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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない C09D
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない C09D
管理番号 1391740
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-12-09 
確定日 2022-11-21 
事件の表示 特許第6948484号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6948484号(以下「本件特許」という。)は、令和3年4月27日に出願がなされ、その請求項1〜10に係る発明について、令和3年9月22日に特許権の設定登録がなされ、令和3年12月9日に本件訂正審判の請求がなされたものであって、令和4年1月12日付けの手続補正指令に対して、令和4年2月2日に手続補正(方式)がなされ、当審において令和4年6月21日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定した期間内に何ら応答がなされなかったものである。

第2 請求の趣旨と訂正の内容
令和4年1月12日付けの手続補正指令において『本件の「2 審判請求に係る請求項の数」は「10」(全請求項)でなく「8」(一部の請求項)とされているが、「5 請求の趣旨」の欄においていずれの請求項の訂正を求めているのかが明らかにされていないので、不備がある』という旨の補正指令がなされ、これに対して、令和4年2月2日付けの手続補正(方式)により、「5 請求の範囲」の欄について必要な補正がなされたところ、本件訂正審判の「請求の趣旨」は「特許第6948484号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項3〜10について訂正することを認める、との審決を求める。」というものであって、その訂正の内容は、次の訂正事項1及び2からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付した。)。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「第2のインクジェット印刷用インク組成物」と記載されているのを、「第2のインク組成物」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4〜10も同様に訂正する。)。

2.訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「第2のインクジェット印刷用インク組成物」を「第2のインク組成物」に訂正する。

第3 訂正拒絶理由の概要
令和4年6月21日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、訂正事項1〜2は、特許法第126条第1項ただし書の規定に適合するものではなく、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合するものではないから、本件訂正審判に係る訂正は認められないというものである。

第4 当審の判断
上記訂正拒絶理由の通知に対して応答がなかったところ、改めて検討しても、上記訂正拒絶理由のとおり訂正は認められないと当審は判断する。その理由は以下のとおりである。

1.訂正事項1について
(1)訂正の目的
ア 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の第2〜3頁において「訂正前の特許請求の範囲の請求項3における「第2のインクジェット印刷用インク組成物」は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3が引用する請求項1における「第2のインク組成物」と同一のものであることが明らかであるので、訂正前の請求項3の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」を「第2のインク組成物」とする訂正事項1は、特許法第126条第1項第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」又は同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。」と主張する。

イ 誤記又は誤訳の訂正について
一般に「誤記の訂正」が認められるためには、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要であり、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、願書に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものとされている。
しかしながら、訂正前の請求項3の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」との記載において、後段の「インクジェット印刷用インク組成物」との記載部分に「誤記」といえる誤りは見当たらない。
また、前段の「第2の」との記載部分に何らかの「誤記」といえる誤りがあるか否かついて検討するに、訂正前の請求項3が引用する請求項1には「この第1のインク組成物による印刷層上にさらに印刷するための、着色顔料、酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物をインク組成物中1.0質量%以上含有し、さらに両性界面活性剤、水分散性樹脂、及び水を含有する第2のインク組成物」との記載があり(下線は当審による。以下同じ。)、当該「第2の」との字句が請求項3と共通することから、請求項1の「第2のインク組成物」が、訂正前の請求項3の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」に対応するものと当業者は理解する。
そして、後段の「インクジェット印刷用インク組成物」の意味が明らかである以上、請求項3の記載それ自体からみれば、訂正前の請求項3は、請求項1の「第2のインク組成物」を「インクジェット印刷用」に特定して限定するとともに、請求項1の「水分散性樹脂」を「固形分で10.0〜30.0質量%含有する」ものに特定して限定したものであると当業者は理解するし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから「訂正前の記載が誤り」であることが明らかであるといえる合理的な根拠ないし理由も見当たらない。
なお、請求項8に「インクジェット印刷用である請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセット。」との記載はあるが、訂正前の請求項3において、「インクジェット印刷用」の特定が重複しているからといって、訂正前の記載が誤りでないとの判断が左右されるものではない。
さらに、仮に訂正前の請求項3の記載に誤りがあるとしても、当業者であればそのことに気付いて訂正後の「第2のインク組成物」の趣旨に理解するのが当然であるとすべき合理的な根拠ないし理由は見当たらない。
加えて、一般に「誤訳の訂正」が認められるためには、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載の意味が、外国語書面における意味と異なることが必要なところ、本件特許は外国語書面出願などの翻訳文の提出が必要な出願に係るものではないので、誤訳が生じる余地はなく、訂正事項1に係る訂正が「誤訳の訂正」を目的としたものではないことも明らかである。
してみると、訂正事項1に係る訂正が、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当するとはいえない。

