ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G05B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G05B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G05B |
---|---|
管理番号 | 1392022 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-11-09 |
確定日 | 2022-10-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6870479号発明「HMI開発支援装置、HMI開発支援方法、および、HMI開発支援プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6870479号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、6、7について訂正することを認める。 特許第6870479号の請求項1−7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6870479号の請求項1−7に係る特許についての出願は、平成29年5月30日に出願され、令和3年4月19日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1−7に係る特許に対して、特許異議の申立て(以下、「本件特許異議申立て」という。)があり、次のとおりに手続が行われた。 令和3年11月 9日 :特許異議申立人池田憲保(以下、「申立人」という。)による請求項1−7に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和4年 2月16日付け:取消理由通知 令和4年 3月25日 :特許権者オムロン株式会社(以下、「特許権者」という。)による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)と意見書の提出 令和4年 5月18日付け:申立人へ本件訂正請求があった旨の通知 令和4年 6月21日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 本件訂正の適否について検討する。 なお、本件の特許異議は、全ての請求項に対して申し立てられているから、本件訂正請求の訂正事項において、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 1 一群の請求項1−5に係る訂正 (1)訂正事項 ア 訂正事項1(下線は訂正箇所。以下同じ。) 訂正前の請求項1の「前記比較画面は、前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値を強調表示した画面である、」を、訂正後の請求項1の「前記比較画面は、前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない画面である、」に訂正する。(訂正後の請求項1を引用する請求項2−5も同様に訂正する。) イ 訂正事項2 訂正前の請求項2の「前記比較処理部は、互いに属性値が相違し、変数が共通である前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとを強調表示した前記比較画面を形成する、」を、訂正後の請求項2の「前記比較処理部は、互いに属性値が相違し、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示されてない前記比較画面を形成する、」に訂正する。(訂正後の請求項2を引用する請求項3−5も同様に訂正する。) なお、訂正前の請求項1−5について、訂正前の請求項2−5は、訂正前の請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1−5に対応する訂正後の請求項1−5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求の訂正事項1−2は、この一群の請求項について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 ア 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「比較画面」の画面の内容が多義的に解釈し得るため、その内容を明確化するものである。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項1は、本件明細書の段落【0048】、【0050】、及び図4、5の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「比較画面」の画面の内容が多義的に解釈し得るため、その内容を明確化するとともに、訂正前の請求項2の「変数が共通」である状態を明確化するものである。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項2は、本件明細書の段落【0053】、及び図5の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 2 請求項6に係る訂正 (1)訂正事項 ・訂正事項3 訂正前の請求項6の「前記比較処理工程は、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成する、」を、訂正後の請求項6の「前記比較処理工程は、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する、」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 ・訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項6の「比較画面」の画面の内容が多義的に解釈し得るため、その内容を明確化するものである。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項3は、本件明細書の段落【0048】、【0050】、及び図4、5の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 3 請求項7に係る訂正 (1)訂正事項 ・訂正事項4 訂正前の請求項7の「前記比較処理では、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる、」を、訂正後の請求項7の「前記比較処理では、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる、」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 ・訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項7の「比較画面」の画面の内容が多義的に解釈し得るため、その内容を明確化するものである。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項4は、本件明細書の段落【0048】、【0050】、及び図4、5の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 4 小括 したがって、上記の訂正事項1−4は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、6、7について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 第2のとおり、本件訂正請求は認められたから、訂正後の請求項1−7に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1−7に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などといい、各請求項に係る発明をまとめて「本件特許発明」という。) 【請求項1】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集部と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示部と、 を備え、 前記HMI編集部は、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所を強調表示する比較画面を形成して前記表示部に表示させる比較処理部を有し、 前記比較画面は、前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない画面である、 HMI開発支援装置。 