が露出するように開口部が形成される。さらに、スクライブ領域34では、切断時に第2樹脂層32がダイシングブレードに粘着して捲くれ上がることを防止するため、スクライブセンター近傍領域の第2樹脂層32も除去される。
【0076】
図7(C)を参照して、次に、再配線48から成るパッドの部分に半田から成る外部端子46を形成する。具体的には、粉末状の半田とフラックスとの混合物である半田クリームを再配線48から成るパッドの上面に塗布した後に、半田クリームを溶融させることで外部端子46が形成される。
【0077】
上記工程が修了した後は、TEG40にて電気的特性の測定を行った後に、半導体ウェハを分割するスクライブの工程を行う。スクライブ工程では、高速で回転するダイシングソーを用いてスクライブライン52に沿って、半導体基板12およびその上面に積層された各層を切断し、個々の半導体装置を得る。」

(3)「図7




第6 甲1を主引例とした場合の当合議体の判断
当合議体注:以下、一般式等の化学式について、本件特許発明のものは上記「第3」の各請求項に記載のものであり、甲1組成物発明及び甲2組成物発明のものは上記「第5」の各引用発明に記載のものであり、再度の摘記は省略する。
1 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1組成物発明とを対比する。
ア (a)成分
本件特許明細書の【0064】に記載されている本件特許発明1の「(a)成分」の製造方法及び上記「第5」の「1(2)イ」に記載されている甲1組成物発明の「(a)成分」の製造方法からみて、甲1組成物発明の「P7」は、本件特許発明1の「一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体」に相当する。

イ (b)成分
本件特許発明1の一般式(1)と上記「第5」の「1(2)ウ」に記載されている甲1組成物発明の「B1」の化学式(X)とを対比すると、甲1組成物発明の(b)成分である感光剤の「B1」は、本件特許発明1の「一般式(1)で表される化合物」である「(b)感光剤」に相当する。

ウ (c)成分及び(d)成分
甲1組成物発明の「(c)成分」である溶剤及び「(d)成分」である架橋剤がそれぞれ、その文言が示すとおり、本件特許発明1の「(c)溶剤」及び「(d)架橋剤」に相当する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1組成物発明とは、以下の点で一致する。
「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が一般式(1)で表される化合物を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。」

イ 相違点
本件特許発明1と甲1組成物発明とは、以下の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものであるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

(3)判断
上記相違点1に係る「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」という記載は、本件特許発明1の「ポジ型感光性樹脂組成物」の用途を用いて、その物を特定しようとする記載、いわゆる「用途限定」に該当する発明特定事項である。
上記「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」について、本件特許明細書(【0004】〜【0006】)の記載を参照すると、前記パッケージは、「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」とは、一つのパッケージの中で3次元的に積層した複数のダイ(半導体素子)を一括封止して製造されるパッケージを意味すると理解される。 そして、そのようなパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物は、パッケージのパターン硬化膜(層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等の封止部材)を形成するためのものであり、そのような感光性樹脂組成物で形成される膜には、多層配線の接続部やスクライブライン部等の「厚みが異なる複数箇所」が存在することは、当業者には当然に理解できる事項である。
また、「一括同時現像用」とは、そのようなパッケージの感光性樹脂組成物の「厚みが異なる複数箇所」を、「一括」かつ「同時」に現像を行うためのものであるとともに、本件明細書の【0061】及び【0078】〜【0079】の記載から、一度の現像で同時に、同じ露光量、同じ現像時間で露光、現像を行うためのものであると理解するのが相当である。
これに対して、甲1には、甲1樹脂組成物発明を「厚みが異なる複数箇所」の「一括同時現像用」として用いること及び「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものとして用いることは記載されておらず、それらの動機となる記載や示唆を見出すこともできない。
そうすると、本件特許発明1と甲1組成物発明は、上記相違点1に係る事項の点で実質的に異なる発明であり、また、甲1組成物発明に基づいて、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到することができたともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

2 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1組成物発明との対比については、上記1(1)と同様であり、両発明は、「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が一般式(1)で表される化合物を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:本件特許発明2の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」のものであるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

上記相違点2について判断すると、相違点2に係る構成のうち「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」という構成についての判断は、上記1(3)に示したとおりであるから、他の構成について判断するまでもなく、本件特許発明2は、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

