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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E02D
管理番号 1392041
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-28 
確定日 2022-09-30 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6896237号発明「構造物の補強梁、補強工法、及び構造物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6896237号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−9、20〕、〔10−19〕について訂正することを認める。 特許第6896237号の請求項1、3ないし10、16ないし20に係る特許を維持する。 特許第6896237号の請求項2、11ないし15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6896237号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、2019年10月23日(優先権主張 2019年6月28日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年6月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。
その後の本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和3年12月28日 :特許異議申立人中川賢治(以下「申立人」とい
う。)による請求項1ないし20に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和4年 3月 7日付け:取消理由通知
同年 5月10日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 6月13日付け:訂正請求があった旨の通知

なお、当審は、令和4年6月13日付け訂正請求があった旨の通知において、申立人に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えたが、指定期間内に申立人からは何らの応答もなかった。

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和4年5月10日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は当審において付与した。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
ア 「前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であり、前記第1柱部材に取り付けられる他の補強梁の連結部材と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成される」と記載されているのを、
「前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され、且つ前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成される」と訂正し、
イ 「前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であり、前記第2柱部材に取り付けられる他の補強梁の連結部材と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されている」と記載されているのを、
「前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されている」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記第1連結部は、他の2つの補強梁と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補強梁。」と記載されているのを、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記第2連結部は、他の2つの補強梁と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補強梁。」と記載されているのを、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記第2連結部は、他の3つの補強梁と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補強梁。」と記載されているのを、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1〜5」と記載されているのを、「請求項1、3〜5」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1〜6」と記載されているのを、「請求項1、3〜6」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1〜7」と記載されているのを、「請求項1、3〜7」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項20に「請求項1〜7」と記載されているのを、「請求項1、3〜7」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に、
「それぞれが本体部と、前記本体部の両端部にそれぞれ配置される連結部とを有する第1及び第2補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって、
前記第1柱部材を、前記第1補強梁の一端側の連結部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第2柱部材を、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第3柱部材に、前記第2補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第1柱部材と、前記第1柱部材に取り付けられる前記第1及び第2補強梁の連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記第2補強梁の連結部とを一体化する工程と、
前記第2柱部材と、前記第2柱部材に取り付けられる前記第1補強梁の連結部と前記他の補強梁の連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記他の補強梁の連結部とを一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。」と記載されているのを、
「それぞれが補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた補強梁として第1の補強梁、第2の補強梁、第3の補強梁、第4の補強梁、及び第5の補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程と、
前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第3の補強梁それぞれの前記補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程と、
前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、前記第2の補強梁、前記第4の補強梁、前記第5の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程と、
前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第1柱部材一体化工程と、
前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第2柱部材一体化工程と、
前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程と、
前記第1、第2柱部材一体化工程後、前記第1の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
前記第1、第3柱部材一体化工程後、前記第2の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。」と訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11〜15を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項16に「請求項10〜15のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項10」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項17に「前記補強梁の本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁を所定の深さに沈降させる工程を更に含む」とあるのを、
「前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁本体部を所定の深さに沈降させる工程を更に含む」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項18に「請求項10〜17」と記載されているのを、「請求項10、16、17」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項19に「前記補強梁の連結部の下端部」と記載されているのを、「前記補強梁の前記第1及び第2連結部の下端部」と訂正する。

