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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F21S |
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管理番号 | 1392025 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-11-12 |
確定日 | 2022-10-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6870881号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6870881号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 特許第6870881号の請求項1及び3〜7に係る特許を維持する。 特許第6870881号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6870881号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、令和1年7月24日に出願した特願2019−136463号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年12月17日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月19日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1〜7に係る特許について、令和3年11月12日に特許異議申立人西林博(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、令和4年3月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月6日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年5月17日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である同年6月21日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年5月6日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許6870881号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7ついて訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え、 前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニットと、 前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー とを備え、 前記アダプタ及び前記器具本体は、前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、電気的に接続する接続部を備え、 前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、 前記アダプタが嵌合する凹入部と、 前記凹入部の周壁部分に設けられた複数の非係合部分と を備え、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記器具本体を回転させることにより、前記可動体が前記非係合部分に位置すると、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる 照明装置。」と記載されているのを、 「取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え、 前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニットと、 前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー とを備え、 前記アダプタ及び前記器具本体は、前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、電気的に接続する接続部を備え、 前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、前記アダプタが嵌合する凹入部を備え、 前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分と、 前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と、 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であり、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置すると、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる 照明装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3〜7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「前記非係合部分は、前記凹入部の中心軸を挟んで対向しており、その間隔は、前記可動体が退入した状態における前記可動体の先端間の距離に等しい 請求項1又は2に記載の照明装置。」と記載されているのを、 「前記非係合部分は、前記凹入部の中心軸を挟んで対向しており、その間隔は、前記可動体が退入した状態における前記可動体の先端間の距離に等しい 請求項1に記載の照明装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「前記周壁部分の裏面側には、前記周壁部分よりも中心軸側に張り出した装着部が設けられており、 前記装着部により、前記可動体を受け入れる受入凹部が形成されるとともに、前記可動体と係合する係合部が形成される 請求項1〜3の何れか1項に記載の照明装置。」と記載されているのを、 「前記周壁部分の裏面側には、前記周壁部分よりも中心軸側に張り出した装着部が設けられており、 前記装着部により、前記可動体を受け入れる受入凹部が形成されるとともに、前記可動体と係合する係合部が形成される 請求項1又は3に記載の照明装置。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「前記可動体は、ベース部と、前記ベース部から前記表裏方向と直交する方向に延びる延伸部とを有し、 前記延伸部は、側方から見ると表面が前記ベース部から離れるに従って裏側に移る傾斜面となっている 請求項1〜4の何れか1項に記載の照明装置。」と記載されているのを、 「前記可動体は、ベース部と、前記ベース部から前記表裏方向と直交する方向に延びる延伸部とを有し、 前記延伸部は、側方から見ると表面が前記ベース部から離れるに従って裏側に移る傾斜面となっている 請求項1、3、4の何れか1項に記載の照明装置。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「前記器具本体の前記接続部は導電ピンであり、 前記アダプタは、前記導電ピンを受け入れるピン用の凹入部を備えており、 前記アダプタの前記接続部は、前記ピン用の凹入部内に配されている 請求項1〜5の何れか1項に記載の照明装置。」と記載されているのを、 「前記器具本体の前記接続部は導電ピンであり、 前記アダプタは、前記導電ピンを受け入れるピン用の凹入部を備えており、 前記アダプタの前記接続部は、前記ピン用の凹入部内に配されている 請求項1、3〜5の何れか1項に記載の照明装置。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に 「前記可動体は付勢体により進出するように付勢されている 請求項1〜6の何れか1項に記載の照明装置。」と記載されているのを、 「前記可動体は付勢体により進出するように付勢されている 請求項1、3〜6の何れか1項に記載の照明装置。」に訂正する。 (8)一群の請求項 訂正前の請求項1〜7について、請求項2〜7は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。 