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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
管理番号 1390558
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-03 
確定日 2022-08-25 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6869245号発明「二成分コーティング組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6869245号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−10〕について訂正することを認める。 特許第6869245号の請求項1−10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6869245号の請求項1〜10に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年9月23日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和3年4月15日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜10に係る特許に対し、同年9月3日に特許異議申立人池田貴博(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年1月25日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年4月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年5月17日付けで特許異議申立人に通知したが、その指定期間内に特許異議申立人から応答がなかった。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1〜4からなる。
(1)訂正事項1
(訂正事項1−1)
特許請求の範囲の請求項1に「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネー卜に対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」と記載されているのを、「b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜10も同様に訂正する)。
(訂正事項1−2)
特許請求の範囲の請求項1に「二峰性又はより多峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分」と記載されているのを、「二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)、ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化熏合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記重合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜10も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記二峰性又はより多峰性の粒度分布」と記載されているのを、「前記二峰性の粒度分布」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3〜10も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記二峰性又はより多峰性の粒度分布」と記載されているのを、「前記二峰性の粒度分布」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4〜10も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記二峰性又はより多峰性の粒度分布」と記載されているのを、「前記二峰性の粒度分布」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5〜10も同様に訂正する)。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項1〜10について 、請求項2〜10は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜10に対応する訂正後の請求項1〜10は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1のうち訂正事項1−1は、訂正前の請求項1の「少なくとも1種のポリイソシアネートb1)」について、その下位概念である「b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)」へと限定する訂正である。また、訂正前の請求項1における「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」と、「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」とが、訂正前の請求項1のa)とb1)が同一である旨を明らかにすることで、a)とb)とが相違することを明確にするものである。また、訂正事項1−1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2〜10に対しても同様の限定を行うものである。
したがって、当該訂正事項1−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の滅縮」及び特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であるといえる。
訂正事項1−2について、訂正前の請求項1に係る特許発明は、「少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)」について「二峰性又はより多峰性の粒度分布を有する」ことを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「二峰性の粒度分布を有する」との記載により、訂正前の「より多峰性」の場合の選択肢を削除して限定している。
さらに、(a)「ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は」
(b)「前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は」
(c)「前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は」
(d)「前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記重合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される」との記載により、二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)をより具体的に特定し、さらに限定するものである。
ここで、上記(b)〜(d)は、製造方法により水性ポリマー分散液c)を特定するものであるところ(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム)、当該特定がされても、その記載が明確でないことにより、結局のところ水性ポリマー分散液c)の特定及び限定がなされていないことになるか否かについて検討すると、令和4年4月28日付けの特許権者の意見書において(8頁下から6行〜最下行)、「一回の重合プロセスによって製造された水性ポリマー分散液c)は、モノマーの種類及び製造条件に応じて、構造や組成が多岐にわたるポリマーが得られ、そのようなポリマーの構造や特性を直接決定することが実際的ではないことは当業者に自明である。したがって、本件特許発明1において「出願時において 当該物をその構造又は特性により直接特定すること」はおよそ非実際的であるといえ、「不可能・非実際的事情」が存在することは明らかである。」と主張されており、当該主張により、「不可能・非実際的事情」の存在を認め得ることから、上記(b)〜(d)による特定が明確でないということはできない。
また、訂正事項1−2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2〜10に対しても同様の限定を行うものである。
したがって、当該訂正事項1−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項1−1について、訂正前の請求項1の発明特定事項の択一的な選択肢の一部を削除する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。また、訂正事項1−2について、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1−1については、「少なくとも1種のポリイソシアネートb1)」の下位概念である「bl)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)」は、本件特許明細書の段落【0057】の「好ましくは、b1)で使用される少なくとも1種の該ポリイソシアネートは、a)での少なくとも1種の該ポリイソシアネートと同じである。」なる記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項1−1は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
訂正事項1−2については、「二峰性又はより多峰性の粒度分布を有する」の選択肢の一つである「二峰性の粒度分布を有する」は、段落【0088】の「少なくとも1種の該ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、2つの極大値が優勢である(すなわち二峰性である)粒度分布を有する場合が有利でありうる。」なる記載に基づくものである。
また、「前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違する」は、段落【0134】に「前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造される」と記載されており、段落【0168】に記載の分散液P2とP3を含む実施例のものにおける、ポリマー分散液P2については、段落【0163】に「該ポリマー分散液P2の製造は、P1の製造に完全に類似して行ったが、該ポリスチレンシードの代わりに、BASF社のDisponil(登録商標) FES 77(32質量%)8.6gを装入した点で相違した。」と記載され、ポリマー分散液P3については、段落【0165】に「該ポリマー分散液P3の製造は、P1の製造に完全に類似して行ったが、ここでは33質量%ポリスチレンシード1.5gを装入した点で相違した。」と記載されており、ここで、ポリマー分散液P1は、段落【0160】及び【0161】によれば、BASF社のDisponil(登録商標) FES 77(32質量%) 25.8g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 103.8g、メタクリル酸 8.3g、アクリル酸n−ブチル 154.0g、メタクリル酸メチル 286.0g及び2−エチルヘキシルチオグリコレートフィード 1.7gをモノマー成分として含むフィード1を重合したものであり、ポリマー分散液P2とP3も、段落【0163】及び【0165】の記載からフィード1を重合したものであるから、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル及び2−エチルヘキシルチオグリコレートからなるものであり、両者は2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するといえるから、「前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違する」との訂正上記段落【0134】、【0163】、【0165】及び【0168】に基づくものである。
そして、「前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造される」、「前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記重合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される」については、【0135】の記載(なお、平均粒度が質量平均であることについては段落【0002】、【0088】、【0128】、【0158】等)に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項1−2は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1に関する訂正事項1−2により、訂正後の請求項2も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。これは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1−2により、訂正後の請求項2も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)イに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1−2により、訂正後の請求項2も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)ウに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1又は2に関する訂正事項1−2又は訂正事項2により、訂正後の請求項3も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。これは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1−2又は訂正事項2により、訂正後の請求項3も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)イに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1−2又は訂正事項2により、訂正後の請求項3も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)ウに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1〜3に関する訂正事項1−2、訂正事項2、訂正事項3により、訂正後の請求項4も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。これは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1−2、訂正事項2又は訂正事項3により、訂正後の請求項4も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)イに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1−2、訂正事項2又は訂正事項3により、訂正後の請求項4も「二峰性又はより多峰性の粒度分布」についてその選択肢の一つである「二峰性の粒度分布」へと訂正される。この訂正は、上記(1)ウに記載のように、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6869245号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−10〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、令和4年4月28日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明10」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
二成分コーティング組成物であって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート及び
b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物
を含有する水分散性ポリイソシアネート成分
並びに
二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分、ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される
を含有する、二成分コーティング組成物。
【請求項2】
前記二峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子とそのより大きな粒子との質量平均直径の差が少なくとも50nmであることによって特徴付けられている、請求項1に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項3】
前記二峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子の質量平均直径が20〜300nmの範囲であり、かつそのより大きな粒子の質量平均直径が150〜700nmの範囲であることによって特徴付けられている、請求項1又は2に記載の二成分コーティ
ング組成物。
【請求項4】
前記二峰性の粒度分布は、その大きな粒子とその小さな粒子との質量比が40:60〜85:15の範囲であることによって特徴付けられている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項5】
前記水性ポリマー分散液c)の固形分が、その全質量を基準として35〜70質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基と、前記ポリアクリレート成分のヒドロキシル基とのモル比が、0.2:1〜5:1の範囲であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の前記ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、DIN 53240-2に従って測定して15〜250mgKOH/gのOH価を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物を製造する方法において、前記ポリイソシアネート成分及び前記ポリアクリレート成分を互いに混合することを特徴とする、二成分コーティング組成物を製造する方法。
【請求項9】
コーティング材料及びペイントにおける、請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物の使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物の、基材をコーティングするための使用。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正前の請求項1〜10に係る特許に対して、当審が令和4年1月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(明確性)本件特許の請求項1〜10に係る発明は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

