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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1391509
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-16 
確定日 2022-11-17 
事件の表示 特願2020−88754「真贋判定方法、真贋判定システム、及びそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月1日出願公開、特開2020−161149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月31日(優先権主張 平成26年9月1日)を国際出願日とする特願2016−546647号の一部を令和2年5月21日に新たな特願出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年5月21日 :上申書の提出
令和3年1月14日付け:拒絶理由通知書
令和3年3月17日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年5月10日付け:拒絶査定
令和3年8月16日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 令和3年8月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年8月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正のうち請求項1に係る補正について
本件補正は、本願の特許請求の範囲について、本件補正前の請求項1(令和3年3月17日の手続補正により補正された請求項1)が、下記(1)に示したとおりのものであったところ、下記(2)に示したとおりの本件補正後の請求項1へと補正することを含むものである。なお、下線は、補正箇所を示す。また、本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1のそれぞれの構成を、当審において(A)ないし(H)に分説し、以下それぞれ「構成A」ないし「構成H」という。

(1)本件補正前の請求項1
(A)ユーザ端末を介して入力された真贋判定対象の製品のブランド名を取得し、
(B)前記ユーザ端末によって前記製品の表面に刻印されたブランド名又はロゴの一部が撮像された画像を取得し、
(C)前記画像の製品の表面に刻印されたブランド名又はロゴを含む領域から特徴を抽出し、
(D)前記取得したブランド名と前記特徴とデータベースに登録された製品の画像の特徴とに基づいて、前記真贋判定対象の製品の真贋を判定し、
(E)前記判定の結果を前記ユーザ端末に出力する
(F)真贋判定方法。

(2)本件補正後の請求項1
(A)ユーザ端末を介して入力された真贋判定対象の製品のブランド名を取得し、
(G)前記製品の表面に刻印されたブランド名又はロゴの一部の画像を取得し、
(C)前記画像の製品の表面に刻印されたブランド名又はロゴを含む領域から特徴を抽出し、
(D)前記取得したブランド名と前記特徴とデータベースに登録された製品の画像の特徴とに基づいて、前記真贋判定対象の製品の真贋を判定し、
(E)前記判定の結果を前記ユーザ端末に出力し、
(H)前記取得された画像は、前記製品の表面の一部を覆う蓋が装着された前記ユーザ端末によって撮像される
(F)真贋判定方法。

2 補正の適否
本件補正のうち請求項1に係る補正は、本件補正前の構成Bにおける画像が「前記ユーザ端末によって」「撮像され」るものである点を、本件補正後の構成Hとして記載を改めるとともに、本件補正後の構成Hにおいて当該「ユーザー端末」について、「前記製品の表面の一部を覆う蓋が装着された」ものであるという限定(以下「限定1」という。)を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明1」という。)は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である国際公開第2013/191281号には、次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。

「[0001] 本願発明は、照合方法、照合システム、照合装置、及びそのプログラムに関する発明である。」

「[0014](実施の形態1)
本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。」

「[0027] 次に、照合の所定領域であるが模様が施された領域であれば、模様全体であっても模様の一部を照合領域としても良いが、照合処理の容易さを考慮し、予め照合する所定領域を定めておくことが望ましい。所定領域としては、部品に共通して存在する基準部位を基準として定められる位置の領域を照合領域とすることが考えられる。例えば、部品の基準部位とは、部品に貼付、印刷、刻印、焼印された製品の商標、ロゴ、製造者名、製造会社、ブランド名、製品名、製品番号等である。これらの基準部位は、同一部品であれば個体に寄らず同一のパターンを共通に保有しており、外観上の特徴的な見え方をする。そして、これらの基準部位の位置姿勢を基準として定め、その特徴を記憶しておけば、部品の照合領域を自動的に検出することができる。さらに、所定領域としては、照合に用いる紋様が劣化や摩耗等を受けにくいことが望ましいので、部品の凹部になっている領域を用いることが有効である。
[0028] また、部品の模様が施された側に嵌合する部材(アダプター)を用意し、その部材の一部に外部より模様が視認(撮影)できる空壁(穴)を設け、その視認(撮影)できる領域を所定領域としても良い。このようにすれば、照合の所定領域の位置姿勢を識別の都度、認識する必要はなく、確実に照合領域を特定することができる。」

