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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A47B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A47B 審判 全部申し立て 2項進歩性 A47B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A47B |
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管理番号 | 1391991 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-05-20 |
確定日 | 2022-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6803555号発明「洗面化粧ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6803555号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 特許第6803555号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 第6803555号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年9月27日に出願され、令和2年12月3日にその特許権の設定登録がされ、同年12月23日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 3年 5月20日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人」 という。)による請求項1ないし5に係る 特許に対する特許異議の申立て 令和 3年 8月23日付け:取消理由通知書 令和 3年10月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 令和 3年12月 1日 :申立人による意見書の提出 令和 3年12月23日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 4年 3月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 なお、令和4年3月14日にされた訂正請求に対して、申立人に期日を指定して意見を述べる機会を与えたが、その期日までに何らの応答はなかった。 また、令和4年3月14日に訂正請求がされたことにより、令和3年10月26日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和4年3月14日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであること」 と記載されているのを、 「前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置すること」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3及び5も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に 「前記洗面カウンターと前記化粧カウンターとは、上下方向に隙間無く配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の洗面化粧ユニット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置し、 前記洗面台は、水栓を更に備え、 前記水栓は、自動水栓であることを特徴とする洗面化粧ユニット。」 に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、発明を特定する事項である「洗面カウンター」及び「化粧カウンター」について、「前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置する」ことを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項1は、上記アのとおり、「化粧カウンター」及び「洗面カウンター」について限定する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 「化粧カウンター」、「洗面カウンター」について、明細書の段落【0030】に「脚入れ凹所31は、化粧カウンター30の左右方向の中央部の下方に位置する中央凹所310と、化粧カウンター30の洗面台2側の端部の下方に位置する拡張凹所311とで構成されている。」と記載され、段落【0034】に「化粧カウンター30の右端部が洗面カウンター20の左端部の下方に位置するように、・・・化粧カウンター30の右端部の上面には、洗面カウンター20の左の側板部202の下端が当たっている。これにより、化粧カウンター30と洗面カウンター20とは、上下方向に隙間無く設置される。」と記載され、段落【0041】に「利用者は、椅子35を洗面台2側にずらして、化粧台3の洗面台2側の端部の下方の拡張凹所311に両脚が入るように、移動することができる。」