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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C12M
審判 一部申し立て 2項進歩性  C12M
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12M
管理番号 1390569
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-04 
確定日 2022-08-19 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6870610号発明「培養装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6870610号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5、10〕、〔6〜7〕、〔8、11〜12〕、13〜24について訂正することを認める。 特許第6870610号の請求項1〜8、10〜24に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6870610号(請求項の数12。以下、「本件特許」という。)は、平成28年5月24日(優先権主張 平成27年5月25日)を国際出願日とする特願2017−520719号の請求項1〜12に係る発明について、令和3年4月19日に特許権の設定登録がされ、特許掲載公報が令和3年5月12日に発行されたものである。
その後、令和3年11月4日に、本件特許の請求項1〜8、10〜12に係る特許に対して、特許異議申立人 大澤 豊から、特許異議の申立てがなされた。
よって、本件特許異議申立てに係る審理対象は、請求項1〜8、10〜12に係る特許についてであり、請求項9に係る特許は、審理対象外である。

それ以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 2月15日付け 取消理由通知書
同年 4月18日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 5月11日付け 通知書(申立人宛)
同年 6月15日 意見書(申立人)

第2 訂正の適否についての判断
令和4年4月18日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。

1.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「第3姿勢とする培養装置。」を、「第3姿勢とするようにプログラムされている培養装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜5、10も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5の文頭の「上記第1姿勢の上記容器保持部に・・・」を「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、上記第1姿勢の上記容器保持部に・・・」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報、上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報、及び上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報を出力する培養制御部を具備しており、
上記回転制御部は、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記培養制御部は、
上記第1情報を出力する培養ステップと、
上記第2情報を出力する溶液交換ステップと、
上記第3情報を出力する溶液排出ステップと、を実行する培養装置。」
と訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8の「上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、」を「上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」に訂正し、文末の「・・・所定量の吸引を行う培養装置。」を、「・・・所定量の吸引を行うようにプログラムされている培養装置。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項11、12も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11における引用請求項として「請求項1から10のいずれか」を、「請求項8又は9」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12における引用請求項として「請求項1から11のいずれか」を、「請求項8,9又は11」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11の(訂正事項7−1)請求項1を引用するもの、(訂正事項7−2)請求項1を引用する請求項2を引用するもの、(訂正事項7−3)請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するもの、(訂正事項7−4)請求項1を引用する請求項4を引用するもの、(訂正事項7−5)請求項1を引用する請求項5を引用するもの、(訂正事項7−6)請求項1を引用する請求項10を引用するものを、それぞれ独立形式に改め、更に、(訂正事項7−5)請求項1を引用する請求項5を引用するものについては、「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり」を加えて訂正し、以下のとおり、新たに請求項13〜18とする。
「【請求項13】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とする培養装置。

【請求項14】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。

【請求項15】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項16】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項17】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。

【請求項18】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。」

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12の(訂正事項8−1)請求項1を引用するもの、(訂正事項8−2)請求項1を引用する請求項2を引用するもの、(訂正事項8−3)請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するもの、(訂正事項8−4)請求項1を引用する請求項4を引用するもの、(訂正事項8−5)請求項1を引用する請求項5を引用するもの、(訂正事項8−6)請求項1を引用する請求項10を引用するものを、それぞれ独立形式に改め、更に、(訂正事項8−5)請求項1を引用する請求項5を引用するものについては、「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、上記第1姿勢の上記容器保持部に・・・」を加えて訂正し、以下のとおり、新たに請求項19〜24とする。
「【請求項19】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とする培養装置。

【請求項20】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。

【請求項21】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項22】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項23】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。

【請求項24】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。」

2.一群の請求項について
本件訂正前の請求項2〜7、10〜12は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件訂正前の請求項10〜12は、訂正前の請求項8を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1〜8、10〜12は、一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されたものである。
また、本件訂正請求のうち訂正事項3、7及び8は、当該訂正が認められるときに、訂正後の請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた、「・・・第3姿勢とする培養装置」について、本件明細書の【0028】〜【0029】の記載に基づき、「・・・第3姿勢とするようにプログラムされている培養装置」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項5に記載されていた、「いずれか一方のポート」、「上方に位置するポート」と、請求項5が引用する請求項1又は4の記載との整合を図るため、訂正前の請求項2に記載されていた「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」で、「培養装置」を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、又は、明瞭できない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項6において、引用請求項である請求項2〜5を削除し、独立形式に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮、又は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項8に記載されていた、「いずれか一方のポート」、「上方に位置するポート」と「液体が流通するポート」との関係が不明であるため、訂正前の請求項2に記載されていた「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」で、「培養装置」を限定するものであり、更に、「・・・所定量の吸引を行う培養装置」について、本件明細書の【0028】〜【0029】の記載に基づき、「・・・所定量の吸引を行うようにプログラムされている培養装置」に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項11において、引用請求項である請求項1〜7、10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項12において、引用請求項である請求項1〜7、10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(7)訂正事項7
訂正事項7の訂正事項7−1〜7−4、7−6は、訂正前の請求項11において、引用請求項の一部を削除するとともに、独立形式に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
訂正事項7−5については、訂正前の請求項11において、引用請求項の一部を削除するとともに、独立形式に改めるものであり、かつ、訂正前の請求項11が引用する訂正前の請求項5に記載されていた、「いずれか一方のポート」、「上方に位置するポート」と、訂正前の請求項1の記載との整合を図るため、訂正前の請求項2に記載されていた「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」で、「培養装置」を限定するものである。
したがって、訂正事項7−5は、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(8)訂正事項8
訂正事項8の訂正事項8−1〜8−4、8−6は、訂正前の請求項12において、引用請求項の一部を削除するとともに、独立形式に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
訂正事項8−5については、訂正前の請求項12において、引用請求項の一部を削除するとともに、独立形式に改めるものであり、かつ、訂正前の請求項12が引用する訂正前の請求項5に記載されていた、「いずれか一方のポート」、「上方に位置するポート」と、訂正前の請求項1の記載との整合を図るため、訂正前の請求項2に記載されていた「上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」で、「培養装置」を限定するものである。
したがって、訂正事項8−5は、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