【請求項2】 前記比較処理部は、 互いに属性値が相違し、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示されてない前記比較画面を形成する、 請求項1に記載のHMI開発支援装置。 【請求項3】 前記比較処理部は、 前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトの属性値を、前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトの属性値に反映させるマージ処理部を有する、 請求項1または請求項2に記載のHMI開発支援装置。 【請求項4】 前記マージ処理部は、 複数の属性値が相違する場合に、選択された属性値を反映させる、 請求項3に記載のHMI開発支援装置。 【請求項5】 前記編集対象のHMIプロジェクトを一時記憶する一時記憶部を備え、 前記マージ処理部は、 前記属性値を反映させる処理のキャンセルを受け付けると、 前記一時記憶部から読み出した前記編集対象のHMIプロジェクトに戻す、 請求項3または請求項4に記載のHMI開発支援装置。 【請求項6】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集工程と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示工程と、 を有し、 前記HMI編集工程は、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面を形成して、表示部に表示させる比較処理工程を有し、 前記比較処理工程は、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する、 HMI開発支援方法。 【請求項7】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集処理と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示処理と、 をコンピュータに実行させるHMI開発支援プログラムであって、 前記HMI編集処理には、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面を形成して、表示部に表示させる比較処理を含み、 前記比較処理では、 前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる、 HMI開発支援プログラム。 第4 取消理由通知の取消理由 1 取消理由の概要 当審の取消理由通知における取消理由の概要は以下のとおりである。 (明確性)訂正前の請求項1−7の記載が、以下の理由1−4の点で不備のため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないに特許出願に対してされたものである。 (1)理由1 請求項1には、「前記比較画面は、・・・相違する属性値を強調表示した画面である」と記載されており、「比較画面」には、「相違する属性値」が強調して表示されるものと理解される。 しかし、上記記載では、「相違する属性値」のみが表示されるのか、それ以外の属性値(一致する属性値)についても表示されるのか、いずれとも理解し得るものであるため、 「比較画面」という発明特定事項が、 (A)「強調表示される『相違する属性値』のみが表示された画面」を意図するものであるか、 (B)「強調表示される『相違する属性値』と、強調表示されない『一致する属性値』の両者が表示された画面」を意図するものであるか、 明確に特定することができないものである。 よって、請求項1、及び請求項1を引用する請求項2−5に係る発明は明確でない。 (2)理由2 ア 請求項2には、「前記比較処理部は、互いに属性値が相違し、変数が共通である・・・オブジェクトとを強調表示した前記比較画面を形成する」と記載されており、「比較画面」には、「互いに属性値が相違し、変数が共通」である「オブジェクト」が強調して表示されるものと理解される。 しかし、上記記載では、「『互いに属性値が相違し、変数が共通』である『オブジェクト』」のみが表示されるのか、それ以外のオブジェクト(互いに属性値が一致し、変数が共通であるオブジェクト)についても表示されるのか、いずれとも理解し得るものであるため、 「比較画面」という発明特定事項が、 (C)「強調表示される『互いに属性値が相違し、変数が共通であるオブジェクト』のみが表示された画面」を意図するものであるか、 (D)「強調表示される『互いに属性値が相違し、変数が共通であるオブジェクト』と、強調表示されない『互いに属性値が一致し、変数が共通であるオブジェクト』の両者が表示された画面」を意図するものであるか、 明確に特定することができないものである。 イ また、上記記載の「変数が共通である」ことについて、具体的にどのような状態をいうのか明確でない。 明細書の段落【0053】の記載から、変数が「同じ」という状態については明確といえるが、「共通」は、「同じ」とは異なる用語であると理解される一方で、明細書をみても「変数が共通」ということについては説明されてないから、具体的にどのような状態をいうのか明確でない。 よって、請求項2、及び請求項2を引用する請求項3−5に係る発明は明確でない。 (3)理由3 請求項6には、「相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成する」と記載されており、上記(1)と同様に、「比較画面」という発明特定事項が、上記(1)の(A)と(B)のいずれであるのか、明確に特定することができないものであるから、請求項6に係る発明は明確でない。 (4)理由4 請求項7には、「相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる」と記載されており、上記(1)と同様に、「比較画面」という発明特定事項が、上記(1)の(A)と(B)のいずれであるのか、明確に特定することができないものであるから、請求項7に係る発明は明確でない。 2 取消理由の判断 (1)理由1について 本件訂正請求の訂正事項1により、本件特許発明1の上記の「前記比較画面は、・・・相違する属性値を強調表示した画面である、」は、「前記比較画面は、・・・相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない画面である、」に訂正され、「比較画面」という発明特定事項が、上記1(1)の(B)を意図することが明確に特定できるから、請求項1−5に関する理由1は解消したものと認められる。 (2)理由2について 本件訂正請求の訂正事項2により、本件特許発明2の「前記比較処理部は、互いに属性値が相違し、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとが強調表示されてない前記比較画面を形成する、」に訂正されたことで、上記1(2)アについて「比較画面」という発明特定事項が、上記(D)を意図することが明確に特定でき、上記1(2)イについて「変数が同じ」である状態であることが明確となった。 したがって、請求項2−5に関する理由2は解消したものと認められる。 (3)理由3について 本件訂正請求の訂正事項3により、本件特許発明6の「相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成する、」は、「相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する、」に訂正され、「比較画面」という発明特定事項が、上記1(1)の(B)を意図することが明確に特定できるから、請求項6に関する理由3は解消したものと認められる。 (4)理由4について 本件訂正請求の訂正事項4により、本件特許発明7の「相違する属性値を強調表示した前記比較画面を形成させる」は、「相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる」に訂正され、「比較画面」という発明特定事項が、上記1(1)の(B)を意図することが明確に特定できるから、請求項7に関する理由4は解消したものと認められる。 3 小括 したがって、本件特許発明1−7について、取消理由通知の取消理由である理由1−4はいずれも解消したから、本件請求項1−7に係る特許は、通知した取消理由より取り消すことはできない。 第5 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由の概要及び証拠 (1)新規性(特許法第29条第1項第3号)に係る理由 本件特許発明1、6−7は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、6−7に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)進歩性(特許法第29条第2項)に係る理由 本件特許発明1−7は、甲第1−7号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1−7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)明確性(特許法第36条第6項2号)に係る理由 ア 訂正前の本件特許発明1の「相違箇所を強調表示する比較画面」及び「相違する属性値を強調表示した画面」について、「相違箇所を強調表示」することと「相違する属性値を強調表示」することで異なる用語を用いて特定しているが、これらの関係性が特定されていないため、特に前者の「相違箇所を強調表示」することは、オブジェクト自体に強調表示を施すことを示すのか、属性値に強調表示を施すことを示すものか明確ではない。 イ 訂正前の本件特許発明2においては、「属性値」及び「変数」について何ら定義がなされておらず、これらの関係も示されていない。 ウ したがって、本件特許発明1、6−7及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2−5は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3−5は、当該要件を満たしていないから、請求項1−7に係る特許は特許法第36条第2項の規定に違反してされたものである。 エ なお付言すると、明確性に係る特許異議申立理由のうち、訂正前の本件特許発明1、6−7の「相違する属性値を強調表示」という記載が明確でない旨の理由(特許異議申立書第36−37ページ)は、上記第4の取消理由の理由1、3及び4と同趣旨のものである。 また、訂正前の本件特許発明2の「変数が共通」とは、いかなる数値が共通であることを示すのか不明である旨の理由(特許異議申立書第37−38ページ)は、上記第4の取消理由の理由2のイと同趣旨のものである。 そして、訂正前の本件特許発明2の「互いに属性値が相違し、変数が共通である前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとを強調表示した前記比較画面」の発明特定事項の意味が不明である旨の理由(特許異議申立書第38ページ)は、上記第4の取消理由の理由2のアと同趣旨のものである。 (4)申立人が提出した証拠 甲第1号証:特開2016−14951号公報 甲第2号証:特開2015−79493号公報 甲第3号証:特開2012−64156号公報 甲第4号証:国際公開第2011/154989号 甲第5号証:特開2009−157580号公報 甲第6号証:特開2016−218977号公報 甲第7号証:国際公開第2016/157540号 (以下、各甲号証を「甲1」などという。) なお、特許異議申立書に添付された甲4及び7は、いずれも「再公表特許」であるが、特許異議申立書に添付された証拠説明書の甲4及び7の表記は「国際公開」とされていることから、「国際公開」のものを添付すべきところを誤って添付したものと善解する。 2 新規性及び進歩性に係る理由の判断 (1)甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 ア 甲1の記載事項(下線は当審で付した。以下、同じ。) a 明細書 「【0001】 本発明は、画面データのレイアウト変更に関する。 以下では、モニタリング部品のレイアウト変更について説明する。 モニタリング部品は、計装分野で用いられる制御機器の汎用的な制御方式によるプログラム関数の動作をSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)や表示器等の画面で視覚的に把握するための画面データである。 ・・・ 【0016】 本発明は上記のような課題を解決することを主な目的とし、モニタリング部品等の画面データのレイアウト変更を容易にする構成を得ることを主な目的とする。 ・・・ 【0017】 本発明に係る情報処理装置は、 文字及び図形の少なくともいずれかが描画される描画パーツが配置されている画面データのレイアウトが変更された場合に、画面データに設定されているプロパティ及び描画パーツに設定されているプロパティのうち、レイアウト変更前と比較して値が変化しているプロパティを抽出する抽出部と、 前記抽出部により抽出された変化後のプロパティを用いて、他の画面データのレイアウトを変更するための変更ルールを生成する変更ルール生成部とを有することを特徴とする。 【発明の効果】 【0018】 本発明によれば、レイアウト変更前と比較してパラメータ値が変化している描画パーツを抽出し、抽出した描画パーツの変更後のパラメータ値を用いて、他の画面データのレイアウトを変更するための変更ルールを生成するため、1つの画面データにおけるレイアウト変更を他の同様の画面データに容易に反映させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0019】 ・・・ 【図3】実施の形態1に係るモニタリング部品1(アプリケーションA用)のレイアウト変更画面の例を示す図。 【図4】実施の形態1に係るモニタリング部品1(アプリケーションA用)のレイアウト変更画面の例を示す図。 ・・・ 【0020】 実施の形態1及び2では、制御機器メーカが提供したモニタリング部品に対して、マルチプラットフォームに対応する各OSのアプリケーション向けデザインDBの変更ルールをグラフィカルに設定するためのモニタリング部品レイアウト設定支援装置について説明する。 より具体的には、実施の形態1及び2では、ユーザがある一部のモニタリング部品のデザインをグラフィカルに変更した結果から、変換ルールを自動で作成することで、ユーザのデザイン変更を容易にするモニタリング部品レイアウト設定支援装置を説明する。 【0021】 モニタリング部品は、文字及び図形の少なくともいずれかが描画される描画パーツが複数配置されているGUIデータである。 モニタリング部品に含まれている描画パーツには、プログラミング関数をモニタリングする機能が実装されている。 以下では、モニタリング部品に含まれている描画パーツを内部コントローラという。 【0022】 なお、実施の形態1及び2で説明するモニタリング部品レイアウト設定支援装置は、情報処理装置の例に相当する。 【0023】 実施の形態1. モニタリング部品レイアウト設定支援装置の構成について説明する。 図1は、実施の形態1によるモニタリング部品レイアウト設定支援装置10の構成例を示す。 【0024】 モニタリング部品レイアウト設定支援装置10は、制御部101、入力部102、表示部103、編集部104、モニタリング部品管理部105、デザインDB管理部106、変更ルール管理部107、変更内容解析部108から構成される。 【0025】 制御部101は、入力部102、表示部103、編集部104、モニタリング部品管理部105、デザインDB管理部106、変更ルール管理部107、変更内容解析部108の実行及びデータの参照を管理する手段を持つ。 【0026】 入力部102は、ユーザがモニタリング部品のデザインをグラフィカルに変更するために画面操作や入力をする手段を持つ。 例えば、入力部102はマウス操作やキー操作により入力される。 【0027】 表示部103は、デザインDBやモニタリング部品をテキストで表示する手段と、指定のデザインDBを用いたモニタリング部品をグラフィカルに表示する手段と、操作メニューなどを表示する手段を持つ。 例えば、表示部103はディスプレイ画面などに表示する。 【0028】 編集部104は、表示部103でグラフィカルに表示された指定のデザインDBを用いたモニタリング部品に対して、入力部102から受け取った操作情報を基に、モニタリング部品のデザインを編集する手段とその編集情報を保持する手段を持つ。 編集部104は、例えば、表示部103によってグラフィカルに表示されているモニタリング部品(指定のデザインDBを用いた)に対して、入力部102からドラッグアンドドロップのマウス操作によって対象の内部コントローラの位置変更を実施する。 【0029】 モニタリング部品管理部105は、モニタリング部品を管理する手段を持つ。 モニタリング部品管理部105は、例えば、各モニタリング部品が所有している内部コントローラを一覧として持つ。 モニタリング部品1は内部コントローラA、B、Cを所有しており、モニタリング部品2は内部コントローラC、D、Eを所有するなどである。 【0030】 デザインDB管理部106は、モニタリング部品管理部105に管理されている各モニタリング部品の各アプリケーション向けデザインDBを管理する手段を持つ。 例えば、ある1つのモニタリング部品1に対応するデザインDBとして、マスタアプリケーション用デザインDBやアプリケーションA用デザインDB、アプリケーションB用デザインDBなどがあり、モニタリング部品に紐付けられて管理されている。 