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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A23C
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A23C
管理番号 1391992
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-24 
確定日 2022-09-16 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6810821号発明「乳タンパク質に由来する異味異臭の改善剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6810821号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4、5、6について訂正することを認める。 特許第6810821号の請求項4〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6810821号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、令和2年7月9日に出願され、同年12月15日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許の請求項4〜6について、同年5月24日に特許異議申立人である日本香料工業会(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
特許異議申立て後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和3年 9月17日付け 取消理由通知書
同年11月19日提出 訂正請求書、意見書(特許権者)
令和4年 1月 7日付け 訂正拒絶理由通知書
同年 2月 8日提出 意見書(特許権者)
同年 3月25日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月18日提出 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 5月27日付け 特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知書

なお、令和4年5月18日提出の訂正請求書及び意見書に対する申立人からの応答はなかった。
また、この訂正請求書による訂正の請求により、令和3年11月19日提出の訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年5月18日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、当該訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、以下の訂正事項1〜3の訂正を求めるものである。

(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項4の「請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加された乳タンパク質含有飲食品。」との記載を、「請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加された乳タンパク質含有飲食品。」(下線は訂正による追加箇所を示す。訂正事項2以降も同様。)に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項5の「請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0 .03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品における乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法。」との記載を、「請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品における乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項6の「乳タンパク質含有飲食品を製造する工程において、請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加することを特徴とする 、乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」との記載を、「乳タンパク質含有飲食品を製造する工程において、請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」に訂正する。

2 目的の適否
(1)上記訂正事項1は、請求項4の乳タンパク質1g当たりに添加する「ジフェニルオキシド」又は「cis−3−ヘキセノール」について、両者をつなぐ「、」が、「及び」、「又は」又は「及び/又は」のいずれを意味するのか明確ではなかったところ、「及び/又は」を意味するものとする明確化とともに、「cis−3−ヘキセノール」のみを添加している場合(「ジフェニルオキシド」を添加していない場合)を削除したものである。
したがって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)上記訂正事項2及び3は、上記(1)で訂正事項1について述べた事項と同様に、それぞれ、請求項5及び請求項6において、乳タンパク質1g当たりに添加する「ジフェニルオキシド」又は「cis−3−ヘキセノール」について、明確化と選択肢の削除を行うものである。
したがって、上記訂正事項2及び3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

3 新規事項についての判断
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1に関し、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0001】には、「ジフェニルオキシド及びcis−3−ヘキセノールからなる群より選ばれる1種以上からなる、乳タンパク質に由来する異味異臭の改善剤とその応用に関する。」と記載され、実施例では、特定量の「ジフェニルオキシド」を乳タンパク質1gに添加している例(実施例b、d、f、h、j、l、n、p、r、t及び5)や、特定量の「ジフェニルオキシド」及び「cis−3−ヘキセノール」を乳タンパク質1gに添加している例(実施例6)が記載されている。
そうすると、訂正前の請求項4において、乳タンパク質1g当たりに添加する「ジフェニルオキシド」又は「cis−3−ヘキセノール」について、特定量の「ジフェニルオキシド」、又は特定量の「ジフェニルオキシド」及び「cis−3−ヘキセノール」に限定することは、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものといえる。
したがって、上記訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

(2)訂正事項2及び3について
上記訂正事項2及び3は、上記(1)で訂正事項1について述べた理由と同様の理由により、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものといえる。
したがって、上記訂正事項2及び3による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

4 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
(1)訂正事項1について
前記2及び3で検討したとおり、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲を減縮したものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

(2)訂正事項2及び3について
前記2及び3で検討したとおり、上記訂正事項2及び3も、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲を減縮したものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項2及び3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項4、5、6について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1〜6に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明6」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、令和4年5月18日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ジフェニルオキシド及びcis−3−ヘキセノールからなる群より選ばれる1種以上からなる乳タンパク質に由来する異味異臭の改善剤。
【請求項2】
ジフェニルオキシドを含有する請求項1記載の異味異臭の改善剤
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異味異臭の改善剤を含有する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善用香料組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加された乳タンパク質含有飲食品。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品における乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法。
【請求項6】
乳タンパク質含有飲食品を製造する工程において、請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由について
(1)理由1(新規性
(1−1)訂正前の請求項4〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1及び3〜5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項4〜6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(1−2)訂正前の請求項4〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第6、8及び10号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項4〜6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)理由2(進歩性
(2−1)訂正前の請求項4〜6に係る発明は、本件特許出願前日本国内又は外国において、頒布された甲第1及び3〜5に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項4〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2−2)訂正前の請求項4〜6に係る発明は、本件特許出願前日本国内又は外国において、頒布された甲第6及び7号証に記載された発明、甲第8及び9号証に記載された発明、又は甲第10及び11号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項4〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2010−202745号公報
甲第2号証:五訂食品成分表2001、女子栄養大学出版部、平成13年5月初版第2刷発行、p.206、208、212(周知技術を示す。)
甲第3号証:特開2005−15686号公報
甲第4号証:特開2006−124490号公報
甲第5号証:特開2005−143467号公報
甲第6号証:特開2004−168936号公報
甲第7号証:J. Agric. Food Chem.、1998、46、p.2293-2298
甲第8号証:特開平5−41949号公報
甲第9号証:Agric. Biol. Chem.、1983、47(9)、p.2077-2083
甲第10号証:“2014/11/11はちみつホットミルク”、[online]、2014年11月11日、長坂養蜂場、[2021年3月8日印刷日]、インターネット<URL:https://www.1183.co.jp/blog/2014/11/11/%E3%81%AF%E3%81%A1%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF/>
甲第11号証:J. Agric. Food Chem.、1996、44、p.3913-3918

(なお、本件異議申立てに係る審理対象は、請求項4〜6に係る特許についてであり、請求項1〜3に係る特許については、審理対象外である。また、以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)