1 本件特許発明1は、請求項1の記載からみて、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」及び「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」を含有する水分散性ポリイソシアネート成分を含有するものであり、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」及び「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」の2種類のポリイソシアネートを含有するものと解される。
しかし、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」は「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」の上位概念であり、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」と「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」は重複するものであるから、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」と「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」が同じである態様も包含するとも解される。
実際、本件特許明細書の実施例では、ポリイソシアネート成分としてBayhydur(登録商標) 3100=Bayer MaterialScience社の親水性に変性された脂肪族ポリイソシアネート又はEasaqua(登録商標) X D 803=Vencorex社の溶液中の脂肪族ポリイソシアネート(3−メトキシ−n−ブチルアセテート中70%)の1種類のみが使用されており、Easaqua(登録商標) X D 803=Vencorex社の溶液中の脂肪族ポリイソシアネート(3−メトキシ−n−ブチルアセテート中70%)は、親水基を有することが不明なものであり、「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」に該当するか不明であるが、Bayhydur(登録商標) 3100=Bayer MaterialScience社の親水性に変性された脂肪族ポリイソシアネートは、「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」に該当し、ポリイソシアネート成分としてBayhydur(登録商標) 3100=Bayer MaterialScience社の親水性に変性された脂肪族ポリイソシアネートは「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」に該当し、この場合は、「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」と「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」が同じである態様であると考えられる。
そうすると、本件特許発明1において「a)少なくとも1種のポリイソシアネート」と「b)少なくとも1種のポリイソシアネートb1)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」が異なる2種類のポリイソシアネートであるのか、同じポリイソシアネートであるのか判然とせず、その結果、本件特許発明1は不明確となっている。
本件特許発明1を引用する本件特許発明2〜10も不明確である。

2 本件特許発明2は、本件特許発明1において「二峰性又はより多峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子とそのより大きな粒子との質量平均直径の差が少なくとも50nmであることによって特徴付けられている」と特定するものであり、本件特許発明3は、本件特許発明1において「二峰性又はより多峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子の質量平均直径が20〜300nmの範囲であり、かつそのより大きな粒子の質量平均直径が150〜700nmの範囲であることによって特徴付けられている」と特定するものであり、本件特許発明4は、本件特許発明1において「二峰性又はより多峰性の粒度分布は、その大きな粒子とその小さな粒子との質量比が40:60〜85:15の範囲であることによって特徴付けられている」と特定するものである。
ここで、多峰性の場合、粒度分布の異なる3種類以上の粒子群が存在することとなるが、それらのうち、いずれがそのより小さな粒子、そのより大きな粒子であるのか不明であり、その結果、本願発明2〜4は不明確となっている。
本件特許発明2〜4を引用する本件特許発明5〜10も不明確である。

理由2(新規性)本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由3(進歩性)本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特表2011−525415号公報
甲第2号証:特開2010−37516号公報
甲第3号証:特表2010−522248号公報

第5 前記第4における理由1(明確性)についての判断
1.前記訂正により、本件特許発明1に含まれる水分散性ポリイソシアネート成分は、a)少なくとも1種のポリイソシアネート及び
b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物
を含有するものとなり、b)がa)とb2)の反応生成物の反応物であるから、b)はa)と異なることが明確となった。
よって、本件特許発明1は不明確であるとはいえない。
本件特許発明1を引用する本件特許発明2〜10も不明確であるとはいえない。

2.前記訂正により、本件特許発明2〜4は、多峰性の粒度分布の場合を含むものではなくなり、二峰性の粒度分布の場合のみを含むものとなったので、そのような粒度分布において、いずれがそのより小さな粒子、そのより大きな粒子であるのか明確となった。
よって、本件特許発明2〜4は不明確であるとはいえない。
本件特許発明2〜4を引用する本件特許発明5〜10も不明確であるとはいえない。

