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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1391431
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-21 
確定日 2022-12-06 
事件の表示 特願2019− 13114「情報処理装置、方法、およびコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020−123029、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成31年1月29日の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和 2年 3月23日付け:拒絶理由通知書
同年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月 8日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月11日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年 6月21日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定(令和 3年 3月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

「●理由1(明確性)この出願の特許請求の範囲(請求項1−10)の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
●理由2(進歩性)この出願の請求項1−10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2005−275459号公報
2.特開2011−209861号公報 」


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正により、請求項1に追加された「支払先識別番号」、「前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み」という事項は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に違反するものではない。また、同第4項に違反するものでもない。
そして、請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「支払先属性情報」について、「支払先識別番号」という限定を付加し、同じく「取引種別」について、「物理店舗取引および仮想店舗取引を含」むという限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項7についてする補正も同様に特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1−8に係る発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に適合する(独立特許要件を満たす)ものである。


第4 本願発明

本願請求項1−8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明8」という。)は、令和 3年 6月21日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
制御装置、通信装置、および記憶装置を備えた情報処理装置であって、前記記憶装置は、取引の支払先に関する支払先属性情報を記憶し、前記支払先属性情報は、支払先識別番号および前記支払先についての支払先種別を含み、
前記通信装置は、クライアントコンピュータから、前記取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号および前記取引の支払先に対応する支払先識別番号を含む要求電文を受信し、
前記制御装置は、
前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得し、
前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件を判定し、
前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定し、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み、
前記取引が指定条件に従って許可または制限されるかを判定し、前記指定条件は、前記取引種別ごとに前記キャッシュレス決済手段を通じた取引の一部を許可または制限することを示し、
前記通信装置は、前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取引種別は、国内取引および海外取引を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取引種別は、キャッシング取引を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記取引に対するオーソリ処理を実行し、
前記オーソリ処理の結果、前記取引が制限されないと判定した場合、
前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する前記取引を判定し、
前記取引が前記指定条件に従って許可または制限されるかを判定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記取引が、前記指定条件に従って制限されないと判定した場合、前記取引に対するオーソリ処理を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記要求電文は、前記取引に対応する取引種別を含み、
前記制御装置は、前記要求電文における前記取引種別にさらに基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータデバイスによって実行される方法であって、前記コンピュータデバイスは、取引の支払先に関する支払先属性情報を記憶し、前記支払先属性情報は、支払先識別番号および前記支払先についての支払先種別を含み、
クライアントコンピュータから、前記取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号および前記取引の支払先に対応する支払先識別番号を含む要求電文を受信するステップと、
前記支払先識別番号に基づいて、前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得するステップと、
前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件を判定するステップと、
前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定するステップであって、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含む、ステップと、
前記取引が指定条件に従って許可または制限されるかを判定するステップであって、前記指定条件は、前記取引種別ごとに前記キャッシュレス決済手段を通じた取引の一部を許可または制限することを示す、ステップと、
前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項8】
コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータ実行可能命令は、コンピュータによって実行されるとき、前記コンピュータに、請求項7に記載の方法を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。」


第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1(特開2005−275459号公報)

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。)

(1)「【0010】
本発明は、このような問題点に鑑み、クレジットカード会社が定める利用条件とは異なる利用者個別の利用条件を従来よりも簡単に設定することができ、かつ、クレジットカード会社の負担する構築費用を従来よりも安く抑えることができる、クレジットカードのチェックのためのシステムを提供することを目的とする。」

(2)「【0015】
図1に示すように、クレジットカード利用システム100は、個別利用管理システム1、オーソリホスト2、オーソリ端末3、および通信回線41、42などによって構成される。
【0016】
オーソリホスト2は、従来からクレジットカード会社ごとに設置されている、クレジットカードの所有者(消費者、顧客)がクレジットカードによる決済を求めた際の与信チェックを行うホストコンピュータである。
【0017】
オーソリ端末3は、クレジットカード会社の加盟店(以下、「店舗」と記載する。)に従来から設置されている、通信回線41を介してオーソリホスト2に対して与信チェックを要求するための端末装置である。「CAT(Credit Authorization Terminal)」と呼ばれる場合もある。POS(Point of Sales)システムの端末装置またはATM(Automatic Teller Machine)などにオーソリ端末3の機能が備えられている場合もある。近年、オーソリ端末3は、ほとんどのクレジットカード会社で共通に用いられる。したがって、基本的に、店舗には1種類のオーソリ端末3があればよい。ただし、店舗が加盟しているクレジットカード会社の組合せによっては、複数の種類のオーソリ端末3を用意しなければならない場合がある。
【0018】
このように、オーソリホスト2、オーソリ端末3、および通信回線41によって形成されるシステムは、既存の与信システム(オーソリシステム)である。ただし、オーソリホスト2には、本発明に係る個別利用管理システム1と連携して処理を行うための、決済可否問合せ部21(図3参照)が設けられている。これについては、後に説明する。」

