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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1391274
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2022-11-02 
事件の表示 特願2018−547880「アレイ撮像モジュール及び成形感光性アセンブリ、並びに電子機器向けのその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日国際公開、WO2017/157015、令和 1年 7月 4日国内公表、特表2019−519087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2016年(平成28年)10月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年3月12日 中国、2016年3月12日 中国、2016年3月15日 中国、2016年3月15日 中国、2016年4月7日 中国、2016年8月12日 中国、2016年8月12日 中国、2016年8月12日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 9月10日 国内書面の提出
平成30年11月12日 翻訳文、手続補正書の提出
令和 元年12月26日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 3月30日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月26日付け 拒絶査定
令和 2年12月23日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年12月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)

「アレイ撮像モジュールの成形感光性アセンブリであって、前記成形感光性アセンブリが、
回路基板、及び前記回路基板で結合された少なくとも2つの感光ユニットを備える感光装置と、
前記回路基板及び前記感光ユニットを密封して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラーと、
を備え、
前記感光装置が、前記回路基板から突出する少なくとも1つの電子的要素を備え、前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され且つ密封され、
前記モールドシーラーが、接続体及び2つの外側リング体を備え、前記接続体が、成形により前記2つの外側リング体に一体化して接続される、成形感光性アセンブリ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年3月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「アレイ撮像モジュールの成形感光性アセンブリであって、前記成形感光性アセンブリが、
回路基板、及び前記回路基板で結合された少なくとも2つの感光ユニットを備える感光装置と、
前記回路基板及び前記感光ユニットを密封して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラーと、
を備え、
前記感光装置が、前記回路基板から突出する少なくとも1つの電子的要素を備え、前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され且つ密封される、成形感光性アセンブリ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「モールドシーラー」について、「前記モールドシーラーが、接続体及び2つの外側リング体を備え、前記接続体が、成形により前記2つの外側リング体に一体化して接続される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献である、中国特許出願公開第105187697号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、引用文献1の記載事項は、対応する公表特許公報である特表2018−532352号公報に基づく、当審の訳文で示す。(下線は当審が付した。以下、同じ。)

「[技術分野]
[0001]
本発明は、マルチレンズ光学撮像デバイスに関し、特に、マルチレンズカメラモジュールおよびマルチレンズカメラモジュール結合スタンド、およびその利用に関する。」

「[0062] 図2および図3を参照すると、本発明のマルチレンズカメラモジュールは、本発明の内容および利点を説明するための例を示すために以下の説明においてデュアルレンズカメラモジュールとして具体化される。特に、デュアルレンズカメラモジュールは、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10、少なくとも2つのレンズアセンブリ20、および少なくとも2つの感光性アセンブリ30を備えてよい。レンズアセンブリ20および感光性アセンブリ30は、それぞれマルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の異なる側面に連結される。レンズアセンブリ20の各々は、1対1方式に構成されるように感光性アセンブリ30のうち1つの光受容経路に対応して配置される。また、感光性アセンブリ30は、電子デバイスと接続され得る。当業者が理解すべきであるように、感光性アセンブリ30の1つと対になったレンズアセンブリ20の1つは、画像の捕捉に関して調和してよい。具体的には、物体または人物から反射しレンズアセンブリ20を通過した光は、光電変換のために感光性アセンブリ30によってそれぞれ受光される。すなわち、感光性アセンブリ30は、光信号を電気信号に変換することができ、電気信号は、電子デバイスが物体または人物の関連画像を生成するために、感光性アセンブリ30を通して電子デバイスへ送信され得る。
[0063] マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、上面101および下面102を有する。マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101および下面102は、互いに対向する。各レンズアセンブリ20は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101と連結される。各感光性アセンブリ30は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の下面102と連結される。言及すべき点として、図4を参照すると、デュアルレンズカメラモジュールの、撮影されている物体または人物に近い方の側面が、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101として定められる。反対に、デュアルレンズカメラモジュールの、撮影されている物体または人物から遠い方の側面は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の下面102として定められる。したがって、たとえばモバイルフォン、デジタルカメラなどのモバイル電子デバイスにおいてデュアルレンズカメラモジュールが利用され、ユーザの手に保持される場合、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101および下面102は、空間位置の観点から、上下の関係ではなく前後の関係を有してよい。
[0064] 好適な実施形態によると、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、連結体11および2つのスタンド本体12を備え、スタンド本体12は連結体11から一体に伸長し、スタンド本体12の各々は、レンズアセンブリ20の1つおよび感光性アセンブリ30の1つを支持するために用いられる。当業者が理解すべきであるように、本発明のデュアルレンズカメラモジュールの場合、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11およびスタンド本体12が一体形成されるので、本発明によって提供されるマルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は一体型であり、たとえば2つの分離したスタンドが回路基板などの他の要素によって互いに連結される2つの独立したスタンド間の位置ずれおよび角度ずれといった従来技術における技術的欠点を克服し得る。また、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、デュアルレンズカメラモジュールの一貫性および撮像品質を保証するために、レンズアセンブリ20と感光性アセンブリ30との光受容経路間の相対チルトを回避することができる。
・・・中 略・・・
[0066] また、感光性アセンブリ30の各々は、感光性センサ31を備えてよい。感光性センサ31の感光性側面はレンズアセンブリ20の光学レンズ21に面し、光学レンズ21の光軸は、感光性センサ31の感光性側面に垂直であるので、光は、光学レンズ21を通過した後、その後の光電変換のために感光性センサ31の感光性側面に受光され得る。本発明の好適な実装によると、各感光性アセンブリ30の回路は感光性センサ31に配置されてよく、各感光性アセンブリ30は、回路を通して電子デバイスと接続される。本発明の他の好適な実装によると、感光性アセンブリ30は回路基板32も備えてよく、各感光性センサ31は回路基板32と電気的に接続され得る。回路基板32は電子デバイスと接続され、それによって回路基板32は、光電変換を介して感光性センサ31によって生成された電気信号を電子デバイスへ送信するために利用され得る。たとえば、感光性センサ31は、回路基板32の様々な位置に取り付けられることによって回路基板32に電気的に接続され得る。また、デュアルレンズカメラモジュールを封入およびパッケージする際、回路基板32は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10に連結され、感光性センサ31はそれぞれスタンド本体12に対応付けられる。典型的な例として、感光性センサ31は回路基板32に取り付けられた後、少なくともワイヤボンドによって回路基板32と電気的に接続され得る。特に、デュアルレンズカメラモジュールは、少なくともワイヤボンドを設ける。ワイヤボンドの両端は、感光性センサ31と回路基板32との間の電気的接続を実現するために、それぞれ感光性センサ31および回路基板32の外辺と連結するように伸長される。しかしながら、当業者が理解すべきであるように、ワイヤボンドは、感光性センサ31と回路基板32とを電気的に接続するために利用可能な唯一の実装ではない。たとえば、本発明の他の利用可能な実装によると、感光性センサ31および回路基板32は溶接され、ハンダボールをハンダ付けしてもよい。言及すべき点として、本発明のデュアルレンズカメラモジュールによると、センサ31と回路基板32との接続モードは、本発明の内容および範囲を限定するものではない。
[0067] 言及すべき点として、デュアルレンズカメラモジュールのレンズアセンブリ20はいずれもズームレンズアセンブリであってよい。すなわち、レンズアセンブリ20および感光性アセンブリ30はいずれもマルチレンズカメラモジュール結合スタンド10によって連結され、レンズアセンブリ20の光学レンズ21と感光性アセンブリ30のセンサ31との間の距離が調整され得る。たとえば、光学レンズ21の各々は、対応する感光性センサ31の光受容経路に沿って移動させるために、対応する駆動モータ22によって駆動され得るので、デュアルレンズカメラモジュールの焦点距離は、光学レンズ21と感光性センサ31の感光性側面との間のシフトによって調整され得る。本発明の好適な実装によると、レンズアセンブリ20および感光性アセンブリ30の相対位置は同期的に調整され得ることが理解可能である。しかしながら、本発明の他の好適な実装によると、レンズアセンブリ20および感光性アセンブリ30の相対位置は、それぞれ独立して調整され得る。
[0068] マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10のスタンド本体12は、それぞれ結合体11の2つの側部分から一体に伸長する。各スタンド本体12は、レンズアセンブリ20の1つおよび感光性アセンブリ30の1つを連結することによってデュアルレンズカメラモジュールを形成するために用いられる。スタンド本体12の仕様は限定されなくてよい。たとえば1つの実施形態において、スタンド本体12のサイズは様々であってよい。本発明の他の好適な実装の場合、寸法を含むスタンド本体12の仕様は全て同じであり、これは、スタンド本体12は連結体11の両側に対称に伸長し得ることを意味する。
[0069] また、各スタンド本体12は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101と下面102とを連通するための光チャネル121を有する。デュアルレンズカメラモジュールの各レンズアセンブリ20および各感光性アセンブリ30は、各スタンド本体12それぞれの光チャネル121を介して相互作用してよい。すなわち、デュアルレンズカメラモジュールが画像を撮影する時、光はレンズアセンブリの光学レンズ21および光チャネル121を連続的に通過し、光電変換のために感光性アセンブリ30の感光性センサ31の感光性側面に受光され得る。言及すべき点として、光チャネル121は、スタンド本体12の各々の中央位置に配置される。
[0070] 各スタンド本体12は更に、統合または一体形成された載置部122、連結部123、および取付け部124を備えてよい。光チャネル121は、載置部122に配置される。載置部122はスタンド本体12の内側にあり、取付け部124はスタンド本体12の外側にあり、連結部123は載置部122と取付け部124とを連結するためのものであることが理解できる。すなわち、載置部122、連結部123、および取付け部124は、内側から外側に向かってスタンド本体12に配置される。
[0071] 載置部122の厚さ寸法は、それぞれの感光性センサ31の光受容経路の方向に沿った連結部123の厚さ寸法よりも小さく、それによってスタンド本体12は、載置部122に対応する箇所に段1221を形成してよい。デュアルレンズカメラモジュールは、それぞれ載置部122によって支持されるように載置部122によって形成された段1221に配置された、少なくとも2つのフィルタリング素子40も備える。言及すべき点として、載置部122によって形成された段1221の位置は限定され得る。たとえば、載置部122によって形成された段1221は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101またはマルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の下面102のいずれかに配置され得る。
[0072] 連結部123の厚さ寸法もまた、連結部123に対応する位置にスタンド本体12の第1のパッケージ溝125および第2のパッケージ溝126をそれぞれ形成するために、感光性センサ31の光受容経路の方向に沿った取付け部124の厚さ寸法よりも小さい。第1のパッケージ溝125は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101にあり、第2のパッケージ溝126は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の下面102にある。当業者は、第1のパッケージ溝125および第2のパッケージ溝126がそれぞれ光チャネル121と連通していることを理解すべきである。レンズアセンブリ20は、スタンド本体12の第1のパッケージ溝125に対応し、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封入およびパッケージされ得る。感光性アセンブリ30は、スタンド本体12の第2のパッケージ溝126に対応し、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封入およびパッケージされ得る。
[0073] 具体的には、レンズアセンブリ20の側面は、第1のパッケージ溝125に対応するスタンド本体12上で封入およびパッケージされ得る。たとえば、レンズアセンブリ20の側面は、レンズアセンブリ20およびスタンド本体10の封入およびパッケージを実現するために、側面に配置され第1のパッケージ溝125内に伸長するガイドピンを備えてよい。好適な実施形態によると、感光性アセンブリ30の回路基板32は、スタンド本体12の第2のパッケージ溝126に回路基板32の感光性センサ31を封入およびパッケージし、レンズアセンブリ20の光学レンズ21の光軸が感光性アセンブリ30の感光性センサ31の感光性側面に垂直になるように配置するように、スタンド本体12の取付け部124に取り付けられ得る。言及すべき点として、本発明の好適な実施形態の別のモードによると、感光性アセンブリ30のセンサ31の周囲は、取付け部124に直接封入およびパッケージされるように伸長され得る。また、感光性センサ31は、第2のパッケージ溝126内に位置する。
[0074] 当業者は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10が一体型であることを理解すべきである。2つ以上の独立したスタンドが連結されてデュアルレンズカメラモジュールのスタンドを形成する従来技術と対照的に、本発明の一体型マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、以下の顕著な利点を提供する。
[0075] 具体的には、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の第1の利点は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10が、封入およびパッケージ後にレンズアセンブリ20と感光性アセンブリ30との光受容経路間の相対チルトを防止するために、たとえば独立スタンドを連結した場合の独立スタンド間の位置ずれおよび角度ずれなどといった従来のデュアルレンズカメラモジュールの独立スタンドの技術的欠点を克服することである。
[0076] マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の第2の利点は、本発明のデュアルレンズカメラモジュールが激しい揺れや振動を経験した場合、連結体11から一体に伸長するスタンド本体12は、たとえばレンズアセンブリ20と感光性アセンブリ30との間でのチルト、距離など、レンズアセンブリ20および感光性アセンブリ30の相対位置を維持および確保できることである。
[0077] マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の第3の利点は、より薄い厚さである。従来技術の独立スタンドは、回路基板によって連結される。したがって、スタンドの相対位置の安定性を確保するために、特定の厚さおよび剛性を有する回路基板が従来のマルチレンズカメラモジュールには必要である。たとえば、従来のデュアルレンズカメラモジュールは、その厚さを確実に増加させるPCB型回路基板しか利用することができない。しかし、本発明のデュアルレンズカメラモジュールの回路基板32は、スタンドを連結する必要がない。その結果、回路基板32の厚さおよび硬度に対する必須要件は存在しない。たとえば、本発明によると、回路基板32はPCB型回路基板またはより薄い厚さのFPC回路基板であってよい。また、本発明の好適な実施形態の別のモードによると、デュアルレンズカメラモジュールは、感光性センサ31の光受容経路の方向におけるデュアルレンズカメラモジュールの厚さを大幅に低減するために、回路基板32を含まず、単に回路を感光性センサ31に統合するものであってよく、それによってより軽く薄いことが期待される電子デバイス上でデュアルレンズカメラモジュールを利用することを可能にする。
[0078] また、当業者が理解すべきであるように、従来の独立スタンドは回路基板を介して連結することしかできないので、回路基板に取り付けられる電子部品を収容するために隣接スタンド間に空間を確保しなければならない。不都合なことに、従来のデュアルレンズカメラモジュールは、使用中、回路基板が加熱され容易に変形され得る。回路基板が変形すると、独立スタンドの傾斜が変化することは避けられず、その結果、従来のデュアルレンズカメラモジュールの撮像品質に影響を及ぼす。
[0079] 本発明の好適な実施形態によると、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11は、回路基板32に取り付けられた1または複数の電子部品321を受け入れ収容するために設けられた電子部品収容空洞11を更に有する。連結体11の電子部品収容空洞111は、スタンド本体12の光チャネル121、第1のパッケージ溝125、および第2のパッケージ溝126へ通じることはできない。デュアルレンズカメラモジュールの封入およびパッケージプロセス中、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10に回路基板32が取り付けられた後、電子部品321は、連結体11の電子部品収容空洞111内に単独で封入およびパッケージされるように適合されるので、たとえば溶接スラグ、塵などの汚染物質がスタンド本体12の第2のパッケージ溝126に侵入し、スタンド本体12の第2のパッケージ溝126に封入およびパッケージされた感光性アセンブリ30の感光性センサ31の感光性側面を汚染することはなく、デュアルレンズカメラモジュールの撮像品質を更に向上させるために、センサ31の感光性側面に欠陥画素が発生することが防止される。
・・・中 略・・・
[0083] 本発明の好適な実装によると、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の安定性を強化する熱可塑性樹脂材料によって一体に形成され得る。本発明の別のモードの好適な実装によると、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、エンジニアリングプラスティックによって一体に形成されてもよく、この場合、エンジニアリングプラスティック粒子によって形成された材料は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10を製造するためにモールド型に注ぎ込まれ得る。具体的には、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の材料は、「ishiNTB982」エンジニアリングプラスティック、液晶ポリマ(LCP)エンジニアリングプラスティックなどであってよい。また、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の強度を保証することに加えてマルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の熱放散性を高めるために、金属材料または合金材料で作られてもよい。具体的には、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、射出成形技術または3D印刷技術を用いて、金属粉または金属粉と非金属粉との混合物によって一体に形成され得る。たとえば、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の材料は、アルミニウム合金、亜鉛合金などであってよい。」

