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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1391780
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-21 
確定日 2022-11-04 
事件の表示 特願2017−143421号「光検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月21日出願公開、特開2019−27783号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月25日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 4月21日付け:拒絶理由通知書
同年 6月17日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 1月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 4月28日付け:前置報告書
同年 7月13日 :上申書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1〜7に係る発明は、令和4年1月21日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び2の記載は次のとおりである。
なお、令和4年1月21日に提出された手続補正書では、請求項1の記載は補正されていない。請求項2の補正箇所には下線を付した。
以下、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明をそれぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。
「 【請求項1】
光源を備え、前記光源から出射された光を用いて計測を行う光検出装置であって、
前記光源から出射された光の一部を分離して受光することで、前記光源から出射されている光の光量を測定する光量測定用受光素子と、
前記光量測定用受光素子から出力される測定光量と基準光量とを比較し、その差が小さくなるように前記光源の発光特性を変更するための制御信号を出力する光量比較器と、
前記光源を駆動すると共に、前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記光源の発光特性を変更する光源駆動回路と、
を備え、
前記光源及び前記光量測定用受光素子は同一の筐体に収められ、
前記光源から出射される光の一部を前記筐体の内部にて反射させる内部反射体を備え、
前記光量測定用受光素子は、前記内部反射体において反射された反射光を受光することを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
光源を備え、前記光源から出射された光を用いて計測を行う光検出装置であって、
前記光源から出射された光の一部を分離して受光することで、前記光源から出射されている光の光量を測定する光量測定用受光素子と、
前記光量測定用受光素子から出力される測定光量と基準光量とを比較し、その差が小さくなるように前記光源の発光特性を変更するための制御信号を出力する光量比較器と、
前記光源を駆動すると共に、前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記光源の温度を制御することで発光特性を変更する光源駆動回路と、
を備え、
前記光源駆動回路は、ヒータを用いて通常時において前記光源を常温よりも高い温度とし、当該通常時における前記光源の前記測定光量を前記基準光量として設定しておき、前記光源駆動回路は前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記ヒータをオフすることで前記光源の温度を低下させることを特徴とする光検出装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明1についての理由の概要は、次のとおりである。

理由1(新規性
本願発明1は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性
本願発明1は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2013−11511号公報