3 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1組成物発明とを対比すると、(a)成分、(c)成分及び(d)成分については、上記1(1)ア及びウと同様である。
(b)成分について、甲1組成物発明の(b)成分である感光剤の「B1」はその一般式からみて、本件特許発明3の「一般式(b−1)」に相当するから、甲1組成物発明の(b)成分は、本件特許発明3の「一般式(b−1)、一般式(b−2)又は一般式(b−3)で表される化合物」である「(b)感光剤」に相当する。
以上のことから、本件特許発明3と甲1組成物発明とは、「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が一般式(b−1)、一般式(b−2)又は一般式(b−3)で表される化合物を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:本件特許発明1の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものであるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

上記相違点3については、上記1(2)イの相違点1と同旨であるから、上記1(3)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明3は、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

4 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1組成物発明とを対比すると、(a)成分については上記1(1)アのとおりである。また、甲1組成物発明の「(b)成分」である感光剤、「(c)成分」である溶剤及び「(d)成分」である架橋剤がそれぞれ、本件特許発明4の「(b)感光剤」、「(c)溶剤」及び「(d)架橋剤」に相当することは明らかである。

そうすると、本件特許発明4と甲1組成物発明とは、「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有する、ポジ型感光性樹脂組成物。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点4−1:本件特許発明4の「(b)感光剤」が、「一般式(b−2)又は一般式(b−3)で表される化合物」を含むのに対し、甲1組成物発明の「(b)成分」は、「B1」で表される化合物である点。

相違点4−2:本件特許発明4の「(d)架橋剤」が、「N位がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である」のに対し、甲1組成物発明の「(d)成分」は、「D2」である点。

相違点4−3:本件特許発明4の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものであるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

上記相違点4−3についての判断は、実質的に、上記1(3)で検討した「厚みが異なる複数箇所」の「一括同時現像用」として用いること及び「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものとして用いることについての判断に帰着するから、上記1(3)と同様の理由により、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1組成物発明とはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

5 本件特許発明5〜8について
本件特許発明5〜8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記1(1)〜(3)と同様の理由により、甲1組成物発明であるといえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

6 本件特許発明9〜12について
本件特許発明9〜12は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであるから、上記2と同様の理由により、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

7 本件特許発明13〜16について
本件特許発明13〜16は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであるから、上記3と同様の理由により、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

8 本件特許発明17〜20について
本件特許発明17〜20は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、上記4と同様の理由により、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

9 本件特許発明21について
本件特許発明21と甲1組成物発明とを対比すると、上記3と同様であり、両発明は、「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が一般式(b−1)、一般式(b−2)又は一般式(b−3)で表される化合物を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点21:本件特許発明21の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」のものであるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

上記相違点21については、上記2と同旨であるから、上記2と同様に判断される。
したがって、本件特許発明21は、甲1組成物発明であるといえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

10 本件特許発明22〜25について
本件特許発明22〜25は、請求項21を直接又は間接的に引用するものであるから、上記9と同様の理由により、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

11 本件特許発明26について
本件特許発明26と甲1組成物発明とを対比すると、上記4と同様であり、両発明は、「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有する、ポジ型感光性樹脂組成物。」で一致し、上記4で述べた相違点4−1及び相違点4−2に加えて、以下の点で相違する。

相違点26:本件特許発明26の「ポジ型感光性樹脂組成物」が、「積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部に10〜12μmの塗布膜で塗布及び前記スクライブライン部に20〜30μmの塗布膜で塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」であるのに対し、甲1組成物発明は、そのように特定されていない点。

上記相違点26について判断は、実質的に、上記1(3)で検討した「厚みが異なる複数箇所」の「一括同時現像用」として用いること及び「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものとして用いることについての判断に帰着するから、上記1(3)と同様の理由により、その他の構成及び相違点について検討するまでもなく、本件特許発明26は、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

12 本件特許発明27〜30について
本件特許発明27〜30は、請求項26を直接又は間接的に引用するものであるから、上記11と同様の理由により、甲1組成物発明であるとはいえず、甲1組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