各デザインDBには、モニタリング部品ごとに所有する各内部コントローラの位置やサイズ、色などの情報が保持されている。 【0031】 変更ルール管理部107は、画面全体もしくは内部コントローラのプロパティに関して各アプリケーションにおける変更ルールを管理する手段を持つ。 モニタリング部品の画面全体に関するプロパティとして、画面サイズや背景色などがある。 内部コントローラのプロパティに関しては、内部コントローラのサイズや内部コントローラの位置の制約、関連のある内部コントローラ間の規則などがある。 変更ルールには、すべてのモニタリング部品に関するものもあれば一部のモニタリング部品に関するものがある。 例えば、マスタアプリケーション用デザインDBからアプリケーションA用デザインDBへ変換するために適用すべき変更ルールとして、画面サイズを150px×300pxから100px×150pxへ変更するルールa、内部コントローラAの位置を(A1x,A1y)から(A2x,A2y)へ変更するルールb、内部コントローラEの色を白色から赤色へ変更するルールcがある。 ここで、変更ルールaはすべてのモニタリング部品に関するものであり、変更ルールb、cは一部のモニタリング部品に関するものである。 一部のモニタリング部品とは、変更対象の内部コントローラを持つモニタリング部品すべてである。 【0032】 変更内容解析部108は、編集部104で保持されている編集情報を基に、デザインDB管理部106から変更前情報として編集情報に対応するアプリケーション用モニタリング部品のデザインDBを受け取り、両者の差分を抽出し、変更ルールを作成して変更ルール管理部に格納する手段を持つ。 つまり、変更内容解析部108は、モニタリング部品のレイアウトが変更された場合に、モニタリング部品の全体に設定されているプロパティ及び内部コントローラに設定されているプロパティのうち、レイアウト変更前と比較して値が変化しているプロパティを抽出する。 そして、変更内容解析部108は、抽出した変化後のプロパティを用いて、他のモニタリング部品のレイアウトを変更するための変更ルールを生成する。 変更内容解析部108は、抽出部及び変更ルール生成部の例に相当する。 なお、モニタリング部品のレイアウト変更(デザイン変更ともいう)には、モニタリング部品全体の画面サイズの変更、モニタリング部品の画面の背景色の変更、内部コントローラのサイズの変更、内部コントローラの形状の変更、内部コントローラの位置の変更、内部コントローラの色の変更等、表示する画面データの構成を変化させる全ての変更が含まれる。 【0033】 次に、本実施の形態に係るモニタリング部品レイアウト設定支援装置10の動作について説明する。 モニタリング部品レイアウト設定支援装置10を用いて、変更ルールをグラフィカルに設定する方法を説明する。 【0034】 モニタリング部品レイアウト変更者(ユーザ)は、表示部103に表示した操作メニューを入力部102で操作することで、モニタリング部品とアプリケーションを選んで変更対象とするデザインDBを選択する(例えば、図2)。 図2の例では、ユーザは、アプリケーションA用のモニタリング部品1のデザインDBを選択している。 【0035】 次に、ユーザは、表示部103に表示された、前述の指定したデザインDBを用いたモニタリング部品に対して、入力部102によって操作することで、編集部104を介して、内部コントローラの位置の変更やサイズの変更、色の変更など、モニタリング部品のデザインを編集する。 つまり、編集部104は、ユーザからのモニタリング部品のレイアウト変更要求を受付け、レイアウト変更要求に従い、ユーザが指定するモニタリング部品のプロパティを変化させてモニタリング部品のレイアウトを変更する。 ここでは、図3のようにモニタリング部品1のレイアウトを変更したことを想定する。 図3の例では、内部コントローラA(PV)及び内部コントローラB(0.0)の位置と、内部コントローラC(SV)と内部コントローラD(0.0)の位置を入れ替え、内部コントローラEの色をグレーから黒に変化させている。 【0036】 次に、ユーザは、表示部103に表示した操作メニューを入力部102で操作することで、変更ルールの作成を指示する(例えば、図3の変更ルール作成ボタンの押すことにより)。 すると、変更ルールの案が表示部103に示される(例えば、図4)のでユーザは確認し、必要に応じて編集し、変更ルール設定を指示する(例えば、図4の変更ルール設定ボタンを押すことにより)。 図4では、内部コントローラA(PV)の座標位置の変化、内部コントローラB(0.0)の座標位置の変化、内部コントローラC(SV)の座標位置の変化、内部コントローラD(0.0)の座標位置の変化、内部コントローラEの色の変化(グレーから黒への変化)が示される変更ルールが表示されている。 ユーザがこの変更ルールの設定を指示すれば、編集部104が、この変更ルールを適用して、例えばアプリケーションBのモニタリング部品1及びアプリケーションCのモニタリング部品1に同様のレイアウト変更を行う。 また、例えば、アプリケーションAのモニタリング部品1とアプリケーションBのモニタリング部品1とで全体の画面サイズが異なっている場合は、編集部104は、アプリケーションAのモニタリング部品1とアプリケーションBのモニタリング部品1の画面サイズの比率に従って、図4の変更ルールを調整して、アプリケーションBのモニタリング部品1のレイアウト変更を行うようにしてもよい。 なお、図4では、レイアウト変更前のプロパティの値とレイアウト変更後のプロパティの値とが定義される変更ルールの例を示しているが、レイアウト変更後のプロパティの値のみが定義される変更ルールとしてもよい。 【0037】 次に、図3の変更ルール作成ボタンを押されるなどして、変更ルールを作成する要求がされたときのモニタリング部品レイアウト設定支援装置10の処理を説明する。 【0038】 変更内容解析部108は、編集前の情報として、選択されているモニタリング部品のデザインDBをデザインDB管理部106から取得する。 つまり、レイアウト変更前のモニタリング部品の画面全体のプロパティの値、レイアウト変更後の内部コントローラごとのプロパティの値を取得する。 さらに、変更内容解析部108は、変更後の情報として、編集部104から編集情報を取得する。 つまり、変更内容解析部108は、編集部104によるレイアウト変更後のモニタリング部品の画面全体のプロパティの値、レイアウト変更後の内部コントローラごとのプロパティの値を取得する。 【0039】 次に、変更内容解析部108は、この変更前後の2つの情報の差分を抽出して、変更ルールの案として表示部103に表示する。 つまり、変更内容解析部108は、モニタリング部品の全体に設定されているプロパティ及び内部コントローラに設定されているプロパティのうち、レイアウト変更前と比較して値が変化しているプロパティを抽出する。 そして、変更内容解析部108は、抽出した変化後のプロパティを用いて、他のモニタリング部品のレイアウトを変更するための変更ルール案を生成し、生成した変更ルール案を表示部103に表示する。 【0040】 最後に、変更前後の差分を抽出して変更ルール案を作成する方法を詳細に説明する(図5参照)。 変更内容解析部108は、選択されているデザインDBの中のすべての内部コントローラを対象に(S11とS12)、各内部コントローラのすべてのプロパティを対象にして(S13とS14)、変更前後のプロパティの値を比較し、もし一致しなければ変更点に追加する(S15)。 そして、変更内容解析部108は、S15で追加したすべての変更点が示される変更ルール案を表示部103に表示する。 【0041】 以上のように、編集部104と変更内容解析部108により、グラフィカルに編集した情報を用いて、変更ルールを自動で作成することで、変更ルールとして設定された内部コントローラを所有するすべてのモニタリング部品の変更が可能となるため、モニタリング部品のデザイン変更が容易になる。 【0042】 つまり、OSが異なるアプリケーションに共通のモニタリング部品が使用される場合に、変更ルールによって、あるOSのアプリケーションにおけるモニタリング部品のデザイン変更を、他のOSのアプリケーションのモニタリング部品に容易に反映させることができる。 更には、同じOSの異なるアプリケーションに共通のモニタリング部品が使用される場合に、変更ルールによって、あるアプリケーションにおけるモニタリング部品のデザイン変更を、他のアプリケーションのモニタリング部品に容易に反映させることができる。 また、OSは共通するが画面サイズが異なる端末装置(スマートフォン、タブレット等)に共通のモニタリングが使用される場合に、変更ルールによって、ある画面サイズにおけるモニタリング部品のデザイン変更を、他の画面サイズのモニタリング部品に容易に反映させることができる。 