第4 引用文献等
1 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定について
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した引用文献1(特開2013−11511号公報)には、以下の記載がある。下線は当審において付与した。以下同様である。
「【0014】
まず、図1に本実施の形態に係る物体検出装置の概略構成を示す。図示の如く、物体検出装置は、情報取得装置1と、情報処理装置2とを備えている。テレビ3は、情報処理装置2からの信号によって制御される。
【0015】
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離(以下、「3次元距離情報」という)を取得する。取得された3次元距離情報は、ケーブル4を介して情報処理装置2に送られる。」
「【0019】
図2は、情報取得装置1と情報処理装置2の構成を示す図である。
【0020】
情報取得装置1は、光学部の構成として、投射光学系100と受光光学系200とを備えている。投射光学系100と受光光学系200は、X軸方向に並ぶように、情報取得装置1に配置される。
【0021】
投射光学系100は、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130と、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)140と、フィルタ150と、FMD(Front Monitor Diode)160とを備えている。また、受光光学系200は、アパーチャ210と、撮像レンズ220と、フィルタ230と、CMOSイメージセンサ240とを備えている。この他、情報取得装置1は、回路部の構成として、CPU(Central Processing Unit)21と、レーザ駆動回路22と、PD信号処理回路23と、撮像信号処理回路24と、入出力回路25と、メモリ26を備えている。
【0022】
レーザ光源110は、受光光学系200から離れる方向(X軸正方向)に波長830nm程度の狭波長帯域のレーザ光を出力する。コリメータレンズ120は、レーザ光源110から出射されたレーザ光を平行光から僅かに広がった光(以下、単に「平行光」という)に変換する。
【0023】
リーケージミラー130は、誘電体薄膜の多層膜からなり、反射率が100%よりも若干低く、透過率が反射率よりも数段小さくなるように膜の層数や膜厚が設計されている。リーケージミラー130は、製造工程において反射/透過率の再現性が確保されるよう、ある程度の高さの透過率を有している(たとえば、透過率4%)。リーケージミラー130は、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の大部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に反射し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に透過する。
【0024】
DOE140は、入射面に回折パターンを有する。この回折パターンによる回折作用により、DOE140に入射したレーザ光は、ドットパターンのレーザ光に変換されて、目標領域に照射される。回折パターンは、たとえば、ステップ型の回折ホログラムが所定のパターンで形成された構造とされる。回折ホログラムは、コリメータレンズ120により平行光とされたレーザ光をドットパターンのレーザ光に変換するよう、パターンとピッチが調整されている。
【0025】
DOE140は、リーケージミラー130から入射されたレーザ光を、放射状に広がるドットパターンのレーザ光として、目標領域に照射する。ドットパターンの各ドットの大きさは、DOE140に入射する際のレーザ光のビームサイズに応じたものとなる。DOE140にて回折されないレーザ光(0次光)は、DOE140を透過してそのまま直進する。
【0026】
フィルタ150は、レーザ光源110から出射されるレーザ光の波長帯域の光を吸収する素材からなっている。たとえば、フィルタ150は、樹脂材料に、シアニン染料、メチン染料等の赤外光を吸収する特性を有した有機染料を混ぜた材料から形成される。フィルタ150は、リーケージミラー130を透過したレーザ光の光量を1/3程度に減衰させる。
【0027】
FMD160は、フィルタ150によって減衰されたレーザ光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。FMD160は、レーザ光源110の1%程度の光量を検出可能な範囲に含んでいる。
【0028】
なお、投射光学系100と受光光学系200の詳細な構成は、追って図4、図5を参照して、説明する。
【0029】
目標領域から反射されたレーザ光は、アパーチャ210を介して撮像レンズ220に入射する。
【0030】
アパーチャ210は、撮像レンズ220のFナンバーに合うように、外部からの光に絞りを掛ける。撮像レンズ220は、アパーチャ210を介して入射された光をCMOSイメージセンサ240上に集光する。フィルタ230は、レーザ光源110の出射波長(830nm程度)を含む赤外の波長帯域の光を透過し、可視光の波長帯域をカットするIRフィルタ(Infrared Filter)である。
【0031】
CMOSイメージセンサ240は、撮像レンズ220にて集光された光を受光して、画素毎に、受光量に応じた信号(電荷)を撮像信号処理回路24に出力する。ここで、CMOSイメージセンサ240は、各画素における受光から高レスポンスでその画素の信号(電荷)を撮像信号処理回路24に出力できるよう、信号の出力速度が高速化されている。
【0032】
CPU21は、メモリ26に格納された制御プログラムに従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU21には、レーザ光源110を制御するためのレーザ制御部21aと、FMD160から出力された信号量に応じてレーザ光源110の光量の自動制御を行う、いわゆるAPC(Auto Power Control)制御を行うAPC制御部21bと、3次元距離情報を生成するための距離演算部21cの機能が付与される。
【0033】
レーザ駆動回路22は、CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源110を駆動する。PD信号処理回路23は、FMD160から出力された受光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してCPU21に出力する。CPU21は、PD信号処理回路23から供給される信号をもとに、APC制御部21bによる処理によって、レーザ光源110の光量を増幅もしくは減少させる判断を行う。APC制御部21bにより、レーザ光源110の光量を変化させる必要があると判断された場合、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を変化させる制御信号をレーザ駆動回路22に送信する。なお、APC制御にかかる処理については、追って、図8を参照して説明する。
【0034】
撮像信号処理回路24は、CMOSイメージセンサ240を制御して、CMOSイメージセンサ240で生成された各画素の信号(電荷)をライン毎に順次取り込む。そして、取り込んだ信号を順次CPU21に出力する。CPU21は、撮像信号処理回路24から供給される信号(撮像信号)をもとに、情報取得装置1から検出対象物の各部までの距離を、距離演算部21cによる処理によって算出する。入出力回路25は、情報処理装置2とのデータ通信を制御する。」
「【0045】
ところで、図2のように、リーケージミラー130によりレーザ光源110から出射されたレーザ光の一部を透過させてFMD160に導かせると、レ―ザ光源110のCAN内にバックモニタ用の光検出器を配さずとも、FMD160によりレーザ光源110の光量をモニタすることができる。」
「【0094】
図8は、APC制御の処理を示す図である。図8の処理は、図2のAPC制御部21bによって行われる。
【0095】
図8(a)参照して、APC制御部21bは、レーザ制御部21aによるレーザ発光タイミングにおいて(S101:YES)、PD信号処理回路23より出力された受光量に応じたPD信号を取得する(S102)。そして、APC制御部21bは、取得したPD信号の値に基づき、FMD160の受光量が規定光量の範囲内にあるかを判定する(S103)。なお、規定光量は、レーザ光源110の適正発光量の上限値と下限値に対応する2つの閾値により規定され、これら2つの閾値が、あらかじめ、メモリ26に保持されている。
【0096】
受光量が規定光量内であれば(S103:YES)、APC制御部21bは、レーザ光源110から適正な発光量のレーザ光が出射されていると判断し、処理をS107に進める。他方、受光量が規定光量内でない場合(S103:NO)、APC制御部21bは、レーザ光源110からは、適正でない発光量のレーザ光が出射されていると判断し、受光量が規定光量よりも大きいかを判定する(S104)。
【0097】
受光量が規定光量よりも大きい場合(S104:YES)、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステップ減少させるための信号を出力する(S105)。これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ減少させる。これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ小さくなる。
【0098】
受光量が規定光量よりも小さい場合(S104:NO)、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステッ上昇させるための信号を出力する(S106)。これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ上昇させる。これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ大きくなる。
【0099】
その後、レーザ発光の終了タイミングであるかが判定され(S107)、レーザ発光の終了タイミングでない場合(S107:NO)、レーザ光源110の発光量の調節処理(S102〜S107)が繰り返される。レーザ発光の終了タイミングに到達すると(S107:YES)、APC制御部21bは、APC制御の処理を終了し、S101に戻って次の発光タイミングを待つ。」
「【0113】
また、上記実施の形態では、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるようにして発光装置10が構成されたが、図9(b)に示すように、レーザ光源110からDOE140までの光学素子が投射方向(Z軸方向)に並ぶように構成されてもよい。この場合、分光素子190は、透過率が高いものが用いられる。ただし、本発明は、上記実施の形態のように、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路を折り曲げることにより、投射光学系100の高さを抑える構成に用いて好ましいものである。すなわち、この構成では、高さ方向の薄型化が進むと、レーザ光源110のCAN110b内にバックモニタ用の光検出器を配せなくなる。本発明は、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を分光させる構成であるため、このようにレーザ光源110のCAN110b内にバックモニタ用の光検出器を配せないような光学系において、より効果を発揮するものである。
【0114】
また、上記実施の形態では、分光素子として、リーケージミラー130が用いられたが、偏光方向により分光する偏光ビームスプリッタや回折現象で分光する回折格子、回折光学素子等が用いられてもよい。これらの分光素子を用いる場合、FMD160に入射する光量が大きくなりやすいが、フィルタ150による遮光量を調節することで、FMD160の検出信号が飽和することなく、適正にレーザ光源の光量制御を行うことができる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図8】


