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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 特174条1項  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1390589
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-31 
確定日 2022-10-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6975216号発明「ジルコニア焼結体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6975216号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 結論
特許第6975216号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由
第1 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録(特許掲載公報発行)に至るまでの経緯
特許第6975216号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成25年5月2日に出願された特願2013−97058号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年6月7日に新たな特許出願(特願2018−109189号、以下、「親出願」という。)とし、さらに、この親出願の一部を令和1年11月27日に新たな特許出願(特願2019−214111号)としたものであって、その後の特許掲載公報発行までの手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 1年12月26日 手続補正書の提出
令和 2年10月20日付け 拒絶理由通知
同年12月25日 意見書の提出
令和 3年 5月 7日付け 拒絶査定
同年 8月 4日 拒絶査定に対する不服審判請求(以下、こ
の拒絶査定不服審判事件を「別件拒絶査定
不服審判事件」という。)及び手続補正書
の提出
同年10月29日付け 特許査定
同年11月 9日 特許権の設定登録
同年12月 1日 特許掲載公報の発行

2 本件特許異議申立事件の経緯
本件は、設定登録時の請求項1、2に係る特許に対して、令和4年5月31日に特許異議申立人末吉直子(以下、「申立人1」という。)により、同年6月1日に特許異議申立人中丸剛(以下、「申立人2」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
ジルコニア及びその安定化剤を含有するジルコニア焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において、
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず、
前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
【請求項2】
前記第1点から前記第2点に向かってL*値は増加傾向にあり、a*値及びb*値は減少傾向にあることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア焼結体。」

第3 特許異議の申立てについて
1 特許異議申立理由の概要
(1) 申立人1が主張する特許異議申立理由
申立人1が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人1が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証 「オリンパスニュースリリース:歯科関連機器市場へ参入、
歯科用測色装置「Crystaleye(クリスタルアイ)」を国内よ
り発売」、[online]、2006年、オリンパス株式会社、
インターネット<https://www.olympus.co.jp/jp/news/2006
b/nr061113crystalj.html>
甲第2号証 「クリスタルアイ取扱説明書−クイックオペレーションガイ
ド−(新規導入ユーザー様用)」、オリンパス株式会社、2
009年、表紙、第29頁、第53頁、第54頁、第83
頁、裏表紙
甲第3号証 特開2009−22433号公報
甲第4号証 特開2003−192518号公報
甲第5号証 別件拒絶査定不服審判事件における令和3年8月4日付け審
判請求書
甲第6号証 特開2018−168062号公報
(以下、申立人1が提出した上記甲第1号証〜甲第6号証をそれぞれ「甲1」〜「甲6」という。)
ア 申立理由1−1(明確性要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(2)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 申立理由1−2(実施可能要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が後記4(4)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第4号第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ウ 申立理由1−3(サポート要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(3)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
エ 申立理由1−4(甲6を主たる証拠とした新規性進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する、又は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。

(2) 申立人2が主張する特許異議申立理由
申立人2が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人2が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証 特開2014−218389号公報
甲第2号証 特開2018−168062号公報
甲第3号証 「クリスタルアイ取扱説明書−クイックオペレーションガイ
ド−(新規導入ユーザー様用)」、オリンパス株式会社、2
009年、表紙、第2頁、第16頁〜第18頁、第83頁、
裏表紙
甲第4号証 大野知子他、「非接触型歯科用分光光度計を用いた漂白効果
と後戻りの評価」、日歯保存誌、2013年、第56巻、第
1号、第69頁〜第77頁
甲第5号証 秋山麻沙子他、「審美修復におけるレジンセメントの色調の
研究−試験片の厚さが色調に及ぼす影響−」、顎咬合誌、2
010年、第30巻、第3号、第196頁〜第201頁
甲第6号証 特開平10−36136号公報
甲第7号証 特開2009−22433号公報
甲第8号証 特開2003−192518号公報
甲第9号証 山本愛他、「歯冠用硬質レジンの色調再現性について 第2
報 築盛方法の検討」、日歯技工誌、2001年、第22
巻、第2号、第312頁
甲第10号証 清水裕次他、「硬質レジンの色調再現性について−シェー
ドガイドとの色差−」、日本歯科技工学会雑誌(第27回
学術大会講演後抄録)、平成17年12月20日、第26
巻、第2号、第233頁
甲第11号証 横山典子他、「歯冠形態製作のためのCAD/CAM用セ
ラミックブロックの色彩学的検討」、日補綴会誌、201
0年、第2巻、第2号、第88頁〜第97頁
甲第12号証 特開2017−128466号公報
甲第13号証 独国特許出願公開第102006024489号明細書
(以下、申立人2が提出した上記甲第1号証〜甲第13号証をそれぞれ「甲1’」〜「甲13’」という。また、申立人2が提出した甲2’、甲7’、甲8’は、それぞれ、申立人1が提出した甲6、甲3、甲4と同じ証拠である。)
ア 申立理由2−1(新規事項の追加
令和1年12月26日提出の手続補正書でした補正が後記4(1)アの点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
イ 申立理由2−2(実施可能要件・委任省令要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が後記4(4)ア(イ)の点で不備のため、特許法第36条第4号第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ウ 申立理由2−3(サポート要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(3)ア(イ)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
エ 申立理由2−4(明確性要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(2)ア(イ)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
オ 申立理由2−5(甲1’又は甲2’を主たる証拠とした新規性欠如)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲1’又は甲2’に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
カ 申立理由2−6(甲13’を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲第13’号証に記載された発明及び甲4’に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 各甲号証の記載事項
(1) 甲3(甲7’、特開2009−22433号公報)の記載事項
「【0006】
しかしながら、歯科充填材料自体は半透明であるため、背景色によって、見え方が異なる。例えば、白色の練和紙上で確認した色調と口腔内という暗い環境における色調とでは、見え方が大きく異なる。このため、白色の練和紙上で確認した色調が口腔内で使用した際の色調を必ずしも反映しているとは言えない。」