「[0038](実施の形態2)
続いて、本願の照合システムの実施の形態2について説明する。実施の形態2では、生産物をバッグとし、部品をスライドファスナーとし、模様を梨地模様とし、生産物情報を出荷先とし、出荷先ごとに同じ鋳型から製造された部品を出荷するように部品を管理した場合の照合について説明する。
[0039] 図5は、本実施の形態2の照合システムのブロック図である。照合システム1は、画像特徴データベース11と照合装置12と、消費者の携帯電話2とを備える。
[0040] 画像特徴データベース11には、図5に示すように、鋳型によって梨地模様が施されたスライドファスナーを鋳型ごとに撮影して抽出した画像特徴と、出荷先とが対応付けられて記憶されている。画像特徴データベース1は、部品供給者が部品の製造または出荷時に、部品の画像特徴と、その出荷先の生産者識別情報とを対応付けて作成され、部品供給者側の装置として設置されている。尚、スライドファスナーの引き手の梨地模様の撮影は、上記アダプターの使用によって、部品・照明・撮像素子の位置・姿勢を互いに固定した上で撮像したものとする。
[0041] 照合装置12は、画像特徴抽出部201及び判定部202を有する。画像特徴抽出部201は、消費者の携帯電話2から送信される、照合対象であるバッグに装着されているスライドファスナーの引き手の梨地模様が撮像された画像から画像特徴を抽出する。判定部202は、画像特徴抽出部201が抽出した画像特徴と、画像特徴データベース11に記憶されている梨地模様の画像特徴とを照合し、一致するものがあるかを検索する。一致するものがある場合、その画像特徴に対応付けられている生産物情報(前記出荷先である生産者識別情報)と、照合対象の生産物に別途記載あるいはそのデザイン等から自明な情報(ブランドなどの生産者識別情報や、シリアル番号等の生産物識別情報)との整合性を照合し、両者が整合する場合に真正品と認証することができる。一方、照合の結果、整合が確認できなかった場合は模倣品である可能性があるとの判定ができる。
[0042] 例えば、図5のバッグの外観デザインから、AB会社の製品(あるいはその模倣品)であることが容易に判定できる場合、部品の画像特徴がYYYであれば、整合性が照合できたことになり、真正品と認証できる。一方で、部品が正規品が使用している部品業者の物でない場合、あるいは、部品は正規品であっても、当該バッグの製造業者ではない第三者が別途入手して模倣品を製造した場合、部品の画像特徴はYYYとは異なり、照合されないので、模倣品若しくは模倣品の可能性があると判定することが可能である。
[0043] 携帯電話2は、照合対象であるバッグのスライドファスナーの引き手の梨地模様を上記アダプターの使用によって、部品・照明・撮像素子の位置・姿勢を互いに所定の相対関係に固定した上で撮像して、照合装置12に撮像した画像を送信する。尚、本実施の形態では携帯電話を例にして説明するが、照合対象であるバッグのスライドファスナーの引き手の梨地模様を撮像した画像を送信できるのであれば携帯電話以外の装置であってもよい。」