したがって、訂正事項1〜7に係る本件訂正は、一群の請求項〔1〜7〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記凹入部の周壁部分に設けられた複数の非係合部分とを備え」るという構成のうち「前記凹入部の周壁部分」について、複数の非係合部分だけでなく、「前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と」を備えるとの事項を付加して限定するとともに、「前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であ」るとの事項を付加して限定し、また、訂正前の請求項1の「前記器具本体を回転させることにより」という構成のうち「前記器具本体」について、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、」との事項を付加することにより限定するとともに、「回転させることにより」について、「前記両方向のいずれに回転させてもその回転により」との事項を付加して限定し、さらに、訂正前の請求項1の「前記可動体が前記非係合部分に位置する」という構成について、その位置する過程として「前記張出部分を超えて」との事項を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (ア) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ともいう。)の段落【0024】の「内周壁部分211は、非係合部分211aの周方向の両側に中心軸側に張り出す張出部分211bを有している。」という記載(当該記載の「中心軸側」は、凹入部の中心側であることが明らかである。)、訂正前の請求項1の「前記凹入部の周壁部分に設けられた複数の非係合部分とを備え」るという記載、及び、同請求項2の「前記周壁部分は、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状である」という記載から、訂正事項1の「前記凹入部の周壁部分は、複数の非係合部分と、前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と、を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であり」とした訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (イ) 明細書等の段落【0024】には、「内周壁部分211は、非係合部分211aの周方向の両側に中心軸側に張り出す張出部分211bを有している。これにより、人の操作なしで、器具本体1がアダプタ7から外れるのを防止できる。」と記載され、「アダプタ7の可動体721が装着ユニット50の欠け部分513,533又は非係合部分211aに位置すると非係合状態(取り外し可能状態)である。係合状態及び非係合状態の切り替えは、器具本体1をアダプタ7に対して回転させることで行える。」と記載されているから、器具本体1をアダプタ7に対して回転させることで、アダプタ7の可動体721が、非係合部分211aの周方向の両側において中心軸側に張り出す張出部分211bを超えて、非係合部分211aに位置すると取外し可能となることは、明らかである。 そして、器具本体1の回転方向は何ら記載されておらず、アダプタ7の可動体721が、どちら側から、両側のどちらの張出部分211bを超えて非係合部分211aに位置するかについては、何ら記載されていないのであるから、要するに、張出部分211bを一方からしか越えられないとはいっていないのであるから、訂正事項1の「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置する」という事項を付加して限定することは、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 さらに、図11を見ると、両側の張出部分211bは非係合部分211aに対し左右対称に見え、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置する」という事項は、図11からも充分に理解でき、図11とも矛盾しないといえる。 したがって、当該事項とした訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (ウ) したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用する記載であったものを、請求項1を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項2との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項2との整合を図る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1〜3の何れか1項を引用する記載であったものを、請求項1又は3を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項2との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項2との整合を図る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1〜4の何れか1項を引用する記載であったものを、請求項1、3、4の何れか1項を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項2との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項2との整合を図る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1〜5の何れか1項を引用する記載であったものを、請求項1、3〜5の何れか1項を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項2との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項2との整合を図る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1〜6の何れか1項を引用する記載であったものを、請求項1、3〜6の何れか1項を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項2との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項2との整合を図る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 3 独立特許要件 本件においては、訂正前の全ての請求項1〜7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1〜7に係る訂正事項1〜訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人は、令和4年6月21日付けの意見書の2ページ12〜31行において、 「この訂正における「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、」との構成について、・・・この構成を請求項1に追加することは、本件特許の図11のみを根拠としている。 ・・・また、本件特許の明細書を見ても、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、」との構成に関する記載は一切ない。 ・・・ したがって、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、」との構成を請求項1に追加することを含む本件訂正は、本願当初明細書の明細書及び図面等に記載した事項の範囲内にしたものでないことは明白である。 以上より、本件訂正は、新規事項の追加に該当し、訂正の実体的要件を満たしていない」 と主張している。 イ しかしながら、上記「2(1)イ(イ)」で述べたとおり、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、」との事項を付加して限定することは、新規事項の追加に該当しないから、上記の特許異議申立人の主張は、採用できない。 5 小括 上記のとおり、本件訂正の訂正事項1〜7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」という。)