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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1391405
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-01 
確定日 2022-11-10 
事件の表示 特願2017−517309「半固体電極を有する電気化学セルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日国際公開、WO2016/073575、平成29年11月 9日国内公表、特表2017−533548〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年11月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 8月22日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月14日付け:拒絶理由通知
令和 2年 8月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月29日付け:拒絶査定
令和 3年 6月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年6月1日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年6月1日の手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和3年6月1日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項1に係る補正事項を含むものである。
そして、補正前の請求項1及び本件補正による請求項1は、それぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正された箇所を示す)。

〈補正前の請求項1〉
「【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第1の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第1の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第2の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、前記第1の集電体の前記第2の表面が前記第2の集電体の前記第2の表面に結合されている、第2の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第3の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記半固体アノードと前記第1の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータと、
第1の表面および第2の表面を有する第4の集電体であって、前記第4の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第4の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第4の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第5の集電体であって、前記第5の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第5の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第5の集電体と、
前記第4の集電体の前記半固体アノードと前記第5の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第2のセパレータと、
を有する電気化学セルスタック。」

〈本件補正による請求項1〉
「【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第1の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第1の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第2の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第1の集電体の前記第2の表面が前記第2の集電体の前記第2の表面に第1のスペーサを介して結合されている、第2の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第3の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記半固体アノードと前記第1の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータと、
第1の表面および第2の表面を有する第4の集電体であって、前記第4の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第4の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第3の集電体の前記第2の表面が前記第4の集電体の前記第2の表面に第2のスペーサを介して結合されている、第4の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第5の集電体であって、前記第5の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第5の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第5の集電体と、
前記第4の集電体の前記半固体アノードと前記第5の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第2のセパレータと、
を有する電気化学セルスタック。」

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正による請求項1に係る補正は、補正前の請求項1にはなかった構成である「第1のスペーサ」、「第2のスペーサ」を新たに付加するものである。
なお、令和3年6月1日の審判請求書によれば、「スペーサ」を配置することにより半固体電極と集電体との間の「圧力および接触面積を増加させることができる」という作用効果を奏するとされているが、そのような事項は本件明細書には記載されていないから、補正前と本件補正とで発明が解決しようとする課題は同一であるとはいえない。
よって、補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものではなく、本件補正による請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかであり、特許法第17条の2第5項第1号、第3号、第4号のいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

(2)独立特許要件について(予備的見解)
上述したように、本件補正による請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号のいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
ここで、仮に「第1のスペーサ」、「第2のスペーサ」によって集電体同士の結合状態が限定されたものと解釈すると、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるとして、本件補正による請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、予備的に以下検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明は、上記「1」の〈本件補正による請求項1〉の欄に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1、引用発明
a 原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2014/150210号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。また、日本語ファミリーの文献である特表2016−511521号公報の記載を当審の仮訳として併記する。なお、下線は当審で付与した。
「[00123] As described herein, increasing the thickness of the cathode and/or increasing the active material loading in the cathode are two ways that the benefits of a high capacity anode can be utilized. While these are not viable options with conventional cathodes for the reasons described above, various embodiments of semi-solid cathodes described herein can be made thicker than the maximum thickness of 200 μm achievable with conventional cathodes and with loading densities that can be up to 5 times higher than conventional cathodes. FIG. 4 shows a schematic illustration of an electrochemical cell 400 that includes a positive current collector 410, a negative current collector 420, and a separator 430 disposed between the positive current collector 410 and the negative current collector 420. Both the positive current collector 410 and the negative current collector 420 have a thickness t11 and the separator 430 has a thickness t12. A semi-solid cathode 440 having a thickness t13is disposed between the positive current collector 410 and the separator 430, and a high capacity anode 450 having a thickness t14is disposed between the negative current collector 420 and the separator 430.