ウ 明瞭でない記載の釈明について
一般に「明瞭でない記載の釈明」が認められるためには、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に明瞭でない記載が存在することが必要であり、訂正が、特許がされた明細書又は特許請求の範囲のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、特許がされた明細書又は特許請求の範囲の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載を正し、その本来の意味を明らかにするものであることが必要であるとされている。
しかしながら、訂正前の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」との記載それ自体の意味が不明瞭であるとか、他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているとはいえないし、訂正後の「第2のインク組成物」との記載に改めることで、その記載本来の意味が明らかにされるともいえない。
してみると、訂正事項1に係る訂正が、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当するとはいえない。

エ 他の目的について
審判請求人は、訂正事項1が「誤記又は誤訳の訂正」又は「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。」と主張するところ、訂正事項1に係る訂正が、同1号の「特許請求の範囲の減縮」又は同4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当するとはいえないことは明らかである。

(2)実質上の拡張又は変更
審判請求人は、審判請求書の第3頁において「訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3における「第2のインクジェット印刷用インク組成物」を、訂正前の特許請求の範囲の請求項3が引用する請求項1における「第2のインク組成物」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。」と主張する。
しかしながら、訂正前の請求項3の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」との記載から、その「インクジェット印刷用」という用途限定の発明特定事項を削除して、訂正後の請求項3の「第2のインク組成物」との記載に改める訂正によって、例えば、スクリーン印刷用やオフセット印刷用などの「インクジェット」以外の印刷用のものや、インクジェット「印刷用」以外の捺染用のものなどにまで、特許を受けようとする発明の範囲が拡張されることは明らかであるから、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当する。
してみると、訂正事項1に係る訂正が、特許法第126条第6項に適合するとはいえない。

2.訂正事項2について
審判請求人は、審判請求書の第4頁において「訂正前の明細書の段落【0005】の3.における「第2のインクジェット印刷用インク組成物」は、訂正前の明細書の段落【0005】の3.が引用する1.における「第2のインク組成物」と同一のものであることが明らかであるので、当該「第2のインクジェット印刷用インク組成物」を「第2のインク組成物」といする訂正事項2は、特許法第126条第1項第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」又は同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。」と主張する。
しかしながら、訂正前の明細書の段落【0005】の「第2のインクジェット印刷用インク組成物」との記載に不自然な点や不明瞭な点は見当たらないので、訂正事項2に係る訂正が、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」又は同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当するとはいえない。
また、訂正事項2に係る訂正が、同1号の「特許請求の範囲の減縮」又は同4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当するとはいえないことも明らかである。

3.一群の請求項
訂正事項1に係る訂正前の請求項3〜10について、その請求項4〜10は、それぞれ請求項3を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項3〜10に対応する訂正後の請求項3〜10は、特許法第126条第3項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項2による明細書の訂正は、訂正前の請求項3〜10からなる一群の請求項のすべてについてされている。

第5 むすび
以上総括するに、本件訂正審判に係る訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものに該当せず、また、同法同条第6項に規定する要件に適合しない。
また、本件訂正審判に係る訂正事項2は、同法同条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものに該当しない。
したがって、本件訂正審判に係る訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-20 
結審通知日 2022-09-22 
審決日 2022-10-11 
出願番号 P2021-075055
審決分類 P 1 41・ 854- Z (C09D)
P 1 41・ 851- Z (C09D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
木村 敏康
登録日 2021-09-22 
登録番号 6948484
発明の名称 インクセット  
代理人 山田 泰之  

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