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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C12N
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C12N
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C12N
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C12N
管理番号 1391945
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2022-02-01 
確定日 2022-09-27 
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第5451496号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5451496号の特許請求の範囲を令和4年7月19日付け手続補正書により補正された審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第5451496号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成16年6月2日(パリ条約による優先権主張 2003年7月8日 アメリカ合衆国(US)、2003年7月11日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2006−518636号の一部を、特許法第36条の2第1項及び特許法第44条第1項の規定により平成22年4月7日に新たな外国語書面出願とした特願2010−088577号であって、その請求項1−6に係る発明について平成26年1月10日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、本件特許は、令和4年2月1日に訂正審判の請求がなされ、同年5月24日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年7月19日に意見書並びに審判請求書及び訂正特許請求の範囲を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正について
1 補正の内容
本件補正は、審判請求書の「請求の理由」に記載された訂正事項2−3及び訂正事項6−3を削除するとともに、該訂正事項の削除に整合するように訂正特許請求の範囲を補正するものである。

2 補正の認否
本件補正は、審判請求書に記載された「請求の趣旨」の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、これを認める。
なお、本件補正により、訂正拒絶理由通知において、特許法第126条第1項ただし書き及び特許法第126条第6項の規定に適合しないと指摘した訂正事項2−3及び訂正事項6−3は削除されたから、訂正拒絶理由も解消している。

第3 請求の要旨
上記のとおり、本件補正は認められるから、本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)を、令和4年7月19日付けの手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1〜6−2に示す(下線部が訂正箇所)とおりのものである。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体であって、当該ヘテロニ量体ポリペプチドに対して10−10M以下のKd値で結合する、単離されたモノクローナル抗体」に訂正する。
なお、上記手続補正書において「当該ヘテロに量体ポリペプチド」とあるのは、当該手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されるとおり、「当該ヘテロ二量体ポリペプチド」の誤記であると認め、上記のとおり認定する。

2 訂正事項2
(1)訂正事項2−1
特許請求の範囲の請求項2に「前記抗体」とあるのを「前記単離されたモノクローナル抗体」に訂正する。

(2)訂正事項2−2
特許請求の範囲の請求項2に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体」に訂正する。

3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体」に訂正し、その上で、特許請求の範囲の請求項3から「前記抗体がモノクローナル抗体であり、」との記載を削除する。

4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体」に訂正する。

5 訂正事項5
(1)訂正事項5−1
特許請求の範囲の請求項5に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体」に訂正し、その上で、特許請求の範囲の請求項5から「前記抗体が」との記載を削除する。

(2)訂正事項5−2
特許請求の範囲の請求項5の「抗体断片、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、又は抗イディオタイプ抗体」とあるのを、ここから抗イディオタイプ抗体を削除して「抗体断片、モノクローナル抗体、又は一本鎖抗体」に訂正する。

(3)訂正事項5−3
特許請求の範囲の請求項5の冒頭に「IL−17AポリペプチドとIL−17Fポリペプチドが共有結合したヘテロ二量体ポリペプチドのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害する、当該ヘテロ二量体ポリペプチドに対するアンタゴニスト抗体であって、」との文言を追加する訂正をする。

6 訂正事項6
(1)訂正事項6−1
特許請求の範囲の請求項6に「前記抗体」とあるのを「前記単離されたモノクローナル抗体」に訂正し、特許請求の範囲の請求項6に「単離された抗体」とあるのを「単離されたモノクローナル抗体」に訂正する。

(2)訂正事項6−2
特許請求の範囲の請求項6に「アンタゴニスト抗体」とあるのを「ヒト化アンタゴニスト抗体」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、「抗体」を、その一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、Kd値によってさらに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の外国語書面の第6頁32〜34行には、「その他の実施態様では、本発明は、上記又は下記に記載のポリペプチドの何れかに特異的に結合する抗体を提供する。随意的には、この抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体断片又は一本鎖抗体である。」とあり、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されている。また、外国語書面の第31頁2〜7行には、「ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。」とあり、本件発明に係る抗体が、少なくとも約10-10MのKdで標的に結合することが記載されている。
よって、訂正事項1は、外国語書面の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、「抗体」を、その一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、Kd値によってさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件について
訂正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
請求項1を引用する請求項2−6についても同様である。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(5)小括
以上のとおり、訂正事項1による特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

2 訂正事項2について
(1)訂正事項2−1
ア 訂正の目的について
訂正事項2−1による請求項2の訂正は、「前記抗体」を「前記単離されたモノクローナル抗体」と訂正するものであり、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定するとともに、請求項間及び請求項内の記載の整合を図るために、「単離された」なる記載を確認的に追加したものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記1(2)で述べたとおり、本件特許の外国語書面には、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されているから、訂正事項2−1は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項2−1は、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、「単離された」なる記載を確認的に追加したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2−1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項2に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項2−1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(2)訂正事項2−2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2−2による請求項2の訂正は、「単離された抗体」を「単離されたモノクローナル抗体」と訂正するものであり、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記1(2)で述べたとおり、本件特許の外国語書面には、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されているから、訂正事項2−2は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項2−2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項2−2は、「抗体」を、その一態様である「モノクローナル抗体」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2−2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項2に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項2−2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(3)小括
以上のとおり、訂正事項2−1及び訂正事項2−2による特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

3 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3による請求項3の訂正は、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、請求項内及び請求項間の記載の整合を図るために、請求項3の冒頭部分から「前記抗体がモノクローナル抗体であり、」なる記載を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記1(2)で述べたとおり、本件特許の外国語書面には、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されているから、訂正事項3は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(1)で述べたとおり、訂正事項3は、「抗体」を、その一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、請求項内及び請求項間の記載の整合を図るために、請求項3の冒頭部分から「前記抗体がモノクローナル抗体であり、」なる記載を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件について
訂正後の請求項3に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(5)小括
以上のとおり、訂正事項3による特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

4 訂正事項4について
訂正事項4による請求項4の訂正は、「単離された抗体」を「単離されたモノクローナル抗体」と訂正するものであり、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定する訂正である。
そうすると、上記2(2)に述べた訂正事項2−2と同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

5 訂正事項5について
(1)訂正事項5−1
ア 訂正の目的について
訂正事項5−1による請求項5の訂正は、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、請求項間の記載の整合を図るために、請求項5の冒頭部分から「前記抗体が」なる記載を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記1(2)で述べたとおり、本件特許明細書の外国語書面には、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されているから、訂正事項5−1は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項5−1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項5−1は、「抗体」を、その一態様である「モノクローナル抗体」に限定した上で、請求項間の記載の整合を図るために、請求項5の冒頭部分から「前記抗体が」なる記載を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項5−1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項5に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
請求項5を引用する請求項6についても同様である。
よって、訂正事項5−1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(2)訂正事項5−2
ア 訂正の目的について
訂正事項5−2による請求項5の訂正は、「抗体断片、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、又は抗イディオタイプ抗体」のうち、「抗イディオタイプ抗体」の選択肢を削除して、「抗体断片、モノクローナル抗体、又は一本鎖抗体」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アで述べたとおり、訂正事項5−2は、訂正前の請求項5における選択肢の一つであった抗イディオタイプ抗体を削除して、抗体に係る選択肢を限定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。
よって、訂正事項5−2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項5−2は、訂正前の請求項5における選択肢の一つであった抗イディオタイプ抗体を削除して、抗体に係る選択肢を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。
よって、訂正事項5−2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項5に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
請求項5を引用する請求項6についても同様である。
よって、訂正事項5−2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(3)訂正事項5−3
ア 訂正の目的について
訂正事項5−3による請求項5の訂正は、請求項5の冒頭に「IL−17AポリペプチドとIL−17Fポリペプチドが共有結合したヘテロニ量体ポリペブチドのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害する、当該へテロニ量体ポリペプチドに対するアンタゴニスト抗体であって、」との文言を追加するものであって、請求項5に係る抗体を、その一態様であるアンタゴニスト抗体に限定した上で、当該アンタゴニスト抗体が、IL−17A/FのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害するものであることをさらに特定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の外国語書面の第5頁15〜19行には、「したがって、この新規IL−17A/Fサイトカイン又はそのアゴニストは、免疫刺激として実用的な有用性を有し、一方IL−17A/Fの活性を阻害する分子(アンタゴニスト)は、自己免疫疾患など、免疫反応の抑制が必要な場合に実用的有用性を有すると思われる。具体的には、IL−17A/Fの免疫学的活性を模倣する(アゴニスト抗体)か、又は阻害する(アンタゴニスト抗体)この新規サイトカインには、治療的資質が認められる。」とあり、「抗体」の一態様として「IL−17A/Fの活性を阻害するアンタゴニスト抗体」が記載されている。また、外国語書面の第113頁14〜30行には、IL−17A/Fの活性に関し、「細胞に基づくアッセイ−IL−17A/FはIL−8及びIL−6の生成を誘発する。 上記のバイダックC4精製ステップ(図3)から単離された分画をIL−17A/FのIL−8生成誘発能についてアッセイした。・・・IL−17A/F、IL−17及びIL−17FによるIL−8とIL−6の誘発を比較する容量反応曲線を図5に示す。・・・」とあり、IL−17A/FがIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を有することが記載されている。そうすると、本件特許明細書から、IL−17A/Fに対するアンタゴニスト抗体であって、IL−17A/FのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害するアンタゴニスト抗体を把握することができるから、訂正事項5−3は、外国語書面の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項5−3は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項5−3に係る訂正は、請求項5に係る抗体を、その一態様であるアンタゴニスト抗体に限定した上で、当該アンタゴニスト抗体が、「IL−17A/FのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害する」活性を有することをさらに特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項5−3は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項5に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
請求項5を引用する請求項6についても同様である。
よって、訂正事項5−3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(4)小括
以上のとおり、訂正事項5−1〜5−3による特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

6 訂正事項6について
(1)訂正事項6−1
ア 訂正の目的について
訂正事項6−1による請求項6の訂正は、「前記抗体」を「前記単離されたモノクローナル抗体」と訂正し、さらに、「単離された抗体」を「単離されたモノクローナル抗体」に訂正するものであって、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定するとともに、請求項内及び請求項間の記載の整合を図るために、「前記抗体」に「単離された」なる記載を追加したものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記1(2)で述べたとおり、本件特許の外国語書面には、「抗体」の一態様として「モノクローナル抗体」が記載されているから、訂正事項6−1は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項6−1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項6−1は、「抗体」をその一態様である「モノクローナル抗体」に限定するとともに、請求項内及び請求項間の記載の整合を図るために、「前記抗体」に「単離された」なる記載を追加したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項6−1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項6に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項6−1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(2)訂正事項6−2について
ア 訂正の目的について
訂正事項6−2による請求項6の訂正は、「アンタゴニスト抗体」を、その一態様である「ヒト化アンタゴニスト抗体」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の外国語書面の第6頁32〜34行には、「その他の実施態様では、本発明は、上記又は下記に記載のポリペプチドの何れかに特異的に結合する抗体を提供する。随意的には、この抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体断片又は一本鎖抗体である。」とあり、「抗体」の一態様として「ヒト化抗体」が記載されているから、訂正事項6−2は、外国語書面の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
よって、訂正事項6−2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで述べたとおり、訂正事項6−2は、「アンタゴニスト抗体」をその一態様である「ヒト化アンタゴニスト抗体」に限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。
よって、訂正事項6−2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

エ 独立特許要件について
訂正後の請求項6に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項6−2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(3)小括
以上のとおり、訂正事項6−1及び6−2による特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列及び配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;又は
(b)関連シグナルペプチドを欠いている配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列及び関連シグナルペプチドを欠いている配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
を有するIL−17AポリペプチドとIL−17Fポリペプチドが共有結合したヘテロ二量体ポリペプチドであって、IL−6又はIL−8の生成を誘発するポリペプチドに結合する単離されたモノクローナル抗体であって、当該ヘテロ二量体ポリペプチドに対して10−10M以下のKd値で結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体又は一本鎖抗体である、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項3】
非ヒト相補性決定領域(CDR)残基及びヒトフレームワーク領域(FR)残基を有する、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項4】
標識され、固体支持体上に固定された請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項5】
IL−17AポリペプチドとIL−17Fポリペプチドが共有結合したヘテロ二量体ポリペプチドのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害する、当該ヘテロ二量体ポリペプチドに対するアンタゴニスト抗体であって、抗体断片、モノクローナル抗体、又は一本鎖抗体である、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体がIL−17AポリペプチドとIL−17Fポリペプチドが共有結合したヘテロ二量体ポリペプチドのIL−8及びIL−6の生成を誘導する活性を阻害する、当該ヘテロ二量体ポリペプチドに対するヒト化アンタゴニスト抗体である、請求項5に記載の単離されたモノクローナル抗体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2022-08-24 
結審通知日 2022-08-29 
審決日 2022-09-13 
出願番号 P2010-088577
審決分類 P 1 41・ 855- Y (C12N)
P 1 41・ 854- Y (C12N)
P 1 41・ 856- Y (C12N)
P 1 41・ 851- Y (C12N)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上條 肇
特許庁審判官 長井 啓子
宮岡 真衣
登録日 2014-01-10 
登録番号 5451496
発明の名称 IL−17異種ポリペプチドとその治療上の用途  
代理人 森田 裕  
代理人 森田 裕  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 聖二  
代理人 大木 信人  
復代理人 大栗 由美  
代理人 大木 信人  
復代理人 大栗 由美  

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