(2) 甲4(甲8’、特開2003−192518号公報)の記載事項
「【0021】上記L*、a*およびb*の測定は、試料厚さ7mmで行う。本発明の歯科用結晶性ガラスは通常透明〜半透明であり、表面反射に加えて、透過光の反射・散乱がL*、a*およびb*の測定値に大きく影響を与えるため一定の厚さで測定する必要がある。試料厚さが薄い場合には背景色の影響をつよく受けるため、切端部や漂白歯の色調を良好に再現できないような色調のガラスでも前記式(1)および(2)を満たす場合がある。また、試料厚さが厚い場合には吸収が大きすぎて一般に測定が困難である。」

(3) 甲5’(秋山麻沙子他、「審美修復におけるレジンセメントの色調の研究−試験片の厚さが色調に及ぼす影響−」、顎咬合誌、2010年、第30巻、第3号、第196頁〜第201頁)の記載事項
ア 「V.測色方法および判定
歯冠色陶材,支台歯陶材,マスキング陶材について分光光度計(CM−2002コニカミノル社製)にて測色を行った.測色時の背景色は黒,白の二種類を用いた.表色は,L*a*b*表色系を用いた(CIE1976L*a*b*均等色空間9)).なお,表色系のL*値は単独で明暗を表し,増加すると白,減少すると黒を表す.また,a*値,b*値は色度を表し,a*値は+(プラス)側が赤,−(マイナス)側が緑を,b*値は+(プラス)側が黄色,−(マイナス)側が青を表す.なお,マスキング陶材については吸光光度計(U−3310日立社製)を使用し,透過率を測定した.」(第198頁右欄)
イ 「I.背景色の設定(図1)
すべての材料で,背景色は,黒より白の方が明確な傾向を示した.そのため今回は,より明確な傾向を得るために背景色を白について検討することとした.」(第199頁左欄)

(4) 甲6’(特開平10−36136号公報)の記載事項
「【0052】得られたセラミックスの透光性、明度の評価には下記の方法を用いた。析出結晶の同定の場合と同様にガラス材を直径10mm、厚み2mmの円柱状に加工し、所定の熱処理を施し表面をダイヤモンドペーストにより鏡面に仕上げて色差計(日本電色社 TC-1800MKII)を用いて黒板をバックにして測定したY値と白板をバックにして測定したY値の比からコントラスト比を算出し、またJIS Z 8729に従ってL*を測定し明度を得た。なおコントラスト比はその数値が大きいほど不透明であり、L*はその数値が大きい程明るい色であることを示している。結果を各表にまとめた。」

(5) 甲9’(山本愛他、「歯冠用硬質レジンの色調再現性について 第2報 築盛方法の検討」、日歯技工誌、2001年、第22巻、第2号、第312頁)の記載事項
「B.実験方法
実験にはインフィス,グラディア,ソリデックス,アートグラス,エステニアの5種類の市販硬質レジンを使用し,試料は全てビタシェードA3基本色となるペーストを用いた.各メーカー指示の重合器,重合方法で試料を製作し,L*(明度),a*b*(彩度,色相)を,分光放射型非接触タイプPhoto Research社のModel PR-650 Spectra Colorimeterで測色した.バックは黒布とし3項目の実験を行った.」(第312頁左欄)

(6) 甲10’(清水裕次他、「硬質レジンの色調再現性について−シェードガイドとの色差−」、日本歯科技工学会雑誌(第27回学術大会講演後抄録)、平成17年12月20日、第26巻、第2号、第233頁)の記載事項
「B.実験方法
シェードガイドとして,VITAクラシックシェードガイド(・・・),VINTAGE Haloシェードガイド(・・・),エンデュラシェードガイド(・・・)を選び,A3のシェードガイドを分光測色計(CM-503i,コニカミノルタ)を用いて,標準白色板上で試料の中心付近3カ所を測色し,その平均を試料の測色値とした.・・・」(第233頁左欄)