13 特許異議申立人の主張について
(1)本件特許発明1について
ア 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−1)」(第5頁〜第6頁)において、「「厚みが異なる複数箇所」という記載は、何μm以上の厚さを以って「厚みが異なる」とするのかが定義されておらず、「厚みが異なる複数箇所」という用語が一義的に特定範囲の厚さが異なる箇所を指すといえるような技術常識も存在しない。」と主張する。
しかしながら、本件特許発明1の「ポジ型感光性樹脂組成物」は、「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものであることを発明特定事項とするものであるから、「厚みが異なる複数箇所」とは、「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」におけるパターン硬化膜(層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等の封止部材)に存在する、多層配線の接続部上方に位置する硬化膜の厚みと、積層されたデバイスデバイスのスクライブライン部近傍の硬化膜の厚み等の差程度の厚みを意味することは当業者であれば理解可能な事項であって、そのような理解に立てば、本件特許発明の「厚みが異なる」という用語は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどのものとはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。

イ 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−1)」(第6頁)において、「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用」は、訂正前の「多段厚膜パターニング用」と同様、単に「多段の一括同時現像用」(膜厚の異なる樹脂層の一括同時現像用)を意味する程度のものであると当業者は理解する。そうすると、一括同時現像用に適した露光量や露光時間となるようにフォトマスクを選択し、「膜厚の異なる樹脂層」の各膜厚部分に応じて露光量や露光時間を調整することでスカムを残すことなく適切に一括同時現像が可能なことは、本件の先の出願前において当業者にとって周知である。」と主張する。
しかしながら、本件特許発明における「一括同時現像用」とは、上記「第6」の「1(3)」で説示したとおり、感光性樹脂組成物における「厚みが異なる複数箇所」を、「一括」かつ「同時」に現像を行うためのものであるとともに、一度の現像で同時に、同じ露光量、同じ現像時間で露光、現像を行うためのものと理解される。したがって、本件特許発明の「厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用」のものは、特許異議申立人が主張する「各膜厚部分に応じて露光量や露光時間を調整する」ような、「多段厚膜パターニング用」のものとは明確に区別して理解されるものである。
そして、甲1には、甲1組成物発明を、そのような「一括同時現像用」の用途として用いることやその動機を見出すことはできないし、本件出願の先の出願前にそのような用途及び当該用途に適した上記のような現像特性を有する感光性樹脂組成物が当業者にとって周知であったことを示す他の証拠もない。
したがって、上記主張は採用できない。

ウ 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−1)」(第6頁)において、「一方、積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」という用語は、半導体装置などの積層デバイス構造におけるマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージのどの部材や用途に用いられるのかが明記されていない。」等主張する。
しかしながら、本件特許発明は、「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものであって、例えば、多層配線の接続部やスクライブライン部等の「厚みが異なる複数箇所」を有するパッケージのパターン硬化膜(層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等の封止樹部材)を一括同時現像するためのものであって、その点に技術的意義を有する発明であることは、当業者には明らかであって、それ以上に部材及び用途を特定すべき理由を見いだすことはできない。
したがって、上記主張は採用できない。

エ 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−1)」(第7頁〜第9頁)において、「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」という用途が、本件特許の出願前において周知であることを説明するために、念のため、甲第5号証〜甲第7号証を参照する。」と主張する。
しかしながら、上記用途が周知であるとしても、甲1には、甲1組成物発明を、意見書の第7頁〜第9頁においてそれぞれ摘記された甲5〜甲7に記載された構造を採用して「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」ものとして用いること及びその動機となる記載や示唆もない。そうすると、甲5〜甲7に記載された構造が、本件の先の出願前において周知であったとしても、甲1にはその構造を採用する動機がない。
したがって、上記主張は採用できない。

オ 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−2)」(第9頁〜第12頁)において、「一括同時現像用に適した露光量や露光時間となるようにフォトマスクを選択し、「膜厚の異なる樹脂層」の各膜厚部分に応じて露光量や露光時間を調整することでスカムを残すことなく適切に一括同時現像が可能なことは、本件の先の出願前において当業者にとって周知である。
・・・中略・・・
さらに、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証を挙げて上記した通り、本件訂正発明1における「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」という用途は、本件の先の出願前における周知慣用技術である。
・・・中略・・・
以上より、本件訂正発明1が甲1発明及び甲2発明に対して「未知の属性」を見出したとはいえない。仮に、上記属性が「未知の属性」であったとしても、当該属性は、甲1発明及び甲2発明として開示されている公知の感光性樹脂組成物と区別できるような新たな用途を提供するものではない。」と主張する。
しかしながら、上記イで説示したとおり、本件特許発明の「一括同時現像用」は、上記主張のように、「露光量や露光時間となるようにフォトマスクを選択し、「膜厚の異なる樹脂層」の各膜厚部分に応じて露光量や露光時間を調整する」ようなものではない。
さらに、上記エで説示したとおり、甲5〜甲7に記載された構造が本件の先の出願前における周知慣用技術であったとしても、甲1にはその構造を採用する動機がない。
したがって、上記主張は採用できない。