は、令和4年5月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え、 前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニットと、 前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー とを備え、 前記アダプタ及び前記器具本体は、前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、電気的に接続する接続部を備え、 前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、前記アダプタが嵌合する凹入部を備え、 前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分と、 前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と、 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であり、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置すると、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる 照明装置。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記非係合部分は、前記凹入部の中心軸を挟んで対向しており、その間隔は、前記可動体が退入した状態における前記可動体の先端間の距離に等しい 請求項1に記載の照明装置。 【請求項4】 前記周壁部分の裏面側には、前記周壁部分よりも中心軸側に張り出した装着部が設けられており、 前記装着部により、前記可動体を受け入れる受入凹部が形成されるとともに、前記可動体と係合する係合部が形成される 請求項1又は3に記載の照明装置。 【請求項5】 前記可動体は、ベース部と、前記ベース部から前記表裏方向と直交する方向に延びる延伸部とを有し、 前記延伸部は、側方から見ると表面が前記ベース部から離れるに従って裏側に移る傾斜面となっている 請求項1、3、4の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項6】 前記器具本体の前記接続部は導電ピンであり、 前記アダプタは、前記導電ピンを受け入れるピン用の凹入部を備えており、 前記アダプタの前記接続部は、前記ピン用の凹入部内に配されている 請求項1、3〜5の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項7】 前記可動体は付勢体により進出するように付勢されている 請求項1、3〜6の何れか1項に記載の照明装置。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 特許異議申立理由を取消理由に採用して、本件訂正前の請求項1〜7に係る特許に対して、当審が令和4年3月9日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 なお、当審の取消理由において特許異議申立理由をすべて採用した。 [取消理由] 本件特許の請求項1〜7に係る発明は、本件特許の原出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信の回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の原出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、その請求項1〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 ・特表2019−515453号公報 ・特開平7−85716号公報 これらは順に、特許異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証(以下それぞれ「甲1」、「甲2」ともいう。)である。 2 当審の判断 2−1 各甲号証に記載された事項及び発明 (1)甲1について ア 甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 実施例は設置および分離が容易な照明装置を提供する。 【0007】 また、設置および分離時に安定性が優秀な照明装置を提供する。 【0008】 また、中央部の暗部が除去されて均一度が優秀な照明装置を提供する。 ・・・ 【0035】 図1は本発明の一実施例に係る照明装置の斜視図、図2は図1の分解斜視図である。 【0036】 図1と図2を参照すると、実施例に係る照明装置100は、光源部110、光源部110に結合されるプレート140、光源部110とプレート140の間に配置されるホルダー130、ホルダー130に挿入されるソケット150を含む。 【0037】 光源部110は、円盤状のケース111の内部に複数個の光源が配置され得る。光源部110の構造は特に限定しない。例示的に光源部110は一般的な照明器具の構造をすべて適用することができる。 ・・・ 【0041】 実施例に係る照明装置100はプレート140とホルダー130を利用して天井に装着され得る。 ・・・ 【0044】 ソケット150は円筒状の胴体152の外側に露出した突出段151を含むことができる。ソケット150はプレート140の貫通ホール141を通過してホルダー130に固定されることによって、プレート140を天井に固定され得る。したがって、プレート140と結合された光源部110が天井に固定され得る。ソケット150は天井に埋設された電源コネクター(図示されず)と電気的に連結され得る。 ・・・ 【0046】 図3と図4は照明装置が壁面に固定される構成を説明するための図面である。 【0047】 図3を参照すると、住宅または建物の天井1には電源コネクター2とソケット150が配置され得る。電源コネクター2とソケット150の構造は、一般の家庭や建物にあらかじめ配置された共用の構造物であり得る。ソケット150の胴体152の直径d1はプレート140の貫通ホール141の直径に対応され得る。 【0048】 突出段151は胴体152の外側に突出し得る。したがって、突出段151の直径d2は胴体152の直径および貫通ホール141の直径d1より大きくてもよい。 【0049】 突出段151はスプリングのような弾性部材によって突出するため、これを加圧すると胴体152の内部に挿入される構造であり得る。 【0050】 図示してはいないが、ソケット150から延長されたケーブルを電源部120と電気的に連結することができる。したがって、ソケット150を介して外部電源が照明装置100に印加され得る。 【0051】 ホルダー130は電源部120と所定の間隔で離隔され得る。電源部120の多様な電子部品121、122等では動作時に多量の熱が放出されるため、対流によって冷却されるように電源部120とホルダー130は所定の間隔で離隔され得る。特に、ホルダー130がプラスチック材質の場合、十分な間隔で離隔させる必要がある。 【0052】 図4を参照すると、照明装置100を天井1に向かって押し上げるとソケット150はホルダー130の収容溝131に収容される。この時、突出段151はプレート140の貫通ホール141に挿入される。したがって、照明装置100は天井に固定され得る。この時、複数個のパッド160は天井とプレート140の間にクッションの役割を遂行することができる。 【0053】 図5はソケットとホルダーを説明するための図面であり、図6はソケットとホルダーが結合される過程を説明するための図面、図7はソケットとホルダーが分離する過程を説明するための図面である。 【0054】 ソケット150は、ホルダー130に収容される胴体152、および胴体152から外側に突出する複数個の突出段151を含む。突出段151の終端はホルダー130から遠くなるほど突出するように形成され得る。このような構造によると、プレート140の貫通ホール141との結合が容易であり得、結合後には容易に分離されることを防止することができる。 【0055】 ホルダー130はソケット150が収容される収容溝131を含むことができる。収容溝131は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含む。第1側壁136と第2側壁137は曲率を含むことができ、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含むことができる。 【0056】 収容溝131は第1側壁136と第3側壁134とが交差する第1角に形成された第1突起132および第2側壁137と第4側壁135とが交差する第2角に形成された第2突起133を含むことができる。また、側壁と底面の剛性を増加させる補強部138をさらに含むことができる。 【0057】 図6を参照すると、ソケット150がプレートを通過して収容溝131に収容されると、第1方向に回転させて締結を完了することができる。すなわち、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行することができる。 【0058】 収容溝131は第1方向(X方向)に第1側壁136と第2側壁137の間である第1幅W1と、第2方向(Y方向)に第3側壁134および第4側壁135の間である第2幅W2を有することができる。 【0059】 この時、複数個の突出段151を延長した仮想円C1の直径は、第1幅W1よりは小さいが第2幅W2よりは大きくてもよい。したがって、ソケット150が挿入されて第1回転方向に回転する間には突出段151が第1幅W1内で回転するので、仮想円C1の直径をそのまま維持することができる。 【0060】 図7を参照すると、照明装置を分離するために光源部を第2回転方向に回転させる場合、光源部と連結されたホルダー130は第2回転方向に回転するようになる。第1回転方向は時計回り方向であり、第2回転方向は反時計回り方向であり得るが、必ずしもこれに限定されない。 【0061】 ホルダー130が第2回転方向に回転すると、ソケット150の突出段151は収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触する。前述した通り、第3側壁134と第4側壁135の間の第2幅W2は突出段151を連結した仮想円C1より小さいので、突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入される。したがって、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100は天井に付着されたソケット150と分離され得る。 ・・・ 【0069】 第1ブラケット114の内側面にはリング状の回路基板200が配置され得る。したがって、回路基板200上に配置される複数個の発光素子210もリング状に配置されて互いに向かい合うことができる。 ・・・ 【0073】 図11を参照すると、実施例に係る光源部110は直下型タイプでもよい。このような構成によると、中央部と縁部に暗部が発生する問題を解決することができる。」 (1b) 図1〜7、図11は、以下のとおりである。 イ 甲1の認定事項 (ア) 【0041】の「実施例に係る照明装置100は・・・天井に装着され得る」という記載、【0047】の「天井1には電源コネクター2とソケット150が配置され得る」という記載、及び、図1〜4を参照すると、ソケット150の取付部を介して、天井1に配置された電源コネクター2の下面に取り付けられる照明装置100が特定できる。 (イ) 【0037】には、「光源部110の構造は特に限定しない。例示的に光源部110は一般的な照明器具の構造をすべて適用することができる。」と記載され、【0073】には、「図11を参照すると、実施例に係る光源部110は直下型タイプでもよい」と記載されているから、図1〜図4の実施例における「光源部110」を、図11に記載の光源部110に置き換えたものが特定できる。 図1〜図4の実施例における「光源部110」を、図11に記載の光源部110に置き換えたものについて、照明装置100からソケット150を除いた構成(すなわち、図3において、ソケット150から分離されている部分で、光源部110を図11の光源部110に置き換えた構成)を、「器具ユニット」と定義し、この器具ユニットから光源部110の、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210(図11の光源部110の、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210)を除いた構成を、「器具ユニットの基部」と定義する。 (ウ) 上記(イ)の、照明装置100からソケット150を除いた構成である「器具ユニット」の定義と、【0006】の「実施例は設置および分離が容易な照明装置を提供する。」という記載、【0036】の「図1と図2を参照すると、実施例に係る照明装置100は、光源部110、光源部110に結合されるプレート140、光源部110とプレート140の間に配置されるホルダー130、ホルダー130に挿入されるソケット150を含む。」という記載、及び、図1〜4から、ソケット150に着脱可能に装着される、光源部110と、光源部110に結合されるプレート140と、光源部110とプレート140の間に配置されソケット150が挿入されるホルダー130とを含む器具ユニットが特定できる。 このことと、上記(ア)のソケット150の取付部を踏まえると、取付部を備えるソケット150と、ソケット150に着脱可能に装着される、光源部110と、光源部110に結合されるプレート140と、光源部110とプレート140の間に配置されソケット150が挿入されるホルダー130とを含む器具ユニットとを備えた、照明装置100も特定できる。 (エ) 上記(イ)の、器具ユニットから光源部110の、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210(図11の光源部110の、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210)を除いた構成である「器具ユニットの基部」の定義、及び、図2〜3から、ソケット150に装着される、光源部110のケース111とプレート140とホルダー130とを有する器具ユニットの基部が特定できる。 このことと、図11を参照すると、器具ユニットは、ソケット150に装着される、光源部110のケース111とプレート140とホルダー130とを有する器具ユニットの基部と、器具ユニットの基部のケース111の下面に搭載された、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210とを備えるものとしても特定できる。 (オ) 上記(イ)と、図3、図4、図11から、器具ユニットに電源部120が備えられていることは明らかであり、このことと、【0050】の「図示してはいないが、ソケット150から延長されたケーブルを電源部120と電気的に連結することができる。したがって、ソケット150を介して外部電源が照明装置100に印加され得る。」という記載を参照すると、ソケット150及び器具ユニットは、電気ケーブルが連結されることが特定できる。 (カ) 【0044】の「ソケット150は円筒状の胴体152の外側に露出した突出段151を含むことができる。」という記載、【0048】の「突出段151は胴体152の外側に突出し得る。」という記載、【0049】の「突出段151はスプリングのような弾性部材によって突出するため、これを加圧すると胴体152の内部に挿入される構造であり得る。」という記載、【0061】の「突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入される。」という記載、及び、図3を参照すると、ソケット150は、表裏方向と直交する方向において、突出する、各突出段151を含むことが明らかである。 このことと、上記の各記載を参照すると、ソケット150は、表裏方向と直交する方向において、スプリングのような弾性部材によって円筒状の胴体152の外側に突出し、押圧されて円筒状の胴体152の内部に挿入される各突出段151を含むことが特定できる。 (キ) 【0057】の「ソケット150がプレートを通過して収容溝131に収容されると、第1方向に回転させて締結を完了する」という記載、【0055】の「ホルダー130はソケット150が収容される収容溝131を含むことができる。収容溝131は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含む。第1側壁136と第2側壁137は曲率を含むことができ、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含むことができる。」という記載、図5〜6の記載(特に、収容溝131の側壁の部分を参照。)、及び、上記(エ)から、光源部110のケース111とプレート140とホルダー130を有する器具ユニットの基部は、ソケット150が収容され締結されるホルダー130の収容溝131を備え、ホルダー130の収容溝131の側壁は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含み、第1側壁136と第2側壁137は曲率を含み、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含むことが特定できる。 (ク) 【0057】の「図6を参照すると、ソケット150がプレートを通過して収容溝131に収容されると、第1方向に回転させて締結を完了することができる。すなわち、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行することができる。」という記載、【0060】の「図7を参照すると、照明装置を分離するために光源部を第2回転方向に回転させる場合、光源部と連結されたホルダー130は第2回転方向に回転するようになる。第1回転方向は時計回り方向であり、第2回転方向は反時計回り方向であり得る」という記載、【0061】の「ホルダー130が第2回転方向に回転すると、ソケット150の突出段151は収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触する。前述した通り、第3側壁134と第4側壁135の間の第2幅W2は突出段151を連結した仮想円C1より小さいので、突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入される。したがって、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100は天井に付着されたソケット150と分離され得る。」という記載は、いずれも、器具ユニットがソケット150に装着されている場合に行われる動作を記載していることが明らかである。 このことと、上記(イ)の、照明装置100からソケット150を除いた構成である「器具ユニット」の定義、上記(カ)の各突出段151を踏まえると、器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了し、器具ユニットのホルダー130が反時計回り方向である第2回転方向に回転すると、ソケット150の各突出段151はホルダー130の収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触し、各突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入され、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100の器具ユニットはソケット150と分離され得ることが特定できる。 ウ 甲1に記載された発明 上記ア、イから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「ソケット150の取付部を介して、天井1に配置された電源コネクター2の下面に取り付けられる照明装置100であって、 取付部を備えるソケット150と、 ソケット150に着脱可能に装着される、光源部110と、光源部110に結合されるプレート140と、光源部110とプレート140の間に配置されソケット150が挿入されるホルダー130とを含む器具ユニットと を備え、 器具ユニットは、 ソケット150に装着される、光源部110のケース111とプレート140とホルダー130とを有する器具ユニットの基部と、 器具ユニットの基部のケース111の下面に搭載された、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210 とを備え、 ソケット150及び器具ユニットは、電気ケーブルが連結され、 ソケット150は、表裏方向と直交する方向において、スプリングのような弾性部材によって円筒状の胴体152の外側に突出し、押圧されて円筒状の胴体152の内部に挿入される各突出段151を含み、 光源部110のケース111とプレート140とホルダー130を有する器具ユニットの基部は、ソケット150が収容され締結されるホルダー130の収容溝131を備え、 ホルダー130の収容溝131の側壁は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含み、第1側壁136と第2側壁137は曲率を含み、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含み、 器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了し、器具ユニットのホルダー130が反時計回り方向である第2回転方向に回転すると、ソケット150の各突出段151はホルダー130の収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触し、各突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入され、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100の器具ユニットはソケット150と分離され得る、 照明装置100。」 (2)甲2について イ 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、アダプターに回動可能かつ受電可能である照明器具を備えた照明装置に関する。 ・・・ 【0007】図示の実施例は、天井1に引掛ローゼット2を介して又は直接的に取付けられるほぼ円筒状のアダプター3と、アダプター3の周囲に回動可能に取付けられる照明器具4とを備え、アダプター3にはその下面側に開口した中心穴5およびその周囲に同軸的に位置する環状穴6が設けられ、照明器具4側に設けられた複数の受電ピン7,8は前記中心穴5および環状穴6にそれぞれ挿入されてアダプター3内部の給電片9,10にそれぞれ回動可能に接続される。 【0008】さらに詳述すれば、引掛ローゼット2の下面に設けられた複数の円弧穴(図示せず)に差し込んで若干回動させることにより電気的かつ機械的接続を可能としたプラグ刃11,11をアダプター3の上面に備えている。そして図示はしていないが、よく知られている通り、アダプター3の上面に前記円弧穴に係止される出没自在なロックピンを設け、アダプター3が逆回動して引掛ローゼット2から外れてしまうのを防止するとよい。アダプター3が天井1に直接的に取付けられる場合は、プラグ刃11,11の代わりに屋内配線を差し込む電線挿入穴を設ければよい。アダプター3の外周には環状の係止部12を複数設けており、いずれかの係止部12に照明器具4側からばね13で付勢された係止部14が選択的に係止される。引掛ローゼット2が角型の場合はその高さが高いため、係止部14は上側の係止部12に係止され、引掛ローゼット2が図示しない丸型の場合はその高さが低いため、係止部14は下側の係止部12に係止される。係止部14を係止部12から解除するには係止部14の中間部に縦に通された解除部材15の下端を押し上げる。この際、解除部材15は直交変換部16を介して係止部14をばね13の付勢に逆らうよう後退させ、係止部14は係止部12から解除される。解除部材15は直交変換部16を有せず、係止部14の動きと並行する操作方向のものであってもよい。例えば、係止部14から下方に向けて解除部材が単に垂下形成されたものでもよく、こうした場合はその解除部材を横方向に操作して係止部14を係止部12から解除する。また、アダプター3側から係止部14に相当するものを照明器具4側の係止部に対して突出させて照明器具4を係止してもよい。この場合、解除部材はアダプター3に設けられる。給電片9,10はそれぞれプラグ刃11,11と電気接続されており、給電片10は例えば二重環状をなし、例えばほぼ筒状とした給電片9の周囲に同軸的に配置される。受電ピン7,8は照明器具4側において例えばブリッジ状の支持部材17に突出固定され、照明器具4内の図示しない点灯制御手段に電気接続される。支持部材17の両側には若干の隙間18があり、照明器具4をアダプター3に取付ける際に下方よりアダプター3が見えて位置合せしやすく、取付作業に便宜が図られる。18は図示しない点灯制御手段の下面をおおうカバー(反射板)、19はランプソケット、20はランプホルダー、21はランプ、22はグローブである。 【0009】本実施例によれば、天井1に引掛ローゼット2を介して又は直接的に取付けられるアダプター3をほぼ円筒状として、アダプター3の周囲に照明器具4を回動可能に取付けられるようにしている。そして、アダプター3にはその下面側に開口した中心穴5およびその周囲に同軸的に位置する環状穴6が設けられ、照明器具4側に設けられた複数の受電ピン7,8は前記中心穴5および環状穴6にそれぞれ挿入されてアダプター3内部の給電片9,10にそれぞれ回動可能に接続されるため、照明器具4をアダプター3に取付後、照明器具4を回動しても受電が維持できる構成を比較的簡単に構築できる。これにより、例えば、角型の照明器具などのように部屋と調和させるためにこれを回動する必要がある場合に殊に至便なものとなる。」 (2b) 図1〜3は、以下のとおりである。 イ 甲2の認定事項 (ア) 【0009】の「アダプター3にはその下面側に開口した中心穴5およびその周囲に同軸的に位置する環状穴6が設けられ、照明器具4側に設けられた複数の受電ピン7,8は前記中心穴5および環状穴6にそれぞれ挿入され」ることは、照明器具4がアダプター3に装着されることにより、実施できるものといえる。 (イ) 図2及び図3から、アダプター3及び照明器具4は、複数の受電ピン7,8を備える、照明装置が看取できる。 ウ 甲2に記載された技術事項 上記ア、イを総合すると、甲2には、次の技術事項(以下「甲2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲2に記載された技術事項] 「アダプター3及び照明器具4は、照明器具4がアダプター3に装着されることにより、アダプター3に設けられた中心穴5及び環状穴6にそれぞれ挿入される照明器具4に設けられた複数の受電ピン7,8を備える、照明装置。」 2−2 対比・判断 2−2−1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア (ア) 甲1発明の「ソケット150の取付部」は、本件発明1の「取付部」に相当し、同様に、「天井1に配置された電源コネクター2の下面」は「被取付面」に、「照明装置100」は「照明装置」に相当する。 甲1発明の「ソケット150」は、本件発明1の「アダプタ」に相当する。 甲1発明の「光源部110と、光源部110に結合されるプレート140と、光源部110とプレート140の間に配置されソケット150が挿入されるホルダー130とを含む器具ユニット」は、本件発明1の「器具本体」に相当する。 (イ) 上記(ア)から、 甲1発明の 「ソケット150の取付部を介して、天井1に配置された電源コネクター2の下面に取り付けられる照明装置100であって、 取付部を備えるソケット150と、 ソケット150に着脱可能に装着される、光源部110と、光源部110に結合されるプレート140と、光源部110とプレート140の間に配置されソケット150が挿入されるホルダー130とを含む器具ユニットと を備え」る「照明装置100。」は、 本件発明1の 「取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え」る「照明装置。」に相当する。 イ (ア) 甲1発明の「光源部110のケース111とプレート140とホルダー130とから構成される器具ユニットの基部」は、本件発明1の「ベース」に相当し、同様に、「器具ユニットの基部のケース111の下面」は「ベースの表面」に、「回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210」は「光源ユニット」に相当する。 (イ) 上記(ア)及び上記ア(ア)から、 甲1発明の 「器具ユニットは、 ソケット150に装着される、光源部110のケース111とプレート140と ホルダー130とから構成される器具ユニットの基部と、 器具ユニットの基部のケース111の下面に搭載された、回路基板200及び回路基板200上に配置される複数個の発光素子210 とを備え」ることと、 本件発明1の 「前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニットと、 前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー とを備え」ることとは、 「前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニット とを備え」ることにおいて共通している。 ウ 甲1発明の「ソケット150及び器具ユニット」は、「電気ケーブルが連結され」るから、これらの部品はいずれも、電気ケーブルが電気的に接続される接続部を備えていることは明らかである。 このことと、上記ア(ア)から、甲1発明の「ソケット150及び器具ユニットは、電気ケーブルが連結され」ることと、本件発明1の「前記アダプタ及び前記器具本体は、前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、電気的に接続する接続部を備え」ることとは、「前記アダプタ及び前記器具本体は、電気的に接続する接続部を備え」ることにおいて共通している。 エ (ア) 甲1発明の「表裏方向と直交する方向において、スプリングのような弾性部材によって円筒状の胴体152の外側に突出し、押圧されて円筒状の胴体152の内部に挿入される各突出段151」は、本件発明1の「表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体」に相当し、同様に、「ホルダー130の収容溝131」は「凹入部」に相当する。 (イ) 上記(ア)及びア(ア)、イ(ア)から、 甲1発明の 「ソケット150は、表裏方向と直交する方向において、スプリングのような弾性部材によって円筒状の胴体152の外側に突出し、押圧されて円筒状の胴体152の内部に挿入される各突出段151を含み、 光源部110のケース111とプレート140とホルダー130を有する器具ユニットの基部は、ソケット150が収容され締結されるホルダー130の収容溝131を備え」ることは、 本件発明1の 「前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、前記アダプタが嵌合する凹入部を備え」ることに相当する。 オ (ア) 甲1発明の「側壁」は、本件発明1の「周壁部分」に相当し、甲1発明の「ホルダー130の収容溝131」は、本件発明1の「凹入部」に相当すること(上記エ(ア))を踏まえると、甲1発明の「ホルダー130の収容溝131の側壁」は、本件発明1の「前記凹入部の周壁部分」に相当する。 甲1発明の「第3側壁134および第4側壁135」は、本件発明1の「非係合部分」に相当する。 (イ) 甲1発明の「ホルダー130の収容溝131の側壁は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含み、第1側壁136と第2側壁137は曲率を含み、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含」む構成は、「ホルダー130の収容溝131の側壁」が、「第3側壁134および第4側壁135は平坦面」などにより、欠円形状の横断面形状となっているといえるから、甲1発明の上記構成は、本件発明2の「前記周壁部分は、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状である」る構成に相当する。 (ウ) 上記(ア)、(イ)から、 甲1発明の 「ホルダー130の収容溝131の側壁は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含み、第1側壁136と第2側壁137は曲率を含み、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含」むことと、 本件発明1の 「前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分と、 前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と、 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であ」ることとは、 「前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であ」ることにおいて共通している。 カ (ア) 上記ア(ア)、エ(ア)の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 甲1発明の「器具ユニットがソケット150に装着されている場合」は、本件発明1の「前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合」に相当する。 甲1発明の「各突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入され」ることは、本件発明1の「前記可動体が退入状態とな」ることに相当する。 甲1発明の「照明装置100の器具ユニットはソケット150と分離され得る」ことは、本件発明1の「前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる」ことに相当する。 (イ) 上記(ア)から、 甲1発明の 「器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了し、器具ユニットのホルダー130が反時計回り方向である第2回転方向に回転すると、ソケット150の各突出段151はホルダー130の収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触し、各突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入され、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100の器具ユニットはソケット150と分離され得る」ことと、 本件発明1の 「前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置すると、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる」こととは、 「前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる」において共通している。 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え、 前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニット とを備え、 前記アダプタ及び前記器具本体は、電気的に接続する接続部を備え、 前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、前記アダプタが嵌合する凹入部を備え、 前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であり、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる 照明装置。」 <相違点1> 本件発明1では、「前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー」「を備え」るのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。 <相違点2> 「前記アダプタ及び前記器具本体は、」「電気的に接続する接続部を備え」ることについて、本件発明1では、前記アダプタ及び前記器具本体は、「前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、」電気的に接続する接続部を備えるのに対して、甲1発明では、「ソケット150及び器具ユニットは、電気ケーブルが連結され」る点。 <相違点3> 「前記凹入部の周壁部分」及び「前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる」ことについて、 本件発明1では、 前記凹入部の周壁部分は、「前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分を備え」、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、「前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置すると、」前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となるのに対して、 甲1発明では、 「ホルダー130の収容溝131の側壁は、互いに向かい合う第1側壁136と第2側壁137、および互いに向かい合う第3側壁134および第4側壁135を含み、第1側壁136と第2側壁137は曲率を含み、第3側壁134および第4側壁135は平坦面を含み、 器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了し、器具ユニットのホルダー130が反時計回り方向である第2回転方向に回転すると、ソケット150の各突出段151はホルダー130の収容溝131の第3側壁134および第4側壁135と接触し、各突出段151は第3側壁134と第4側壁135に押圧されて胴体152の内部に挿入され、ソケット150の直径はプレート140の貫通ホールの直径と同一となるので、照明装置100の器具ユニットはソケット150と分離され得る」点。 (2)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 照明装置において、外観をよくする等のために、照明装置の表面全体を覆う透光性カバーを照明装置の基部などに固定することは、周知技術である(必要であれば、甲2の図3のグローブ22等を参照。)。 甲1発明の照明装置100も、発光素子210などが直接見えないようにして外観をよくするという課題を含んでいると当然にいえることから、甲1発明に、この周知技術を採用し、照明装置の表面全体を覆うことができるように、甲1発明の光源部110のケース111とプレート140とホルダー130とから構成される器具ユニットの基部の表面全体を覆い且つ器具ユニットの基部に固定された透光性カバーを備えるようにして、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。 イ 相違点2について (ア) 甲2に記載された技術事項の「アダプター3」、「照明器具4」及び「照明装置」は、それぞれ、本件発明1の「アダプタ」、「器具本体」及び「照明装置」にそれぞれ相当する。 甲2に記載された技術事項の「アダプター3に設けられた中心穴5及び環状穴6にそれぞれ挿入される照明器具4に設けられた複数の受電ピン7,8」は、電気的に接続することが明らかであるから、本件発明1の「電気的に接続する接続部」に相当する。 これらのことから、本願発明1の用語等を用いると、甲2に記載された技術事項は、「アダプタ(アダプター3)及び器具本体(照明器具4)は、前記器具本体(照明器具4)が前記アダプタ(アダプター3)に装着されることにより、電気的に接続する接続部(アダプター3に設けられた中心穴5および環状穴6にそれぞれ挿入される照明器具4に設けられた複数の受電ピン7,8)を備える、照明装置。」であるといえる。 (イ) 甲1発明と甲2に記載された技術事項とは、「照明装置」において、アダプタ及び器具本体が電気的に接続する接続部を備える点で共通するから(上記一致点及び上記(ア)参照)、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。 (ウ) そうすると、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用して、甲1発明の「ソケット150及び器具ユニットは、電気ケーブルが連結され」ることに替えて、甲2に記載された技術事項の受電ピンに係る構成を採用し、ソケット150(アダプタ)及び器具ユニット(器具本体)は、前記器具ユニット(器具本体)が前記ソケット150(アダプタ)に装着されることにより、電気的に接続する接続部を備えることで、上記相違点2−1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。 ウ 相違点3について (ア) まず、相違点3に係る本件発明1の「非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分」について検討すると、当該張出部は、甲1〜2及び特許異議申立人が令和4年6月21日付けの意見書に甲第3号証(以下「甲3」という)として添付した特開平7−272523号公報のいずれにも明示的な記載はない。 凹入部の中心側に張り出す張出部分に類する構成として、甲1発明は、第1突起132と第2突起133を備えているが、甲1発明の「器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了」する構成から、第1突起132と第2突起133は、ストッパーの役割を遂行するものであって、第1回転方向に回転させた際に、突出段151(本件発明1の「可動体」に相当)が第3側壁134及び第4側壁135(本件発明1の「非係合部分」に相当)の箇所に位置するのを阻止するためのものである。 そうすると、ストッパーの役割を遂行する第1突起132と第2突起133を第3側壁134及び第4側壁135のそれぞれの両側に設けてしまうと、いずれの方向に回転させても突出段151が第3側壁134及び第4側壁135に位置できなくなってしまうから、第1突起132と第2突起133を前記両側に設けることには阻害要因がある。 (イ) また、本件発明1の「前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置する」ことも甲1〜甲3には記載も示唆もない。 