「[0104](実施の形態6)
上記実施の形態では、消費者は照合の結果と、バッグのデザインや生産物に記載されているロゴ等から自明な情報(ブランド、シリアル番号等)との整合性を照合し、両者が整合する正しい場合に真正品と認証していたが、本実施の形態ではそれを照合装置にさせる構成について説明する。尚、上記実施の形態2と同様の構成については、同一番号を付し、詳細な説明は省略する。また、以下の説明では、部品供給者側の画像特徴データベース11に、ファスナの画像特徴と、出荷先情報としてブランド名とが対応付けられて記憶されている場合を用いて説明するが、上記実施の形態1〜5で説明したいずれの構成であっても良い。
[0105] 本実施の形態の照合装置12は、照合対象の生産物の真贋判定を行う認証部204を新たに設けている。認証部204は携帯電話2から送信される、バッグのブランド名と、判定部202が読み出した出荷先とを照合し、一致する場合は真正品と認証し、一致しない場合は偽装されたもの、若しくは偽装された可能性があると判定する。
[0106] 携帯端末2は、撮像した画像と共に、消費者によって入力された照合対象であるバッグのブランド名を送信する。
[0107] 本実施の形態の動作について、図15を用いて説明する。
[0108] 消費者は、照合対象となるバッグの照合を行うため、携帯電話2により、引き手の所定領域の梨地模様を撮像した画像と、バッグのブランド名とを送信し、照合装置12がその画像を受信する(S1401)。
[0109] 照合装置12の画像特徴抽出部201は、受信した画像から、上述した方法と同様な方法により、所定領域の梨地模様の画像特徴を抽出して、抽出した画像特徴を判定部202に出力する(S1402)。
[0110] 判定部202では、抽出した画像特徴と、画像特徴データベース11に登録されている画像特徴と照合する(S1403)。判定部202は、一致するものがあれば(S1403のYES)、その画像特徴と関連付けられている出荷先情報を読み出し、認証部204に通知する(S1404)。認証部204は、通知された出荷先の情報と、受信したバッグのブランド名とを照合する(S1405)。照合の結果、一致する場合に(S1405のYES)、真正品と認証して、その旨を携帯端末2に送信する(S1406)。これにより、生産物の模倣品、虚偽記載、さらに、正規部品業者が製造した他のファスナを利用した模造品も棄却することが可能になる。
[0111] 一方、照合の結果、S1403の照合で一致するものがない場合(S1403のNO)、又は、S1405の照合で一致しない場合(S1405のNO)、一致しない旨を携帯電話2に送信する(S1407)。これにより消費者はバッグは偽装されたもの、若しくは偽装された可能性があることを認識する。」

(3)引用文献に記載された発明等
引用文献1に記載の「実施の形態6」に着目して、上記[0104]ないし[0111]及び[0001]の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、引用発明の構成を、当審において(a)ないし(f)に分説し、以下それぞれ「構成a」ないし「構成f」という。

(引用発明)
(a)携帯端末2は、撮像した画像と共に、消費者によって入力された照合対象のブランド名を送信する([0106])ものであり、
(b)消費者は、照合対象となるバッグの照合を行うため、携帯電話2により、引き手の所定領域の梨地模様を撮像した画像と、バッグのブランド名とを送信し、照合装置12がその画像を受信し([0108])、
(c)照合装置12の画像特徴抽出部201は、受信した画像から、所定領域の梨地模様の画像特徴を抽出して、抽出した画像特徴を判定部202に出力し([0109])、
(d)判定部202では、抽出した画像特徴と、画像特徴データベース11に登録されている画像特徴と照合し、判定部202は、一致するものがあれば、その画像特徴と関連付けられている出荷先情報を読み出し、認証部204に通知し、認証部204は、通知された出荷先の情報と、受信したバッグのブランド名とを照合し、照合の結果、一致する場合に、真正品と認証し、その旨を携帯端末2に送信し([0110])、
(e)照合で一致しない場合、一致しない旨を携帯電話2に送信する([0111])
(f)照合方法([0001])。

また、引用文献1に記載の「実施の形態2」に着目して、上記[0038]ないし[0043]、[0001]、[0014]、[0027]及び[0028]の記載を総合すると、引用文献1には次の技術事項(以下「引用技術事項」という。)についても記載されている。なお、引用発明の構成を、当審において(g)ないし(j)に分説し、以下それぞれ「構成g」ないし「構成j」という。
ここで、引用文献1の段落[0043]には、実施の形態2における構成として「上記アダプター」と記載されている。この記載より前の「アダプター」との記載は、実施の形態1の説明である段落[0028]におけるものであることから、実施の形態2の「上記アダプター」と、実施の形態1の「アダプター」とは、同様の構成であると言える。
また、「アダプター」の構造に関する「所定の領域」については、実施の形態1を説明する記載として段落[0027]に記載されているが、上述のとおり、実施の形態1の「アダプター」は、実施の形態2の「上記アダプター」と同様の構成であると言えるから、実施の形態2の「上記アダプター」の「所定の領域」と、実施の形態1の「アダプター」の「所定の領域」についても、同様の構成であると言える。
したがって、実施の形態2の「アダプター」及び「所定の領域」の構成は、段落[0027]及び[0028]の「アダプター」及び「所定の領域」の構成と同じものと言えるから、段落[0027]及び[0028]の「アダプター」及び「所定の領域」の構成を、引用技術事項として認定する。