カ 特許異議申立人は、意見書の「(ア−1−3)」(第12頁〜第14頁)において、上記イ及びエと同様に、「一括同時現像用」という用途が、本件の先の出願前において当業者にとって周知であったこと、「積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用の」という用途は、甲5〜甲7に記載のとおり、本件出願の先の出願前に周知慣用技術であったことを根拠として、本件特許発明1は当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかしながら、上記イ及びエでの説示と同様の理由により、上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2〜30について
特許異議申立人が意見書(第14頁〜第32頁)で主張する、本件特許発明2〜30に対する主張については、上記(1)と同様の理由で採用することはできない。


第7 甲2を主引例とした場合の当合議体の判断
1 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲2組成物発明とを対比する。
ア ポリベンゾオキサゾール前駆体
甲2組成物発明の「ポリマーII」は、その合成過程からみて、本件特許発明1の「(a)一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体」に相当する。

イ 感光剤
甲2組成物発明の光酸発生剤である「B1」は、その構造からみて、本件特許発明1の「一般式(1)で表される化合物」である「(b)感光剤」に相当する。

ウ 溶剤及び架橋剤
甲2組成物発明の「溶剤」及び「架橋剤」はそれぞれ、その文言が示すとおり、本件特許発明1の「(c)溶剤」及び「(d)架橋剤」に相当する。

(2)一致点及び相違点
上記(1)の対比より、本件特許発明1と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「1(2)」における甲1組成物発明の場合と同様の点で一致し、相違点1で相違する。

(3)判断
上記相違点1の検討について、は上記「第6」の「1(3)」と同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

2 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「2」と同様に相違点2において相違し、その判断についても同様である。
したがって、本件特許発明2は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

3 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「3」と同様に相違点3において相違し、その判断についても同様である。
したがって、本件特許発明3は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

4 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「4」と同様に少なくとも相違点4−3において相違し、その判断についても同様である。
したがって、本件特許発明3は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

5 本件特許発明5〜20について
上記「第6」の「5〜8」と同様である。

6 本件特許発明21について
本件特許発明21と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「9」と同様に相違点21において相違し、その判断についても同様である。
したがって、本件特許発明21は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

7 本件特許発明22〜25について
上記「第6」の「10」と同様である。

8 本件特許発明26について
本件特許発明26と甲2組成物発明とは、上記「第6」の「11」と同様に少なくとも相違点26において相違し、その判断についても同様である。
したがって、本件特許発明26は、甲2組成物発明であるとはいえず、甲2組成物発明及び文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

9 本件特許発明27〜30について
上記「第6」の「12」と同様である。

10 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、意見書において、甲1を主引例とした場合及び甲2を主引例とした場合をまとめて主張しているが、甲2を主引例とした場合の本件特許発明1〜30に係る新規性及び進歩性欠如の主張についても、上記「第6」の「13(1)及び(2)」と同様の理由により、その主張を採用することはできない。


第8 明確性についての当合議体の判断
1 上記「第2」の本件訂正請求により、当合議体が「第4」の「3」で指摘した明確性違反については解消していることは明らかである。

2 特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は、意見書の「(3−3)ア」(第40頁〜第41頁)において、本件特許発明1における発明特定事項である「厚みが異なる複数箇所」について、「何μm以上の厚さを以って「厚みが異なる」とするのかが定義されておらず、「厚みが異なる複数箇所」という用語が一義的に特定範囲の厚さが異なる箇所を指すといえるような技術常識も存在しない。
・・・中略・・・
すなわち、「厚みが異なる」という用語における厚さの違いについて、上限及び下限が特定されていないため、本件訂正発明1の範囲が明確でない。」と主張する。
しかしながら、本件特許発明1の発明特定事項は、「積層デバイス型のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」の「厚みが異なる複数箇所」であって、本件特許明細書の「層間絶縁膜の最外層として感光性樹脂組成物を塗布する際には、既に作製していた層間絶縁膜上に約10〜20μmの塗布膜を形成するが、同時にスクライブライン部にも樹脂が充填されるため、スクライブライン部の樹脂厚みは20〜30μmとなる」(【0006】)等の記載に照らすと、「厚みが異なる複数箇所」及びその厚みの範囲は、「積層デバイス型のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」の「感光性樹脂組成物」において生じる範囲であることが、当業者には明確に理解することができる。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。

