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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1391678
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-30 
確定日 2022-11-24 
事件の表示 特願2020−102965「殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する腰かけ便器の便蓋構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月11日出願公開、特開2022− 2554〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月15日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 3月23日付け :拒絶理由通知書
令和 3年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 6月17日付け :最後の拒絶理由通知書
令和 3年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月25日付け :補正の却下の決定、拒絶査定
令和 3年11月30日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年11月30日付け手続補正書についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年11月30日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
(1)特許請求の範囲
「本件補正」は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
補正前:
「【請求項1】
便器本体ボウル部の周縁部上面に脚体を介して平面視О型或いはC型の便座を載置自在とすると共に、脚体によって便器本体ボウル部と便座との間に一定高さの空気流通空間を形成し、更には便座上面に便蓋を開閉自在に載置可能とし、便蓋の周縁部には囲い壁体を形成し、
各蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分の便蓋裏面に略方形の殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する機能シートを貼付し、
機能シートのシート本体は、表面に漆喰コートを形成しその表面にプライマー層を形成し、更にその表面にPET(ポリエステル)フイルムを重ね、更にアクリル系粘着剤を塗布し、その表面に樹脂製剥離紙を剥離自在に貼着して構成すると共に、殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する漆喰コート表面のプライマー層は漆喰コートの表面に塗布した薬剤よりなり、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して形成し、
しかも、便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成し、
シート本体の薬剤面には宣伝広告機能を有する文字や図形を印刷したことを特徴とする殺菌等機能を有する腰かけ便器。」
補正後(下線は補正箇所である):
「【請求項1】
便器本体ボウル部の周縁部上面に脚体を介して平面視О型或いはC型の便座を載置自在とすると共に、脚体によって便器本体ボウル部と便座との間に一定高さの空気流通空間を形成し、更には便座上面に便蓋を開閉自在に載置可能とし、便蓋の周縁部には囲い壁体を形成し、
各蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分の便蓋裏面に略方形の殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する機能シートを貼付し、
機能シートを構成するシート本体は、シート本体の表面に薬剤を塗布し、裏面に粘着剤を塗布すると共に、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤として形成し、しかも、便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成し、
シート本体の薬剤面には宣伝広告機能を有する文字や図形を印刷したことを特徴とする殺菌等機能を有する腰かけ便器。」

(2)図面
本件補正は、図面の補正を含んでおり、本件補正前と本件補正後の図2の記載は次のとおりである。
補正前:


補正後:



2.本件補正の適否
(1)目的外補正
ア.特許請求の範囲の限定的減縮について
上記1.(1)の補正前の請求項1では、発明を特定するために必要な事項である「シート本体」について、「表面に漆喰コートを形成しその表面にプライマー層を形成し、更にその表面にPET(ポリエステル)フイルムを重ね、更にアクリル系粘着剤を塗布し、その表面に樹脂製剥離紙を剥離自在に貼着して構成すると共に、殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する漆喰コート表面のプライマー層は漆喰コートの表面に塗布した薬剤よりなり、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して形成し」たもの、すなわち、「機能シート」の「シート本体」は、「漆喰コート」、「プライマー層」、「PET(ポリエステル)フイルム」、「アクリル系粘着剤」及び「樹脂製剥離紙」を含むものとされている。
これに対し、補正後の請求項1では「シート本体」について、「機能シートを構成するシート本体は、シート本体の表面に薬剤を塗布し、裏面に粘着剤を塗布すると共に、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤として形成」とされ、すなわち、当該補正は、「シート本体」が、「漆喰コート」、「プライマー層」、「PET(ポリエステル)フイルム及び「樹脂製剥離紙」を含むという発明特定事項を削除するものであるとともに、「シート本体」が「アクリル系」であるという発明特定事項を削除し、「シート本体」が「アクリル系」以外の「粘着剤」を含む態様に拡張されたものである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。

イ.請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載について
本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものではないことも明らかである。