と記載され、図1をみると、「洗面カウンター20の化粧台3側の端部と化粧カウンター30の洗面台2側の端部とは、上下方向に隙間無く配置されており、かつ洗面カウンター20の化粧台3側の端部は、脚入れ凹所31の上方に位置する」ことが看取できることからみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項4が、請求項1ないし3の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項1を引用するものについて、独立形式請求項へ改め、さらに、発明を特定する事項である「洗面カウンター」と「化粧カウンター」が「上下方向に隙間無く配置され」る位置について、「前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部」と「前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部」に限定し、「前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部」の位置を「前記脚入れ凹所の上方に位置し」と限定し、「洗面台」について「水栓を更に備え、前記水栓は、自動水栓である」ことを限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項2は、上記アのとおり、訂正前の請求項4が、請求項1ないし3の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項1を引用するものについて、独立形式請求項へ改め、さらに、発明を特定する事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 訂正事項2は、「自動水栓」については、明細書の【0014】に「洗面台2は、洗面カウンター20と、洗面カウンター20に設けられた洗面ボウル21と、水栓22と、洗面カウンター20の下方に位置するキャビネット23とを備える。」と、【0023】に「水栓22は、物体検知センサの検知に応じて吐水・止水を行う自動水栓である。」と記載されており、その他については、上記(1)ウのとおりである。よって、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (3)訂正の単位について ア 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。 したがって、本件訂正後の請求項1ないし5は、一群の請求項である。 イ 別の訂正単位とする求めについて 特許権者は、訂正後の請求項4と、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5について、当該請求項の訂正が認められる場合は、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 しかしながら、訂正後の請求項2、3、5は、訂正事項1により訂正される請求項1の記載を直接又は間接的に引用しており、また、訂正後の請求項5は、訂正事項2により訂正される請求項4の記載を引用していることから、訂正後の請求項5は、請求項1に係る訂正事項1及び請求項4に係る訂正事項2のうちの一方の訂正が訂正要件を満たさない場合、他方の訂正も認められない関係にある。 よって、訂正後の請求項4、5について別の訂正単位とすることはできない。 3 訂正請求のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1−5〕についての訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置することを特徴とする洗面化粧ユニット。 【請求項2】 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも、100〜200mm高く位置することを特徴とする請求項1に記載の洗面化粧ユニット。 【請求項3】 前記化粧カウンターの上面の高さは、650〜750mmであることを特徴とする請求項2に記載の洗面化粧ユニット。 【請求項4】 洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置し、 前記洗面台は、水栓を更に備え、 前記水栓は、自動水栓であることを特徴とする洗面化粧ユニット。 【請求項5】 前記洗面台は、前記洗面カウンターの下方に位置するキャビネットをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗面化粧ユニット。 第4 取消理由の概要、及び証拠の記載 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明に対して令和3年12月23日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 (1)特許法第29条第2項(進歩性) 請求項1ないし3及び5に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基いて、また、請求項2ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 〔証拠一覧〕 甲第1号証:実願昭48−138455号(実開昭50−80532号)のマイクロフィルム 引用文献1:実願平4−51340号(実開平6−5584号)のCD−ROM (なお、引用文献1は、申立人が令和3年12月1日付け意見書に添付して提出したものである。) 2 証拠の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載 甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。 (ア)「この考案は、化粧用天板と洗面用天板とを段違いに設けることにより、洗面する時にも、また、化粧する時にも使いやすい洗面化粧台を提供することを目的とするものである。」(明細書第1頁第10〜13行) (イ)「すなわち、この考案は、天板,両側板,裏板等からなる洗面化粧台において、上記天板が化粧用天板1と、この化粧用天板1の上部に段違いに設けた洗面用天板2とからなる洗面化粧台に係るものである。 この考案の実施例を第一図により詳述すると、1は化粧用天板,2は化粧用天板1の上部側方に設けられた洗面用天板であつて、その上面にはシンク3が取り付けられているものである。