2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)訂正前の請求項4〜6に係る特許に対して、当審合議体が令和3年9月17日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 理由1(明確性要件)
訂正前の請求項4〜6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
請求項4〜6には、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加」との記載があるが、当該記載は、ジフェニルオキシドとcis−3−ヘキセノールの両方を乳タンパク質含有飲食品に添加する場合に、乳タンパク質1g当たりの添加量が、「ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g」と「cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加」の両方を満たすことを意味しているのか、「ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g」と「cis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」の少なくとも一方を満たすことを意味しているのかが不明である。

イ 理由2(新規性
訂正前の請求項4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例1、3及び4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項4及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

ウ 理由3(進歩性
訂正前の請求項4及び6に係る発明は、本件特許出願前日本国内又は外国において、頒布された引用例1、3及び4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項4及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

引用例1:特開2010−202745号公報
(特許異議申立書における甲1)
引用例2:五訂食品成分表2001、女子栄養大学出版部、平成13年5月初版第2刷発行、p.206、208、212
(特許異議申立書における甲2)
引用例3:特開2005−15686号公報
(特許異議申立書における甲3)
引用例4:特開2006−124490号公報
(特許異議申立書における甲4)
なお、引用例2は参考資料である。

(2)当審合議体が令和4年3月25日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由
令和3年11月19日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載された訂正事項1〜3に係る訂正は、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、当該訂正請求書に基づく請求項4〜6に係る訂正は認めることができず、令和3年9月17日付け取消理由通知書と同旨の取消理由が通知された。

第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件発明4〜6は、当審合議体の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲号証及び引用例の記載(以下、「・・・」は記載の省略を表す。)
(1)甲1(引用例1)の記載
(1a)「【0043】
実施例1
イチゴミルクに添加することを想定し、下記処方(表1)のイチゴ風味の基本調合香料組成物(参考品1)を調合した。
【0044】
【表1】



(1b)「【0049】
なお、表1の基本調合香料組成物を構成する香料化合物のうち、調香師がこの基本調合香料組成物の特徴的イメージを構成するものとして特に重要であると判断した香料化合物は酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、ヘキサン酸メチル、trans−2−ヘキセナール、cis−3−ヘキセノール、リナロールの6成分であった。そこで、全ての成分について補正を行った調合香料組成物(本発明品1)と重要香気成分6品のみを補正した調合香料化合物(本発明品2)を調製した。なお、単品香料化合物のそれぞれが増減することによる全体量の調整は溶剤であるトリアセチンにて行った。それぞれの調合処方を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
実施例2(本発明品1、本発明品2および参考品1の官能評価)
下記表4(乳系基材)および表5(水系のシロップのみの基材)に示した基材を用意し、それぞれの基材に本発明品1と参考品1を0.001%添加し、20名の良く訓練されたパネラーにより官能評価を行った。それぞれの評価は、乳系基材と水系基材について発明品1、本発明品2と参考品1のいずれがより好ましいかを判定すると共に、それらについてコメントを記した。判定結果及び、平均的な官能評価結果を表6に示す。
【0052】
【表4】



(2)甲2(引用例2)の記載
(2a)「13−乳類
食品名 ・・・たんぱく質・・・

・・・
普通牛乳・・・ 3.3・・・
・・・
脱脂粉乳・・・34.0・・・
・・・
クリーム
乳脂肪・・・2.0」(206頁)

(2b)「13−乳類
食品名 ・・・たんぱく質・・・

・・・
ヨーグルト
全脂無糖・・・3.6・・・
・・・
ナチュラルチーズ
・・・
クリーム・・・8.2」(208頁)

(2c)「14−油脂類
食品名 ・・・たんぱく質・・・

・・・
無塩バター・・・0.5」(212頁)

(3)甲3(引用例3)の記載
(3a)「【0118】
【実施例】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではなく、また本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜96において使用される溶剤はエタノール又はプロピレングリコールを示す。
(実施例1〜10:フルーツ様香料組成物(アップル))
実施例1〜10(表1)に記載の添加量に従い、アップル様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0119】
【表1】
アップル様フルーツ香料組成物



(3b)「【0126】
(実施例41〜50:フルーツ様香料組成物(ピーチ))
実施例41〜50(表5)に記載の添加量に従い、ピーチ様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0127】
【表5】
ピーチ様フルーツ香料組成物



(3c)「【0128】
(実施例51〜60:フルーツ様香料組成物(バナナ))
実施例51〜60(表6)に記載の添加量に従い、バナナ様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0129】
【表6】
バナナ様フルーツ香料組成物



(3d)「【0134】
(実施例78〜84:フルーツ様香料組成物(梅))
実施例78〜84(表9)に記載の添加量に従い、梅様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0135】
【表9】
梅様フルーツ香料組成物



(3e)「【0136】
(実施例85〜90:フルーツ様香料組成物(チェリー))
実施例85〜90(表10)に記載の添加量に従い、チェリー様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0137】
【表10】
チェリー様フルーツ香料組成物



(3f)「【0138】
(実施例91〜96:フルーツ様香料組成物(ラズベリー))
実施例91〜96(表11)に記載の添加量に従い、ラズベリー様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「〜」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0139】
【表11】
ラズベリー様フルーツ香料組成物



(3g)「【0143】
酸乳飲料
下記処方に従い、実施例1〜96のフルーツ様香料組成物を含む酸乳飲料を常法にて調製したところ、優れたフルーツ様香気・香味を有する酸乳飲料を得ることができた。
(処方) (Kg)
果糖ぶどう糖液糖(75%) 20
脱脂粉乳 10
クエン酸 0.3
乳酸 0.2
乳化製剤 0.3
増粘安定剤 0.1
フルーツ様香料組成物(実施例1〜131) 0.1
水で全量を200Lとする。」

(3h)「【0149】
ヨーグルトムース
下記処方に従い、実施例1〜96のフルーツ様香料組成物を含むヨーグルトムースを常法にて調製したところ、矯正着香されたヨーグルトムースを得ることができた。
(処方) (Kg)
砂糖 12
粉末水飴 5
生クリーム 10
発酵乳 30
コーンスターチ 1
ゲル化剤 1.5
乳化剤 0.1
酸味料 0.1
ヨーグルト香料 0.15
フルーツ様香料組成物(実施例1〜96) 0.01
水にて全量を100Lとする。
【0150】
チーズデザート
下記処方に従い、実施例1〜96のフルーツ様香料組成物を含むチーズデザートを常法にて調製したところ、矯正着香されたチーズデザートを得ることができた。
(処方) (Kg)
砂糖 10
脱脂粉乳 2
クリームチーズ 10
生クリーム 10
加糖全卵 2
コーンスターチ 1
1/5グレープフルーツ果汁 1
ゲル化剤 1.5
酸味料 0.25
チーズ香料 0.1
フルーツ様香料組成物 (実施例61〜90) 0.05
水にて全量を100Lに調製。」

(4)甲4(引用例4)の記載
(4a)「【0032】
本発明の発酵乳様香料組成物は、簡便に製造することが可能であり、飲食品全般に使用することができる。
【実施例1】
【0033】
ヨーグルト様香料組成物の処方例を以下に示す。
【0034】
【表1】



(4b)「【0039】
・・・
──────────────────────
(アイスクリーム配合例) 重量部
──────────────────────
全脂練乳 10.0
生クリーム 9.4
無塩バター 2.0
脱脂粉乳 3.4
砂糖 12
安定剤 0.3
乳化剤 0.2
pH調整剤 0.1
カラメル色素 0.1
実施例1の香料組成物 0.01
水 49
──────────────────────
・・・
──────────────────────
(ヨーグルト飲料) 重量部
──────────────────────
発酵乳 40
砂糖 14
安定剤 0.4
実施例1の香料組成物 0.05
水 45
──────────────────────」

(5)甲5の記載
(5a)「【請求項1】
天然香料類、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、酸類、エステル類、ラクトン類、含窒素化合物類、含硫化合物類、フェノール類、フラン類およびピラン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含むことを特徴とする茶フレーバー組成物。
・・・
【請求項4】
アルコール類が、プロパノール、イソブタノール、ブタノール、イソアミルアルコール、アミルアルコール、ヘキサノール、(Z)−2−ペンテン−1−オール、1−ペンテン−3−オール、(E)−2−ヘキセン−1−オール、(Z)あるいは(E)−3−ヘキセン−1−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−オクテン−1−オール、1−オクテン−3−オール、1,5−オクタジエン−3−オール、ノナノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、1あるいは2−フェニルエチルアルコール、2,4−ジメトキシベンゼンメタノール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、α−テルピネオール、1あるいは4−テルピネオール、αあるいはδ−カジノール、クベノール、β−エデスモール、セドロール、カルベオール、ミルテノール、イソフィトール、3,7−ジメチル−1,5,7−オクタトリエン−3−オール、3,7−ジメチル−1,5−オクタジエン−3,7−ジオールおよびメントールから選ばれる1種以上の香料を含むことを特徴とする請求項1記載の茶フレーバー組成物。
・・・
【請求項12】
フェノール類が、O−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、4−ビニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、チモール、1,3−di−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、アネトール、グアイアコール、4−エチルグアイアコール、1,4−ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、オイゲノール、サフロールおよびカルバクロールから選ばれる1種以上の香料を含むことを特徴とする請求項1記載の茶フレーバー組成物。
・・・
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の茶フレーバー組成物を含有することを特徴とする飲食品。」

(5b)「【0050】
本発明の茶フレーバー組成物は、極めて汎用性が高く、多くの食品に利用され、一般に食品として食されているものであれば特に制限はなく、例えば、飲料類、冷菓類、デザート類、菓子類、調味料などを挙げることができる。これらの食品は、主材の他、食品素材(調味料、甘味料、酸味料、油脂、香辛料、乳製品、酒類、その他)あるいは各種の添加物、例えば調味料(L−グルタミン酸ナトリウム、グリシン、DL−アラニンなど)、酸味料(クエン酸、酒石酸、コハク酸、イタコン酸、乳酸、酢酸など)、甘味料(ステビア、アスパラテーム、甘草抽出物、サッカリンナトリウム、L−ラムノースなど)、膨張剤(塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムなど)、保存料(ソルビン酸、安息香酸など)、増粘安定剤・乳化剤・ガムベース(アルギン酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、エレミ樹脂、アラビアガム、カラギナン、エステルガム、レシチン、ダイズサポニンなど)など、その他食品添加物便覧(化学的合成品)1999年度版、および天然物便覧、15版、食品と科学社発行に記載の添加物を使用して、公知の方法で製造される。」

(5c)「【0065】
・・・
(実施例19)アイスミルク
下記処方に従い、実施例1〜16のそれぞれの緑茶様フレーバー組成物を含むアイスミルクを常法に従い、調製したところ、このものは、フレッシュ感があり、清涼感のある優れた緑茶様香気・香味を有するアイスミルクを得ることができた。
【0066】
(処方) (Kg)
牛乳 30.0
生クリーム(乳脂肪45%) 5.0
無塩バター 2.0
脱脂粉乳 6.0
砂糖 11.0
果糖ぶどう糖液糖(75%) 4.0
粉末水飴 5.0
着色料 0.1
緑茶濃縮エキスBx=3° 10.0
緑茶様フレーバー組成物(実施例1〜16) 0.1
水にて全量 100Kgとする。」

(5d)「【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】



(6)甲6の記載
(6a)「【0084】
(オレンジアイスミルク)
下記処方に従い、実施例1〜40のシトラス様香料組成物(オレンジ)を含むオレンジアイスミルクを常法にて調製したところ、爽快感があり優れたオレンジ様の香気・香味を有するオレンジアイスミルクを得ることができた。
(処方) (Kg)
牛乳 30.0
生クリーム(乳脂肪50%) 5.0
無塩バター 2.0
脱脂粉乳 6.0
砂糖 8.0
果糖ぶどう糖液糖(75%) 4.0
粉末水飴 5.0
着色料 0.1
オレンジ果汁 5.0
シトラス様香料組成物 0.5
(実施例1〜40)
水にて 100Kg
(オーバーラン 90%)」

(6b)「【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】



(7)甲7の記載
甲7の表2の(14)には、イタリア産の各種オレンジジュースにcis−3−ヘキセノールが含まれていたことが記載されている。

(8)甲8の記載
(8a)「【請求項1】 緑茶抽出物及び/又はその処理物を使用することを特徴とするアイスクリーム類の製造方法。
【請求項2】 茶を低温の水、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、加工乳及び/又は還元液状乳で抽出することによって緑茶抽出物を調製することを特徴とする請求項1の方法。」

(9)甲9の記載
訳文にて示す。
(9a)「表I
・・・ピーク 相対量(%)
番号 化合物 中国製ロジング 日本製釜煎り茶
・・・
・・・12 cis−3−ヘキセノール 0.3 1.8」(2080頁)

(10)甲10の記載
(10a)「はちみつホットミルク
・・・
<材料>(1人分)
・牛乳・・・200cc(マグカップ一杯分)
・二代目の蜂蜜・・・大さじ1/2

<作り方>
1 牛乳をマグカップに入れ、電子レンジで温める。(600Wで1分を目安に)
2 温まった牛乳にはちみつを加えてよく混ぜる。
3 あとは両手でマグカップを包み込んで、召し上がれ。」

(11)甲11の記載
訳文にて示す。
(11a)「表1 ハゼノキはちみつから、カラム抽出法により分離された揮発性化合物
ピーク・・・ 化合物 濃度(ppb)
・・・
50・・・(Z)−3−ヘキセノール 21」(3914頁)

2 当審合議体が通知した取消理由についての判断
(1)理由1(明確性要件)について
本件訂正により、請求項4〜6は、乳タンパク質1g当たりの「ジフェニルオキシド」と「cis−3−ヘキセノール」の添加について、「または」及び「および」の接続詞により、添加する化合物の特定が明確となった。
したがって、請求項4〜6についての明確性要件に関する取消理由は、本件訂正により解消し、理由がない。

(2)理由2(新規性)及び3(進歩性)について
(2−1)引用例1を主引用例とした場合について
ア 引用例1に記載された発明
引用例1には、cis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物である参考品1又はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物である本発明品1(上記(1b)中の表3の「本発品1」は「本発明品1」の誤記と認められる。)を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に0.001%添加したことが記載されている(上記(1a)及び(1b))。
ここで、引用例1には、参考品1又は本発明品1の添加量である0.001%が、質量%、重量%、体積%、モル%のいずれであるかの明示の記載はないが、上記(1a)の表1に、参考品1の組成が質量部で記載されていることや、上記(1b)の表3において、表1の参考品1の質量部での記載と同じものに並んで本発明品1の組成が記載されており、本発明品の組成も質量部で示されていると解されることから、0.001%も、0.001質量%を意味するものと考えられる。
よって、引用例1には、
「cis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22. 0質量部含むイチゴミルク用香料組成物0.001質量%を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に添加した飲食品。」の発明(以下「引用発明1−1」という。)及び「cis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物0.001質量%を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に添加する、飲食品の製造方法。」の発明(以下「引用発明1−2」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
牛乳に乳タンパク質が含まれるのは技術常識であるから、牛乳を含む引用発明1−1の飲食品は、「乳タンパク質含有飲食品」に相当する。
本件発明4と引用発明1−1を対比すると、本件発明4は「ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g添加された」ことを選択肢とするものであるから、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点1」という。)及び前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物0.001質量%を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に添加している点(以下「相違点2」という。)で相違する。

まず、相違点2について検討すると、引用例1には、乳系基材の飲食品に対して、ジフェニルオキシドを添加することについて記載も示唆もなく、当該相違点は実質的な相違点であり、相違点1について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明1−1ではない。また、引用例1にはジフェニルオキシドを添加する動機付けの記載もないから、本件発明4は、引用発明1−1に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明4は引用例1に記載された発明ではなく、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明6について
本件発明6と引用発明1−2を対比すると、上記(ア)と同様に対比でき、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物を添加する点(以下「相違点3」という。)及び前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物0.001質量%を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に添加する点(以下「相違点4」という。)
で相違する。

まず、相違点4について検討すると、引用例1には、乳系基材の飲食品に対して、ジフェニルオキシドを添加することについて記載も示唆もなく、当該相違点は実質的な相違点であり、相違点3について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明1−2ではない。また、引用例1にはジフェニルオキシドを添加する動機付けの記載もないから、本件発明6は、引用発明1−2に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明6は引用例1に記載された発明ではなく、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2−2)引用例3を主引用例とした場合について
ア 引用例3に記載された発明
引用例3には、シス−3−ヘキセノールを合計100中、0.1、0.5又は5含むアップル様フルーツ香料組成物(上記(3a)の実施例2、4、6、8)、シス−3−ヘキセノールを合計100中、0.6、1.2、1.5、1.8、4又は5.5含むピーチ様フルーツ香料組成物(上記(3b)の実施例41、42、44、45、47、49、50)、シス−3−ヘキセノールを合計100中、2、4、5又は14含むフルーツ香料組成物(バナナ)(上記(3c)の実施例51〜55、58、60)、シス−3−ヘキセノールを合計100中、0.5又は1含む梅様フルーツ香料組成物(上記(3d)の実施例80、82)及びシス−3−ヘキセン−1オールを合計100中、0.18又は0.9含むラズベリー様フルーツ香料組成物(上記(3f)の実施例92、95)が記載されており(上記(3e)については、表10が表9と重複する誤記があるため、発明として採用しない。)、これらの香料組成物を用いた飲食品として、果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びフルーツ様香料組成物(実施例1〜131(引用例3には実施例97〜131の記載はないことから、実施例1〜96の誤記と考えられる。))0.1kgを、水で全量を200Lとした酸乳飲料(上記(3g))、砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びフルーツ様香料組成物(実施例1〜96)0.01kgを、水で全量を100Lとしたヨーグルトムース(上記(3h))、並びに、砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びフルーツ様香料組成物(実施例61〜90)0.05kgを、水で全量を100Lとしたチーズデザート(上記(3h))が記載されている。シス−3−ヘキセノール、シス−3−ヘキセン−1オールは、いずれもcis−3−ヘキセノールのことである。
引用例3には、実施例の香料組成物における、組成を示す数値の単位の明示の記載はないが、上記(3g)及び(3h)の飲食品の組成は、kgで表示されていることから、香料組成物の値も、重量部又は質量部であると考えられる。
よって、引用例3には、
「果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.1kgを、水で全量を200Lとした酸乳飲料。」の発明(以下「引用発明3−1」という。)、
「砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.01kgを、水で全量を100Lとしたヨーグルトムース。」の発明(以下「引用発明3−2」という。)、
「砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物0.05kgを、水で全量を100Lとしたチーズデザート」の発明(以下「引用発明3−3」という。)、
「果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.1kgを、水で全量を200Lとする、酸乳飲料の製造方法。」の発明(以下「引用発明3−4」という。)、
「砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.01kgを、水で全量を100Lとする、ヨーグルトムースの製造方法。」の発明(以下「引用発明3−5」という。)、及び
「砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物0.05kgを、水で全量を100Lとする、チーズデザートの製造方法」の発明(以下「引用発明3−6」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
a 引用発明3−1について
脱脂粉乳、生クリーム、発酵乳、クリームチーズといった乳製品に乳タンパク質が含まれていることは技術常識であるから、引用発明3−1〜6の酸乳飲料、ヨーグルトムース、チーズデザートはいずれも「乳タンパク質含有食品」に相当する。
本件発明4と引用発明3−1を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点5」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.1kgを、水で全量を200Lとしている点(以下「相違点6」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点6は実質的な相違点であり、相違点5について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明3−1ではなく、引用発明3−1に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明3−2について
本件発明4と引用発明3−2を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点7」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.01kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点8」という。)で一応相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点8は実質的な相違点であり、相違点7について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明3−2ではなく、引用発明3−2に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c 引用発明3−3について
本件発明4と引用発明3−3を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者は0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点9」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物0.05kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点10」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点10は実質的な相違点であり、相違点9について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明3−3ではなく、引用発明3−3に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