[00124] The anode 450 is a high capacity anode that can be formed using conventional methods as described before with reference to FIG. 2 or any other conventional method. In some embodiments, the anode 450 can be a stationary semi-solid or a flowable semi-solid anode as described herein. The cathode 440 is a semi-solid cathode that can be a stationary semi-solid cathode or a flowable semi-solid cathode as described herein. In some embodiments, the semi-solid cathode is substantially free from binders that are typically used in conventional calendered electrodes. In contrast to conventional cathodes, e.g., the cathodes 240 and 340, the semi-solid cathode 440 can be made thicker than 200 μm such as, for example, thicker than 250 μm, 300 μm, 350 μm, 400 μm, 450 μm, 500 μm, 600 μm, 700 μm, 800 μm, 900 μm, 1,000 μm, or 1,500 μm , and up to 2,000 μm or more as described herein. In some embodiment, the cathode can be at least about two times, three times, four times, five times, or even six times the thickness of the anode. The semi-solid cathode 440 can also formulated to have up to five times the loading density of conventional cathodes. The thicker cathode 440 and higher loading densities can be achieved with the semi-solid cathode 440 without the negative consequences associated with thicker conventional electrodes.

[00125] The ability to substantially increase the thickness t13 of the semi-solid cathode 440 eliminates the restriction on the thickness t14 of the high capacity anode 450 that is imposed by the limitations of the conventional cathodes, e.g., cathode 250 and 350. The anode 450 can therefore be made thicker to match the capacity of the thicker cathode 450, For example, the anode 450 can have a thickness t14 of about 70 μm to about 200 um using conventional coating/calendering manufacturing methods or upwards of 600 μm or even higher if a semisolid anode is used as describe herein,

[00126] Therefore, the semi-solid cathode 440 and high capacity anode 450 of the electrochemical cell 400 formed using formulations and methodologies described herein can allow the maximum capacity offered by the high capacity materials of the anode 450 to be utilized in an electrochemical cell with fewer stacks. In some embodiments, the semi-solid cathode 440 and high capacity anode 450 can be used to make a single electrochemical cell 400 without any stacking. Because stacking is not needed or the number of stacks in a battery using the semi-solid cathode 440 is substantially less than the number of stacks needed in a high capacity anode and conventional cathode battery, for example electrochemical cell 300, or a conventional anode, conventional cathode battery, for example, electrochemical cell 200, the ratio of active materials to inactive materials in a cell stack formed from electrochemical cell 400, is substantially higher than that of the electrochemical cells 200 and 300. Thus, most of the volume of the assembled battery is occupied by active charge storing materials, which leads to increased overall charge capacity and energy density of the battery. For example, as shown in FIG. 4, the thickness t11 of the current collectors 410 and 420 is the same as current collectors 3 10 and 320 (i.e., 20 μm each), and the thickness t12 of the separator 430 is the same as the separator 330 (i.e., 20 μm ), which represents the total inactive material thickness of 60 μm. If the thickness t13 of the semi-solid cathode 440 is 500 μm and the thickness t14 of the high capacity anode 450 is 150 μm, the total active material thickness is 650 μm. Therefore, approximately 8.4% of the total thickness of the electrochemical cell 400 is occupied by inactive material, which does not contribute to the energy density and charge capacity of the battery. Since the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 400 is approximately half the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 200 (16%) and approximately one-third the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 300 (23%), and because the full utilization of the high capacity anode 450 and higher loading density of the semi-solid cathode 440, the electrochemical cell 400 has a much higher energy density than the other electrochemical cells 200 and 300.」
(当審の仮訳:[00123] 本明細書に記載されているように、正極の厚さを増加すること及び/又は正極内の活物質の投入量を増加することは、大容量負極の恩恵を利用できる2つの方法である。これらは上記の理由により従来の正極では実現可能なオプションではないが、本明細書に記載されている半固体正極の様々な実施形態は従来の正極で達成可能な200μmという最大厚さより厚くすることができ、投入密度は従来の正極より5倍まで高くすることができる。図4は、正の集電体410と、負の集電体420と、正の集電体410と負の集電体420との間に配置されたセパレータ430とを含む、電気化学セル400の概略図を示している。正の集電体410及び負の集電体420はどちらも厚さt11を有し、セパレータ430は厚さt12を有する。厚さt13を有する半固体正極440は正の集電体410とセパレータ430との間に配置され、厚さt14を有する大容量負極450は負の集電体420とセパレータ430との間に配置されている。