(16)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項3ないし5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、
(ア)訂正前の請求項1に記載の補強梁の「第1連結部」について、
a 第1連結部が、前記第1柱部材に取り付けたときに、第1柱部材を覆うのが、訂正前においては第1柱部材の「周囲の一部」とされ、覆う範囲が特定されていなかったのを「外周の半周」と特定するとともに、「第1連結部の端部を結ぶ直線と補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され」ることを特定し、
b 「第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
c 第1柱部材に取り付けられる他の補強梁を「一つ」とし、補強梁が「他の一つの補強梁の連結部」と共同して第1柱部材の周囲を包囲するものに特定し、
d 第1連結部と他の一つの補強梁の連結部の接合について、「他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定し、
(イ)訂正前の請求項1に記載の補強梁の「第2連結部」について、
a 「第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第2柱部材に取り付けられる他の補強梁を「1つ又は2つ」とし、補強梁が「他の1つ又は2つの補強梁の連結部」と共同して第2柱部材の周囲を包囲するものに特定し、
c 第2連結部と他の1つ又は2つの補強梁の連結部の接合について、「他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定するものである。
(ウ)以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
(ア)上記ア(ア)aについて、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0037】には、「第1杭連結部4及び第2杭連結部5はそれぞれ、杭に取付けられたときに杭外周の半周を包囲するような形状となっている。なお第1杭連結部4・・・の端部を結ぶ直線L1と補強梁本体の長さ方向の軸線L2とのなす角度(θ)はθ=45°となる」と記載されていることを踏まえれば、上記ア(ア)aで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(イ)上記ア(ア)b及びア(イ)aについて、本件明細書段落【0037】には、「第1杭連結部4・・・の端部を結ぶ直線L1と補強梁本体の長さ方向の軸線L2とのなす角度(θ)はθ=45°となるように形成されており、・・・そのため、このような補強梁C1を4つ用いれば、図18Aに示すように、各杭の中心線を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭P1,P2,P3,P4を互いに連結する事が可能となる。」と記載され、同【0038】には、「補強梁C2の全体構造を図16に示す。補強梁C2も図15の補強梁C1と同様、各杭の中心線を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭を互いに連結するための補強梁である。補強梁C2は、図15に示した補強梁C1において、第1杭連結部4の外周面に補強リブ18を設け、第2杭連結部5の外周面に補強リブ18′を設けたものである。この補強リブ18、18′は第1及び第2杭連結部それぞれの外周面の杭長さ方向の所定高さに形成されており、」と記載され、【図16】には、第1杭連結部4の外周面に設けた補強リブ18及び第2杭連結部5の外周面に設けた補強リブ18′は、第1連結部及び第2連結部の端部から補強梁本体部との結合部位に亘って形成されていることが示されていることを踏まえれば、上記ア(ア)b及びア(イ)aで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(ウ)上記ア(ア)cについて、訂正前の請求項2には、「前記第1連結部は、他の一つの補強梁と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されている」と記載されていることを踏まえれば、上記ア(ア)cで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(エ)上記ア(イ)bについて、【図18B】には、4本の柱部材P1ないしP4のそれぞれに、2の補強梁、すなわち、補強梁C2と他の一つの補強梁C2が取り付けられ、2の補強梁の連結部が共同して柱部材の周囲を包囲することが示されているから、1の柱部材に隣接して設けられる柱部材に取り付けられる補強梁が、補強梁と他の「一つ」の補強梁であり、補強梁が他の一つの補強梁の連結部と共同して柱部材の周囲を包囲することが示されている。
また、同段落【0042】には、「補強梁D2は、第1杭連結部4が杭の半周に満たない部分を包囲する形状を有しており、第2杭連結部5は杭の半周を包囲する形状を有している。この補強梁D2は図19に示す杭補強構造において、杭P1と杭P3との間・・・を連結する。」と記載され、【図19】には、柱部材P1と、柱部材P1と隣接して設けられる柱部材P3との間に補強梁D2が取り付けられ、柱部材P1には補強梁D2と他の一つの補強梁が取り付けられ、柱部材P3には補強梁D2と他の2の補強梁が取り付けられ、補強梁D2と他の2の補強梁の連結部が共同して柱部材P3の周囲を包囲することが示されている。
そうすると、上記ア(イ)bで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(オ)上記ア(ア)d及びア(イ)cについて、
a 「他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」することについて、本件明細書段落【0046】には、「補強梁を杭に取付ける作業について図22A〜図22Iに示す。まず、図15に示した補強梁C1を用いる場合について以下図に基づいて説明する。・・・図22B:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とを突き合わせる。図22C:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。」と記載され、また、同【0047】に、「図16に示した補強梁C2を用いる場合における補強梁の一体化工程を図23に示した。」と記載され、図23B及び図23Cには、図22B及び図22Cと同様に符号38、38′及び符号30が示された図が記載されている。
b また、他の「2つ」の補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結することについて、同段落【0049】には、「1本の杭を3つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程を図25A〜25Fに示す。・・・図25B:第1の補強梁20aの第1杭連結部4のフランジ38と第2の補強梁20bの第1杭連結部4′のフランジ38′とを突き合わせる。図25C:フランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。・・・図25E:フランジ38とフランジ38”と突き合わせると共に、フランジ38’とフランジ38”とを突き合わせる。図25F:フランジ38とフランジ38”とをボルト30で連結固定し、フランジ38’とフランジ38”とをボルト30で連結固定する。」と記載されている。
そうすると、上記ア(ア)d及びア(イ)cで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(カ)以上から、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3が請求項1を引用するものであったものを、独立形式に改めるとともに、
(ア)補強梁の「第1連結部」について、
a 「第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第1連結部と他の2つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定し、
(イ)補強梁の「第2連結部」について、
a 「第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第2柱部材に取り付けられる他の補強梁を「2つ又は3つ」とし、補強梁が「他の2つ又は3つの補強梁の連結部」と共同して第2柱部材の周囲を包囲するものに特定し、
c 第2連結部と他の2つ又は3つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定するものである。
(ウ)そうすると、訂正事項3に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
(ア)上記ア(ア)a及びア(イ)aについては、上記(1)イ(イ)において検討したのと同様である。
(イ)上記ア(ア)b及びア(イ)cに関し、他の「2つの」補強梁の連結部の端部と、補強梁の連結部の端部とをボルト連結することについては、上記(1)イ(オ)bで検討したのと同様である。
また、他の「3つ」の補強梁の連結部の端部と、補強梁の連結部の端部とをボルト連結することについては、段落【0050】に「1本の杭を4つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程を図26A〜26Iに示す。・・・図26B:第1の補強梁20aの第1杭連結部4のフランジ38と第2の補強梁20bの第1杭連結部4′のフランジ38′とを突き合わせる。図26C:フランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。・・・図26D:第3の補強梁20cの第1杭連結部4”のフランジ38”を第1の補強梁20aのフランジ38に近づける。・・・図26F:フランジ38とフランジ38”とをボルト30で連結固定する。・・・図26H:第4の補強梁20dの第1杭連結部4’’’のフランジ38’’’を第2の補強梁20bのフランジ38’及び第3の補強梁20cのフランジ38”と突き合わせる。図26I:フランジ38’とフランジ38’’’とをボルト30で連結固定し、フランジ38”とフランジ38’’’とをボルト30で連結固定する。」と記載されている。
そうすると、上記ア(ア)b及びア(イ)cで特定された事項は、本件明細書等に記載されているといえる。
(ウ)上記ア(イ)bについて、段落【0042】には、「補強梁D3は、2つの補強梁D2の第1杭連結部4が包囲した杭の残りの領域を包囲する形状を有している。この補強梁D3は図19に示す杭補強構造において、杭P3と杭P4との間を連結する。」と記載され、【図19】には、柱部材P3と、柱部材P3と隣接して設けられる柱部材P4との間に補強梁D3が取り付けられ、柱部材P3及びP4には補強梁D3と他の2つの補強梁が取り付けられ、補強梁D3と他の2の補強梁の連結部が共同して柱部材P3及びP4の周囲を包囲することが示されている。
また、【図21】には、柱部材P2と、柱部材P2と隣接して設けられる柱部材P9との間に補強梁D3が取り付けられ、柱部材P2には補強梁D3と他の2つの補強梁が取り付けられ、柱部材P9には補強梁D3と他の3つの補強梁が取り付けられ、補強梁D3と他の3つの補強梁の連結部が共同して柱部材P9の周囲を包囲することが示されている。
そうすると、上記ア(イ)bで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(エ)以上から、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであったものを、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるとともに、
(ア)補強梁の「第1連結部」について、
a 「第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第1柱部材に取り付けられる他の補強梁を「2つ又は3つ」とし、補強梁が「他の2つ又は3つの補強梁の連結部」と共同して第1柱部材の周囲を包囲するものに特定し、
c 第1連結部と他の2つ又は3つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定し、
(イ)補強梁の「第2連結部」について、
a 「第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第2連結部と他の2つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定するものである。
(ウ)そうすると、訂正事項4に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
(ア)上記ア(ア)a及びア(イ)aについては、上記(1)イ(イ)において検討したのと同様である。
(イ)上記ア(ア)bについて、段落【0042】には、「補強梁D3は、2つの補強梁D2の第1杭連結部4が包囲した杭の残りの領域を包囲する形状を有している。この補強梁D3は図19に示す杭補強構造において、杭P3と杭P4との間を連結する。」と記載され、【図19】には、柱部材P3と、柱部材P3と隣接して設けられる柱部材P4との間に補強梁D3が取り付けられ、柱部材P3及びP4には補強梁D3と他の2つの補強梁が取り付けられ、補強梁D3と他の2の補強梁の連結部が共同して柱部材P3及びP4の周囲を包囲することが示されている。
また、【図21】には、柱部材P2と、柱部材P2と隣接して設けられる柱部材P9との間に補強梁D3が取り付けられ、柱部材P2には補強梁D3と他の2つの補強梁が取り付けられ、柱部材P9には補強梁D3と他の3つの補強梁が取り付けられ、補強梁D3と他の3の補強梁の連結部が共同して柱部材P9の周囲を包囲することが示されている。
そうすると、上記ア(ア)bで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(ウ)上記ア(ア)c及びア(イ)bについては、上記(3)イ(イ)において検討したのと同様である。
(エ)以上から、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項5が請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであったものを、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるとともに、
(ア)補強梁の「第1連結部」について、
a 「第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第1柱部材に取り付けられる他の補強梁を「2つ又は3つ」とし、補強梁が「他の2つ又は3つの補強梁の連結部」と共同して第1柱部材の周囲を包囲するものに特定し、
c 第1連結部と他の2つ又は3つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定し、
(イ)補強梁の「第2連結部」について、
a 「第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることを特定し、
b 第2連結部と他の2つの補強梁の連結部の接合について、「他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結」するものに特定することにより限定するものである。
(ウ)そうすると、訂正事項5に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
(ア)上記ア(ア)a及びア(イ)aについては、上記(1)イ(イ)において検討したのと同様である。
(イ)上記ア(ア)bについて、【図21】には、柱部材P2と、柱部材P2と隣接して設けられる柱部材P9との間に補強梁D3が取り付けられ、柱部材P2には補強梁D3と他の2つの補強梁が取り付けられ、柱部材P9には補強梁D3と他の3つの補強梁が取り付けられ、補強梁D3と他の3の補強梁の連結部が共同して柱部材P9の周囲を包囲することが示されている。
また、本件明細書の段落【0069】には、「補強梁本体のそれぞれの端部に設けられる連結部は、1つの柱部材を4つ・・・の連結部で共同して包囲するような形状で構成されたものであっても良い。」と記載され、【図32A】には、隣接する2の柱部材の間に補強梁が取り付けられ、2の柱部材の両方に、補強梁と他の3つの補強梁が取り付けられることが示されている。
そうすると、上記ア(ア)bで特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(ウ)上記ア(ア)c及びア(イ)bについては、上記(3)イ(イ)において検討したのと同様である。
(エ)以上から、訂正事項5に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6ないし9
訂正事項6ないし9は、訂正前の請求項6ないし9が、請求項2を引用するものであったところ、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、請求項2を引用しないものに訂正するものであるから、訂正事項6ないし9に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(7)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、
(ア)訂正前の請求項10に記載の「本体部」を「補強梁本体部」とし、「第1補強梁」、「第2補強梁」を、それぞれ、「第1の補強梁」、「第2の補強梁」とし、第2柱部材を包囲する前記第1及び第2補強梁以外の他の補強梁を「第3の補強梁」とし、第1柱部材、第2柱部材を包囲する「工程」をそれぞれ、「第1柱部材包囲工程」、「第2柱部材包囲工程」とし、第1柱部材、第2柱部材と補強梁とを一体化する「工程」を、それぞれ、「第1柱部材一体化工程」、「第2柱部材一体化工程」として記載を明瞭にするとともに、
(イ)「複数の補強梁」が「第1の補強梁」、「第2の補強梁」、「第3の補強梁」のほかに、第3柱部材に連結される、「第4の補強梁」及び「第5の補強梁」を含むものと特定し、
(ウ)複数の補強梁は、それぞれが「補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた」ものと特定し、
(エ)第1柱部材ないし第3柱部材を包囲する工程について、
a 第1柱部材包囲工程が、「前記第1柱部材を、第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する」ものと特定し、
b 第2柱部材包囲工程が、「前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第3の補強梁それぞれの前記補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する」ものと特定し、
c 第3柱部材についても、「前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、前記第2の補強梁、前記第4の補強梁、前記第5の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程」を有することを特定し、
(オ)第1柱部材ないし第3柱部材を一体化する工程について、
a 第1柱部材一体化工程が、「前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する」ものに特定し、
b 第2柱部材一体化工程が、「前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する」ものに特定し、
c 第3柱部材についても、「前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程と、」を有するものに特定し、
(カ)さらに、「前記第1、第2柱部材一体化工程後、前記第1の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
前記第1、第3柱部材一体化工程後、前記第2の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、」を有することを特定することにより限定するものである。
そうすると、訂正事項10に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
(ア)上記ア(ア)に係る呼称の変更に係る訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
(イ)上記ア(イ)について、【図19】には、P1を第1柱部材、P2を第2柱部材、P3を第3柱部材とした場合に、第3柱部材は、P3とP1の間に取り付けられた第2の補強梁以外の第3柱部材に連結される、2つの補強梁を備えており、複数の梁は、第3柱部材に連結される、「第4の補強梁」及び「第5の補強梁」を含むことが示されているから、上記ア(イ)で特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(ウ)上記ア(ウ)について、本件明細書段落【0045】には、「補強梁C1〜C3及び補強梁D1〜D3は、図に示すように、第1杭連結部4と浮力函部3とはボルト30又は連結部材37によって結合される構造となっており、同じく第2杭連結部5と浮力函部3ともボルト30又は連結部材37によって結合される構造となっている。」と記載され、同段落【0038】には、「補強梁C2は、図15に示した補強梁C1において、第1杭連結部4の外周面に補強リブ18を設け、第2杭連結部5の外周面に補強リブ18′を設けたものである。
この補強リブ18、18′は第1及び第2杭連結部それぞれの外周面の杭長さ方向の所定高さに形成されており、リブの数は1つ又は複数設けられている。」と記載され、【図20】には、補強梁D1〜D3の第1杭連結部4、第2杭連結部5の外周面に補強リブ18、18′が形成されることが示されているから、上記ア(ウ)で特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(エ)上記ア(エ)ないし(カ)のうち、
a 第1ないし第3柱部材と第1ないし第5の補強梁の第1連結部及び第2連結部との関係について、【図19】には、
柱部材P1(第1柱部材)を、柱部材P1P2間の補強梁(第1の梁部材)の一端側の第1連結部と、柱部材P1(第1柱部材)と柱部材P3(第3柱部材)を連結するP1P3間の補強梁(第2の補強梁)の一端側の第1連結部とで包囲し、
柱部材P2(第2柱部材)を、柱部材P1P2間の補強梁(第1の梁部材)の他端側の第2連結部と、柱部材P2P4間の補強梁(第3の梁部材)の一端側の第1連結部とで包囲し、
柱部材P3(第3柱部材)を、柱部材P3P4間の補強梁(第4の補強梁)の一端側の第1連結部と、柱部材P3P5間の補強梁(第4の補強梁)の一端側の第1連結部とで包囲することが示され、
b (連結部が)補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態で連結部の端部同士をボルト接合することについて、
本件明細書段落【0046】には、「浮力函部3、第1杭連結部4及び第2杭連結部5が分離した状態にある補強梁を杭に取付ける作業について図22A〜図22Iに示す。まず、図15に示した補強梁C1を用いる場合について以下図に基づいて説明する。・・・図22B:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とを突き合わせる。図22C:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。」と記載され、また、同【0047】に、「図16に示した補強梁C2を用いる場合における補強梁の一体化工程を図23に示した。」と記載され、図23B及び図23Cには、図22B及び図22Cと同様に符号38、38′及び符号30が示された図が示され、同段落【0049】には、「1本の杭を3つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程を図25A〜25Fに示す。・・・図25B:第1の補強梁20aの第1杭連結部4のフランジ38と第2の補強梁20bの第1杭連結部4′のフランジ38′とを突き合わせる。図25C:フランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。・・・図25E:フランジ38とフランジ38”と突き合わせると共に、フランジ38’とフランジ38”とを突き合わせる。図25F:フランジ38とフランジ38”とをボルト30で連結固定し、フランジ38’とフランジ38”とをボルト30で連結固定する。」と記載され、同段落【0051】に、「上記で示した1本の杭を3つ又は4つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程においても、杭連結部と浮力函部との結合は図22A〜図22I及び図23A〜図23Iに示したボルト30による連結・・・も同様に適用し得る」と記載され、
c 柱部材包囲工程後、柱部材と連結部との間に充填剤を注入して柱部材と補強梁の連結部とを一体化することについて、
(a)本件明細書段落【0052】には、「このように連結部を杭に取り付けた後、杭と補強梁の第1杭連結部との取りあい部にグラウトを注入して杭と補強梁の第1杭連結部とを一体化する」と記載され、
(b)第1柱部材、第2柱部材及び第3柱部材について、充填剤が注入されて一体化されるのが、それぞれ、「前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間」、「前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間」、「前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間」であることは、上記aの検討から明らかであり、
d 柱部材一体化工程後、補強梁本体部と第1連結部及び第2連結部とを結合部材で結合させて一体化することについて、本件明細書段落【0008】の(17)の欄には、「(17)前記補強梁のそれぞれは、本体部と連結部とが分離可能に結合部材で結合された構成であって、前記一体化工程は、分離した連結部のそれぞれを各柱部材と一体化する工程であり、前記一体化工程の後に、前記連結部と前記本体部とを前記結合部材で結合することにより、前記柱部材と前記補強梁とを一体化する工程を含む」と記載されている。
そうすると、上記ア(エ)ないし(カ)で特定された事項は本件明細書等に記載されているといえる。
(オ)以上から、訂正事項10に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項10に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項11、12、13、14、15を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(9)訂正事項12
訂正事項12は、訂正前の請求項16が、請求項11〜15を引用するものであったところ、訂正事項11によって請求項11〜15が削除されたことに伴い、請求項11〜15を引用しないものに訂正するものであるから、訂正事項12に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(10)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、訂正前の請求項17に「補強梁の本体部」と記載されていたのを「補強梁本体部」とするとともに、訂正前の請求項17において、「補強梁の浮力函部に液体を注入して」「所定の深さに沈降させる」のが「補強梁」であったものを、「補強梁本体部」と特定して限定するものであるから、訂正事項13に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
「補強梁の本体部」を「補強梁本体部」と訂正した点が新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
また、「補強梁の浮力函部に液体を注入して」「所定の深さに沈降させる」のが「補強梁本体部」であることを特定した点について、本件明細書段落【0008】には、「(17)前記補強梁のそれぞれは、本体部と連結部とが分離可能に結合部材で結合された構成であって、前記一体化工程は、分離した連結部のそれぞれを各柱部材と一体化する工程であり、前記一体化工程の後に、前記連結部と前記本体部とを前記結合部材で結合することにより、前記柱部材と前記補強梁とを一体化する工程を含む・・・(19)前記補強梁の本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁を所定の深さに沈降させる工程を更に含む」と記載されており、補強梁が、「本体部」と「連結部」とが分離可能に結合部材で結合された構成であって、分離した連結部のそれぞれを各柱部材と一体化する一体化工程の後に、連結部と本体部とを結合部材で結合するにあたり、「液体」が「注入」されて「所定の深さに沈降」するのが「浮力函部」が形成された「補強梁本体部」であることは明らかである。
よって、訂正事項13に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項13に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項14
訂正事項14は、訂正前の請求項18が、請求項11〜15を引用するものであったところ、訂正事項11によって11〜15が削除されたことに伴い、請求項11〜15を引用しないものに訂正するものであるから、訂正事項14に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(12)訂正事項15
ア 訂正の目的について
訂正事項15は、訂正事項10において、訂正前の請求項10に記載されていた本体部の両端部にそれぞれ配置される「連結部」を、補強梁本体部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた「第1連結部及び第2連結部」と訂正するのに伴い、当該請求項10を間接的に引用する訂正前の請求項19において、「連結部」と記載されていたのを、「前記第1及び第2連結部」と訂正するものであるから、訂正事項15に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加について
本件明細書段落【0037】には、「第1杭連結部4は、一方の補強梁本体端部21に設けられた、取り付けられる杭周面の一部を覆うような形状を有する部位を有している。また、第2杭連結部5も同様に、他方の補強梁本体端部21′に設けられた、取り付けられる杭周面の一部を覆うような形状を有する部位を有している。」と記載されていることを踏まえると、訂正事項15に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項15に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)一群の請求項について
ア 訂正事項1ないし9に係る訂正前の請求項1ないし9及び20は、請求項2ないし9及び20はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項である。

