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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない C07H |
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管理番号 | 1391739 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2021-09-17 |
確定日 | 2022-11-02 |
事件の表示 | 特許第6849896号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第6849896号(以下「本件特許」という。)は、2016年11月21日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年11月19日(GB)英国〕を国際出願日とする特願2018−526129号の特許出願の請求項1〜14について、令和3年3月9日に特許権の設定登録がなされ、令和3年9月16日に本件訂正審判の請求がなされたものであり、令和3年12月24日付けの訂正拒絶理由通知に対して、指定した期間内に何ら応答がなされなかったものである。 第2 訂正の趣旨及び訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は「特許第6849896号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7、請求項9ないし請求項14について訂正することを認める、との審決を求める。」というものであって、その訂正の内容は、次の訂正事項1〜5からなるものである(なお、当審において訂正に関連する箇所に下線を付した。)。 1.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項7について、 「請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物であって、前記化合物が、(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート; (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−(4−メタンスルホニルフェニル)ベンゾエート; (2S,3R,4S,6R)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチル−4−(N−メチルナフタレン−2−スルホンアミド)オキサン−3−イル ベンゾエート; [2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−ヨードベンゾエート; 1−ベンジル (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル (2R)−2−[[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ]ペンタンジオエート; 4−[[(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル]オキシ]−4−オキソブタン酸; (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ピリジン−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 2,5−ジメチルピラゾール−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 5−クロロチオフェン−2−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 4−エチルベンゾエート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 4−メトキシベンゾエート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] ナフタレン−2−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] キノリン−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 2−メチルプロパノアート; からなる群から選択される、化合物。」を、 「請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物であって、前記化合物が、(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート; (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−(4−メタンスルホニルフェニル)ベンゾエート; (2S,3R,4S,6R)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチル−4−(N−メチルナフタレン−2−スルホンアミド)オキサン−3−イル ベンゾエート; [2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−ヨードベンゾエート; 1−ベンジル (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル (2R)−2−[[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ]ペンタンジオエート; 4−[[(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル]オキシ]−4−オキソブタン酸; (2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ピリジン−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 2,5−ジメチルピラゾール−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 5−クロロチオフェン−2−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 4−エチルベンゾエート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 4−メトキシベンゾエート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] ナフタレン−2−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] キノリン−3−カルボキシレート; [(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデク−11−イル]オキシ]−6−メチル−テトラヒドロピラン−3−イル] 2−メチルプロパノアート; からなる群から選択される、化合物。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9ないし請求項14も同様に訂正する)。 2.訂正事項2 明細書の段落0034に記載された 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート(例2);」を、 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート(例2);」 に訂正する。 3.訂正事項3 明細書の段落0034に記載された 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−(4−メタンスルホニルフェニル)ベンゾエート(例12);」を、 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−(4−メタンスルホニルフェニル)ベンゾエート(例12);」 に訂正する。 4.訂正事項4 明細書の段落0034に記載された 「(2S,3R,4S,6R)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチル−4−(N−メチルナフタレン−2−スルホンアミド)オキサン−3−イル ベンゾエート(例13);」を、 「(2S,3R,4S,6R)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチル−4−(N−メチルナフタレン−2−スルホンアミド)オキサン−3−イル ベンゾエート(例13);」 に訂正する。 5.訂正事項5 明細書の段落0034に記載された 「[2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−ヨードベンゾエート(例14);」を、 「[2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル 4−ヨードベンゾエート(例14);」 に訂正する。 第3 訂正拒絶理由の概要 令和3年12月24日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、訂正事項1〜5は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではなく、訂正事項1は、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないとすることはできないから、特許法第126条第6項に適合しないというものである。 