[00124] 負極450は、図2に関連して前述した従来の方法又は任意のその他の従来の方法を使用して形成できる大容量負極である。いくつかの実施形態では、負極450は、本明細書に記載されているように静止半固体又は流動可能な半固体負極にすることができる。正極440は、本明細書に記載されているように静止半固体正極又は流動可能な半固体正極にできる半固体正極である。いくつかの実施形態では、半固体正極は、従来のカレンダー加工した電極で典型的に使用されている結合剤を実質的に含まない。従来の正極、例えば、正極240及び340とは対照的に、半固体正極440は、本明細書に記載されているように、例えば、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、又は1500μmより厚く、2000μm以上までなど、200μmより厚くすることができる。実施形態によっては、正極は負極の厚さの少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、又は6倍にさえすることができる。また、半固体正極440は、従来の正極の投入密度の5倍まで有するように配合することもできる。より厚い従来の電極に関連するマイナスの結果をもたらさずに、より厚い正極440とより大きい投入密度を半固体正極440で達成することができる。

[00125] 半固体正極440の厚さt13を実質的に増加できることにより、従来の正極、例えば、正極250及び350の制限事項によって課せられた大容量負極450の厚さt14に対する制約が解消される。従って、負極450は、より厚い正極450の容量と整合するようにより厚くすることができる。例えば、負極450は、従来の被覆/カレンダー製造方法を使用して約70μm〜約200μm或いは本明細書に記載されているように半固体負極が使用される場合は600μm以上の厚さt14を有することができる。

[00126] 従って、本明細書に記載されている配合及び方法を使用して形成された電気化学セル400の半固体正極440及び大容量負極450により、負極450の大容量物質によって提供される最大容量をより少ないスタックの電気化学セルで使用することができる。いくつかの実施形態では、半固体正極440及び大容量負極450は、積層なしの単一電気化学セル400を作成するために使用することができる。積層が不要であるか又は半固体正極440を使用する電池内のスタック数が大容量負極と従来の正極の電池、例えば、電気化学セル300、或いは従来の負極と従来の正極の電池、例えば、電気化学セル200において必要なスタック数よりかなり少ないので、電気化学セル400から形成されたセル・スタック内の不活性物質に対する活物質の割合は電気化学セル200及び300のものよりかなり高くなる。従って、組み立てられた電池の体積のほとんどは活性電荷蓄積物質によって占有され、それにより電池の全体的な電荷容量及びエネルギー密度が増加する。例えば、図4に示されているように、集電体410及び420の厚さt11は集電体310及び320と同じ(即ち、それぞれ20μm)であり、セパレータ430の厚さt12はセパレータ330と同じ(即ち、20μm)であり、これは60μmという不活性物質の全厚を表している。半固体正極440の厚さt13が500μmであり、大容量負極450の厚さt14が150μmである場合、活物質の全厚は650μmになる。従って、電気化学セル400の全厚のほぼ8.4%は、電池のエネルギー密度及び電荷容量に貢献しない不活性物質によって占有される。電気化学セル400内の不活性物質の割合は電気化学セル200内の不活性物質の割合(16%)のほぼ半分であり、電気化学セル300内の不活性物質の割合(23%)のほぼ1/3であるので、大容量負極450の完全利用並びに半固体正極440のより高い投入密度のために、電気化学セル400は他の電気化学セル200及び300よりかなり高いエネルギー密度を有する。)

図4


b 上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
(a)[00126]の記載によれば、半固体正極440を含む電気化学セル400をスタック(積層)して使用し、セル・スタックを形成できることが記載されている。

(b)[00123]の記載によれば、電気化学セル400は、正の集電体410と、負の集電体420と、正の集電体410と負の集電体420との間に配置されたセパレータ430とを含み、半固体正極440は正の集電体410とセパレータ430との間に配置され、負極450は負の集電体420とセパレータ430との間に配置されている。
また、[00124]の記載によれば、負極450は、静止半固体負極にすることができ、正極440は、静止半固体正極にすることができる。
してみると、電気化学セル400は、正の集電体410、静止半固体正極440、セパレータ430、静止半固体負極450、負の集電体420の順に積層されたものである。

(c)図4より、正の集電体410のセパレータ430と反対側の面は被覆されておらず、負の集電体420のセパレータ430と反対側の面は被覆されていないことが見てとれる。

c 上記技術事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電気化学セルをスタック(積層)したセル・スタックにおいて、
電気化学セルは、正の集電体、静止半固体正極、セパレータ、静止半固体負極、負の集電体の順に積層され、
正の集電体のセパレータと反対側の面は被覆されておらず、
負の集電体のセパレータと反対側の面は被覆されていない
セル・スタック。」

