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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 F24H |
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管理番号 | 1390607 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-07-13 |
確定日 | 2022-10-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7002761号発明「暖房装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7002761号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第7002761号の請求項1〜9に係る特許についての出願は、令和 1年 7月19日(優先権主張 平成30年8月9日 日本)に出願され、令和 4年 1月 5日にその特許権の設定登録がされ、令和 4年 1月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜4に係る特許に対し、令和 4年 7月13日に特許異議申立人▲徳▼田久子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 特許第7002761号の請求項1〜4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え、 前記ダクトは、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する直方体状の第1空間を含み、 前記ダクトは、前記導出口が形成されている第1壁部に対向する第2壁部に、少なくとも一部が前記導出口に対向し、前記ダクトの内側から外側に向かって凸となる曲面部を有する、暖房装置。 【請求項2】 前記ダクトは、前記導入口の開口面を投影させた2つの第3側面を有し、かつ、前記導出口の開口面を投影させる側面を有しない第2空間を含み、 前記加熱装置は、前記第2空間に設置される、請求項1に記載の暖房装置。 【請求項3】 前記ダクトは、第1分割体と第2分割体とに分割可能であり、 前記加熱装置は、前記第1分割体と前記第2分割体とに挟まれて保持される、請求項1又は2に記載の暖房装置。 【請求項4】 筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え、 前記ダクトは、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する直方体状の第1空間を含み、 前記ファンを回転させるモーターと、 前記ファンを接続している側で前記モーターを支持するモーター支持部と、 前記モーター支持部に接続され、前記ファンを収容するファン収容部と、 前記ファンが吸い込んだ空気を前記ファン収容部の外側に通過させる第1流通経路と、 前記第1流通経路を通過してきた空気を、前記モーターの側面側、かつ、前記ファン収容部の内側に流通させる第2流通経路と、を備え、 前記第1流通経路における空気の進行方向と、前記第2流通経路における空気の進行方向とは、それぞれ前記モーターの回転軸に対して平行であり、かつ、互いに反対である、暖房装置。」 3 申立理由の概要 申立人は、主たる証拠として甲第1号証(特開2002−61900号公報)並びに従たる証拠として甲第2号証(特開平9−210467号公報)、甲第3号証(特開2001−330322号公報)及び甲第4号証(特開平5−256518号公報)(以下、甲第1号証〜甲第4号証をそれぞれ「甲1」〜「甲4」という。)を提出し、請求項1〜3に係る特許は甲1〜甲3に記載の発明に基いて特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項4に係る特許は甲1及び甲4に記載の発明に基いて特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1〜4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 4 各甲号証 (1)甲1について ア 甲1の記載 (ア) 「【0016】 【実施例】(実施例1)図1に示すように、温風機本体1には、ヒーター2と、前記ヒーター2で加熱された温風を送風する送風ファン3と、前記送風ファン3からの温風を吹出口4に導く温風ダクト5と、加湿装置6と、前記温風ダクトの途中からバイパスされ加湿装置6を介して設けられる加湿ダクト7と、前記温風ダクトと加湿ダクトの分岐部に送風ファンからの温風の送風路を切替える送風路切替手段8とを有している。」(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 (イ) 「 」 イ 甲1の記載から認められる事項 (ア)上記ア(イ)の図1から、送風ファン3が温風機本体1の内部に設置されていること及び温風機本体1が符号2〜8で示される各要素を収容する筐体を備えていることが看取でき、送風ファン3が当該筐体の内部に設置されているものと認められる。 (イ)上記ア(イ)の図1から、送風ファン3が温風を送風するためには、送風ファン3が温風機本体1の外部の空気を取り入れているものと認められる。 (ウ)上記ア(イ)の図1から、吹出口4がヒーター2で加熱された空気を外部へ吹き出すことが看取できる。 (エ)上記ア(ア)の「前記送風ファン3からの温風を吹出口4に導く温風ダクト5」との記載及び上記ア(イ)の図1の送風ファン3、温風ダクト5及び吹出口4の配置関係等に関する図示内容から、温風ダクト5が、送風ファン3が取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を吹出口4に向けて導出する導出口とを有することは、明らかである。 (オ)上記ア(イ)の図1及び上記イ(エ)から、前記温風ダクト5が、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間を含むことは、明らかである。 (カ)上記ア(イ)の図1及び上記イ(エ)から、前記温風ダクト5が、前記導出口が形成されている第1壁部に対向する第2壁部を有すること、及び、当該第2壁部に、少なくとも一部が前記導出口に対向し、前記温風ダクト5の内側から外側に向かって凸となる部分を有すること、が看取できる。 ウ 甲1発明 上記ア及びイから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「温風機本体1の筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れる送風ファン3と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を加熱するヒーター2と、 前記ヒーター2で加熱された空気を外部へ吹き出す吹出口4と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹出口4に向けて導出する導出口とを有する温風ダクト5と、を備え、 前記温風ダクト5は、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間を含み、 前記温風ダクト5は、前記導出口が形成されている第1壁部に対向する第2壁部に、少なくとも一部が前記導出口に対向し、前記温風ダクト5の内側から外側に向かって凸となる部分を有する、温風機。」 (2)甲2について ア 甲2の記載 (ア) 「【0010】 【発明の実施の形態】図1を参照して、1は温風暖房器の器体であり、該器体1内には燃焼筐2と、その下側の送風ファン3と、燃焼筐2と送風ファン3との配置部を囲う隔壁4とが設けられている。そして、隔壁4の内側に、器体1の背面に開設した吸気口10に連通する空気通路11を画成し、送風ファン3により燃焼筐2から燃焼ガスを吸引排気すると共に、空気通路11を介して器外から空気を吸引し、燃焼ガスと空気とを混合して、器体1の前面下部の送風口12から温風として器外に送風するようにしている。」 (イ) 「 」 イ 甲2の記載から認められる事項 (ア)上記ア(イ)の図1から、器体1が送風ファン3を収容する部分を備えることが看取できる。 (イ)上記ア(イ)の図1から、上記イ(ア)の送風ファン3を収容する部分が、送風口12に対向する位置に、少なくとも一部が前記送風口12に対向し、前記送風ファン3を収容する部分の内側から外側に向かって凸となる曲面部を有すること、が看取できる。 ウ 甲2記載事項 上記ア及びイから、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「器体1と、 前記器体1内に配置され、燃焼筐2から燃焼ガスを吸引排気すると共に、器外から空気を吸引する送風ファン3と、 燃焼筐2と、 温風を器外に送風する送風口12と、 前記送風ファン3を収容する部分と、を備え、 前記送風ファン3を収容する部分は、前記送風口12に対向する位置に、少なくとも一部が前記送風口12に対向し、前記送風ファン3を収容する部分の内側から外側に向かって凸となる曲面部を有する、温風暖房器。」 (3)甲3について ア 甲3の記載 (ア) 「【0021】図1および図2において、10は供給されたガスを燃焼させるバーナ11と、ガスの燃焼により発生した温風を室内に流通させる対流ファン12とを収納するケース、13はケース10の後部の空気吸込口に設けた対流用フイルタで、対流ファン12により矢印Cで示すようにケース10内に吸い込まれる対流用空気を除塵し、燃焼室14の燃焼風路15で温風と混合させる。16は燃焼室14の燃焼風路15で対流用空気と混合された温風を、矢印Dで示すように室内に吹き出させる吹出口、17は燃焼室14に取り付けた温度検出手段、18は温度検出手段17およびダクト部19に取り付けた温度検出手段20よりの出力信号により動作して異常を表示したり、温風運転を制御したりする制御手段である。なお、温度検出手段17は対流用空気と混合された温風の温度が的確に検出できるように、バーナ11の上方で燃焼室14の内部もしくは外表面に設けられ、温度検出手段20はダクト部19に流入する温風の温度が的確に検出できるように、ダクト部19の内部もしくは外表面に設けられている。」 (イ) 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例1におけるガス温風暖房装置の説明断面図」 (ウ) 「 」 イ 甲3の記載から認められる事項 (ア)上記ア(ウ)の図1から、ケース10が対流ファン12を収容する部分を備えること、が看取できる。 (イ)上記ア(ウ)の図1から、上記イ(ア)の対流ファン12を収容する部分が、吹出口16に対向する位置に、少なくとも一部が前記吹出口16に対向し、前記対流ファン1を収容する部分の内側から外側に向かって凸となる曲面部を有すること、が看取できる。 ウ 甲3記載事項 上記ア及びイから、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「ケース10と、 前記ケース10に収納され、ガスの燃焼により発生した温風を室内に流通させる対流ファン12と、 燃焼室14と、 温風を室内に吹き出させる吹出口16と、 前記対流ファン1を収容する部分と、を備え、 前記対流ファン1を収容する部分は、前記吹出口16に対向する位置に、少なくとも一部が前記吹出口16に対向し、前記対流ファン1を収容する部分の内側から外側に向かって凸となる曲面部を有する、ガス温風暖房装置。」 (4)甲4について ア 甲4の記載 (ア) 「【0014】 【実施例】以下本発明の温風機の一実施例を図面により説明する。図1は、本発明の一実施例を示す電気温風機の正面からの一部要部断面図である。図2は図1の電気温風機の要部分解斜視図である。吸い込み口1を有する本体ケース2内にモータ3と、ファン4と、風路を形成するファンケース5及びファンケースカバー6と、その風路内にヒータ7と、ヒータ7を絶縁保護するヒータカバー8と、そのヒータ7の風下側の風路に上面中心に開口部9を有する吹出口11とを設け、ファンケースカバー6には吹出口11の開口部9の上方に、開口部9に近い方から温度過昇防止装置12、温度ヒューズ13の順に近接して配置し、かつ温度過昇防止装置12、温度ヒューズ13を一枚の保護カバー14で覆いビス17で固定した構成である。 【0015】上記構成において動作を説明する。図3は、図1の電気温風機の側面断面図である。ここで、モータ3によりファン4が回転すると、吸い込み口1より空気を吸い込み、風路を通過しヒータ7で熱交換し、温風を吹出口11より室内へ吹き出し、室内を暖房するようになっている。図4は、図3の電気温風機の吹出口11に障害物15を放置したものである。上記構成により、吹出口11の全面に、布団・毛布・タオル等の障害物15が放置されたとき、温風の出口が塞がれたかたちとなり、吹出口11の内部が高温となり、熱気が開口部9より外へ流出し、温度過昇防止装置12が暖められ動作してヒータ7への通電をオフする。これは、吹出口11の開口部9の上方に、開口部9に近い方から温度過昇防止装置12、温度ヒューズ13の順に近接して配置してあるため、障害物15で吹出口11の右側半面、あるいは左側半面のいずれの場所を覆っても温度過昇防止装置12が動作し、仮に温度過昇防止装置12が短絡故障している場合でも温度過昇防止装置12の上方にある温度ヒューズ13が動作しヒータ7への通電をオフするものである。」 (イ) 「 」 (ウ) 「 」 イ 甲4の記載から認められる事項 (ア)上記ア(イ)の図1及びア(ウ)の図3から、ファンケース5及びファンケースカバー6がファン4を収容するものであることが看取できる。 (イ)上記ア(イ)の図1及びア(ウ)の図3から、本体ケース2が、ファン4が吸い込んだ空気をファンケース5及びファンケースカバー6の外側に通過させる第1流通経路と、第1流通経路を通過してきた空気を、モータ3の側面側、かつ、ファンケース5及びファンケースカバー6の内側に流通させる第2流通経路と、を備えること、が看取できる。 (ウ)上記ア(ウ)の図3から、上記イ(イ)の第1流通経路における空気の進行方向と、上記イ(イ)の第2流通経路における空気の進行方向とが、それぞれモータ3の回転軸に対して平行であり、かつ、互いに反対である部分が存在すること、が看取できる。 ウ 甲4記載事項 上記ア及びイから、甲4には、次の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「ファン4を回転させるモータ3と、 前記ファン4を収容するファンケース5及びファンケースカバー6と、 前記ファン4が吸い込んだ空気を前記ファンケース5及びファンケースカバー6の外側に通過させる第1流通経路と、 前記第1流通経路を通過してきた空気を、前記モータ3の側面側、かつ、前記ファンケース5及びファンケースカバー6の内側に流通させる第2流通経路と、を備え、 前記第1流通経路における空気の進行方向と、前記第2流通経路における空気の進行方向とは、それぞれ前記モータ3の回転軸に対して平行であり、かつ、互いに反対である、温風機。」 