第6 前記第4における理由2(新規性)及び理由3(進歩性)についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする複層塗膜形成方法。」
1b「【0043】
硬化剤(B)
本発明に従う水性第1着色塗料(X)において使用される硬化剤(B)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)中に存在し得る水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して、水性第1着色塗料(X)を硬化させ得る化合物である。硬化剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。なかでも、得られる塗膜の耐水性の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、塗料の貯蔵安定性の観点から、アミノ樹脂が特に好ましい。硬化剤(B)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。」
1c「【0081】
水分散性アクリル樹脂(C)
本発明に従う水性第1着色塗料(X)において使用される水分散性アクリル樹脂(C)は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得ることができる。
【0082】
炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、例えば、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
上記炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、特に、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがさらに好ましい。得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
【0084】
水分散性アクリル樹脂(C)における上記炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計量を基準として、30〜100質量%、特に45〜100質量%、さらに特に60〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0085】
前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0087】
上記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)は、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)を含有することが好ましい。
【0088】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)は、得られる水分散性アクリル樹脂(C)に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を付与し、それによって形成塗膜の耐水性等を向上させると共に、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
【0089】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0090】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0091】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)が、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)を含有する場合、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性及び形成塗膜の耐水性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に1〜50質量%、特に2〜30質量%、さらに特に3〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0092】
また、上記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)を含有することができる。
【0093】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の説明で例示したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0094】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)を含有する場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性に優れる観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%、さらに特に1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0095】
また、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、水分散性アクリル樹脂(C)は架橋構造を有することが好ましい。水分散性アクリル樹脂(C)に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7
)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として後記の官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入する方法が好ましい。
【0096】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベ
ンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)としては、なかでも、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0097】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に約0.1〜約30質量%、特に約0.5〜約15質量%、さらに特に約1〜約8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0098】
前記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)としては、例えば、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、メチロール基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、イソシアナト基含有重合性不飽和モノマー等を好適に使用することができる。
【0099】
上記エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、グリシジルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0100】
前記メチロール基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(iso−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらはそれぞれ
単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、上記メチロール基含有重合性不飽和モノマーは、メチロール基を有する重合性不飽和モノマー及びエーテル化されたメチロール基を有する重合性不飽和モノマーを包含するものとする。上記メチロール基含有重合性不飽和モノマーとしては、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0101】
前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを好適に使用することができる。
【0102】
前記イソシアナト基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートを
好適に使用することができる。
【0103】
官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0104】
重合性不飽和モノマー(c−9)は、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマーであり、具体的には、例えば、重合性不飽和モノマー(c−8)としてエポキシ基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸又はメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0105】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてメチロール基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0106】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、上述の水酸基含有重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらはそれぞれ
単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0107】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてイソシアナト基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、上述の水酸基含有重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0108】
また、本発明において、官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーは、上記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)に含まれるものとする。このような重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記メチロール基含有重合性不飽和モノマーを挙げられる。例えば、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)として、該メチロール基含有重合性不飽和モノマーを使用した場合、該メチロール基含有重合性不飽和モノマー中のメチロール基が互いに反応し、自己架橋して、架橋構造を有するシェル部が形成される。この場合、重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)がなくても、架橋構造を有するシェル部を形成せしめることができる。
【0109】
重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0110】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合は、重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0111】
水分散性アクリル樹脂(C)は、上記例示のモノマー成分の全量を反応させて得られる単層型であってもよいし、異なる組成のモノマー成分を段階的に反応させて得られる複層型、例えばコア/シェル型であってもよい。
【0112】
水分散性アクリル樹脂(C)の製造方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、乳化剤及び/又は保護コロイドを分散又は溶解した水性媒体中で重合性不飽和モノマーを重合する方法;予め反応器内にて適当な量の重合性不飽和モノマーを重合してシード粒子を形成して、ついで残りの重合性不飽和モノマーを添加して重合するシード重合法;溶剤中でカルボキシル基等の親水性基を含有する重合性不飽和モノマーを必須成分とする重合性不飽和モノマーを溶液重合し、転相乳化した後、必要に応じて脱溶剤する方法;重合中に添加する重合性不飽和モノマーの組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法;モノマー分散系に高圧ホモジナイザーや超音波等による強い剪断力を加え、モノマー滴を500nm程度以下に細分化した後、重合によりモノマー滴一粒一粒をポリマー粒子に変えるミニエマルション重合法等を挙げることができる。なかでも、製造安定性の観点から、シード重合法又はミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0113】
水分散性アクリル樹脂(C)は、一般に10〜5,000nm、好ましくは50〜3,000nm、さらに好ましくは100〜1,000nmの範囲内の平均粒子径を有することが好適である。
【0114】
本明細書において、水分散性アクリル樹脂(C)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0115】
水分散性アクリル樹脂(C)が、カルボキシル基等の酸性基を有する場合は、水分散性アクリル樹脂(C)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の水分散性アクリル樹脂(C)の水分散液のpHが約6〜約9の範囲内となるような量で用いることが望ましい。
【0116】
水分散性アクリル樹脂(C)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッ
ピング性の観点から、なかでも、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)60〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜40質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(I)のコア部と、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)45〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)0〜55質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(II)のシェル部から構成されるコア/シェル型構造を有する水分散性アクリル樹脂(C1)を使用することが、好ましい。
【0117】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(I)のコア部を形成せしめるために使用される炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、炭素数6〜18、特に炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましい。なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
【0118】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)において、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0119】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(I)のコア部を形成せしめるために使用される、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)としては、前記水分散性アクリル樹脂(C)の説明において記載した重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の中から適宜選択して使用することができる。
【0120】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(II)のシェル部を形成せしめるために使用される炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)と
しては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、メチルメタクリレート及び/又はエチルメタクリレートを用いるのが好ましく、メチルメタクリレートを用いることが特に好ましい。
【0121】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)において、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に45〜100質量%、特に60〜98質量%、さらに特に70〜95質量%の範囲内であることが好適である。
【0122】
重合体(II)のシェル部を形成せしめるために使用される、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)としては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート
、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル
アミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0123】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)は、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)を含有することが好ましい。
【0124】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)は、得られる水分散性アクリル樹脂(C1)に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を付与し、それによって形成塗膜の耐水性等を向上させると共に、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
【0125】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0126】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0127】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)が水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)を含有する場合、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中における安定性及び形成塗膜の耐水性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に1〜60質量%、特に2〜50質量%、さらに特に3〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0128】
また、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)を含有することができる。
【0129】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の説明で例示したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0130】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)を含有する場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中における安定性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に1〜30質量%、特に2〜20質量%、さらに特に3〜15質量%であることが好ましい。
【0131】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合体(I)のコア部及び/又は重合体(II)のシェル部が架橋構造を有することが好ましい。
【0132】
重合体(I)のコア部に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び該重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入することが好ましい。
【0133】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜15質量%、さらに特に1〜8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0134】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)を使用する場合、その使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性を向上させる観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0135】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0136】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合、上記重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0137】
また、重合体(II)のシェル部に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として前記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び該重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入することが好ましい。
【0138】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜15質量%、特に1〜8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0139】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜55質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0140】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する場合、その使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性を向上させる観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0〜54.9質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。また、上記重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合、重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜54.9質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0141】
水分散性アクリル樹脂(C1)における重合体(I)/重合体(II)の割合は、塗膜の平滑性の観点から、固形分質量比で、一般に5/95〜95/5、特に50/50〜90/10、さらに特に65/35〜85/15の範囲内であることが好ましい。
【0142】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜150mgKOH/g、特に2〜100mgKOH/g、さらに特に5〜60mgKOH/g、なかでも特に10〜40mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0143】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、また、形成塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、一般に0〜50mgKOH/g、特に0〜20mgKOH/gの範囲内、なかでも特に0mgKOH/g以上でかつ10mgKOH/g未満の酸価を有することが好ましい。
【0144】
本発明の方法においては、形成塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)を重合することにより得られる重合体(I)は、一般に−65〜−10℃、特に−60〜−20℃、さらに特に−55〜−40℃の範囲内のガラス転移温度(Tg1)を有することが好適である。また、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)を重合することにより得られる重合体(II)は、一般に−55〜150℃、特に−10〜120℃、さらに特に10〜110℃の範囲内のガラス転移温度(Tg2)を有することが好適である。そして、Tg2がTg1よりも高く、且つTg2とTg1の差が、一般に5〜200℃、特に30〜180℃、さらに特に50〜160℃の範囲内にあることが好適である。
【0145】
本発明において、ガラス転移温度Tg(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tn
は各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱量計により測定したときの値を使用する。
【0146】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、例えば、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)60〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜40質量%を含有するモノマー混合物を乳化重合し、得られる重合体(I)を含むエマルション中に、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)45〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)0〜55質量%を含有するモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合することにより重合体(II)を生成せしめることによって調製することができる。
【0147】
重合体(I)のエマルションを調製するための乳化重合は、例えば、シード重合法、ミニエマルション重合法等のそれ自体既知の方法により行うことができ、例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより行うことができる。
【0148】
上記乳化剤としてはアニオン系乳化剤又はノニオン系乳化剤が好適であり、該アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキ
シエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。
【0149】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%、さらに特に1〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0150】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0151】
上記重合開始剤の使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1〜5質量%程度、好ましくは0.2〜3質量%程度とすることができる。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0152】
また、前記モノマー混合物は、得られる水分散性アクリル樹脂(C1)の分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を含んでいてもよい。該連鎖移動剤としては、メルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。該連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%の範囲内が好適である。
【0153】
前記モノマー混合物には、必要に応じて、例えば、ヘキサデカン等の長鎖飽和炭化水素系溶剤、ヘキサデカノール等の長鎖アルコール系溶剤等の有機溶剤を配合してもよい。
【0154】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、上記で得られる重合体(I)のエマルションに、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させて重合体(II)を形成せしめることによって得ることができる。
【0155】
上記重合体(II)を形成せしめるためのモノマー混合物は、必要に応じて、前記乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0156】
重合体(II)を形成せしめるためのモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、上記重合体(I)のエマルションに一括で又は徐々に添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0157】
かくして得られる水分散性アクリル樹脂(C1)は、通常、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)からなるモノマー混合物の重合体(I)をコア部とし、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)からなるモノマー混合物の重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0158】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)は、上記重合体(I)を得る工程と重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成せしめる重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層またはそれ以上の層からなる水分散性アクリル樹脂としてもよい。
【0159】
なお、本発明において、水分散性アクリル樹脂(C1)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成せしめるのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、本発明の水分散性アクリル樹脂(C1)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
【0160】
本発明の複層塗膜形成方法において、水性第1着色塗料(X)が上記コア/シェル型構造を有する水分散性アクリル樹脂(C1)を含有することにより、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる理由は、正確にはわからないが、水性第1着色塗料(X)中の上記水分散性アクリル樹脂(C1)が、コア部に比較的長鎖のアルキル基を有することにより、適度な疎水性を有する未硬化の第1着色塗膜が形成されるため、該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料を塗装した際の両塗膜間の混層が抑制されて塗膜の平滑性及び鮮映性が向上し、また、該アルキル基によって、形成される複層塗膜への水の浸透が抑制されて塗膜の耐水性が向上し、さらに、該アルキル基によって、水分散性アクリル樹脂(C1)が適度な柔軟性を有することにより、形成塗膜に加えられる衝撃が吸収されるため、塗膜の耐チッピング性が向上することが推察される。また、水分散性アクリル樹脂(C1)がシェル部に比較的短鎖のアルキル基を有することにより、水分散性アクリル樹脂(C1)が水性第1着色塗料(X)中に均一に分散されるため、塗膜の平滑性が向上することが推察される。
【0161】
水性第1着色塗料(X)
本発明の複層塗膜形成方法において使用される水性第1着色塗料(X)は、以上に述べた水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)を含有する水性塗料組成物である。
【0162】
水性第1着色塗料(X)における水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の配合割合は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計100質量部を基準として、下記の範囲内であることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A):一般に20〜95質量部、好ましくは40〜90質量部、さらに好ましくは50〜80質量部、
硬化剤(B):一般に5〜80質量部、好ましくは10〜60質量部、さらに好ましくは20〜50質量部、
水分散性アクリル樹脂(C):一般に1〜100質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部。
【0163】
水性第1着色塗料(X)は、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の他に、水溶性もしくは水分散性のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂を含有することができる。これらの改質用樹脂は、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有することが好ましい。
【0164】
上記改質用樹脂としては、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性向上の点から、アクリル樹脂及び/又はポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0165】
上記アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができる。該水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0166】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0167】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物: 例えば、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) リン酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリロイルオキシエチル
アシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xi) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xii) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0168】
水酸基含有アクリル樹脂としては、その一部として、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂を併用することもできる。
【0169】
水酸基含有アクリル樹脂は、貯蔵安定性や形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜100mgKOH/g、さらに特に5〜60mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。また、水酸基含有アクリル樹脂は、形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に5〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
【0170】
さらに、水酸基含有アクリル樹脂は、形成塗膜の外観、耐水性等の観点から、一般に2,000〜5,000,000、特に10,000〜3,500,000、さらに特に100,000〜2,000,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好適である。
【0171】
水性第1着色塗料(X)が、上記水酸基含有アクリル樹脂を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、一般に1〜80質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部の範囲内であることができる。」
1d「【0246】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
・・・
【0251】
水分散性アクリル樹脂(C)の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬株式会社
製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、平均粒子径195nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)を得た。得られた水分散性アクリル樹脂は、水酸基価が20mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が33.6質量%、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が48質量%、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合が84質量%、重合体(I)のガラス転移温度(Tg1)が−28℃、重合体(II)のガラス転移温度(Tg2)が63℃であった。
【0252】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、2−エチルヘキシルアクリレート33.6部、アリルメタクリレート2.8部及びエチルアクリレート33.6部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0253】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メチルメタクリレート25.2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート3.6部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0254】
製造例6〜11、14〜33
モノマー乳化物(1)及び(2)におけるモノマー組成を下記表1に示すように変更する以外は、製造例4と同様に操作して、水分散性アクリル樹脂分散液(C−2)〜(C−7)及び(C−10)〜(C−29)を得た。製造例5と併せて、得られた水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)〜(C−7)及び(C−10)〜(C−29)の固形分濃度、酸価、水酸基価、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合、ガラス転移温度及び平均粒子径を下記表1に示す。
・・・
【0261】
【表1−1】