(イ)引用文献5
a 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10−27602号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明の電極その他の材料および形状は以下に示した例に限定されるものでは無い。図1は本発明の積層形電池の極群の一実施例を示す斜視図、図2は図1の極群の分解図、図3は正極の端子部同士を接続する前の図1のA−A’一部欠裁断面図、図4は図1のA−A’一部欠裁断面図であり、1は正極、2は負極、3はセパレータである。正極1と負極2は同一寸法、同一形状である。
【0011】正極1は、長方形のアルミニウム箔からなる集電体1aの片面にコバルト酸リチウム(LiCoO2 )等の活物質粉末とアセチレンブラック等の導電剤と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物から成る合剤層(活物質層)1bが配置されている。図2に示すように、正極1の作用面を二分する中心線(図の一点鎖線)上の一端の集電体1aと合剤層1bを切り欠いて切欠部1cが形成され、他端の合剤層1bを除去して集電体1aを露出させ端子部1dが形成されている。
【0012】負極2は銅箔からなる集電体2aの片面に、炭素粉末とPVDFの混合物から成る合剤層(活物質層)2bが配置されている。そして、図2に示すように、正極1と同様に負極2を二分する中心線(図の一点鎖線)上の一端の集電体2aと合剤層2bを切り欠いて切欠部2cが形成され、他端の合剤層2bを除去して集電体2aを露出させ端子部2bが形成されている。
【0013】セパレータ3は、図2のように、セパレータ3を二分する中心線(図の一点鎖線)の両端に正極1または負極2の切欠部1cまたは2cと同様な形状の切欠部3aが形成されている。
【0014】この様な正極1と負極2とセパレータ3を2枚ずつ用いて図1のような極群を組み立てるには、図2のように、2枚の負極2を切欠部2c同士と端子部2同士が重なるように集電体2a同士を重なり合わせて積層し、負極2の合剤層2bと正極1の合剤層1bとがセパレータ3を介して重なるように積層する。この状態では、上下の正極1の端子部1dが図3のように分離した状態なので、矢印方向に力を加え、図4のように端子部1d同士を接触させ、スポット溶接する。負極2の端子部2dも同様にスポット溶接して並列接続する。その後、この極群を電槽(図示せず)内へ収納し、例えば6フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )のプロピレンカーボネイト(PC)溶液からなる電解液を注入し、開口部を封止して本発明の積層形電池を完成する。
【0015】なお、図5に示すように、金属片から成るリード端子4を端子部1d,2dの溶着と同時に溶着して端子とすることも可能である。また、本実施例では、正極と負極をそれぞれ2枚ずつ用いた極群を示したが、このような極群を2組、3組、・・・と積み重ねて高容量の電池を組み立てることができる。電極の端子の位置および形状には、前記の例の他に図6の(イ)?(ホ)に示したような実施例等も可能である。図6において、5は電極、5aは切欠部、5bは端子部を示す。」



b 上記記載から、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
(a)【0011】の記載によれば、正極1は、集電体1aの片面に活物質層1bが配置されている。また、【0012】の記載によれば、負極2、は集電体2aの片面に活物質層2bが配置されている。

(b)【0014】の記載によれば、正極1と負極2とセパレータ3を2枚ずつ用いて極群を組み立てるには、集電体2a同士を重なり合わせて積層し、負極2の合剤層2bと正極1の合剤層1bとがセパレータ3を介して重なるように積層する。
そして、【0011】、【0012】に記載された上記技術事項を考慮すれば、正極1と負極2とセパレータ3を2枚ずつ用いて極群を組み立てるには、負極2の集電体2aの活物質層2bが配置されていない面同士を重なり合わせて積層し、負極2の合剤層2bと正極1の合剤層1bとがセパレータ3を介して重なるように積層する。
してみると、正極1の集電体1a、正極1の活物質層1b、セパレータ3、負極2の活物質層2b、負極2の集電体2a、負極2の集電体2a、負極2の活物質層2b、セパレータ3、正極1の活物質層1b、正極1の集電体1aの順に積層することが記載されている。