更に、使用するアプリケーションは一つであるが、類似するモニタリング部品が複数ある場合に、変更ルールにより、1つのモニタリング部品のデザイン変更を、他のモニタリング部品に容易に反映させることができる。」 b 図面 「図1 」 「図3 」 「図4 」 「図5 」 c 記載事項の整理 (a)甲1の段落【0024】−【0025】、【0028】−【0029】、【0035】、図1、3−4の記載からみて、モニタリング部品レイアウト設定支援装置10の編集部104は、複数の内部コントローラによって構成されるモニタリング部品1の編集を行うことが認められる。 (b)甲1の段落【0027】、図3−4の記載からみて、表示部103は、モニタリング部品1のレイアウト変更画面を表示することが認められる。 (c)甲1の段落【0024】−【0025】、【0032】、【0038】−【0041】、図1、3−5の記載からみて、編集部104を持つ制御部101においては、レイアウト変更前のモニタリング部品1とレイアウト変更後のモニタリング部品1を並列した画面を形成して前記表示部103に表示させる変更内容解析部108を有することが認められる。 (d)甲1の段落【0032】、【0038】−【0041】、図4−5の記載からみて、上記(c)のレイアウト変更前のモニタリング部品1とレイアウト変更後のモニタリング部品1を並列して表示する画面は、レイアウト変更前のモニタリング部品1からレイアウト変更後のモニタリング部品1への変更ルール案も表示された画面であることが認められる。 d 甲1発明 上記a−cの記載からみて、以下のモニタリング部品レイアウト設定支援装置の発明(以下、「甲1発明」という。)が認定できる。 複数の内部コントローラによって構成されるモニタリング部品1の編集を行う編集部104を持つ制御部101と、 前記モニタリング部品1のレイアウト変更画面を表示する表示部103と、 を備え、 前記編集部104を持つ前記制御部101は、 レイアウト変更前のモニタリング部品1とレイアウト変更後のモニタリング部品1を並列した画面を形成して前記表示部103に表示させる変更内容解析部108を有し、 前記レイアウト変更前のモニタリング部品1とレイアウト変更後のモニタリング部品1を並列した画面は、レイアウト変更前のモニタリング部品1からレイアウト変更後のモニタリング部品1への変更ルール案も表示された画面である、 モニタリング部品レイアウト設定支援装置10。 イ 甲2の記載事項 a 明細書 「【0001】 本発明は、IC設計データの比較およびマージングを行うための方法およびシステムに関する。 ・・・ 【0017】 次いで、第3に、2つのデータベース間の相違が、相違のテキストによる要約として、または相違があるデータベースのグラフィカル表現上での強調表示によって、ユーザに提示される。これは、ユーザが相違を見て、データベースの残りの部分の状況における影響についてそれらを調査するのを容易にする。 ・・・ 【0088】 図3Cに示されているように、本発明のプロセッサ、装置、またはコンピュータシステム1000によって、提案されている手法は、グラフィカルな相違/変更310が図3C内の回路図のグラフィカルビュー350a上で直接「強調表示」されることをも可能にする。たとえば、図3Bでは、インスタンス変更305がユーザによって選択されている(307)場合には、回路図ビュー350a内で、グラフィカルな変更が本発明のプロセッサ、装置、またはコンピュータシステム1000によって強調表示される(310)。 【0089】 図3Cに示されているように、要素203a(上の「pmos」記号)が強調表示されており、その理由は、このオブジェクトが第1のデータベースにも第2のデータベースにもある(図2Aの203aおよび図2Bの203b参照)が、相違を有するからである。図3Cの、下にある要素251e(グランド記号)が強調表示されており、その理由は、この特定のビュー内にないからである。提案されている手法は、形状が所与のビュー内に実際にない場合でさえ、(他のビューと比較することによって)形状を強調表示してもよいことに留意されたい。」 b 図面 「図2A 」 「図2B 」 「図3B 」 「図3C 」 c 甲2記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲2には以下の技術的事項(以下、「甲2記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 IC設計データの比較およびマージングを行うために、IC設計データの2つのデータベースにおいて、相違するオブジェクト自体(例えば、pmos記号、グランド記号)、及び属性値(203a、203b)を強調表示すること。 ウ 甲3の記載事項 a 明細書 「【0001】 本発明は、複数の画面を作成するための情報処理装置とその処理方法及びプログラムに関する。 ・・・ 【0041】 警告メッセージ画面291には、変更された画面部品IDと、変更内容292が表示される。また、変更した出力先の画面部品は画面編集ウィンドウに293のように識別可能に表示して示される。また、未変更の画面部品はハイライト294されて示される。 ・・・ 【0089】 ステップ554は、画面部品出力先関連テーブル350を用いて、画面部品への変更内容を反映すべき出力先を決定し(変更されていない出力先)する。すなわち、画面部品の属性(管理情報)が変更された場合に、変更された部品と同一の部品が配置された画面を特定する。その出力先の画面編集ウィンドウにある画面部品をハイライト表示する(図3の画面部品213)。」 b 図面 「図3 」 c 甲3記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲3には以下の技術的事項(以下、「甲3記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 複数の画面を作成するための情報処理において、未変更の画面部品(オブジェクトに相当)を識別可能にするため、この画面部品自体をハイライトされて強調表示すること。 エ 甲4の記載事項 a 明細書 「[0001] この発明は、プログラマブル表示器の画面作成を行うシステム、特に複数の部品に対して個別に設定を行うシステム及びその画面作成プログラムに関する。 ・・・ [0006] この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、その目的は、設定が必要なオブジェクトの属性を示す全設定値を一覧で表示すると共に、設定値の異なる箇所や規則性を乱している箇所を強調表示することで、設定漏れや設定誤りを発見しやすくすることにある。また、全設定値の一覧と作画画面上のオブジェクトとの位置関係を視覚的に把握させ、設定する箇所の誤りを防ぐ。 ・・・ [0043] このとき、リスト表示部801cは、オブジェクト301とオブジェクト302の各属性を示す設定値を比較する。図7の例では、「座標 横」属性311の設定値が異なっているため、オブジェクト301とオブジェクト302の「座標 横」属性311において、各設定値のセル内部の表示が変わり、強調表示される。」 b 図面 「図7 」 c 甲4記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲4には以下の技術的事項(以下、「甲4記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 プログラマブル表示器の画面作成を行うために、設定が必要なオブジェクトの属性を示す全設定値を一覧で表示すると共に、設定値の異なる箇所や規則性を乱している箇所を、セル内部の表示を変えて強調表示することで、設定漏れや設定誤りを発見しやすくすること。 オ 甲5の記載事項 a 明細書 「【0001】 本発明は、カーナビゲーション装置などの情報端末におけるヒューマン・マシン・インタフェース(以下、HMIという)の開発に好適なHMI開発支援技術に関するものである。 ・・・ 【0019】 表示部品の定義を行う際に、表示部品の属性1つ1つに対して、その属性値を変更することが可能な「ユーザ種別」を指定することができる。レイアウトエディタ20の「動作モード」と表示部品の属性に付加された変更可能な「ユーザ種別」情報とが一致しない場合、レイアウトエディタ20は属性値の変更を許可しない。例えば、部品21の属性“style”(行203)は、プログラマモードでのみ変更可能である、という定義がなされているとする。したがって、現在の「動作モード」はデザイナーモードであるので、開発情報表示部20Bから属性203の属性値を変更することができない。このとき、行203の属性値入力欄について、変更可能な属性順の表示形態と異なった表示とすることにより、この属性値が変更不可能であることをユーザに知らせることができる。本実施の形態では、属性値の入力欄を網掛け表示しているが、他の表示例として背景色を変化させたり、特定の記号を表示してもよい。」 