「【図9】



(2) 引用文献1の記載から認定した事項
ア 【図1】〜【図3】から、投射光学系100と受光光学系200は、情報取得装置1の筐体に収められていることが読みとれる。

イ 【図9】(b)及び【0113】から、投射光学系100の配置の変更例として、レーザ光源110からDOE140までの光学素子が投射方向(Z軸方向)に並ぶように構成されてもよく、その場合には、情報取得装置1の筐体内部にある分光素子190は、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の一部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に透過し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に反射するものであることが読みとれる。

(3) 引用発明の認定
前記(1)において摘記した事項及び上記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「情報取得装置1と情報処理装置2を備える物体検出装置であって、(【0014】)
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離を取得するものであり、(【0015】)
情報取得装置1は、光学部の構成として、投射光学系100と受光光学系200とを備えており、(【0020】)
投射光学系100と受光光学系200は、情報取得装置1の筐体に収められており、(【図1】〜【図3】)
投射光学系100は、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130と、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)140と、フィルタ150と、FMD(Front Monitor Diode)160を備え、受光光学系200は、アパーチャ210と、撮像レンズ220と、フィルタ230と、CMOSイメージセンサ240を備えており、(【0021】)
情報取得装置1は、回路部の構成として、CPU21と、レーザ駆動回路22と、PD信号処理回路23と、撮像信号処理回路24と、入出力回路25と、メモリ26を備えており、(【0021】)
リーケージミラー130は、誘電体薄膜の多層膜からなり、反射率が100%よりも若干低く、透過率が反射率よりも数段小さくなるように膜の層数や膜厚が設計されており、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の大部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に反射し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に透過するものであり、(【0023】)
FMD160は、フィルタ150によって減衰されたレーザ光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力するものであり、レーザ光源110の1%程度の光量を検出可能な範囲に含んでおり、(【0027】)
CPU21には、レーザ光源110を制御するためのレーザ制御部21aと、FMD160から出力された信号量に応じてレーザ光源110の光量の自動制御を行う、いわゆるAPC(Auto Power Control)制御を行うAPC制御部21bと、3次元距離情報を生成するための距離演算部21cの機能が付与されており、(【0032】)
レーザ駆動回路22は、CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源110を駆動し、PD信号処理回路23は、FMD160から出力された受光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してCPU21に出力し、CPU21は、PD信号処理回路23から供給される信号をもとに、APC制御部21bによる処理によって、レーザ光源110の光量を増幅もしくは減少させる判断を行い、APC制御部21bにより、レーザ光源110の光量を変化させる必要があると判断された場合、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を変化させる制御信号をレーザ駆動回路22に送信するものであり、(【0033】)
リーケージミラー130によりレーザ光源110から出射されたレーザ光の一部を透過させてFMD160に導かせると、FMD160によりレーザ光源110の光量をモニタすることができ、(【0045】)
APC制御部21bは、レーザ制御部21aによるレーザ発光タイミングにおいて、PD信号処理回路23より出力された受光量に応じたPD信号を取得し、取得したPD信号の値に基づき、FMD160の受光量が規定光量の範囲内にあるかを判定し、規定光量は、レーザ光源110の適正発光量の上限値と下限値に対応する2つの閾値により規定され、これら2つの閾値が、あらかじめ、メモリ26に保持されており、(【0095】)
受光量が規定光量内であれば、APC制御部21bは、レーザ光源110から適正な発光量のレーザ光が出射されていると判断し、受光量が規定光量内でない場合、APC制御部21bは、レーザ光源110からは、適正でない発光量のレーザ光が出射されていると判断し、受光量が規定光量よりも大きいかを判定し、(【0096】)
受光量が規定光量よりも大きい場合、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステップ減少させるための信号を出力し、これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ減少させ、これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ小さくなり、(【0097】)
受光量が規定光量よりも小さい場合、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステップ上昇させるための信号を出力し、これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ上昇させ、これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ大きくなり、(【0098】)
投射光学系100の配置の変更例として、レーザ光源110からDOE140までの光学素子が投射方向(Z軸方向)に並ぶように構成されてもよく、その場合には、情報取得装置1の筐体内部にある分光素子190は、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の一部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に透過し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に反射するものであり、(【0113】、【図9】(b))
分光素子として、リーケージミラー130が用いられた、(【0114】)
物体検出装置。」