(c)【0015】の記載によれば、極群を2組、3組と積み重ねて高容量の電池を組み立てることができるものである。
してみると、極群を2組積み重ねる場合、正極1の集電体1a、正極1の活物質層1b、セパレータ3、負極2の活物質層2b、負極2の集電体2a、負極2の集電体2a、負極2の活物質層2b、セパレータ3、正極1の活物質層1b、正極1の集電体1a、正極1の集電体1a、正極1の活物質層1b、セパレータ3、負極2の活物質層2b、負極2の集電体2a、負極2の集電体2a、負極2の活物質層2b、セパレータ3、正極1の活物質層1b、正極1の集電体1aの順に積層する。

c 以上のことより、引用文献5には、次の技術(以下、「引用文献5記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。
「正極の集電体、正極の活物質層、セパレータ、負極の活物質層、負極の集電体、負極の集電体、負極の活物質層、セパレータ、正極の活物質層、正極の集電体、正極の集電体、正極の活物質層、セパレータ、負極の活物質層、負極の集電体、負極の集電体、負極の活物質層、セパレータ、正極の活物質層、正極の集電体の順に積層する」技術。

(ウ)引用文献6
a 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002−359006号公報(以下、「引用文献6」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリチウム二次電池に関し、より詳細にはリチウム二次電池、電池セル及び電池の製造方法に関する。」

「【0040】本発明においては袋状のスパーサーの中に正極及び/又は負極が入っていることを必須とするが、正極又は負極の一方のみが袋状スペーサーに入っていればよい。積層方法の具体例としては、集電体の片面にのみ正極材層を有する正極と、集電体の片面にのみ負極材層を有する負極を用い、正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極の順で積層し、2枚の負極は集電体側を対向させて積層(集電体側を背中合わせにして積層:図1、図2参照)することが挙げられる。この2枚のスペーサーを熱融着により袋状することにより1つの電池セルを作成することができる。熱融着は、電池の形状が四角形である場合、通常4辺とも熱融着するが、3辺だけでもよい。また、必ずしも完全に密封するように熱融着する必要はなく、破線状に熱融着してもよい。なお、外装材により電池要素を包み、脱機密封する場合もあるので、その際は袋状スペーサー内の気体も脱気できるように、完全に密封されないように熱融着されている方が好ましい。」

「【0042】上記のようにして得られた電池セル(積層セル)を必要に応じ複数積層して、形状可変性を有するフィルムからなるケースに密着収納することによって薄型電池が製造できる。形状可変性を有するフィルムからなるケースとしては、例えば高分子フィルムからなる、軽量で薄いラミネートフィルムがあげられる。ラミネートフィルムとしては金属箔と高分子フィルムのラミネート素材からなるフィルムが好適に使用できる。収納に際しては真空封入をすることが好ましい。むろん電池の機器への装着等の利便を図るため、ケースに電池を封入した後、必要ならば複数のケースを、剛性を持つ外装ケースに収納することも可能である。」



b 上記記載から、引用文献6には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
(a)【0040】の記載によれば、集電体の片面にのみ正極材層を有する正極と、集電体の片面にのみ負極材層を有する負極を用い、正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極の順で積層することにより1つの電池セルを作成する。

(b)【0042】の記載によれば、電池セルを必要に応じ複数積層する。
してみると、上記(a)の技術事項を考慮すれば、2つの電池セルを積層する場合、正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極/正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極の順で積層する。

c 以上のことより、引用文献6には、次の技術(以下、「引用文献6記載の技術」という。)が記載されている。
「正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極/正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極の順で積層する」技術。

ウ 対比
(ア)引用発明の「静止半固体正極」は本件補正発明の「半固体カソード」に相当する。そして、引用発明の「正の集電体」は、セパレータとの反対側の面は被覆されていないから、静止半固体正極が配置された面が本願補正発明の「第1の集電体」の「第1の表面」に相当し、他の面が「第2の表面」に相当する。
してみれば、引用発明の「正の集電体」は本願補正発明の「第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第1の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第1の集電体」に相当する。

(イ)引用発明の「静止半固体負極」は本件補正発明の「半固体アノード」に相当する。そして、引用発明の「負の集電体」は、セパレータとの反対側の面は被覆されていないから、静止半固体負極が配置された面が本願補正発明の「第3の集電体」の「第1の表面」に相当し、他の面が「第2の表面」に相当する。
してみれば、引用発明の「負の集電体」は本願補正発明の「第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第3の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第3の集電体」に相当する。