b 図面 「図2 」 c 甲5記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲5には以下の技術的事項(以下、「甲5記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 HMI開発支援技術において、変更不可能な属性値をユーザに知らせるために、網掛け表示、背景色の変化、特定の記号の表示により、変更可能な属性値と異なった表示形態とすること。 カ 甲6の記載事項 a 明細書 「【0061】 図6Cに示すように、位置関係が不一致のパーツがある場合の判定結果出力の一例である。判定結果出力部15が、第1のパーツ情報記録DB21に「1」の比較結果21gがあると判定した場合である。ここでは、「1」の比較結果21gがあると判定されたパーツは、bA4ボタンであるとする。かかる場合に、判定結果出力部15は、比較結果21gが「1」であるブラウザAのbA4ボタンの表示位置を、ブラウザBに出力された画像の表示画面上に強調表示する。そして、判定結果出力部15は、「位置関係は不一致! 破線・・・・はブラウザAの表示位置 (黒塗りがブラウザA出力で一致しないもの)」と表示画面に表示する。」 b 図面 「図6C 」 c 甲6記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲6には以下の技術的事項(以下、「甲6記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 ブラウザAによって出力される画像内の各ボタンと、ブラウザBによって出力される画像内の各ボタンにおいて、他の各ボタンとの位置関係が不一致である、bA4ボタンを強調表示すること。 キ 甲7の記載事項 a 明細書 「[0015] プロジェクトデータは、プログラマブル表示器で表示する全ての画面に対応する画面データを集めたデータである。図1の記憶エリア110は、プロジェクトデータ(1)111と、プロジェクトデータ(2)112と、プロジェクトデータ(3)113と、を保持する。 ・・・ [0059] ・・・元のプロジェクトデータに上書きすると判断された場合(ステップS15:Yes)、展開部105が調整後の仮想データの内容を仮想データの元となる1つまたは複数のプロジェクトデータに記憶エリア110において上書きする(ステップS17)。・・・」 b 図面 「図1 」 「図6 」 c 甲7記載の技術的事項 上記a及びbの記載からみて、甲7には以下の技術的事項(以下、「甲7記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。 元のプロジェクトデータは、記憶エリア110に上書きされること。 (2)本件特許発明1−5について ア 本件特許発明1と甲1発明の対比 (ア)甲1発明の「内部コントローラ」は本件特許発明1の「オブジェクト」に、同様に「モニタリング部品1」は「HMIプロジェクト」に、「レイアウト変更画面」は「編集画面」に、「表示部103」は「表示部」に、それぞれ相当する。そして、甲1発明の「編集部104を持つ制御部101」は本件特許発明1の「HMI編集部」と、「編集処理手段」であるという点では一致する。 (イ)甲1発明の「レイアウト変更前のモニタリング部品1」は本件特許発明1の「参照のHMIプロジェクト」に、同様に「レイアウト変更後のモニタリング部品1」は「編集対象のHMIプロジェクト」に、「変更内容解析部108」は「比較処理部」に、「モニタリング部品レイアウト設定支援装置10」は「HMI開発支援装置」にそれぞれ相当する。 (ウ)甲1発明の「レイアウト変更前のモニタリング部品1とレイアウト変更後のモニタリング部品1を並列した画面」は、レイアウト変更前とレイアウト変更後のモニタリング部品の相違箇所が一目で把握しやすく表示されることからみて、本件特許発明1の「参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所を強調表示する比較画面」に相当する。 (エ)甲1発明の「レイアウト変更前のモニタリング部品1からレイアウト変更後のモニタリング部品1への変更ルール案も表示」されることは、段落【0035】及び図4の図示内容のとおり内部コントローラの座標位置や色などの属性の変化が一覧できるものであるから、本件特許発明1の「前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値が強調表示」されることに相当する。 (オ)そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。 イ 一致点 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行う編集処理手段と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示部と、 を備え、 前記編集処理手段は、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所を強調表示する比較画面を形成して前記表示部に表示させる比較処理部を有し、 前記比較画面は、前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値が強調表示された画面である、 HMI開発支援装置。 ウ 相違点 (ア)相違点1 本件特許発明1の比較画面は、参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違ない属性値が強調表示されてない画面であるのに対して、甲1発明の画面においては、相違ない属性値は表示すらされてない点。 (イ)相違点2 編集処理手段に関し、本件特許発明1の比較処理部は、HMI編集部が有するのに対して、甲1発明の変更内容解析部108は、編集部104が直接有するのではなく、編集部104を持つ制御部101が有する点。 エ 相違点1の検討 (ア)本件特許発明1の課題は、本件明細書の段落【0006】に記載された「複数のHMIプロジェクトを容易に比較できるHMI開発支援技術を提供すること」である一方、甲1発明の課題は、段落【0016】(上記2(1)アa)に記載された「モニタリング部品等の画面データのレイアウト変更を容易にする構成を得ること」である。 (イ)そして、本件特許発明1のHMI開発支援技術は、参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトを相互に比較しながら編集を進めることから、編集対象のHMIプロジェクトの編集を進める上で、参照のHMIプロジェクトから変更を生じた部分の属性値を表示すること、及び、変更を生じなかった部分の属性値を表示することは、いずれも必要な事項であると解される。 これに対して、甲1発明のモニタリング部品レイアウト設定支援装置は、レイアウト変更前のモニタリング部品に変更を加えて変更後のモニタリング部品を編集する際の変更ルールを構築して、当該変更ルールを他のアプリケーションのモニタリング部品に適用することで、同様のレイアウト変更を行うもの(上記2(1)アaの【0036】)であって、変更ルールを構築するためには、変更前のモニタリング部品から変更を生じた部分の属性値を表示して確認することが必要なのであって、変更を生じなかった部分の属性値まで表示する必要はない。 したがって、これら両方の部分の属性値を表示する必要性があるか否かで、本件特許発明1と甲1発明とは異なるものである。 (ウ)よって、甲1発明においては、相違する属性値のみ表示することで、相違する属性値が強調表示されていれば、変更ルールを構築及び適用して、同様の変更を行うことができ、「レイアウト変更を容易にする構成を得る」旨の課題を解決し得るのであり、相違ない属性値を表示する必要がないから、相違ない属性値を表示するようにする動機付けは見出せない。 (エ)また、甲2−5には、それぞれ、上記(1)イ−オで認定した技術的事項が記載され、これらは、オブジェクトや属性値の強調表示に関するものである。 しかしながら、上記(ウ)のとおり、甲1発明において、上記相違点1の「相違ない属性値が強調表示されてない」ものとすることについて、動機付けは見出せないのであるから、甲1発明に、甲2−5記載の技術的事項を適用して本件特許発明1に想到することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 (オ)なお、甲6は、特許異議申立書において、本件特許発明2の「互いに属性値が相違し、変数が共通であるオブジェクトを強調表示する」ことの発明特定事項に関連する証拠として提出され、甲6記載の技術的事項が開示され、甲7は、同じく本件特許発明5の「プロジェクトを一時記憶する一時記憶部」の発明特定事項に関する証拠として提出されたもので、甲7記載の技術的事項が開示されたものであるが、これらについても、甲1発明に適用して本件特許発明1に容易に至らないことは、甲2−5と同様である。 (カ)よって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2−5記載の技術的事項、あるいは甲6−7の技術的事項から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1が、甲1発明、及び甲2−7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (キ)さらに、上記(イ)に示すとおり、相違点1は、本件特許発明1と甲1発明との実質的な相違点といえるから、本件特許発明1は、甲1発明と同一とはいえない。 オ 本件特許発明2−5について 本件特許発明2−5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲2−7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (3)本件特許発明6について ア 本件特許発明6は、「HMI開発支援方法」に係る方法の発明であるが、本件特許発明1の比較画面に係る「相違ない属性値が強調表示されてない画面」という発明特定事項と同様に、「相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する」という発明特定事項を備えている。 そして、上記(2)エに説示するとおり、本件特許発明1の比較画面に係る「相違ない属性値が強調表示されてない画面」という発明特定事項を含む相違点1について、甲1発明及び甲2−7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明6は、甲1発明及び甲2−7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ さらに、本件特許発明6に係る「相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する」という発明特定事項は、本件特許発明6と甲1発明との実質的な相違点といえるから、本件特許発明6は、甲1発明と同一とはいえない。 (4)本件特許発明7について ア 本件特許発明7は、「HMI開発支援プログラム」に係る物の発明であるが、本件特許発明1の比較画面に係る「相違ない属性値が強調表示されてない画面」という発明特定事項と同様に、「相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる」という発明特定事項を備えている。 そして、上記(2)エに説示するとおり、本件特許発明1の比較画面に係る「相違ない属性値が強調表示されてない画面」という発明特定事項を含む相違点1について、甲1発明及び甲2−7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明7は、甲1発明及び甲2−7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ さらに、本件特許発明7に係る「相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる」という発明特定事項は、本件特許発明7と甲1発明との実質的な相違点といえるから、本件特許発明7は、甲1発明と同一とはいえない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1−7は、特許異議申立書の新規性及び進歩性に係る理由によっては取り消すことができない。 2 明確性に係る理由の判断 (1)訂正前の本件特許発明1の「相違箇所を強調表示する比較画面」及び「相違する属性値を強調表示した画面」について ア 申立人は、「相違箇所を強調表示する比較画面」及び「相違する属性値を強調表示した画面」について、「相違箇所を強調表示」することと「相違する属性値を強調表示」することで異なる用語を用いて特定しているが、これらの関係性が特定されていないため、特に前者の「相違箇所を強調表示」することは、オブジェクト自体に強調表示を施すことを示すのか、属性値に強調表示を施すことを示すものか明確ではない旨を指摘した(上記第5の1(3)ア)。 イ 当該理由について検討すると、本件特許発明1に係る「相違箇所を強調表示する比較画面」という記載は、比較画面において、相違する箇所が強調表示されることを意味することは明らかである。 また、「前記比較画面は・・・相違する属性値が強調表示され、・・・画面である」という記載は、「前記比較画面」、すなわち「相違箇所を強調表示する比較画面」について、より具体的に、「相違する属性値が強調表示」されることを意味すると解される。 したがって、当業者は、本件特許発明1の強調表示について、属性値に強調表示を施すことを理解するから、本件特許発明1に係る記載は明確であり、本件特許発明1を引用する本件特許発明2−5に係る記載も明確である。 ウ 本件特許発明6に係る「参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面」という記載は、比較画面が、参照及び編集対象の2つのプロジェクトを比較する画面であることを意味することは明らかである。 また、「相違する属性値が強調表示され、・・・前記比較画面」という記載は、「前記比較画面」について、より具体的に、「相違する属性値が強調表示」されることを意味すると解される。 したがって、当業者は、本件特許発明6の強調表示について、属性値に強調表示を施すことを理解するから、本件特許発明6に係る記載は明確である。 エ 本件特許発明7に係る「参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面」という記載、及び、「相違する属性値が強調表示され、・・・前記比較画面」という記載は、本件特許発明6の記載と同様であるから、上記ウに説示する理由と同様の理由により、本件特許発明7に係る記載は明確である。 オ 以上から、申立人の主張は採用できない。 (2)訂正前の本件特許発明2の「属性値が相違」、「変数が共通」について ア 申立人は、本件特許発明2においては、「属性値」及び「変数」について何ら定義がなされておらず、これらの関係も示されていない旨を指摘する(上記第5の1(3)イ)。 イ 当該理由について検討すると、申立人が主張するように、本件特許発明2には、「属性値」及び「変数」について何ら定義がなされていない。 そこで、本件明細書の段落【0050】−【0051】を参照すると、「例えば、図4の例では、・・・属性値として、・・・BCU(背景色)と、POS(配置位置)とがハイライト表示される」と記載されているように、属性値の内容の例示(背景色及び配置位置)がされており、その内容からみれば、「属性値」はオブジェクトに属する性質を表す値であることが明らかである。 ウ また、段落【0053】を参照すると、「・・・図5に示すように、変数が同じオブジェクトに対しては、同じタグが表示される。例えば、「Button1」オブジェクトには、「Dif1」のタグが表示され、「Button3」オブジェクトには、「Dif2」のタグが表示される。」と記載されており、「変数」はオブジェクトを示す符号(「Button1」、「Button3」等)であることも明らかである。 エ したがって、本件特許発明2に係る「属性値」及び「変数」は、当業者が本件明細書の記載を考慮することにより、その内容を明確に理解できるから、本件特許発明2に係る記載は明確であり、本件特許発明2を引用する本件特許発明3−5の記載も明確であって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1−7は、異議申立書の取消理由2によっては取り消すことができない。 第6 申立人の令和4年6月21日提出の意見書における主張 1 意見書における申立人の主張の概要 (1)特許異議申立書の進歩性に係る理由に関して 申立人は、意見書の3(1)ア「令和3年11月9日付け特許異議申立書の取消理由1(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)について」において、以下のとおり本件訂正請求後の本件特許発明1−7が依然として、特許異議申立書の進歩性に係る理由が解消していない旨主張する。(意見書第2−11ページ) ・本件特許発明1は、甲1−3記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明2は、甲1、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明3は、甲1−3記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明4は、甲1−3記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明5は、甲1−3、7記載の発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明6は、甲1、2、5記載の発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件特許発明7は、甲1、2、5記載の発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)取消理由通知の取消理由に関して 申立人は、申立人意見書の3(1)イ「令和4年2月16日付け取消理由通知書の取消理由について」において、以下の主張をする。 