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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
管理番号 1392024
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-12 
確定日 2022-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6871539号発明「樹脂組成物、樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6871539号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2〜6〕について訂正することを認める。 特許第6871539号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許異議の申立ての経緯
特許第6871539号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、令和2年6月26日(優先日:令和1年6月28日、日本国)を国際出願日とする出願(特願2020−555264号)に係る特許であって、令和3年4月20日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、同年5月12日である。)。
その後、令和3年11月12日に、本件特許の請求項1〜6に係る特許に対して、特許異議申立人である山田芳男(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。
よって、本件特許異議の申立てに係る審理対象は、全ての請求項に係る特許であり、審理対象外の請求項は存しない。

以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 2月 8日付け 取消理由通知
同年 3月15日 上申書(特許権者)
同年 4月 6日付け 通知書(特許権者あて)
同年 5月13日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 6月10日付け 通知書(申立人あて)
令和4年3月15日提出の上申書は、特許権者より指定期間の延長を求めるものであり、同年4月6日付け通知書において、指定期間の延長を認めた。
なお、令和4年6月10日付け通知書に対し、申立人からの応答はなかった。

2 証拠方法
(1)申立人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2020/203834号(日本語特許出願であるPCT/JP2020/014181号の国際公開)
甲第2号証:令和3年11月11日に山田芳男(申立人)が作成した実験成績報告書
(以下、甲第1号証及び甲第2号証を、「甲1」及び「甲2」という。)

(2)特許権者が意見書とともに提出した証拠方法は以下のとおりである。
乙第1号証:令和4年5月10日に特許権者である三菱瓦斯化学株式会社の熊沢 優音が作成した実験成績報告書
(以下、乙第1号証を、「乙1」という。)

第2 訂正の請求について
特許権者は、取消理由通知書において指定した期間に加えて令和4年4月6日付け通知書において指定期間の延長を認めた期間内である令和4年5月13日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり請求項2〜6について以下の訂正をすることを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書等」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項2において、
「前記光硬化開始剤(C)が、下記式(2)で表される化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。」と記載されているのを、
「下記式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、
シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)と、
光硬化開始剤(C)と、を含み、
前記光硬化開始剤(C)が、下記式(2)で表される化合物を含み、
前記ビスマレイミド化合物(A)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、5〜99.4質量部であり、
前記樹脂又は化合物(B)の合計の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であり、
前記光硬化開始剤(C)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である、
樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。)。」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する)。

(2)一群の請求項
訂正前の請求項2〜6について、請求項3〜6は訂正事項1により訂正された請求項2を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって請求項3〜6の記載が、訂正される訂正前の請求項2に連動して訂正されるから、訂正前の請求項2〜6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 判断
(1)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2において、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めるとともに、さらに、上記(A)〜(C)の各成分の含有量を特定するものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1のうち、訂正前の請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めた部分は、明らかに本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項1のうち、上記(A)〜(C)の各成分の含有量を特定した部分について検討するに、本件明細書等の【0050】には「本実施形態の樹脂組成物において、ビスマレイミド化合物(A)の含有量は、・・・ビスマレイミド化合物(A)、後述の樹脂又は化合物(B)及び後述の光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、5〜99.4質量部であることが好ましく」、【0061】には「樹脂組成物において、樹脂又は化合物(B)の合計の含有量は、・・・ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び後述の光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましく」、【0178】には「樹脂組成物において、光硬化開始剤(C)の含有量は、・・・ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく」と記載されていることからみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり新規事項の追加に当たらず、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(3)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1〜6について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2〜6〕について訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1〜6に係る発明を、項番順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。また、本件特許の明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、 シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)と、 光硬化開始剤(C)と、を含む、樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。)。

【請求項2】
下記式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、
シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)と、
光硬化開始剤(C)と、を含み、
前記光硬化開始剤(C)が、下記式(2)で表される化合物を含み、
前記ビスマレイミド化合物(A)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、5〜99.4質量部であり、
前記樹脂又は化合物(B)の合計の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であり、
前記光硬化開始剤(C)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である、
樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。)。
【化2】

(式(2)中、R4は、各々独立に、下記式(3)で表される置換基又はフェニル基を表す。)。
【化3】

(式(3)中、−*は結合手を示し、R5は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。)。

【請求項3】
支持体と、
前記支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、
樹脂シート。

【請求項4】
前記樹脂層の厚さが1〜50μmである、請求項3に記載の樹脂シート。

【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、
を有し、
前記絶縁層が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、多層プリント配線板。

【請求項6】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、半導体装置。」

第4 異議申立ての理由と当審が通知した取消理由
1 異議申立ての理由(以下、「申立理由」という。)の概要
(1)申立理由1(拡大先願)
本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許の優先日前の日本語特許出願(PCT/JP2020/014181号、甲1)であって、本件出願後に国際公開(国際公開第2020/203834号)がされたものの国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、日本語特許出願に係る上記の発明をした者が本件出願の発明者と同一の者ではなく、また本件出願の時にその出願人と特許出願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第184条の13で読み替えられた同法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって、請求項1〜6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の請求項1〜6の記載は、概略、下記の点で記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、それらの請求項に係る発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

甲2に記載の追加実験4〜9では、請求項1、2に係る発明に含まれる樹脂組成物を用いたもののポストベーク工程で「シワ」が発生しガラス転移温度及び弾性率を測定できないという結果であったことからみて、請求項1、2に係る発明は本件特許の発明の課題を解決できないものを含んでいる。
よって、請求項1、2に係る発明、及び請求項1又は2を引用する請求項3〜6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 当審が通知した取消理由
当審が通知した令和4年2月8日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(サポート要件)
本件訂正前の請求項1〜6の記載は、概略、下記の点で記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、それらの請求項に係る発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

甲2に記載の追加実験4〜9の結果からみて、請求項1〜6に係る発明のうち、樹脂又は化合物(B)について、エポキシ樹脂を用いた場合の含有量次第では本件特許の発明の課題を解決できないものであるし、少なくとも甲2に記載の化合物(B−2)〜(B−4)、(B−6)及びそれらに類する化学構造を有する化合物を用いた場合、発明の課題を解決できない蓋然性が極めて高い。