第4 当審の判断 1.訂正の目的について (1)誤記の訂正 ア はじめに 令和3年9月16日付けの審判請求書の第12頁において、審判請求人は「訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。」と主張し、同21、23、26及び28頁において、訂正事項2〜5も同号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものであると主張する。 そして、一般に「誤記」というためには、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、当該明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される〔平成28年(行ケ)第10154号判決参照。〕。 そこで、訂正事項1〜5について、訂正前の「10S」との記載が誤りであること、及び訂正後の「10R」との記載が正しいことが、訂正前の明細書等の記載又は当業者の技術常識から自明であるか否かについて、以下に検討する。 イ 訂正前の記載が誤りであることが自明か否か 訂正事項1に係る訂正前の請求項1の 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート」という化合物についての記載は、 訂正事項2に係る訂正前の明細書の段落0034の 「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート(例2);」との記載に整合している。 そして、訂正前の請求項7の当該「10S」との特定を含む化合物についての記載それ自体が、技術的に誤りであると認識すべき事情は見当たらず、特許権設定登録時の明細書等の記載との関係で、少なくとも段落0034の「例2」の化合物についての記載と整合しているという点において、訂正前の請求項7の当該「10S」との記載に何らかの不備があると、当業者は直ちに気付くことができない。 さらに、訂正前の請求項7が引用する請求項1〜6に記載された「式(I)に従う化合物」との関係において、何らかの不整合となる関係が存在すると仮定しても、そのような不整合となる関係の存在を当業者が直ちに気付けるといえる合理的な理由や根拠は見当たらないし、仮に不整合が存在し、その存在を当業者が認識できたとしても、請求項1〜6の記載に不備があるのか、請求項7の記載に不備があるのか、その両方若しくは一方を含む随所に不備があるのかについて、特許権設定登録時の明細書等の記載並びに当業者の技術常識を参酌しても、いずれの記載に不備があるのかを当業者が理解できるといえる合理的な理由や根拠は見当たらない。 このため、訂正事項1に係る請求項7における上記「10S」についての記載に誤りがあることが、当業者に明らかであるとはいえない。 また、訂正事項1に係る請求項7における残り3つの「10S」についての記載、及び訂正事項2〜5に係る明細書の段落0034の「10S」についての記載についても、同様に、その記載に誤りがあることが、当業者に明らかであるとはいえない。 ウ 訂正後の記載が正しいことが自明か否か 上記イのとおり、訂正前の請求項7及び段落0034の「10S」との記載に誤りがあることが明らかあるとはいえないが、仮に当該記載に何らかの誤りがあるとしても、訂正前の「10S」の正しい記載が「10R」であることが自明であるといえる合理的な理由や根拠は見当たらない。 このため、訂正事項1に係る請求項7及び訂正事項2〜5に係る明細書の段落0034の記載にある、訂正前の「10S」との記載箇所が、訂正後の「10R」の趣旨に理解するのが当然であるとはいえない。 (2)誤訳の訂正 誤訳の訂正とは、翻訳により外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、外国語書面における意味を表す記載に訂正することをいうものであるから、誤訳の訂正が認められるためには、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の意味が、外国語書面に対応する記載の意味と異なることが必要である。 しかして、訂正事項1に係る訂正前の請求項1の「(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−2−[[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)−2−エチル−3,4,10,13−テトラヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−15−オキソ−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−11−イル]オキシ]−6−メチルオキサン−3−イル ベンゾエート」との記載に対応する本件国際出願(PCT/EP2016/078360)の請求の範囲の対応箇所には、以下のとおりの記載がなされている(国際公開第2017/08539号の第74頁第13〜15行参照。)。 「(2S,3R,4S,6R)-4-(dimethylamino)-2-{[(2R,3S,4R,5R,8R,10S,11R,12S,13S,14R)-2-ethyl-3,4,10,13-tetrahydroxy-3,5,6,8,10,12,14-heptamethyl-15-oxo-1-oxa-6-azacyclopentadecan-11-yl]oxy}-6-methyloxan-3-yl benzoate (Example 2);」 してみると、訂正前の請求項7の上記下線を付した「10S」との記載の意味が、外国語書面に対応箇所の上記下線を付した「10S」との記載の意味と異なるとはいえないから、訂正事項1に係る当該「10S」との記載部分を「10R」との記載に改める訂正が、誤訳の訂正を目的とするものに該当するとはいえない。 また、訂正事項1に係る請求項7における残り3つの「10S」について記載、及び訂正事項2〜5に係る明細書の段落0034の「10S」についての記載についても、同様に、誤訳の訂正を目的とするものに該当するとはいえない。 (3)目的要件のまとめ 以上のとおり、訂正事項1〜5について、訂正前の「10S」との記載に誤りが存在していることが明らかであるとはいえない上に、特許権設定登録時の明細書等の記載全体からみても正しい記載が明らかであるとはいえず、当該「10S」との記載が誤訳であるともいえない。 このため、訂正事項1に係る請求項7における4つの「10S」との記載、及び訂正事項2〜5に係る明細書の段落0034の「10S」との記載の各々を、訂正後の「10R」との記載の各々に改める訂正が、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当するとは認められない。 また、訂正事項1〜5が、同1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、又は同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」のいずれかを目的とするものに該当するとも認められない。 したがって、訂正事項1〜5は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。 2.特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項1は、訂正前の請求項7に記載された化合物群に含まれる化合物名を変更するものであって、訂正後の請求項7に記載された化合物群には、訂正前に含まれなかった化合物が含まれることになるから、実施上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであることが明らかである。 そして、例えば「本件訂正事項(燐酸→ホスホン酸)を訂正することは,本件公報に記載された特許請求の範囲の表示を信頼する当業者その他不特定多数の一般第三者の利益を害することになるものであって,実質上特許請求の範囲を変更するものであり,126条6項により許されない。」とされているところ〔平成27年(行ケ)第10216号判決参照〕、訂正事項1による訂正によって「本件公報に記載された特許請求の範囲の表示を信頼する当業者その他不特定多数の一般第三者の利益を害すること」にならないといえる合理的な理由や根拠は見当たらない。 したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本件訂正審判に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではなく、また、同法同条第6項に規定する要件に適合しないから、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 大熊 幸治 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-06-09 |
結審通知日 | 2022-06-13 |
審決日 | 2022-06-24 |
出願番号 | P2018-526129 |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Z
(C07H)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
野田 定文 木村 敏康 |
登録日 | 2021-03-09 |
登録番号 | 6849896 |
発明の名称 | 上皮バリア機能増強特性を有するアジスロマイシン誘導体 |
代理人 | 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 |