d まとめ
以上により、本件発明4は引用例3に記載された発明ではなく、引用例3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明6について
a 引用発明3−4について
本件発明6と引用発明3−4を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する点(以下「相違点11」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.1kgを、水で全量を200Lとしている点(以下「相違点12」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(イ)で述べた理由と同様の理由により、相違点12は実質的な相違点であり、相違点11について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明3−4ではなく、引用発明3−4に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明3−5について
本件発明6と引用発明3−5を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する点(以下「相違点13」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.01kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点14」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(イ)で述べた理由と同様の理由により、相違点14は実質的な相違点であり、相違点13について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明3−5ではなく、引用発明3−5に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c 引用発明3−6について
本件発発明6と引用発明3−6を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者は0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する点(以下「相違点15」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物0.05kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点16」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(イ)で述べた理由と同様の理由により、相違点16は実質的な相違点であり、相違点15について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明3−6ではなく、引用発明3−6に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

d まとめ
以上により、本件発明6は引用例3に記載された発明ではなく、引用例3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2−3)引用例4を主引用例とした場合について
ア 引用例4に記載された発明
引用例4には、実施例1中のY3として、合計100中0.01のシス−3−ヘキセノールを含有するヨーグルト様香料組成物が記載されており(上記(4a))、全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、実施例1の香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなる、アイスクリームの配合例が記載されており(上記(4b))、発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、実施例1の香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなる、ヨーグルト飲料が記載されている(上記(4b))。
引用例4には、実施例1のヨーグルト様香料組成物の組成の値の単位についての明示の記載はないが、引用例4のアイスクリームやヨーグルト飲料の組成は重量部で記載されていることから、重量部であると考えられる。また、シス−3−ヘキセノールはcis−3−ヘキセノールのことである。
よって、引用例4には、
「全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなる、アイスクリーム」の発明(以下「引用発明4−1」という。)、
「発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなる、ヨーグルト飲料」の発明(以下「引用発明4−2」という。)、
「全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなる原料を用いる、アイスクリームの製造方法。」の発明(以下「引用発明4−3」という。)及び
「発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなる原料を用いる、ヨーグルト飲料の製造方法」の発明(以下「引用発明4−4」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
a 引用発明4−1について
全脂練乳、生クリーム、無塩バター、脱脂粉乳、発酵乳といった乳製品に乳タンパク質が含まれていることは技術常識であるから、引用発明4−1〜4のアイスクリーム、ヨーグルト飲料はいずれも「乳タンパク質含有食品」に相当する。
本件発明4と引用発明4−1を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点17」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤 0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなるものである点(以下「相違点18」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点18は実質的な相違点であり、相違点17について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明4−1ではなく、引用発明4−1に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明4−2について
本件発明4と引用発明4−2を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点19」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなるものである点(以下「相違点20」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点20は実質的な相違点であり、相違点19について検討するまでもなく、本件発明4は引用発明4−2ではなく、引用発明4−2に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c まとめ
以上により、本件発明4は引用例4に記載された発明ではなく、引用例4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明6について
a 引用発明4−3について
本件発発明6と引用発明4−3を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物を添加する点(以下「相違点21」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなるものである点(以下「相違点22」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(イ)で述べた理由と同様の理由により、相違点22は実質的な相違点であり、相違点21について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明4−3ではなく、引用発明4−3に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明4−4について
本件発発明6と引用発明4−4を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物を添加する点(以下「相違点23」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなるものである点(以下「相違点24」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(2−1)イ(イ)で述べた理由と同様の理由により、相違点24は実質的な相違点であり、相違点23について検討するまでもなく、本件発明6は引用発明4−4ではなく、引用発明4−4に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c まとめ
以上により、本件発明6は引用例4に記載された発明ではなく、引用例4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2−4)小括
以上より、本件発明4及び6は、引用例1、3及び4に記載された発明ではなく、引用例1、3及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項4及び6についての新規性及び進歩性に関する取消理由は、本件訂正により解消し、理由がない。