イ 訂正前の請求項11、12、15ないし19は、それぞれ、訂正前の請求項10を引用しているものであって、訂正事項10によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項10〜12、15ないし19は一群の請求項である。
また、訂正前の請求項15ないし19は、それぞれ、訂正前の請求項13、14を引用しているものであって、訂正事項11によって記載が訂正される請求項13、14に連動して訂正されるものであるから、訂正事項11に係る請求項13、15ないし19及び請求項14ないし19は、それぞれ、一群の請求項である。
そして、共通する請求項15ないし19を有するこれらの一群の請求項は、組み合わされて、一群の請求項となるので、訂正事項10ないし15に係る訂正前の請求項10ないし19は一群の請求項である。
そうすると、本件訂正は、一群の請求項ごとに訂正の請求がされたものである。

(14)別の訂正単位とすることの求めについて
特許権者は、訂正後の請求項3ないし5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
しかし、訂正後に請求項3ないし5は独立請求項とされたところ、訂正後の請求項6ないし9及び20は、訂正後の請求項1を引用するとともに、訂正後の請求項3ないし5をも引用しているから、訂正後の請求項1、請求項6ないし9及び20、訂正後の請求項3、請求項6ないし9及び20、訂正後の請求項4、請求項6ないし9及び20並びに訂正後の請求項5ないし9及び20は、それぞれ一群の請求項であり、共通する請求項6ないし9及び20を有するこれらの一群の請求項は、組み合わされて、訂正後の請求項1、3ないし9及び20が1つの一群の請求項となる。
よって、訂正後の請求項3ないし5について別の訂正単位とする求めは認められない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−9、20〕、〔10−19〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正後の請求項1ないし20に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」という。)。

「【請求項1】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され、且つ前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されるものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項4】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項5】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項6】
前記第1連結部及び第2連結部の内壁面に充填材のずれ止め用のアンカー部材が設けられている請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の補強梁。
【請求項7】
前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成している請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の補強梁。
【請求項8】
複数の杭と、前記複数の杭によって支持された上部構造体とを有する水中構造物を補強梁を用いて補強する水中構造物の補強工法であって、前記補強梁として請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の補強梁を用いることを特徴とする水中構造物の補強工法。
【請求項9】
複数の前記柱部材は、地盤に設けられた基礎に下端部が固定された橋脚であり、前記構造物は複数の前記橋脚と、複数の前記橋脚によって支持された桁とを有する橋梁である請求項8に記載の水中構造物の補強工法。
【請求項10】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材と、前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた補強梁として第1の補強梁、第2の補強梁、第3の補強梁、第4の補強梁、及び第5の補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程と、
前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第3の補強梁それぞれの前記補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程と、
前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、前記第2の補強梁、前記第4の補強梁、前記第5の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程と、
前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第1柱部材一体化工程と、
前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第2柱部材一体化工程と、
前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程と、
前記第1、第2柱部材一体化工程後、前記第1の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
前記第1、第3柱部材一体化工程後、前記第2の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)
【請求項16】
複数の前記柱部材は水中の地盤に下端部が固定された柱部材であり、前記補強梁を水面に浮遊させる工程と、前記補強梁を取付けようとする二つの柱部材の一つに誘導する工程とを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の補強工法。
【請求項17】
前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁本体部を所定の深さに沈降させる工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の補強工法。
【請求項18】
複数の前記柱部材に支持材を取り付けておき、この支持材によって前記補強梁を支持する工程を含むことを特徴とする請求項10、16、17のいずれか1項に記載の補強工法。
【請求項19】
前記支持材は前記補強梁の前記第1及び第2連結部の下端部を構成するものであり、前記補強梁を前記支持材に取り付けることで前記補強梁の連結部の下端面を塞ぐ構成であることを特徴とする請求項18に記載の補強工法。
【請求項20】
複数の前記柱部材によって支えられた構造物であって、複数の前記柱部材のうち、互いに隣り合うn本の柱部材(但しn≧3)の間を請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の補強梁によって同一高さで連結し補強したことを特徴とする構造物。」

第4 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠として、以下の2に示す甲各号証を提出した。

(1)甲第1号証を主引用例とした場合
本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証の1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)甲第3号証の1を主引用例とした場合
ア 本件特許の請求項1、2、8及び9に係る発明は、甲第3号証の1に記載された発明である。
イ 本件特許の請求項3ないし7に係る発明は、甲第3号証の1に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものである。

2 申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証 : 特許第4864774号公報
甲第2号証 : 特許第4966748号公報
甲第3号証の1:吉原 到、
「供用中の桟橋を耐震補強する『伸縮式ストラット工法』
」、[online]、<URL:https://www.cgr.mlit.go.
jp/ctc/tech_dev/kouryu/T-Space/ronbun/pdf/20_totto
ri/20_tottori_4-4.pdf>
甲第3号証の2:国土交通省中国技術事務所
中国地方建設技術開発交流会トップページ、[online]
<URL:https://www.cgr.mlit.go.jp/ctc/tech_dev/
kouryu/kadai20.html>
甲第3号証の3:平成20年度中国地方建設技術開発交流会
<鳥取県会場>議事次第、[online]、<URL:
https://www.cgr.mlit.go.jp/ctc/tech_dev/kouryu/T-
Space/ronbun/pdf/20_tottori/20_tottori_sidai.pdf>
甲第4号証 :吉原 到、
「供用中の桟橋を耐震補強する『伸縮式ストラット工法』
」、[online]、<URL:https://web.archive.org/
web/20130122071146/https://www.cgr.mlit.go.jp/ctc/
tech_dev/kouryu/T-Space/ronbun/pdf/20_tottori/20_
tottori_4-4.pdf>

なお、甲第4号証は、甲第3号証の1についてインターネットアーカイブのウェブアーカイブサービスであるウェイバックマシン(<URL:https://web.archive.org/web/)に保存されていたものを印刷したものであり、そのURLから2013年には電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったものと認められる。

第5 取消理由通知において通知した取消理由の概要及び引用文献
1 取消理由の概要
当審が令和4年3月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1、2、8及び20に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。
(2)本件特許の請求項1ないし9及び20に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された発明に基いて、当業者が発明をすることができたものである。
(3)本件特許の請求項10、12ないし14、16、18に係る発明は、引用文献2に記載された発明である。
(4)本件特許の請求項10ないし19に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び3に記載された発明に基いて、当業者が発明をすることができたものである。

2 取消理由において引用した文献
引用文献1:吉原 到、
「供用中の桟橋を耐震補強する『伸縮式ストラット工法』」
[online]、<URL:https://web.archive.org/web/2013
0122071146/https://www.cgr.mlit.go.jp/ctc/tech_dev/kou
ryu/T-Space/ronbun/pdf/20_tottori/20_tottori_4-4.pdf>
(甲第4号証)
引用文献2:特開2008−297815号公報
(甲第2号証の公開公報)
引用文献3:特開2011−231519号公報
(当審において職権探知)
引用文献4:特許第4864774号公報
(甲第1号証)

第6 取消理由通知において通知した取消理由について
1 取消理由通知で引用した各引用文献の記載
(1)引用文献1(甲第4号証)
ア 引用文献1(甲第4号証)の記載
申立人が甲第4号証として提出した引用文献1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)「供用中の桟橋を耐震補強する
『伸縮式ストラット工法』
所属名:(社)日本埋立浚渫協会
あおみ建設株式会社
発表者: 吉原 到」(第1ページ第1〜5行)
(イ)「1.はじめに
社会資本整備予算が縮減される中、既存ストックを活用した港湾施設の耐震補強のニーズが高まっている。耐震強化岸壁の整備率の向上と臨海部都道府県全てに耐震強化岸壁の整備を目標として、国土交通省は、「耐震強化岸壁緊急整備プログラム」を策定した。このような社会情勢を受けて、今回当社では、岸壁を供用しながら耐震性の向上を図ることが出来る「伸縮式ストラット工法」を開発したので、紹介する。」(第1ページ第6〜11行)
(ウ)図―1は以下のとおり。