2 引用文献9の記載事項及び技術常識1の認定について
(1) 引用文献9の記載事項
当審において新たに引用する特開2003−110188号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の記載がある。
「【0020】本発明のレーザ光量制御装置は、レーザ光を射出するレーザ光源10、レーザ光源10から射出されたレーザ光の一部であるモニター光を後述する反射面20aにより反射して照明光と分離するとともに照明光を集光して射出する集光レンズ20、集光レンズ10の反射面20aにより反射されたモニター光を検出する検出手段30、および検出手段30により検出されたモニター光の光量に基づいてレーザ光源10から射出されるレーザ光の光量を制御する光量制御手段40を備えている。
【0021】レーザ光源10はレーザダイオードであり、アルミ製のLDマウント50に固定されている。
【0022】集光レンズ20は、レーザ光源10から射出されたレーザ光を一方向(Y方向)にのみ線状に収束させるシリンドリカルレンズである。そして、詳細には、図2に示すように、レーザ光の一部をモニター光として反射する反射面20aを備えている。そして、反射面20aにはレーザ光の一部が効率よく反射されるように反射材料が被覆され、ミラーとなっている。
【0023】また、集光レンズ20は、図1に示すようにガラスブロック60上に接着されており、そのガラスブロック60はLDマウント50に接着されている。集光レンズ20、ガラスブロック60およびLDマウント50はレーザ光源10と集光レンズ20の位置、角度関係を高精度に調整して接着する必要がある。
【0024】検出手段30は、フォトダイオードであり、集光レンズ20における反射面20aにより反射されたモニター光を検出するようにガラスブロック60上に設置されている。
【0025】光量制御手段40は、検出手段30により検出されたモニター光の光量に基づいて、いわゆるAPC制御(Auto Power Control)を行うものである。このAPC制御は、レーザ光源10から一定の光量のレーザ光が射出されるようにレーザ光源10の駆動電流を制御するものである。
【0026】次に、本実施形態の作用について説明する。まず、レーザー光源10から射出されたレーザ光は集光レンズ20に入射される。集光レンズ10に入射したレーザー光の一部は反射面20aにより検出手段30に向かって反射される。一方、反射面20aにより反射されることなく集光レンズ20内に入射したレーザ光はY方向にのみ収束されて集光レンズ20から射出される。
【0027】反射面20aにより反射されたモニター光は、検出手段30により検出されて光電変換され、モニター光の光量に応じた電気信号が光量制御手段40に出力される。光量制御手段40は、検出手段30から出力された電気信号の大きさに基づいてレーザ光の光量を算出し、予め設定されたレーザ光の光量と異なる場合には、その異なる光量に応じた駆動電流をレーザ光源10に流す。このようなAPC制御を行うことにより、レーザ光源10の性質や経時的変化に影響されることなく、常に一定の光量のレーザ光が射出されるように制御することができる。
【0028】本発明のレーザ光量制御装置によれば、レーザ光源10から射出されるレーザ光の光量を制御するためのモニター光を、集光レンズ20に設けられた反射面20aによりレーザ光の一部を反射することにより得るようにしたので、ビームスプリッタのような高価な部品を用いることなく安定性の高いモニター光を得ることができ、装置の小型化、コストの削減を図ることができる。
【0029】また、上記実施の形態においては、図2に示すように集光レンズ20の一部に傾斜を持たせることにより反射面20aを設けるようにしたが、図3(A)に示すように、集光レンズ70のレーザ光の入射面70aの外側の一部にレーザ光の入射を妨げることのないようにレーザ光を反射する反射材料71を被覆し、レーザ光の出射面70bの一部に、入射したレーザ光の一部が集光レンズの内部に向かって反射されるように反射材料71を被覆して反射面を設けるようにしてもよい。図3(B)は図3(A)に示す集光レンズ70を矢印Aの方向から見たときの出射面70bの図である。集光レンズ70の出射面70bの一部に被覆された反射材料71により集光レンズ70の内部に反射されたレーザ光は集光レンズの内部で散乱し、その散乱光は上記反射材料71が被覆されていない面、例えば、上面70cから出射される。そして、この上面70cから出射された散乱光をモニター光として上記実施形態と同様に利用することができる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



(2) 技術常識1の認定
引用文献9に例示されているように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)
[技術常識1]
「レーザ光源の光量を予め設定された光量となるように制御するために、レーザ光源からのレーザ光の一部をモニター光として反射する反射面を有する光学部材を設けて、反射面により反射されたモニター光を検出するにあたり、反射面にはレーザ光の一部が効率よく反射されるように反射材料が被覆され、ミラーとなっていること。」

3 引用文献10の記載事項及び周知技術1の認定について
(1) 引用文献10の記載事項
当審において新たに引用する特開2001−308444号公報(以下「引用文献10」という。)には、以下の記載がある。
「【0003】
【従来の技術】図1は従来の波長ロッカを備えた光半導体モジュール10の構成を示す。
【0004】図1を参照するに、前記光半導体モジュール10はパッケージ本体2と、前記パッケージ本体2上に設けられた温度制御部3上に、キャリア部材4を介して保持された半導体レーザ1とを含み、前記半導体レーザはパッケージ本体2上の電極に接続されたワイヤ1Cを介して給電され、出力光ビーム1Aを形成する。形成された出力光ビーム1Aは、前記パッケージ本体2上の窓2Aを介して、これに光学的に結合された光ファイバ(図示せず)中に注入される。
【0005】さらに前記半導体レーザ1は出力光ビーム1Aとは逆方向に別の出力光ビーム1Bを形成し、前記出力光ビーム1Bはビームスプリッタ5および波長フィルタ6を通過した後、第1のフォトダイオード7により検出される。さらに、前記ビームスプリッタ5により分岐された前記出力光ビーム1Bの強度が、第2のフォトダイオード8により検出される。さらに、前記キャリア部材4はサーミスタ4Aを担持し、前記サーミスタ4Aは前記半導体レーザ1の温度を測定し、その結果を表す出力信号をワイヤ4Bを介して前記パッケージ本体2の外部に供給する。
【0006】前記光半導体モジュール10では、図示は省略するが、前記出射光ビーム1Aの光路上、前記半導体レーザ1と前記窓2Aとの間に第1のコリメータレンズが、また前記前記出射光ビーム1Bの光路上には、前記半導体レーザ1と前記ビームスプリッタ5Aとの間に第2のコリメータレンズが設けられている。
【0007】さらに前記光半導体モジュール10には前記外部の制御回路が協働し、前記制御回路は前記第2のフォトダイオード8が検出した前記出力光ビーム1Bの強度が一定になるように、前記半導体レーザ1を制御する。すなわち、前記第2のフォトダイオード8はAPC制御に使われる。かかる制御回路は、さらに前記第1のフォトダイオード7が検出した、出力強度が一定に制御された前記出力光ビーム1Bの、前記波長フィルタ5を通過した後における強度に基づいて前記温度制御部3を構成するペルチェ素子を制御し、前記半導体レーザ1の発振波長の変化を補償する。
【0008】図2は、前記半導体レーザ1の発振波長と動作温度との関係の一例を示す。
【0009】図2を参照するに、半導体レーザの発振波長は、主として温度変化に伴う光共振器長の変化あるいは屈折率の変化に起因して、温度が増大すると共に長波長側にシフトする。
【0010】これに対して図3は前記波長フィルタ6の波長透過特性を示す。ただし前記波長フィルタ6は平行した対向面を有するガラスなどの光学媒体で形成されており、エタロンの性質を持っている。
【0011】図3を参照するに、前記波長フィルタ6は波長に対して正弦波的に変化する透過特性を有するため、前記波長フィルタ6を、前記透過特性の傾斜部が前記出力光ビーム1Bの発振波長に対応するように設計しておくことにより、前記フォトダイオード7により前記発振波長の変化を感度良く検出することが可能になる。そこで、例えば前記フォトダイオード7が検出する前記出力光ビーム1Bの強度が減少した場合には、前記半導体レーザ1自体は前記フォトダイオード8を使ってAPC制御されていることから、図2の関係から前記半導体レーザ1の動作温度が増大したと判断され、前記制御回路は前記温度制御部3を制御して前記半導体レーザ1の動作温度を降下させる。すなわち、図1の光半導体モジュール10においては、前記温度制御部3上に形成された各部品により、波長ロッカが形成される。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