上記(ア)で説示したように、甲1発明は、張出部分に類する構成として、第1突起132と第2突起133を備えているが、これらは締結を完了する際にストッパーの役割を有するものであるから、突出段151が、これらを超えて非係合部分である第3側壁134及び第4側壁135に位置する構成とすることはできない。 (ウ) また、甲1発明の「器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、第1突起132と第2突起133がストッパーの役割を遂行し、締結を完了」することは、図6を参照すると、器具ユニットがソケット150に装着されている場合に、器具ユニットのホルダー130が時計回り方向である第1回転方向に回転すると、ソケット150の各突出段151が、ストッパーの役割を遂行する第1突起132と第2突起133に当接して、締結を完了することが明らかである。 このソケット150の各突出段151が、ストッパーの役割を遂行する第1突起132と第2突起133に当接した位置は、照明装置100の器具ユニットがソケット150と分離され得る位置から最も離れた位置と認められるから、器具ユニットが多少回転しても分離されることはなく、締結が確実で安定した設置状態にあり、「設置および分離時に安定性が優秀な照明装置を提供する」という課題にも関連するものといえる。 そうすると、「ストッパーの役割を遂行」する「第1突起132と第2突起133」は、そのような締結が確実で安定した設置状態とするような状態で「締結を完了」するために、必要不可欠な構成といえる。 これらのことを踏まえると、甲1発明において、「ストッパーの役割を遂行」する「第1突起132と第2突起133」を、ストッパーの役割を遂行しないような形状として、「ソケット150の各突出段151」を、第1回転方向からも、第3側壁134と第4側壁135に接触するようにして、「照明装置100の器具ユニット」が「ソケット150と分離され得る」構成とすると、「第1突起132と第2突起133」は「ストッパーの役割を遂行」することができなくなり、締結が確実で安定した設置状態とするように「締結を完了」するという機能が損なわれてしまうから、甲1発明において、「第1突起132と第2突起133」をストッパーの役割を遂行しないような形状とすることにも、阻害要因が存在するといえる。 (エ) ここで、甲2には、上記「2−1(2)ウ」に記載したとおりの技術事項が記載されているが、この技術事項とは別に、甲2に、「ストッパーがなく両方向に回転できる器具本体」(以下「甲2に記載された技術事項A」という。)が開示されていたとしても(甲3の【0047】〜【0052】及び図7にもストッパーがなく両方向に回転できる支承体の技術事項が開示されているといえる。)、上記(ウ)のとおりであり、この技術事項Aを甲1発明に適用することには阻害要因が存在するし、適用できたとしても張出部分を有しないものとなるから、甲1発明に甲2に記載された技術事項Aを適用して、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年6月21日付けの意見書の第4ページ下から14行〜末行において「しかしながら、引用文献1の請求項1及び課題等を総合的に鑑みると・・・引用文献1に記載された発明については、ストッパーとして機能する第1突起132及び第2突起133を必須とするものではない。・・・仮に第1突起132及び第2突起133を考慮して引用発明1を認定したとしても、・・・引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された発明を適用することで、自ずと器具本体がアダプタに対して両方向に回転可能な構造になるといえる。」と主張し、同意見書の下から11行〜下から8行において「訂正後の請求項1に係る発明は、・・・引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである」と主張するが、上記ウで説示したとおりであるから、これらの主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2−2−2 本件発明3〜7について 本件発明3〜7は、それぞれ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項3〜7の発明特定事項をそれぞれ付加して限定したものであるから、上記2−2−1で説示したのと同じ理由により、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び3〜7に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に本件特許の請求項1及び3〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件訂正が認められたことにより、請求項2に係る特許は削除された。これにより、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなり、不適法なものであって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 取付部を介して被取付面に取り付けられる照明装置であって、 前記取付部を備えるアダプタと、 前記アダプタに着脱可能に装着される器具本体と を備え、 前記器具本体は、 前記アダプタに装着されるベースと、 前記ベースの表面に搭載された光源ユニットと、 前記ベースの表面全体を覆い且つ前記ベースに固定された透光性カバー とを備え、 前記アダプタ及び前記器具本体は、前記器具本体が前記アダプタに装着されることにより、電気的に接続する接続部を備え、 前記アダプタは、表裏方向と直交する方向に進退可能な可動体を備え、 前記ベースは、前記アダプタが嵌合する凹入部を備え、 前記凹入部の周壁部分は、 複数の非係合部分と、 前記複数の非係合部分の周方向の両側から前記凹入部の中心側に張り出す張出部分と、 を備え、前記非係合部分が欠けた欠円形状の横断面形状であり、 前記器具本体が前記アダプタに装着されている場合に、前記器具本体は前記アダプタに対して前記表裏方向を回転軸として両方向に回転可能であり、前記器具本体を前記両方向のいずれに回転させてもその回転により、前記可動体が前記張出部分を超えて前記非係合部分に位置すると、前記可動体が退入状態となり、前記器具本体が前記アダプタから取外し可能となる 照明装置。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記非係合部分は、前記凹入部の中心軸を挟んで対向しており、その間隔は、前記可動体が退入した状態における前記可動体の先端間の距離に等しい 請求項1に記載の照明装置。 【請求項4】 前記周壁部分の裏面側には、前記周壁部分よりも中心軸側に張り出した装着部が設けられており、 前記装着部により、前記可動体を受け入れる受入凹部が形成されるとともに、前記可動体と係合する係合部が形成される 請求項1又は3に記載の照明装置。 【請求項5】 前記可動体は、ベース部と、前記ベース部から前記表裏方向と直交する方向に延びる延伸部とを有し、 前記延伸部は、側方から見ると表面が前記ベース部から離れるに従って裏側に移る傾斜面となっている 請求項1、3、4の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項6】 前記器具本体の前記接続部は導電ピンであり、 前記アダプタは、前記導電ピンを受け入れるピン用の凹入部を備えており、 前記アダプタの前記接続部は、前記ピン用の凹入部内に配されている 請求項1、3〜5の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項7】 前記可動体は付勢体により進出するように付勢されている 請求項1、3〜6の何れか1項に記載の照明装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-09-27 |
出願番号 | P2020-209565 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(F21S)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
筑波 茂樹 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 出口 昌哉 |
登録日 | 2021-04-19 |
登録番号 | 6870881 |
権利者 | アイリスオーヤマ株式会社 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 奥山 裕治 |
代理人 | 原田 淳司 |
代理人 | 原田 淳司 |
代理人 | 奥山 裕治 |