第5 当審の判断
当審は、取消理由1、申立理由1及び2のいずれの理由によっても、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことができないと判断する。理由は以下のとおりである。

1 当審が通知した取消理由について
当審で通知した取消理由である取消理由1について検討する。
また、申立理由2は、甲2の記載内容を根拠としたサポート要件違反の理由である点で取消理由1と共通するので、以下に併せて検討する。

(1)取消理由1及び申立理由2の概要
取消理由1の概要は上記「第4 2(1)」、申立理由2の概要は上記「第4 1(2)」で述べたとおりである。

(2)サポート要件の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。

(3)本件明細書に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている

「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の(メタ)アクリレート系樹脂を用いた硬化物では十分な物性が得られず、優れた保護膜、及び層間絶縁層の形成に限界がある。
・・・
【0013】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、多層プリント配線板に用いた際に、優れた光硬化性を有し、耐熱性、熱安定性及び絶縁信頼性をバランスよく優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物、それを用いた樹脂シート、多層プリント配線板、並びに半導体装置を提供することにある。」

「【0031】
通常、マレイミド化合物は光透過性が悪いため、樹脂組成物がマレイミド化合物を含むと、樹脂組成物中に分散している光硬化開始剤まで十分に光が届かず、光硬化開始剤がラジカルを発生し難い。そのため、一般的にマレイミド化合物の光ラジカル反応は進行し難く、仮にマレイミド単体のラジカル重合や二量化反応が進行しても、その反応性は非常に低い。しかし、ビスマレイミド化合物(A)は、式(1)で表される構成単位を含むので、光透過性に非常に優れる。そのため、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、ビスマレイミド化合物(A)は、後述の樹脂又は化合物(B)、及び光硬化開始剤(C)と共に、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させることができる。
・・・
【0034】
ビスマレイミド化合物(A)は、前記したように光透過性に優れるため、例えば、波長365nmを含む活性エネルギー線、又は405nmを含む活性エネルギー線を用いた場合でも、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、ビスマレイミド化合物(A)が多く配合されている組成物においても光硬化が可能となる。それゆえ、本実施形態の樹脂組成物は、光硬化性に優れる。
一方、ビスマレイミド化合物(A)は、光硬化しても剛直なイミド環を有することから、高い耐熱性及び熱安定性を有するが、ビスマレイミド化合物を光硬化した硬化物を、露光工程終了後、又は現像工程終了後に行うポストベーク工程などにおいて加熱により更に硬化する際にシワが生じる。そのため、ビスマレイミド化合物(A)を単独重合して得られる硬化物は、多層プリント配線板の用途には不適である。しかし、ビスマレイミド化合物(A)を、後述の樹脂又は化合物(B)と光硬化開始剤(C)と共に配合することで、優れた光硬化性及び絶縁信頼性を有しながら、より高い耐熱性及び熱安定性を有する。それゆえ、本実施形態の樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、熱安定性、及び絶縁信頼性に優れ、本実施形態によれば、多層プリント配線板及び半導体装置における、保護膜、及び絶縁層を好適に形成することができる。」

「【0058】
〔樹脂又は化合物(B)〕
本実施形態の樹脂組成物には、ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及びエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)(成分(B)とも称す)を含む。これらの樹脂又は化合物(B)は、得られる硬化物の物性及び用途に応じて、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態において、ビスマレイミド化合物(A)及び後述の光硬化開始剤と共に、樹脂又は化合物(B)を用いると、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れる。この理由は定かではないが、本発明者らは、ビスマレイミド化合物(A)が有する光硬化性及び絶縁信頼性と、樹脂又は化合物(B)が有する耐熱性及び熱安定性とを両立することが可能であるためと推定している。また、得られる硬化物には、ビスマレイミド化合物(A)と、樹脂又は化合物(B)とが有する種々の物性を付与することも可能となる。ビスマレイミド化合物(A)は、光透過性に非常に優れるため、樹脂又は化合物(B)を用いても、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させることができる。そのため、例えば、波長365nmを含む活性エネルギー線、又は405nmを含む活性エネルギー線を用いても、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、樹脂又は化合物(B)が配合されている組成物においても光硬化が可能となる。
・・・
【0061】
樹脂組成物において、樹脂又は化合物(B)の合計の含有量は、ビスマレイミド化合物を主成分とした硬化物を得ることが可能となり、光硬化性を向上させるという観点から、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び後述の光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましく、1〜84質量部であることがより好ましく、5〜76質量部であることが更に好ましい。
・・・
【0137】
(エポキシ樹脂)
樹脂組成物には、エポキシ樹脂(B4)(成分(B4)とも称す)を用いることができる。以下にエポキシ樹脂(B4)について述べる。
エポキシ樹脂(B4)としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0138】
エポキシ樹脂としては、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば、式(23)で表されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000FH(商品名)、式(23)中、n12は約4である)、及び式(24)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製HP−4710(商品名))が挙げられる。
【0139】
【化25】

・・・
【0142】
樹脂組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、エポキシ樹脂(B4)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
・・・
【0146】
(エチレン性不飽和基を有する化合物)
樹脂組成物には、エチレン性不飽和基を有する化合物(B6)(成分(B6)とも称す)を用いることができる。以下にエチレン性不飽和基を有する化合物(B6)について述べる。
エチレン性不飽和基を有する化合物(B6)としては、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等を有する化合物が挙げられる。
・・・
【0148】
また、この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類;これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等も挙げられる。
・・・
【0153】
エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのカルボキシレート化合物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート等、及びこれらの酸無水物変性エポキシアクリレート等が挙げられる。
・・・
【0155】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、市販品を利用することができ、例えば、式(25)で表されるKAYARADZCA(登録商標)−601H(商品名、日本化薬(株)製)、TrisP−PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)ZCR−6007H(商品名)、下記の式(26)で表される化合物と、式(27)〜(30)のいずれか1種以上の化合物とを含む混合物)、KAYARAD(登録商標)ZCR−6001H(商品名)、KAYARAD(登録商標)ZCR−6002H(商品名)、及びKAYARAD(登録商標)ZCR−6006H(商品名)が挙げられる。
・・・
【0157】
【化28】