4は洗面用天板2の後部を化粧部側に延長した袖板であつて、化粧品を載せる台として使用すると共に側板5に洗面用天板2を固定するためのものである。また、この袖板4は洗面化粧台の意匠性も高めているものである。」(明細書第2頁第17行〜第3頁第10行) (ウ)「6は覆板であり、シンク3底部を覆いかくすものであり化粧用天板1と洗面用天板2との間に嵌合固着されているものであるが、洗面用天板2と連続一体に成形されてもよいものである。7は裏板であつて、化粧用天板1,側板8等とでこの考案の外郭を形成しており、側板5の材料としては化粧合板,化粧パーテイクルボード,強化プラスチツクス板等が適しており、裏板7としては合板,ハードボードが多く使用されているものである。8,9は化粧用天板1,側板5,裏板7によつて形成される空間の左右に適宜設けられる引出し、収納庫であつて、化粧品等が収納使用されるものである。10は上記引き出し8,収納庫9の間に有する空間部であつて、化粧部の下部に位置しており、化粧をしない場合は椅子を収納できるように、また化粧時においては化粧する人の足を前方へ伸ばすことができるようにしたものである。」(明細書第3頁第14行〜第4頁11行) (エ)「この考案は、上述のように洗面用天板と化粧用天板が段違いに構成されているので、座つて化粧を行う場合でも、立つて洗面を行う場合でも非常に使いやすいものである。」(明細書第4頁第15〜18行) (オ)第1図は以下のとおり。 第1図 「 」 (カ)上記(ウ)の記載に照らして、上記(オ)の第1図から、収納庫9は洗面用天板2の下方に位置すること、及び、化粧部は、化粧用天板1における、上部側方に洗面用天板2を備えていない部分及びその下方に配置された空間部10と引出し8からなることが看取される。 また、上記(イ)及び(ウ)の記載に照らして、上記(オ)の第1図から、上面にシンク3が取り付けられた洗面用天板2と化粧部とは平面視において一直線状に配置されていることが看取される。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アからみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「化粧用天板1、側板5、裏板7等とで外郭を形成し、 化粧用天板1の上部側方に設けられた洗面用天板2を備え、洗面用天板2の上面にはシンク3が取り付けられ、洗面用天板2の後部を化粧部側に袖板4を延長して側板5に固定しており、 シンク3底部を覆いかくすものであり化粧用天板1と洗面用天板2との間に嵌合固着されている覆板6を備え、覆板6は洗面用天板2と連続一体に成形され、 洗面用天板2の下方に位置する収納庫9が設けられ、 化粧部は、化粧用天板1における、上部側方に洗面用天板2を備えていない部分及びその下方に配置された空間部10と引出し8からなり、 空間部10は、化粧時においては化粧する人の足を前方へ伸ばすことができるようにしたものであり、 上面にシンク3が取り付けられた洗面用天板2と化粧部とが平面視において一直線状に配置されており、 洗面用天板2と化粧用天板1が段違いに構成されているので、座って化粧を行う場合でも、立って洗面を行う場合でも非常に使いやすいものである、 洗面化粧台。」 (2)引用文献1 ア 引用文献1の記載 引用文献1には、次の事項が記載されている。 (ア)「【図面の簡単な説明】 【図1】この考案の一実施例に係る洗面化粧台を洗面室に設置した状態を示す斜視図である。 【図2】同洗面化粧台の平面図である。 【図3】同洗面化粧台の正面図である。 【図4】同洗面化粧台の右側面図である。 【図5】同洗面化粧台の洗面台とカウンタートップの連結部に配設されたトレーの引き出し状態を示す部分斜視図である。 【図6】従来の洗面化粧台を洗面室に設置した状態を示す平面説明図である。」 (イ)「【0007】 図1乃至図5に示すように、この実施例に係る洗面化粧台10は、キヤビネット本体11の左側に配設された洗面台12と、この洗面台12の右側に連接されたカウンタートップ13と、上記洗面台12の奥行き側に配設されたミラーキャビネット14と、から構成されている。 【0008】 洗面台12は、上記カウンタートップ13の前縁部13aよりも前方に突設された前縁部12aが円弧状に形成されていると共に、その左側辺部12bが洗面室15の左側壁16と当接して配置されており、また、その後縁辺部12cは、図2に示すように、洗面室15の奥行き側壁28と平行に形成されており、さらに、ボウル部12dの左右を結ぶ軸線Aは、洗面室15のコーナー部に向かって平面形状が傾斜した状態で形成されている。 【0009】 即ち、上記洗面台12は、利用者が斜め方向からボウル部12dとアプローチできるように配置されており、利用者の左腕の肘と上記左側壁16との間隙寸法が十分確保できるように配置されている。 【0010】 また、上記洗面台12とカウンタートップ13との連結部には、段部17が形成されており、該段部17には、小物類などを収納するトレー18の収納スペース19が形成されている。 【0011】 即ち、上記洗面台12の上面部は、カウンタートップ13の上面部よりも高い位置に配置されており、従って、上記トレー18は、カウンタートップ13の上面方向に引き出し自在に収納される。」 (ウ)「【0016】 さらに、上記洗面台12は、ミラーキャビネット14の前面ミラー扉体22と平行に配置されているため、身繕い等の作業を従来の洗面化粧台と同様に行うことができる他、洗面台12の右側に配置されたカウンタートップ13は、ドライゾーンとして衣類やタオル等の一時置き場所として、或は、デコレーションスペースや化粧カウンターとして利用することができる。 【0017】 尚、上記カウンタートップ13の右端部に、例えば、図2の仮想線で示すように、別体のシンク29を配置することにより、座ったままで化粧等の作業を行うこともできる。」 (エ)図1及び図2 図1 「 」 図2 「 」 (オ)上記(ア)及び(イ)の記載に照らして、上記(エ)の図1及び2から、下記事項が看取される。 