「図3



「図4



「図5A



「図5B



(イ)上記引用文献1の記載を参照すると、次のことがいえる。
a 上記[0069]並びに図3及び図5A、Bの記載から、各スタンド本体12は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101と下面102とを連通するための光チャネル121を形成するために、それぞれ、四角形状の中空を有する環状の形を成していることが見て取れる。

b 上記[0072]の「感光性アセンブリ30は、スタンド本体12の第2のパッケージ溝126に対応し、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封入およびパッケージされ得る。」の記載から、感光性アセンブリ30は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封入およびパッケージされており、このパッケージを、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージということができる。

c また、上記図3及び図4の記載から、回路基板32上に2つの感光性センサ31が直線上に配置されていることが見て取れる。

(ウ)そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージであって、
マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、エンジニアリングプラスティック粒子によって形成された材料をモールド型に注ぎ込んで製造され、
マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10は、連結体11および2つのスタンド本体12を備え、スタンド本体12は連結体11の両側に対称に伸長し、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11およびスタンド本体12は一体形成され、
各スタンド本体12は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の上面101と下面102とを連通するための光チャネル121を形成するために、それぞれ、四角形状の中空を有する環状の形を成し、
光チャネル121は、スタンド本体12の各々の中央位置に配置され、
感光性アセンブリ30は、直線上に配置された、2つの感光性センサ31と、回路基板32を備え、
各感光性センサ31は、回路基板32に取り付けられるとともに、回路基板32と電気的に接続され、
回路基板32は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10に連結され、
感光性アセンブリ30は、マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封入およびパッケージされ、
マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11は、回路基板32に取り付けられた1または複数の電子部品321を受け入れ収容するために設けられた電子部品収容空洞11を更に有し、電子部品321は、連結体11の電子部品収容空洞111内に単独で封入およびパッケージされる、
マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージ。」

イ 周知技術
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献である、特開2012−182491号公報(以下、「引用文献12」という。)には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスキャップモールディングパッケージ及びこれを組み込むカメラモジュールに関するものであり、より詳細には、既存製品に比べて小さいサイズのモジュールの製造が可能であり、工程を単純化して、製造コストを節減すると共に、生産性を向上することのできるガラスキャップモールディングパッケージ及びその製造方法、並びにカメラモジュールに関するものである。」

「【0069】
<ガラスキャップモールディングパッケージの第2の実施の形態>
図9〜図11を参照して、本発明の実施の形態によるガラスキャップモールディングパッケージについてより詳細に説明する。
【0070】
図9は、本発明によるガラスキャップモールディングパッケージを概略的に示した断面図であり、図10は図9の平面図であり、図11は図9の底面図である。
【0071】
図9〜図11に示すように、本発明の実施の形態によるガラスキャップモールディングパッケージは、上面外郭部に外部接続端子15が設けられた基板10と、該基板10の上面に実装されるイメージセンサ20と、該イメージセンサ20の上部に設けられる透明部材40と、該イメージセンサ20及び該透明部材40を封止するように設けられ、基板10の外部接続端子15を露出させる段差部55を有するモールディング部50とを含んで構成される。
【0072】
ここで、基板10の上面には、外部接続端子15の他に、受動素子12及び各種電子部品が実装される。
・・・中 略・・・
【0078】
<ガラスキャップモールディングパッケージの製造方法の第2の実施の形態>
次に、図12〜図17を参照して、本発明の実施の形態によるガラスキャップモールディングパッケージの製造方法についてより詳細に説明する。
・・・中 略・・・
【0083】
また、基板10の上面に、受動素子12のような部品を表面実装技術(SMT)で実装して、これと共に基板10の上面外郭部の一部に外部接続端子15を設ける。
・・・中 略・・・
【0087】
その後、図15に示すように、イメージセンサ20及び透明部材40が封止されるように、モールディング部50を設ける。ここで、モールディング部50は、エポキシ系列の樹脂材質から成ることができる。」