(7) 甲11’(横山典子他、「歯冠形態製作のためのCAD/CAM用セラミックブロックの色彩学的検討」、日補綴会誌、2010年、第2巻、第2号、第88頁〜第97頁)の記載事項
「2)測色背景の製作
セラミックサンプルを測色する際の測色背景にIPS(R) Natural Die Material(Ivoclar社製)(以下NDと略す)のシェード1,2,7を用いた.NDは支台歯の色調を再現する光重合型レジンで,オールセラミック修復物の製作時に口腔内環境の再現を可能にする歯科用材料である.各NDから円板状試料を製作し,サンプル表面を耐水ペーパー1500番まで研磨し直径10.0mm厚さ8.0mmになるよう調整した.
3)測色方法
測色装置として歯科用測色装置Crystaleye Spectrophotometer(R)(オリンパス社製)を用いた.セラミックサンプルについては,口腔内環境を想定し暗箱内に設置したND上にセラミックサンプルをのせ撮像を行った.その際,NDとセラミックサンプルとの間に無色透明であるグリセリンを介在させ試料を密着させることにより,光の拡散および反射を最小限にし測定した.」(第89頁右欄)

(8) 甲13’(独国特許出願公開第102006024489号明細書)の記載事項
ア 「[0003] Da bei dem natuerlichen Erscheinungsbild eines Zahnes die Intensitaet der Farbwirkung und der Truebung von der Schneide zum Zahnhals hin steigt, werden glaskeramische Verblendkeramiken in unterschiedlichen Farbintensitaeten und Truebungen hergestellt. Diese unterschiedlichen Massen werden vom Zahntechniker zu einem mehrschichtigen Aufbau auf einer unifarbenen Gerueststruktur z.B. aus Oxidkeramik verwendet, um somit die Form und Farbe der natuerlichen Zaehne zu imitieren.」
(当審仮訳:[0003]歯の自然な外観において、切歯から歯顎までの色効果及び濁りの強度は強まるので、ガラスセラミックの混合セラミックはさまざまな色強度及び濁りにおいて製造される。歯科技工士は、天然の歯の形状及び色を模倣するために、これらの異なる質量を使用して、酸化物セラミックなどの単色のフレーム構造上に多層構造を作製する。)
イ 「[0010] Ein derartiges Verfahren soll die Herstellung von pulvertechnologisch hergestelltem Zahnersatz, insbesondere Kronen, mit mindestens zwei Farbtoenen oder einem Farbgradienten erlauben, ohne dass die Formtreue der so hergestellten Keramik beeintraechtigt wird. Zur Durchfuehrung dieses Verfahrens soll ein besonders angepasster Gruenkoerper bereitgestellt werden.」
(当審仮訳:[0010]前記方法は少なくとも2つの色調又は色勾配を備える粉末技術で作製された義歯、特に歯冠の作製を、この方法で製造されたセラミックの形状安定性に影響を及ぼすことなく可能とする。この方法を実施するために特に適切な粉末成形体を準備する必要がある。)
ウ 「[0013] Jedes dieser Pulvermischungen (Granulate) enthaelt jeweils
- ein keramisches Pulver, vorzugsweise yttriumstabilisiertes ZrO2, und
- faerbende Metallverbindungen, bevorzugt einen Anteil von bis zu 10 Gew.%, besonders bevorzugt bis zu 5 Gew.%, insbesondere Oxide von Uebergangselementen, vorzugsweise von Cu, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, V, Nd oder Pr, und/oder Farbpigmente, bevorzugt einen Anteil von bis zu 20 Gew.%, besonders bevorzugt bis zu 10 Gew.%, insbesondere auf Zirkon- oder Baddeleyit-Basis.」
(当審仮訳:[0013]これらの粉末混合物(顆粒)のそれぞれには以下を含んでいる。
−セラミック粉末、特にイットリウム安定化ZrO2、及び、
−好ましくは10重量%まで、特に好ましくは5重量%までの着色金属化合物、特にCu、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、V、Nd又はPrである遷移金属の酸化物、及び/又は、好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%までの着色顔料、特にジルコニウム又はバデライトベースのもの。)
エ 「Ausfuehrungsbeispiel 3
[0045] Zwei Granulate F und G wurden aus ZrSi2, ZrO2, MgO, Al2O3, einem siliziumhaltigen Polymer, einem Presshilfsmittel sowie mindestens 1 Gew.% eines Mineralisierers hergestellt. Granulat F enthielt darueber hinaus bis zu 7 Gew.% eines Farbpigments auf Baddeleyit-Basis. Zur Einfaerbung auf dentale Grundfarben wurde den Granulaten F und G gemaess Tabelle 6 unterschiedliche Mengen an Mischungen faerbender Metalloxide zugegeben, die MnO2, Pr6O11, Fe2O3 und CuO enthielten:

[0046] Die in Tabelle 6 aufgefuehrten Zusammensetzungen fuehrten bei den bei 1450 ℃ dicht gesinterten Koerpern F', G' der Granulate F, G zu deutlich erkennbaren Farbunterschieden, die in Tabelle 7 als L*a*b*-Werte (jeweils Mittelwerte aus 5 Einzelmessungen) angegeben sind:

[0047] Zur Herstellung eines zweifach geschichteten zylindrischen Formkoerpers wurden ca. 5 g des Granulats F in eine Pressmatrize gegeben und hierauf ca. 5 g des Granulats G geschuettet. Zur Herstellung eines fuenffach geschichteten zylindrischen Formkoerpers wurden aus den Granulaten F und G jeweils ca. 2 g Mischungen mit den prozentualen Anteilen aus Tabelle 8 hergestellt und uebereinander in eine Pressmatrize gegeben:

[0048] Anschliessend wurden die betreffenden Granulate jeweils axial zu einem zylindrischen Formkoerper verdichtet und bei ca. 350 MPa kaltisostatisch verdichtet.
[0049] Aus diesen Formkoerpern wurden gut zu vermessende Formkoerper gefraest und sowohl vor als auch nach dem Sintern bei 1450 ℃ vermessen. Die Formkoerper bestanden im oberen Teil aus Granulat F und im unteren Teil aus Granulat G. In Tabelle 9a und 9b sind jeweils die Mittelwerte der Laengen und Breiten von zwei zweifach bzw. fuenffach geschichteten Formkoerpern vor und nach dem Sintern aufgefuehrt:


[0050] Die gemessenen Laengenaenderungen lagen in einem Bereich von ± 0,1%, d.h. es trat kein Sinterschwund auf. Da der Formkoerper sowohl vor als auch nach dem Sintern die gleiche Form aufwies, erfolgte die Sinterung formtreu und schwindungsfrei.」
(当審仮訳:例3
[0045]2つの顆粒F及びGが、ZrSi2、ZrO2、MgO、Al2O3、ケイ素含有ポリマー、プレス補助剤、及び、少なくとも1重量%の分解剤から作製された。顆粒Fはさらに7重量%までのバデライトベースの着色顔料を含んでいた。歯科用基本色の色付けのために、顆粒F及びGを表6に従って、MnO2、Pr6O11、Fe2O3及びCuOを含む異なる量の色付け酸化物の混合物を与えた。

[0046]表6に示されている組成により、1450℃で高密度に焼結された顆粒F及びGの焼結体F’及びG’は明らかに色の変化を認識でき、表7において、L*a*b*値として示されている(それぞれ5つの測定の平均値)。

[0047]顆粒Fを約5gプレス型に入れ、その上に顆粒Gを約5g流し込み、2層の円筒形状の成形体を作製した。5層の円筒形状の成形体を製造するために、表8の割合の顆粒F及びGの混合物をそれぞれ約2g作製し、プレス金型に重ねて配置した。

[0048]次に、これらの顆粒を軸方向に圧縮して円筒形状にし、約350MPaで冷間静水圧圧縮した。
[0049]これらの成形体から測定しやすい成形体をフライス加工し、1450℃での焼結前後で測定した。成形体は、上部が顆粒F、下部が顆粒Gで構成されており、表9aと9bには、2層又は5層の2つの成形体の長さと幅の平均値を示している。


[0050]測定された長さの変化は±0.1%の範囲内であった。すなわち、焼結収縮はなかった。成形体は焼結前後で同じ形状であったため、収縮することなく形状どおりに焼結できた。)

4 当審の判断
事案に鑑み、申立人1及び申立人2がそれぞれ主張する申立理由について、新規事項の追加に係る申立理由(申立理由2−1)、明確性要件違反に係る申立理由(申立理由1−1、申立理由2−4)、サポート要件違反に係る申立理由(申立理由1−3、申立理由2−3)、実施可能要件違反に係る申立理由(申立理由1−2、申立理由2−2)、新規性及び進歩性欠如に係る申立理由(申立理由1−4、申立理由2−5、申立理由2−6)の順に纏めて検討する。