3 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)理由1(新規性)(1−1)及び理由2(進歩性)(2−1)について
(1−1)引用例1(甲1)を主引用例とした場合について
本件発明5について
本件発明5と引用発明1−2を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点25」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを1000.0質量部中25.0質量部又は22.0質量部含むイチゴミルク用香料組成物0.001質量%を、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75)80g、クエン酸0.3g、クエン酸ナトリウム0.2g及び牛乳500gを蒸留水で1000mlに希釈した乳系基材に添加する点(以下「相違点26」という。)
で相違する。
まず、相違点26について検討すると、引用例1には、乳系基材の飲食品に対して、ジフェニルオキシドを添加することについて記載も示唆もなく、当該相違点は実質的な相違点である。また、引用例1には乳タンパク質に由来する異味異臭を改善することについて何ら記載はないから、相違点25についても実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明1−2ではない。また、引用例1には、ジフェニルオキシドを添加すること、及び乳タンパク質に由来する異味異臭を改善することについて動機付けとなる記載もないから、本件発明5は、引用発明1−2に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明5は引用例1に記載された発明ではなく、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(1−2)引用例3(甲3)を主引用例とした場合について
本件発明5について
a 引用発明3−4について
本件発明5と引用発明3−4を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する製造方法である点((以下「相違点27」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は果糖ぶどう糖液糖(75%)20kg、脱脂粉乳10kg、クエン酸0.3kg、乳酸0.2kg、乳化製剤0.3kg、増粘安定剤0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.1kgを、水で全量を200Lとしている点(以下「相違点28」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(1−1)で述べた理由と同様の理由により、相違点27及び28は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明3−4ではなく、引用発明3−4に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明3−5について
本件発明5と引用発明3−5を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者は0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点29」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖12kg、粉末水飴5kg、生クリーム5kg、発酵乳30kg、コーンスターチ1kg、ゲル化剤1.5kg、乳化剤0.1kg、酸味料0.1kg、ヨーグルト香料0.15kg及びcis−3−ヘキセノールを0.1〜14質量%含むフルーツ様香料組成物0.01kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点30」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(1−1)で述べた理由と同様の理由により、相違点29及び30は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明3−5ではなく、引用発明3−5に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c 引用発明3−6について
本件発明5と引用発明3−6を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者は0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点31」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者は砂糖10kg、脱脂粉乳2kg、クリームチーズ10kg、生クリーム10kg、加糖全卵2kg、コーンスターチ1kg、1/5グレープフルーツ果汁1kg、ゲル化剤1.5kg、酸味料0.25kg、チーズ香料0.1kg及びcis−3−ヘキセノールを0.5〜1質量%含むフルーツ様香料組成物0.05kgを、水で全量を100Lとしている点(以下「相違点32」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(1−1)で述べた理由と同様の理由により、相違点31及び32は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明3−6ではなく、引用発明3−6に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

d まとめ
以上により、本件発明5は引用例3に記載された発明ではなく、引用例3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(1−3)引用例4(甲4)を主引用例とした場合について
本件発明5について
a 引用発明4−3について
本件発明5と引用発明4−3を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点33」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は全脂練乳10重量部、生クリーム9.4重量部、無塩バター2.0重量部、脱脂粉乳3.4重量部、砂糖12重量部、安定剤0.3重量部、乳化剤0.2重量部、pH調整剤0.1重量部、カラメル色素0.1重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.01重量部及び水49重量部からなるものである点(以下「相違点34」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(1−1)で述べた理由と同様の理由により、相違点33及び34は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明4−3ではなく、引用発明4−3に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

b 引用発明4−4について
本件発明5と引用発明4−4を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点35」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されたものであるのに対して、後者は発酵乳40重量部、砂糖14重量部、安定剤0.4重量部、cis−3−ヘキセノールを0.01重量%含む香料組成物0.05重量部及び水45重量部からなるものである点(以下「相違点36」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(1−1)で述べた理由と同様の理由により、相違点35及び36は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明4−4ではなく、引用発明4−4に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

c まとめ
以上により、本件発明5は引用例4に記載された発明ではなく、引用例4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(1−4)甲5を主引用例とした場合について
ア 甲5に記載された発明
上記(5c)及び(5d)によると、甲5には、「特定量のシス−3−ヘキセノール及び適量のエタノール又はプロピレングリコールを含有する緑茶様フレーバー組成物と特定量の牛乳を含むアイスミルク。」(以下「甲5−1発明」という。)又は「特定量のシス−3−ヘキセノール及び適量のエタノール又はプロピレングリコールを含有する緑茶様フレーバー組成物と特定量の牛乳を含むアイスミルクの製造方法。」(以下「甲5−2発明」という。)が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
牛乳に乳タンパク質が含まれるのは技術常識であるから、牛乳を含む甲5−1発明のアイスミルクは、「乳タンパク質含有飲食品」に相当し、「シス−3−ヘキセノール」は「cis−3−ヘキセノール」に相当する。
本件発明4と甲5−1発明を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物が添加された乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを含む緑茶様フレーバー組成物が添加されたものである点(以下「相違点37」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者はエタノール又はプロピレングリコールを緑茶様フレーバー組成物に適量含むため、乳タンパク質1g当たり、どの程度のcis−3−ヘキセノールが添加されているのか不明であり、ジフェニルオキシドが添加されていない点(以下「相違点38」という。)で相違する。
まず、相違点38について検討する。
上記(5a)によると、甲5には、緑茶様フレーバー組成物である茶フレーバー組成物の香料として、「cis−3−ヘキセノール」である「(Z)−3−ヘキセン−1−オール」等のアルコール以外に、フェノール類等の多様な香料が記載され、そのフェノール類の一例として、「ジフェニルオキシド」である「ジフェニルエーテル」が示唆されている。さらに、上記(5b)によると、茶フレーバー組成物の添加対象として、種々の食品が挙げられている。
しかしながら、「ジフェニルオキシド」を具体的に添加した実施例は記載されていない。
そうすると、多様な添加対象や多様な香料が記載されているなか、乳タンパク質1gに対して、具体的に「ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g」を添加することは、当業者が容易に想到することではないし、そのようにする動機付けもない。そして、アイスミルクにおいて、乳タンパク質1gに対して、具体的にどの程度の「ジフェニルオキシド」を添加すると、乳タンパク質に由来する異味異臭の改善に効果的であるのかは、当業者が予測できることとはいえない。
したがって、相違点37について検討するまでもなく、本件発明4は、甲5−1発明であるとはいえないし、甲5−1発明に基いて当業者が容易に想到するものではない。