(3)「【0019】
個別利用管理システム1は、クレジットカード会社がオーソリホスト2で行う与信チェックとは別に、顧客が店舗でクレジットカードによる支払いを求めた際に、そのクレジットカードによる決済(取引)を行ってもよいか否かのチェックを行うシステムである。この個別利用管理システム1は、係るチェックのサービスを提供する機関(以下、「第三者機関」と記載する。)に設けられる。決済の可否の条件は、クレジットカードの所有者ごとに任意に設定することができる。以下、所有者ごとの決済の可否(クレジットカードの利用の可否)の条件を「個別利用条件」と記載する。
・・・途中省略・・・
【0023】
個別利用管理システム1は、図2に示すように、CPU1a、RAM1b、ROM1c、磁気記憶装置1d、および通信インタフェース1eなどによって構成される。磁気記憶装置1dには、図3に示すような、問合せ受付部101、決済可否チェック部102、チェック結果送信部103、ユーザ登録処理部104、設定更新部105、会員情報管理部106、本人確認処理部107、および画面データ送信部108などの機能を実現するためのプログラムおよびデータがインストールされている。これらのプログラムおよびデータは必要に応じてRAM1bにロードされ、CPU1aによってプログラムが実行される。図3の一部または全部の機能を、ハードウェアによって実現するようにしてもよい。個別利用管理システム1として、サーバ用の装置(サーバ機)が用いられる。図3の各部を複数台のサーバ機などに分散するように、個別利用管理システム1を構成してもよい。
・・・途中省略・・・
【0026】
図3の会員情報管理部106は、会員情報データベースDB1、個別利用条件データベースDB2、およびカード利用履歴データベースDB3などのデータベースを有しており、会員登録されている各顧客に関する情報の管理を行う。
・・・途中省略・・・
【0035】
個別利用条件データベースDB2は、図7に示すように、個別利用条件に関する情報を記憶している。会員ユーザは、会員情報データベースDB1に登録したクレジットカードごとに、個別利用条件を設定することができる。また、1枚のクレジットカードに対して複数の個別利用条件を設定し、使い分けることができる。個別利用条件は、次のようにして設定することができる。」