【0158】
【化29】

【0159】
【化30】

【0160】
【化31】

【0161】
【化32】



「【0164】
〔光硬化開始剤(C)〕
本実施形態に係る樹脂組成物には、光硬化開始剤(C)(成分(C)とも称す)を含む。光硬化開始剤(C)は、一般に光硬化性樹脂組成物で用いられる分野で公知のものを使用することができる。光硬化開始剤(C)は、ビスマレイミド化合物(A)、及び樹脂又は化合物(B)と共に、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させるために用いられる。」

「【0190】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)、光硬化開始剤(C)と、必要に応じて、充填材(D)、その他の樹脂、その他の化合物、及び添加剤等を適宜混合することにより調製される。樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。なお、ワニスの調製に使用する有機溶媒は、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0191】
樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記した各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。樹脂組成物は、光硬化性に優れ、樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、熱安定性、及び絶縁信頼性に優れる。
【0192】
樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、樹脂組成物における各成分の分散性を向上させることができる。攪拌、混合、混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザー等の分散を目的とした攪拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混合を目的とした装置、並びに、公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。」

「【0224】
〔実施例1〕
(樹脂組成物及び樹脂シートの作製)
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)を47.5質量部と、樹脂又は化合物(B)として、シアン酸エステル化合物(B2)である合成例1で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)を47.5質量部と、光硬化開始剤(C)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)819(商品名))を5質量部と、硬化促進剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製)5質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)150質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニス(樹脂組成物の溶液)を得た。
このワニスを厚さ38μmのPETフィルム(ユニチカ(株)製ユニピール(登録商標)TR1−38、(商品名))上に自動塗工装置(テスター産業(株)製PI−1210(商品名))を用いて塗布し、90℃で5分間加熱乾燥して、PETフィルムを支持体とし樹脂層の厚さが30μmである樹脂シートを得た。
【0225】
(評価用樹脂の作製)
得られた樹脂シートの樹脂面を張り合わせ、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製)を用いて、30秒間真空引き(5.0hPa以下)を行った後、圧力10kgf/cm2、温度70℃で30秒間の積層成形を行った。さらに圧力7kgf/cm2、温度70℃で60秒間の積層成形を行うことで、両面に支持体を有する評価用樹脂を得た。
【0226】
〔実施例2〕
樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部の代わりに、ベンゾオキサジン化合物(B3)であるP−d型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)製、3,3’−(メチレン−1,4−ジフェニレン)ビス(3,4−ジヒドロ−2H−1,3−ベンゾオキサジン))47.5質量部を用い、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0227】
〔実施例3〕
樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部の代わりに、エチレン性不飽和基を有する化合物(B6)であるTrisP−PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)ZCR−6007H(商品名))47.5質量部を用い、硬化促進剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)5質量部の代わりに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、富士フィルム和光純薬(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0228】
〔実施例4〕
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)を94質量部と、樹脂又は化合物(B)として、エポキシ樹脂(B4)である式(23)で表されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000FH(商品名)1質量部と、光硬化開始剤(C)として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)819(商品名))を5質量部とを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0229】
〔実施例5〕
樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部の代わりに、カルボジイミド化合物(B5)であるカルボジライトB−01(商品名、日清紡ケミカル(株)製)47.5質量部を用い、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0230】
〔実施例6〕
光硬化開始剤(C)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)819(商品名))5質量部の代わりに、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Omnirad(登録商標)369(商品名))5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0231】
〔実施例7〕
光硬化開始剤(C)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)819(商品名))5質量部の代わりに、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Omnirad(登録商標)907(商品名))5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0232】
〔実施例8〕
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)45.5質量部を94.9質量部に変更し、樹脂又は化合物として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部を0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0233】
〔実施例9〕
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)45.5質量部を94質量部に変更し、樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部を1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0234】
〔実施例10〕
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)45.5質量部を85.5質量部に変更し、樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部を9.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。
【0235】
〔実施例11〕
ビスマレイミド化合物(A)として、MIZ−001(商品名)45.5質量部を19質量部に変更し、樹脂又は化合物(B)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)47.5質量部を76質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用樹脂を得た。」

