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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1391408
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-02 
確定日 2022-11-17 
事件の表示 特願2017− 75589「カメラモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017−198979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月5日(パリ条約による優先権主張 2016年4月8日(米国)、2016年6月30日(米国)、2017年3月17日(台湾))の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 9月15日付け:拒絶理由の通知
令和 2年12月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月21日付け:拒絶査定
令和 3年 6月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 8月30日 :上申書
令和 3年12月27日付け:拒絶理由の通知
令和 4年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和4年4月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
金属部材と、
少なくとも1つの第1の配線層と、
前記金属部材と前記第1の配線層の間に配置された第1の絶縁層とを含む複数の層を有し、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するプリズムベース、
前記プリズムベースの前記第1の配線層に電気的に接続されたプリズム駆動機構、および
前記プリズム駆動機構に連結されたプリズムユニットを含み、
前記金属部材の厚さは、前記第1の絶縁層と前記第1の配線層の総厚を超え、前記金属部材から前記プリズム駆動機構までの距離は、前記金属部材の厚さより短く、
前記プリズム駆動機構は、前記プリズムベースに対して回転するように前記プリズムユニットを駆動することができるカメラモジュール。」

第3 拒絶の理由
令和3年12月27日付けで当審が通知した請求項1に関する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

[理由](進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2015−11353号公報

第4 引用文献について
1 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「【0024】
これでは、コンパクトで軽量との次世代デジタル製品の特色要求に応えることができないばかりか、ダブルレンズの効果を発揮することもできず、さらに、製造コストが増大してしまうという課題があった。」

「【0042】
該光学システムは、該光学震動防止機構1、少なくとも1個の光学レンズモジュール2、イメージピックアップモジュール3、及び異なる方向に位置する少なくとも2個の入射窓81、82を備える。」

「【0054】
さらに、該光路調整部品11は、該双軸回転部品12上に設置され、光路A、Bの内の一つ上から届くイメージ光を調整し、該光学レンズモジュール2に投射し、こうしてイメージ光が該イメージピックアップモジュール3の上に結像される。
【0055】
該双軸回転部品12は、光路A、Bの内の一つの上に設置され、少なくとも第一軸方向91と第二軸92において、上方へと、限定された幅の旋回運動を行う。」

「【0065】
図1〜5に示すように、該駆動モジュール13は、該双軸回転部品12に連結し、該双軸回転部品12を駆動し、該第一軸方向91と該第二軸方向92上で、該限定された幅の旋回運動を行う。
【0066】
本実施形態において、該駆動モジュール13は、電磁駆動モジュールであって、少なくとも内搭載フレーム131、外搭載フレーム132、少なくとも1個の第一磁石133、少なくとも1個の第二磁石134、少なくとも1個の第一コイル135、及び少なくとも1個の第二コイル136を備える。
【0067】
該内搭載フレーム131が該内板部123の底面上に結合されており、それと連動する部品であって、該外搭載フレーム132が該外枠部121の底面上に結合されており動かない部品である。」

「【0070】
外搭載フレーム132は、2個の第二連接端1222に近い両側辺上で、第一磁石133に対応する位置に、それぞれ第一コイル135が設置されている。
【0071】
該2個の第一コイル135に通電することで、電磁力を発生させ該内搭載フレーム131上の2個の第一磁石133を押し動かし、該内板部123を連動して、該第一軸方向91に沿って旋回運動を行わせることができる。」

「【0074】
そして、外搭載フレーム132は、2個の第一連接端1232に近い両側辺上で、第二磁石134に対応する位置に、第二コイル136がそれぞれ設置されている。
【0075】
該第二コイル136に通電することで、電磁力を発生させ、該内搭載フレーム131上の2個の第二磁石134を押し動かし、該内板部123を連動して、該第二軸方向92に沿って旋回運動を行わせることができる。」

「【0079】
該外搭載フレーム132は、楔形枠フレーム構造で、該外枠部121の底面に連接する矩形の第二接触部1321、及び該矩形の第二接触部1321の4個の辺から、該外枠部121から離れる方向へとそれぞれ延伸する4個の第二側面1322a、1322bを備える。
【0080】
該4個の第二側面1322a、1322bの内の2個の側面1322aが相互に対応して直角三角形を呈し、かつ、相互に平行で、別の2個の側面1322bが矩形を呈し、かつ、相互に垂直を呈して繋がっている。」