(2)特許異議申立人は、意見書の「(3−3)イ」(第42頁)において、「本件訂正発明1における当該発明特定事項において、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」という記載は、半導体装置などの積層デバイス構造におけるマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージのどの部材や用途に用いるのかが明記されていない。」と主張する。
しかしながら、本件特許発明1は、「半導体装置などの積層デバイス構造におけるマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」に用いられる「ポジ型感光性樹脂組成物」であるから、パッケージのパターン硬化膜(層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等の封止部材)に用いられるものであることは当業者には当然に理解でき、それらの「部材」を「一括同時現像」するという「用途」で用いられることも当業者には明確に理解できる。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。

(3)特許異議申立人は、意見書の「(3−3)ウ」(第42〜第44頁)において、「本件訂正発明2は、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」における「積層部」、「スクライブライン部」、及び「積層部の最外層部」などの部材や用途に用いることを特定したものと当業者は認識する。
・・・中略・・・
そうすると、「積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる」という記載における積層部、スクライブライン部、及び積層部の最外層部と、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」という記載における複数のダイや半導体チップとの位置関係が不明確である。」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書(【0004】〜【0005】)に記載のとおり、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」とは、「半導体素子を3次元的に積層」した「積層デバイス構造」のものである。当該記載に基づけば、「積層部」とは複数のダイや半導体チップである「半導体素子」が「3次元的に積層」した部分であること、「スクライブライン部」とは各パッケージを個片化するためにスクライブする部分であること、及び、「積層部の最外層部」とは前記積層部の最も外側の部分であることは、当業者には明確に理解できる。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。


第9 特許異議申立人の意見書におけるその余の主張(サポート要件)について
1 特許異議申立人は、意見書の「(3−2)ア」(第32〜第35頁)において、「本件訂正発明1は、「厚みが異なる複数箇所」における厚さの違いを特定しない全ての範囲において、本件特許の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていない」と主張する。
しかしながら、上記「第8」の「2(1)」で説示したとおり、本件特許発明1の「厚みが異なる複数箇所」の厚みの違いについては、本件特許明細書の記載から認識できることである。
さらに、本件特許明細書の【0077】〜【0079】の実施例の記載を参照すると、本件特許発明1の「ポジ型感光性樹脂組成物」は、12μm及び20μmにおいて、一括同時現像が行えることが示されており、「積層デバイス型のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」の「感光性樹脂組成物」において生じる「厚みが異なる複数箇所」及びその厚みの範囲において、「多段膜厚パターニングを実現」(厚みが異なる複数箇所の一括同時現像)するという課題(【0009】〜【0010】)を十分に解決できることが、当業者は認識することができる。
そうすると、本件の請求項1の記載が、発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。

2 特許異議申立人は、意見書の「(3−2)イ」(第35〜第36頁)において、「本件訂正発明1における発明特定事項において、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」という記載は、半導体装置などの積層デバイス構造におけるマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージのどの部材や用途に用いるのかが明記されていない。」と主張する。
しかしながら、上記「第8」の「2(2)」と同様の理由により、「部材」や「用途」は、発明の詳細な説明の記載から当業者には理解することができる。
そうすると、本件の請求項1の記載が、発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。