ウ.結論
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定する「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」のいずれを目的としたものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項の規定を満たしていない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)新規事項の追加
ア.上記1.(2)の補正前の図2においては、「シート体32」は上から順に「漆喰コート32A」、「プライマー層32B」、「PETフィルム32C」、「アクリル系粘着剤32D」、「樹脂製剥離紙32E」からなるもので、最下層の「樹脂製剥離紙32E」が「薬剤33」に接していることが示されている。
これに対し、補正後の図2からは、「シート体32」は上から順に「漆喰コート32A」、「プライマー層32B」、「PETフィルム32C」からなるもので、最下層の「PETフィルム32C」が「薬剤33」に接していることが示されている。
このように、本件補正は、図2に「PETフィルム32C」が「薬剤33」に接していないという事項を追加する補正も含むものであるが、「PETフィルム32C」が「薬剤33」に接しているという事項は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書、図面(以下「当初明細書等」という。)に明示的に記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。

審判請求人は補正の根拠として、「この補正は、補正前の段落[0048]の記載に基づいております。」(審判請求書〔3〕(a))と主張している。
しかし、本件補正前の段落【0048】には
「また、図2に示すように、殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する機能シート30は、紙質のシート本体32の表面に薬剤33を塗布し、裏面に粘着剤31、例えば、アクリルゴムを塗布すると共に、薬剤33としては水酸化カルシウムを基本としたことにあり、しかも、塗布した薬剤33の表面或いは機能シート30の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷して印字面34を形成している。
そのため、腰かけ便器Tの使用者は使用時に便蓋20を開けると便蓋20の開放と同時に機能シート30が眼前に現れて用を足す間に機能シート30に印刷された印字面34の宣伝広告表示を認識することができ殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も有する。」
との記載があるのみであり、「PETフィルム32C」が「薬剤33」に接している点は記載も示唆もされていない。
そうすると、上記補正は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

イ.したがって、本件補正は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、本件補正は、同法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
ア.本件補正は、上記(1)及び(2)において検討したとおり、却下すべきものであるが、仮に、本件補正が、適法になされたとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすものであるか否か、即ち、補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否か、以下に検討する。

イ.本件補正後発明について
本件補正発明は、上記1.(1)に記載した、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

ウ.引用文献及び引用発明等
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2020−10820号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

a.「【0001】
本発明は、殺菌等機能を有する腰かけ便器に関する。」

b.「【0013】
この発明の要旨は、便器本体の便蓋内側に、裏面に粘着剤を塗布した略A4タイプの大きさの殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シートを貼付し、便蓋閉蓋時に機能シート表面から便器本体内部と共に便器本体の周囲にも殺菌・除菌・抗菌等の機能作用を及ぼすように構成したことにある。
また、殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シートとしては、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し、裏面に粘着剤を塗布すると共に、薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成したことにある。
また、塗布した薬剤表面或いは機能シート表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷したことにある。」

c.「【0032】
図3及び図4に示すように、便座40の背面、すなわち、便器ボウル30の周縁部との間には緩衝材としてゴムなどの弾性体で構成されたスペーサ41を配設しており、該スペーサ41が介在することで便蓋10を閉塞した場合でも便器ボウル30と便座40との間に若干の隙間が形成されている。そのため、便蓋10を閉塞した状態でもこの隙間から機能シート20に塗布した薬剤23が拡散して便所内空間における殺菌等を行うことができる。
【0033】
また、図2に示すように、殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート20は、紙質のシート本体22の表面に薬剤23を塗布し、裏面に粘着剤21、例えば、アクリルゴムを塗布すると共に、薬剤23としては水酸化カルシウムを基本としたことにあり、しかも、塗布した薬剤23の表面或いは機能シート20の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷して印字面を形成している。
そのため、腰かけ便器Tの使用者は使用時に便蓋10を開けると便蓋10の開放と同時に機能シート20が眼前に現れて用を足す間に機能シート20に印刷された印字面24の宣伝広告表示を認識することができ殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も有する。」

d.図1は次のものである。
【図1】


e.図4は次のものである。
【図4】


f.上記c.の【0032】には「便蓋10を閉塞した場合」という記載、【0033】には「便蓋10を開けると」という記載があることから、「便蓋」は開閉自在であるといえる。