(2) 周知技術1の認定
引用文献10に例示されているように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「レーザ光源の温度を制御して出力強度を一定にするために、光学フィルタを透過したレーザ光の強度を検出し、検出された強度が減少したときにはレーザ光源の温度が増大したと判断し、レーザ光源の動作温度を低下させること。」

4 引用文献5、11の記載事項及び周知技術2の認定について
(1) 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した引用文献5(特開2004−207666号公報)には、以下の記載がある。
「【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザダイオード装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、11はアンクールドタイプのレーザダイオードモジュールで、例えばアナログの高周波信号を光信号に変換して出力する。また、12は上記レーザダイオードモジュール11の温度を一定に保つためのヒータである。上記ヒータ12は、レーザダイオードモジュール11に直接装着する他、例えばレーザダイオードモジュール11の保持金具や保持基板等に装着しても良い。この場合、レーザダイオードモジュール11及びヒータ12を特定のケース内に設けても良い。
【0011】
上記ヒータ12の発熱量は、温度制御回路13によって制御され、レーザダイオードモジュール11を周囲温度より高い一定の温度に保持するようになっている。すなわち、温度制御回路13は、例えばレーザダイオードモジュール11を使用する装置の動作周囲温度の規格が−20°〜+40°で所要の性能が維持されることを保証している場合、レーザダイオードモジュール11を上記動作周囲温度の上限値である40℃より高い温度、例えば65℃の一定温度に保持するように動作する。そうすることで、レーザダイオードモジュール11は、周囲温度が上記動作周囲温度の範囲内で変化しても一定温度に保たれる。なお、レーザダイオードモジュール11としては、上記動作周囲温度より高い温度、この場合には65℃前後の温度で良好に動作するものを使用する。
上記レーザダイオードモジュール11及び温度制御回路13については、詳細を後述する。
【0012】
そして、上記レーザダイオードモジュール11には、送信用高周波信号が歪み補償回路14を介して入力される。この歪み補償回路14は、例えば特開平10−126284号公報、特開平9−102718号公報で公開されている技術を利用して高周波信号入力の2次及び3次の歪を補償するが、特にレーザダイオードモジュール11が温度制御回路13にて保持されている温度で発生する歪みを補償するよう補償特性を設定してある。上記レーザダイオードモジュール11は、高周波入力信号を光信号に変換し、光ケーブルを介して外部に出力する。
【0013】
上記レーザダイオードモジュール11は、図2に示すように構成される。レーザダイオードモジュール11は、LD(レーザダイオード)チップ111、モニタPD(フォトダイオード)112、第1のレンズ113、アイソレータ114、第2のレンズ115からなり、ケース116内に収納される。
【0014】
上記LDチップ111は、外部入力される高周波信号をレーザ光に変換して出力するもので、そのレーザ光は、第1のレンズ113、アイソレータ114、第2のレンズ115及び光ファイバ117を介して外部に取り出される。
【0015】
また、上記モニタPD112は、LDチップ111から出力されるレーザ光を受光して電気信号に変換し、外部に設けられているAPC(Automatic Power Control)回路15に出力する。このAPC回路15は、モニタPD112からの信号に基づいてLDチップ111の駆動回路を制御し、LDチップ111の光出力が常に一定となるようにしている。レーザダイオードモジュール11を定電流駆動させた場合、温度が上昇するとレーザダイオードモジュール11の光出力は減少し、温度が下降すると光出力は増大する。このため上記したようにLDチップ111から出力されるレーザ光をモニタPD112で検出し、その光出力が一定となるようにAPC回路15によりLDチップ111の駆動回路を制御している。
【0016】
そして、上記レーザダイオードモジュール11の外側、すなわちケース116の外側にヒータ12を取り付けると共に、感熱素子例えば負特性サーミスタ(以下、サーミスタと称する)26を取り付ける。サーミスタ26は、ヒータ12と同様にレーザダイオードモジュール11に直接装着する他、レーザダイオードモジュール11の保持金具や保持基板等に装着しても良い。
【0017】
上記サーミスタ26は、レーザダイオードモジュール11の温度を検出するための素子で、その検出信号は温度制御回路13に入力する。この温度制御回路13は、サーミスタ26の検出信号に基づいてヒータ12を制御し、レーザダイオードモジュール11の温度を例えば65℃等の一定値に保持する。」
「【図1】