(エ)「2.開発の経緯
2.1 開発目標
桟橋を供用しながらの施工と工期短縮の実現のために、上部工の撤去が不要で水中作業の省力化を図ることを開発目標とした。
2.2 開発イメージ
桟橋の耐震性の向上は、図−2に示すように、鋼管杭を鋼材(ストラット部材と呼ぶ)で剛結し、鋼管杭の自由長を短縮して、鋼管杭の耐力に余裕をもたせることで実現させる。」(第1ページ下から13〜4行)
(オ)図―2は以下のとおり




上記(ウ)及び(エ)の記載を踏まえると、図―2からは、桟橋は、地盤に下端部が固定された、それぞれ隣接して並ぶ鋼管杭4本を有し、上部工は4本の鋼管杭を含む鋼管杭で支持され、隣接する鋼管杭のそれぞれは、ストラット部材で同じ高さで剛結されていることが看取できる。
また、下記(ク)の記載も踏まえると、ストラット部材は、鞘管部によって鋼管杭に剛結され、一のストラット部材の鞘管部は、剛結される鋼管杭の周囲の一部を覆い、4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭は、一のストラット部材の鞘管部が、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部と共同して該鋼管杭の周囲を包囲することが看取される。
(カ)「3.開発の内容
3.1 ストラット部材の分割・結合方法の選定
上部工を撤去せずに鋼管杭に部材を追加する方法として、部材を分割して現場で結合する4案について比較検討を行った。比較表を表―1に示す。
○1(当審注:○1は丸数字の1を示す。他の数字も同様。)ボルト結合は、事前の高精度な水中測量が必要である。
・・・
○4伸縮モルタル接合は、水中でグラウトによる結合作業が必要だが、比較的構造が単純であり、既設杭への追随性が高い。
既設杭への追随性、製作費、施工性を指標に総合的に判断して、伸縮モルタル接合を採用した。」(第2ページ第14〜28行)
(キ)表―1は以下のとおり。



上記(カ)及び下記(ク)の記載を踏まえると、上記表―1の「方法」が「○1ボルト接合」のストラット部材は、ストラット部材の一端に設けられる鞘管部を有する部分と、ストラット部材の他端に設けられる鞘管部を有する部分と、中央の部分と、の3に分割され、中央の部分とストラット部材の一端及び他端に設けられる鞘管部を有する部分とは、ボルト接合されることが看取される。
(ク)「3.2 伸縮式ストラット部材の構造
伸縮式ストラット部材は、接合部材の“ストラット部”とストラット部材を既設杭に剛結する“鞘管部”とから構成される。図―5に伸縮式ストラット部材の伸縮イメージを示す。」(第3ページ第1〜5行)
(ケ)図―5は以下のとおり。



図―5からは、鞘管部は鋼管杭の外周の半周を覆う構成であって、鋼管杭に取り付けられるストラット部材の鞘管部の端部と、他の鞘管部の端部とを連結していることが看取される。
(コ)「5.5 グラウト注入工(STEP6)
伸縮部ならびに鞘管部のシール材を確認後、グラウト注入する。・・・」(第5ページ1〜3行)

イ 引用発明1
引用文献1は、上部工を撤去せずに鋼管杭に部材を追加する方法として表―1に示される、部材を分割して現場で結合する4案について比較検討を行ったうち、○4伸縮モルタル接合を採用したものについての報告であるが、補強梁について、当該4案のうち○1ボルト接合のストラット部材に着目すると、○1ボルト接合について記載されている以外の構成については、○4伸縮モルタル接合と同様であると解するのが自然であるから、上記アより、引用文献1には、○4伸縮モルタル接合に代えて○1ボルト接合のストラット部材を採用した、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
「鋼管杭を剛結して桟橋の耐震性の向上を図るストラット部材であって、
桟橋は、地盤に下端部が固定された、それぞれ隣接して並ぶ鋼管杭4本を有し、上部工は4本の鋼管杭を含む鋼管杭で支持され、隣接する鋼管杭のそれぞれは、ストラット部材で同じ高さで剛結され、
ストラット部材は、鞘管部によって鋼管杭にグラウト注入により剛結され、4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭において、一のストラット部材の鞘管部は、剛結される鋼管杭の外周の半周を覆い、一のストラット部材の鞘管部の端部と、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部の端部とを連結して、他の一つのストラット部材の鞘管部と共同して該鋼管杭の周囲を包囲するものであり、
ストラット部材は、ストラット部材の一端の鞘管部を有する部分と、ストラット部材の他端の鞘管部を有する部分と、中央の部分と、の3に分割され、中央の部分とストラット部材の一端の鞘管部を有する部分及びストラット部材の一端の鞘管部を有する部分とは、それぞれ、ボルト接合される、
ストラット部材。」

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
水底地盤に適宜間隔をもって打設された杭と、これら杭の頭部に形成された上部構造物とからなる水中構造物であって、前記各杭に鞘管が設置され、該鞘管に突設した中空の連結管が、隣接した杭に設置された鞘管における中空の連結管と接合されて補強用水平部材が形成されたことを特徴とする水中構造物。
・・・
【請求項5】
鞘管は、半割片の一端にヒンジが設置されて開閉自在であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水中構造物。」
(イ)「【発明の効果】
【0006】
各杭間にわたって補強用水平部材が形成されたことにより、水中構造物の剛性が高められる。また補強用水平部材は上下に複数設置され、さらに上部構造物と上部構造物近傍の鞘管との間、または鞘管間にブレース材がそれぞれ設置され、該ブレース材が所定の緊張力で緊張されたことにより、水中構造物の剛性がさらに高められる。また水中構造物の剛性が高められたことによって杭の応力が小さくなるため構造物の断面を小さくすることができる。また各杭に、中空の連結管が突設された鞘管を設置し、これらの鞘管を、連結管内にバラスト水を注入して所定の深さに沈設した後、連結管同士を接合して補強用水平部
材を形成することにより、水中構造物の補強を施工良く行うことができる。また鞘管を水面に浮かせた状態で杭への取り付け作業ができるので効率的である。またブレース材の上部構造物への設置が、上部構造物の上面からできるので作業性が良くなる。」
(ウ)「【0008】
図1は第1の実施の形態の水中構造物1である。この水中構造物1は杭式桟橋であり、水底地盤2に適宜間隔をもって立設した杭3と、水面から突出した杭の頭部に設置された上部構造物4とから構成されている。
【0009】
この杭3は鋼管杭であり、頭部に上部構造物4である鉄筋コンクリート板5が鉄筋コンクリート梁6を介して設置されている。また、これらの杭3の水中部、すなわち水面から適宜深さの箇所には鞘管7が設置され、この鞘管7に突設した連結管8が、隣接した杭の鞘管7における連結管8とグラウト9で接合されて補強用水平部材10を形成している。
【0010】
この補強用水平部材10は、図1の(2)において杭間の縦方向および横方向に形成されて格子を構成し、この格子の交点に杭3が位置している。また鞘管7は、半割片11の一端にヒンジ12が設置されて開閉自在に形成され、他端には半割片11を閉じたときに合わさる接合片13が形成され、これらがボルト14で締め合わされる。
【0011】
そして、このヒンジ12を中心に半割片11を回転させて開いた状態にし、杭3を取り巻くようにして半割片11を閉じて接合片13をボルト14で締め合わせると、杭3に嵌め合わされ、該杭3と鞘管7との間隙部15にグラウト9を充填して杭3に固定する。
【0012】
この鞘管7には三本または四本の連結管8が突設され、三本の連結管8が突設した鞘管7は外側の杭に設置され、四本の連結管8が突設された鞘管7は内側の杭に設置されている。また鞘管7は連結管8が中空であるため、杭3に設置する際には水面に浮くが、連結管8の上面における注入口16からバラスト水を注入することにより、杭3の任意の深さに沈設することができる。」
(エ)「【0020】
次に、第1の実施の形態の水中構造物の補強方法を、上記の第1の実施の形態の水中構造物1に基づいて説明する。これは水底地盤2に適宜間隔ごとに立設した杭(鋼管杭)3と、水面から突出した杭3の頭部に設置された上部構造物4とから構成された水中構造物1、例えば杭式桟橋を補強するものである。
【0021】
はじめに、補強用水平部材10を形成する鞘管7を杭3に設置するが、外側(沖側)の杭に設置する三本の連結管8を備えた鞘管7と、内側(岸側)の杭に設置する四本の連結管8を備えた鞘管7とを使用する。
【0022】
この鞘管7は連結管8が中空であるため水面に浮かべることができ、かつ一端のヒンジ12を中心に半割片11が回転自在であるため、図8の(1)に示すように、半割片11をヒンジ12で回転させて他方を開いた状態にして水面に浮かべる。そして、この浮かべた状態で杭3を巻き込むようにして、半割片11の接合片13を合わせてボルト14で締め付けると鞘管7が杭3に取り付けられて、これらの間に適宜間隙部15が形成される。このとき連結管8は、図8の(2)に示すように、隣接したもの同士が適宜間隙部28をもって向き合った状態になる。
【0023】
次に、図9に示すように、鞘管7の各連結管8に注水口16からバラスト水29を注入すると、鞘管7が杭3をガイドに沈下して突起片30で止められる。そして、図10に示すように、鞘管と杭との間隙部15にグラウト9を充填すると共に、向き合った連結管8同士の間隙部28にグラウト9を充填すると鞘管7が杭3に固定され、かつ連結管8同士が一体接合される。
【0024】
そして、この作業を順次繰り返して各杭3に鞘管7を設置するとともに、これら鞘管7の連結管8同士を連結すると、格子の交点に杭3が位置した平面格子状の補強用水平材10(当審注:「補強用水平材10」は「水平材補強部材10」の誤記と認める。)が形成されて水中構造物1が補強される。また第2の実施の形態の水中構造物19、すなわち上下に補強用水平部材10が設置されたものも同じ方法で形成する。」
(オ)図1〜図3は以下のとおり。





(カ)上記(ウ)の記載を踏まえると、図1からは、杭3は、沖側、中央、及び岸側の3列のそれぞれに3本以上が、直線状に並んで立設されている様子が看取される。以下、便宜上、沖側の杭について、岸から沖側を見て右から順に杭A、杭B、杭C、中央の杭を同様に杭D、杭E、杭F、岸側の杭を同様に杭G、杭H、杭Iという。また、それぞれの杭の間に設けられる補強用水平部材は、鞘管7が取り付けられる杭の呼称により、補強用水平部材AB等という。
図1ないし図3からは、以下の事項が看取できる。