(1) 申立理由2−1(新規事項の追加)について
ア 具体的な指摘事項
申立理由2−1は、要するに、審査段階における令和1年12月26日提出の手続補正書によって追加された、本件発明1の「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項は、(i)本件特許に係る願書に最初に添付された明細書(以下、「本件当初明細書」という。)の段落【0059】に「第1点Aと第4点Dの色差をΔE*ab4としたとき、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dの色度に上記関係がある場合、例えば、ΔE*ab4は30以下であると好ましい。」との記載があるところ、「上記関係」が、同段落【0051】及び【0052】に記載された「第1点A、第2点B、第3点C及び第4点DにおけるL*a*b*表色系(JISZ8729)によるジルコニア焼結体10の色度(L*,a*,b*)を(L1,a1,b1)、(L2,a2,b2)、(L3,a3,b3)及び(L4,a4,b4)とする」ときの「L1<L2<L3<L4」、「a1>a2>a3>a4」、「b1>b2>b3>b4」との「大小関係」を意味するものであることから、当該「大小関係」の特定のない前記発明特定事項は、本件当初明細書に記載されたものでないこと、及び、(ii)同段落【0059】に記載された「第4点D」は、同段落【0050】に記載された「他端Qから、全長の25%〜45%までの区間にある」「第4点D」であって、「前記他端から全長の25%までの区間にある」ことは記載されていないから、前記発明特定事項の「前記他端から全長の25%までの区間にある第2点」は、本件当初明細書に記載されたものでないことを論拠として、前記発明特定事項を追加する補正は新規事項を追加するものである、というものである。
新規事項の追加の有無についての検討
(ア) 本件当初明細書の段落【0059】には、「第1点Aと第4点Dの色差をΔE*ab4としたとき、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dの色度に上記関係がある場合、例えば、ΔE*ab4は30以下であると好ましい。」と記載されている。
(イ) 同段落【0059】の記載における「上記関係」は、同段落【0046】〜【0058】の記載をふまえると、同段落【0048】に記載されている「ジルコニア焼結体10の一端Pから他端Qに向かう第2方向Yに延在する直線上において、L*値、a*値及びb*値の増加傾向又は減少傾向は逆方向に変化しない」ことを意味していると解釈するのが自然である。
そして、このような関係は、当該補正前後の請求項1に係る発明及び本件発明1において、「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化しない」と特定されている。
(ウ) 同段落【0059】の記載における「第1点A」及び「第4点D」について、同段落【0050】に「第1点Aは、一端Pから、一端Pと他端Q間の長さ(以下、「全長」という)の25%〜45%までの区間にあると好ましい。・・・第4点Dは、他端Qから、全長の25%〜45%までの区間にあると好ましい。」と記載されており、この記載は、「第1点A」が「一端Pから全長の25%までの区間」乃至「一端Pから全長の45%までの区間」にあることや、「第4点D」が「他端Qから全長の25%までの区間」乃至「他端Qから全長の45%までの区間」にあることを示していることから、前記発明特定事項における「前記一端から全長の25%までの区間にある第1点」及び「前記他端から全長の25%までの区間にある第2点」は、本件当初明細書に記載されたものである。
(エ) 前記(ア)〜(ウ)での検討を併せ考えると、補正前の請求項1に係る発明に「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項を追加する補正は、本件当初明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、当該補正は新規事項を追加するものであるということはできない。
ウ 申立理由2−1についての結論
以上のとおりであるから、申立理由2−1に理由はない。

(2) 申立理由1−1及び申立理由2−4(明確性要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
(ア) 申立理由1−1は、要するに、(i)本件特許に係る願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)には、L*a*b*表色系による色度を「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」で測定するための具体的な条件が特定されていないこと、(ii)本件発明1の「前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*ab」は、それぞれの区間に含まれる全ての第1点と第2点との色差ΔE*ab、あるいは、任意の第1点と第2点との色差ΔE*abのいずれを示しているのかが定かでないこと、及び、(iii)本件発明1の「ジルコニア及びその安定化剤を含有するジルコニア焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において」との発明特定事項における「ジルコニア焼結体」が、末尾の「ジルコニア焼結体」と同じであるのかが定かでないことを論拠として、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載は明確でない、というものである。
(イ) 申立理由2−4は、要するに、(iv)本件発明1における「色差ΔE*abが30以下である」ことの技術的意義を理解できないこと、及び、(v)本件明細書には、L*a*b*表色系による色度を「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」で測定するための具体的な条件が特定されていないことを論拠として、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載は明確でない、というものである。
明確性要件違反についての検討
(ア) 事案に鑑み、上記(iii)の点について検討すると、本件発明1の「ジルコニア及びその安定化剤を含有するジルコニア焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において」との発明特定事項は、「色度を測定した結果において」と記載されていることからして、本件発明1の「ジルコニア焼結体」の色度の測定方法を特定していることは明らかである。加えて、本件明細書の「なお、各点の色度は、各点に対応する組成物単独のジルコニア焼結体を作製し、当該ジルコニア焼結体の色度を測定することによって求めることができる。」(段落【0051】)及び「そこで、第1粉末、第2粉末、第3粉末、及び第4粉末について、それぞれ単独の焼結体を作製し、L*a*b*表色系による色度を測定した。」(段落【0107】)との記載等も参酌すれば、前記発明特定事項における「ジルコニア焼結体」は、「第1点」又は「第2点」に対応する組成物単独の色度測定用の「ジルコニア焼結体」であって、本件発明1に係る請求項1の末尾に記載された「ジルコニア焼結体」(すなわち、本件発明1の「ジルコニア焼結体」)と異なることは明らかである。
(イ) 上記(i)及び(v)の点について検討すると、本件発明1における色度測定は、前記(ア)で検討した発明特定事項のとおり、「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」を使用していることからして、その取扱説明書(甲2、甲3’等参照)に記載された方法に準じて行われていると解するのが自然である。加えて、「色度」という絶対値は、甲3(甲7’)、甲4(甲8’)、甲5’、甲6’、甲9’〜甲11’の記載(前記3(1)〜(7)参照)によれば、背景色の影響を受ける場合があるといえるが、本件発明1の「L*a*b*表色系による色度の増減傾向」及び「色差ΔE*ab」といった相対値が背景色の影響を受けることについては、いずれの甲号証に記載されていないし、このことが技術常識であることを示す証拠もない。したがって、本件明細書に「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」で色度を測定するための条件が具体的に記載されていないとしても、そのことが本件発明1を第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確としているとはいえない。
(ウ) 上記(ii)の点について検討すると、本件発明1の「前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*ab」との発明特定事項には、それぞれの区間に含まれる全ての第1点と第2点との色差ΔE*abに限定解釈すべき特定がないことからして、それぞれの区間に含まれる任意の第1点と第2点との色差ΔE*abを示していることは明らかである。
(エ) 最後に、上記(iv)の点について検討すると、本件発明1では、「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」ことが特定されているところ、「色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項は、上記第1点と第2点の範囲における色度の変化及びその増減傾向が「色差ΔE*abが30以下」の範囲に収まっていることを示すものであるから、当業者がその技術的意義を理解できないとはいえない。
(オ) したがって、上記(i)〜(v)の論拠に理由がないから、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさないということはできない。
ウ 申立理由1−1及び申立理由2−4についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1−1及び申立理由2−4に理由はない。