4.独立特許要件
本件特許異議の申立てがされている請求項1〜8、10〜24については、独立特許要件の検討を要しない。

5.まとめ
以上のとおり、訂正事項1〜8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、及び、4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜8及び請求項10〜24に係る発明(以下、項番に従い、「本件訂正発明1」などといい、これらを総称して、「本件訂正発明」ということがある。また、本件特許の設定登録時の請求項に係る発明を「本件訂正前発明」という。また、本件特許の設定登録時の明細書を「本件明細書」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜8及び請求項10〜24に記載された、以下の事項によって特定されるとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。

「【請求項1】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とするようにプログラムされた培養装置。

【請求項2】
上記液体給排機構を制御する給排制御部を更に備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる請求項1に記載の培養装置。

【請求項3】
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる請求項2に記載の培養装置。

【請求項4】
上記液体給排機構を制御する給排制御部を更に備え、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる請求項1に記載の培養装置。

【請求項5】
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う請求項1から4のいずれかに記載の培養装置。

【請求項6】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報、上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報、及び上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報を出力する培養制御部を具備しており、
上記回転制御部は、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記培養制御部は、
上記第1情報を出力する培養ステップと、
上記第2情報を出力する溶液交換ステップと、
上記第3情報を出力する溶液排出ステップと、を実行する培養装置。

【請求項7】
上記培養制御部は、上記溶液交換ステップにおいて、上記液体給排機構を駆動して、上記培養容器内の溶液の一部又は全てを交換する請求項6に記載の培養装置。

【請求項8】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能であり可撓性を有する培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行うようにプログラムされている培養装置。」

及び

「【請求項10】
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である請求項1から9のいずれかに記載の培養装置。

【請求項11】
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有する請求項8又は9に記載の培養装置。

【請求項12】
上記回転制御部は、上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とする請求項8,9又は11のいずれかに記載の培養装置。

【請求項13】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とする培養装置。

【請求項14】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。

【請求項15】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項16】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項17】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。

【請求項18】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。

【請求項19】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とする培養装置。

【請求項20】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。

【請求項21】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項22】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。

【請求項23】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。

【請求項24】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。」

第4 取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由の概要
1.取消理由通知書に記載した取消理由1〜3の概要
取消理由通知書に記載した取消理由1〜3の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由1(新規性)、2(進歩性
本件訂正前の請求項1、2、5、8、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも以下の点で相違するが、上記請求項の回転制御部において、第1〜3情報に応じて、第1〜3姿勢にすることがプログラムされているのか、装置の操作者が第1〜3情報に応じて、第1〜3姿勢にすることができるのかが明らかではなく、後者の場合は培養装置における実質的な相違点にならないので、上記請求項に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。

<相違点1>
本件訂正前の請求項1では、「回転機構の回転を制御する回転制御部」について、
「上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢」とすることが特定されているのに対して、
甲1発明では、トレーが、第1の水平軸(A)を中心に回動するように取り付けられ、かつ細胞の培養のためのほぼ水平位置と培養後の細胞の回収のためのほぼ垂直位置との間で該軸を中心に移動可能であり、操作者がサンプリングの準備ができたことをコンピュータ制御システム(24)に知らせると、該コンピュータ制御システムは、トレー(110)が、水平面に対して、例えば、45度の傾斜位置に軸Aを中心に回動するようにジャッキ(124)を作動させることが可能であるから、「コンピュータ制御システム」は、細胞培養時に水平位置、培養後の細胞回収時に垂直位置、サンプリング時に傾斜位置に制御するものである点。

したがって、本件訂正前の請求項1、2、5、8、10に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号、及び/又は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

(2)取消理由3(明確性
本件訂正前の請求項5は、「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」との特定がなされており、請求項1を引用しているが、請求項1では、「液体が流通するポート」とのみ記載されており、ポートが複数存在することが特定されていないため、請求項5の「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」が、請求項1との関係において明確に特定できない。
本件訂正前の請求項8にも同様の記載があり、上記請求項5及び同項を引用する請求項6、7、10〜12、並びに、請求項8に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2.特許異議申立理由の概要
申立人は、下記の甲第1〜6号証を提示して、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、本件特許には、以下の特許異議申立理由(以下、「申立理由1」から「申立理由4」という。)が存在すると主張する。

(1)申立理由1(新規性
本件訂正前の請求項1、4、6、7、10、11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性
本件訂正前の請求項1〜8、10〜12に係る発明は、甲第1〜6号証(主引例 甲第1号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前発明の課題は、培養容器が撓むことにより液体を流入させることが難しくなることであり、本件明細書でも、一貫して培養容器が「可撓性」を有することを前提とした説明がなされているが、請求項1の「培養容器」は、「可撓性を有する」ことの特定はなされていないから、本件訂正前の1〜7、10〜12に係る発明は、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである。
したがって、本件特許は、サポート要件を充足せず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(明確性
本件訂正前の請求項5は、「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」との特定がなされており、請求項1を引用しているが、請求項1では、「液体が流通するポート」としか特定されておらず、上記「いずれか一方のポート」、「上方に位置するポート」が何を示しているか不明確である。
したがって、請求項5及び同項を引用する請求項6、7、10〜12、並びに、同様の記載のある請求項8に係る発明は明確でないから、本件特許は特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

<申立人が提出した証拠方法>
甲第1号証 特表2015−513347号公報
甲第2号証 特開2014−233252号公報
甲第3号証 国際公開第2012/020458号
甲第4号証 米国出願公開2011/0159584号公報
甲第5号証 特開2007−97407号公報
甲第6号証 特開2006−55069号公報
(以下、「甲第1号証」〜「甲第6号証」を、「甲1」〜「甲6」という。)

他に、申立人は、申立書の提出と同時に、本件特許の対応欧州出願及び対応米国出願の審査状況を示す参考資料1〜12を提出し、意見書(申立人)の提出と同時に、コンピュータソフトウエア関連発明の審査基準を示す参考資料13、細胞が接着可能なFEPコポリマーが本件特許の優先日前に市販されていたことを示す参考資料14、本件特許の出願時の拒絶理由通知書である参考資料15を提出している。