g.上記b.、c.を参照して、図1より、便蓋裏面に2つの蓋用脚体が設けられ、便座は平面視O型であり、機能シートは略方形であって、便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成するように貼付されていることが看取される。

h.上記c.を参照して、図4より、便座上面に載置された便蓋の周縁部には囲い壁体を形成している点が看取される。

i.以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「便器本体の便蓋内側に、裏面に粘着剤を塗布した略A4タイプの大きさの殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する略方形の機能シートを貼付し、
便座の背面、すなわち、便器ボウルの周縁部との間には緩衝材としてゴムなどの弾性体で構成されたスペーサを配設しており、該スペーサが介在することで便蓋を閉塞した場合でも便器ボウルと便座との間に若干の隙間が形成されており、
殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シートは、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し、裏面に粘着剤を塗布すると共に、薬剤としては水酸化カルシウムを基本とし、塗布した薬剤の表面或いは機能シートの表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷して印字面を形成し、
便蓋裏面に2つの蓋用脚体が設けられ、便座は平面視O型であり、
便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成するように貼付されており、
便座上面に開閉自在に載置された便蓋の周縁部には囲い壁体を形成している
殺菌等機能を有する腰かけ便器。」

(イ)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2008−93185号公報(以下「引用文献2」という。)は、出願前に日本又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。

a.「【0013】
図2は、本発明の一例である便蓋を使用した洋風便器の便蓋開状態を示す斜視図である。
【0014】
この洋風便器1は、便蓋2、便座3、ボウル部6、スカート部7を有している。また、便蓋2、便座3の開閉用に共通または個別の回動部を有している。本例では、便蓋2用、便座3用に個別の便蓋回動部4、便座回動部5を備えている。なお、8は人体検知センサーである。」

b.「【0017】
便蓋2は、倒伏状態に閉じたときにボウル部6、便座3を上方より覆い隠す板部2aと、倒伏状態のときに便座3を側方より包囲、隠蔽する周壁2bとを備えている。なお、周壁2bは便蓋回動部4側を除く全周に形成されている。また、図中の2cは周壁2bの前端部を示している。
【0018】
なお以下では、便蓋2、便座3の回動部4、5側をボウル部6後方、先端側をボウル部前方という。
【0019】
図2に示すように、便蓋2の便座3と対向する内面側には、複数の脚ゴム20、20・・・が配設されており、これら脚ゴム20は、便蓋2を起立状態から倒伏状態に回動したときに、便座3との衝突による衝撃を吸収し、衝突音を小さくし、かつ便蓋2、便座3双方が傷付くことを防止するとともに、倒伏状態にあるときに便蓋2そのものを支える機能を有する。また、脚ゴム20を設けることによって、便蓋2の周壁2bが便器本体(リム上面)と直接接触しないように調節でき、接触による便蓋2の損傷、汚れの付着を防止できる。
【0020】
この脚ゴム20は、ゴムまたはエラストマーなどの柔軟な弾性体で製されており、かりに便蓋2を倒伏した状態で便蓋2に人が腰をかけても、脚ゴム20の取付位置を中心として割れたり変形したりしないように、厚さ数〜10ミリ程度のものが、複数箇所にバランスよく配設されている。」

c.図2は次のものである。



d.上記a.の記載を参照して、図2より便蓋裏面には略方形を形成する位置に4つの脚ゴムが設けられていることが看取される。

e.以上より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「便蓋、便座、ボウル部を有し、
便蓋裏面には略方形を形成する位置に4つの脚ゴムが設けられている、
洋風便器。」