5 当審の判断 (1)請求項1に係る発明について ア 対比 請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「温風機本体1の筐体」は本件発明1の「筐体」に相当し、以下同様に、「送風ファン3」は「ファン」に、「ヒーター2」は「加熱装置」に、「吹出口4」は「吹き出し部」に、「温風ダクト5」は「ダクト」に、「温風機」は「暖房装置」に、それぞれ相当する。 してみると、甲1発明の「温風機本体1の筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れる送風ファン3と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を加熱するヒーター2と、 前記ヒーター2で加熱された空気を外部へ吹き出す吹出口4と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹出口4に向けて導出する導出口とを有する温風ダクト5と、を備え」ることは、 本件発明1の「筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え」ることに相当する。 甲1発明の「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間」と本件発明1の「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する直方体状の第1空間」とは、「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間」という限りにおいて一致する。 甲1発明の「温風ダクト5の内側から外側に向かって凸となる部分」と本件発明1の「前記ダクトの内側から外側に向かって凸となる曲面部」とは、「前記ダクトの内側から外側に向かって凸となる部分」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え、 前記ダクトは、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間を含み、 前記ダクトは、前記導出口が形成されている第1壁部に対向する第2壁部に、少なくとも一部が前記導出口に対向し、前記ダクトの内側から外側に向かって凸となる部分を有する、暖房装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 第1空間が、本件発明1においては、「直方体状」であるのに対して、甲1発明においては、導入口及び導出口の開口面の形状が不明であること等から、第1空間が直方体状であるかどうかも不明である点。 [相違点2] ダクトの内側から外側に向かって凸となる部分が、本件発明1においては「曲面部」であるのに対して、甲1発明においては曲面で構成されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 本件発明1の「曲面部」は、「ファンが取り入れた空気を導入する導入口を有する」「ダクト」に関する構成である。他方、甲2記載事項及び甲3記載事項の「曲面部」は、いずれも、ファンを収容する部分に関する構成であり、「ファンが取り入れた空気を導入する導入口を有する」「ダクト」に関する構成とは認められない。したがって、甲2記載事項及び甲3記載事項の「曲面部」と本件発明1の「曲面部」とは、暖房装置のどの部分の構成であるかという点で、技術的に異なるものである。 さらに、甲1発明の「部分」は、本件発明1の「曲面部」と同様に、「送風ファン3が取り入れた空気を導入する導入口を有する」「温風ダクト5」に関する構成であるから、甲2記載事項及び甲3記載事項におけるファンを収容する部分に関する構成である「曲面部」とは、技術的に異なるものである。したがって、甲1発明の「部分」に甲2記載事項及び甲3記載事項の「曲面部」を適用する動機付けがないといわざるを得ない。 さらに、本件発明1の「曲面部」を有するダクトを備える「暖房装置1によれば、ダクト60の流通空間が、直方体状の第1空間S1を含んでいるとしても、空気の流れを、図6中の矢印で示すように、曲面部60hの形状に沿って導入口63から導出口64まで滑らかに進行させることができる」ものである(本件特許明細書の段落【0065】、【0066】)。 それに対し、甲2記載事項及び甲3記載事項の「曲面部」は、いずれも、「ファンが取り入れた空気を導入する導入口を有する」「ダクト」に関する構成であるとは認められないから、本件発明1のように曲面部の形状に沿って「ファンが取り入れた空気を導入する導入口から」導出口まで滑らかに進行させることができるものでもない。したがって、本件発明1の「曲面部」と甲2記載事項及び甲3記載事項の「曲面部」とは、作用効果の点でも異なるものである。 