第5 当審の判断
当審は、申立人が主張する上記の申立理由は、いずれも理由がなく、ほかに本件訂正発明1〜8、10〜24に係る特許を取り消すべき理由も発見できないから、各特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものと判断する。

1.取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)、2(進歩性)について
ア.取消理由1、2の検討
(ア)甲1に記載された発明
甲1には、取消理由通知にも記載したとおり、以下の発明が記載されているものと認められる。

「(ア)細胞培地、成長因子、及び培養される細胞のタンク(34、36、38)、
(イ)細胞培養又は細胞増殖の容器(54)
(ウ)(該容器)が収容される恒温エンクロージャ(14)を有するインキュベータ(12)、
(エ)該エンクロージャの培養条件を制御し、かつ流体を所定の順序で供給するために弁(20)を管理することを目的とする、データを入力及び記録する手段を備えるコンピュータ制御システム(24)
(オ)を備える細胞培養の自動装置(10)であって、
(カ)自動装置(10)は、該コンピュータ制御システム(24)によって制御され、かつ該エンクロージャ内に収容される該細胞培養又は細胞増殖容器を支持及び撹拌するための装置(16)を備え、
(キ)容器(54)は、該タンクに接続される少なくとも1つの入口ポート(68)及び培養後に該細胞を回収及び保存するための手段(46)に接続される1つの出口ポート(64)を有するバッグ(54)によって構成され、
(ク)これらの回収/保存手段及び該タンクは、該エンクロージャの外部に位置し、かつ導管(66、70、72、74)によって該細胞増殖バッグの該ポートに接続されており、該導管が、該細胞増殖バッグと共に、該エンクロージャ内に配置される組立済みモジュールを構成し、かつ該エンクロージャの壁を通過し、これにより、該エンクロージャが閉じた状態で、該細胞増殖バッグに該培養培地、該成長因子、及び該培養される細胞を供給することができ、かつ該細胞増殖バッグの内容物を該回収/保存手段に回収することができ(以上、【請求項1】を参照)、
(ケ)前記細胞増殖バッグ(54)は、可撓性の液密かつガス透過性、特にCO2透過性の壁を備え、該壁が、好ましくは、前記培養される細胞の該バッグの該壁への付着を最大限に制限する特性を有し(【請求項6】を参照)、
(コ)該自動装置(10)は、前記培養培地の前記細胞増殖バッグ(54)への供給、並びに洗浄のための該培養培地の前記成長因子及び前記培養される細胞のタンク(36、38)への供給を制御する蠕動ポンプ(22)を備え(【請求項7】を参照)、
(サ)前記支持及び撹拌するための装置(16)は、前記細胞増殖バッグ(54)を支持するトレー(110)を備え、該トレーが、第1の水平軸(A)を中心に回動するように取り付けられ、かつ細胞の培養のためのほぼ水平位置と培養後の細胞の回収のためのほぼ垂直位置との間で該軸を中心に移動可能であり(【請求項10】を参照)、
(シ)前記支持及び撹拌するための装置(16)は、U字型部分(116)を備え、該U字型部分の2つの横方向アームの自由端が、弁(86、88、90)を保持するトレー(110)の端部の側面縁に固定されたピボット(118)に対して関節接合されており、これらのピボット(118)は、上述のトレー(110)の第1の水平軸(A)に整合し、該回動軸を画定しており、上記軸Aを中心とするトレー(110)の移動は、U字型部分(116)のアーム間に取り付けられたジャッキ(124)によって行われるものであり(段落【0090】、【0093】を参照)、
(ス)該操作者がサンプリングの準備ができたことをコンピュータ制御システム(24)に知らせると、該コンピュータ制御システムは、トレー(110)が、水平面に対して、例えば、45度の傾斜位置に軸Aを中心に回動するようにジャッキ(124)を作動させることが可能である(段落【0114】〜【0118】、特に【0116】を参照)細胞培養の自動装置(10)」(以下、「甲1発明」という。)

(イ)本件訂正発明1、2、5、8、10と甲1発明の相違点の検討
本件訂正前の請求項1、5、10に係る発明と甲1に記載された発明は、上記の第4の1.(1)で述べたとおりの相違点1を有していたところ、本件訂正前の請求項1、5、10に係る発明の回転制御部が、装置の操作者によって、第1〜3情報に応じて、第1〜3姿勢にすることができるものである場合には、本件訂正前の請求項1、5、10に係る発明と、甲1に記載された発明とは区別がつかないものであった。
これに対し、本件訂正により、訂正前の請求項1、2、5、8、10において、回転制御部が、第1〜3情報に応じて、第1〜3姿勢とする「ようにプログラムされている」(請求項1、2、5、10)、又は、回転制御部が、第1〜2情報に応じて、第1〜2姿勢とし、第1姿勢において、溶液を流入させ、第2姿勢において、情報に情報に位置するポートから所定量の吸引を行う「ようにプログラムされている」(請求項5)、との特定が加えられたため、回転制御部が、装置の操作者によって、第1〜3情報に応じて、第1〜3姿勢にすることができるものである場合、又は、回転制御部が、装置の操作者によって、第1、2情報に応じて、第1、2姿勢にすることができるものである場合が、本件訂正発明1、2、5、8、10に明示的に含まれないものとなった。
一方、甲1には、第2姿勢への制御はサンプリング時に行うことが記載されているだけで(甲1の段落【0114】〜【0118】、特に【0116】を参照)、甲1発明の「細胞培養の自動装置」が、「溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、・・第2姿勢とする」プログラムを保持することは記載も示唆もされてないし、甲2にも、甲1発明で上記のプログラムを適用することを示唆する記載は見当たらないので、本件訂正発明1、2、5、8、10は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に甲1、2に記載された事項を適用しても当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1、2、5、8、10に係る発明の特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1、2により取り消すことはできない。