a 洗面台12は、ボウル部12dの周囲に天板部を有している点。 b カウンタートップ13は、キヤビネット本体11の右側に配設されており、キヤビネット本体11の右側と、洗面台12が配設されたキヤビネット本体11の左側との前面は同一平面上にある点。 c 洗面台12の後縁辺部12cとカウンタートップ13の後縁辺部とは、ともに洗面室15の奥行き側壁28に沿っている点。 イ 引用文献1に記載された発明 上記アからみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。 「キヤビネット本体11の左側に配設された洗面台12と、この洗面台12の右側に連接されたカウンタートップ13とを備え、 カウンタートップ13は、キヤビネット本体11の右側に配設されており、キヤビネット本体11の右側と、洗面台12が配設されたキヤビネット本体11の左側との前面は同一平面上にあり、 洗面台12の後縁辺部12cは、洗面室15の奥行き側壁28と平行に形成され、 洗面台12の後縁辺部12cとカウンタートップ13の後縁辺部とは、ともに洗面室15の奥行き側壁28に沿っており、 洗面台12は、ボウル部12dを備え、ボウル部12dの周囲に天板部を有し、 洗面台12とカウンタートップ13との連結部には、段部17が形成されるものであって、洗面台12の上面部は、カウンタートップ13の上面部よりも高い位置に配置され、 カウンタートップ13は、化粧カウンターとして利用して、座ったままで化粧を行うものである、 洗面化粧台10。」 第5 当審の判断 1 請求項1について 取消理由通知(決定の予告)では、引用発明1を主引用例として検討したが、ここでは、甲1発明を主引用発明として検討する。 (1)対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「洗面用天板2」、「シンク3」、「化粧用天板1」、「化粧時においては化粧する人の足を前方へ伸ばすことができるようにし」ている「空間部10」は、本件訂正発明1の「洗面カウンター」、「洗面ボウル」、「化粧カウンター」、「脚入れ凹所」に相当する。 イ 甲1発明の「下方に位置する収納庫9が設けられ、」「上面にシンク3が取り付けられた洗面用天板2」及び「化粧用天板1における、上部側方に洗面用天板2を備えていない部分及びその下方に配置された空間部10と引出し8からな」る「化粧部」は、それぞれ、本件訂正発明1の「洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え」る「洗面台」及び「化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え」る「化粧台」に相当する。 また、甲1発明の「上面にシンク3が取り付けられた洗面用天板2と化粧部とが平面視において一直線状に配置され」ていることは、本件訂正発明1の「洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置され」ていることに相当する。 ウ 甲1発明の「洗面用天板2」は「化粧用天板1の上部側方に設けられ」るものであって「洗面用天板2と化粧用天板1が段違いに構成されている」ことは、本件訂正発明1の「前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し」ていることに相当する。 また、甲1発明の「洗面用天板2」について「洗面用天板2と化粧用天板1が段違いに構成されているので」「立って洗面を行う場合でも非常に使いやすいものである」ことは、洗面設備である「洗面用天板2」及び「シンク3」について、立った姿勢で使いやすい高さとなっていることを意味するのは明らかであるから、本件訂正発明1の「前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さである」ことに相当する。 エ 甲1発明の「洗面化粧台」は、本件訂正発明1の「洗面化粧ユニット」に相当する。 オ 以上のことから、本件訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。 (一致点) 「洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さである、 洗面化粧ユニット。」 (相違点1) 洗面カウンターの化粧台側の端部と化粧カウンターの洗面カウンター側の端部について、本件訂正発明1では、両端部が上下方向に隙間なく配置され、かつ洗面カウンターの化粧台側の端部は、脚入れ凹所の上方に位置するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 (2)判断 相違点1について検討する。 上記相違点1に係る構成は、取消理由通知(決定の予告)で引用した引用文献1及び申立人が提示したその他の証拠に記載も示唆もされていない。 そして、上記相違点1に係る構成を備えることにより、特許権者が主張する、化粧カウンターの上のごみやほこりが洗面カウンターと化粧カウンターとの間に入り込むことを抑制できる上、脚入れ凹所に脚を入れて座った利用者の手が、洗面カウンターの化粧台側の端部の上へと届きやすくて、化粧カウンターの上で利用する化粧水等の小物を洗面カウンターの上にも置きやすい(令和4年3月14日提出の意見書3頁末行〜4頁8行)、との作用効果を奏するものと認められる。 