「【図9】



上記図9の記載から、基板10、イメージセンサ20及び受動素子12は、モールディング部50により隙間なく封止されていることが見て取れる。
そして、上記段落【0071】及び【0087】の記載から、エポキシ系列の樹脂材質から成るモールディング部50を設けることにより、基板10、イメージセンサ20及び受動素子12が隙間なく封止されているということができる。

そうすると、引用文献12には、次の事項(以下、「引用文献12記載事項」という。)が記載されている。

「ガラスキャップモールディングパッケージには、基板10の上面に実装されるイメージセンサ20と、該イメージセンサ20の上部に設けられる透明部材40と、該イメージセンサ20及び該透明部材40を封止するように設けられた、モールディング部50とを含み、
基板10の上面には、表面実装技術(SMT)で実装された、受動素子12及び各種電子部品が実装され、
基板10、イメージセンサ20及び受動素子12が隙間なく封止されるように、エポキシ系列の樹脂材質から成るモールディング部50を設けること。」

(イ)本願の優先日前に公開された中国特許出願公開第103700634号明細書(以下、「周知文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、周知文献1の記載事項は、当審の訳文で示す。

「技術分野
[0001] 本発明は、パッケージ構造に関し、特にカメラモジュール及びそのパッケージ構造と、パッケージング方法に関するものである。」

「[0042] 図2は、本発明の一実施例のカメラモジュールの構造を説明する図であり、このカメラモジュールはカメラモジュールのパッケージ構造、レンズモジュール8とフレキシブル回路基板(図示せず。)を含む。ここでパッケージ構造は、回路基板1、画像検知チップ2、赤外線フィルタ5及びパッケージ部6を含み、レンズモジュール8は、カメラレンズ81及びボイスコイルモータ82を含み、ボイスコイルモータ82がパッケージ構造のパッケージ部6上に接着されている。
[0043] 図2に示すように、本実施例のカメラモジュールは、赤外線フィルタ5と画像検知チップの検知領域21の間で形成される閉空間が比較的小さく、これによりほこりなどの不純物を効果的に遮断し、ビデオ画像の品質を向上させることを保証する。;また、赤外線フィルタ5の大きさは、画像検知チップの検知領域21の大きさよりわずかに大きいので、赤外線フィルタの材料を節約し、コストを削減する。
[0044] 具体的に、図3は本発明の一実施例のカメラモジュールのパッケージ構造の構造図である。図3に示すように、このカメラモジュールのパッケージ構造は、回路基板1、画像検知チップ2、受動素子3、赤外線フィルタ5とパッケージ部6を含む。
[0045] 回路を備えた回路基板1は、第一表面11と第二表面12を相対的に有し、画像検知チップ2と受動素子3を回路基板1の第一表面11に配置し、画像検知チップ2は回路基板1の第一表面11の中央に設けられ、受動素子3は画像検知チップ2の周囲に配置し、受動素子3は具体的にはコンデンサである。
[0046] 外部映像を取得するための画像検知チップ2は、具体的には、CMOSセンサチップである。画像検知チップ2は、検知領域21と非検知領域22を有し、そのうち検知領域21は画像検知チップ2の中央領域に位置し、その他の領域で非検知領域22を構成し、非検知領域22条の溶接パッドによって画像検知チップ2と回路基板1の電気的接続を実現する。
[0047] パッケージ部6は、回路基板1の第一表面11及び前記画像検知チップ2の非検知領域22の少なくとも一部に配置され、そしてそれは受動素子3を被覆するように形成され、これにより受動素子3の脱落を困難とする。赤外線フィルタ5は、パッケージ部6上に位置し、画像検知チップの検知領域21の対応する位置に平行に設置され、赤外線フィルタ5、画像検知チップの検知領域21及びパッケージ部6との間で閉空間を形成し、この閉空間は比較的小さく、これによりほこりなどの不純物の侵入を効果的に遮断し、ビデオ画像の品質を向上させることを保証する。」