「【0082】
本発明の第一実施形態中において、該第一磁石133は、該内搭載フレーム131の三角形第一側面1312aの第一収容設置台1313上に設置され、該第一コイル135は、第一回路板1351を通して該外搭載フレーム132の三角形第二側面1322aの第二収容設置台1323上に設置されている。
【0083】
該第二磁石134は、該内搭載フレーム131の矩形第一側面1312bの第一収容設置台1313上に設置されている。該第二コイル136は、第二回路板1361を通して、該外搭載フレーム132の矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置されている。」

「【0086】
本発明の第一実施形態中において、該光路調整部品11は、双軸回転部品12の内板部123の該平面上に設置され、2個の光路A、B上の光をそれぞれ調整して、該光学レンズモジュール2へと投射し、こうして該イメージピックアップモジュール3へと投射する。」

「【0133】
上記を総合すると、本発明第一実施形態の光路の切り換えが可能な光学震動防止機構1は、2個の光路A、Bがそれぞれ投射するイメージ光と該光学レンズモジュール2との間に、スイッチが追加され、該スイッチ機構20を通して、該固定端201上に可動接続する該回転部202に搭載する該震動防止装置10を、180度回転さることで該震動防止装置10上に固定された該光路調整部品11(楔形プリズム)が回転され、2個の光路A、Bのイメージ光を対応して屈折させて2個の光路A、Bの内の一つへと投射させ、さらに2個の光路A、Bの内の一つが該光路調整部品11(楔形プリズム)により該光学レンズモジュール2へと投射され、次に、該光学レンズモジュール2により投射されたイメージ光を、該イメージピックアップモジュール3上に投射させ、2個の光路A、Bが該スイッチ機構20を通して、同一の該光学レンズモジュール2と該イメージピックアップモジュール3を共用し、しかも同時に震動防止動の目的を実現することができる。」

「【0135】
図10に示すように、該光学システムは、スマートフォン(以下では該光学システムをスマートフォンと呼ぶ)の撮影モジュールで、該スマートフォンでは、表と裏両表面に、異なる光路A、B(入射窓81、82)が設置されている。」

2 上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定の根拠とした段落番号を参考までに括弧内に付した。)。
「光路調整部品11(楔形プリズム)は、双軸回転部品12上に設置され、(【0054】、【0133】)
駆動モジュール13は、該双軸回転部品12に連結し、該双軸回転部品12を駆動し、第一軸方向91と第二軸方向92上で、限定された幅の旋回運動を行い、(【0055】、【0065】)
駆動モジュール13は、電磁駆動モジュールであって、少なくとも内搭載フレーム131、外搭載フレーム132、少なくとも1個の第一磁石133、少なくとも1個の第二磁石134、少なくとも1個の第一コイル135、及び少なくとも1個の第二コイル136を備え、(【0066】)
該光路調整部品11(楔形プリズム)は、双軸回転部品12の内板部123の平面上に設置され、(【0086】、【0133】)
外搭載フレーム132は、第一磁石133に対応する位置に、それぞれ第一コイル135が設置され、第一コイル135に通電することで、電磁力を発生させ該内搭載フレーム131上の2個の第一磁石133を押し動かし、該内板部123を連動して、該第一軸方向91に沿って旋回運動を行わせることができ、(【0070】、【0071】)
外搭載フレーム132は、第二磁石134に対応する位置に、第二コイル136がそれぞれ設置され、第二コイル136に通電することで、電磁力を発生させ、該内搭載フレーム131上の2個の第二磁石134を押し動かし、該内板部123を連動して、該第二軸方向92に沿って旋回運動を行わせることができ、(【0074】、【0075】)
該外搭載フレーム132は、4個の第二側面1322a、1322bを備え、該4個の第二側面1322a、1322bの内の2個の側面1322aが相互に対応して直角三角形を呈し、かつ、相互に平行で、別の2個の側面1322bが矩形を呈し、かつ、相互に垂直を呈して繋がっていて、(【0079】、【0080】)
該内搭載フレーム131が該内板部123の底面上に結合されており、それと連動する部品であって、該外搭載フレーム132が該外枠部121の底面上に結合されており動かない部品であり、(【0067】)
第一コイル135は、第一回路板1351を通して、該外搭載フレーム132の三角形第二側面1322aの第二収容設置台1323上に設置され、(【0082】)
第二コイル136は、第二回路板1361を通して、該外搭載フレーム132の矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置されている光学システム。(【0083】、【0042】)」