杭Dは、補強用水平部材ADのD側が突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材DGのD側とが突設する鞘管7の半割片11とにより包囲され、
杭Gは、補強用水平部材DGのG側が突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材GHのG側が突設する鞘管7の半割片11により包囲され、
杭Hは、補強用水平部材EHのH側と補強用水平部材GHのH側とが突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材HIのH側とが突設する鞘管7の半割片11とにより包囲されている点。

(キ)図8の記載は以下のとおり




上記(エ)の記載を踏まえると、上記図8からは、突起片30は、杭に取付けられたものであることが看取される。

イ 引用発明2
上記アより、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(引用発明2)
「水中構造物1は、水底地盤2に適宜間隔をもって立設した杭3と、水面から突出した杭の頭部に設置された上部構造物4とから構成され、
杭3には鞘管7が設置され、この鞘管7に突設した連結管8が、隣接した杭の鞘管7における連結管8と接合されて補強用水平部材10を形成し、
鞘管7は、半割片11の一端にヒンジ12が設置されて開閉自在に形成され、他端には半割片11を閉じたときに合わさる接合片13が形成され、これらがボルト14で締め合わされ、
各杭間にわたって補強用水平部材が形成されたことにより、水中構造物の剛性が高められるものであり、
この水中構造物1を補強する、水中構造物の補強方法は、
三本または四本の連結管8を備えた鞘管7を使用し、
鞘管7は連結管8が中空であるため水面に浮かべることができ、半割片11をヒンジ12で回転させて他方を開いた状態にして水面に浮かべ、浮かべた状態で杭3を巻き込むようにして、半割片11の接合片13を合わせてボルト14で締め付けると鞘管7が杭3に取り付けられて、これらの間に適宜間隙部15が形成され、このとき連結管8は、隣接したもの同士が適宜間隙部28をもって向き合った状態になり、
次に、鞘管7の各連結管8に注水口16からバラスト水29を注入し、鞘管7が杭3をガイドに沈下して杭に取り付けられた突起片30で止められ、鞘管と杭との間隙部15にグラウト9を充填すると共に、向き合った連結管8同士の間隙部28にグラウト9を充填すると鞘管7が杭3に固定され、かつ連結管8同士が一体接合され、
この作業を順次繰り返して各杭3に鞘管7を設置するとともに、これら鞘管7の連結管8同士を連結すると、格子の交点に杭3が位置した平面格子状の補強用水平材10が形成されて水中構造物1が補強される、
水中構造物の補強方法であって、
杭Dは、補強用水平部材ADのD側が突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材DGのD側が突設する鞘管7の半割片11により包囲され、
杭Gは、補強用水平部材DGのG側が突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材GHのG側が突設する鞘管7の半割片11とにより包囲され、
杭Hは、補強用水平部材EHのH側と補強用水平部材GHのH側とが突設する鞘管7の半割片11と、補強用水平部材HIのH側とが突設する鞘管7の半割片11とにより包囲されている、
水中構造物の補強方法。」

(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には以下の記載がある。
(ア)「【0015】
図2(a)に示すように補強梁1は前後左右の4つの壁体2と、該壁体2によって形成される内部空間を中央区画部4と左右の第1区画部5及び第2区画部6とに分ける二つの仕切壁3と、中央区画部4の底板14及び頂板15とからなり、中央区画部4は浮力函部4を構成し、第1区画部5及び第2区画部6はその前面の壁体が開閉可能な蓋部8となっていて補強梁1を杭に取り付けるための第1杭連結部5及び第2杭連結部6を構成している。図2(a)に示したものでは蓋部はヒンジによって開閉可能となっており、ボルトによって補強梁本体に締結される。」
(イ)「【0017】
第1杭連結部5は壁体2と、仕切壁3と、該壁体2及び仕切壁3の上端部及び下端部に設けられた塞ぎ板9とからなっており、第2杭連結部6も第1杭連結部5と同一の構造を有している。図中に示したグラウトシール10は図2(c)に示されるように補強梁1を支持する支持材12に取り付けられている部材である。第1連結部5及び第2連結部6の下端部に設けられた塞ぎ板9及び支持材12に取り付けられたグラウトシール10は、第1杭連結部5及び第2杭連結部6が杭11、11’を包囲したときに杭連結部と杭とによって形成される空間の下端部を塞ぐようになっている。塞ぎ板9及びグラウトシール10は、杭連結部5、6を杭11、11’に取り付けた後に、杭11と杭連結部5、6の取り合い部にグラウトを注入して杭11と杭連結部5、6とを一体化する際に注入したグラウトが漏出するのを防ぐ。
前記塞ぎ板9は後述するように支持材が塞ぎ板を兼ねるようにする場合には、第1及び第2杭連結部の内壁の上端部のみに設けるようにしても良い。
なお、本願明細書では補強梁と杭とを一体化するためにグラウトを用いる場合について説明しているが、グラウトの代わりにコンクリートを用いても良い。
【0018】
図3、図4に補強梁を支持する支持材12の一例を示す。支持材は受け材とこの受け材を支持する支持板とから構成することができる。
図3(a)に示した例では支持材12は、4分割された受け材17と複数の支持板13とからなり、各受け材17と各支持板13は、補強梁1の施工前に水中溶接又はボルトによって杭11に取り付けておく。支持材12は補強梁の鉛直方向の位置決めをすると共に、グラウト打設時の荷重を一時的に支持する機能を有する。図3(b)は図3(a)の支持材12の上面図である。図3(c)に示すように、受け材17の上面にはグラウトシール10を取り付けておき、グラウト打設時に塞ぎ板9と支持材12との間をシールしてグラウトが漏れるのを防ぐ。
【0019】
また、図4は支持材の他の実施態様を示す図である。この例では、支持材は図4(b)に示すように4分割された受け材17と複数の支持板13とからなり、受け材17を第1杭連結部及び第2杭連結部の形状に合わせて四角形状とし、その上に同じく四角形状の外観を有するグラウトシールを載置し、杭連結部の底面部の壁体端部と支持材との間をグラウトシールでシールしたものである。このように支持材が第1、第2杭連結部の塞ぎ板を兼ねることにより、図3に示したような杭連結部の底面側の塞ぎ板を省略することができる。なお、図4(c)ではシール効果を確実にするために壁体端部に端部部材16を設けたが、壁体の厚みが充分ある場合にはこの端部部材は省略することができる。
施工後の補強梁は、引張り力に対してはボルトが抵抗し、補強梁が受ける圧縮力に対してはグラウトが抵抗する。」
(ウ)「【0022】
杭連結部の内壁には図7に示すようなグラウトのずれ止め用のアンカー部材を設けることによってグラウトのずれを防ぐことができる。」

イ 引用文献3に記載の発明ないし技術
上記アより、引用文献3には、以下の3の発明ないし技術(以下、それぞれを、「引用文献3記載技術A」、「引用発明3B」、「引用文献3記載技術C」という。)が記載されている。
(ア)引用文献3記載技術A
「補強梁1を杭に取り付けるにあたり、杭連結部5、6を杭11、11’に取り付けた後に、杭11と杭連結部5、6の取り合い部にグラウトを注入して杭11と杭連結部5、6とを一体化する際に、
杭連結部の内壁にグラウトのずれ止め用のアンカー部材を設けることによってグラウトのずれを防ぐ技術。」
(イ)引用発明3B
「二つの仕切壁3により内部空間を中央区画部4と左右の第1区画部5及び第2区画部6とに分け、中央区画部4は浮力函部4を構成した補強梁1。」
(ウ)引用文献3記載技術C
「補強梁の鉛直方向の位置決めをすると共に、グラウト打設時の荷重を一時的に支持する機能を有する支持材12に関し、
支持材12は、4分割された受け材17と複数の支持板13とからなり、各受け材17と各支持板13は、補強梁1の施工前に杭11に取り付けておくものであり、
支持材が補強梁1を杭に取り付けるための第1、第2杭連結部の塞ぎ板を兼ねることにより、杭連結部の底面側の塞ぎ板を省略することができる技術。」

(4)引用文献4(甲第1号証)
ア 引用文献4の記載
引用文献4には以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した桟橋、ドルフィン、橋脚などの水域構造物を補修乃至補強する施工方法につき、特に、ストラット部材を用いて水域構造物の基礎杭同士を連結することにより水域構造物の下部構造物を補剛する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物として知られる桟橋、ドルフィン、橋脚などの水域構造物は、水底地盤に打ち込まれ水面より上に突出した複数の杭を脚柱とする下部構造物と、水面より上に敷設した床板等からなる上部構造物より構成される。
上記の下部構造物は一般に、海底あるいは湖底といった地盤に複数本の杭群を鉛直方向に打ち込んで構築される。また、上記の上部構造物は一般に、これら杭群の上端部に梁を複数本架設し、これら梁群の間に床板を張り渡して構築される。
ところで、水域構造物の耐震性能を向上させたり、老朽化した水域構造物を補強したりすることを目的として従来より、非特許文献1に記載の施工方法が知られている。
非特許文献1に記載の格点式ストラット工法は、水域構造物の下部構造物になる既設杭同士に夫々鞘管を取り付ける。鞘管は桟橋の既設杭の外周を包囲する。これら鞘管は水平方向に延在するストラット部材の両端と剛に結合する。あるいは、これら鞘管は鉛直と斜め方向に延在するブレース部材とピン結合する。あるいは、これら鞘管は鉛直と斜め方向に延在するストラット部材と剛に結合する。あるいは、これら鞘管は上述したストラット部材およびブレース部材の組み合わせと結合する。以上より水域構造物の脚柱である既設杭同士を連結して、水域構造物の下部構造物を補剛するものである。
【非特許文献1】(財)沿岸開発技術研究センター編 「格点式ストラット工法技術マニュアル」 平成12年9月発行 p.9−82」
(イ)「【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本発明になる第1実施例の補強工法の施工手順を示すフローチャートである。図2〜図6はこのフローチャートの則り施工する第1実施例の補強工法を施工中の桟橋を示す図である。図7〜図9は第1実施例の補強工法を施工後の桟橋を示す図である。
図2に示すように、補強工法の対象である既設の桟橋1は、脚柱2からなる下部構造物と、床板および梁等からなる上部構造物3とから構成される。桟橋1の下部構造物である脚柱2は、複数本の鋼管杭からなり、鋼管杭2の下端を地盤に打ち込んである。水面から突出した鋼管杭2の上端は、上部構造物3を支持する。
【0008】
第1実施例の補強工法はまず、桟橋から離れた位置で、複数の鋼管杭2からなる下部構造物の補強に供するストラット部材4を水面に浮かべる。ストラット部材4は鋼管からなり、水没しないよう発泡スチロール等でできたフロータを取り付ける。あるいは、ストラット部材4の両端を水密に密封しておき、ストラット部材4自身にフロータの機能をもたせてもよい。あるいは、これらの組み合わせにより、ストラット部材4を水面に浮かべる。
【0009】
ストラット部材4は入れ子状であって、両端間が伸縮可能である。
図3は両端間を短くしたストラット部材4にフロータ6を取り付けて水面に浮かべた状態を示す図であり、(a)は水面方向から見た側面図である。また(b)は上方から見た平面図である。図3に示すようにストラット部材4は、両端が夫々半割形状の鞘管部5と結合している。鞘管部5は、図3(b)に示すように中空円筒を半割にした半円状であり、杭2の周囲を包囲するのに適した形状である。半割にされた端面には、フランジ5fを立接し、該フランジ5fには接合ボルト5bを挿通しておく。また、これらフランジ5fを補強するためのリブ板5rを設ける。そして図3(a)に示すように、鞘管部5が上下方向に延在する姿勢でストラット部材4を略水平に浮かべる。
そしてストラット部材4を水面に浮かべた状態で、図2に示すように鋼管杭2の間まで曳航する。
【0010】
ストラット部材4は、中空の外管7と、該外管7の中に長手方向相対移動可能に設けられた内管8とを具え、外管7の一端から内管8を引出し乃至引込むことにより伸縮可能である。外管7の他端には半割形状の鞘管部5を結合する。また内管8の両端のうち、外管7の中にある一端と反対側の他端にも半割形状の鞘管部5を結合する。図2および図3に示すように、ストラット部材4を曳航する工程では、両端間を短くしておく。杭2,2間にストラット部材4を曳航してセットする作業を容易にするためである。
【0011】
図3に示すようにストラット部材4の端部にはストラット部材4を挟んで一対のフロータ6,6を取り付ける。フロータ6は大きな浮力が得られる発泡スチロール製またはFRP製等が考えられる。
【0012】
図2に示すように短くしたストラット部材4を、杭2,2間に曳航すると、このストラット部材4の両端を伸ばして、図4に示すようにストラット部材4の両端を杭2に合わせる。そして、複数のストラット部材4を一列に隣接配置し、隣接するストラット部材4の端部である鞘管部5同士を一体に連結する。これにより、半割形状の鞘管部5,5は杭2を包囲するよう相互に接合される。具体的には、鞘管部5のフランジ5f同士を突き合わせ、接合ボルト5bを締結する。以上より、ストラット部材4を杭2,2間にセットする。
(ウ)「【0028】
次に、鞘管部5の変形例に係る第2実施例を説明する。図12は第2実施例のストラット部材4を曳航して杭2,2間にセットする様子を示す平面図である。図13は第2実施例のストラット部材4を杭2に取り付けた状態を示す平面図である。第2実施例のストラット部材4の両端には杭2の杭体周囲を包囲するのに適した半割形状の鞘管部5を設けている点で、上述した図1〜図11に示す第1実施例と共通する。しかしながら、この鞘管部5の内周面5Sの中心軸線nをストラット部材4の長手方向軸Oに対し斜め方向に向けてストラット部材4の両端に結合した点で異なる。」
(エ)【図5】は以下のとおり。