(4)「【0056】
〔カード決済時の処理〕
図14は個別決済可否チェック処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0057】
図3に戻って、店舗のオーソリ端末3は、その店舗で支払いを行おうとする顧客のクレジットカードのカード番号を読み取る。そして、そのカード番号およびその店舗を識別する店舗識別番号を、そのクレジットカードのクレジットカード会社のオーソリホスト2に送信する。
【0058】
すると、オーソリホスト2は、受信したカード番号に基づいて、従来の与信チェックを行う。その結果、決済が不可であると判別された場合は、オーソリ端末3に対してその旨を通知する。この場合は、その顧客は、そのクレジットカードでの支払いを行うことができない。
【0059】
一方、決済が可能であると判別された場合は、さらに、オーソリホスト2の決済可否問合せ部21は、個別利用管理システム1に対して決済の可否を問い合わせる。この際に、オーソリ端末3より受信したカード番号およびその店舗の場所および業種などに関する店舗情報を個別利用管理システム1に送信する。
【0060】
個別利用管理システム1において、オーソリホスト2からの問合せが問合せ受付部101によって受け付けられると、決済可否チェック部102は、図14に示すフローチャートのような手順で、決済の可否をチェックする。
【0061】
オーソリホスト2から送信されてきたカード番号に対応する個別利用条件70を、図7の個別利用条件データベースDB2より検索する(図14の#101)。複数の個別利用条件70があった場合は、前に説明したように、いずれか1つの個別利用条件70を選択する。すなわち、これらの個別利用条件70の「有効時期」に設定がある場合は、その日の日付時刻に基づいていずれか1つの個別利用条件70を選択する。設定がない場合は、「有効区分=1」である個別利用条件70を選択する。
【0062】
現在のそのクレジットカードに関する状況が、選択した個別利用条件70に含まれる各項目の条件を満たしているか否かを判別する(#102)。具体的には、利用限度条件(図7の2段目の各項目の条件)を満たしているか否かを、カード利用履歴データベースDB3に記憶されているそのクレジットカードの履歴を集計することによって判別する。さらに、利用場所条件(図7の3段目の各項目の条件)を満たしているか否かを、オーソリホスト2より受信した店舗情報(店舗の場所および業種)に基づいて判別する。
【0063】
その結果、すべての項目の条件を満たしている場合は(#103でYes)、「決済可」と判別し(#108)、その旨を問合せ元のオーソリホスト2に対して通知する(#110)。
【0064】
一方、いずれか1つでも条件を満たしていなかった場合は、原則として「決済不可」と判別する。しかし、個別利用条件70は会員ユーザが自分のライフスタイルなどに合わせて自由に設定したものであって、これを厳密に適用すると、本人にとって不便な場合がある。また、問合せに係るそのクレジットカードは、クレジットカード会社のオーソリホスト2による与信チェックをパスしているので、一定の信用を有していると言える。
・・・途中省略・・・
【0075】
オーソリホスト2は、個別利用管理システム1から「決済可」の通知を受けた場合は、そのクレジットカードによる決済を許可する。そして、オーソリホスト2およびオーソリ端末3は決済処理を開始する。「決済不可」の通知を受けた場合は、オーソリホスト2は、その旨をオーソリ端末3に対して通知するとともに、決済処理を中止する。」

(5)「【図1】

【図2】

【図3】

【図7】



上記(1)から(5)の記載から引用文献1には以下の発明が記載されている。

「個別利用管理システム1、オーソリホスト2、オーソリ端末3、および通信回線41、42などによって構成されるクレジットカード利用システム100における個別利用管理システム1であって(【0015】)、
個別利用管理システム1は、CPU1a、RAM1b、ROM1c、磁気記憶装置1d、および通信インタフェース1eなどによって構成され(【0023】)、
磁気記憶装置1dには、問合せ受付部101、決済可否チェック部102、チェック結果送信部103、ユーザ登録処理部104、設定更新部105、会員情報管理部106、本人確認処理部107、および画面データ送信部108などの機能を実現するためのプログラムおよびデータがインストールされており、これらのプログラムおよびデータは必要に応じてRAM1bにロードされ、CPU1aによってプログラムが実行され(【0023】、会員情報管理部106は、会員情報データベースDB1、個別利用条件データベースDB2、およびカード利用履歴データベースDB3などのデータベースを有しており(【0026】)、個別利用条件データベースDB2は、個別利用条件に関する情報を記憶しており(【0035】)、
カード決済時(【0056】)、
個別利用管理システム1において、オーソリホスト2からの問合せが問合せ受付部101によって受け付けられると、決済可否チェック部102は(【0060】)、オーソリホスト2から送信されてきたカード番号に対応する個別利用条件70を個別利用条件データベースDB2より検索し(【0061】)、現在のそのクレジットカードに関する状況が、選択した個別利用条件70に含まれる各項目の条件を満たしているか否かを判別し、具体的には、利用限度条件を満たしているか否かを、カード利用履歴データベースDB3に記憶されているそのクレジットカードの履歴を集計することによって判別し、さらに、利用場所条件を満たしているか否かを、オーソリホスト2より受信した店舗情報(店舗の場所および業種)に基づいて判別し(【0062】)、その結果、すべての項目の条件を満たしている場合は、「決済可」と判別し、その旨を問合せ元のオーソリホスト2に対して通知し(【0063】)、一方、いずれか1つでも条件を満たしていなかった場合は、原則として「決済不可」と判別し(【0064】)、「決済不可」の通知を受けた場合は、オーソリホスト2は、その旨をオーソリ端末3に対して通知するとともに、決済処理を中止し(【0075】)、
前記問合せ受付部101によって受け付けられる問合せは、店舗のオーソリ端末3がその店舗で支払いを行おうとする顧客のクレジットカードのカード番号を読み取り、そのカード番号およびその店舗を識別する店舗識別番号を、オーソリホスト2に送信し(【0057】)、オーソリホスト2が、受信したカード番号に基づいて、従来の与信チェックを行い(【0058】)、決済が可能であると判別された場合、オーソリホスト2の決済可否問合せ部21が、個別利用管理システム1に対して決済の可否を問い合わせたものであり、この際に、オーソリ端末3より受信したカード番号およびその店舗の場所および業種などに関する店舗情報が個別利用管理システム1に送信される(【0059】)、
個別利用管理システム1。」(以下、「引用発明」という。)