よって、本件発明4は甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明5について
本件発明5と甲5−2発明を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを含む緑茶様フレーバー組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点39」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はエタノール又はプロピレングリコールを緑茶様フレーバー組成物に適量含むため、乳タンパク質1g当たり、どの程度のcis−3−ヘキセノールを添加しているのか不明であり、ジフェニルオキシドを添加していない点(以下「相違点40」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点40は実質的な相違点であり、相違点39について検討するまでもなく、本件発明5は甲5−2発明ではなく、甲5−2発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明5は甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6と甲5−2発明を対比すると、両者は「cis−3−ヘキセノールを含む香料組成物を添加する乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者はcis−3−ヘキセノールを含む緑茶様フレーバー組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点41」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はエタノール又はプロピレングリコールを緑茶様フレーバー組成物に適量含むため、乳タンパク質1g当たり、どの程度のcis−3−ヘキセノールを添加しているのか不明であり、ジフェニルオキシドを添加していない点(以下「相違点42」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点42は実質的な相違点であり、相違点41について検討するまでもなく、本件発明6は甲5−2発明ではなく、甲5−2発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明6は甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2)理由1(新規性)(1−2)及び理由2(進歩性)(2−2)について
(2−1)甲6を主引用例とした場合について
ア 甲6に記載された発明
上記(6a)及び(6b)によると、甲6には、「牛乳30.0Kg、生クリーム(乳脂肪50%)5.0Kg、無塩バター2.0Kg、脱脂粉乳6.0Kg、砂糖8.0Kg、果糖ぶどう糖液糖(75%)4.0Kg、粉末水飴5.0Kg、着色料0.1Kg、オレンジ果汁5.0Kg及びシトラス様香料組成物(実施例1〜40:上記(6b)の各表参照))0.5Kgを、水にて100Kgとした処方からなるオレンジアイスミルク。」(以下「甲6−1発明」という。)又は「牛乳30.0Kg、生クリーム(乳脂肪50%)5.0Kg、無塩バター2.0Kg、脱脂粉乳6.0Kg、砂糖8.0Kg、果糖ぶどう糖液糖(75%)4.0Kg、粉末水飴5.0Kg、着色料0.1Kg、オレンジ果汁5.0Kg及びシトラス様香料組成物(実施例1〜40:上記(6b)の各表参照))0.5Kgを、水にて100Kgとした処方からなるオレンジアイスミルクの製造方法。」(以下「甲6−2発明」という。)が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
牛乳及び脱脂粉乳に乳タンパク質が含まれるのは技術常識であるから、牛乳及び脱脂粉乳を含む甲6−1発明のオレンジアイスミルクは、「乳タンパク質含有飲食品」に相当する。
本件発明4と甲6−1発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者はオレンジ果汁又はシトラス様香料組成物が添加されたものである点(以下「相違点43」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールが添加されているかどうか不明である点(以下「相違点44」という。)で相違する。
まず、相違点44について検討する。
甲6には、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールに関する記載も示唆もなく、甲7には、イタリア産の特定の各種オレンジジュースにcis−3−ヘキセノールが含まれていることが記載されるにとどまり、甲6−1発明のオレンジ果汁又はシトラス様香料組成物が、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを含有することを示すものではなく、かつ、甲6−1発明におけるその含有量を示唆するものでもなく、当該相違点44に係る本件発明4の特定事項は、当業者が容易に想到することではない。
したがって、相違点43について検討するまでもなく、本件発明4は、甲6−1発明であるとはいえないし、甲6−1発明及び甲7の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明4は甲6に記載された発明ではなく、甲6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明5について
本件発明5と甲6−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者はオレンジ果汁又はシトラス様香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点45」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点46」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点46は実質的な相違点であり、相違点45について検討するまでもなく、本件発明5は甲6−2発明ではなく、甲6−2発明及び甲7の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明5は甲6に記載された発明ではなく、甲6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6と甲6−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者はオレンジ果汁又はシトラス様香料組成物を添加する製造方法である点(以下「相違点47」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点48」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点48は実質的な相違点であり、相違点47について検討するまでもなく、本件発明6は甲6−2発明ではなく、甲6−2発明及び甲7の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明6は甲6に記載された発明ではなく、甲6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2−2)甲8を主引用例とした場合について
ア 甲8に記載された発明
上記(8a)及び(8b)によると、甲8には、「茶を低温の水、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、加工乳及び/又は還元液状乳で抽出することによって得た緑茶抽出物を使用したアイスクリーム類。」(以下「甲8−1発明」という。)又は「茶を低温の水、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、加工乳及び/又は還元液状乳で抽出することによって得た緑茶抽出物を使用したアイスクリーム類の製造方法。」(以下「甲8−2発明」という。)が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
牛乳又は脱脂粉乳に乳タンパク質が含まれるのは技術常識であるから、牛乳又は脱脂粉乳を含む甲8−1発明のアイスクリーム類は、「乳タンパク質含有飲食品」に相当する。
本件発明4と甲8−1発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者は緑茶が添加されたものである点(以下「相違点49」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールが添加されているかどうか不明である点(以下「相違点50」という。)で相違する。
まず、相違点50について検討する。
甲8には、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールに関する記載も示唆もなく、甲9には、特定の日本製釜煎り茶にcis−3−ヘキセノールが含まれることが記載されるにとどまり、甲8−1発明の緑茶が、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを含有することを示すものではなく、かつ、甲8−1発明におけるその含有量を示唆するものでもなく、当該相違点50に係る本件発明4の特定事項は、当業者が容易に想到することではない。
したがって、相違点49について検討するまでもなく、本件発明4は、甲8−1発明であるとはいえないし、甲8−1発明及び甲9の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明4は甲8に記載された発明ではなく、甲8及び9に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明5について
本件発明5と甲8−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者は緑茶を添加する製造方法である点(以下「相違点51」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点52」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点52は実質的な相違点であり、相違点51について検討するまでもなく、本件発明5は甲8−2発明ではなく、甲8−2発明及び甲9の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明5は甲8に記載された発明ではなく、甲8及び9に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6と甲8−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者は緑茶を添加する製造方法である点(以下「相違点53」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点54」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点54は実質的な相違点であり、相違点53ついて検討するまでもなく、本件発明6は甲8−2発明ではなく、甲8−2発明及び甲9の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明6は甲8に記載された発明ではなく、甲8及び9に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(2−3)甲10を主引用例とした場合について
ア 甲10に記載された発明
上記(10a)によると、甲10には、「牛乳200cc及び二代目の蜂蜜大さじ1/2からなるはちみつホットミルク。」(以下「甲10−1発明」という。)又は「牛乳200cc及び二代目の蜂蜜大さじ1/2からなるはちみつホットミルクの製造方法。」(以下「甲10−2発明」という。)が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明4について
牛乳に乳タンパク質が含まれるのは技術常識であるから、牛乳を含む甲10−1発明のはちみつホットミルクは、「乳タンパク質含有飲食品」に相当する。
本件発明4と甲10−1発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が添加されたものであるのに対して、後者は二代目の蜂蜜が添加されたものである点(以下「相違点55」という。)及び
前者は香料組成物が、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加されるのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールが添加されているかどうか不明である点(以下「相違点56」という。)で相違する。
まず、相違点56について検討する。
甲10には、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールに関する記載も示唆もなく、甲11には、特定のハゼノキはちみつに「cis−3−ヘキセノール」である「(Z)−3−ヘキセノール」が含まれることが記載されるにとどまり、甲10−1発明の二代目の蜂蜜が、ジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを含有することを示すものではなく、かつ、甲10−1発明におけるその含有量を示唆するものでもなく、当該相違点56に係る本件発明4の特定事項は、当業者が容易に想到することではない。
したがって、相違点55について検討するまでもなく、本件発明4は、甲10−1発明であるとはいえないし、甲10−1発明及び甲11の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明4は甲10に記載された発明ではなく、甲10及び11に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(イ)本件発明5について
本件発明5と甲10−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品に関する方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法であるのに対して、後者は二代目の蜂蜜を添加する製造方法である点(以下「相違点57」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点58」という。)で相違する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点58は実質的な相違点であり、相違点57について検討するまでもなく、本件発明5は甲10−2発明ではなく、甲10−2発明及び甲11の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明5は甲10に記載された発明ではなく、甲10及び11に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6と甲10−2発明を対比すると、両者は「乳タンパク質含有飲食品の製造方法。」である点で一致し、
前者は請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を添加するのに対して、後者は二代目の蜂蜜を添加する製造方法である点(以下「相違点59」という。)及び
前者は香料組成物を、「乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10-19g〜3.0×10-3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10-14g〜0.03g」添加するのに対して、後者はジフェニルオキシド又はcis−3−ヘキセノールを添加しているかどうか不明である点(以下「相違点60」という。)で相違する。
まず、相違点60について検討する。
上記相違点について検討すると、上記(ア)で述べた理由と同様の理由により、相違点60は実質的な相違点であり、相違点59について検討するまでもなく、本件発明6は甲10−2発明ではなく、甲10−2発明及び甲11の記載事項に基いて、当業者が容易に想到するものでもない。