第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「金属部材と、少なくとも1つの第1の配線層と、前記金属部材と前記第1の配線層の間に配置された第1の絶縁層とを含む複数の層を有し、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するプリズムベース」の構成について

ア 引用発明の「『第一回路板1351』、『第二回路板1361』、及び『外搭載フレーム132』」は、本願発明の「プリズムベース」に相当する。

イ また、引用発明の「該外搭載フレーム132は、4個の第二側面1322a、1322bを備え、該4個の第二側面1322a、1322bの内の2個の側面1322aが相互に対応して直角三角形を呈し、かつ、相互に平行で、別の2個の側面1322bが矩形を呈し、かつ、相互に垂直を呈して繋がってい」るものであるから、引用発明の外搭載フレーム132は、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するといえる。

ウ 引用発明の「外搭載フレーム132」と本願発明の「金属部材」とは、「部材」の点で一致する。
また、回路板は、配線層と絶縁層を含むことは、例示するまでもなく技術常識である。
そうすると、引用発明の「『第一回路板1351』、『第二回路板1361』、及び『外搭載フレーム132』」と、本願発明の「金属部材と、少なくとも1つの第1の配線層と、前記金属部材と前記第1の配線層の間に配置された第1の絶縁層とを含む複数の層」とは、「部材と、少なくとも1つの第1の配線層と、第1の絶縁層とを含む複数の層」の点で一致する。

エ したがって、引用発明の「該外搭載フレーム132は、4個の第二側面1322a、1322bを備え、該4個の第二側面1322a、1322bの内の2個の側面1322aが相互に対応して直角三角形を呈し、かつ、相互に平行で、別の2個の側面1322bが矩形を呈し、かつ、相互に垂直を呈して繋がっていて、第一コイル135は、第一回路板1351を通して該外搭載フレーム132の三角形第二側面1322aの第二収容設置台1323上に設置され、第二コイル136は、第二回路板1361を通して、該外搭載フレーム132の矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置されている」と、本願発明の「金属部材と、少なくとも1つの第1の配線層と、前記金属部材と前記第1の配線層の間に配置された第1の絶縁層とを含む複数の層を有し、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するプリズムベース」とは、「部材と、少なくとも1つの第1の配線層と、第1の絶縁層とを含む複数の層を有し、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するプリズムベース」の点で一致する。

(2)本願発明の「前記プリズムベースの前記第1の配線層に電気的に接続されたプリズム駆動機構、および前記プリズム駆動機構に連結されたプリズムユニットを含み」の構成について

ア 引用発明の「『内板部123』、『内搭載フレーム131』、『第一磁石133』、『第二磁石134』、『第一コイル135』、及び『第二コイル136』」は、本願発明の「プリズム駆動機構」に、
引用発明の「光路調整部品11(楔形プリズム)」は、本願発明の「プリズムユニット」に、
それぞれ相当する。

イ そして、引用発明の「第一コイル135は、第一回路板1351を通して該外搭載フレーム132の三角形第二側面1322aの第二収容設置台1323上に設置され、第二コイル136は、第二回路板1361を通して、該外搭載フレーム132の矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置され」、「第一コイル135に通電」し、「第二コイル136に通電」しているから、第一回路板1351、第二回路板1361に、第一コイル135、第二コイル136は電気的に接続されているといえる。

ウ また、引用発明の「光路調整部品11(楔形プリズム)は、双軸回転部品12上に設置され、駆動モジュール13は、該双軸回転部品12に連結し、該双軸回転部品12を駆動し、第一軸方向91と第二軸方向92上で、限定された幅の旋回運動を行い、駆動モジュール13は、電磁駆動モジュールであって、少なくとも内搭載フレーム131、外搭載フレーム132、少なくとも1個の第一磁石133、少なくとも1個の第二磁石134、少なくとも1個の第一コイル135、及び少なくとも1個の第二コイル136を備え、光路調整部品11(楔形プリズム)は、双軸回転部品12の内板部123の該平面上に設置され」るものであり、「該内搭載フレーム131が該内板部123の底面上に結合されており、それと連動する部品」であるから、「内板部123」、「内搭載フレーム131」、「第一磁石133」、「第二磁石134」、「第一コイル135」、及び「第二コイル136」は、光路調整部品11(楔形プリズム)に連結されているものといえる。

エ したがって、引用発明は、上記「前記プリズムベースの前記第1の配線層に電気的に接続されたプリズム駆動機構、および前記プリズム駆動機構に連結されたプリズムユニットを含み」の構成を備えているといえる。