「【0242】
〔物性測定評価〕
実施例及び比較例で得られた評価用樹脂を以下の方法により測定し、評価した。それらの結果を表2、及び3に示す。
【0243】
<光硬化性試験>
波長200〜600nmを含む活性エネルギー線を照射可能な光源(ユーヴィックス(株)製Omnicure(登録商標)S2000(商品名))を付属したフォトDSC(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製DSC−2500(商品名))を用い、得られた評価用樹脂に、波長200〜600nmを含む活性エネルギー線を、照度30mW、露光時間3.5分間照射して、横軸が時間(sec)、縦軸がヒートフロー(mW)のグラフを得た。
また、光源として、波長365nm(i線)フィルター、又は波長405nm(h線)フィルターを用いて、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線、又は波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いたこと以外は、前記と同様の条件により、横軸が時間(sec)、縦軸がヒートフロー(mW)のグラフをそれぞれ得た。
それぞれのグラフにおいて、グラフの終点から、水平に線を引いた際のピーク面積をエンタルピー(J/g)とした。硬化性は、以下の基準で評価した。
AA:エンタルピーが20(J/g)以上であった。
BB:エンタルピーが1(J/g)以上、20(J/g)未満であった。
CC:エンタルピーが1(J/g)未満であった。
なお、エンタルピーが1(J/g)以上とは、所定の波長における露光により、樹脂の硬化が十分に進行することを意味する。
【0244】
<耐熱性(ガラス転移温度)試験>
前記の光硬化性試験にて硬化した評価用樹脂に対して、更に、180℃、及び120分間加熱処理するポストベーク工程を施した後、両面の支持体をはがし取って評価用硬化物とした。
この評価用硬化物をDMA装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMAQ800(商品名))を用いて10℃/分で昇温し、LossModulusのピーク位置をガラス転移温度(Tg、℃)とした。
なお、比較例1、及び3〜6にて得られた評価用樹脂においては、ポストベーク工程において「シワ」が発生した。耐熱性の測定においては、平滑な試料が必要となるため、これらの試料については、測定できなかった。比較例2にて得られた評価用樹脂は、光硬化しなかったが、その後のポストベーク工程において熱硬化し、この熱硬化により得られた硬化物について耐熱性試験を行った。
【0245】
<弾性率>
前記の光硬化性試験にて硬化した評価用樹脂に対して、更に、180℃、及び120分間加熱処理するポストベーク工程を施した後、両面の支持体をはがし取って評価用硬化物とした。
この評価用硬化物をDMA装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMAQ800(商品名))を用いて10℃/分で昇温し、弾性率(MPa)を測定した。
なお、比較例1、及び3〜6にて得られた評価用樹脂においては、ポストベーク工程において「シワ」が発生した。弾性率の測定においては、平滑な試料が必要となるため、これらの試料については、測定できなかった。比較例2にて得られた評価用樹脂は、光硬化しなかったが、その後のポストベーク工程において熱硬化し、この熱硬化により得られた硬化物について弾性率の測定を行った。
【0246】
<熱安定性試験>
前記の光硬化性試験にて硬化した評価用樹脂に対して、更に、180℃、及び120分間加熱処理するポストベーク工程を施した後、両面の支持体をはがし取って評価用硬化物とした。
この評価用硬化物について、示差熱質量同時測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製TG−DTA6200(商品名))にて、測定開始温度(20℃)、昇温速度(10℃/min)、目標温度(500℃)にて、窒素雰囲気下にて質量を測定した。質量減少率が5%となった温度を熱安定性(℃)として評価した。
【0247】
【表2】

【0248】
【表3】



(4)甲2及び乙1に記載された事項
ア 甲2
甲2の1〜5頁には、以下の事項が記載されている。








イ 乙1
乙1の1〜14頁には、以下の事項が記載されている。


















(5)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0016】によると、「多層プリント配線板に用いた際に、優れた光硬化性を有し、耐熱性、熱安定性及び絶縁信頼性をバランスよく優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物、それを用いた樹脂シート、多層プリント配線板、並びに半導体装置を提供すること」であると認められる。

(6)本件発明1について
a 本件明細書の記載に基づくサポート要件の判断
本件発明1は、特定構造を有するビスマレイミド化合物(A)と、特定の樹脂又は化合物(B)と、光硬化開始剤(C)とを有する樹脂組成物であり、これらの発明特定事項と上記課題との関係について発明の詳細な説明の記載をみていく。
まず、【0031】には、「ビスマレイミド化合物(A)は、式(1)で表される構成単位を含むので、光透過性に非常に優れる。そのため、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、光硬化させることができる」ことが記載され、【0034】には「ビスマレイミド化合物(A)は、前記したように光透過性に優れるため、・・・光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、ビスマレイミド化合物(A)が多く配合されている組成物においても光硬化が可能となる。それゆえ、本実施形態の樹脂組成物は、光硬化性に優れる。」ことが記載され、当該ビスマレイミド化合物(A)が、特定の構成単位を含むことに起因して光硬化性に寄与することが理解でき、【0058】には「ビスマレイミド化合物(A)及び後述の光硬化開始剤と共に、樹脂又は化合物(B)を用いると、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れる。この理由は定かではないが、本発明者らは、ビスマレイミド化合物(A)が有する光硬化性及び絶縁信頼性と、樹脂又は化合物(B)が有する耐熱性及び熱安定性とを両立することが可能であるためと推定している。」と記載され、当該樹脂又は化合物(B)が耐熱性及び熱安定性に寄与することが理解でき、【0164】には「光硬化開始剤(C)は、・・・種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させるために用いられる」と記載され、光硬化開始剤(C)が光硬化のために用いられることが理解できる。
さらに、【0034】には、「ビスマレイミド化合物(A)は、光硬化しても剛直なイミド環を有することから、高い耐熱性及び熱安定性を有するが、ビスマレイミド化合物を光硬化した硬化物を・・・加熱により更に硬化する際にシワが生じる。そのため、ビスマレイミド化合物(A)を単独重合して得られる硬化物は、多層プリント配線板の用途には不適である。しかし、ビスマレイミド化合物(A)を、後述の樹脂又は化合物(B)と光硬化開始剤(C)と共に配合することで、優れた光硬化性及び絶縁信頼性を有しながら、より高い耐熱性及び熱安定性を有する。」と記載され、ビスマレイミド化合物(A)を、樹脂又は化合物(B)と光硬化開始剤(C)と共に配合することによって、シワが発生することなく、優れた光硬化性及び絶縁信頼性とより高い耐熱性及び熱安定性を達成できるものと理解できる。
そして、実施例及び比較例の記載をみるに、本件発明1の具体的態様である実施例1〜11では、いずれも優れた光硬化性を示し、硬化物についてガラス転移温度等の物性も一定以上の値が達成できることが確認されている。それに対し、表3に示された比較例1、3〜6はビスマレイミド化合物(A)又は樹脂又は化合物(B)の一方を有しない樹脂組成物であるところ、その硬化物のポストベーク後に「シワ」が発生しており(【0244】〜【0245】)、また、光硬化開始剤(C)を含まない比較例2は光硬化性に劣り、いずれも上記課題を解決できないことが確認できる。
以上のことから、本件発明1は、特定構造を有するビスマレイミド化合物(A)と、特定の樹脂又は化合物(B)と、光硬化開始剤(C)という発明特定事項によって、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載されているといえる。

b 甲2を根拠とするサポート要件違反の再検討
当審で通知した取消理由1、及び、申立理由2は、甲2の追加実験4〜9を根拠とするサポート要件違反の理由であるが、特許権者より提出された意見書及び乙1に記載の追加実験の内容を踏まえて改めて検討すると、甲2の追加実験4〜9はサポート要件違反の根拠として採用できない。
そして、その検討内容については、以下に示すとおりである。

(a)甲2記載の追加実験について
申立人は、特許異議申立書の第18頁において「甲第2号証には、本件特許発明1及び2の技術的範囲に含まれる樹脂組成物を用いて樹脂シートを製造し、得られた樹脂シートを用いて光硬化性、耐熱性及び弾性率を評価し、本件特許発明1及び2の技術的範囲に含まれる樹脂組成物のすべてが本件特許発明の課題を解決できるわけではないことを確認するために実施した実験の結果が記載されている。」と主張している。
甲2には、ビスマレイミド化合物(A)と、化合物(B−1)〜(B−6)のいずれかと、光硬化開始剤(C)とを含む樹脂組成物を用いて樹脂シートを作製し、光硬化性試験、耐熱性(ガラス転移温度)試験、弾性率測定を実施した追加実験1〜9が記載されている(1〜4頁、特に「2.実験内容」及び表1参照)。そして、4頁の表1では、追加実験1〜2が本件明細書の実施例3〜4の再現、追加実験3が同じく比較例6の再現であることが示され、一方、表1及び5〜7行の記載によれば、追加実験4〜9について、ポストベーク工程においてシワ発生等により平滑な試料を得られず、耐熱性及び弾性率が測定不可とされている。

ここで、追加実験1,2,4〜9において共通して用いられたビスマレイミド化合物(A)及び光硬化開始剤(C)は、本件明細書の実施例と同一の市販品であり、追加実験1で用いられた化合物(B−1)は実施例3で用いられたエチレン性不飽和基を有する化合物(B6)と同一の市販品である。また、他の追加実験で用いられた化合物(B−2)〜(B−4)は市販のエポキシアクリレート化合物であって、本件明細書の【0148】、【0152】にエチレン性化合物の一種としてエポキシ(メタ)アクリレート類が例示されていることからみて、本件発明1の樹脂又は化合物(B)のうちエチレン性化合物に相当するといえるし、化合物(B−5)〜(B−6)は市販のエポキシ樹脂であり、本件明細書の【0137】〜【0138】においてエポキシ樹脂として公知の種々のものが使用可能であり市販品も利用できるとの記載からみて、本件発明1の樹脂又は化合物(B)のうちエポキシ樹脂に相当するといえる。
そして、甲2の2頁〜3頁の「2−2」〜「2−4」には、追加実験1〜9における樹脂組成物、樹脂シート及び評価用樹脂の作製手順、光硬化性試験における露光による光硬化、並びに、耐熱性(ガラス転移温度)試験及び弾性率測定の際のポストベーク工程及び得られた硬化物の物性測定の手順が記載されており、そのうち樹脂組成物の作製以外の手順・方法は、本件明細書の【0224】〜【0225】、【0243】〜【0245】に記載の方法と同様である。
ただし、最初に樹脂組成物を作製する際の手順は、「上記の各成分を下表1に記載の割合で混合し、追加実験1〜9のワニス(樹脂組成物の溶液)を得た。」(2頁下から3行目〜下から2行目)とだけ記載されている。

(b)乙1記載の追加実験について
乙1には、ビスマレイミド化合物(A)と、甲2で用いられたものと同じ化合物(B−1)〜(B−3)、(B−5)〜(B−6)のいずれかと、光硬化開始剤(C)とを含む樹脂組成物を用いて樹脂シートを作製し、光硬化性試験、耐熱性(ガラス転移温度)試験、弾性率測定を実施した追加実験A〜Gが記載されている(1〜4頁、特に「3.実験内容」及び表A参照)。そして、4頁の表Aでは、追加実験1が甲2の追加実験1に対応し、本件明細書の実施例3の再現であること、追加実験2が同じく比較例1の再現であることが示されるとともに、追加実験C〜Gについて、甲2の追加実験4〜5、7〜9に対応することが示されている。さらに、7〜12頁の「3−7」にはデジタルカメラで撮影された追加実験A〜Gのポストベーク後の硬化物の画像が掲載されており、追加実験A、C〜Gの画像は「シワ」のない平滑な硬化物であり、追加実験Bの画像は「シワ」が多く平滑でない硬化物であることが、それぞれ見て取れる。

ここで、乙1の1〜2頁の「3−1」の記載と甲2の1〜2頁の「2−1」の記載とを照らし合わせると、乙1の追加実験A〜Gに用いられたビスマレイミド化合物(A)、化合物(B−1)〜(B−3)、(B−5)〜(B−6)及び光硬化開始剤(C)は、それぞれ、甲2の追加実験で用いられたビスマレイミド化合物(A)、化合物(B−1)〜(B−3)、(B−5)〜(B−6)及び光硬化開始剤(C)と同一の市販品又は同一の製造方法で得られたものであるから、両者は同じ物質であるといえる。そして、上記(a)での検討と同様に本件明細書の記載を踏まえると、乙1のビスマレイミド化合物(A)、化合物(B−1)及び光硬化開始剤(C)は、それぞれ、本件明細書の実施例で使用したものと同一であり、乙1の化合物(B−2)〜(B−3)、(B−5)〜(B−6)は本件発明1の樹脂又は化合物(B)のうちエチレン性化合物、エポキシ樹脂に相当するといえる。
そして、乙1の2頁〜4頁の「3−2」〜「3−6」に、追加実験A〜Gにおける樹脂組成物、樹脂シート及び評価用樹脂の作製手順、光硬化性試験における露光による光硬化、並びに、耐熱性(ガラス転移温度)試験及び弾性率測定の際のポストベーク工程及び得られた硬化物の物性測定の手順が記載されている。特に、樹脂組成物の作製においても「超音波ホモジナイザーで撹拌して、追加実験A〜Gのワニス(樹脂組成物の溶液)をそれぞれ得た。」ことが明記されている。

また、乙1と甲2とで記載された各成分が同一であることから、乙1の表Aに記載されたとおり、乙1の追加実験A、C〜Gの樹脂組成物が甲2の追加実験1、4〜5、7〜9と同じ成分からなるという対応関係が理解できる。