上記(イ)の記載を踏まえると、上記図5からは、中空円筒を半割にした半円状の鞘管部5の端面に立接したフランジ5fを補強するためのリブ板5rは、フランジ5fからフランジ付近の鞘管部5に亘って杭長さ方向の所定高さに複数設けられることが看取される。
(オ)【図12】は以下のとおり




上記(ウ)の記載を踏まえると、上記図12からは、それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭2のうち中央の2本の鋼管杭は、一のストラット部材4の鞘管部5が、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材4の鞘管部5と共同して該鋼管杭の周囲を包囲すること、鞘管部5の端部を結ぶ直線とストラット部材4の長手方向軸Oとのなす角度が略45度程度となるように構成されていることが看取される。

イ 引用発明4
上記アより、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

(引用発明4)
「老朽化した桟橋などの水域構造物を、ストラット部材を用いて水域構造物の基礎杭同士を連結することにより水域構造物の下部構造物を補剛する技術に関し、
補強工法の対象である既設の桟橋1は、脚柱2からなる下部構造物と、床板および梁等からなる上部構造物3とから構成され、脚柱2は、複数本の鋼管杭からなり、鋼管杭2の下端を地盤に打ち込んであり、水面から突出した鋼管杭2の上端は、上部構造物3を支持するものであり、
ストラット部材4は、中空の外管7と、該外管7の中に長手方向相対移動可能に設けられた内管8とを具え、
外管7の他端には半割形状の鞘管部5を結合し、内管8の両端のうち、外管7の中にある一端と反対側の他端にも半割形状の鞘管部5を結合し、
鞘管部5は、中空円筒を半割にした半円状であり、半割にされた端面には、フランジ5fを立接し、これらフランジ5fを補強するためのリブ板5rを設け、
リブ板5rは、フランジ5fからフランジ付近の鞘管部5に亘って杭長さ方向の所定高さに複数設けられており、
隣接するストラット部材4の端部である鞘管部5同士を一体に連結することにより、半割形状の鞘管部5,5は、鞘管部5のフランジ5f同士を突き合わせ、接合ボルト5bを締結して杭2を包囲するよう相互に接合され、
それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭2のうち中央の2本の鋼管杭は、一のストラット部材4の鞘管部5が、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材4の鞘管部5と共同して該鋼管杭の周囲を包囲し、
鞘管部5の端部を結ぶ直線とストラット部材4の長手方向軸Oとのなす角度が略45度程度となるように構成されている、
ストラット部材4。」

2 当審の判断
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「地盤に下端部が固定された、それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭」のうち中央の2本の鋼管杭のいずれか一方の鋼管杭は、鋼管杭が柱状であることを踏まえると、本件訂正発明1の「地盤に下端部が固定された第1柱部材」に相当し、他方の鋼管杭は、同様に本件訂正発明1の「前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材」に相当する。
(イ)引用発明1の「4本の鋼管杭を含む鋼管杭で支持され」る「上部工」及び「桟橋」は、本件訂正発明1の「前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体」及び「構造物」に相当する。
(ウ)引用発明1の「ストラット部材」は、「鋼管杭を剛結して耐震性の向上を図る」ものであり、「梁」状の部材であることは自明であるから、本件訂正発明1の「補強梁」に相当する。
(エ)引用発明1の「ストラット部材」の「中央の部分」は、本件訂正発明1の「補強梁本体部」に相当する。
(オ)引用発明1の「ストラット部材」の「中央の部分」と「ストラット部材の一端及び他端に設けられる鞘管部を有する部分」とは、それぞれ、「ボルト接合」されるものであるから、引用発明1の「地盤に下端部が固定された、それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭」のうち中央の2本の鋼管杭のいずれか一方の鋼管杭(第1柱部材)に取り付けられる「ストラット部材の一端に設けられる鞘管部を有する部分」は、本件訂正発明1の「前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部」に相当し、他方の鋼管杭(第2柱部材)に取り付けられる「ストラット部材の他端の鞘管部を有する部分」は、本件訂正発明1の「前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部」に相当する。
(カ)上記(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、引用発明1の「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」のいずれか一方の鋼管杭(第1柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部が、鋼管杭の外周の半周を覆」うことは、本件訂正発明1の「前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であ」ることに相当する。
(キ)本件訂正発明1の「前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト結合して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成される」ことと、引用発明1の、「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」のいずれか一方の鋼管杭(第1柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部の端部と、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部の端部とを連結して、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部と共同して該鋼管杭の周囲を包囲するものであ」ることとは、「前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とを結合して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成される」ものである点で共通する。
(ク)引用発明1の「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」の他方の鋼管杭(第2柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部が、鋼管杭の外周の半周を覆」うことは、本件訂正発明1の「前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であ」ることに相当する。
(ケ)本件訂正発明1の「前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト結合して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成される」ことと、引用発明1の、「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」の他方の鋼管杭(第2柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部の端部と、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部の端部とを連結して、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材の鞘管部と共同して該鋼管杭の周囲を包囲するものであ」ることとは、「前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とを結合して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成される」ものである点で共通する。
(コ)そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部との端部とを連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されるものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とを連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されている補強梁。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1A)
本件訂正発明1は、「前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され」るのに対して、引用発明1は、そのように特定されていない点。
(相違点1B)
本件訂正発明1は、「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、また、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」るのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。
(相違点1C)
「前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部との端部と」の連結、「前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と」の連結が、本件訂正発明1では、「ボルト」連結であるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

新規性に関する判断
上記ア(コ)で検討したように、本件訂正発明1と引用発明1とは相違点1Aないし1Cで相違するから、本件訂正発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。

進歩性に関する判断
事案に鑑み、まず、相違点1Bについて検討する。
(ア)引用発明2は、「鞘管7に突設した連結管8が、隣接した杭の鞘管7における連結管8と接合され」て補強梁に相当する「補強用水平部材10」を形成するものであって、「補強梁本体部」と、一端部及び他端部に、「結合部材で分離可能に結合して」連結部が設けられるものではなく、杭を包囲する「鞘管7」に「鞘管7」の「半割片11を閉じたとき」に「ボルト14で締め合わされ」る「接合片13」が形成されることは記載されているものの、リブを設けることについては、記載も示唆もされていない。
(イ)引用文献3に記載された「補強梁」は、「補強梁本体部」と、一端部及び他端部に、「結合部材で分離可能に結合して」連結部が設けられるものではなく、一の補強梁の連結部が、他の補強梁の連結部とともに柱部材を包囲するものでもなく、リブを設けることについても記載も示唆もされていない。
(ウ)引用発明4の「鞘管部5」が「半割にされた端面には、フランジ5fを立接し、これらフランジ5fを補強するためのリブ板5rを設け、リブ板5rは、フランジ5fからフランジ付近の鞘管部5に亘って杭長さ方向の所定高さに複数設けられて」いることは、本件訂正発明1の「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることと、「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から、杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から、杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」る点で共通するといえる。
しかし、引用発明4の「補強梁」は、「補強梁本体部」と、一端部及び他端部に、「結合部材で分離可能に結合して」連結部が設けられるものではなく、「補強梁本体部との結合部位」が存在せず、「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って」リブを設けることについては記載も示唆もしない。
また、「リブ板5r」は、「フランジ5fを補強するため」に設けられるものであるから、引用発明4のリブ板を設ける技術を引用発明1に適用したとしても、「鞘管部の端部」の近傍にリブを設けて「鞘管部の端部」の近傍のみを補強するものとはなるものの、「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って」リブを設けるものまで想起できるものではない。
(エ)以上検討したように、「補強梁本体部」と、前記「補強梁本体部」の一端部及び他端部に、結合部材で分離可能に結合してそれぞれ設けられた「第1連結部」及び「第2連結部」と、を有する補強梁において、「第1連結部」及び「第2連結部」の「外周」で「連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることは、引用文献2ないし引用文献4のいずれにも記載も示唆もされておらず、本件訂正発明1の上記相違点1Bに係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