(3) 申立理由1−3及び申立理由2−3(サポート要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
(ア) 申立理由1−3は、要するに、(i)本件発明の課題である「天然歯と同様の外観を有するジルコニア焼結体を提供する」(段落【0007】)ことに対して、本件発明1及び2は、色調及び色度を特定しておらず、上記課題を解決できないことを論拠として、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない、というものである。
(イ) 申立理由2−3は、要するに、(ii)本件発明の課題である「天然歯のような外観を実現できる」ことに対して、本件発明1及び2は、L*値、a*値、及び、b*値を特定しておらず、上記課題を解決できないこと、(iii)本件発明1の「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項について、「第2点」の位置が本件明細書の記載と異なっていること、(iv)前記発明特定事項に、色差ΔE*abが30以下となるための色度の大小関係の特定がないこと、及び、(v)本件明細書には、色差ΔE*abが30以下との値が背景色に影響されない値であるとの記載がないことを論拠として、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない、というものである。
イ サポート要件違反についての検討
(ア) 上記(i)及び(ii)の点について検討すると、本件発明の課題は、本件明細書の段落【0002】〜【0007】の記載からみて、従来技術の人工歯では、隣接する主要層間の2つの異なる中間層の色の変化方向が、主要層間の色の変化方向と逆になるため、天然歯と同様の色の変化を再現できないというものである。
これに対して、本件発明1及び2は、「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず」とのことを特定するものであり、色の変化方向が反対になることはないから、本件発明1及び2は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(イ) 上記(iii)及び(iv)の点について検討すると、本件明細書の記載は、本件当初明細書の記載から実質的に変更されていないため、前記(1)イで検討したのと同様に、前記発明特定事項は、本件明細書の段落【0050】及び【0059】に記載されており、本件明細書に記載された事項の範囲内のものといえる。
(ウ) 最後に、上記(v)の点について検討すると、前記(2)イ(イ)で検討したとおり、本件発明1及び2では、「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」の通常の使用方法に準じて行われているといえるし、また、「色差ΔE*ab」が背景色の影響を受けることが技術常識であることを示す証拠がないことからして、色差ΔE*abの値と測定対象物の背景色との関係を本件明細書に明示する必要があるとまではいえない。
(エ) したがって、上記(i)〜(v)の論拠には理由がないから、本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさないということはできない。
ウ 申立理由1−3及び申立理由2−3についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1−3及び申立理由2−3に理由はない。

(4) 申立理由1−2及び申立理由2−2(実施可能要件・委任省令要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
(ア) 申立理由1−2は、要するに、(i)本件発明1の「ジルコニア及びその安定化剤を含有するジルコニア焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において」との発明特定事項における「ジルコニア焼結体」が明確でないことを論拠として、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない、というものである。
(イ) 申立理由2−2は、要するに、(ii)本件発明1の「色差ΔE*abが30以下である」ことの技術的意義が記載されていないこと、(iii)「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」の通常の測定方法では、「直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した」「ジルコニア焼結体」を測定できないこと、及び、(iv)「色差ΔE*ab」の特定のため色度測定における背景色が記載されていないことを論拠として、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件及び委任省令要件を満たさない、というものである。
実施可能要件・委任省令要件違反についての検討
(ア) 上記(i)の点について検討すると、前記(2)イ(ア)で検討したとおり、前記発明特定事項における「ジルコニア焼結体」は、「第1点」又は「第2点」に対応する組成物単独の色度測定用の「ジルコニア焼結体」であることは明らかであるし、また、本件明細書の実施例には、このような各測定点に対応する組成物単独の色度測定用のジルコニア焼結体を用いて「色差ΔE*ab」を特定した、4層構造のジルコニア焼結体及びその製造方法が具体的に記載されている。
(イ) 上記(iii)及び(iv)の点について検討すると、前記(2)イ(イ)で検討したとおり、本件発明1及び2では、「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」の通常の使用方法に準じて行われているといえる。そして、本件発明1及び2における測定試料は、「直径14mm、厚さ1.2mmの円板」形状であって、歯牙形状を用いた場合と同様な測定条件になるように工夫することは当業者が普通に想起することである。加えて、「色差ΔE*ab」が背景色の影響を受けることが技術常識であることを示す証拠がないことからして、測定時の背景色の特定がなくても、色差ΔE*abの値を決定できるものといえる。
(ウ) 最後に、上記(ii)の点について検討すると、前記(2)イ(エ)で検討したとおり、「色差ΔE*abが30以下である」ことの技術的意義は、当業者からみれば明らかである。
(エ) したがって、上記(i)〜(iv)の論拠には理由がないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件及び委任省令要件を満たさないということはできない。
ウ 申立理由1−2及び申立理由2−2についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1−2及び申立理由2−2に理由はない。

(5) 申立理由1−4(甲6を主たる証拠とした新規性進歩性欠如)及び申立理由2−5(甲1’又は甲2’を主たる証拠とした新規性欠如)について
ア 具体的な指摘事項
申立理由1−4及び申立理由2−5は、要するに、本件特許に係る出願が分割要件を満たさないことを前提とし、本件発明1及び2は、原出願の公開公報(甲1’)又は親出願の公開公報(甲6、甲2’)に記載された発明に対して、新規性又は進歩性を欠如している、というものである。
イ 分割要件に対する判断
(ア) 分割要件の判断手法
分割出願を認めるためには、以下の「要件1」〜「要件3」が満たされる必要があるので、以下、この観点に沿って検討する。
要件1 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願
の請求項に係る発明とされたものでないこと。
要件2 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明
細書等に記載された事項の範囲内であること。
要件3 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明
細書等に記載された事項の範囲内であること。
(イ) 要件2及び3について
a 原出願の願書に最初に添付された明細書及び分割直前の明細書には、それぞれ、次の事項が記載されている(甲1’の記載も参照。)。
「【0053】
また、本発明のジルコニア焼結体は、両端を結ぶ一端から他端に向かって色が変化している。図1に示すジルコニア焼結体10の一端Pから他端Qに向かう第2方向Yに延在する直線上において、L*値、a*値及びb*値の増加傾向又は減少傾向は逆方向に変化しないと好ましい。すなわち、一端Pから他端Qに向かう直線上においてL*値が増加傾向にある場合、L*値が実質的に減少する区間は存在しないと好ましい。・・・」
「【0054】
ジルコニア焼結体10における色の変化方向は、一端Pから他端Qに向かって、L*値が増加傾向にあるとき、a*値及びb*値は減少傾向にあると好ましい。・・・」
「【0055】
図1において、一端Pから他端Qを結ぶ直線上の点を、一端P側から順に、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dとする。第1点Aは、一端Pから、一端Pと他端Q間の長さ(以下、「全長」という)の25%〜45%までの区間にあると好ましい。・・・第4点Dは、他端Qから、全長の25%〜45%までの区間にあると好ましい。・・・」
【0056】
第1点A、第2点B、第3点C及び第4点DにおけるL*a*b*表色系(JISZ8729)によるジルコニア焼結体10の色度(L*,a*,b*)・・・。なお、各点の色度は、各点に対応する組成物単独のジルコニア焼結体を作製し、当該ジルコニア焼結体の色度を測定することによって求めることができる。」
「【0064】
第1点Aと第4点Dの色差をΔE*ab4としたとき、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dの色度に上記関係がある場合、例えば、ΔE*ab4は30以下であると好ましい。」
「【0112】
そこで、第1粉末、第2粉末、第3粉末、及び第4粉末について、それぞれ単独の焼結体を作製し、L*a*b*表色系による色度を測定した。色度は、焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて測定した。また、色度の測定結果に基づき、隣接する層間の色差ΔE*ab1〜3を算出した。さらに、第1層と第4層間の色差ΔE*ab4を算出した。・・・」
b 親出願の願書に最初に添付された明細書及び分割直前の明細書の段落【0048】、【0049】、【0050】、【0051】、【0059】及び【0107】にも、前記aで摘記した内容に対応する記載がある(甲6(甲2’)の記載も参照。)。
c したがって、前記(1)イ及び(2)イで検討したことをふまえると、本件発明1及び2は、原出願及び親出願の願書に最初に添付された明細書及び分割直前の明細書に記載された事項の範囲内であるといえ、要件2及び3を満足する。
(ウ) 要件1について
原出願及び親出願の分割直前の明細書には、上記記載内容以外にもさまざまな技術的な事項が記載されているため、本件発明1及び2は、原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部であるとも、親出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部であるともいえないことは明らかであるから、要件1を満足する。
(エ) 申立人2の主張についての検討
申立人2は、本件発明1が、原出願に係る発明の必須の課題解決手段を反映していないため、原出願の明細書から当業者が把握できるものでないことを論拠として、本件特許に係る出願は分割要件を満たさない旨を主張している。
しかしながら、申立人2の上記主張は、前記(ア)の分割要件の判断手法に従っていないため、当該主張は採用できない。
(オ) 分割要件についての結論
以上のとおりであるから、本件特許に係る出願は、分割要件を満たすものである。
ウ 申立理由1−4及び申立理由2−5についての判断及び結論
本件特許に係る出願は、前記イで検討したとおり、分割要件を満たすものであるから、申立理由1−4及び申立理由2−5は、その前提が誤っている。
したがって、申立理由1−4及び申立理由2−5に理由はない。

(6) 申立理由2−6(甲13’を主たる証拠とした進歩性欠如)について
ア 甲13’に記載された発明(甲13’発明)
甲13’の前記3(8)エの記載事項を「5層成形体」に注目して整理すると、甲13’には、次の発明(以下、「甲13’発明」という。)が記載されていると認められる。
「ZrSi2が47.9重量%、ZrO2(単斜晶系)が27.3重量%、ZrO2(バデライトベースの着色顔料)が7.0重量%、Al2O3が7.0重量%、MgOが0.5重量%、分解剤が0.5重量%、色付け用金属酸化物が1.9重量%、ケイ素含有ポリマーが5.9重量%、プレス補助剤が2.0重量%から作製された顆粒Fであって、1450℃で高密度に焼結されたときの焼結体F’のL*値が80.54、a*値が0.72、b*値が14.94となる前記顆粒Fと、
ZrSi2が48.0重量%、ZrO2(単斜晶系)が32.0重量%、ZrO2(バデライトベースの着色顔料)が0.0重量%、Al2O3が7.0重量%、MgOが0.5重量%、分解剤が0.5重量%、色付け用金属酸化物が4.1重量%、ケイ素含有ポリマーが5.9重量%、プレス補助剤が2.0重量%から作製された顆粒Gであって、1450℃で高密度に焼結されたときの焼結体G’のL*値が69.88、a*値が3.88、b*値が22.68となる前記顆粒Gとを用いて、
顆粒Fが100重量%と顆粒Gが0重量%の混合物(1層)、顆粒Fが75重量%と顆粒Gが25重量%の混合物(2層)、顆粒Fが50重量%と顆粒Gが50重量%の混合物(3層)、顆粒Fが25重量%と顆粒Gが75重量%の混合物(4層)、及び、顆粒Fが0重量%と顆粒Gが100重量%の混合物(5層)をそれぞれ約2gずつ作製し、
これら混合物をプレス金型に順に重ねて配置した後に円筒形状に圧縮成形し、1450℃で焼結した、5層成形体。」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲13’発明の「5層成形体」は、焼結されたものであるから、本件発明1の「焼結体」に相当する。
また、甲13’発明の「5層成形体」では、重ねて配置する混合物における顆粒F及びGの含有量が一定に変化しており、積層方向の色の変化は一定になっているといえるから、本件発明1の「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず」との特定を満足する。
したがって、本件発明1と甲13’発明とは、
「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化しない、焼結体」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1では、「焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において」、「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」のに対して、甲13’発明では、「5層成形体」の「顆粒Fが100重量%と顆粒Gが0重量%の混合物(1層)」を焼結した部分(焼結体F’)の「L*値が80.54、a*値が0.72、b*値が14.94」であり、「顆粒Fが0重量%と顆粒Gが100重量%の混合物(5層)」を焼結した部分(焼結体G’)の「L*値が69.88、a*値が3.88、b*値が22.68」であるが、L*値、a*値及びb*値の測定方法は明らかでない点。
<相違点2>
本件発明1は、「ジルコニア及びその安定化剤を含有する」「ジルコニア焼結体」であるのに対して、甲13’発明の「5層成形体」は、「ZrSi2」、「ZrO2」、「MgO」及び「Al2O3」を含有しているものの、その主成分は、「ZrSi2」である点。
(イ) 検討
まず、相違点1について検討すると、甲13’発明では、L*値、a*値及びb*値の測定方法、特に、測定試料の厚さが明らかでないため、相違点1は実質的なものといえる。
次に、甲13’発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性を検討すると、「焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いて色度を測定した結果において」、「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*ab」を「30以下」とすることが、本件特許に係る出願前(原出願の出願前)に頒布された甲号証のいずれにもに記載されていないし、また、このことが当該出願時(原出願の出願時)の技術常識であることを示す証拠もないから、甲13’発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、容易想到性の事項といえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲13’発明といえないし、甲13’発明に基づいて、当業者が容易に発明をできたものといえない。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲13’発明といえないし、甲13’発明に基づいて、当業者が容易に発明をできたものといえない。
エ 申立理由2−6についての結論
以上のとおりであるから、申立理由2−6に理由はない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に当該請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-10-19 
出願番号 P2019-214111
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C04B)
P 1 651・ 55- Y (C04B)
P 1 651・ 536- Y (C04B)
P 1 651・ 537- Y (C04B)
P 1 651・ 113- Y (C04B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 宮澤 尚之
後藤 政博
登録日 2021-11-09 
登録番号 6975216
権利者 クラレノリタケデンタル株式会社
発明の名称 ジルコニア焼結体  
代理人 加藤 朝道  
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