「[0053] 図4に示すように、本発明の上記のいずれかの実施例のカメラモジュールのパッケージング方法は下記のステップを含む。
[0054] S100では、回路を備えた大きな回路基板を提供し、それは第一表面と第二表面を相対的に有し、前記大きな回路基板上には、カメラモジュールのパッケージ構造を形成するための、少なくともN個の回路基板1を含み、回路基板1は第一の表面11と第二の表面12を有する。
[0055] S101では、表面実装技術(SMT)により、前記大きな回路基板の、それぞれの回路基板1の第一の表面11の対応する位置の上に、コンデンサなどの受動素子3を取り付ける。
[0056] S102では、表面実装技術(SMT)により、前記大きな回路基板の、それぞれの回路基板1の第一の表面11の対応する位置の上に、検知領域21と非検知領域22を有する、画像検知チップ2を取り付ける。
[0057] S103では、電気的接続を形成する為に、金属ワイヤボンディングによって、画像検知チップ2と回路基板1の間に金属配線7を形成する。
・・・中 略・・・
[0062] S108では、大きなパッケージ構造を切断し、回路基板1、画像検知チップ2、受動素子3、赤外線フィルタ5、及びパッケージ部6を含むN個の独立したパッケージ構造を得る。
・・・中 略・・・
[0065] 上記のパッケージング方法では、パッケージ部6は、インサート射出成形プロセスによって形成することもできる。これは、具体的には、上記のステップS103の後に、以下を含む。
[0066] パッケージ部6と一致する構造を有する射出成形金型を提供する。;ステップS103で処理された回路基板1及び赤外線フィルタ5は、前記赤外線フィルタ5を前記画像検知チップの検知領域21の上方の対応する位置に配置するように、金型に配置する。;熱によって溶融したプラスチック材料が射出成形金型に注入され、冷却及び硬化した後、金型から外され、プラスチック材料がパッケージ部6を形成し、赤外線フィルタ5は、パッケージ部6に固定されており、赤外線フィルタ5、パッケージ部6、及び画像検知チップの間に閉空間が形成し、これにより大きなパッケージ構造を形成し、その後のS108に進む。」

「図3



上記図3の記載から、回路基板1及び画像検知チップ2並びに受動素子3は、パッケージ部6により隙間なく封止されていることが見て取れる。
そうすると、上記[0065]及び[0066]の記載から、パッケージ部6は、射出成形金型を用い、溶融したプラスチック材料により、インサート射出成形プロセスによって、回路基板1及び画像検知チップ2並びに受動素子3を隙間なく封止しているということができる。

そうすると、周知文献1には、次の事項(以下、「周知文献1記載事項」という。)が記載されている。

「カメラモジュールのパッケージ構造は、回路基板1、画像検知チップ2、受動素子3、赤外線フィルタ5とパッケージ部6を含み、
受動素子3は具体的にはコンデンサであって、
パッケージ部6は、受動素子3の脱落を困難とするように、受動素子3を被覆するように形成され、
パッケージ部6は、射出成形金型を用い、溶融したプラスチック材料により、インサート射出成形プロセスによって、回路基板1及び画像検知チップ2並びに受動素子3を隙間なく封止するように形成すること。」

(エ)周知技術
上記引用文献12記載事項及び周知文献1記載事項にあるように、以下の技術は周知技術である。

「画像検知チップと、コンデンサなどの受動素子が実装された回路基板を含むカメラモジュールにおいて、受動素子を被覆するように、封止樹脂をモールド成形により形成し、回路基板及び画像検知チップ並びにコンデンサなどの受動素子を隙間なく封止すること。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「回路基板32」及び「感光性センサ31」は、それぞれ本件補正発明の「回路基板」及び「感光ユニット」に相当する。
そして、引用発明は、「2つの感光性センサ31」を備え、「各感光性センサ31は、回路基板32に取り付けられるとともに、回路基板32と電気的に接続され」ているから、このことは、本件補正発明の「前記回路基板で結合された少なくとも2つの感光ユニットを備える」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「2つの感光性センサ31と、回路基板32を備え、各感光性センサ31は、回路基板32に取り付けられるとともに、回路基板32と電気的に接続され」ている「感光性アセンブリ30」は、本件補正発明の「回路基板、及び前記回路基板で結合された少なくとも2つの感光ユニットを備える感光装置」に相当する。

(イ)引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「エンジニアリングプラスティック粒子によって形成された材料をモールド型に注ぎ込んで製造され」ており、また、「感光性アセンブリ30」を「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封止およびパッケージ」しているから、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、モールド成形により製造された封入部材、すなわちモールドシーラーということができる。
そして、引用発明の「感光性アセンブリ30」は「2つの感光性センサ31」と「回路基板32」を備えているから、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「2つの感光性センサ31」と「回路基板32」を封入して、一体の統
で明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」と、本件補正発明の「前記回路基板及び前記感光ユニットを密封して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラー」とは、「前記回路基板及び前記感光ユニットを封入して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラー」である点で共通する。

(ウ)引用発明の「1または複数の電子部品321」は、「回路基板32に取り付けられた」ものであるから、「感光性アセンブリ30」が備えているものであり、また、「回路基板32」から突出しているといえる。
そして、本願明細書の段落【0155】の「電子的要素26は、抵抗器、コンデンサ、ダイオード、三極管、ポテンショメータ、リレー、プロセッサ、ドライバ等である場合があるが、これに限定されるものではない。」の記載によると、本件補正発明の「電子的要素」は、電子部品であるということができる。
そうすると、引用発明の「感光性アセンブリ30」が「1または複数の電子部品321」を備えることは、本件補正発明の「前記感光装置が、前記回路基板から突出する少なくとも1つの電子的要素を備え」ることに相当する。