【0262】
【表1−2】

・・・
【0264】
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は47mgKOH/g、水酸基価は51mgKOH/g、重量平均分子量は50,000であった。
【0265】
製造例35
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整した。ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分40%の水酸基含有アクリル樹脂分散液(Ac−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は11mgKOH/g、水酸基価は24mgKOH/g、重量平均分子量は1,800,000であった。
【0266】
モノマー乳化物: 脱イオン水55部、「ラテムルE−118B」(商品名、花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分26%)4部、スチレン10部、メチルメタクリレート53.5部、n−ブチルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸1.5部及び2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物を得た。
【0267】
水性第1着色塗料(X)の製造
製造例36
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0268】
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)29部、メラミン樹脂(B−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800)33部、「バイヒジュールVPLS2310」(住化バイエルウレタン社製、商品名、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)15部、製造例5で得た水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)33部、製造例33で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)25部、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)28部及び2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)10部を均一に混合した。
【0269】
次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性第1着色塗料(X−1)を得た。
【0270】
製造例37〜79、82〜85
製造例36において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例36と同様にして、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒である水性第1着色塗料(X−2)〜(X−44)及び(X−47)〜(X−50)を得た。
・・・
【0278】
【表2−3】

【0279】
【表2−4】

・・・
【0281】
(注1)「SPARWITE W−5HB」: 商品名、ウィルバーエリス社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径1.6μm
(注2)メラミン樹脂(B−2): メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800
(注3)「バイヒジュールXP2570」: 商品名、住化バイエルウレタン社製、アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%。
(注4)「バイヒジュールVPLS2319」: 商品名、住化バイエルウレタン社製、ノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%。
(注5)「カルボジライトV−02」: 商品名、日清紡社製、カルボジイミド基含有化合物、固形分40%。
(注6)「エポクロスWS−500」: 商品名、日本触媒社製、オキサゾリン基含有化合物、固形分40%。
(注7)エチレングリコールモノn−ブチルエーテル: 20℃において100gの水に溶解する質量は無限。
(注8)ジエステル化合物(F−1): ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸のジエステル化合物。前記一般式(1)で、R1及びR2が2−エチルへプチル基であり、R3がエチレン基であり、mが7である。分子量578。
・・・
【0296】
実施例1
上記試験用被塗物に、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、中塗り塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例92で得た水性第2着色塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、上塗り塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、上記中塗り塗膜及び上塗り塗膜を同時に硬化させることにより試験塗板を作製した。
【0297】
実施例2〜46、比較例1〜4
実施例1において、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、下記表3に示した水性第1着色塗料(X−2)〜(X−50)のいずれかとする以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。」