(ウ)引用発明は「正の集電体、静止半固体正極、セパレータ、静止半固体負極、負の集電体の順に積層され」るから、引用発明の「セパレータ」は静止半固体負極と静止半固体正極との間に配置されたものであり、本願補正発明の「前記第3の集電体の前記半固体アノードと前記第1の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータ」に相当する。

(エ)本願補正発明は「第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第2の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第1の集電体の前記第2の表面が前記第2の集電体の前記第2の表面に第1のスペーサを介して結合されている、第2の集電体と、」「第1の表面および第2の表面を有する第4の集電体であって、前記第4の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第4の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第3の集電体の前記第2の表面が前記第4の集電体の前記第2の表面に第2のスペーサを介して結合されている、第4の集電体と、第1の表面および第2の表面を有する第5の集電体であって、前記第5の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第5の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第5の集電体と、前記第4の集電体の前記半固体アノードと前記第5の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第2のセパレータと」を有するのに対して、引用発明は「電気化学セルをスタック(積層)」するものであるが、電気化学セルをどのように積層するか特定されていない点で相違する。

(オ)引用発明の「セル・スタック」は「電気化学セルをスタック(積層)した」ものであるから、本願補正発明の「電気化学セルスタック」に相当する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有するといえる。
〈一致点〉
「第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第1の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第1の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第3の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記半固体アノードと前記第1の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータと、
を有する電気化学セルスタック。」

〈相違点〉
本願補正発明は「第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第2の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第1の集電体の前記第2の表面が前記第2の集電体の前記第2の表面に第1のスペーサを介して結合されている、第2の集電体と、」「第1の表面および第2の表面を有する第4の集電体であって、前記第4の集電体の前記第1の表面の上に半固体アノードが配置されており、前記第4の集電体の前記第2の表面は被覆されておらず、前記第3の集電体の前記第2の表面が前記第4の集電体の前記第2の表面に第2のスペーサを介して結合されている、第4の集電体と、第1の表面および第2の表面を有する第5の集電体であって、前記第5の集電体の前記第1の表面の上に半固体カソードが配置されており、前記第5の集電体の前記第2の表面は被覆されていない、第5の集電体と、前記第4の集電体の前記半固体アノードと前記第5の集電体の前記半固体カソードとの間に配置された第2のセパレータと」を有するのに対して、引用発明は「電気化学セルをスタック(積層)」するものであるが、電気化学セルをどのように積層するか特定されていない点。

エ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア)引用発明は電気化学セルを複数積層したものであるところ、積層方法としては、電気化学セル同士を極性の異なる集電体(正の集電体と負の集電体)が重なるように積層するか、極性の同じ集電体(正の集電体同士、又は負の集電体同士)が重なるように積層するかの二者択一しかない。そして、引用文献5記載の技術、引用文献6記載の技術(上記「ウ(イ)c」及び「ウ(ウ)c」参照)のように、極性の同じ集電体(正の集電体同士、又は負の集電体同士)が重なるように積層することは本願の優先日前周知技術であったことを考慮すれば、引用発明において、複数の電気化学セルを極性の同じ集電体が重なるように積層したセル・スタックとすることは、当業者が適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
また、特開2008−198492号公報の段落【0027】に「となり合う直列ブロック13の正極集電体層2a同士又は負極集電体層6a同士が、絶縁層を介して対向するように積層されていてもよいし、となり合う直列ブロック13の正極集電体層2aと負極集電体層6aとが、絶縁層を介して対向にするように積層されていてもよい。」(下線は当審で付与した。以下、同様。)と記載され、また、再公表特許第WO2013/018769号の段落【0080】に「具体的には、第1層の基本電池セル14aの正極集電体13と、第2層の基本電池セル14bの負極10との間に、疎水性の絶縁体20を介装して、正極集電体13と負極10とが直接接触しないように構成する。疎水性の絶縁体20としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)シートやポリエチレン(PE)シートを用いることができる。」、段落【0083】に「本実施例では、前方第1層の基本電池セル14aと後方第2層の基本電池セル14bとは、同種金属からなる正極集電体13同士が隣り合うため、異種金属同士の接触とはならず、基本電池セル14a,14b間に局部電池は形成されず、基本電池セル14a,14bを並列接続とする場合には、それらの間に、必ずしも疎水性の絶縁体20は必要ではない。しかしながら、基本電池セル14a,14bを直列接続する場合には、この絶縁体20は必須の部材となる。」と記載されるように、極性の同じ集電体同士を重ねるに際し、絶縁層(本願補正発明の「スペーサ」に相当)を介して重ねることは本願の優先日前周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、複数の電気化学セルを極性の同じ集電体が重なるように積層するに際し、スペーサを介して積層することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、本願補正発明の相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