(3)本願発明の「前記プリズム駆動機構は、前記プリズムベースに対して回転するように前記プリズムユニットを駆動することができるカメラモジュール」の構成について

ア 引用発明の「光学システム」は、本願発明の「カメラモジュール」に、相当する。

イ 引用発明の「外搭載フレーム132は、第一磁石133に対応する位置に、それぞれ第一コイル135が設置され、第一コイル135に通電することで、電磁力を発生させ該内搭載フレーム131上の2個の第一磁石133を押し動かし、該内板部123を連動して、該第一軸方向91に沿って旋回運動を行わせることができ、外搭載フレーム132は、第二磁石134に対応する位置に、第二コイル136がそれぞれ設置され、第二コイル136に通電することで、電磁力を発生させ、該内搭載フレーム131上の2個の第二磁石134を押し動かし、該内板部123を連動して、該第二軸方向92に沿って旋回運動を行わせることができ」るものであるから、引用発明は、「前記プリズム駆動機構は、前記プリズムベースに対して回転するように前記プリズムユニットを駆動することができる」との構成を備えているといえる。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「部材と、
少なくとも1つの第1の配線層と、
第1の絶縁層とを含む複数の層を有し、少なくとも一つの第1部分と前記第1部分とは延在方向が異なる少なくも一つの第2部分とを有するプリズムベース、
前記プリズムベースの前記第1の配線層に電気的に接続されたプリズム駆動機構、および 前記プリズム駆動機構に連結されたプリズムユニットを含み、
前記プリズム駆動機構は、前記プリズムベースに対して回転するように前記プリズムユニットを駆動することができるカメラモジュール。」

【相違点1】
プリズムベースにつき、本願発明は「金属」部材を含むのに対し、引用発明は外搭載フレーム132を備えるものの外搭載フレーム132が金属かどうか明らかでない点。

【相違点2】
プリズムベースにつき、本願発明は「第1の絶縁層」が「前記金属部材と前記第1の配線層の間に配置された」のに対し、引用発明は外搭載フレーム132、第一回路板1351、及び第二回路板1361を備えるものの、そのような配置なのか明らかでない点。

【相違点3】
本願発明は「前記金属部材の厚さは、前記第1の絶縁層と前記第1の配線層の総厚を超え、前記金属部材から前記プリズム駆動機構までの距離は、前記金属部材の厚さより短く」なっているのに対し、引用発明は外搭載フレーム132、第一回路板1351、第二回路板1361、第一コイル135、第二コイル136、第一磁石133、第二磁石134、内搭載フレーム131、及び内板部123を備えるものの、そのような関係になっているのか明らかでない点。

第6 判断
1 相違点1ないし3について
(1)引用発明の「光路調整部品11(楔形プリズム)は、双軸回転部品12上に設置され、駆動モジュール13は、該双軸回転部品12に連結し、該双軸回転部品12を駆動し、第一軸方向91と第二軸方向92上で、限定された幅の旋回運動を行」うものであり、「外搭載フレーム132は、第一磁石133に対応する位置に、それぞれ第一コイル135が設置され、第一コイル135に通電することで、電磁力を発生させ該内搭載フレーム131上の2個の第一磁石133を押し動かし、該内板部123を連動して、該第一軸方向91に沿って旋回運動を行わせることができ、外搭載フレーム132は、第二磁石134に対応する位置に、第二コイル136がそれぞれ設置され、第二コイル136に通電することで、電磁力を発生させ、該内搭載フレーム131上の2個の第二磁石134を押し動かし、該内板部123を連動して、該第二軸方向92に沿って旋回運動を行わせることができ」るものであるから、外搭載フレーム132に対し、光路調整部品11(楔形プリズム)を旋回運動させることが把握される。また、引用発明の「該外搭載フレーム132が該外枠部121の底面上に結合されており動かない部品であ」る。
そうすると、光路調整部品11(楔形プリズム)を旋回運動させるため、及び外搭載フレーム132が外枠部121の底面上に結合されており動かない部品とするために、外搭載フレーム132は所定の強度が必要であるといえるから、所定の強度とするために、外搭載フレーム132に金属部材を選択すること(相違点1に対応)、外搭載フレーム132の厚さを厚くすること(相違点3に対応)は、当業者が想定する事項である。
そして、金属部材に回路板を配置(回路板が、絶縁層上に導電性の回路パターンが形成されてなるものであることは技術常識である。)するときに、絶縁層側を金属部材側に配置することは、自明であり、外搭載フレーム132に金属部材を採用することによって、外搭載フレーム132と配線層との間に絶縁層が配置されることになる(相違点2に対応)。