エ 小括
本件訂正発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
本件訂正発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明3ないし5
ア 対比、判断
本件訂正発明3ないし5は、いずれも、本件訂正発明1の相違点1Bに係る「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、また、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」との構成を備えるものであるから、本件訂正発明3ないし5と引用発明1とを対比すると、少なくとも、本件訂正発明1と引用発明1との相違点である相違点1Bと同様の相違点(以下「相違点1B’」という。)で相違する。
そうすると、上記(1)ウで検討したのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された発明から、本件訂正発明3ないし5の相違点1B’に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

イ 小括
本件訂正発明3ないし5は、引用文献1に記載された発明ではない。
本件訂正発明3ないし5は、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明6ないし9及び20
本件訂正発明6ないし9及び20は、本件訂正発明1、3ないし5のいずれかを直接または間接的に引用するものであり、本件訂正発明6ないし9及び20と引用発明1とは、少なくとも、本件訂正発明1と引用発明1との相違点と同様の相違点を有するから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件訂正発明10
ア 対比
本件訂正発明10と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2における「杭G」、「杭D」及び「杭H」について、「杭G」は、「水底地盤2に」「立設した杭3」であり、「杭D」は、「杭G」の「沖側」に「隣接して設けられ」たものであり、「杭H」は、「杭G」の「岸から沖側を見て左側」に「隣接して設けられ」たものである。そうすると、引用発明2の「杭G」、「杭D」及び「杭H」は、それぞれ、本件訂正発明10の「地盤に下端部が固定された第1柱部材」、「前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材」及び「前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材」に相当する。
(イ)引用発明2の「沖側、中央、及び岸側の3列のそれぞれに3本以上が、直線状に並んで立設され」た「杭3」の「頭部」に「上部構造物4」が「設置された」「水中構造物」は、本件訂正発明10の「前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物」に相当する。
(ウ)本件訂正発明10の「補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた補強梁」と、引用発明2の「半割片11の一端にヒンジ12が設置されて開閉自在に形成され、他端には半割片11を閉じたときに合わさる接合片13が形成され、これらがボルト14で締め合わされ」た「鞘管7に突設した連結管8が、隣接した杭の鞘管7における連結管8と接合されて」「形成し」た「補強用水平部材10」とは、「補強梁」である点で共通する。
(エ)上記(ア)及び(ウ)の対比を踏まえると、引用発明2の「補強用水平部材DG」は、「杭G」(第1柱部材)と「杭D」(第2柱部材)との間を補強する梁である点で、本件訂正発明10の「第1の補強梁」と共通する。
引用発明2の「補強用水平部材GH」は、「杭G」(第1柱部材)と「杭D」(第2柱部材)との間を補強する梁である点で「第2の補強梁」と共通する。
引用発明2の「補強用水平部材AD」は、その「D側が突設する鞘管7の半割片11」が「補強用水平部材DGのD側が突設する鞘管7の半割片11」と共同して、「杭D」(第2柱部材)を包囲するものである点で、本件訂正発明10の「第3の補強梁」と共通する。
引用発明2の「補強用水平部材EH」及び「補強用水平部材HI」は、「補強用水平部材GH」(第2補強梁)のH側が突設する鞘管7の半割片11と、「補強用水平部材EH」及び「補強用水平部材HI」のH側が突設する鞘管7の半割片11とが、「杭H」(第2柱部材)を包囲するものである点で、本件訂正発明10の「第4の補強梁」及び「第5の補強梁」と共通する。
(オ)引用発明2の「補強用水平部材DG」(第1の補強梁)、「補強用水平部材GH」(第2の補強梁)、「補強用水平部材AD」(第3の補強梁)、「補強用水平部材EH」及び「補強用水平部材HI」(第4の補強梁及び第5の補強梁)を含む複数の補強用水平部材により「水中構造物1が補強される」「水中構造物の補強方法」は、本件訂正発明10の「構造物」を、「補強梁として第1の補強梁、第2の補強梁、第3の補強梁、第4の補強梁、及び第5の補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法」に相当する。
(カ)引用発明2は、「杭G」(第1柱部材)が、「補強用水平部材DGのG側」(第1補強梁の一端側)が突設する鞘管7の半割片と「補強用水平部材GHのG側」(第2補強梁の一端側)が突設する鞘管7の半割片とが、半割片に形成された「接合片13」が「ボルト14で締め合わされ」て包囲されるものであり、このことは、本件訂正発明10の「前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程」と、「前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とをボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程」である点で共通する。
(キ)引用発明2は、「杭D」(第2柱部材)が、「補強用水平部材DGのD側」(第1補強梁の他端側)が突設する鞘管7の半割片と「補強用水平部材AD(第3の補強梁)の「D側」(一端側)が突設する鞘管7の半割片とが半割片に形成された「接合片13」が「ボルト14で締め合わされ」て包囲されるものであり、このことは、本件訂正発明10の「前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第3の補強梁それぞれの前記補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程」と、「前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、ボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程」である点で共通する。
(ク)引用発明2は、「杭H」(第3柱部材)が、「補強用水平部材GHのH側」(第2の補強梁の他端側)と「補強用水平部材EHのH側」(第4の補強梁の一端側)とが突設する鞘管7の半割片と「補強用水平部材HIのH側」(第5の補強梁の一端側)が突設する鞘管7の半割片とが半割片に形成された「接合片13」が「ボルト14で締め合わされ」て包囲されるものであり、このことは、本件訂正発明10の「前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、前記第2の補強梁、前記第4の補強梁、前記第5の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程」と、「前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、ボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程」である点で共通する。
(ケ)引用発明2は、「鞘管7が杭3に取り付けられて、これらの間に適宜間隙部15が形成され」、「鞘管と杭との間隙部15にグラウト9を充填する」ことにより「鞘管7が杭3に固定され」るものであるから、引用発明2は、上記(カ)の「第1柱部材包囲工程」の後に、第1柱部材包囲工程で包囲された部分に「グラウト」(充填剤)を注入して「杭G」(第1柱部材)と連結部とを一体化するものであり、このことは、本件訂正発明10の、「前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第1柱部材一体化工程」に相当する。
同様に、上記(キ)の「第2柱部材包囲工程」の後に、第2柱部材包囲工程で包囲された部分に「グラウト」(充填剤)を注入して「杭D」(第2柱部材)と連結部とを一体化することは、本件訂正発明10の、「前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第2柱部材一体化工程」に相当し、上記(ク)の「第3柱部材包囲工程」の後に、第3柱部材包囲工程で包囲された部分に「グラウト」(充填剤)を注入して「杭H」(第3柱部材)と連結部とを一体化することは、本件訂正発明10の「前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程」に相当する。
(コ)そうすると、本件訂正発明10と引用発明2とは、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材と、前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、補強梁として第1の補強梁、第2の補強梁、第3の補強梁、第4の補強梁、及び第5の補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって、
前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、ボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程と、
前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、ボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程と、
前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、ボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程と、
前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第1柱部材一体化工程と、
前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第2柱部材一体化工程と、
前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程と、
を含む補強工法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点2A)
本件訂正発明10は、補強梁が「それぞれが補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた」ものと特定されているのに対し、引用発明2は、そのように特定されていない点。
(相違点2B)
本件訂正発明10は、第1柱部材包囲工程、第2柱部材包囲工程、第3柱部材包囲工程において、それぞれの補強梁の第1連結部ないし第2連結部が、「それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態で」端部をボルト連結することで柱部材を共同して包囲するのに対し、引用発明2は、そのように特定されていない点。
(相違点2C)
本件訂正発明10は、「前記第1、第2柱部材一体化工程後、前記第1の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
前記第1、第3柱部材一体化工程後、前記第2の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、」を含むのに対し、引用発明2は、そのように特定されていない点。

新規性に関する判断
上記アで検討したように、本件訂正発明10と引用発明2とは相違点2Aないし2Cで相違するから、本件訂正発明10は、引用文献2に記載された発明ではない。

進歩性に関する判断
相違点2Aに係る構成は、「前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた」という、本件訂正発明1と引用発明1との相違点である相違点1Bに係る構成と同様の構成を含むところ、上記(1)ウで検討したように、当該相違点に係る構成は、引用文献1、3及び4のいずれにも記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明2において、相違点2Aに係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

エ 小括
本件訂正発明10は、引用文献2に記載された発明ではない。
本件訂正発明10は、引用発明2及び引用文献1、3及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件訂正発明16ないし19
本件訂正発明16ないし19は、本件訂正発明10を直接または間接的に引用するものであるから、上記(4)で検討したのと同様の理由により、引用文献2に記載された発明ではなく、引用発明2及び引用文献1、3及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 引用文献4(甲第1号証)を主引用例とした進歩性についての判断
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明4とを対比する。
(ア)引用発明4の「鋼管杭2」は、「下端を地盤に打ち込んであ」るものであるから、「それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭2」のうち中央の2本の鋼管杭のいずれか一方の鋼管杭は、鋼管杭が柱状であることを踏まえると、本件訂正発明1の「地盤に下端部が固定された第1柱部材」に相当し、引用発明4の他方の鋼管杭は、同様に本件訂正発明1の「前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材」に相当する。
(イ)引用発明4の「鋼管杭2の上端」に「支持」される「上部構造物3」は、本件訂正発明1の「前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体」に相当する。また、「脚柱2からなる下部構造物と、床板および梁等からなる上部構造物3とから構成され」る「既設の桟橋1」などの「水域構造物」は、本件訂正発明1の「構造物」に相当する。
(ウ)引用発明4の「中空の外管7と、該外管7の中に長手方向相対移動可能に設けられた内管4と」は、本件訂正発明1の「補強梁本体部」に相当する。
(エ)引用発明4の「鞘管部5」は、「外管7の他端」と「内管8の両端のうち、外管7の中にある一端と反対側の他端」に結合され、「杭2を包囲する」ものであるから、本件訂正発明1の「前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部」及び「前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部」と、引用発明4の「鞘管部5」とは、「前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部」及び「前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部」である点で共通する。
(オ)引用発明4の「鞘管部5」が「中空円筒を半割にした半円状」であって、「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」のいずれか一方の鋼管杭(第1柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部が、鋼管杭の外周の半周を覆」うものであり、「鞘管部5の端部を結ぶ直線とストラット部材4の長手方向軸Oとのなす角度が略45度程度となるように構成されている」ことは、本件訂正発明1の「前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され」ていることに相当する。
(カ)引用発明4の「鞘管部5」が「中空円筒を半割にした半円状」であって、「4本の鋼管杭のうち中央の2本の鋼管杭」の他方の鋼管杭(第2柱部材)において、「一のストラット部材の鞘管部が、鋼管杭の外周の半周を覆」う構成であることは、本件訂正発明1の「前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であ」ることに相当する。
(キ)本件訂正発明1の「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」ることと、引用発明4の「鞘管部5」が「半割にされた端面には、フランジ5fを立接し、これらフランジ5fを補強するためのリブ板5rを設け、リブ板5rは、フランジ5fからフランジ付近の鞘管部5に亘って杭長さ方向の所定高さに複数設けられて」いることとは、「前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から、杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」、「前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から、杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ」るものである点で共通する。
(ク)引用発明4の「それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭2のうち中央の2本の鋼管杭は、一のストラット部材4の鞘管部5が、同じ鋼管杭に取り付けられる他の一つのストラット部材4の鞘管部5と共同して該鋼管杭の周囲を包囲」することは、本件訂正発明1の「前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成される」及び「前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されている」ことに相当する。
(ケ)そうすると、本件訂正発明1と引用発明4とは、
「地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され、且つ前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されるものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されている補強梁。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点4A)
本件訂正発明1は、第1連結部及び第2連結部が「前記補強梁本体部の前記一端部/他端部に第1の結合部材/第2の結合部材で分離可能に結合して設けられ」るのに対して、引用発明4は、補強梁本体部と第1連結部及び第2連結部とが、結合部材で分離可能に結合して設けられたものではない点。
(相違点4B)
本件訂正発明1は、「前記第1連結部/第2連結部の外周で前記第1連結部/第2連結部の端部から」「杭長さ方向の所定高さに複数」「設けられる」リブが、「前記第1連結部/第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って」設けられるのに対し、引用発明4は、補強梁本体部と第1連結部及び第2連結部とが、結合部材で分離可能に結合して設けられたものではないから、補強梁本体部との結合部位が存在せず、リブが「前記補強梁本体部との結合部位に亘って」設けられるものではない点。