(イ)そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明に周知技術を適用したことにより得られる効果に対して、当業者が想起し得ないものとも認められない。

(ウ)審判請求人は、令和3年6月1日の審判請求書(第5頁第2ないし23行)において、概略以下のように主張している。
・引用文献5、6は、固体電極を使用することを前提としたスタックセル設計を開示するものであり、引用文献1に開示された半固体電極は、一定の形状を維持することができず、少なくとも引用文献5と同様の製法を採用できるものではない。引用文献1の電気化学セルと、引用文献5、6の電気化学セルとでは製造方法や製造上の問題点が全く異なることから、引用文献1の電気化学セルを、引用文献5又は引用文献6のスタック設計に基づいて、同一極性の集電体同士が重なるように複数積層して、高容量の電池を組み立てることは、当業者が容易に適用し得るものではない。
・引用文献5,6には、同一極性の集電体同士の間にスペーサを配置することについて何ら記載も示唆もなく、本願発明(本願補正発明)の構成を容易に想到し得るものではない。
・本願発明(本願補正発明)によれば、被覆されていない集電体同士の間にスペーサを設けることにより、半固体電極とそれぞれの集電体との間の圧力および接触面積を増加させることができる。

しかしながら、引用文献5、6は極性の同じ集電体が重なるように積層することを示すに過ぎないものであり、引用文献5、引用文献6に記載された製法までも引用文献1に記載されたセル・スタックに適用するものではない。
また、引用文献5,6には、同一極性の集電体同士の間にスペーサを配置することについて何ら記載も示唆もないとしても、上記(ア)に述べたように、極性の同じ集電体同士を重ねるに際し、絶縁層を介して重ねることは本願の優先日前周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、複数の電気化学セルを極性の同じ集電体が重なるように積層するに際し、絶縁層を介して各電気化学セルを積層することは当業者が容易になし得たことである。
そして、「スペーサ」を配置することにより半固体電極と集電体との間の「圧力および接触面積を増加させることができる」という作用効果を奏する主張については、発明が解決しようとする課題を変更するものと認められる(第2[理由]2(1)のとおり)から、「スペーサ」を加えることが特許請求の範囲の減縮であると認定するならば、当該主張を採用することはできない。
なお、スペーサを設けることにより半固体電極と集電体との間の圧力及び接触面積を増加させることができるか否かは、スペーサの材質やスペーサの(半固体電極や集電体に対する)形状により変化するものと認められ、スペーサを設けるのみで必ず得られる効果であるとは認められない。

したがって、請求人の主張は採用できない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年8月11日付の手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2[理由]1」の〈補正前の請求項1〉に摘記されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
請求項1に関する原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献5、6に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2014/150210号
引用文献5:特開平10−27602号公報
引用文献6:特開2002−359006号公報

3.引用文献の記載及び引用発明等
原査定の引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]2(2)イ(ア)」に記載したとおりである。
また、原査定の引用文献5ないし6の記載事項および引用文献5ないし6に記載された技術事項は、上記「第2[理由]2(2)イ(イ)及び(ウ)」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2(2)」で検討した本願補正発明から「第1のスペーサを介して」という事項及び「前記第3の集電体の前記第2の表面が前記第4の集電体の前記第2の表面に第2のスペーサを介して結合されている」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]2(2)ウ及びエ」に記載したとおり、引用発明及び周知技術から当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術から当業者が容易になし得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 酒井 朋広
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-06-17 
結審通知日 2022-06-20 
審決日 2022-07-01 
出願番号 P2017-517309
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 57- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 木下 直哉
山田 正文
発明の名称 半固体電極を有する電気化学セルおよびその製造方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  

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