(2)また、回路板としてフレキシブル回路板等の薄型のものは技術常識であり、引用文献1では、コンパクトで軽量とすることを課題(【0025】)としており、さらに、撮影モジュールをスマートフォンに用いること(【0135】)を想定しており、また、第一回路板1351、及び第二回路板1361は、外搭載フレーム132の三角形第二側面1322a、及び矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置されるものであるから、第一回路板1351、及び第二回路板1361は導通を考慮するものであればよく、そのように考えると、引用発明において、第一回路板1351、及び第二回路板1361として薄型のものを採用することが自然であるといえる(相違点3に対応)。
さらに、引用発明の「第一コイル135は、第一回路板1351を通して、該外搭載フレーム132の三角形第二側面1322aの第二収容設置台1323上に設置され、第二コイル136は、第二回路板1361を通して、該外搭載フレーム132の矩形第二側面1322bの第二収容設置台1323上に設置され」るものであるから、第一コイル135は第一回路板1351上に設置され、第二コイル136は第二回路板1361上に設置されているといえる。

(3)そうすると、引用発明において、外搭載フレーム132を金属とし、第一回路板1351、及び第二回路板1361の絶縁層を外搭載フレーム132側に配置し、配線層を第一コイル135、及び第二コイル136側に配置し、外搭載フレーム132の厚さを、第一回路板1351、又は第二回路板1361の総厚を超え、外搭載フレーム132から第一コイル135、又は第二コイル136までの距離を、外搭載フレーム132の厚さより短くすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)したがって、引用発明において相違点1ないし3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。

2 そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人は、令和4年4月1日付けの意見書において、
(1)「引用文献の『外搭載フレーム132』を、本願図6Aに示すような内部構造としての層であると考えることには、違和感を覚えます。また、本願明細書の段落「0056」には、「プリズムベース1800が上述の構造を含むため、プリズムアセンブリM2は、フレキシブル回路板(FPC)またはプリント回路板(PCB)を更に配置する必要がなく、」との記載があり、引用文献のように、『外搭載フレーム132』とは別個の部品として、『第一回路基板1351』や『第二回路基板1361』を配置するものは、本願発明とは明確に区別されるべきものであると思料します。」、
(2)「引用文献に記載の発明では、金属部材、絶縁層および配線層の厚さの関係は明示されておりませんが、引用文献の図6等からは、『外搭載フレーム132』とは別個の部品である『第一回路基板1351』や『第二回路基板1361』は、『外搭載フレーム132』に比べて厚いことが看取されます(参考図2(引用文献図6拡大・加筆)参照)。」、
(3)「補正後の請求項1に係る発明は、引用文献には記載のない特徴を有しており、その特徴が他の特徴と有機的に結合することにより、プリズムベースが別途回路基板を用意しなくて良いことによる製造プロセスの簡略化、第1の配線層および第2絶縁層の総厚が薄いことによる体積の減少など、引用文献にない顕著な効果を奏します(本願段落「0056」等参照)。したがって、補正後の請求項1に係る発明は、引用発明から容易に想到できたものではなく、進歩性を有します。」
旨主張している。

2 上記主張について検討する。
(1)上記1(1)及び1(3)について
本願発明において、金属部材と、第1の配線層と、第1の絶縁層とを別個の部品としないとの特定はなく、上記1(1)、1(3)は、本願発明に基づかない主張である。例えば、本願発明は、金属部材と、第1の配線層及び第1の絶縁層を備えたフレキシブル回路板(FPC)とを含む複数の層を有し、プリズムベースとしたものも包含されている。
また、引用発明の第一回路板1351、及び第二回路板1361として薄型のものを採用することは、上記第6の1(2)で説示したとおり、自然である。
(2)上記1(2)の点については、引用文献1の図6は透視模式図(引用文献1の【0030】)であり、当該図6の透視模式図で、1322bの第2側面が線で記載されているとしても、技術常識も考慮すれば、実際の外搭載フレーム132の第2側面1322bが線の厚さであることは現実的ではない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-06-20 
結審通知日 2022-06-21 
審決日 2022-07-04 
出願番号 P2017-075589
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
野村 伸雄
発明の名称 カメラモジュール  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  

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