イ 判断
上記相違点4A及び4Bについて、併せて検討する。
引用発明1の「中央の部分」は、本件訂正発明1の「補強梁本体部」に相当し、引用発明1の「中央の部分」と「ストラット部材の一端及び他端に設けられる鞘管部を有する部分」とは、それぞれ、ボルト連結されるものであるから、引用発明1の「地盤に下端部が固定された、それぞれ隣接して並ぶ4本の鋼管杭」のうち中央の2本の鋼管杭のいずれか一方の鋼管杭(第1柱部材)に取り付ける「ストラット部材の一端に設けられる鞘管部を有する部分」は、本件訂正発明1の「前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部」に相当し、他方の鋼管杭(第2柱部材)に取り付ける「ストラット部材の他端の鞘管部を有する部分」は、本件訂正発明1の「前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部」に相当するといえる。
引用発明4において、引用発明1の上記構成を採用したものは、引用文献4のストラット部材の分割・結合方法を、引用文献1の「表−1 ストラット部材の分割・結合方法の比較選定表」(上記第6の1(1)ア(キ))における、○4の「伸縮モルタル接合」から○1の「ボルト接合」に変更したものとなり、結局、引用発明1と同様のものとなる。
そして、引用発明1において、引用発明4のリブを設ける構成を採用したとしても、「前記補強梁本体部との結合部位に亘って」亘って設けることまで想起されないことは、上記第6の2(1)ウにおいて検討したとおりである。
引用文献2及び3にも、上記第6の2(1)ウにおいて検討したように、上記相違点についての記載も示唆もなく、引用発明4及び引用文献1ないし3記載の発明から、相違点4A及び4Bに係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

ウ 小括
本件訂正発明1は、引用発明4及び引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明3ないし9、20
本件訂正発明3ないし5は、上記(1)ア(ケ)の相違点4A及び相違点4Bに係る構成と同様の構成を有するから、本件訂正発明3ないし5と引用発明4とは、それぞれ、上記相違点4A及び相違点4Bと同様の点で相違する。
また、本件訂正発明6ないし9及び20は、本件訂正発明1、3ないし5のいずれかを直接または間接的に引用するものであって、上記(1)ア(ケ)の相違点4A及び相違点4Bに係る構成と同様の構成を有するから、本件訂正発明6ないし9及び20と引用発明4とは、それぞれ、上記相違点4A及び相違点4Bと同様の点で相違する。
そうすると、本件訂正発明3ないし9、20は、上記相違点4A及び相違点4Bについて上記(1)で検討したのと同様の理由により、引用発明4及び引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明10
引用発明4は、老朽化した桟橋などの水域構造物を、ストラット部材を用いて水域構造物の基礎杭同士を連結することにより補剛するものであるから、実質的に、隣接する基礎杭(柱部材)をストラット部材(補強梁)を用いて補強する補強工法の発明を把握することができる(以下、「引用方法発明4」という)。
本件訂正発明10は、補強梁が、第1連結部/第2連結部の外周には前記第1連結部/第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられるとの発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明10と引用方法発明4とを対比すると、少なくとも、上記(1)ア(ケ)の相違点4A及び4Bと同様の点で相違する。
そうすると、本件訂正発明10は、上記相違点4A及び相違点4Bについて上記(1)イにおいて検討したのと同様の理由により、引用方法発明4及び引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明16ないし19
本件訂正発明16ないし19は、本件訂正発明10を直接または間接的に引用するものであるから、上記(3)で検討したのと同様の理由により、引用方法発明4及び引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、特許異議申立理由のうち、甲第3号証の1を主引用例とした理由については、甲第3号証の1と甲第4号証が同内容であることから、第6で検討したのと同様の理由により、理由がないことは明らかである。

第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件訂正発明1、3ないし10、16ないし20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1、3ないし10、16ないし20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の特許請求の範囲の請求項2、11ないし15は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議申立てについて、請求項2、11ないし15に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の外周の半周を覆う構成であって、前記第1連結部の端部を結ぶ直線と前記補強梁本体の長さ方向の軸線とのなす角度が45度となるように構成され、且つ前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の一つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の一つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されるものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の1つ又は2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の1つ又は2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項4】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の2つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項5】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1、第2柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記一端部に第1の結合部材で分離可能に結合して設けられた第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられ、前記補強梁本体部の前記他端部に第2の結合部材で分離可能に結合して設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第1連結部の外周で前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第1柱部材に取り付けられる他の2つ又は3つの補強梁の連結部の端部と、前記第1連結部の端部とをボルト連結して、前記他の2つ又は3つの補強梁の連結部と共同して前記第1柱部材の周囲を包囲するように構成されているものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材の周囲の一部を覆う構成であって、前記第2連結部の外周で前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに複数のリブが設けられ、前記第2柱部材に取り付けられる他の3つの補強梁の連結部の端部と、前記第2連結部の端部とをボルト連結して、前記他の3つの補強梁の連結部と共同して前記第2柱部材の周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
【請求項6】
前記第1連結部及び第2連結部の内壁面に充填材のずれ止め用のアンカー部材が設けられている請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の補強梁。
【請求項7】
前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成している請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の補強梁。
【請求項8】
複数の杭と、前記複数の杭によって支持された上部構造体とを有する水中構造物を補強梁を用いて補強する水中構造物の補強工法であって、前記補強梁として請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の補強梁を用いることを特徴とする水中構造物の補強工法。
【請求項9】
複数の前記柱部材は、地盤に設けられた基礎に下端部が固定された橋脚であり、前記構造物は複数の前記橋脚と、複数の前記橋脚によって支持された桁とを有する橋梁である請求項8に記載の水中構造物の補強工法。
【請求項10】
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材と、前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが補強梁本体部と、前記補強梁本体部の両端部のそれぞれに結合部材により分離可能に結合して設けられた第1連結部及び第2連結部とを有し、前記第1連結部の外周には前記第1連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられ、且つ前記第2連結部の外周には前記第2連結部の端部から前記補強梁本体部との結合部位に亘って杭長さ方向の所定高さに配置された複数のリブが設けられた補強梁として第1の補強梁、第2の補強梁、第3の補強梁、第4の補強梁、及び第5の補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第1連結部と前記第2の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第1柱部材包囲工程と、
前記第2柱部材を、前記第1の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部と、前記第3の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部とを、前記第1の補強梁及び前記第3の補強梁それぞれの前記補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで、前記第1の補強梁の前記第2連結部と前記第3の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第2柱部材包囲工程と、
前記第3柱部材を、前記第2の補強梁の他端側の前記第2連結部の端部、前記第4の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部、前記第5の補強梁の一端側の前記第1連結部の端部を、前記第2の補強梁、前記第4の補強梁、前記第5の補強梁それぞれの補強梁本体部とは前記結合部材により分離させた状態でボルト連結することで前記第2の補強梁の前記第2連結部と前記第4の補強梁の前記第1連結部と前記第5の補強梁の前記第1連結部とで共同して包囲する第3柱部材包囲工程と、
前記第1柱部材包囲工程後、前記第1柱部材と、前記第1柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第1連結部及び前記第2の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1の補強梁の前記第1連結部と、前記第2の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第1柱部材一体化工程と、
前記第2柱部材包囲工程後、前記第2柱部材と、前記第2柱部材を包囲する前記第1の補強梁の前記第2連結部及び前記第3の補強梁の前記第1連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1の補強梁の前記第2連結部と、前記第3の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第2柱部材一体化工程と、
前記第3柱部材包囲工程後、前記第3柱部材と前記第3柱部材を包囲する前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部及び前記第5の補強梁の前記第1連結部の間に充填剤を注入して前記第3柱部材と、前記第2の補強梁の前記第2連結部、前記第4の補強梁の前記第1連結部、前記第5の補強梁の前記第1連結部とを一体化する第3柱部材一体化工程と、
前記第1、第2柱部材一体化工程後、前記第1の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
前記第1、第3柱部材一体化工程後、前記第2の補強梁の補強梁本体部と前記第1連結部及び前記第2連結部をそれぞれ前記結合部材で結合させて一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
【請求項11】 (削除)
【請求項12】 (削除)
【請求項13】 (削除)
【請求項14】 (削除)
【請求項15】 (削除)
【請求項16】
複数の前記柱部材は水中の地盤に下端部が固定された柱部材であり、前記補強梁を水面に浮遊させる工程と、前記補強梁を取付けようとする二つの柱部材の一つに誘導する工程とを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の補強工法。
【請求項17】
前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁本体部を所定の深さに沈降させる工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の補強工法。
【請求項18】
複数の前記柱部材に支持材を取り付けておき、この支持材によって前記補強梁を支持する工程を含むことを特徴とする請求項10、16、17のいずれか1項に記載の補強工法。
【請求項19】
前記支持材は前記補強梁の前記第1及び第2連結部の下端部を構成するものであり、前記補強梁を前記支持材に取り付けることで前記補強梁の連結部の下端面を塞ぐ構成であることを特徴とする請求項18に記載の補強工法。
【請求項20】
複数の前記柱部材によって支えられた構造物であって、複数の前記柱部材のうち、互いに隣り合うn本の柱部材(但しn≧3)の間を請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の補強梁によって同一高さで連結し補強したことを特徴とする構造物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-09-12 
出願番号 P2020-539015
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E02D)
P 1 651・ 113- YAA (E02D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 居島 一仁
土屋 真理子
登録日 2021-06-11 
登録番号 6896237
権利者 JFEエンジニアリング株式会社
発明の名称 構造物の補強梁、補強工法、及び構造物  
代理人 酒井 正己  
代理人 須田 芳國  
代理人 須田 芳國  
代理人 酒井 正己  

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