(引用技術事項)
(g)照合する所定領域は、部品に共通して存在する基準部位を基準として定められる位置の領域を照合領域とし、部品の基準部位とは、部品に刻印された製品のロゴ、ブランド名であり([0027])、
(h)部品の模様が施された側に嵌合するアダプターを用意し、その部材の一部に外部より模様が撮影できる穴を設け、その撮影できる領域を所定領域とし([0028])、
(i)携帯電話2は、照合対象であるバッグのスライドファスナーの引き手の梨地模様を上記アダプターの使用によって、部品・照明・撮像素子の位置・姿勢を互いに所定の相対関係に固定した上で撮像して、照合装置12に撮像した画像を送信する([0043])
(j)照合方法([0001])。

(4)対比
補正発明1と引用発明を対比する。

ア 構成Aについて
引用発明は、携帯端末2が消費者によって入力された照合対象のブランド名を送信する(構成a)ものである。ここで、引用発明の「照合対象」の「対象」は、バッグである(構成b)から、補正発明1の「製品」といえるものであり、また、引用発明の「照合対象」の「照合」は、バッグの所定領域の画像と、バッグのブランド名と(構成b)から、照合の結果が一致する場合に真正品と認証する(構成d)ことであるから、入力されたブランド名により判別される特定の製品であるか否かの真贋を判定することといえるものである。よって、引用発明の「照合対象」は、補正発明1の「真贋判定対象の製品」に相当する。したがって、引用発明の「入力された照合対象のブランド名」は、補正発明1の「入力された真贋判定対象の製品のブランド名」に相当する。
また、引用発明は、携帯電話2により画像とブランド名が送信され、照合装置12がその画像を受信する(構成b)ものであるから、引用発明の照合装置12は、画像と共にブランド名を受信しているものと認められる。なお、引用発明の構成bにおける「携帯電話2」は、構成aにおける「携帯端末2」と同一の構成と認められる。
よって、引用発明の構成aにおける「携帯端末2」は、補正発明1の構成Aにおいてブランド名を取得する際に介される「ユーザ端末」に相当し、引用発明の「照合装置12」がブランド名を受信する処理は、補正発明1の構成Aである「ユーザ端末を介して入力された真贋判定対象の製品のブランド名を取得」する処理に相当する。

イ 構成Gについて
引用発明は、携帯電話2により、消費者が照合対象となるバッグの引き手の所定領域の梨地模様を撮像した画像を送信(構成b)するものである。ここで、引用発明の「バッグ」は、補正発明1の「製品」に相当する。そして、引用発明において、照合対象の照合を行うための画像は、バッグの引き手の所定領域の梨地模様であることから、製品の「表面」にあると認められる。よって、引用発明の「照合対象となるバッグの引き手の所定領域の梨地模様を撮像した画像」は、補正発明1の構成Gにおける「前記製品の表面」の「画像」に相当する。
そして、引用発明の携帯電話2により撮影された当該画像を照合装置12が「受信」する処理は、補正発明1の構成Gにおける「取得」する処理に相当するから、引用発明と補正発明1とは、「前記製品の表面の画像を取得」する処理を行う点で共通する。
一方で、補正発明1の構成Gにおいて取得される「前記製品の表面」の「画像」は、「刻印されたブランド名又はロゴの一部」の画像であるのに対し、引用発明で取得される画像は、「バッグの引き手の所定領域の梨地模様」である点で相違する。

ウ 構成Cについて
引用発明は、照合装置12の画像特徴抽出部201において、受信した画像から所定領域の梨地模様の画像特徴を抽出して、抽出した画像特徴を判定部202に出力する(構成c)処理を行うものである。
ここで、引用発明は、画像特徴抽出部201において、画像から特徴を抽出するものであり、上記イで述べたとおり、画像は、照合対象の「表面」であると認められる。
よって、引用発明と補正発明1とは、補正発明1の構成Cにおける「前記画像の製品の表面」の「領域から特徴を抽出」する処理を行う点で共通する。
一方で、上記イで述べた相違点と関連して、補正発明1の構成Cにおいて「特徴を抽出」される「製品の表面」の「画像」は、「刻印されたブランド名又はロゴを含む領域」であるのに対し、引用発明で取得される画像は、「所定領域の梨地模様」の画像である点で相違する。

エ 構成Dについて
引用発明は、判定部202において、抽出した画像特徴と、画像特徴データベース11に登録されている画像特徴と照合し、認証部204において、出荷先の情報と、受信したバッグのブランド名とを照合する(構成d)処理を行うものである。
ここで、引用発明の「受信したバッグのブランド名」は、補正発明1の「取得したブランド名」に相当し、引用発明の「抽出した画像特徴」は、補正発明1の「前記特徴」に相当し、引用発明の「画像特徴データベース11に登録されている画像特徴」は、補正発明1の「データベースに登録された製品の画像の特徴」に相当する。
よって、引用発明の判定部202において、抽出した画像特徴と、画像特徴データベース11に登録されている画像特徴と照合し、認証部204において、出荷先の情報と、受信したバッグのブランド名とを照合する(構成d)処理は、補正発明1の構成Dである「前記取得したブランド名と前記特徴とデータベースに登録された製品の画像の特徴とに基づいて、前記真贋判定対象の製品の真贋を判定」する処理に相当する。

オ 構成Eについて
引用発明は、判定部202において、照合の結果、一致する場合に、真正品と認証してその旨を携帯端末2に送信し、一致しない場合に、一致しない旨を携帯電話2に送信する(構成d、構成e)処理を行うものである。
ここで、引用発明の「照合の結果」である「真正品と認証」する旨または「一致しない旨」は、補正発明1の「前記判定の結果」に相当する。また、引用発明の構成dにおける「携帯端末2」及び構成eにおける「携帯電話2」は、照合の結果を送信されるものであるから、補正発明1の構成Eにおける判定の結果の出力先である「ユーザ端末」に相当する。
よって、引用発明の判定部202における照合の結果、一致する場合に真正品と認証してその旨を携帯端末2に送信し、一致しない場合に一致しない旨を携帯電話2に送信する処理は、補正発明1の構成Eである「前記判定の結果を前記ユーザ端末に出力」する処理に相当する。

カ 構成Hについて
引用発明は、携帯電話2において、消費者により撮影された所定領域を撮像した画像を取得する(構成b)処理を行うものである。
よって、引用発明と補正発明1は、補正発明1の構成Hにおける「前記取得された画像は、」「前記ユーザ端末によって撮像」する処理を行う点で共通する。
一方で、補正発明1の構成Hにおいて画像を取得するユーザ端末は、「前記製品の表面の一部を覆う蓋が装着された」ユーザ端末であるのに対し、引用発明の携帯電話2にはそのような限定がない点で相違する。

キ 構成Fについて
引用発明の構成fである「照合方法」は、製品を照合して「真正品と認証」する(構成d)ものであるから、補正発明1の構成Fである「真贋判定方法」に相当する。

ク まとめ
上記アないしキのとおりであるから、補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
(A)ユーザ端末を介して入力された真贋判定対象の製品のブランド名を取得し、
(G’)前記製品の表面の画像を取得し、
(C’)前記画像の製品の表面の領域から特徴を抽出し、
(D)前記取得したブランド名と前記特徴とデータベースに登録された製品の画像の特徴とに基づいて、前記真贋判定対象の製品の真贋を判定し、
(E)前記判定の結果を前記ユーザ端末に出力し、
(H’)前記取得された画像は、前記ユーザ端末によって撮像される
(F)真贋判定方法。

[相違点]
・相違点1
補正発明1の構成Gにおいて取得され、構成Cにおいて特徴を抽出される、補正発明1の「前記製品の表面」の「画像」は、「刻印されたブランド名又はロゴ」の「一部」の画像であるのに対し、引用発明の画像は、「バッグの引き手の所定領域の梨地模様」である点。