「【図2】



(2) 引用文献11の記載事項
当審において新たに引用する特開昭59−146069号公報(以下「引用文献11」という。)には、以下の記載がある。
ア 1頁左欄の「2 特許請求の範囲」
「1)発光手段と、
該発光手段の発光光量を検出する光検出手段と、
該光検出手段の出力に応じて前記発光手段の出力を変化させる手段と、
前記発光手段および前記光検出手段を加熱する手段と、
該加熱手段の加熱温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の出力に応じて前記加熱手段を制御する制御手段とを具えたことを特徴とする光源安定化装置。
2) 特許請求の範囲第1項記載の光源安定化装置において、前記制御手段は、前記発光手段の周囲温度のほぼ最高値で温度制御を行うことを特徴とする光源安定化装置。」

イ 2頁左下欄10〜17行
「半導体レーザ発生器1は前述の如く前方に向けてレーザビーム(フロントビーム)L1を出射するのと同時に後方に向けてバックビームBBを出射しているものであるが、かかるバックビームBBを光検出素子11で受光してビーム強度に応じた検出信号を形成する。この検出信号を制御回路12に印加して半導体レーザ発生器1のビーム出射強度を制御する。」

ウ 3頁右下欄7行〜4頁右上欄2行
「 次に、第1図に示した温度制御回路24について述べる。半導体レーザ発生器1と光検出素子11とは、第1図に示すように、熱伝導度の良いベース21上に取付けておく。このベース21に密着して加熱素子22を取付け、さらにベース21に温度検出素子23を密着して取付ける。この温度検出素子23は、例えばサーミスタ、熱電対とすることかできる。加熱素子22は、例えばニクロムヒータをシリコンゴムやマイカ等で絶縁したものとすることかできる。」

エ 4頁左上欄9行〜同頁右上欄2行
「 ベース21の温度が低い時は、温度検知素子23の抵抗が増加し、入力端子25の電圧が増加する。この電圧が分圧抵抗28と29で決まる電圧より高くなると、演算増幅器30はトランジスタ33のコレクタ電流を増加させるように動作する。この結果、ヒータ22の電流が増加してベース21の温度が上昇する。他方、ベース21の温度が高い時は、この逆の動作をし、ベース21の温度が一定に保たれる。この一定温度を制御温度と呼ぶ。しかして、この制御温度は分圧抵抗28と29で決まる。半導体レーザは熱には弱いので、加熱温調する場合には、制御温度を最高周囲温度とほぼ等しい温度とする。
ここで最高周囲温度とは半導体レーザを使用した場合の装置の周囲温度を言う。」

オ 第1図




カ 第2図




(3) 周知技術2の認定
引用文献5及び引用文献11に例示されているように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。)
[周知技術2]
「レーザ光源から出力光を検出し、その光出力が一定となるようにレーザ光源の駆動回路を制御する際、ヒータを用いてレーザ光源の温度を常温よりも高い一定の温度に保持すること。」

第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「レーザ光源110」は、本願発明1の「光源」に相当し、引用発明の「目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離を取得する」「情報取得装置1」は、本願発明1の「前記光源から出射された光を用いて計測を行う光検出装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明は、「光源を備え、前記光源から出射された光を用いて計測を行う光検出装置」である点で一致する。

イ 引用発明の「レーザ光源110から出射されたレーザ光の一部」を「FMD160に導かせる」ことは、本願発明1の「前記光源から出射された光の一部を分離して受光すること」に相当し、引用発明の「レーザ光源110の光量をモニタすること」は、本願発明1の「前記光源から出射されている光の光量を測定する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「FMD(Front Monitor Diode)160」は、本願発明1の「光量測定用受光素子」に相当するから、本願発明1と引用発明は、「前記光源から出射された光の一部を分離して受光することで、前記光源から出射されている光の光量を測定する光量測定用受光素子」を備える点で一致する。

ウ(ア) 引用発明の「FMD160」は、「フィルタ150によって減衰されたレーザ光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力するもの」であるから、「FMD160」から「出力」される「受光量に応じた電気信号」は、本願発明1の「前記光量測定用受光素子から出力される測定光量」に相当する。
(イ) 引用発明では、「APC制御部21b」により「FMD160の受光量が規定光量の範囲内にあるかを判定」され、「規定光量は、レーザ光源110の適正発光量の上限値と下限値に対応する2つの閾値により規定され」ているから、引用発明の「規定光量」は、本願発明1の「基準光量」に相当する。
(ウ) 引用発明では、「受光量が規定光量よりも大きい場合」や「小さい場合」を判定しているから、「受光量」と「規定光量」を比較しており、このことは、本願発明1の「前記光量測定用受光素子から出力される測定光量と基準光量とを比較」することに相当する。
(エ) 引用発明では、「受光量が規定光量よりも大きい場合」又は「小さい場合」に、「APC制御部21b」は、それぞれ「レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステップ減少させるための信号」又は「1ステップ上昇させるための信号」を「出力」しているから、「受光量」と「規定光量」を比較したときの差が小さくなるようにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を変更しているといえる。
(オ) ここで、引用発明の「レーザ光の発光量」は、本願発明1の「光源の発光特性」に相当し、引用発明のレーザ光の発光量を変更するための信号は、本願発明1の「その差が小さくなるように前記光源の発光特性を変更するための制御信号」に相当するから、引用発明の「APC制御部21b」は、本願発明1の「前記光源の発光特性を変更するための制御信号を出力する光量比較器」に相当する。
(カ) 以上を踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記光量測定用受光素子から出力される測定光量と基準光量とを比較し、その差が小さくなるように前記光源の発光特性を変更するための制御信号を出力する光量比較器」を備える点で一致する。