(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
水分散性アクリル重合体(A)、水性ウレタン樹脂(B)及びアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)を含む水性塗料組成物であって、該水分散性アクリル重合体(A)が、ガラス転移温度が50℃以上、重量平均分子量が110万以上且つ質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
さらにポリイソシアネート化合物を含む請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
上記水分散性アクリル重合体(A)、水性ウレタン樹脂(B)及びアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)の固形分合計100質量部に基づいて、(A)が5〜85質量%であり、(B)が5〜55質量%の範囲内であり且つ(C)が5〜45質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。」
2b「【0011】
本発明の水分散性アクリル重合体(A)は、重合性不飽和モノマーを分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって調製することができる。乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)及びその他の重合性不飽和モノマー(c)を使用することができる。
【0012】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。この水酸基は、塗料組成物中に硬化剤を配合する場合には、硬化剤中の官能基と反応する官能基として作用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と、炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物である2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、前記アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中で、塗膜の耐水性の点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有メタクリレートモノマーを使用することが好ましい。これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味するものである。
【0013】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)は、水分散性アクリル重合体にカルボキシル基を導入するものであり、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができるが、本発明においては、塗膜の耐水性の点からメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0014】
その他の重合性不飽和モノマー(c)は、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー以外の、重合性不飽和基を有する化合物である。
【0015】
具体的には、(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化合物であるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、(2)芳香族系ビニルモノマーであるスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等、(3)1分子中に1個以上のグリシジル基と1個の重合性不飽和結合を有するグリシジル基含有ビニルモノマーであるグリシジル(メタ)アクリレート、(4)含窒素アルキル(メタ)アクリレートであるジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(5)1分子中に1個以上のアミド基と1個の重合性不飽和結合を有する重合性不飽和基含有アミド系化合物である(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等、(6)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物である(メタ)アクリルニトリル等、(7)ジエン系化合物であるブタジエン、イソブレン等、(8)ビニル化合物である塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、(9)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート,1,6−ヘキサンジオールアクリレート、アリル(メタ)アクリレートジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。本発明において、これらその他の重合性不飽和モノマー(c)は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の水分散性アクリル重合体(A)において、乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーの配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)が塗料組成物における架橋剤の量や配合量によっても異なるが0.1〜40質量%の範囲内、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)が水分散性及び耐水性の点から0.1〜25質量%の範囲内、その他の重合性不飽和モノマー(c)が0.1〜25質量%の範囲内であることが好ましい。また、重合後の残存モノマーを低減させること及び高分子量化する点から、上記重合性不飽和モノマー中のアクリレートモノマー及びスチレンの合計量は、20〜80質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%の範囲内である。
・・・
【0044】
本発明のアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)は、2段階重合によって製造される樹脂水分散液であって、樹脂中にアニオン性基を有することを特徴とする。
【0045】
上記アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)において、コアを構成する樹脂水分散液は、重合性不飽和モノマー混合物を、乳化剤の存在下で乳化重合させることにより得られる。
【0046】
上記重合性不飽和モノマーとしては、特に制限されるものではなく、重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができ、その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状のアルキルを含有する(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;ポリオキシアルキレン基を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸;2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
上記重合性不飽和モノマーとしては、1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する化合物を含むことが好適であり、その使用量としては、コアの製造に使用される全重合性不飽和モノマー中0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%の範囲内であることができる。」
2c「【0066】
また本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて架橋剤を含有することができる。該架橋剤としては、例えば水溶性又は水分散可能なメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン、カルボジイミドなどが挙げられる。本発明においては特にポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
・・・
【0073】
これらポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また、本発明においてはこれらポリイソシアネートを親水性に変性したものや、ポリイソシアネート化合物が有機溶剤で希釈された状態又は水に分散された状態であるを水分散性ポリイソシアネート化合物を使用することができる。」
2d「【0090】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0091】
水分散性アクリル重合体(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、アデカリアソープSR−1025〔商品名、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩水溶液、旭電化社製、有効成分25%)1.0部を投入し、窒素気流中で攪拌混合し、75℃に昇温した。次いでモノマーと開始剤の乳化物(*1)全量中の3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を反応容器内に導入し、75℃で2時間保持した。
その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後、6時間熟成を行った。その後30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて、固形分40質量%、pH6.8に調整した。次いで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、水分散性アクリル重合体(A1)水分散液を得た。得られた水分散性アクリル重合体(A1)の平均粒子径は142nm(サブミクロン粒子アナライザーN4、商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置を使用して、20°Cにて測定)、酸価13mgKOH/g、水酸基価21.6mgKOH/gであった。
(*1)モノマーと開始剤の乳化物:脱イオン水55部、ラテムルE−118B(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王社製、有効成分26%)4部、スチレン10部、メチルメタクリレート35部、イソボルニルアクリレート20部、エチルアクリレート28部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部及びメタクリル酸2部、2,2´−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部を攪拌混合して得られた乳化物。
【0092】
製造例2
モノマーと開始剤の乳化物を下記表1に示す配合とする以外、製造例1と同様にして合成し、固形分40質量%の水分散性アクリル重合体(A2)水分散液を得た。
【0093】
【表1】

【0095】
アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水65部、「Newcol562SF」(商品名、アニオン性乳化剤、不揮発分60%、日本乳化剤社製、)0.5部を投入し、窒素気流中で攪拌混合し、85℃に昇温した。次いで下記の単量体混合物(1)80部、「Newcol 562SF」1.6部、脱イオン水55部からなる単量体乳化物の4%と3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部を反応容器内に導入し15分間85℃で保持した。その後、残りの単量体乳化物を3時間かけて定量ポンプで反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間、熟成を行なった。その後、単量体混合物(2)を20部、「Newcol 562SF」0.5部、脱イオン水13部、0.7%過硫酸アンモニウム水溶液3部からなる単量体乳化物を反応容器内に加えて2時間かけて滴下した。その後、0.5%ジメチルエタノールアミン水溶液43部を加えて30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスでろ過し、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)を得た。
単量体混合物(1)
メチルメタクリレート 36部
エチルアクリレート 20部
n−ブチルアクリレート 19.8部
ヒドロキシエチルメタクリレート 4部
アリルメタクリレート 0.2部
単量体混合物(2)
メチルメタクリレート 5.5部
エチルアクリレート 10部
n−ブチルアクリレート 1部
ヒドロキシルエチルメタクリレート 1部
メタクリル酸 2.5部
・・・
【0096】
硬化剤の製造
製造例6
ステンレス製ビーカーにバイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を21部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78部及びオルソ酢酸メチル1部を投入し、ガラス棒で均一になるまで攪拌し、硬化剤を得た。
ベース塗料組成物の製造
製造例7
攪拌装置を備えたステンレス製混合容器内に、脱イオン水65.4部、製造例1で得られた水分散性アクリル重合体(A1)水分散液75部、製造例3で得られた水性ウレタン樹脂(B)水分散液100部を投入した。さらに攪拌混合しながらプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテル7.5部、TINUVIN1130(商品名、紫外線吸収剤、チバスペシャリティ社製)2部、SNデフォーマー154(商品名、消泡剤、サンノプコ社製)3.2部、製造例5で得られた着色顔料分散体320.0部、製造例4で得られたアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)113.6部、SNシックナー603(商品名、粘性調整剤、サンノプコ社製)2部、BYK−348(商品名、表面調整剤、ビックケミー社製)1.5部をこの順に投入し、攪拌混合してベース塗料1を得た。
製造例8〜16
配合組成を下記表2に示す通りとする以外は製造例7と同様にして、ベース塗料2〜9を得た。
【0097】
【表2】

【0098】
上記にて調製したベース塗料1〜9の貯蔵性試験及び表3に示す要因にて塗装した試験板の性能試験を行ない、結果を表3に示した。
【0099】
貯蔵性試験
ベース塗料1〜9を各々1/4L容量内面コート缶に200g充填して密栓し、40℃恒温室に90日間保存し、室温(約20℃)まで冷却後に開栓し、容器内における状態を下記の基準で評価した。評価結果は表2に示した。
4:変化なし
3:わずかに沈降(手攪拌で均一になる)
2:著しい沈降
1:著しい増粘(電気式攪拌機を使用して均一になる)
【0100】
【表3】

【0101】
実施例1〜7及び比較例1〜4
表3に示す通りに、ベース塗料、脱イオン水及び必要に応じて硬化剤を十分に混合し、実施例及び比較例の塗料を調製した。
(試験方法)
隠蔽性試験
白黒隠蔽率試験紙に、上記にて調整した塗料をエアスプレーを使用して傾斜塗りを行ない、乾燥硬化後に、下地の白黒が目視にて判別できない膜厚を隠蔽膜厚とし、結果を表3に示した。」

(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【0133】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水82部及びアデカリアソープSR−1025(注1)1.0部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで、下記のモノマーと開始剤の乳化物(注2)全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整した。次いで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径140nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて、脱イオン水で希釈し、20℃で測定した)、酸価11mgKOH/g、水酸基価24mgKOH/gの水分散性アクリル重合体粒子1(固形分40wt%)を得た。」

2 甲1に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には製造例69として「水酸基含有ポリエステル樹脂A−1を56部、着色顔料JR−806及びMA−100をそれぞれ60部及び1部、体質顔料バリエースB−35及びMICRO ACE S−3をそれぞれ15部及び3部、及び、脱イオン水を5部からなる顔料分散ペースト、水酸基含有ポリエステル樹脂A−1を48部、硬化剤であるバイヒジュールVP2570(商品名、住化バイエルウレタン社製、アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%)を25部、水分散アクリル樹脂として脱イオン水を42部、アクアロン KH−10を0.72部、2−エチルヘキシルアクリレートを65.8部及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを4.4部からなるモノマー乳化物(1)、及び、脱イオン水を18部、アクアロン KH−10を0.31部、過流酸アンモニウムを0.03部、メチルメタクリレートを25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを4.8部からなるモノマー乳化物(2)から得られた、固形分濃度30%、水酸基価19mgKOH/g、平均粒子径210nmである水分散アクリル樹脂C−17を33部、水酸基含有アクリル樹脂として、温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成し、その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成し、さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより得られた固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂溶液Ac−1を12部、及び、温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温し、次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持し、その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行ない、その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整し、ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、得られた、固形分40%、水酸基価24mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂分散液Ac−2を10部、ウレタンエマルションであるコーコートUX−5100を28部、及び、疎水性溶剤(E)である2−エチル−1−ヘキサノールを10部からなる水性第1着色塗料X−34」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる(摘記1d参照)。
また、甲1には製造例70として「水酸基含有ポリエステル樹脂A−1を56部、着色顔料JR−806及びMA−100をそれぞれ60部及び1部、体質顔料バリエースB−35及びMICRO ACE S−3をそれぞれ15部及び3部、及び、脱イオン水を5部からなる顔料分散ペースト、水酸基含有ポリエステル樹脂A−1を48部、硬化剤であるバイヒジュールXP2319(商品名、住化バイエルウレタン社製、ノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%)を25部、水分散アクリル樹脂として脱イオン水を42部、アクアロン KH−10を0.72部、2−エチルヘキシルアクリレートを67.2部及びアリルメタクリレートを2.8部からなるモノマー乳化物(1)、及び、脱イオン水を18部、アクアロン KH−10を0.31部、過流酸アンモニウムを0.03部、メチルメタクリレートを25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを4.8部からなるモノマー乳化物(2)から得られた、固形分濃度30%、水酸基価19mgKOH/g、平均粒子径195nmである水分散アクリル樹脂C−7を66部、水酸基含有アクリル樹脂として、温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成し、その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成し、さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより得られた固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂溶液Ac−1を12部、及び、温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温し、次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持し、その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行ない、その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整し、ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、得られた、固形分40%、水酸基価24mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂分散液Ac−2を10部、及び、疎水性溶剤(E)である2−エチル−1−ヘキサノールを10部からなる水性第1着色塗料X−35」の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる(摘記1d参照)。

(2)甲2に記載された発明
甲2には実施例1として「ベース塗料として、脱イオン水を65.4部、水分散性アクリル重合体(A1)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、メタクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)を75.0部、水性ウレタン樹脂(B)水分散液を100.0部、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテルを7.5部、TINUVIN1130を2.0部、SNデフォーマー154を3.2部、着色顔料分散体を320.0部、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)、SNシックナー603を2.0部、BYK348を1.5部からなるベース塗料1、及び、バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤からなり、NCO/OHが1.3である塗料」の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているといえる(摘記2d参照)。
また、甲2には実施例2として「ベース塗料として、脱イオン水を65.4部、水分散性アクリル重合体(A2)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、アクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)を75.0部、水性ウレタン樹脂(B)水分散液を100.0部、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテルを7.5部、TINUVIN1130を2.0部、SNデフォーマー154を3.2部、着色顔料分散体を320.0部、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)、SNシックナー603を2.0部、BYK348を1.5部からなるベース塗料2、及び、バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤からなり、NCO/OHが1.3である塗料」の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されているといえる(摘記2d参照)。
また、甲2には実施例3として「ベース塗料として、脱イオン水を92.3部、水分散性アクリル重合体(A1)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、メタクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)を200.0部、水性ウレタン樹脂(B)水分散液を33.3部、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテルを7.5部、TINUVIN1130を2.0部、SNデフォーマー154を3.2部、着色顔料分散体を320.0部、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)、SNシックナー603を2.0部、BYK348を1.5部からなるベース塗料3、及び、バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤からなり、NCO/OHが1.3である塗料」の発明(以下、「甲2発明3」という。)が記載されているといえる(摘記2d参照)。
また、甲2には実施例4として「ベース塗料として、脱イオン水を88.1部、水分散性アクリル重合体(A2)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、アクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)を187.5部、水性ウレタン樹脂(B)水分散液を100.0部、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテルを7.5部、TINUVIN1130を2.0部、SNデフォーマー154を3.2部、着色顔料分散体を320.0部、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)、SNシックナー603を2.0部、BYK348を1.5部からなるベース塗料4、及び、バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤からなり、NCO/OHが1.3である塗料」の発明(以下、「甲2発明4」という。)が記載されているといえる(摘記2d参照)。
また、甲2には実施例5として「ベース塗料として、脱イオン水を51.3部、水分散性アクリル重合体(A1)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、メタクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)を50.0部、水性ウレタン樹脂(B)水分散液を166.7部、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを7.5部、エチレングリコールモノブチルエーテルを7.5部、TINUVIN1130を2.0部、SNデフォーマー154を3.2部、着色顔料分散体を320.0部、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)、SNシックナー603を2.0部、BYK348を1.5部からなるベース塗料5、及び、バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤からなり、NCO/OHが1.3である塗料」の発明(以下、「甲2発明5」という。)が記載されているといえる(摘記2d参照)。

3 当審の判断
(1)甲1を主たる引用例とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明1及び甲1発明2との対比
本件特許発明1と甲1発明1及び2を対比する。
甲1発明1の「水分散アクリル樹脂として脱イオン水を42部、アクアロン KH−10を0.72部、2−エチルヘキシルアクリレートを65.8部及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを4.4部からなるモノマー乳化物(1)、及び、脱イオン水を18部、アクアロン KH−10を0.31部、過流酸アンモニウムを0.03部、メチルメタクリレートを25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを4.8部からなるモノマー乳化物(2)から得られた、固形分濃度30%、水酸基価19mgKOH/g、平均粒子径210nmである水分散アクリル樹脂C−17」、甲1発明2の「水分散アクリル樹脂として脱イオン水を42部、アクアロン KH−10を0.72部、2−エチルヘキシルアクリレートを67.2部及びアリルメタクリレートを2.8部からなるモノマー乳化物(1)、及び、脱イオン水を18部、アクアロン KH−10を0.31部、過流酸アンモニウムを0.03部、メチルメタクリレートを25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを4.8部からなるモノマー乳化物(2)から得られた、固形分濃度30%、水酸基価19mgKOH/g、平均粒子径195nmである水分散アクリル樹脂C−7」は、モノマー成分として4−ヒドロキシブチルアクリレートを含むものであるから、本件特許発明1の「ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)」に相当する。
甲1発明1及び甲1発明2の「温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温し、次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持し、その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行ない、その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整し、ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、得られた、固形分40%、水酸基価24mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂分散液Ac−2」も本件特許発明1の「ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)」に相当する。
そして、甲1発明1の「C−17」及び「Ac−2」、並びに、甲1発明2の「C−7」及び「Ac−2」は、本件特許発明1の「少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分」に相当する。
甲1発明1の「硬化剤であるバイヒジュールVP2570(商品名、住化バイエルウレタン社製、アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%)」及び甲1発明2の「硬化剤であるバイヒジュールXP2319(商品名、住化バイエルウレタン社製、ノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%)」は、本件特許発明1の「b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」、及び、「水分散性ポリイソシアネート成分」に相当する。
甲1発明1及び甲1発明2の「水性第1着色塗料」は、ポリアクリレート成分とポリイソシアネート成分の二成分を含むから、本件特許発明1の「二成分コーティング組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明1及び甲1発明2は、「二成分コーティング組成物であって、
b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物
を含有する水分散性ポリイソシアネート成分
並びに
少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分
を含有する、二成分コーティング組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−1>
水分散性ポリイソシアネート成分が、本件特許発明1は、さらに、a)少なくとも1種のポリイソシアネートを含有するのに対し、甲1発明1及び甲1発明2ではそれを含有しない点。

<相違点1−2>
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)が、本件特許発明1では、二峰性の粒度分布を有し、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造されるものであるのに対し、甲1発明1及び甲1発明2では、二峰性の粒度分布を有するのか不明であり、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される(以下、上記製造されるものをまとめて「一緒の重合プロセスで製造されるもの」という。)ものであると特定されていない点。

(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点1−2>について検討する。
甲1発明1のC−17の平均粒子径は210nmであり、甲1発明2のC−7の平均粒子径は195nmであり、甲1発明1及び甲1発明2のAc−2は、温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温し、次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持し、その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行ない、その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整し、ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、得られた、固形分40%、水酸基価24mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂分散液であり、甲3には同じ方法で得られた水分散性アクリル重合体粒子の平均粒径が140nmであることが記載されているから(摘記3a参照)、上記のように得られたAc−2の平均粒子径は140nmであり、甲1発明1のC−17とAc−2、甲1発明2のC−7とAc−2は、平均粒子径が異なるから、二峰性の粒度分布を有している。
しかし、甲1発明1のC−17とAc−2、甲1発明2のC−7とAc−2は、明らかにモノマー組成が異なっており、一方、本件特許発明1の水性ポリマー分散液のうち、二峰性の粒度分布を有し、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するものは、同一のモノマー組成を有しており、この点で、本件特許発明1は甲1発明1及び甲1発明2と相違する。
また、甲1発明1のC−17とAc−2、甲1発明2のC−7とAc−2は、別々の重合プロセスで製造されたものであり、一方、本件特許発明1のポリマー分散液のうち、一緒の重合プロセスで製造されるものは、甲1発明1の別々の重合プロセスで製造されたC−17とAc−2を含むアクリル樹脂及び甲1発明2の別々の重合プロセスで製造されたC−7とAc−2を含むアクリル樹脂とは、合理的に物として同じであるといえるものではなく、重複する物であるという蓋然性もなく、特許異議申立人も、本件特許発明1のポリマー分散液のうち、一緒の重合プロセスで製造されるものが、甲1発明1の別々の重合プロセスで製造されたC−17とAc−2を含むアクリル樹脂及び甲1発明2の別々の重合プロセスで製造されたC−7とAc−2を含むアクリル樹脂と、合理的に物として同じであるといえるか、重複する物であるという蓋然性があることについて、意見書を提出して、説明していない。
したがって、この点は、実質的な相違点である。
そして、甲1には、甲1発明のC−17と甲1発明2のC−7のような水分散性アクリル樹脂(C)のモノマー成分、及び、甲1発明1及び甲1発明2のAc−2のような水酸基含有アクリル樹脂のモノマー成分が多数列記され(摘記1c参照)、両者のモノマー成分に重複はあるものの、甲1発明1及び甲1発明2において、それら多数列記されたモノマー成分として重複するものを選択し、水分散性アクリル樹脂(C)と水酸基含有アクリル樹脂の組成を全く同じにすることについてまで記載も示唆されているとはいえないし、水分散性アクリル樹脂(C)と水酸基含有アクリル樹脂が一緒の重合プロセスにより製造されるものであることについて記載も示唆もないから、本件特許発明1のポリマー分散液と合理的に物として同じであるといえるものとすること、あるいは、重複する物であるものとすることについても記載も示唆もない。
そうすると、甲1発明1及び甲1発明2において、水分散性アクリル樹脂(C)と水酸基含有アクリル樹脂として、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、一緒の重合プロセスにより製造されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の【0175】〜【0178】からみて、粒度分布のみが相違する分散液の比較により、本件特許発明1の二成分コーティング組成物における粘度、乾燥、架橋剤のかき混ぜ挙動及び塗膜外観/光沢に関する利点がもたらされていることが示されており、本件特許発明1のそのような効果は、甲1発明1及び甲1発明2から予測できない顕著なものであるといえる。

(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、<相違点1−1>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件特許発明2〜10について
本件特許発明2〜10は、「前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される
」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲1発明1及び甲1発明2との<相違点1−2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2〜10は甲1発明1及び甲1発明2と同一ではなく、甲1発明1及び甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)甲2を主たる引用例とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明1〜甲2発明5との対比
甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の「水分散性アクリル重合体(A1)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、メタクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)」、甲2発明2及び甲2発明4の「水分散性アクリル重合体(A2)分散液(脱イオン水を65.0部、アデカリアソープSR−1025を1.0部、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液を10.0部、モノマー組成物として脱イオン水55.0部、スチレン10.0部、メチルメタクリレートを35.0部、イソボルニルアクリレートを20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5.0部、アクリル酸を2.0部及びラレムルE−118B、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]を0.2部から得られた、平均粒子径142nm、水酸基価13.0mgKOH/gのもの)」は、モノマー成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを含むから、本件特許発明1の「ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)」に相当する。
甲2発明1〜甲2発明5の「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)(単量体成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアリルメタクリレートからなる単量体混合物(1)、及び、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる単量体混合物(2)から得られた、平均粒子径130nm、不揮発分35.2%のもの)」も、モノマー成分としてヒドロキシルエチルメタクリレートを含むから、本件特許発明1の「ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)」に相当する。
そして、水分散性アクリル重合体(A1)分散液の平均粒子径は142nmであり、水分散性アクリル重合体(A2)分散液の平均粒子径は143nmであり、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)の平均粒子径は130nmであるから、甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の「水分散性アクリル重合体(A1)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」、甲2発明2及び甲2発明4の「水分散性アクリル重合体(A2)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」は、本件特許発明1の「二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分、ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり」に相当する。
甲2発明1〜甲2発明5の「バイヒジュール3100(商品名、水分散性のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.2%、バイエル社製)を含む硬化剤」は、本件特許発明1の「b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物」、及び、「水分散性ポリイソシアネート成分」に相当する。
甲2発明1〜甲2発明5の「塗料」は、ポリアクリレート成分とポリイソシアネート成分の二成分を含むから、本件特許発明1の「二成分コーティング組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明1〜甲2発明5は、「二成分コーティング組成物であって、
b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物
を含有する水分散性ポリイソシアネート成分
並びに
二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分、ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、
を含有する、二成分コーティング組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2−1>
水分散性ポリイソシアネート成分が、本件特許発明1は、さらに、a)少なくとも1種のポリイソシアネートを含有するのに対し、甲2発明1〜甲2発明5ではそれを含有しない点。