(c)甲2の追加実験4〜5、7〜9と乙1の追加実験C〜Gの評価結果に対する判断
上記(a)、(b)で検討したとおり、甲2の追加実験4〜5、7〜9と乙1の追加実験C〜Gとはそれぞれ同一成分からなる樹脂組成物であるところ、その評価結果では、前者ではポストベーク後の硬化物に「シワ」が発生しているのに対し、後者では「シワ」は発生していない、という異なる結果となっている。
そこで、異なる結果となった原因について検討するに、本件明細書の【0224】には、樹脂組成物の作製する際の手順について、「超音波ホモジナイザーで攪拌してワニス(樹脂組成物の溶液)を得た。」と記載されているのに対し、甲2では樹脂組成物の作製において「超音波ホモジナイザーで攪拌」したことが示されていない。一方、乙1については、樹脂組成物の作製から硬化物の測定に至るまで、本件明細書の【0224】〜【0225】、【0243】〜【0245】(本d)に記載の方法と同様であるといえる。
この点に関して特許権者は意見書の7〜8頁において、「本件特許の実施例・・・にて記載しているように、各成分・・・を混合し、・・・有機溶媒で希釈した後、超音波ホモジナイザーで撹拌して得られるワニス(樹脂組成物の溶液)を用いれば、得られるワニスは液分離やはじきが発生し難くなるため、得られる硬化物は、ポストベーク工程において「シワ」が発生せず、平滑な面を有することになります。」及び「甲2では、単なる混合物をワニスとして用いたので、相溶性が悪く、得られた硬化物は海島構造となるなどして、平滑な膜面が得られなかったと推察されます。」と説明している。
さらに、本件明細書の記載も確認すると、【0190】〜【0192】には樹脂組成物の製造方法について記載されているところ、【0190】に「樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記した各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する」と記載され、【0191】に「樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、樹脂組成物における各成分の分散性を向上させることができる。」と記載され、具体的な撹拌装置として「超音波ホモジナイザー」が記載されている(なお、上記段落の摘記における下線は当審が付与した)。
そうすると、甲2の追加実験4〜5、7〜9においては、超音波ホモジナイザーによる攪拌をせずに単に混合しただけで樹脂組成物を作製したため、不均一あるいは不十分な溶解・分散状態となってしまい、それがポストベーク後の硬化物の「シワ」の発生を招き、その一方、乙1の追加実験C〜Gにおいては、超音波ホモジナイザーによる撹拌をおこなって適切に樹脂組成物を作製し、その結果、ポストベーク後の硬化物に「シワ」が発生しなかった、という特許権者の解釈に一定の合理性があるといえる。
さらに、上記の点を説明した特許権者の意見書副本を、令和4年6月10日付け通知書に添付して申立人に送付したところ、申立人からは何らの反論もなされなかった。

以上のことから、本件発明1において化合物(B−2)〜(B−3)、(B−5)〜(B−6)を用いた場合の樹脂組成物の評価結果としては、適切に樹脂組成物を作製した乙1の追加実験C〜Gが妥当であり、甲2の追加実験4〜5、7〜9の評価結果は樹脂組成物の作製が不適切である蓋然性が高いから本件発明1のサポート要件の充足性を判断する上で採用できるものではない。

(d)甲2の追加実験6の評価結果に対する判断
甲2の追加実験6は、化合物(B−4)を樹脂又は化合物(B)として用いた樹脂組成物の実験であり、それに対して、乙1には、同一成分からなる樹脂組成物の実験は記載されていない。
しかしながら、甲2の追加実験6も、追加実験4〜5、7〜9と同様、樹脂組成物の作製において「超音波ホモジナイザーで攪拌」したことが示されていないから、上記「(c)」の検討を踏まえると、同様に、樹脂組成物の不均一あるいは不十分な溶解・分散状態に起因して、ポストベーク後の硬化物の「シワ」が発生したと解釈することが自然である。
そして、特許権者は意見書の14頁において「化合物(B−4)及び(B−4)に類する化学構造を有する化合物を用いた場合であっても、各成分を混合し、・・・有機溶媒で希釈した後、超音波ホモジナイザーで撹拌して得られるワニス(樹脂組成物の溶液)を用いれば、化合物(B−2)及び(B−3)と同様に、得られるワニスは液分離やハジキが発生し難くなり、得られる硬化物は、ポストベーク工程において「シワ」が発生せず、平滑な面を有すると推定しております。」と主張しているところ、当該主張は上記解釈とも整合するものであり、一定の合理性があるというべきである。
さらに、上記「(c)」でも述べたとおり、当該主張が記載された特許権者の意見書副本の送付に対して、申立人からは何らの反論もなされなかった。

以上のことから、本件発明1において化合物(B−4)を用いた場合の樹脂組成物の評価結果として、甲2の追加実験6の評価結果は樹脂組成物の作製が不適切である蓋然性が高いから、本件発明1のサポート要件の充足性を判断する上で採用できるものではない。

(7)本件発明2〜6について
本件発明2は、上記「第2 2」で示したとおり、請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めてさらに限定した発明であり、本件発明3〜6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明である。すなわち、本件発明2〜6は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備しているのであるから、上記「(6)」と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されているといえる。

(8)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由2は理由が無い。

2 当審が取消理由通知で採用しなかった申立理由について
申立理由2については取消理由1と併せて既に上記「1」で検討済みであるので、ここでは申立理由1について検討する。

(1)先願明細書等に記載された事項及び記載された発明
先願明細書等には以下の事項が記載されている。なお、先願明細書等の記載内容は国際公開された甲1に基づいて摘記した。

「[0060] 前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物(C)と、前記マレイン酸無水物とを反応させる方法、又は、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記有機ジアミン(B)と、前記脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物(C)と、前記マレイン酸無水物とを反応させる方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。例えば、先ず、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記テトラカルボン酸二無水物(C)と、必要に応じて前記有機ジアミン(B)とを、トルエン、キシレン、テトラリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒等の溶媒中で室温(23℃程度)において30〜60分間攪拌することでポリアミド酸を合成し、次いで、得られたポリアミド酸にマレイン酸無水物を加えて室温(23℃程度)において30〜60分間攪拌することで両末端にマレイン酸が付加したポリアミド酸を合成する。このポリアミド酸にトルエン等の水と共沸する溶媒をさらに加え、イミド化に伴って生成する水を除去しながら温度100〜160℃において3〜6時間還流することで目的とするビスマレイミド化合物を得ることができる。また、このような方法においては、ピリジン、メタンスルホン酸等の触媒をさらに添加してもよい。」

「[0079] 本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、重合性化合物を含有していてもよい。前記重合性化合物とは、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等の重合性官能基を有する化合物を指す。前記重合性化合物は、前記重合性官能基を複数有する化合物であってもよい。前記重合性化合物を含有せしめることにより、感光性樹脂組成物の光に対する感度をより高めることができる。前記重合性化合物としては、光重合による架橋反応をより起こしやすいという観点から、アクリレートが好ましい。前記アクリレートとしては、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、ビス(アクリロキシエトキシ)テトラブロモビスフェノールA、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
[0080] また、前記重合性化合物を含有せしめる場合、その含有量としては、前記ビスマレイミド化合物(I)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。前記重合性化合物の含有量が30質量部を超える場合には、重合性化合物単独での光重合による架橋反応が進行し、得られる硬化物の引張弾性率が高くなる傾向にある。また、前記重合性化合物はラジカルに対して反応性が高いため、本発明において好適に用いられるオキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する光重合開始剤のように反応性の高い光重合開始剤を用いた場合には、反応の制御をすることが困難になる傾向にある。なお、一般に、重合性化合物を加えると得られる硬化物の引張弾性率が高くなり、柔軟性が損なわれる傾向にあるが、本発明に係るビスマレイミド化合物(I)は重合性化合物を加えても得られる硬化物において引張弾性率が高くなりにくく、柔軟性が損なわれにくい。これは、本発明に係るビスマレイミド化合物(I)が両末端にのみ反応性のマレイミド基を有しており、分子鎖中に架橋性の反応基を持たないためと本発明者らは推察する。また、本発明の感光性樹脂組成物としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、さらにレベリング剤、消泡剤等を含有していてもよい。」

「[0097] 合成例2(I−2)
フッ素樹脂コーティングされた撹拌バーを装備した500mlの丸底フラスコに、110gのトルエンと36gのN−メチルピロリドンを投入した。次にPRIAMINE 1074(クローダジャパン株式会社製)90.5g(0.17mol)を加え、ついで無水メタンスルホン酸16.3g(0.17mol)をゆっくりと加え、塩を形成した。ほぼ10分間撹拌して混合し、ついで1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(18.9g、0.08mol)を、撹拌された混合物にゆっくり加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付けた。混合物を6時間熱して還流し、アミン末端のジイミドを形成した。この縮合からの生成水の理論量は、この時までに得られた。反応混合物は、室温以下に冷却され、無水マレイン酸19.9g(0.20mol)がフラスコに加えられた。混合物は、さらに8時間還流され、期待された量の生成水を得た。室温に冷却された後、さらにトルエン200mlがフラスコに加えられた。次に、希釈された有機層を水(100ml×3回)で洗浄し、塩や未反応の原料を除去した。その後、溶剤を真空下で除去し、琥珀色ワックス状のビスマレイミド化合物110g(収率92%、Mw=3,000)を得た(I−2)。
・・・
[0106] 本実施例で用いた材料について示す。
[(I)成分;ビスマレイミド化合物]
I:合成例(I−1)〜(I−5)で示されるビスマレイミド化合物及び比較合成例1〜3で示されるビスマレイミド化合物、ポリイミド化合物
[0107] [(II)成分;光重合開始剤]
II−1:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−02」)
II−2:2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、「DETX−S」)
[0108] (実施例1〜5及び比較例1〜3)
表1に示した配合量(質量部)の(I)〜(II)成分、溶剤としてシクロペンタノン50質量部を配合し、実施例1〜5及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を調製した。
[0109] <感光性樹脂組成物の評価>
実施例1〜5及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物について、以下に示す評価を行った。その結果を表1にまとめて示した。
[0110] [表1]

*1:3000mJ/cm2では硬化膜が得られなかった。
*2:硬化膜を得ることができなかったため未測定。」

「[請求項1] ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物(C)と、マレイン酸無水物とを反応させて得られた、環状イミド結合を有するビスマレイミド化合物(I)。
・・・
[請求項3] 前記ビスマレイミド化合物(I)が、下記一般式(1):
[化1]

[式(1)中、R1は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を示し、R2は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)を示し、R3は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)、及びダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R4及びR5は、それぞれ独立に単環式または縮合多環式の脂環構造を有する炭素数4〜40の4価の有機基、単環式の脂環構造を有する有機基が直接または架橋構造を介して相互に連結された炭素数8〜40の4価の有機基、および脂環構造と芳香環を両方有する半脂環構造を有する炭素数8〜40の4価の有機基から選択される1以上の有機基を示す。mは1〜30の整数であり、nは0〜30の整数であり、R4及びR5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表わされる請求項1又は2に記載のビスマレイミド化合物(I)。
・・・
[請求項15] 請求項1〜10の何れか一項に記載のビスマレイミド化合物(I)と光重合開始剤(II)を含む感光性樹脂組成物であって、光重合開始剤(II)が、オキシム構造又はチオキサントン構造を有する化合物である感光性樹脂組成物。」

そして、[0060]及び請求項1の記載を踏まえれば、合成例2で得られたビスマレイミド化合物(I−2)は、請求項1、3に記載の、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物(C)と、マレイン酸無水物とを反応させて得られた、環状イミド結合を有するビスマレイミド化合物(I)の具体的態様といえる。

そこで、甲1の実施例2に着目すると、先願明細書等には以下の発明が記載されているといえる。
「(I)成分;ビスマレイミド化合物として、PRIAMINE 1074(クローダジャパン株式会社製)90.5g(0.17mol)と、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(18.9g、0.08mol)と、無水マレイン酸19.9g(0.20mol)と反応させて得られた、琥珀色ワックス状のビスマレイミド化合物(I−2) 50質量部、
(II)成分;光重合開始剤として、I−1:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−02」) 3質量部、及び、II−2:2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、「DETX−S」) 1質量部
溶剤として、シクロペンタノン 50質量部
を配合して調製した感光性樹脂組成物。」(以下、「甲1先願発明」という。)

(2)対比・判断
a 本件発明1について
(a)対比
甲1先願発明の「(I)成分;ビスマレイミド化合物として、PRIAMINE 1074(クローダジャパン株式会社製)90.5g(0.17mol)と、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(18.9g、0.08mol)と、無水マレイン酸19.9g(0.20mol)と反応させて得られた、琥珀色ワックス状のビスマレイミド化合物(I−2)」は、甲1の請求項1、3に記載のビスマレイミド化合物(I)の具体的態様であって、[0080](甲1c)に記載のように「両末端にのみ反応性のマレイミド基を有している」といえるから、「分子鎖の両末端にマレイミド基」を含む限りにおいて、本件発明1の「ビスマレイミド化合物(A)」と一致する。
甲1先願発明の「(II)成分;光重合開始剤として、I−1:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−02」) 3質量部、及び、II−2:2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、「DETX−S」) 1質量部」は、本件発明1の「光硬化開始剤(C)」に相当する。
甲1先願発明の「感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
甲1先願発明の「溶剤として」の「シクロペンタノン 50質量部」について、本件明細書の【0188】における「本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、有機溶剤を含んでもよい。」との記載からみて、本件発明1との対比で相違点となるものではない。

そうすると、本件発明1と甲1先願発明とは、
「分子鎖の両末端にマレイミド基を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、光硬化開始剤(C)と、を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:ビスマレイミド化合物(A)について、本件発明1では「下記式(1)で表される構成単位(当審注:式(I)及び式中の記号の定義は省略する)」を含むことを特定しているのに対し、甲1先願発明では当該構成単位を含むか明らかでない点。

相違点2:本件発明1は「シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)」を含むのに対し、甲1先願発明では当該樹脂又は化合物(B)を含んでいない点。

(b)判断
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
相違点2は樹脂組成物における「樹脂又は化合物(B)」の有無であるので、実質的な相違点である。
そして、本件明細書では「樹脂又は化合物(B)」について、【0058】に「樹脂又は化合物(B)を用いると、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れる」ことが記載され、【0244】及び【0245】の記載によれば、「樹脂又は化合物(B)」を含まない比較例1の樹脂組成物を用いた試験ではポストベーク工程において「シワ」が発生してガラス転移温度及び弾性率の測定ができなかったことが記載されている。これらのことから、「樹脂又は化合物(B)」によって、本件発明1は、光硬化性だけでなく、耐熱性及び熱安定性に優れ、硬化物の「シワ」の発生を抑制するという効果を奏するものといえる。
一方、甲1には、[0079]において、感光性樹脂組成物に「アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等の重合性官能基を有する化合物」である「重合性化合物を含有していてもよいこと」が記載され、「前記重合性化合物を含有せしめることにより、感光性樹脂組成物の光に対する感度をより高めることができる。」ことが記載され、当該重合性化合物として好ましい各種アクリレートが列挙され、これらアクリレートは本件発明1の「1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」である「樹脂又は化合物(B)」に該当するものである。
しかしながら、甲1では上述のとおり、当該アクリレートはあくまで感光性樹脂組成物に「含有していてもよい」任意成分の一例に過ぎず、また、本件発明1が「樹脂又は化合物(B)」より奏する効果のうち「耐熱性及び熱安定性に優れ、硬化物の「シワ」の発生を抑制する」ことについても何ら言及されていない。
してみると、甲1先願発明において「樹脂又は化合物(B)」をさらに含有することは、単なる周知・慣用技術の付加等であって新たな効果を奏しないものに該当するとはいえない。
よって、相違点2は、本件発明1と甲1先願発明との間の課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。

以上のことから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1先願発明と同一あるいは実質同一であるとはいえない。

b 本件発明2〜6について
本件発明2は、上記「第2 2」で示したとおり、請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めてさらに限定した発明であり、本件発明3〜6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明である。すなわち、本件発明2〜6は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備しているのであるから、上記「a」で示した理由と同じ理由により、甲1先願発明と同一あるいは実質同一であるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由が無い。

第6 むすび
特許第6871539号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2〜6〕について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申立てた申立理由によっては、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、
シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)と、
光硬化開始剤(C)と、を含む、樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。)。
【請求項2】
下記式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む、ビスマレイミド化合物(A)と、
シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)と、
光硬化開始剤(C)と、を含み、
前記光硬化開始剤(C)が、下記式(2)で表される化合物を含み、
前記ビスマレイミド化合物(A)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、5〜99.4質量部であり、
前記樹脂又は化合物(B)の合計の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であり、
前記光硬化開始剤(C)の含有量が、前記ビスマレイミド化合物(A)、前記樹脂又は化合物(B)及び前記光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である、
樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。)。
【化2】

(式(2)中、R4は、各々独立に、下記式(3)で表される置換基又はフェニル基を表す。)。
【化3】

(式(3)中、−*は結合手を示し、R5は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。)。
【請求項3】
支持体と、
前記支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、
樹脂シート。
【請求項4】
前記樹脂層の厚さが1〜50μmである、請求項3に記載の樹脂シート。
【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、
を有し、
前記絶縁層が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、多層プリント配線板。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-09-30 
出願番号 P2020-555264
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 16- YAA (C08F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 土橋 敬介
近野 光知
登録日 2021-04-20 
登録番号 6871539
権利者 三菱瓦斯化学株式会社
発明の名称 樹脂組成物、樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 遠田 利明  
代理人 遠田 利明  
代理人 大貫 敏史  

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