イ.申立人の主張
申立人は、令和4年6月15日提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)において、甲1の請求項1からは、第3情報に応じて容器保持部を略鉛直方向に沿った第3姿勢とするプログラムを読み取ることができることから、本件訂正発明1は、甲1の請求項1に記載された自動装置と実質的な相違点を有するものとは言えないと主張する(主張1)。
しかしながら、本件訂正発明1は、甲1に記載も示唆もされていない、「溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、・・第2姿勢とする」プログラムを保持するものであるから、申立人の上記主張1は理由がない。
また、申立人は、甲1において「回転制御部は・・・のようにプログラムされている培養装置」が開示されていないとしても、人間による操作をプログラム(ソフトウェア)により自動化することは、当業者が容易に想到しうる事項であると主張する(主張2)。
しかしながら、「溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、・・第2姿勢とする」プログラムと、甲1に記載された、サンプリングの準備ができたとの情報に応じて回動するプログラムは異なるものであるから、人間による操作をプログラム(ソフトウェア)により自動化することが可能であったとしても、甲1発明より、本件訂正発明1を想到することが当業者に容易であったとは認められない。
したがって、申立人の上記主張2も理由がない。
そして、本件訂正発明2、5、8、10についての主張も、本件訂正発明1が新規性進歩性を有していないことを根拠とした主張であるから、いずれも採用することができない。

ウ.小括
以上のとおり、本件訂正発明1、2、5、8、10は、甲1に記載された発明といえず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(2)取消理由3(明確性)について
ア.明確性要件の考え方
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

イ.取消理由3の検討
取消理由通知書に記載した取消理由1、2は、上記の第4の1.(2)で述べたとおりであり、本件訂正前の請求項5の「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」が、本件訂正前の請求項1との関係において明確に特定できない、本件訂正前の請求項8も同様、というものである。
これに対して、本件訂正により、訂正前の請求項5において、「上記培養容器は、上記容器保持部に保護された状態において、上記回転軸を直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、」が加えられたため、訂正後の請求項5に係る発明(本件訂正発明5)において、「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」が何を示すかが明確になった。
本件訂正前の請求項8についても、同様の訂正がなされ、訂正後の請求項8に係る発明(本件訂正発明8)において、「いずれか一方のポート」および「上方に位置するポート」が何を示すかが明確になった。
したがって、本件訂正発明5〜8、10〜12に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由3により取り消すことはできない。

ウ.申立人の主張
申立人は、申立人意見書において、本件訂正発明5は、「上記培養容器は、上記容器保持部に保護された状態において、上記回転軸を直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり」との発明特定事項を有し、本件訂正発明2を引用しているが、本件訂正発明2も、当該発明特定事項を備えることが記載されており、本件訂正発明5と本件訂正発明2の「ポート」が同じものを指しているのかどうか不明確であると主張する。
しかしながら、本件訂正発明5には、「さらに」などの追加的な用語が用いられておらず、本件訂正発明5は、本件訂正発明2と同じポートを有していると解するのが自然であるから、本件訂正発明5の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。また、このことは本願明細書の記載とも矛盾しない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。

エ.小括
以上のとおり、本件訂正発明5〜8、10〜12は、特許請求の範囲の記載が明確性要件に違反しているとはいえない。

2.取消理由通知において採用しなかった申立人による申立理由について
申立理由1〜2と取消理由1〜2は、甲1を主引用例とする点で同じであり、甲2や下位請求項に係る発明の進歩性を否定するために提示された甲3〜6にも、甲1発明の「細胞培養の自動装置」において、「溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、・・第2姿勢とする」プログラムを保持することを動機付ける記載や示唆は何ら見当たらないので、本件訂正発明1、2、5、8、10に対する申立理由1、2は検討を要しない。
また、申立理由4と取消理由3は、同じであるから、申立理由4は検討を要しない。
よって、以下では、本件訂正発明3〜4、6〜7、11〜24に対する申立理由1、2と申立理由3について検討する。

(1)本件訂正発明3〜4、11〜12に対する申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性
ア.甲1に記載された発明
甲1には、上記の1.(1)ア.(ア)で示したとおりの甲1発明が記載されている。

イ.本件訂正発明3〜4、11〜12の新規性進歩性の検討
本件訂正発明3〜4は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用し、本件訂正発明11〜12は、本件訂正発明8を直接又は間接的に引用するから、本件訂正発明3〜4、11〜12は、本件訂正発明1、8と同様の理由により、甲1に記載された発明といえず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(2)本件訂正発明6〜7に対する申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性
ア.甲1に記載された発明
甲1には、上記の1.(1)ア.(ア)で示したとおりの甲1発明が記載されている。

イ.本件訂正発明6〜7の新規性進歩性の検討
(ア)対比
本件訂正発明6〜7と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違している。

<相違点2>
本件訂正発明6〜7では、回転制御部に第1情報、第2情報、及び第3情報を出力する培養制御部を具備しており、当該培養制御部は、第1情報を出力する培養ステップと、第2情報を出力する溶液交換ステップと、第3情報を出力する溶液排出ステップとを実行するものであることが特定されているのに対して、
甲1発明では、このような第1情報を出力する培養ステップと、第2情報を出力する溶液交換ステップと、第3情報を出力する溶液排出ステップとを実行する培養制御部であって、回転制御部に第1〜3情報を出力する培養制御部が記載されていない点。

(イ)判断
上記相違点2について検討するに、甲1には、甲1発明において、溶液を交換する培養制御部を設けることが記載も示唆もされていないし、甲2〜6をみても、甲1発明で溶液を交換する培養制御部を設けることを動機付ける記載や示唆は何ら見当たらないので、相違点2として挙げた本件訂正発明6〜7の発明特定事項は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、申立書において、甲1には「溶液交換ステップ」についての明示の記載がないことを認めつつも、細胞培養の自動装置において溶液交換ステップが実行されることは自明であるから、「溶液交換ステップ」は実質的に差異を構成しない、と主張する。
しかしながら、甲1には、培養容器において溶液交換を実行するプログラムを有する培養制御部について記載も示唆もされてないので、細胞培養において溶液交換を行うことが一般的であったとしても、相違点2として挙げた本件訂正発明6〜7の発明特定事項が甲1に記載されているに同然であるとは認められないし、細胞培養において溶液交換を行うという一般的な事実のみから、溶液交換を実行するプログラムを有する培養制御部を甲1発明で設けることが当業者に容易に想到し得るものとも認められない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。

(エ)小括
以上のとおり、本件訂正発明6〜7は、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(3)本件訂正発明13〜18に対する申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性
ア.甲1に記載された発明
甲1には、上記の1.(1)ア.(ア)で示したとおりの甲1発明が記載されている。

イ.本件訂正発明13〜18の新規性進歩性の検討
(ア)対比
本件訂正発明13〜18と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違している。

<相違点3>
本件訂正発明13〜18では、培養容器の内面が、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有することが特定されているのに対して、
甲1発明では、細胞増殖バッグが、増殖させる細胞の付着が最大限に制限する特性を有することを特徴としている点。

(イ)判断
上記相違点3について検討するに、甲1には、細胞増殖バッグが、増殖させる細胞の付着が最大限に制限する特性を有することが特徴である旨が記載されているので(【請求項6】、段落【0013】)、培養容器の内面を細胞接着性が有するものとすることを当業者が動機付けられるとは認められない。また、甲2〜6をみても、甲1発明の細胞増殖バッグについて、上記の特徴に反するように、培養容器の内面を細胞接着性が有するものとすることについて示唆する記載は見当たらないので、相違点3として挙げた本件訂正発明13〜18の発明特定事項は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、申立書において、甲1の請求項6の記載から、細胞増殖バッグ(培養容器)の内面が接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有する点が開示されていること(主張1)、申立人意見書において、「壁」を除く細胞増殖バッグ(培養容器)の内面が接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有することを当業者は認識できること(主張2)、甲1の段落【0013】で具体的に例示されたFEPコポリマーとして細胞が接着可能なものが市販されていること(主張3)、を主張する。
しかしながら、甲1の請求項6の記載は、細胞増殖バッグの壁が、細胞の付着を最大限に制限する、すなわち、細胞接着性を有しない点が開示されているといえるので、細胞接着性を有する点は甲1に開示されておらず、上記主張1は理由がない。
また、甲1の請求項6の細胞増殖バッグ(54)の内面は、通常すべて壁であることが、甲1の図面の(54)を見ても明らかであり、「壁」以外の部分が存在するとしても、その部分を細胞接着性にすべきことが甲1に記載ないし示唆されているとはいえない。
よって、上記主張2も理由がない。
さらに、甲1の段落【0013】において、FEPコポリマーは、「増殖させる細胞との親和性が殆どな」いものとして例示されているから、細胞接着可能なある種のFEPコポリマーが市販されていたとしても、甲1に記載されたFEPコポリマー等から形成される細胞培養バッグは、細胞の接着が最大限制限されていると解するのが相当である。
よって、上記主張3も理由がない。

(エ)小括
以上のとおり、本件訂正発明13〜18は、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(4)本件訂正発明19〜24に対する申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性
ア.甲1に記載された発明
甲1に記載された発明は、上記1.(1)ア.(ア)のとおりである。

イ.本件訂正発明19〜24の新規性進歩性の検討
(ア)対比
本件訂正発明19〜24と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違している。

<相違点4>
本件訂正発明19〜24では、
回転制御部は、容器保持部を第1姿勢とした後、第1姿勢から支持面が180度回転された第4姿勢とすることが特定されているのに対して、
甲1発明では、ほぼ水平位置とほぼ垂直位置との間で該軸を中心に移動可能であることが記載されているだけで、180度回転することは記載されていない点。

(イ)判断
甲1発明の「細胞培養の自動装置」は、「細胞増殖バッグ(54)を支持するトレー(110)を備え、該トレーが、第1の水平軸(A)を中心に回動するように取り付けられ、かつ細胞の培養のためのほぼ水平位置と培養後の細胞の回収のためのほぼ垂直位置との間で該軸を中心に移動可能」とされたものであるから、甲1には、細胞増殖バッグの保持部を、水平位置とほぼ垂直位置との間の90度を限度に回転させることが記載されているに止まり、細胞増殖バッグを180度回転させることが記載ないし示唆されているとはいえない。むしろ、甲1の図19〜図24をみると、細胞増殖バッグを180度回転させると、細胞増殖バッグがトレーから落ちてしまい、甲1発明の「細胞培養の自動装置」を用いて細胞培養を行うという甲1発明の課題を達成することができなくなるものと解される。
そうすると、甲4〜6に、培養容器を180度回転させることが記載されていたとしても、甲1発明の「細胞培養の自動装置」において、細胞増殖バッグを180度回転させることが当業者に動機付けられるとは認められない。
したがって、相違点4として挙げた本件訂正発明19〜24の発明特定事項は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、申立書において、甲4〜6に記載されるとおり、培養容器を180度回転させることは周知技術であったから、相違点4として挙げた発明特定事項は当業者であれば容易に想到することができる、と主張し、申立人意見書においても、当該主張を援用している。
しかしながら、上記(イ)のとおり、細胞増殖バッグを180度回転させることが、周知技術であったとしても、甲1発明でそれを採用すると、甲1発明の課題を達成することができなくなるから、甲1発明で、そのような構成を採用することが動機付けられるとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。

(エ)小括
以上のとおり、本件訂正発明19〜24は、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(5)申立理由3(サポート要件)
ア.サポート要件の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ.本件明細書の記載事項
本a
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された細胞培養装置のように、完全に密閉されていない培養容器が用いられる手法では、培養容器が置かれる培養空間が無菌状態に保持される必要があり、装置が大型化しやすいという問題がある。また、培地交換や継代のために培養容器を扱うためのロボットアームやテーブルなどが配置される空間も無菌状態に保持されるという理由によっても、装置が大型化しやすいという問題が生じる。
【0005】
バッグのように内部空間を無菌状態に保持可能な培養容器が用いられる手法では、培養容器が配置される空間が無菌状態に保持される必要はない。しかし、バッグ形状の培養容器は撓みやすいので、培地交換や継代などにおいて、バッグの内部空間に対して液体を流出入させることが難しい。
【0006】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、培養容器を用いて容易に細胞培養ができる培養装置を提供することにある。

本b
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。

本c
【0027】
[培養装置10の概要]
図1に示されるように、培養装置10は、制御部11、冷蔵保存部12、常温保存部13及び2つの培養部14を備える。冷蔵保存部12及び常温保存部13は、培養部14の外部に設けられている。2つの培養部14は、上下に分かれて配置されている。制御部11は、ディスプレイ15を備えている。ディスプレイ15は、培養装置10の前面に配置されている。制御部11は、不図示のデータ入力部を有しており、データ入力部を通じて制御部11に細胞培養に関する種々の条件などが入力される。
【0028】
培養装置10は、制御部11に入力され保存されたプログラムに従い自動で細胞を培養する装置である。以下、培養装置10の構成要素が詳細に説明される。以下の説明において、図1における上下に沿って上下方向101が定義され、図1における左右に沿って左右方向102が定義され、上下方向101及び左右方向102と垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿って前後方向103が定義される。
【0029】
図2,3に示されるように、制御部11は、回転制御部20、培養制御部21、及び給排制御部22を有する。回転制御部20、培養制御部21、及び給排制御部22は、それぞれの制御対象の動作を制御するための演算装置であり、予めプログラムや情報が格納されている。培養制御部21は、回転制御部20及び給排制御部22に制御情報を出力する。また、培養制御部21は、培養部14の環境温度を制御するための制御情報を出力する。回転制御部20は、回転機構34と電気的に接続されており、回転機構34の駆動を制御するための制御情報を出力する。給排制御部22は、液体給排機構37と接続されており、液体給排機構37の各駆動部、すなわち供給ポンプ91,排出ポンプ92、及びバルブV1〜V18を駆動するための制御情報を出力する。
【0030】
図1に示されるように、冷蔵保存部12は、内部に試薬又は培地を貯留した容器を載置するための棚が形成された筐体である。冷蔵保存部12の前面には、筐体の前面に設けられた開口を開閉可能な扉が設けられている。冷蔵保存部12は、不図示の冷却機構を備える所謂冷蔵庫である。冷却機構により、冷蔵保存部12の内部の温度は、常温より低い任意の設定温度、例えば、約10℃や約4℃などに保たれる。常温保存部13は、内部に試薬又は培地を貯留した容器を載置するための棚を有する筐体である。
【0031】
冷蔵保存部12及び常温保存部13の内部に載置された容器は、試薬又は培地を液密に貯留可能なものである。容器としては、例えば、バッグ、ボトル、カセットなどが挙げられる。各容器は、内部の液体を流出可能にチューブなどが接続されており、液体給排機構37によって貯留された液体が流出可能である。

本d
【0064】
[培養装置10を用いた細胞培養方法]
以下に、培養装置10を用いた細胞培養方法が説明される。培養装置10を用いた細胞培養は、培養バッグ70,80,90のいずれか一つ又は複数を任意に選択して行うことができるが、以下には、培養バッグ70のみを用いた細胞培養方法が説明される。培養装置10を用いた細胞培養方法は、以下に示される各ステップを含む。
(1)培養バッグ70内で細胞を増幅する培養ステップ。
(2)培養バッグ70内の培地を交換する培地交換ステップ。
(3)培養バッグ70内の細胞懸濁液を回収する細胞懸濁液回収ステップ。
(4)サーババッグ40内の細胞懸濁液を濃縮する細胞懸濁液濃縮ステップ。
【0065】
培養装置10には、予め、培養回路がセットされる。詳細には、図3に示されるように、培養バッグ70,80,90が第1バッグ保持部31、第2バッグ保持部32、及び第3バッグ保持部33にそれぞれセットされ、濃縮装置120が濃縮装置支持部104にセットされ、サーババッグ39,40が容器収納部27,28にそれぞれ保持され、回収バッグ41が容器収納部29に保持される。また、貯留容器116,117が冷蔵保存部12又は常温保存部13に保持される。また、回路の各チューブ38が各バルブV1〜V18、供給ポンプ91、排出ポンプ92にセットされる。
【0066】
培養制御部21には、培養ステップ、培地交換ステップ、培養ステップ、細胞懸濁液濃縮ステップ、細胞懸濁液回収ステップが順次行われるように、予めユーザが設定を行っている。培養ステップにおける培養時間や、培地交換ステップにおける培地交換量、細胞懸濁液濃縮ステップにおける濃縮時間や培地供給量、細胞懸濁液回収ステップにおける剥離液との反応時間などの各種設定も、予めユーザが設定を行う。培養制御部21は、培養ステップにおいて各種設定情報を含む第1情報を出力し、培地交換ステップにおいて各種設定情報を含む第2情報を出力し、細胞懸濁液回収ステップにおいて各種設定情報を含む第3情報を出力する。また、培養制御部21は、細胞懸濁液濃縮ステップにおける各種設定情報を出力する。回転制御部20は、培養制御部21から出力される各情報に基づいて回転機構34の駆動を制御する。給排制御部22は、培養制御部21から出力される各情報に基づいて液体給排機構37(液体供給機構81及び液体排出機構82)の駆動を制御する。
【0067】
図11に示されるように、培養装置10における培養部14は、培養制御部21が培養開始の入力を受け付けることにより、予備動作を行う。詳細には、培養制御部21からの制御情報に基づいて加温装置及びCO2供給装置が駆動されることにより、培養部14の温度が37℃に、二酸化炭素の濃度が5%に調節される(ステップS11)。続いて、回転制御部20は、第1バッグ保持部31が第1姿勢であるか否かを判定する(ステップS12)。第1バッグ保持部31が第1姿勢でない場合、すなわち回転機構34におけるステッピングモータが原点位置にないと回転制御部20が判定したときは(ステップS12:No)、回転制御部20が回転機構34のステッピングモータを原点位置となるまで回転する。これにより、図12に示されるように、第1バッグ保持部31が、支持面65,66を水平方向に沿った第1姿勢で停止する(ステップS13)。第1バッグ保持部31が第1姿勢であるときは(ステップS12:Yes)、回転制御部20は回転機構34を駆動しない。なお、第1姿勢における支持面65,66は、ほぼ水平方向に沿っていればよく、厳密に水平方向に沿っている必要はない。また、各バルブV1〜V18は、チューブ38を閉状態とする。
【0068】
続いて、給排制御部22は、培養バッグ70に細胞懸濁液を供給する(ステップS14)。培養バッグ70への細胞懸濁液の供給は、液体供給ステップに従って行う。詳細には、図13に示されるように、第1バッグ保持部31が第1姿勢で停止しているときに、重量検出部23は、培養バッグ70及び第1バッグ保持部31の重量を検出する。重量検出部23から出力された重量の情報に応じて、制御部11は、第1基準値を設定する(ステップS121)。続いて、制御部11は、培養バッグ70に供給すべき細胞懸濁液の重量を第1基準値に加えた値を第1目標値として算出する。培養バッグ70に供給すべき液体の重量は、培養バッグ70に供給すべき細胞懸濁液の容量に基づいて算出することができる。なお、細胞懸濁液や培地、剥離液などの各種液体の比重を近似的に1として容量(mL)=重量(g)として扱ってもよい。なお、ステップS14において、培養バッグ70に細胞懸濁液を供給しているが、ステップS14を省略し、手動で予め培養バッグ70に細胞懸濁液を充填してもよい。
【0069】
給排制御部22は、第1バッグ保持部31が第1姿勢で停止しているときに、液体供給機構81を駆動させて、培養バッグ70に液体を供給する。詳細には、バルブV6,V9が開状態とされる(ステップS122)。続いて、供給ポンプ91が駆動される(ステップS123)。サーババッグ40には、予め培養すべき細胞を含む細胞懸濁液が貯留されている。したがってサーババッグ40から細胞懸濁液が、ポート73を通じて培養バッグ70へ供給される。培養バッグ70に細胞懸濁液が供給されている間に、すなわち供給ポンプ91が駆動されている間に、制御部11は、距離センサ67が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する(ステップS124)。制御部11は、距離センサ67の出力値が閾値を超えたと判定すると(ステップS124:Yes)、ブザー音を発生させたり、ライトを点灯したりして警報を発する(ステップS126)。そして、給排制御部22は、供給ポンプ91を停止する(ステップS128)。
【0070】
制御部11は、供給ポンプ91が駆動されてから予め設定された時間が経過したか否かを監視する(ステップS125)。時間としては、供給ポンプ91が培養バッグ70に最大量の液体を供給するに十分な時間より長い時間が設定されている。制御部11は、供給ポンプ91が駆動されてから予め設定された時間が経過したと判定すると(ステップS125:Yes)、前述と同様にして警報を発し(ステップS126)、給排制御部22は、供給ポンプ91を停止する(ステップS128)。
【0071】
制御部11は、供給ポンプ91が駆動されている間に、重量検出部23の出力値が第1目標値に到達したか否かを監視する(ステップS127)。制御部11が、重量検出部23の出力値が第1目標値に到達したと判定すると(ステップS127:Yes)、給排制御部22は、供給ポンプ91を停止し(ステップS128)、また、バルブV6,V9を閉状態とする(ステップS129)。これにより、培養バッグ70への細胞懸濁液の供給(液体供給ステップ)が終了する(ステップS14)。
【0072】
続いて、図11に示されるように、回転制御部20は、回転機構34を駆動して、第1バッグ保持部31を反時計回りに90度回転する。これにより、図14,15に示されるように、第1バッグ保持部31は、支持面65,66が鉛直方向に沿い、かつポート74が上方にあり、ポート73が下方にある第3姿勢となる(ステップS15)。第3姿勢の第1バッグ保持部31に保持された培養バッグ70おいて、上方にあるポート74の縁88には、内部空間75に進入した気体が集まる。縁88は、ポート74へ向かうテーパ形状なので、縁88に沿って移動する気体がポート74に集まる。なお、第3姿勢における支持面65,66は、概ね鉛直方向にそっていればよく、必ずしも厳密に鉛直方向に沿っている必要はない。
【0073】
第1バッグ保持部31が第3姿勢にされた後、給排制御部22は、バルブV6,V9を閉状態とし、バルブV13,V15を開状態とする。続いて、給排制御部22は、排出ポンプ92を駆動する。これにより、培養バッグ70のポート74から液体又は気体が排出される。培養バッグ70に細胞懸濁液が供給されるときに、培養バッグ70の内部空間75に気体が残っているときにはポート74を通じて内部空間75から気体が排出される(ステップS16)。これにより、予備動作が終了する。
【0074】
予備動作が終了した後、培養制御部21は、培養ステップ(ステップS17)、培地交換ステップ(ステップS18)、培養ステップ(ステップS19)、細胞懸濁液回収ステップ(ステップS20)を順次行う。各ステップの詳細は後述される。細胞懸濁液回収ステップの後、培養制御部21に、継代を行う旨の指示が入力されていれば(ステップS21:Yes)、継代を行うべく、別の培養バッグ80,90に回収された細胞懸濁液が供給される(ステップS22)。継代を行う旨の指示が入力されていないときは(ステップS22:No)、培養制御部21は、継代を行わない。その後に細胞懸濁液濃縮ステップ(ステップS23)が行われる。

ウ.本件訂正発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0006】の記載(本a)によると、本件訂正発明が解決しようとする課題は、培養容器を用いて容易に細胞培養ができる培養装置を提供することにあると認められる。

エ.本件発明1のサポート要件の判断
本件明細書には、発明の一実施態様として、培養容器、容器保持部、回転機構、液体給排機構、回転制御部を備える培養装置の概要が具体的に記載されており(本c)、培養装置を用いた培養方法も具体的に記載されていることから(本d)、本件訂正発明の培養装置が、培養容器を用いて容易に細胞培養ができる培養装置であることは、当業者に理解できるといえる。
そうすると、本件訂正発明1〜7、10〜24は、いずれも、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、上記ウ.の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。

オ.申立人の主張
申立人は、本件訂正前発明の課題は、培養容器が撓むことにより液体を流入させることが難しくなることであり、本件明細書でも、一貫して培養容器が「可撓性」を有することを前提とした説明がなされているが、本件訂正前の請求項1の「培養容器」は、「可撓性を有する」ことの特定はなされていないから、本件訂正前の1〜7、10〜12は、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである、と主張する。
しかしながら、本件訂正発明の課題は、上記ウ.のとおり、培養容器を用いて容易に細胞培養ができる培養装置を提供することである。
そして、本件明細書においては、培養装置の説明(本c)では、「培養容器」という用語で説明されており、培養容器が可撓性を有することを前提として発明の説明がされているとは認められない。仮に、当該培養装置の説明において、培養容器が可撓性を有することを前提に説明されていると解釈できたとしても、申立人が申立書で認めているとおり、培養容器としては、様々な材質、形状のものが知られているから、可撓性を有する培養容器は「一実施態様に過ぎ」ないものと認められ(本b)、培養容器が可撓性でなければ、上記ウで示した課題が解決できないとも解されない。
したがって、申立人の上記主張は理由がない。

カ.小括
本件訂正発明1〜7、10〜24は、いずれもサポート要件を満たすものであるから、申立理由3(サポート要件)は、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、本件訂正については、適法であるから、これを認める。
また、本件特許に係る特許異議申立てにおいて申立人が主張する申立理由は、いずれも理由がないから、本件訂正発明1〜8、10〜24に係る特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件訂正発明1〜8、10〜24に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とするようにプログラムされている培養装置。
【請求項2】
上記液体給排機構を制御する給排制御部を更に備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる請求項2に記載の培養装置。
【請求項4】
上記液体給排機構を制御する給排制御部を更に備え、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる請求項1に記載の培養装置。
【請求項5】
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う請求項1から4のいずれかに記載の培養装置。
【請求項6】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報、上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報、及び上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報を出力する培養制御部を具備しており、
上記回転制御部は、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記培養制御部は、
上記第1情報を出力する培養ステップと、
上記第2情報を出力する溶液交換ステップと、
上記第3情報を出力する溶液排出ステップと、を実行する培養装置。
【請求項7】
上記培養制御部は、上記溶液交換ステップにおいて、上記液体給排機構を駆動して、上記培養容器内の溶液の一部又は全てを交換する請求項6に記載の培養装置。
【請求項8】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能であり可撓性を有する培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行うようにプログラムされている培養装置。
【請求項9】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能であり可撓性を有する培養容器と、
上記培養容器を挟んで保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報及び上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報を上記回転制御部に出力する培養制御部と、を備え、
上記培養制御部は、
培養ステップにおいて上記第1情報を上記回転制御部に出力し、
培地交換ステップにおいて上記第2情報を出力し、上記液体給排機構を駆動して、上記培養容器内の溶液を交換し、
上記回転制御部は、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記第2情報に応じて、上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とする培養装置。
【請求項10】
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である請求項1から9のいずれかに記載の培養装置。
【請求項11】
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有する請求項8又は9に記載の培養装置。
【請求項12】
上記回転制御部は、上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とする請求項8,9又は11のいずれかに記載の培養装置。
【請求項13】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とする培養装置。
【請求項14】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。
【請求項15】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。
【請求項16】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。
【請求項17】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。
【請求項18】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器の内面は、接着性細胞を培養するに適した細胞接着性を有し、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。
【請求項19】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とする培養装置。
【請求項20】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させる培養装置。
【請求項21】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記回転制御部は、上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記容器保持部を上記第2姿勢又は上記第3姿勢とし、
上記給排制御部は、
上記第2情報又は上記第3情報に応じて、上記液体給排機構に、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において下方に位置するポートから上記培養容器内の溶液を流出させ、
上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。
【請求項22】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、
上記液体給排機構を制御する給排制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記給排制御部は、上記液体給排機構に、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器のポートから培地を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に剥離液を流入させるステップと、
上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から剥離液を流出させるステップと、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器に培地を流入させるステップと、
上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器から細胞懸濁液を流出させるステップと、を実行させる培養装置。
【請求項23】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記培養容器は、上記容器保持部に保持された状態において、上記回転軸と直交する方向の両端側にそれぞれ上記ポートを有するものであり、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第1姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器においていずれか一方のポートから上記培養容器内へ溶液を流入させ、上記第2姿勢又は上記第3姿勢の上記容器保持部に保持された上記培養容器において上方に位置するポートから所定量の吸引を行う培養装置。
【請求項24】
液体が流通するポートを有しており、内部空間において細胞培養が可能な培養容器と、
上記培養容器を保持する保持板、及び回転軸を有する容器保持部と、
上記回転軸を支持して回転させる回転機構と、
上記培養容器へ液体を供給及び排出する液体給排機構と、
上記回転機構の回転を制御する回転制御部と、を備え、
上記回転制御部は、
上記培養容器において細胞培養が行われることを示す第1情報に応じて、上記容器保持部を上記保持板における上記培養容器を支持する支持面が略水平方向に沿った第1姿勢とし、
上記培養容器において溶液交換が行われることを示す第2情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が水平方向及び鉛直方向のいずれにも沿っていない第2姿勢とし、
上記培養容器から溶液が排出されることを示す第3情報に応じて、少なくとも上記ポートから上記培養容器内の溶液が流出されるとき、上記容器保持部を上記支持面が略鉛直方向に沿った第3姿勢とし、
上記第1情報に応じて、上記容器保持部を上記第1姿勢とした後、上記第1姿勢から上記支持面が180度回転された第4姿勢とし、
上記第2姿勢は、上記支持面が水平方向に対して鋭角をなす角度が20度以上70度以下である培養装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-08-09 
出願番号 P2017-520719
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C12M)
P 1 652・ 113- YAA (C12M)
P 1 652・ 537- YAA (C12M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 福井 悟
特許庁審判官 吉森 晃
高堀 栄二
登録日 2021-04-19 
登録番号 6870610
権利者 ニプロ株式会社
発明の名称 培養装置  
代理人 松田 朋浩  
代理人 松田 朋浩  
代理人 西木 信夫  
代理人 西木 信夫  

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