(エ)引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は「回路基板32」に連結され、さらに「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11」は、「回路基板32に取り付けられた1または複数の電子部品321を受け入れ収容するために設けられた電子部品収容空洞11を更に有し、電子部品321は、連結体11の電子部品収容空洞111内に単独で封入およびパッケージされる」ことから、「1または複数の電子部品321」を「封入およびパッケージ」することによって、「1または複数の電子部品321」の外部への曝露を防いでいるということができる。
そうすると、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11」により「電子部品321」を「封入およびパッケージ」することと、本件補正発明の「前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され且つ密封され」ることとは、「前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入される」点で共通する。

(オ)本願明細書の段落【0204】の「モールドシーラー27Lは、接続体271L及び2つの外側リング体272Lを含み、接続体271Lは2つの外側リング体272Lの間で成形接続されて、外側リング体272Lを接続体271Lにより間隔を置いて分離する。したがって、外側リング体272Lのそれぞれは、対応する光学ウィンドウ231Lを形成する。」の記載によると、本件補正発明の「外側リング体」は「光学ウィンドウ」を形成するものである。
また、本願明細書の段落【0045】の「一実施形態では、モールドシーラーは、それぞれ感光ユニットのために2つの光チャネルを形成するために、感光ユニットと位置合わせされた2つの光学ウィンドウを有する。」の記載によると、「光学ウィンドウ」は「光チャンネル」を形成するためのものである。
そうすると、本件補正発明の「外側リング体」は「光チャンネル」を形成するためのものであるということができる。
一方、引用発明の「スタンド本体12」は、「四角形状の中空を有する環状の形を成」しているから、リング状であるということができる。また、この「四角形状の中空を有する環状の形」は、「光チャネル121」を形成するためのものであるから、引用発明の「2つのスタンド本体12」は、本件補正発明の「2つの外側リング体」に相当する。
してみると、引用発明の「連結体11および2つのスタンド本体12を備え」る「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、本件補正発明の「接続体及び2つの外側リング体を備え」る「モールドシーラー」に相当する。
加えて、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「エンジニアリングプラスティック粒子によって形成された材料をモールド型に注ぎ込んで製造され」、「連結体11およびスタンド本体12は一体形成され」ているから、引用発明の「連結体11」は、「2つのスタンド本体12」と一体化して接続されているといえる。
そうすると、引用発明の「連結体11」は、本件補正発明の「成形により前記2つの外側リング体に一体化して接続される」「前記接続体」に相当する。

(カ)引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージ」は、「2つの感光性センサ31」が「直線上に配置され」ているから、アレイ撮像モジュールのパッケージであるということができる。
また、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージ」は、上記(イ)の検討を参酌すると、モールド成形により製造れた「マルチカメラモジュール結合スタンド10」と「感光性アセンブリ30」からなるものであり、成形感光性部品、すなわち成形感光性アセンブリであるといえるから、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージ」は、本件補正発明の「アレイ撮像モジュールの成形感光性アセンブリ」に対応する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「アレイ撮像モジュールの成形感光性アセンブリであって、前記成形感光性アセンブリが、
回路基板、及び前記回路基板で結合された少なくとも2つの感光ユニットを備える感光装置と、
前記回路基板及び前記感光ユニットを封入して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラーと、
を備え、
前記感光装置が、前記回路基板から突出する少なくとも1つの電子的要素を備え、前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され、
前記モールドシーラーが、接続体及び2つの外側リング体を備え、前記接続体が、成形により前記2つの外側リング体に一体化して接続される、成形感光性アセンブリ。」

[相違点1]
本件補正発明が「前記回路基板及び前記感光ユニットを密封して、一体の統合装置を形成するために成形されるモールドシーラー」を備えているのに対して、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「2つの感光性センサ31」と「回路基板32」を備える「感光性アセンブリ30」を「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10上で封止およびパッケージ」しているから、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」が、「2つの感光性センサ31」と「回路基板32」を封入し、一体の統合装置を形成しているといはいえるものの、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」が、「2つの感光性センサ31」と「回路基板32」を密封しているとはいえない点。

[相違点2]
本件補正発明が「前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され且つ密封され」ているのに対して、引用発明は、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10の連結体11は、回路基板32に取り付けられた1または複数の電子部品321を受け入れ収容するために設けられた電子部品収容空洞11を更に有し、電子部品321は、連結体11の電子部品収容空洞111内に単独で封入」するものであるから、本件補正発明の「前記電子的要素が、前記電子的要素の外部への曝露を防ぐために前記モールドシーラーによって封入され」るのと同様の特定がされているといえるものの、本件補正発明の「前記電子的要素」が、「前記モールドシーラーによって」「密封され」ることに対応する特定がされていない点。