エ(ア) 引用発明の「レーザ駆動回路22」は、「CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源110を駆動」するものであるから、本願発明1の「前記光源を駆動する」ものに相当する。
(イ) 引用発明では、「受光量が規定光量よりも大きい場合」又は「小さい場合」に、「APC制御部21b」が出力する「信号」に応じて、「レーザ制御部21a」は、それぞれ「レーザ光源110の発光量を1ステップ減少させ」又は「1ステップ上昇させ」るから、引用発明の「レーザ制御部21a」は、本願発明1の「前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記光源の発光特性を変更する」ものに相当する。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえ、引用発明の「レーザ駆動回路22」と「レーザ制御部21a」を一体のものとしてみると、本願発明1の「前記光源を駆動すると共に、前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記光源の発光特性を変更する光源駆動回路」に相当する。
(エ) したがって、本願発明1と引用発明は、「前記光源を駆動すると共に、前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記光源の発光特性を変更する光源駆動回路」を備える点で一致する。

オ 引用発明では、「投射光学系100と受光光学系200は、情報取得装置1の筐体に収められて」いるから、「投射光学系100」の「レーザ光源110」と「FMD160」も「情報取得装置1の筐体に収められて」いることは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明は、「前記光源及び前記光量測定用受光素子は同一の筐体に収められ」ている点で一致する。

カ 引用発明では、「投射光学系100の配置の変更例として、レーザ光源110からDOE140までの光学素子が投射方向(Z軸方向)に並ぶように構成されてもよく、その場合には、情報取得装置1の筐体内部にある分光素子190は、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の一部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に透過し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に反射するもの」であるところ、引用発明の「情報取得装置1の筐体内部にある分光素子190」は、本願発明1の「前記光源から出射される光の一部を前記筐体の内部にて反射させる内部反射体」に相当し、引用発明の「FMD160」は「分光素子190」において反射された反射光を受光しているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明は、「前記光源から出射される光の一部を前記筐体の内部にて反射させる内部反射体を備え、前記光量測定用受光素子は、前記内部反射体において反射された反射光を受光すること」という点で一致する。

(2) 本願発明1についての判断
前記(1)の対比の結果より、引用発明は本願発明1の構成を全て含むから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求人の主張について
ア 審判請求書における主張の概要
請求人は、審判請求書において、引用文献1に関連して、概略次の主張をしている。下線は当審において付した。
本願明細書の段落0048には「内部反射体18の代わりに回折格子等の光学素子を用いて」と記載されているように、本願では「内部反射体」と「回折格子」とを明確に区別している。そして、内部反射体18の代わりに回折格子等の光学素子を用いてもよいとしていることによって、回折格子を用いる構成に対して内部反射体18を用いる構成において温度変化に対する優れた効果を得られることが否定されるものでもない。
本願発明は、回折格子を用いる構成ではなく内部反射体を用いる構成を採用することによって光源からの光を分離して測定光量と基準光量とを比較して測定光量を調整する際に温度変化に対する優れた効果を得られるという技術的な効果を与える。引用文献1は「内部反射体」を用いることは想定されておらず、本願発明の当該技術的効果は引用文献1から当業者が予想できるものではない。

イ 上申書における主張の概要
請求人は、令和4年7月13日に提出した上申書において、引用文献1に関連して、概略次の主張をしている。
本願発明における「内部反射体」の最も標準的な構成(材質)は、例えば「鏡(ミラー)」である。
ここで、鏡で作られる単純な「内部反射体」は温度(例えば、車載で想定される温度範囲)に対して反射特性(主に反射角度)の変化が少ないため、「内部反射体」で反射された光を位置ずれなく、若しくは小さい位置ずれで安定して光量測定用受光素子に入射させることができる。したがって、光量測定用受光素子は、サイズが小さい受光素子を1つ又は少ない数で構成することができる。
また、光量測定用受光素子に対する光の入射位置がずれた場合、装置の筐体の機械的な歪み等が発生していると判断できる可能性がある。
引用文献1では、内部反射体は用いられておらず、分光素子が用いられているだけである。
「内部反射体」として回折格子を用いた場合、波長により反射光の反射角度が変化するので温度の変化に伴う波長の変化に対して感度が高い。その反面、反射角の変化によって反射光に位置ずれが生じやすく、位置ずれに対しても光量が正確に測定できるようにサイズの大きい受光素子としたり、受光素子の数を増やしたりする必要がある場合もある。また、回折格子では、位置ずれが生じた場合に温度変化によるものか、筐体の歪み等によるものかを区別することは難しい場合がある。また、回折格子は、鏡等の一般的な「内部反射体」に比べて高価な上、温度に対する反射角度に個体差が出ないように製造する必要があり、量産時にコストが高くなるおそれがある。

ウ 請求人の主張の検討
(ア) 引用文献1は回折格子を用いているとの主張について
引用文献1は回折格子を用いている旨の請求人の主張については、引用発明では「分光素子として、リーケージミラー130が用いられた」として認定しており、回折格子を含むものとして認定していないから、当該主張は、合議体の判断を左右するものではない。