ア 比較画面の表示が明確でないこと 本件訂正請求の訂正事項1により、本件特許発明1の比較画面について「・・・相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない画面である」と訂正されたが、「相違ない属性値が強調表示されてない画面」においても、比較画面に「相違する属性値」のみが表示されるのか、「相違する属性値」以外の属性値(一致する属性値)についても強調せずに表示されるのか、いずれとも理解し得るため、依然として本件特許発明1−7は不明確である。(意見書第11−12ページ) イ 本件特許発明2の「属性値」及び「変数」が明確でないこと 本件訂正請求の訂正事項2により、訂正前の本件特許発明2の比較処理部について、「互いに属性値が相違し、変数が同じである前記参照の・・・オブジェクトと前記編集対象の・・・オブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである前記参照の・・・オブジェクトと前記編集対象の・・・オブジェクトとが強調表示されてない前記比較画面を形成する」と訂正されたが、本件特許発明2においては、依然として「属性値」及び「変数」について何ら定義がなされておらず、これらの関係も示されていない。 本件明細書の段落【0050】、【0051】及び【0053】を参照しても、「変数が同じ」とは、いかなる数値が同じであることを示すのか不明であるし、属性値との違いも明らかではない。よつて、本件特許発明2に記載された「互いに属性値が相違し、変数が同じである・・・オブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである・・・オブジェクトとが強調表示されていない前記比較画面」の意味が不明である。(意見書第12−13ページ) 2 意見書における申立人の主張に対して (1)特許異議申立書の進歩性に係る理由の主張について 上記第5で検討したとおり、甲1発明に甲2−7記載の技術的事項を適用しようとする動機がないから、この適用により本件訂正請求後の本件特許発明1−7に至ることはなく、申立人の主張は採用できない。 (2)取消理由通知の取消理由の主張について ア 比較画面の表示が明確でない旨の主張について 本件特許発明1に係る「相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない」の事項について、「相違する属性値」のみが表示されることを表現するのであれば、殊更「相違ない属性値が強調表示されてない」ことを記載する必要は無いから、当該事項は、相違する属性値と相違ない属性値の両方が表示されることを前提として、前者が強調表示され、後者が非強調表示されると解するのが自然である。そして、特許権者も、令和4年3月25日提出の意見書の第7−8ページで「(B)「強調表示される『相違する属性値』と、強調表示されない『相違ない(一致する)属性値』の両者が表示された画面」を意図するものである、ことが明確になった」ことを説明し、当該説明は、上記の理解と符合するから、申立人の主張は採用することができない。 イ 「属性値」及び「変数」が明確でない旨の主張について 申立人も認めるように、本件明細書には、「属性値」が具体的に例示されており、上記第5の2(2)イで説示するとおり、当該例示から「属性値」の内容は十分に理解できる。 そして、変数については、上記第5の2(2)ウで説示するとおり、オブジェクトを示す符号であって、変数として例示された「Button3」がオブジェクトプログラム上で、オブジェクトを示す変数として使用されていることは、段落【0053】の記載から理解し得るものである。 よって、申立人の主張は採用することができない。 ウ 小括 したがって、申立人意見書の主張はいずれも採用できない。 第7 むすび 以上により、請求項1−7に係る特許は、取消理由通知の取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、他に請求項1−7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集部と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示部と、 を備え、 前記HMI編集部は、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所を強調表示する比較画面を形成して前記表示部に表示させる比較処理部を有し、 前記比較画面は、前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとにおいて、相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない画面である、 HMI開発支援装置。 【請求項2】 前記比較処理部は、 互いに属性値が相違し、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示され、互いに属性値が相違なく、変数が同じである前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトとが強調表示されてない前記比較画面を形成する、 請求項1に記載のHMI開発支援装置。 【請求項3】 前記比較処理部は、 前記参照のHMIプロジェクトのオブジェクトの属性値を、前記編集対象のHMIプロジェクトのオブジェクトの属性値に反映させるマージ処理部を有する、 請求項1または請求項2に記載のHMI開発支援装置。 【請求項4】 前記マージ処理部は、 複数の属性値が相違する場合に、選択された属性値を反映させる、 請求項3に記載のHMI開発支援装置。 【請求項5】 前記編集対象のHMIプロジェクトを一時記憶する一時記憶部を備え、 前記マージ処理部は、 前記属性値を反映させる処理のキャンセルを受け付けると、 前記一時記憶部から読み出した前記編集対象のHMIプロジェクトに戻す、 請求項3または請求項4に記載のHMI開発支援装置。 【請求項6】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集工程と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示工程と、 を有し、 前記HMI編集工程は、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面を形成して、表示部に表示させる比較処理工程を有し、 前記比較処理工程は、前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成する、 HMI開発支援方法。 【請求項7】 複数のオブジェクトによって構成されるHMIプロジェクトの編集を行うHMI編集処理と、 前記HMIプロジェクトの編集画面を表示する表示処理と、 をコンピュータに実行させるHMI開発支援プログラムであって、 前記HMI編集処理には、 参照のHMIプロジェクトと編集対象のHMIプロジェクトとの比較画面を形成して、表示部に表示させる比較処理を含み、 前記比較処理では、 前記参照のHMIプロジェクトと前記編集対象のHMIプロジェクトとの相違箇所として相違する属性値が強調表示され、相違ない属性値が強調表示されてない前記比較画面を形成させる処理を、前記コンピュータに実行させる、 HMI開発支援プログラム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-09-28 |
出願番号 | P2017-106175 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(G05B)
P 1 651・ 537- YAA (G05B) P 1 651・ 121- YAA (G05B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
田々井 正吾 中里 翔平 |
登録日 | 2021-04-19 |
登録番号 | 6870479 |
権利者 | オムロン株式会社 |
発明の名称 | HMI開発支援装置、HMI開発支援方法、および、HMI開発支援プログラム |
代理人 | 弁理士法人 楓国際特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人 楓国際特許事務所 |