よって、本件発明6は甲10に記載された発明ではなく、甲10及び11に記載された発明に基いて当業者が容易に想到するものでもない。

(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「また、本件異議申立に係る証拠は、cis−3−ヘキセノールに係るもののみであり、ジフェニルオキシドに係るものは含まれていない。」(第12頁下から第10〜9行)又は「また、本異議申し立てにおいては、ジフェニルオキシドは対象としていない。」(第13頁下から第9行、第14頁第15行、第15頁第10行)と述べており、乳タンパク質に対してジフェニルオキシドの添加が必須である本件発明4〜6について、異議申立の具体的な主張はないものといえる。

(4)小括
以上より、本件発明5は、甲1、3及び4に記載された発明ではなく、甲1、3及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明4〜6は、甲5、6、8及び10に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明、甲6及び7に記載された発明、甲8及び9に記載された発明、又は、甲10及び11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由並びに証拠によっては、本件請求項4〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項4〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェニルオキシド及びcis−3−ヘキセノールからなる群より選ばれる1種以上からなる乳タンパク質に由来する異味異臭の改善剤。
【請求項2】
ジフェニルオキシドを含有する請求項1記載の異味異臭の改善剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異味異臭の改善剤を含有する乳タンパク質に由来する異味異臭の改善用香料組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物が、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19g〜3.0×10−3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19〜3.0×10−3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10−14g〜0.03g添加された乳タンパク質含有飲食品。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19g〜3.0×10−3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19g〜3.0×10−3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10−14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品における乳タンパク質に由来する異味異臭の改善方法。
【請求項6】
乳タンパク質含有飲食品を製造する工程において、請求項1若しくは2に記載の異味異臭の改善剤又は請求項3に記載の香料組成物を、乳タンパク質含有飲食品に、乳タンパク質1g当たり、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19g〜3.0×10−3g、または、ジフェニルオキシドとして1.0×10−19〜3.0×10−3gおよびcis−3−ヘキセノールとして1.0×10−14g〜0.03g添加することを特徴とする、乳タンパク質含有飲食品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-09-05 
出願番号 P2020-118127
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (A23C)
P 1 652・ 113- YAA (A23C)
P 1 652・ 121- YAA (A23C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 阪野 誠司
特許庁審判官 野田 定文
齊藤 真由美
登録日 2020-12-15 
登録番号 6810821
権利者 小川香料株式会社
発明の名称 乳タンパク質に由来する異味異臭の改善剤  
代理人 竹林 則幸  
代理人 新井 信輔  
代理人 結田 純次  
代理人 新井 信輔  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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