・相違点2
補正発明1の構成Hにおいて画像を取得するユーザ端末は、「前記製品の表面の一部を覆う蓋が装着された」ユーザ端末であるのに対し、引用発明の携帯電話2にはそのような限定がない点で相違する。

(5)判断
相違点1及び2について検討する。

ア 相違点1について
引用技術事項は、「照合する所定領域は、部品に共通して存在する基準部位を基準として定められる位置の領域を照合領域とし、部品の基準部位とは、部品に刻印された製品のロゴ、ブランド名」(構成g)である構成を備えている。
ここで、引用文献1の段落[0104]には、「部品供給者側の画像特徴データベース11に、ファスナの画像特徴と、出荷先情報としてブランド名とが対応付けられて記憶されている場合を用いて説明するが、上記実施の形態1〜5で説明したいずれの構成であっても良い」と記載されていることから、実施の形態6すなわち引用発明の「所定領域」について、実施の形態2すなわち引用技術事項の「部品に刻印された製品のロゴ、ブランド名」の画像の領域と定めること、及び、その所定領域をその画像の一部の領域と定めること、並びに、引用発明のデータベースに対して引用技術事項の情報を記憶することで、引用発明が相違点1に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。

イ 相違点2について
引用技術事項は、「携帯電話2は、照合対象である梨地模様を上記アダプターの使用によって、部品・照明・撮像素子の位置・姿勢を互いに所定の相対関係に固定した上で撮像して、照合装置12に撮像した画像を送信する」構成(構成i)を備えており、また、引用技術事項は、「部品の模様が施された側に嵌合するアダプターを用意し、その部材の一部に外部より模様が撮影できる穴を設け、その撮影できる領域を所定領域とする」構成(構成h)を備えているから、引用技術事項は、アダプターの一部に外部より模様が撮影できる穴を設けられている構成であると言える。そうすると、引用技術事項は、照合対象の「一部を覆う蓋が装着された」携帯電話2で撮影を行う構成を備えるものであると言える。
一方で、引用発明は、上記(4)イにおいて検討したとおり、被写体となる「製品の表面」を撮影するものである。
ここで、引用技術事項である実施の形態2の「アダプター」について、引用発明である実施の形態6には、記載が無いものであるが、引用文献1の段落[0104]に「上記実施の形態2と同様の構成については、同一番号を付し、詳細な説明は省略する」と記載されているから、引用文献1の実施の形態6すなわち引用発明に対して、実施の形態2すなわち引用技術事項の「アダプター」を適用することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
よって、引用発明を具体的に実現する際に、画像を撮像するユーザ端末について製品の表面を撮影する手順として、引用技術事項の「前記製品の表面の一部を覆う蓋が装着された」構成を使用する手順を用いることで、引用発明が相違点2に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。

ウ まとめ
上記ア及びイのとおり、引用発明に引用技術事項を適用して、上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
よって、引用発明及び引用技術事項に基づいて補正発明1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

(6)効果等について
補正発明1の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、補正発明1が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、当該範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

(7)まとめ
上記(1)ないし(6)のとおり、補正発明1は、引用発明及び引用技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件補正に係る補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年8月16日にされた手続補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、同年3月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」の1(1)に示したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし6に係る発明について、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

・引用文献1:国際公開第2013/191281号(上記「第2」の2(2)で示した「引用文献1」)


3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項、引用発明及び引用技術事項は、上記「第2」の2の(2)及び(3)に示したとおりである。

4 対比・判断
本願発明1は、補正発明1から、上記「第2」の2で示した限定1による限定を省いたものであるから、本願発明1と引用発明の相違点は、上記「第2」の4(1)ウにおいて相違点1として示したものである。
そして、上記「第2」の2(5)アにおいて判断したとおり、補正発明1における相違点1に係る構成は、引用発明及び引用技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、効果等については、上記「第2」の2(6)に記載したとおりであるから、本願発明1についても、引用発明(引用文献1の実施の形態6)及び引用技術事項(引用文献1の実施の形態2)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-16 
結審通知日 2022-09-20 
審決日 2022-10-04 
出願番号 P2020-088754
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 56- Z (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 川崎 優
木方 庸輔
発明の名称 真贋判定方法、真贋判定システム、及びそのプログラム  
代理人 家入 健  

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