エ.対比・判断
(ア)対比
本件補正発明と、引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「便器ボウル」、「スペーサ」、「便座」、「隙間」、「囲い壁体」、「蓋用脚体」、「機能シート」、「シート本体」、「薬剤」、「粘着剤」、「宣伝広告の機能も具備する文字や図形」及び「腰かけ便器」は、本件補正発明の「便器本体ボウル」、「脚体」、「便座」、「空気流通空間」、「囲い壁体」、「蓋用脚体」、「機能シート」、「シート本体」、「薬剤」、「粘着剤」、「宣伝広告機能を有する文字や図形」及び「腰かけ便器」に、それぞれ相当する。

b.引用発明1の「便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成」されている点は、本件補正発明の「便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成」する点に相当する。

c.引用発明1の「塗布した薬剤の表面或いはシート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷して印字面を形成して」いる構成は、本件補正発明の「シート本体の薬剤面には宣伝広告機能を有する文字や図形を印刷した」ものである構成に相当する。

d.以上より、本件補正発明と引用発明1とは、
「便器本体ボウル部の周縁部上面に脚体を介して平面視О型の便座を載置自在とすると共に、脚体によって便器本体ボウル部と便座との間に一定高さの空気流通空間を形成し更には便座上面に便蓋を開閉自在に載置可能とし、便蓋の周縁部には囲い壁体を形成し、
便蓋裏面に略方形の殺菌・抗菌の機能を有する機能シートを貼付し、
機能シートを構成するシート本体は、シート本体の表面に薬剤を塗布し、裏面に粘着剤を塗布すると共に、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤として形成し、
便蓋を閉蓋した際に機能シートの前端縁と便座前部との間の空間の距離を機能シートの後端縁と便座後部との間の空間の距離より長く形成し、
シート本体の薬剤面には宣伝広告機能を有する文字や図形を印刷した
殺菌等機能を有する腰かけ便器。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明は便蓋裏面に機能シートを貼付するにあたって、「各蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分」に貼付しているのに対し、引用発明1では、各蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分」に貼付するものではない点。

(相違点2)
本件補正発明の「機能シート」は「殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する」のに対し、引用発明1の「機能シート」は「殺菌」と「抗菌」の機能は有するが、「滅菌」の機能を有するか不明である点。

(イ)検討
上記相違点について検討する。
a.相違点1について
引用発明2の「脚ゴム」、「便蓋」及び「洋風便器」は、引用発明1の「蓋用脚体」、「便蓋」及び「腰かけ便器」に相当し、引用発明2と引用発明1とは、蓋用脚体を有する便器である点で共通しているから、引用発明1の蓋用脚体の個数及び配置を引用発明2における「便蓋裏面には方形の角部となる」ように「4つ」「設けられ」るようにし、蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そしてその際、機能シートを蓋用脚体で囲繞された略方形の空間部分に貼付することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

b.相違点2について
引用発明1の「機能シート」は殺菌等機能を持たせたものであり、その効果の程度について、「滅菌」の機能をも持たせたものを選択することは、当業者にとって格別の発明力を要することではない。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ.以上より、本件補正発明は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないので特許出願の際、独立して特許をうけることができない。

3.補正却下むすび
以上、上記「3.(1)目的外補正」において検討したとおり,本件手続補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記「3.(2)新規事項」において検討したとおり、本件手続補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
加えて、上記「3.(3)独立特許要件」において予備的に検討したとおり、本件手続補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願に係る発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年6月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定される発明であると認める。

2.原査定の理由
令和3年8月25日付け拒絶査定に記載された令和3年6月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、令和3年6月8日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.当審の判断
令和3年6月8日付け手続補正書でした補正後の請求項1には、「殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する漆喰コート表面のプライマー層は漆喰コートの表面に塗布した薬剤よりなり、該薬剤は水酸化カルシウムを基剤としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して形成し」という記載がある。
しかしながら、「プライマー層」が「薬剤」よりなる点は、当初明細書等に明示的に記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、令和3年6月8日付け手続補正書でした補正は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-26 
結審通知日 2022-09-27 
審決日 2022-10-13 
出願番号 P2020-102965
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
P 1 8・ 575- Z (A47K)
P 1 8・ 572- Z (A47K)
P 1 8・ 561- Z (A47K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 西田 秀彦
佐藤 美紗子
発明の名称 殺菌・滅菌・抗菌の機能を有する腰かけ便器の便蓋構造  
代理人 市川 泰央  
代理人 松尾 憲一郎  

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