3 特許異議申立人は、意見書の「(3−2)ウ」(第36〜第40頁)において、「本件訂正発明2は、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」における「積層部」、「スクライブライン部」、及び「積層部の最外層部」などの部材や用途に用いることを特定したものと当業者は認識する。そうすると、本件特許発明2は、このような部材や用途を特定した全ての範囲において、本件特許の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていなければならない。
なお本件特許明細書の発明の詳細な説明には、・・・中略・・・半導体装置の製造工程において、複数のダイや半導体チップの位置が明記されていない。
・・・中略・・・
そうすると、「積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる」という記載における積層部、スクライブライン部、及び積層部の最外層部と、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用」という記載における複数のダイや半導体チップとの位置関係が不明確である。」ことにより、「本件訂正発明2は、本件特許の発明の課題を解決できない権利範囲も包含する蓋然性が高い。」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書(【0004】〜【0005】)に記載のとおり、「マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ」とは、「半導体素子を3次元的に積層」した「積層デバイス構造」のものである。当該記載に基づけば、「積層部」とは複数のダイや半導体チップである「半導体素子」が「3次元的に積層」した部分であること、「スクライブライン部」とは各パッケージを個片化するためにスクライブする部分であること、及び、「積層部の最外層部」とは前記積層部の最も外側の部分であることは、当業者には明確に理解できる。
そして、本件特許発明2はそれらの部分の製造用途として用いられるポジ型感光性樹脂組成物であることは明らかであり、上記(1)で説示したとおり「多段膜厚パターニングを実現」(厚みが異なる複数箇所の一括同時現像)するという課題を十分に解決できることが、本件特許明細書の記載から当業者には認識できる。
したがって、上記主張は採用できない。
請求項2〜30についても同様である。


第10 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立ての理由(証拠)について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1及び甲2に加えて、甲3(特開2010−122654号公報)及び甲4(特開平6−224399号公報)を周知技術の証拠として提出している。
しかしながら、上記「第6」及び「第7」で検討した各相違点については、甲3及び甲4にも記載や示唆はなく、甲3及び甲4の記載事項を考慮しても、上記「第6」及び「第7」に示した結論を左右するものではない。
したがって、甲1に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された周知技術に基づく理由は採用することができない。
また、甲2に記載された発明並びに及び甲3及び甲4に記載された周知技術に基づく理由についても同様である。


第11 まとめ
以上のとおりであるから、当合議体が通知した取消しの理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1〜30に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜30に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(1)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化2】

(一般式(1)中、Xはヒドロキシ化合物又はアミノ化合物の残基を示す)
【請求項2】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、前記(b)成分が下記一般式(1)で表される化合物を含み、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化4】

(一般式(1)中、Xはヒドロキシ化合物又はアミノ化合物の残基を示す)
【請求項3】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】


(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化6】

【化7】

【化8】

(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化9】

【請求項4】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、
前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、10〜12μmの塗布膜及び20〜30μmの塗布膜の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用のポジ型感光性樹脂組成物。
【化10】

(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化11】


【化12】


(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化13】


【請求項5】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項6】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項5に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項8】
請求項7に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項9】
請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項10】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項9に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項12】
請求項11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項13】
請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項14】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項13に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項15】
請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項16】
請求項15に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項17】
請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項18】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項17に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項19】
請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項20】
請求項19に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項21】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−1)、下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含む、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部及び前記スクライブライン部に塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化14】


(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2上であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化15】


【化16】


【化17】


(一般式(b−1)、(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化18】


【請求項22】
請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項23】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項22に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項24】
請求項21に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項25】
請求項24に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【請求項26】
(a)下記一般式(a−1)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤とを含有し、
前記(b)成分が下記一般式(b−2)又は下記一般式(b−3)で表される化合物を含み、
前記(d)成分が、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂である、積層部とスクライブライン部とを有する基板上の、前記積層部の最外層部に10〜12μmの塗布膜で塗布及び前記スクライブライン部に20〜30μmの塗布膜で塗布し、前記最外層部にパターン硬化膜を形成するために用いる、厚みが異なる複数箇所の一括同時露光現像用であって積層デバイス構造のマルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ用ポジ型感光性樹脂組成物。
【化19】


(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO2−であり、Vは炭素数1〜30の脂肪族基を示す。)
【化20】


【化21】


(一般式(b−2)及び(b−3)中、Rはそれぞれ独立に下記式で表される基又は水素原子であり、各化合物の全てのRが水素原子であることはない。)
【化22】


【請求項27】
請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像しパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項28】
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理温度が250℃以下である請求項27に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項29】
請求項26に記載のポジ型感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項30】
請求項29に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-08-31 
出願番号 P2016-571863
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G03F)
P 1 651・ 121- YAA (G03F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 小濱 健太
植前 充司
登録日 2020-09-01 
登録番号 6756957
権利者 HDマイクロシステムズ株式会社
発明の名称 ポジ型感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜及び電子部品  
代理人 弁理士法人平和国際特許事務所  
代理人 弁理士法人平和国際特許事務所  

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