(4)相違点についての当審判断
相違点1及び相違点2は、いずれも、「モールドシーラーによって」「密封」されることに関するものであるから、まとめて判断する。
ア 上記(2)イ(エ)で検討したとおり「画像検知チップと、コンデンサなどの受動素子が実装された回路基板を含むカメラモジュールにおいて、受動素子を被覆するように、封止樹脂をモールド成形により形成し、回路基板及び画像検知チップ並びにコンデンサなどの受動素子を隙間なく封止すること」は、当該技術分野における周知技術であり、回路基板を含むカメラモジュールを製造する時に、樹脂をモールド型に注ぎ込んで製造した後、回路基板に連結するか、封止樹脂をモールド成形により、回路基板及び画像検知チップ並びにコンデンサなどの受動素子を隙間なく封止するように形成するかは、当該技術分野における設計的事項である。
そうすると、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10と感光性アセンブリ30からなるパッケージ」を製造する際に、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」を「エンジニアリングプラスティック粒子によって形成された材料をモールド型に注ぎ込んで製造」し、「回路基板32」と「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」を連結することを、上記周知技術に置き換え、「電子部品321」を被覆するように、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」をモールド成形により形成し、「回路基板32」及び「2つの感光性センサ31」並びに「電子部品321」を「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」によって隙間なく封止、すなわち密封することとし、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成と同様の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

イ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「3−3.拒絶査定の理由に対する反論
審判請求人は、今般の拒絶査定の理由につきまして、下記のとおり反論を申述致します。
上述の限定事項は、モールドシーラー27を回路基板22上に一体化する、本願発明により提供される成形工程を強調するべく選択されているものであり、モールドシーラー27は、モジュールの全体的な強度を保証するべく回路基板22内に一体化される接続体271も備えております。
引用文献1は、回路基板に取り付けられた結合型ブラケットを提供する、審判請求人の従来のアレイモジュールであり、そのため、接続体を中央に配置することを考慮する必要は全くありません。もし(たとえば、限定はされないが)回路基板内に電子部品があれば、引用文献1では、電子部品に接触するのを避けるべく接続体を中央に配置してはなりません。
加えて、他の引用文献は、二重カメラモジュールには関係ない単一カメラモジュールを対象とするものであります。そのため、回路基板の強度や、光学軸偏位を引き起こす二重カメラモジュール又はマルチカメラモジュールの強度変形を考慮するのは不必要であります。すなわち、他の引用文献は、二重カメラモジュールに関するいかなる技術的示唆も有しておりません。
さらに、当業者にとっては、引用文献1及び本願の技術的なルートプロセスは互いに完全に異なるものであり、そのため、本願発明の技術的解決法を得るべく他の引用文献1引用文献1と組み合わせるのは困難であります。
従いまして、本願発明は引用文献1〜13及び他の周知技術に対して進歩性を有するようになりましたので、特許法第29条第2項に基づく拒絶理由は解消されたものと思われます。」
旨主張する。

しかしながら、引用発明の「感光性アセンブリ30」は、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10(本件補正発明の「モールドシーラー」に相当する。)上で封入およびパッケージされ」ており、また、「感光性アセンブリ30」は「回路基板32」(本件補正発明の「回路基板」に相当する。)を備えているから、「回路基板32」と「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は一体化されているということができる。
そして、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「連結体11」(本件補正発明の「接続体」に相当する。)を備えているから、「回路基板32」と「連結体11」も一体化されているということができる。
加えて、引用発明の「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」は、「連結体11」および「2つのスタンド本体12」を備え、「スタンド本体12」は「連結体11の両側に対称に伸長し」ていることから、「連結体11」は、「マルチレンズカメラモジュール結合スタンド10」の中央に配置されているということができる。
なお、本件補正発明は、「成形感光性アセンブリ」の発明であって、「成形感光性アセンブリ」の製造方法に関する発明ではないから、ルートプロセスが異なるという請求人の主張は、本件補正発明の記載に基づくものではない。
また、上記(4)で検討したように、「画像検知チップと、コンデンサなどの受動素子が実装された回路基板を含むカメラモジュールにおいて、受動素子を被覆するように、封止樹脂をモールド成形により形成し、回路基板及び画像検知チップ並びにコンデンサなどの受動素子を隙間なく封止すること」は、当該技術分野における周知技術であるから、この周知技術を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到することである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年12月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、令和2年3月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし10及び12並びに14ないし16に係る発明は、引用文献1ないし13に記載された事項に基づいて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.中国特許出願公開第105187697号明細書
2.米国特許出願公開第2005/0063033号明細書
3.特開2014−038942号公報
4.特開2008−091397号公報
5.特開昭57−102057号公報
6.特開2016−033963号公報
7.特開2011−018747号公報
8.特開2011−077297号公報
9.特開2001−308302号公報
10.特開2008−300462号公報
11.特開2013−038628号公報
12.特開2012−182491号公報
13.特開2011−035361号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、12及び周知文献1並びにその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「モールドシーラー」についての「前記モールドシーラーが、接続体及び2つの外側リング体を備え、前記接続体が、成形により前記2つの外側リング体に一体化して接続される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加した本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明並びに引用文献12及び周知文献1に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに引用文献12及び周知文献1に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 河本 充雄
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-06-06 
結審通知日 2022-06-07 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2018-547880
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 小田 浩
辻本 泰隆
発明の名称 アレイ撮像モジュール及び成形感光性アセンブリ、並びに電子機器向けのその製造方法  
代理人 高岡 亮一  

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