2 引用文献2(特開2011−209861号公報)

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。)

(1)「【0001】
取引カードに設定されたカード番号を用いて商取引を行う取引方法及び取引システムに関する。」

(2)「【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に適用される発明の概念図である。取引システムは、商取引を行う利用者の指示を管理サーバ2に伝える利用者端末1と、取引カードの管理を行う管理サーバ2と、利用者が商取引を行う店舗の店舗サーバ3と、を有する。利用者端末1と管理サーバ2、管理サーバ2と店舗サーバ3は、ネットワークを介して接続する。また、店舗サーバ3の店舗がネットワーク上の仮想店舗である場合には、利用者端末1と店舗サーバ3との間もネットワークを介して接続される。」

(3)「【0034】
管理サーバ20は、代替番号管理部220、照合部230及び決済部240を有する。代替番号管理部220は、PC12からの要求に応じて代替番号情報を更新し、代替番号を管理する。照合部230は、店舗サーバ30からの代替番号を用いた取引依頼について、カード管理DB21に格納される代替番号情報に基づき、商取引の許可または拒否を判定する。決済部240は、照合部230によって、許可された商取引の決済処理を行う。
・・・途中省略・・・
【0037】
決済部240は、照合部230によって許可された商取引の決済処理を行う。
カード管理DB21は、取引カードに関する取引カード情報、代替番号に関する代替番号情報及び支払相手先に関する支払相手先情報を有する。以下、それぞれについて説明する。」

(4)「【0040】
図6は、代替番号情報の一例を示した図である。代替番号情報2110は、カード番号2111に対応付けて、代替番号2112と、条件2113と、有効期限2114と、支払上限額設定の利用総額2115及び1取引の上限2116と、支払相手先設定の相手先2117、エリア2118及びカテゴリ2119と、利用回数設定211aと、認証番号211bと、利用回数211cと、取引済金額211dと、総利用口数211eと、を有する。」

(5)「【0044】
図7は、支払相手先情報の一例を示した図である。支払相手先情報2120には、支払相手先に関する情報として、支払相手先2121、国2122、地域2123及び都市の2124、カテゴリ2125を登録する。支払相手先情報2120は、管理サーバ20の条件照合部232が、店舗サーバ30から取得した取引内容と、代替番号情報2110の支払相手先設定とを照合する際に、参照する。支払相手先2121は、支払いの相手先を識別する識別情報である。エリアには、支払相手先2121に関連付けて、支払相手先が所在する国2122、地域2123及び都市2124が登録される。「国内」は、日本国内であることを示す。カテゴリ2125には、対応する店舗のカテゴリを登録する。なお、ここでは、図7に示した支払相手先情報2120を予めカード管理DB21に格納しておくとしたが、支払相手先情報2120は、条件照合部232が、支払相手先の確認が必要となるときに、例えば、店舗サーバ30から取得するとしてもよい。」

(6)「【0050】
(2)取引処理
利用者は、実際の店舗またはWeb店舗で買い物を行うとき、代替番号を用いて決済を行う。決済処理が開始されると、店舗サーバ30は、利用者に対して決済を行うカード番号を要求し、利用者は、カード番号の替わりに代替番号を入力する。以下の説明では、利用者は、代替番号を用いて決済処理を行うとする。店舗であれば、店舗端末31bに代替番号を入力する。Web店舗であれば、PC12に表示されたカード番号入力画面より、代替番号を入力する。店舗サーバ30は、代替番号を取得すると、少なくとも店舗の識別情報と利用金額を含む取引内容に、代替番号を付加した取引依頼を生成し、管理サーバ20に取引依頼を送信する。
【0051】
管理サーバ20は、店舗サーバ30から取引依頼を取得すると、照合部230が代替番号の照合を行う。代替番号検索部231は、取引依頼から代替番号を抽出し、抽出した代替番号に基づいて代替番号情報2110を検索し、該当する代替番号の代替番号情報を抽出する。なお、代替番号情報が検出されないときは、エラー応答を返す。代替番号情報が検出されたときは、抽出した代替番号情報の利用制限と取引内容とを照合し、商取引を許可するか否かを判定する。例えば、図6に示した代替番号2112の「0124 5689 3678」では、条件2113が「有」であるので、利用制限の判定を行う。まず、有効期限をチェックする。有効期限2114が、発行日から「1週間(1w)」となっているので、取引日と照合し、有効期限内であれば、次の項目を判定する。取引依頼された利用金額を、1取引の上限2116の「20000」と比較する。取引依頼の利用金額が「20000」を超えているときは、取引不可と判定する。超えていないときは、取引済金額211dの「50000」と、取引依頼の利用金額とを合算し、合算値を利用総額2115の「100000」と比較する。合算値が「100000」を超えていないとき、利用回数211cの「1」に1を加算し、利用回数設定211aの「3」を超えていないかどうかを判定する。超えていなければ、商取引を許可する。なお、登録されている利用制限項目の全てのチェックが行われれば、どのような順番でチェックが行われてもよい。また、代替番号2112が「0167 4365 8889」の場合には、支払相手先設定の相手先2117に「A店」という利用制限が設定されているので、取引依頼の店舗識別情報に基づき、店舗を確認する。そして、「A店」でなければ取引不可とする。同様に、代替番号2112が「0456 6654 2987」の場合には、支払相手先設定のエリア2118に「国内」という利用制限が設定されている。条件照合部232は、取引依頼の店舗識別情報に基づき、支払相手先情報2120を検索する。例えば、取引依頼には、店舗識別情報として「B店」が指定されていたとする。支払相手先情報2120の「B店」のエリアは、国2122が「アメリカ」であるので、利用制限の「国内」には当てはまらない。したがって、取引不可とする。
【0052】
店舗サーバ30は、管理サーバ20の条件照合部232から得られた判定結果が、取引不可であれば、これを利用者に通知して商取引を中止する。判定結果が取引可であれば、決済処理を継続し、管理サーバ20に決済依頼を行う。管理サーバ20では、条件照合部232が認めた商取引であれば、決済部240が決済処理を行い、決済を行った代替番号について、代替番号情報2110を更新する。例えば、代替番号情報2110の利用回数211cに1を加算し、利用回数211cを更新する。また、取引済金額211dの値に今回の利用金額を合算し、取引済金額211dを更新する。」

(7)「【図1】


【図4】

【図6】

【図7】




第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 『制御装置、通信装置、および記憶装置を備えた情報処理装置であって、前記記憶装置は、取引の支払先に関する支払先属性情報を記憶し、前記支払先属性情報は、支払先識別番号および前記支払先についての支払先種別を含み、』について

引用発明の個別利用管理システム1は、「CPU1a、RAM1b、ROM1c、磁気記憶装置1d、および通信インタフェース1eなどによって構成され」ており、前記「CPU1a」、「通信インタフェース1e」、「磁気記憶装置1d」は、それぞれ、本願発明1の『制御装置』、『通信装置』、『記憶装置』に相当することは明らかであるとともに、引用発明の「個別利用管理システム1」が本願発明1と同じく『情報処理装置』といえるものであることも明らかである。

なお、前記「磁気記憶装置1d」には、「問合せ受付部101、決済可否チェック部102、チェック結果送信部103、ユーザ登録処理部104、設定更新部105、会員情報管理部106、本人確認処理部107、および画面データ送信部108などの機能を実現するためのプログラムおよびデータがインストールされており、これらのプログラムおよびデータは必要に応じてRAM1bにロードされ、CPU1aによってプログラムが実行され、会員情報管理部106は、会員情報データベースDB1、個別利用条件データベースDB2、およびカード利用履歴データベースDB3などのデータベースを有しており、個別利用条件データベースDB2は、個別利用条件に関する情報を記憶して」いるものの、本願発明1で特定されている『取引の支払先に関する支払先属性情報』に対応する情報は記憶されていない。

イ 『前記通信装置は、クライアントコンピュータから、前記取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号および前記取引の支払先に対応する支払先識別番号を含む要求電文を受信し、』について

本願発明1における『クライアントコンピュータ』について、明細書中に「その店舗に設置されたキャッシュレジスタ機器(POSコンピュータ)」(【0019】)や「携帯電話、タブレットコンピュータおよびPDA・・・、通信機能を備えた任意のコンピュータデバイスを含んでもよい。」(【0026】)が例示されていることを踏まえると、引用発明における「店舗のオーソリ端末3」は「その店舗で支払いを行おうとする顧客のクレジットカードのカード番号を読み取り、そのカード番号およびその店舗を識別する店舗識別番号を、オーソリホスト2に送信」する機能を備えているのであるから、本願発明1の『クライアントコンピュータ』に相当する。

さらに、本願発明1における『要求電文』について、明細書中に「次に、クライアントコンピュータ3は、要求電文をサーバコンピュータ1に送信する(ステップS302)。サーバコンピュータ1の通信装置14が要求電文を受信すると、制御装置11は、要求電文に含まれる情報に基づいて、サーバコンピュータ2にオーソリ処理を依頼する(ステップS303)。このときに、要求電文に含まれる情報がサーバコンピュータ2に送信される。なお、上述したように、サーバコンピュータ2がクライアントコンピュータ3から直接要求電文を受信してもよい。」(【0047】)と記載されていることを踏まえると、本願発明1の『前記通信装置は、クライアントコンピュータから、・・・要求電文を受信し、』とは、クライアントコンピュータ3からサーバコンピュータ1を介してサーバコンピュータ2によって受信される形態も含まれていると解される。

また、引用発明の「問合せ」および「顧客のクレジットカードのカード番号」が、それぞれ、本願発明1の『要求電文』および『取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号』に相当することは明らかであり、前記「問合せ」の受信が「通信インタフェース1e」によって実行されることも明らかである。

してみると、本願発明1と引用発明とは、「前記通信装置は、クライアントコンピュータから、前記取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号を含む要求電文を受信し、」という点で共通しており、他方、引用発明の個別利用管理システム1の問合せ受付部101によって受け付けられる「問合せ」には、「オーソリ端末3より受信したカード番号およびその店舗の場所および業種などに関する店舗情報」は含まれているものの、本願発明1で特定されている『取引の支払先に対応する支払先識別番号』が含まれている旨特定されていない点で相違している。

ウ 『前記制御装置は、前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得し、』について

上記「ア」で言及したように、引用発明の個別利用管理システム1の磁気記憶装置1dには、本願発明1で特定されている『取引の支払先に関する支払先属性情報』に対応する情報は記憶されていないのであるから、引用発明には、本願発明1で特定されている『前記制御装置は、前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得し、』との構成は備わっていない。

エ 『(前記制御装置は、)前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件を判定し、』について

引用発明の個別利用管理システム1は、「オーソリホスト2からの問合せが問合せ受付部101によって受け付けられると、決済可否チェック部102は、オーソリホスト2から送信されてきたカード番号に対応する個別利用条件70を個別利用条件データベースDB2より検索」するのであり、前記「カード番号に対応する個別利用条件70」は、本願発明1の『キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件』に対応するものであるから、引用発明には本願発明1の『前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件を判定し、』との構成が備わっている。

オ 『(前記制御装置は、)前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定し、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み、』について

上記「ア」および「ウ」で言及したように、引用発明の個別利用管理システム1には、本願発明1で特定されている『取引の支払先に関する支払先属性情報』に対応する情報は記憶されておらず、また、『前記制御装置は、前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得し、』との構成も備わっていないのであるから、引用発明には、本願発明1で特定されている『前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定し、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み、』との構成は備わっていない。

カ 『(前記制御装置は、)前記取引が指定条件に従って許可または制限されるかを判定し、前記指定条件は、前記取引種別ごとに前記キャッシュレス決済手段を通じた取引の一部を許可または制限することを示し、』について

引用発明の個別利用管理システム1の決済可否チェック部102は、「オーソリホスト2から送信されてきたカード番号に対応する個別利用条件70を個別利用条件データベースDB2より検索し、現在のそのクレジットカードに関する状況が、選択した個別利用条件70に含まれる各項目の条件を満たしているか否かを判別し、具体的には、利用限度条件を満たしているか否かを、カード利用履歴データベースDB3に記憶されているそのクレジットカードの履歴を集計することによって判別し、さらに、利用場所条件を満たしているか否かを、オーソリホスト2より受信した店舗情報(店舗の場所および業種)に基づいて判別し、その結果、すべての項目の条件を満たしている場合は、「決済可」と判別し、その旨を問合せ元のオーソリホスト2に対して通知し、一方、いずれか1つでも条件を満たしていなかった場合は、原則として「決済不可」と判別」しているのであるから、本願発明1と引用発明とは、「取引が指定条件に従って許可または制限されるかを判定し、」との点で共通しているものの、引用発明の「カード番号に対応する個別利用条件70」は、本願発明1で特定されているような『取引種別ごとに前記キャッシュレス決済手段を通じた取引の一部を許可または制限することを示』しているものではない。

キ 『前記通信装置は、前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信する』について

本願発明1の『応答電文』に対応する「非承認電文」および「承認電文」について、明細書中には、「取引が制限されると判定した場合、通信装置24は、クライアントコンピュータ3に、キャッシュレス決済手段の利用が制限されることを示す値を含む非承認電文を送信する(ステップS313)。非承認電文は、サーバコンピュータ2からクライアントコンピュータ3に直接送信されてもよく、サーバコンピュータ1を介して送信されてもよい。」(【0062】)、「一方で、オーソリ処理の結果、取引が許可されると判定した場合、通信装置24は、クライアントコンピュータ3に、取引が許可されることを示す値を含む承認電文を送信する(ステップS315)。承認電文は、サーバコンピュータ2からクライアントコンピュータ3に直接送信されてもよく、サーバコンピュータ1を介して送信されてもよい。」(【0064】)と記載されていることを踏まえると、本願発明1の『前記通信装置は、前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信する』とは、サーバコンピュータ2からサーバコンピュータ1を介してクライアントコンピュータ3に送信される形態も含まれていると解される。

そして、引用発明の個別利用管理システム1は、「・・・、決済可否チェック部102は、オーソリホスト2から送信されてきたカード番号に対応する個別利用条件70を個別利用条件データベースDB2より検索し、現在のそのクレジットカードに関する状況が、選択した個別利用条件70に含まれる各項目の条件を満たしているか否かを判別し、・・・、その結果、すべての項目の条件を満たしている場合は、「決済可」と判別し、その旨を問合せ元のオーソリホスト2に対して通知し、一方、いずれか1つでも条件を満たしていなかった場合は、原則として「決済不可」と判別し、「決済不可」の通知を受けた場合は、オーソリホスト2は、その旨をオーソリ端末3に対して通知する・・・」のであるから、判別結果である「決済可である旨」または「決済不可である旨」をオーソリホスト2を介してオーソリ端末3に送信している。そして、これらの通知が「通信インタフェース1e」によって実行されることは明らかである。

してみると、引用発明には本願発明1の『前記通信装置は、前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信する』に相当する構成が備わっている。


(2)一致点および相違点

上記「(1)対比」で言及したように、本願発明1と引用発明との間には、以下で示す一致点および相違点がある。

<一致点>
「制御装置、通信装置、および記憶装置を備えた情報処理装置であって、
前記通信装置は、クライアントコンピュータから、前記取引に使用されるキャッシュレス決済手段に対応するキャッシュレス決済手段識別番号を含む要求電文を受信し、
前記制御装置は、
前記キャッシュレス決済手段識別番号に対応する指定条件を判定し、
前記取引が指定条件に従って許可または制限されるかを判定し、
前記通信装置は、前記判定に従って、前記クライアントコンピュータに応答電文を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。」

<相違点1>
本願発明1には、記憶装置について『取引の支払先に関する支払先属性情報を記憶し、前記支払先属性情報は、支払先識別番号および前記支払先についての支払先種別を含み、』との事項が特定されているのに対し、引用発明の「磁気記憶装置1d」には、本願発明1で特定されている『取引の支払先に関する支払先属性情報』に対応する情報は記憶されていない点、および、それに伴い『支払先属性情報』について『支払先識別番号および前記支払先についての支払先種別を含み』との事項も特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1には、『要求電文』について『取引の支払先に対応する支払先識別番号を含む』との事項が特定されているのに対し、引用発明の「問合せ」には、かかる事項が特定されていない点。

<相違点3>
本願発明1には、『前記制御装置は、前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得し、』との事項が特定されているのに対し、引用発明には、かかる事項が特定されていない点。

<相違点4>
本願発明1には、『前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定し、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み、』との事項が特定されているのに対し、引用発明には、かかる事項が特定されていない点。

<相違点5>
本願発明1には、『指定条件』について『前記取引種別ごとに前記キャッシュレス決済手段を通じた取引の一部を許可または制限することを示し、』との事項が特定されているのに対し、引用発明の「カード番号に対応する個別利用条件70」には、かかる事項が特定されていない点。


(3)判断

上記<相違点1>、<相違点3>および<相違点4>は、いずれも『取引の支払先に関する支払先属性情報』に関係するものであることに鑑み、それぞれの相違点を併せて検討する。

引用文献2には、カード管理DB21について「取引カードに関する取引カード情報、代替番号に関する代替番号情報及び支払相手先に関する支払相手先情報を有する。」と記載されており、さらに、前記「支払相手先に関する支払相手先情報」については「支払相手先情報2120には、支払相手先に関する情報として、支払相手先2121、国2122、地域2123及び都市の2124、カテゴリ2125を登録する。支払相手先情報2120は、管理サーバ20の条件照合部232が、店舗サーバ30から取得した取引内容と、代替番号情報2110の支払相手先設定とを照合する際に、参照する。支払相手先2121は、支払いの相手先を識別する識別情報である。エリアには、支払相手先2121に関連付けて、支払相手先が所在する国2122、地域2123及び都市2124が登録される。「国内」は、日本国内であることを示す。カテゴリ2125には、対応する店舗のカテゴリを登録する。」と記載されていることを踏まえると、前記「支払相手先に関する支払相手先情報」、「支払相手先2121」および「支払相手先が所在する国2122、地域2123及び都市2124」は、それぞれ、本願発明1の『取引の支払先に関する支払先属性情報』、『支払先識別番号』および『支払先種別』に対応していると一応解することができ、
また、このことを前提とすれば、引用文献2における「管理サーバ20の条件照合部232は、店舗サーバ30から取得した取引内容と、代替番号情報2110の支払相手先設定とを照合する際に、支払相手先に関する支払相手先情報を参照する」ことは、本願発明1の『前記制御装置は、前記支払先識別番号に基づいて、前記記憶装置から前記支払先属性情報における前記支払先種別を取得』することに対応すると一応解することはできる。
しかしながら、このように解したとしても、引用文献2の「管理サーバ20の条件照合部232」は、本願発明1のように『前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定』するという処理を実行するものではないことから、引用文献2には、本願発明1の『前記支払先種別に基づいて、前記取引に対応する取引種別を判定し、前記取引種別は、物理店舗取引および仮想店舗取引を含み、』との事項は記載も示唆もされていないのであり、引用発明に引用文献2記載の技術を組み合わせることができたとしても、相違点4に係る構成に想到することはない。
なお、令和3年3月11日付けの補正の却下の決定において周知技術を示す文献として提示された米国特許出願公開2011/0178929号明細書にも、かかる事項は記載も示唆もされていない。

さらに、引用発明は、本願発明1の『取引の支払先に関する支払先属性情報』に対応する情報を記憶するものでないにもかかわらず「クレジットカード会社が定める利用条件とは異なる利用者個別の利用条件」を「設定」できるシステムの情報処理装置であることから、引用発明に引用文献2に記載されている「支払相手先に関する支払相手先情報」を用いて利用条件を設定する技術を組み合わせる必要性はない。また、引用文献1においてこのような技術を組み合わせることを示唆する記載もない。よって、そもそも引用発明において引用文献2記載の技術を組み合わせる動機付けもない。

したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。


2 本願発明2−6について

本願発明2−6は、本願発明1を直接的または間接的に引用する発明であり、本願発明1で言及したのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明7について

本願発明7は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1で言及したのと実質的に同様の理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

4.本願発明8について

本願発明8は、本願発明7の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとした発明であり、本願発明1で言及したのと実質的に同様の理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


第7 原査定について

1 理由1(特許法第36条第6項第2号)について

審判請求時の補正により、特許請求の範囲(請求項1−8)の記載は明確になった。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


2 理由2(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により、本願発明1−8は上記「第6 対比・判断」で言及したように当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1および2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。



 
審決日 2022-11-21 
出願番号 P2019-013114
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 佐藤 智康
相崎 裕恒
発明の名称 情報処理装置、方法、およびコンピュータプログラム  
代理人 弁理士法人谷・阿部特許事務所  

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