(イ) 「リーケージミラー」と「内部反射体」について
請求人は、本願発明1の「内部反射体」は、一般人が通常「鏡(ミラー)」というような、反射率が100%に近い「反射体」を想定しており、引用発明の「リーケージミラー」(分光素子)は含まない旨主張している。
しかしながら、請求人の主張は、以下のa〜cに示す理由により採用することができない。
a 「内部反射体」には「リーケージミラー」が含まれると解釈すべきこと
本願の請求項1は、「内部反射体」について、「前記光源から出射される光の一部を前記筐体の内部にて反射させる」と規定するのみであり、請求人の主張するような反射率が100%に近い「鏡(ミラー)」であるとの限定はなく、「光源から出射される光の一部を前記筐体の内部にて反射させる」機能を果たす部材であれば「内部反射体」といって差し支えないというべきである。

b 補正の機会があるのに補正をしていないこと
本願発明1の「内部反射体」が引用発明の「リーケージミラー」(分光素子)を含まないのであれば、除くクレームそのほかの手法で補正することができたものであるところ、請求人は意見書及び審判請求書において主張するのみで、審査官からの指摘に対して審査段階及び審判請求時にその点が明確になるように請求項1の記載を補正する機会があったにも関わらず、補正をしなかった。
特許請求の範囲の公示的機能の重要性に鑑みると、意見書・審判請求書の主張だけで、客観的には当該主張より広い概念を意味する用語を狭く解釈することは妥当ではない。

c 「内部反射体」に係る請求人の主張は実質的相違点ではないこと
請求人の主張に沿って、本願発明1の「内部反射体」が引用発明の「リーケージミラー」(分光素子)を含まない、反射率が100%に近い「鏡(ミラー)」の意味であり、このことが仮に引用発明との間の相違点であるとしても、「レーザ光源の光量を予め設定された光量となるように制御するために、レーザ光源からのレーザ光の一部をモニター光として反射する反射面を有する光学部材を設けて、反射面により反射されたモニター光を検出するにあたり、反射面にはレーザ光の一部が効率よく反射されるように反射材料が被覆され、ミラーとなっていること」は技術常識である(前記技術常識1参照)から、この点は、設計上の微差にすぎず、実質的な相違点ではない。

2 本願発明2について
(1) 上申書
前記1において説示したとおり、本願発明1については、引用文献1から新規性及び進歩性が認められないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
しかしながら、令和4年7月13日付けの上申書において、請求人は、本願発明1について拒絶理由が解消されていないと判断される場合、請求項1を削除し、請求項2及びそれに従属する請求項に限定する補正の準備があるので補正の機会の付与を要請していることから、当審においては、本願発明2についても念のため検討した。
次の(2)に説示するとおり、本願発明2は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願発明2は、進歩性を満たすものでないから、このことを前提に補正の機会を付与することは妥当ではなく、請求人の要請に応じることはできない。

(2) 本願発明2が特許可能でないことについて
ア 本願発明2と引用発明の対比
前記1(1)に示した本願発明1と引用発明の対比結果を踏まえつつ、本願発明2と引用発明を対比すると、両者は次の(ア)に示す一致点において一致し、以下の(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「 光源を備え、前記光源から出射された光を用いて計測を行う光検出装置であって、
前記光源から出射された光の一部を分離して受光することで、前記光源から出射されている光の光量を測定する光量測定用受光素子と、
前記光量測定用受光素子から出力される測定光量と基準光量とを比較し、その差が小さくなるように前記光源の発光特性を変更するための制御信号を出力する光量比較器と、
前記光源を駆動すると共に、前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて発光特性を変更する光源駆動回路と、
を備える、光検出装置。」

(イ) 相違点
本願発明2では、「光源駆動回路」が「前記光源の温度を制御することで発光特性を変更する」ものであり、「前記光源駆動回路は、ヒータを用いて通常時において前記光源を常温よりも高い温度とし、当該通常時における前記光源の前記測定光量を前記基準光量として設定しておき、前記光源駆動回路は前記光量比較器からの前記制御信号に基づいて前記ヒータをオフすることで前記光源の温度を低下させる」のに対して、
引用発明では、「受光量が規定光量よりも大きい場合」又は「小さい場合」に、「APC制御部21b」が出力する「信号」に応じて、「レーザ制御部21a」は、それぞれ「レーザ光源110の発光量を1ステップ減少させ」又は「1ステップ上昇させ」る点。

イ 本願発明2についての判断
(ア) 「レーザ光源の温度を制御して出力強度を一定にするために、光学フィルタを透過したレーザ光の強度を検出し、検出された強度が減少したときにはレーザ光源の温度が増大したと判断し、レーザ光源の動作温度を低下させること」は周知技術であるから(前記周知技術1を参照)、引用発明において、レーザ光源110からFMD160が受光した受光量が規定光量の範囲内にあるように制御する際、レーザ光源110の温度を制御することで、レーザ光源の発光量の増減に変更を加えて(「発光特性を変更する」に相当)出力強度を一定することは、当業者が適宜なし得たレーザ光源の発光量制御に係る設計変更にすぎない。

(イ) 「レーザ光源から出力光を検出し、その光出力が一定となるようにレーザ光源の駆動回路を制御する際、ヒータを用いてレーザ光源の温度を常温よりも高い一定の温度に保持すること」は周知技術であり(前記周知技術2を参照)、引用発明において、レーザ光源110からFMD160が受光した受光量が規定光量の範囲内にあるように制御する際、ヒータを用いてレーザ光源の温度を常温よりも高い一定の温度に保持して、その状態における規定光量を設定することは、当業者が適宜になし得たレーザ光源の発光量制御に係る設計変更にすぎない。
そして、レーザ光源の温度がさらに高くなったとき、ヒータをオフすることでレーザ光源の温度を低下させることは、一定の温度に保持するための自明な手法にすぎない。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)において検討したとおり、前記相違点に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明2の奏する効果は、引用発明及び周知技術1、2から当業者が予測できる程度のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本願発明2は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法29条1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
また、本願発明1及び本願発明2は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-05 
結審通知日 2022-09-06 
審決日 2022-09-22 
出願番号 P2017-143421
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 113- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
佐藤 久則
発明の名称 光検出装置  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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