<相違点2−2>
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)が、本件特許発明1では、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造されるものであるのに対し、甲1発明1及び甲1発明2では、二峰性の粒度分布を有するのか不明であり、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される(以下、上記製造されるものをまとめて「一緒の重合プロセスで製造されるもの」という。)ものであると特定されていない点。

(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点2−2>について検討する。
甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の「水分散性アクリル重合体(A1)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」、甲2発明2及び甲2発明4の「水分散性アクリル重合体(A2)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」は、明らかにモノマー組成が異なっており、一方、本件特許発明1の水性ポリマー分散液のうち、二峰性の粒度分布を有し、前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するものは、同一のモノマー組成を有しており、この点で、本件特許発明1は甲2発明1〜甲2発明5と相違する。
また、甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の「水分散性アクリル重合体(A1)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」は、別々の重合プロセスで製造されたものであり、甲2発明2及び甲2発明4の「水分散性アクリル重合体(A2)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」も、別々の重合プロセスで製造されたものであり、一方、本件特許発明1のポリマー分散液のうち、一緒の重合プロセスで製造されるものは、甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の別々の重合プロセスで製造された「水分散性アクリル重合体(A1)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」を含むアクリル分散体、並びに、甲2発明2及び甲2発明4の別々の重合プロセスで製造された「水分散性アクリル重合体(A2)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」を含むアクリル分散体とは、合理的に物として同じであるといえるものではなく、重複する物であるという蓋然性もなく、特許異議申立人も、本件特許発明1のポリマー分散液のうち、一緒の重合プロセスで製造されるものが、甲2発明1、甲2発明3及び甲2発明5の別々の重合プロセスで製造された「水分散性アクリル重合体(A1)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」を含むアクリル分散体、並びに、甲2発明2及び甲2発明4の別々の重合プロセスで製造された「水分散性アクリル重合体(A2)分散液」及び「アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)」を含むアクリル分散体と、合理的に物として同じであるといえるか、重複する物であるという蓋然性があることについて、意見書を提出して、説明していない。
したがって、この点は、実質的な相違点である。
そして、甲2には、甲2発明1〜甲2発明5の水分散性アクリル重合体(A1)のモノマー成分とのモノマー成分、アニオン性コアシェル樹脂分散体(C)のモノマー成分が多数列記され(摘記2b参照)、両者のモノマー成分に重複はあるものの、甲2発明1〜甲2発明5において、それら多数列記されたモノマー成分として重複するものを選択し、水分散性アクリル重合体(A1)とアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)の組成を全く同じにすることについてまで記載も示唆されているとはいえないし、水分散性アクリル重合体(A1)とアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)が一緒の重合プロセスにより製造されるものであることについて記載も示唆もないから、本件特許発明1のポリマー分散液と合理的に物として同じであるといえるものとすること、あるいは、重複する物であるものとすることについても記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明1〜甲2発明5において、水分散性アクリル重合体(A1)とアニオン性コアシェル樹脂分散体(C)として、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、一緒の重合プロセスにより製造されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

(ウ)本件特許発明1の効果について
上記(1)ア(ウ)と同様の理由のとおり、本件特許発明1のそのような効果は、甲2発明1〜甲2発明5から予測できない顕著なものであるといえる。

(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、<相違点2−1>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件特許発明2〜10について
本件特許発明2〜10は、「前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記電合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される
」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲2発明1〜甲2発明5との<相違点2−2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2〜10は甲2発明1〜甲2発明5と同一ではなく、甲2発明1〜甲2発明5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人の主張は以下のとおりである。
理由1(新規性)本件特許の請求項1〜4、7〜10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

そして、上記申立理由は上記第4のとおり取消理由通知において採用されており、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、令和4年1月25日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分コーティング組成物であって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート及び
b)b1)としての前記少なくとも1種のポリイソシアネートa)と、イソシアネートに対して反応性ではない少なくとも1個の親水基(基A)及びイソシアネートに対して反応性の少なくとも1個の基(基B)を有する化合物b2)との少なくとも1種の反応生成物
を含有する水分散性ポリイソシアネート成分
並びに
二峰性の粒度分布を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの水性ポリマー分散液c)を含有するポリアクリレート成分、ここで、
前記水性ポリマー分散液c)は、単峰性の粒度分布を有する2つの異なるポリマー分散液の混合物であり、前記2つのポリマー分散液が質量平均粒度の点でのみ相違するか、又は
又は前記水性ポリマー分散液c)は、質量平均粒度の点で相違する2つの異なるシードラテックスの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル開始水性乳化重合により、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、前記重合の過程で、既に前記モノマーの一部が重合されている時に、新しい粒子発生の形成を開始する、より多い量の乳化剤を添加するモノマーフィード法により、実施することにより、製造されるか、又は
前記水性ポリマー分散液c)は、モノマーのラジカル開始水性乳化重合を、重合容器中に少なくとも1つのポリマーシード1を装入し、かつ前記重合の過程で、少なくとも1つのさらなるポリマーシード2を水性分散液の形態で添加するモノマーフィード法より、実施することにより、製造される
を含有する、二成分コーティング組成物。
【請求項2】
前記二峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子とそのより大きな粒子との質量平均直径の差が少なくとも50nmであることによって特徴付けられている、請求項1に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項3】
前記二峰性の粒度分布は、そのより小さな粒子の質量平均直径が20〜300nmの範囲であり、かつそのより大きな粒子の質量平均直径が150〜700nmの範囲であることによって特徴付けられている、請求項1又は2に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項4】
前記二峰性の粒度分布は、その大きな粒子とその小さな粒子との質量比が40:60〜85:15の範囲であることによって特徴付けられている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項5】
前記水性ポリマー分散液c)の固形分が、その全質量を基準として35〜70質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基と、前記ポリアクリレート成分のヒドロキシル基とのモル比が、0.2:1〜5:1の範囲であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の前記ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、DIN 53240−2に従って測定して15〜250mgKOH/gのOH価を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物を製造する方法において、前記ポリイソシアネート成分及び前記ポリアクリレート成分を互いに混合することを特徴とする、二成分コーティング組成物を製造する方法。
【請求項9】
コーティング材料及びペイントにおける、請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物の使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分コーティング組成物の、基材をコーティングするための使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-08-16 
出願番号 P2018-534012
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09D)
P 1 651・ 113- YAA (C09D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 瀬下 浩一
木村 敏康
登録日 2021-04-15 
登録番号 6869245
権利者 ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
発明の名称 二成分コーティング組成物  
代理人 前川 純一  
代理人 森田 拓  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 上島 類  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 森田 拓  
代理人 二宮 浩康  

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