よって、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)請求項2及び3に係る発明について 請求項2及び請求項3は、請求項1を直接的または間接的に引用する請求項であるから、請求項2及び3に係る発明は、上記5(1)についての判断と同様に、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)請求項4に係る発明について ア 対比 請求項4に係る発明(以下「本件発明4」という。)と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「温風機本体1の筐体」は本件発明4の「筐体」に相当し、以下同様に、「送風ファン3」は「ファン」に、「ヒーター2」は「加熱装置」に、「吹出口4」は「吹き出し部」に、「温風ダクト5」は「ダクト」に、「温風機」は「暖房装置」に、それぞれ相当する。 してみると、甲1発明の「温風機本体1の筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れる送風ファン3と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を加熱するヒーター2と、 前記ヒーター2で加熱された空気を外部へ吹き出す吹出口4と、 前記送風ファン3が取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹出口4に向けて導出する導出口とを有する温風ダクト5と、を備え」ることは、 本件発明4の「筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え」ることに相当する。 甲1発明の「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間」と本件発明4の「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する直方体状の第1空間」とは、「前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明4と甲1発明とは、 「筐体と、 前記筐体の内部に設置され、外部の空気を取り入れるファンと、 前記ファンが取り入れた空気を加熱する加熱装置と、 前記加熱装置で加熱された空気を外部へ吹き出す吹き出し部と、 前記ファンが取り入れた空気を導入する導入口と、当該導入口から導入した空気を前記吹き出し部に向けて導出する導出口とを有するダクトと、を備え、 前記ダクトは、前記導入口の開口面を投影させた2つの第1側面と、前記導出口の開口面を投影させた2つの第2側面とを有する第1空間を含む、暖房装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点3] 第1空間が、本件発明4においては、「直方体状」であるのに対して、甲1発明においては、導入口及び導出口の開口面の形状が不明であること等から、第1空間が直方体状であるかどうかも不明である点。 [相違点4] 本件発明4は、 「前記ファンを回転させるモーターと、 前記ファンを接続している側で前記モーターを支持するモーター支持部と、 前記モーター支持部に接続され、前記ファンを収容するファン収容部と、 前記ファンが吸い込んだ空気を前記ファン収容部の外側に通過させる第1流通経路と、 前記第1流通経路を通過してきた空気を、前記モーターの側面側、かつ、前記ファン収容部の内側に流通させる第2流通経路と、を備え、 前記第1流通経路における空気の進行方向と、前記第2流通経路における空気の進行方向とは、それぞれ前記モーターの回転軸に対して平行であり、かつ、互いに反対である」 であるのに対して、 甲1発明は、そのような構成を備えるか否か不明である点。 イ 判断 事案に鑑みて、上記相違点4について先に検討する。 本件発明4は、「前記ファンを接続している側で前記モーターを支持するモーター支持部」を備えるとともに、ファンを収容するファン収容部が「モーター支持部に接続され」るとの構成を有するものである。 一方、甲4記載事項においては、モータ3の支持に関する構成が不明であり、そのため、ファン4を収容するファンケース5及びファンケースカバー6がモータ3の支持部に接続されるか否かも不明であるから、本件発明4の上記モーター支持部に関する構成を有するものであるとは、認められない。 よって、本件発明4は、上記相違点3について検討するまでもなく、甲1発明及び甲4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-09-30 |
出願番号 | P2019-133601 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(F24H)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 丹治 和幸 |
登録日 | 2022-01-05 |
登録番号 | 7002761 |
権利者 | アイリスオーヤマ株式会社 |
発明の名称 | 暖房装置 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 高松 俊雄 |