よって、甲1発明において、引用文献1に記載された発明及び申立人が提示したその他の証拠に基いて上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 (3)小括 上記のとおり、申立人が提示したすべての証拠には、上記相違点1に係る構成は記載されておらず、示唆する記載もないのであるから、取消理由通知(決定の予告)で示した引用文献1を主引用例とした理由について検討しても、少なくとも上記相違点1で相違し、そして、上記と同様の理由により、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第6号証及び参考資料1ないし参考資料4に記載の発明または技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件訂正発明2ないし5について 本件訂正発明2ないし5は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記1で検討した理由と同じ理由により、甲第1号証ないし甲第6号証及び参考資料1ないし参考資料4に記載の発明又は技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人の主張する申立理由 申立人は、明確性要件(36条6項2号)及び実施可能要件(36条4項1号)について、以下のとおりの理由を主張している。 (1)請求項1の「立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さである」は、範囲を曖昧にする表現である結果、発明の範囲が不明確である。 (2)請求項2の「洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも、100〜200mm高くする」との記載について、カウンターの高さは使用者の身長、年齢、立位か座位か、膝高さ等によって適切な寸法が異なるのであり、どのような使用者、使用態様(立位・座位、洗顔・洗髪等)を対象とするのかが特定されていないから、その技術的意味が不明確である。 (3)請求項3の「化粧カウンターの上面の高さは、650〜750mmである」との記載について、どのような使用者、使用態様を対象とするのかが特定されていないから、その技術的意味が不明確である。 (4)発明の詳細な説明には、どのような使用者、使用態様を対象として、どのような根拠に基づいて、洗面カウンター及び化粧カウンターの上面の高さを設定しているのか、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 2 判断 (1)上記1(1)〜(3)について 「立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さ」についてみると、当該高さを数値で規定しておらず、また、洗面ボウルの使用者の身長や、その使用態様が特定されていないものの、本件特許発明が対象とする使用者が通常使用する態様において使用しやすい高さを設定するものと理解することができ、特定の高さの数値範囲を規定するほどのものでもないから、発明の範囲が不明確とまではいえない。 また、「洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも、100〜200mm高くする」、「化粧カウンターの上面の高さは、650〜750mmである」については、各高さを数値範囲で示しているのであるから、当該記載は明確なものであって、本件特許発明の対象とする使用者が通常使用する態様において使用しやすい高さであることは自明であるから、技術的意味についても不明確とはいえない。 (2)上記1(4)について 本件特許発明において、対象となる使用者が通常使用する態様で使用しやすい高さを設定すればよいのであるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められる。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置することを特徴とする洗面化粧ユニット。 【請求項2】 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも、100〜200mm高く位置することを特徴とする請求項1に記載の洗面化粧ユニット。 【請求項3】 前記化粧カウンターの上面の高さは、650〜750mmであることを特徴とする請求項2に記載の洗面化粧ユニット。 【請求項4】 洗面台と化粧台とが平面視において一直線状に配置された洗面化粧ユニットであって、 前記洗面台は、洗面カウンターと、前記洗面カウンターに設けられた洗面ボウルとを備え、 前記化粧台は、化粧カウンターと、前記化粧カウンターの下方に位置する脚入れ凹所とを備え、 前記洗面カウンターの上面は、前記化粧カウンターの上面よりも上方に位置し、 前記洗面カウンターの天板部の上面の高さは、立った姿勢で前記洗面ボウルが利用しやすい高さであり、 前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部と前記化粧カウンターの前記洗面台側の端部とは、上下方向に隙間無く配置され、かつ前記洗面カウンターの前記化粧台側の端部は、前記脚入れ凹所の上方に位置し、 前記洗面台は、水栓を更に備え、 前記水栓は、自動水栓であることを特徴とする洗面化粧ユニット。 【請求項5】 前記洗面台は、前記洗面カウンターの下方に位置するキャビネットをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗面化粧ユニット。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-09-08 |
出願番号 | P2016-187853 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A47B)
P 1 651・ 113- YAA (A47B) P 1 651・ 536- YAA (A47B) P 1 651・ 537- YAA (A47B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
土屋 真理子 住田 秀弘 |
登録日 | 2020-12-03 |
登録番号 | 6803555 |
権利者 | パナソニックIPマネジメント株式会社 |
発明の名称 | 洗面化粧ユニット |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |