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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1392065
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-05 
確定日 2022-12-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第7004564号発明「粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7004564号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許(特許第7004564号)に係る出願は、平成29年12月19日の出願であって、令和4年1月6日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜9に係る特許に対し、同年7月5日に特許異議申立人 齊藤 整(以下「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、同年7月8日に特許異議申立人 青木 美幸(以下「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜9に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された以下のとおりのものである(請求項1〜9に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明9」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)。

「【請求項1】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、72%以下であり、
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であり、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり、
前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.005MPa以上、0.15MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の 粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が、50万以上、200万以下であることを特徴とする請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力が、3N/25mm以上、100N/25mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、
前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層と
を備えた繰り返し屈曲積層部材であって、
前記粘着剤層が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする繰り返し屈曲積層部材。
【請求項8】
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることを特徴とする請求項7に記載の繰り返し屈曲積層部材。
【請求項9】
請求項7または8に記載の繰り返し屈曲積層部材を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 甲号証の一覧
申立人A及び申立人Bが提示した甲号証は、次のとおりである。以下、申立人Aの提示した甲第1号証を「甲A1」などといい、申立人Bの提示した甲第1号証を「甲B1」などという。
甲A1及び甲B3:国際公開第2015/140911号
甲A2及び甲B5:特開2017−95657号公報
甲A3:特開2017−112020号公報
甲A4及び甲B4:特開2017−36395号公報
甲B1:国際公開第2016/196541号
甲B2:特開2016−80773号公報
甲B6:特開2017−65217号公報
甲B7:特開2017−95653号公報

新規性欠如(理由1)
(1)申立人Aの申立理由
ア 本件特許発明1〜9は、甲A1に記載された発明(以下、「甲A1発明」ともいう。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1〜9は、甲A4に記載された発明(以下、「甲A4発明」ともいう。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)申立人Bの申立理由
ア 本件特許発明1〜9は、甲B1に記載された発明(以下、「甲B1発明」ともいう。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1〜9は、甲B6に記載された発明(以下、「甲B6発明」ともいう。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
ウ 本件特許発明1〜9は、甲B7に記載された発明(以下、「甲B7発明」ともいう。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

進歩性欠如(理由2)
(1)申立人Aの申立理由
ア 本件特許発明1〜9は、甲A1発明から、又は甲A1発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1〜9は、甲A4発明から、又は甲A4発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)申立人Bの申立理由
ア 本件特許発明1〜9は、甲B1発明から、又は甲B1発明及び甲B2〜甲B5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1〜9は、甲B6発明から、又は甲B6発明及び甲B2〜甲B5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 本件特許発明1〜9は、甲B7発明から、又は甲B7発明及び甲B2〜甲B5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 サポート要件違反(理由3)
(1)申立人A及び申立人Bの申立理由
本件特許発明1〜9は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

実施可能要件違反(理由4)
(1)申立人Bの申立理由
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1〜9について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

以上、前記2〜5のとおり、本件特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当するから、取り消すべきものである。

第4 新規性(理由1)、進歩性(理由2)について
1 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、以下の記載がある。
(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる繰り返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、前記粘着剤からなる粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合(せん断応力残存率)が、72%以下であり、ゲル分率が、40%以上、90%以下であることを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る粘着剤は、せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れる。したがって、一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する、上記粘着剤からなる粘着剤層とからなる積層体について、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても、上記粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。また、上記発明(発明1)に係る粘着剤は、上記のように比較的高いゲル分率を有することにより、繰り返し屈曲に耐え得ることのできる好適な凝集力を発揮する。それらの結果、上記積層体を繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。」
(2)「【0022】
本実施形態に係る粘着剤は、当該粘着剤からなる粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力(σmax)に対する、当該1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60)の割合((σ60/σmax)×100)が72%以下であり、ゲル分率が40%以上、90%以下であるものである。ここで、1000%変位とは、粘着剤の厚みに対して10倍変位させたときの変位量のことをいう。なお、本明細書において、上記せん断応力の割合を「せん断応力残存率」という場合がある。せん断応力およびゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0023】
本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れているということができる。一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する粘着剤層とからなる積層体を屈曲させた場合、屈曲の外側に位置する屈曲性部材と屈曲の内側に位置する屈曲性部材とでは、屈曲部の曲率が異なるため、互いにずれた位置関係になる。そのため、それらを貼合する粘着剤層には、せん断応力が発生する。上記の通り、本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力緩和性に優れているため、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。また、本実施形態に係る粘着剤は、上記のように比較的高いゲル分率を有することにより、繰り返し屈曲に耐え得ることのできる好適な凝集力を発揮する。それらの結果、上記積層体を繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。このように、本実施形態に係る粘着剤は、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができる。なお、上記繰り返し屈曲の回数としては、一例として3万回が例示される。
【0024】
浮き・剥がれ抑制の観点から、上記せん断応力残存率は、72%以下であることが好ましく、特に66%以下であることが好ましく、さらには64%以下であることが好ましい。なお、せん断応力残存率の下限値は特に限定されないが、通常は10%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには42%以上であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率が40%未満であると、粘着剤層の凝集力不足により、繰り返し屈曲の際、屈曲端部から粘着剤または粘着剤を構成する成分の染み出しが発生し易い。また、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率が90%を超えると、粘着剤層の柔軟性が低下し、繰り返し屈曲によって、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生し易くなる。かかる観点から、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、下限値として、40%以上であり、特に44%以上であることが好ましく、さらには48%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、上限値として、90%以下であり、80%以下であることが好ましく、特に72%以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る粘着剤の種類は、上記の物性が満たされれば特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。」
(3)「【実施例】
【0103】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0104】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル40質量部、アクリル酸n−ブチル45質量部、N−アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5質量部およびアクリル酸5質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)70万であった。
【0105】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.28質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0106】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0107】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ10μmの粘着剤層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:10μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
【0108】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
BA:アクリル酸n−ブチル
ACMO:N−アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
4HBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル
AA:アクリル酸
【0109】
〔実施例2〜10,比較例1〜3〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0110】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0111】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0112】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率(G’)の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0113】
上記サンプルについて、JIS K7244−6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,DYNAMIC ANALAYZER)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0114】
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−2000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
〔試験例4〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0116】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(川村久蔵商店社製,製品名「ソーダライムガラス」,厚さ:1.1μm)に貼付し、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、PETフィルムと粘着剤層との積層体をソーダライムガラスから剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0117】
〔試験例5〕(せん断応力の測定)
実施例および比較例で調製した粘着性組成物の塗布溶液を使用して、粘着剤層の厚さを25μmとする以外、実施例1と同様にして、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。得られた粘着シートを、25mm×25mmの大きさに裁断した。上記粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、第1の引張部材としてのフロート板ガラス(30mm×100mm)の長手方向の一端部に貼付した。次いで、上記粘着シートから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、第2の引張部材としてのフロート板ガラス(30mm×100mm)の長手方向の一端部に貼付した。このとき、第1の引張部材と第2の引張部材とが互いに反対方向に延在するように貼付した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で20分加圧し、その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置して、これをサンプルとした。
【0118】
引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を使用して、23℃、50%RHの環境下で、上記サンプルの面方向、第1の引張部材と第2の引張部材とを互いに反対方向に引張速度5mm/分で引っ張り、1000%変位させたときの最大せん断応力(σmax;kN)を測定するとともに、当該1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60;kN)を測定した。得られた結果から、最大せん断応力(σmax;kN)に対する、1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60;kN)の割合(せん断応力残存率)を、(σ60/σmax)×100の式から算出した。結果を表2に示す。
【0119】
〔試験例6〕(屈曲試験)
23℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、別のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たPETフィルム/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を、50mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0120】
得られたサンプルを、耐久試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「面状体無負荷U字伸縮試験機」)を用いて、以下の条件で繰り返し屈曲させた。その後、粘着剤層と被着体との界面に浮き・剥がれがないか否か、また、粘着剤層から粘着剤の染み出しがないか否か、それぞれ目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
<試験条件>
屈曲径:3mmφ
屈曲回数:30000回
試験温度:23℃,80℃
<浮き・剥がれの評価基準>
◎…浮きおよび剥がれが発生しなかった。
〇…端部付近でわずかに浮きまたは剥がれが発生したが、実用上使用可能なレベルであった。
×…実用上使用できないレベルの浮きまたは剥がれが発生した。
<染み出しの評価基準>
◎…染み出しが発生しなかった。
〇…わずかに染み出しが発生したが、実用上使用可能なレベルであった。
×…実用上使用できないレベルの染み出しが発生した。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
表2から分かるように、実施例の粘着シートの粘着剤層は、2つの屈曲性部材を貼合して繰り返し屈曲させたときに、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができた。」

2 甲A1を主引例とした検討
(1)甲A1の記載
甲A1には、次の記載がある。
A1a「[請求項1]
重量平均分子量が20万〜90万であり、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを15〜30質量%含有し、カルボキシル基を有するモノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、
ポリイソシアネート化合物(B)と、
キレート化合物(C)と
を含有する粘着性組成物を架橋してなる厚さ10〜400μmの粘着剤層を有する粘着シート。
・・・
[請求項6]
前記粘着シートは、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層は、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着シート。
[請求項7]
2枚の硬質板と、
前記2枚の硬質板に挟持される粘着剤層と
を備えた積層体であって、
前記粘着剤層は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする積層体。
・・・
[請求項10]
前記硬質板の少なくとも1つが、プラスチック板を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項11]
前記2枚の硬質板の一方が、表示体モジュールまたはその一部であり、
前記2枚の硬質板の他方が、前記粘着剤層側の面に額縁状の段差を有する保護板である
ことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の積層体。」
A1b「技術分野
[0001] 本発明は、タッチパネル等に使用することのできる粘着シート、および当該粘着シートの粘着剤層を使用して得られる積層体に関するものである。
背景技術
[0002] 近年の携帯電話機やタブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用したディスプレイを備えており、かかるディスプレイがタッチパネルとなることも多くなってきている。」
A1c「[0055](4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
[0056] 特に耐久性を改善する観点から、粘着性組成物Pには、添加剤としてシランカップリング剤が添加されることが好ましい。シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性がよいものが好ましい。また、粘着シート1が光学用途の場合には、光透過性を有するシランカップリング剤が好適である。」
A1d「[0078]4.物性
(1)ゲル分率
本実施形態における粘着剤層11を構成する粘着剤のゲル分率は、15〜95%であることが好ましく、特に40〜90%であることが好ましく、さらには60〜85%であることが好ましい。ゲル分率が15%未満であると、粘着剤の凝集力が不足して、耐ブリスター性が低下する場合がある。一方、ゲル分率が95%を超えると、粘着力が低くなり過ぎて耐久性が低下したり、段差追従性能が低下する。なお、ゲル分率の測定方法は後述する試験例に示す通りである。
[0079](2)ヘイズ値
本実施形態における粘着剤層11は、ヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、1.0%以下であることが好ましく、特に0.9%以下であることが好ましく、さらには0.8%以下であることが好ましい。ヘイズ値が1.0%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。なお、粘着剤層11のヘイズ値は、後述する耐湿熱白化性の評価試験後においても上記範囲内にあることが特に好ましい。」
A1e「[0080]〔積層体〕
図2に示すように、本実施形態に係る積層体2は、第1の硬質板21と、第2の硬質板22と、それらの間に位置し、第1の硬質板21および第2の硬質板22に挟持される粘着剤層11とから構成される。また、本実施形態に係る積層体2では、第1の硬質板21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3の有無による段差を有している。
[0081] 第1の硬質板21および第2の硬質板22は、粘着剤層11が接着できるものであれば、特に限定されるものではない。また、第1の硬質板21および第2の硬質板22は、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
[0082] 第1の硬質板21および第2の硬質板22としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、金属板、半導体板等の他、それらの積層体、あるいは表示体モジュール、太陽電池モジュール等の板状の硬質製品などが挙げられる。第1の硬質板21および第2の硬質板22の少なくとも1つは、ガラス板又はプラスチック板を含むことが好ましく、特にプラスチック板を含むことが好ましい。
[0083] 上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
[0084] 上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。」
A1f「[0097]〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量50万であった。
[0098]2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ポリイソシアネート化合物(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.24質量部と、キレート化合物(C)としてのアルミニウムトリスアセチルアセトネート(綜研化学社製,商品名「M−5A」)0.05質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度35質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
[0099] ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n−ブチル
[ポリイソシアネート化合物(B)]
コロネートL:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)
コロネートHL:トリメチロールプロパン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートHL」)
[0100]3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「PET752150」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。同様に、得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「PET382120」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
[0101] 次いで、上記で得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートと、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートとを、両塗布層が互いに接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
[0102]〔実施例2〜12,比較例1〜10〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、ポリイソシアネート化合物(B)の種類および配合量、ならびにキレート化合物(C)の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、実施例10および11で使用したキレート化合物(C)は、ジルコニウムトリスアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル社製,商品名「オルガチックス ZC−150」)であった。
[0103] ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
[0104]〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。当該サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜に貼付した。
[0105] その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
[0106]〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
[0107] 次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
・・・
[0114]〔試験例5〕(耐湿熱白化性評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、厚さ1.1mmの無アルカリガラス2枚で挟み、その積層体をサンプルとした。得られたサンプルを、85℃、85%RHの条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RH(常温常湿)の雰囲気に戻し、目視により白化の有無を確認し、以下の基準により耐湿熱白化性を評価するとともに、粘着剤層のヘイズ値を測定した。ヘイズ値は、サンプルを上記常温常湿の雰囲気に戻してから30分以内に、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて測定した。結果を表2に示す。
◎:常温常湿の雰囲気に戻した直後から、全く白化しなかった。
○:一部が白化したが、常温常湿の雰囲気に戻してから2時間以内に白化が無くなった。
×:全体的に白化した。または一部白化した後、常温常湿下で保管しても元に戻らなかった。
[0115]


[0116]



(2)甲A1発明の認定
ア 甲A1の実施例1では、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、キレート化合物(C)及びシランカップリング剤を混合して粘着性組成物を調製し、該粘着性組成物から形成される粘着剤層を有する粘着シートを製造している。そして、甲A1の実施例1の粘着シートにつき、粘着剤層のヘイズ値は0.5%、ゲル分率は84%である(甲A1の段落[0098]〜[0101]、表1〜2(前記(1)の摘記A1f)参照)。
イ 甲A1の請求項7及び段落[0080](前記(1)の摘記A1a及びA1e)の記載より、甲A1に開示される粘着シートは、2枚の硬質板を貼合するためのものといえる。
ウ そうすると、甲A1の実施例1から次の発明(以下、「甲A1発明」という。)が認定できる。
エ 甲A1発明
「2枚の硬質板を貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、キレート化合物(C)及びシランカップリング剤を混合して調製される粘着性組成物から形成され、
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%であり、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、84%である、
粘着シート。」

(3)本件特許発明1について
ア 対比
甲A1発明と本件特許発明1を対比する。
(ア)甲A1発明の「前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%であり」は、本件特許発明1の「前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であり」を充足する。
(イ)甲A1発明の「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、84%である」は、本件特許発明1の「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり」を充足する。
(ウ)甲A1発明における「粘着性組成物」には、「シランカップリング剤」が含まれているので、本件特許発明1の「前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する」を充足する。

イ 一致点及び相違点
そうすると、甲A1発明と本件特許発明1は、
「貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であり、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり、
前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する
粘着シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
粘着シートの粘着剤層が、本件特許発明1は「繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するため」のものであるのに対し、甲A1発明は「2枚の硬質板を貼合するため」のものである点。
<相違点2>
「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」(以下、「せん断応力残存率」ともいう。)が、本件特許発明1は「72%以下」であるのに対し、甲A1発明は不明である点。

ウ 相違点2の検討
前記<相違点2>について、最初に、甲A1発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認できるか検討する。
甲A1発明の粘着剤層を形成する粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びシランカップリング剤を少なくとも含有する点で、本件特許明細書の実施例1〜9における粘着性組成物と共通する(甲A1の段落[0097]〜[0099]、表1(前記(1)の摘記A1f)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)。しかしながら、両者は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の構成モノマー組成、ポリイソシアネート化合物(B)の添加量といった点で少なくとも相違するため(甲A1の同段落、表1(前記(1)の摘記A1f)、本件特許明細書の同段落、表1(前記1の摘記(3))参照)、「せん断応力残存率」のような、粘着剤の硬さに関する物理的特性は異なると解される。
そのため、甲A1発明における粘着性組成物の組成に着目しても、甲A1発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできず、前記<相違点2>は実質的な相違点である。
そして、前記<相違点2>に係る本件特許発明1の構成は、甲A1及び他の各甲号証に記載も示唆もされておらず、甲A1発明において係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 相違点2に係る申立人Aの主張の検討
前記<相違点2>に関し、申立人Aは異議申立書において以下の旨を主張する。
「前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合(以下、 「せん断応力残存率」と称する)とは、粘着剤層の柔軟性を示す指標である。
そして、本件の明細書には、柔軟性を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を得るために以下のような記載がある。
・・・
これらの記載から、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層とするには、特定のアクリル酸エステル重合体(A)、すなわち、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを30質量%以上、高Tgアルキルアクリレートを1質量%以上30質量%以下、および水酸基含有モノマーを含有し、当該重合体の重量平均分子量が200万以下のアクリル酸エステル重合体(A)を用い、これを架橋剤で架橋すればよいことが推認される。
ここで、例えば、甲第1号証の実施例1〜11、比較例1〜6で用いている(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、モノマー単位としてアクリル酸2−エチルヘキシル(低Tgアルキルアクリレート)60質量%、メタクリル酸メチル(高Tgアルキルアクリレート)20質量%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(水酸基含有モノマー)20質量%を含有し、当該重合体の重量平均分子量は50万である。そして、甲第1号証の実施例では、この(メタ)アクリル酸エステル共重合体をポリイソシアネート化合物で架橋させ粘着剤としている。
そのため、甲1発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」(第43頁第14行〜第46頁第1行)
しかしながら、この主張は、「せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層とする」ための粘着剤の組成に関する条件(アクリル酸エステル重合体(A)の構成モノマー組成、重量平均分子量、架橋剤による架橋)を、本件特許明細書の記載から申立人Aが独自に推認、設定し、甲A1の実施例がその条件を充足することをもって、「甲A1発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」と主張するものであり、客観的な根拠に基づく主張とはいえない。
そして、申立人Aは、例えば実験成績証明書により、甲A1発明の粘着剤層はせん断応力残存率が72%以下であることを実際に示す等、前記<相違点2>が実質的に相違点でないといえる具体的な根拠を何ら示しておらず、前述のような客観性に乏しい根拠に基づき、「甲A1発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」と主張するにとどまっている。
したがって、申立人Aの前記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、前記<相違点1>について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1発明に対して新規性進歩性を有するものである。

(4)本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、いずれも本件特許発明1に従属し、本件特許発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件特許発明2〜9は、前記(3)と同様の理由により、甲A1発明に対して新規性進歩性を有するものである。

3 甲A4を主引例とした検討
(1)甲A4の記載
甲A4には、次の記載がある。
A4a「【請求項1】
少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤について23℃にて引張試験を行ったときの、前記粘着剤の1000%モジュラス、または伸び率1000%に達する前に破断したときには破断時のモジュラスが、0.22MPa以上であり、
前記粘着剤層の段差追従率が、30%以上である
ことを特徴とする粘着シート。
・・・
【請求項3】
前記粘着剤層のヘイズ値は、5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着シートは、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層は、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、
他の表示体構成部材と、
前記一の表示体構成部材と前記他の表示体構成部材とを互いに貼合する粘着剤層と
を備えた表示体であって、
前記粘着剤層が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする表示体。」
A4b「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体構成部材を貼合するのに好適な粘着シート、ならびに当該粘着シートを使用して得られる表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォン、タブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用したディスプレイを備えており、かかるディスプレイがタッチパネルとなることも多くなってきている。」
A4c「【0031】
(6)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。粘着剤層のヘイズ値が5%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として好適である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。」
A4d「【0033】
かかる粘着剤は、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマー(分子内に水酸基を含有するモノマー)および脂環式構造含有モノマー(分子内に脂環式構造を含有するモノマー)を含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、環状分子として環状オリゴ糖を有するポリロタキサン化合物(B)と、イソシアネート系架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋することにより、好ましく得ることができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。」
A4e「【0079】
(4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、反応促進剤、反応抑制剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0080】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。」
A4f「【0095】
(7)粘着剤のゲル分率
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤、特に粘着性組成物Pから得られる粘着剤のゲル分率は、下限値として40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。粘着剤のゲル分率の下限値が上記以上であると、粘着剤の凝集力が高くなり、粘着剤層の被膜強度がより高いものとなる。また、粘着性組成物Pから得られる粘着剤のゲル分率は、上限値として90%以下であることが好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。粘着剤のゲル分率の上限値が上記以下であると、粘着剤が硬くなり過ぎず、粘着剤層の段差追従性がより優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。」
A4g「【0107】
〔表示体〕
図2に示すように、本実施形態に係る表示体2は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3による段差を有している。
【0108】
上記表示体2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。
【0109】
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体2としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
【0110】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0111】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
【0112】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。
【0113】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0114】
第2の表示体構成部材22は、第1の表示体構成部材21に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
【0115】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。」
A4h「【0123】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル60質量部、アクリル酸イソボルニル20質量部、4−アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0124】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ポリロタキサン化合物(B)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα−シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)3.0質量部と、イソシアネート系架橋剤(C)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.25質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.25質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度40質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0125】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:4−アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n−ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
CHA:アクリル酸シクロヘキシル
MA:アクリル酸メチル
[イソシアネート系架橋剤(C)]
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD−75」)
【0126】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0127】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる第1の粘着シートを作製した。
【0128】
また、上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:25μm)を形成した。同様に、上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:25μm)を形成した。
【0129】
次いで、上記で得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートと、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートとを、両塗布層が互いに接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる第2の粘着シートを作製した。
【0130】
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
【0131】
〔実施例2〜15,比較例1〜5〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量、ポリロタキサン化合物(B)の配合量、イソシアネート系架橋剤(C)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0132】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0133】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた第1の粘着シート(粘着剤層の厚さ:25μm)を80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0134】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で得られた第1の粘着シート(粘着剤層の厚さ:25μm)の粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−2000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
・・・
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】



(2)甲A4発明の認定
ア 甲A4の実施例1では、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、ポリロタキサン化合物(B)、イソシアネート系架橋剤(C)及びシランカップリング剤を混合して粘着性組成物を調製し、該粘着性組成物から形成される粘着剤層を有する粘着シートを製造している。そして、甲A4の実施例1の粘着シートにつき、粘着剤層のヘイズ値は0.2%、ゲル分率は67%である(甲A4の段落【0124】〜【0130】、表1〜2(前記(1)の摘記A4h)参照)。
イ 甲A4の請求項1、5及び段落【0107】(前記(1)の摘記A4a及びA4g)の記載より、甲A4に開示される粘着シートは、少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するためのものといえる。
ウ そうすると、甲A4の実施例1を中心に、甲A4から次の発明(以下、「甲A4発明」という。)が認定できる。
エ 甲A4発明
「少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、ポリロタキサン化合物(B)、イソシアネート系架橋剤(C)及びシランカップリング剤を混合して調製される粘着性組成物から形成され、
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.2%であり、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、67%である、
粘着シート。」

(3)本件特許発明1について
ア 対比
甲A4発明と本件特許発明1を対比する。
(ア)甲A4発明の「前記粘着剤層のヘイズ値が、0.2%であり」は、本件特許発明1の「前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であり」を充足する。
(イ)甲A4発明の「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、67%である」は、本件特許発明1の「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり」を充足する。
(ウ)甲A4発明における「粘着性組成物」には、「シランカップリング剤」が含まれているので、本件特許発明1の「前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する」を充足する。

イ 一致点及び相違点
そうすると、甲A4発明と本件特許発明1は、
「貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であり、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり、
前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する
粘着シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
粘着シートの粘着剤層が、本件特許発明1は「繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するため」のものであるのに対し、甲A4発明は「少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するため」のものである点。
<相違点4>
「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」(以下、「せん断応力残存率」ともいう。)が、本件特許発明1は「72%以下」であるのに対し、甲A4発明は不明である点。

ウ 相違点4の検討
前記<相違点4>について、最初に、甲A4発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認できるか検討する。
甲A4発明の粘着剤層を形成する粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、イソシアネート系架橋剤(C)及びシランカップリング剤を少なくとも含有する点で、本件特許明細書の実施例1〜9における粘着性組成物と共通する(甲A4の段落【0123】〜【0125】、表1(前記(1)の摘記A4h)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)。しかしながら、両者は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の構成モノマー組成、イソシアネート系架橋剤(C)の添加量、ポリロタキサン化合物(B)の有無といった点で少なくとも相違するため(甲A4の同段落、表1(前記(1)の摘記A4h)、本件特許明細書の同段落、表1(前記1の摘記(3))参照)、「せん断応力残存率」のような、粘着剤の硬さに関する物理的特性は異なると解される。
そのため、甲A4発明における粘着性組成物の組成に着目しても、甲A4発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできず、前記<相違点4>は実質的な相違点である。
そして、前記<相違点4>に係る本件特許発明1の構成は、甲A4及び他の各甲号証に記載も示唆もされておらず、甲A4発明において係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 相違点4に係る申立人Aの主張の検討
前記<相違点4>に関し、申立人Aは異議申立書において以下の旨を主張する。
「前述のとおり、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層とするには、特定のアクリル酸エステル重合体(A)、すなわち、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを30質量%以上、高Tgアルキルアクリレートを1質量%以上30質量%以下、および水酸基含有モノマーを含有し、当該重合体の重量平均分子量が200万以下のアクリル酸エステル重合体(A)を用い、これを架橋剤で架橋すればよいことが推認される。
ここで、例えば、甲第4号証の実施例14で用いている(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、モノマー単位としてアクリル酸2−エチルヘキシル(低Tgアルキルアクリレート)65質量%、アクリル酸イソボルニル10質量%、メタクリル酸メチル(高Tgアルキルアクリレート)10質量%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(水酸基含有モノマー)15質量%を含有し、当該重合体の重量平均分子量は60万である。そして、甲第4号証の実施例では、この(メタ)アクリル酸エステル重合体をイソシアネート系架橋剤で架橋させ粘着剤としている。
そのため、甲4発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」(第51頁最終行〜第52頁第16行)
しかしながら、前記2(3)エでも述べたとおり、この主張は、「せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層とする」ための粘着剤の組成に関する条件(アクリル酸エステル重合体(A)の構成モノマー組成、重量平均分子量、架橋剤による架橋)を、本件特許明細書の記載から申立人Aが独自に推認、設定し、甲A4の実施例がその条件を充足することをもって、「甲A4発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」と主張するものであり、客観的な根拠に基づく主張とはいえない。
そして、申立人Aは、例えば実験成績証明書により、甲A4発明の粘着剤層はせん断応力残存率が72%以下であることを実際に示す等、前記<相違点4>が実質的に相違点でないといえる具体的な根拠を何ら示しておらず、前述のような客観性に乏しい根拠に基づき、「甲A4発明の粘着剤層は、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層である蓋然性が高い。」と主張するにとどまっている。
したがって、申立人Aの前記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、前記<相違点3>について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A4発明に対して新規性進歩性を有するものである。

(4)本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、いずれも本件特許発明1に従属し、本件特許発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件特許発明2〜9は、前記(3)と同様の理由により、甲A4発明に対して新規性進歩性を有するものである。

4 甲B1を主引例とした検討
(1)甲B1の記載
甲B1には、次の記載がある。なお、日本語訳は、甲B1の対応JPファミリー文献である、特表2018−526470号公報の対応箇所の記載に基づく。
B1a「

・・・

・・・

・・・


(日本語訳:
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基中に1〜24個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートエステルと、
フリーラジカル生成開始剤とを含む前駆体から誘導され、
約−30℃〜約90℃の温度範囲内で、周波数1Hzで約2MPaを超えない剪断貯蔵弾性率と、約50kPa〜約500kPaの剪断応力を与えて5秒で測定される少なくとも約6×10−61/Paの剪断クリープコンプライアンス(J)と、約5kPa〜約500kPaの範囲内の少なくとも1点の負荷剪断応力において前記負荷剪断応力を取り除いてから約1分以内での少なくとも約50%の歪み回復とを有する、可撓性デバイス用のアセンブリ層。
【請求項2】
光学的に透明である、請求項1に記載のアセンブリ層。
【請求項3】
前記可撓性デバイスが、可撓性電子ディスプレイである、請求項1に記載のアセンブリ層。
・・・
【請求項7】
粘着付与剤、分子量制御剤、可塑剤、安定剤、架橋剤、及びカップリング剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のアセンブリ層。
【請求項8】
第1の可撓性基材と、
第2の可撓性基材と、
前記第1の可撓性基材と前記第2の可撓性基材との間に配置され、前記第1の可撓性基材及び前記第2の可撓性基材と接触しているアセンブリ層とを含む積層体であって、前記アセンブリ層が、
アルキル基中に1〜24個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートエステルと、
フリーラジカル生成開始剤とを含む前駆体から誘導され、
約−30℃〜約90℃の温度範囲内で、前記アセンブリ層が、周波数1Hzで約2MPaを超えない剪断貯蔵弾性率と、約50kPa〜約500kPaの剪断応力を与えて5秒で測定される少なくとも約6×10−61/Paの剪断クリープコンプライアンス(J)と、約5kPa〜約500kPaの範囲内の少なくとも1点の負荷剪断応力において前記負荷剪断応力を取り除いてから約1分以内での少なくとも約50%の歪み回復とを有する、積層体。
【請求項9】
前記アセンブリ層が光学的に透明である、請求項8に記載の積層体。
・・・
【請求項14】
室温で24時間にわたって約15mm未満の曲率半径を強制するチャネル内に置かれたとき、破壊を示さない、請求項8に記載の積層体。
・・・
【請求項16】
曲率半径が約15mm未満の約10,000サイクルの折り畳みの動的折り畳み試験を室温で受けたとき、破壊を示さない、請求項8に記載の積層体。)
B1b「

」(第1頁第3〜28行)
(日本語訳:
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に可撓性アセンブリ層の分野に関する。特に、本発明は、アクリル系可撓性アセンブリ層に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の産業における感圧接着剤の一般的な用途は、コンピューター用モニター、テレビ、携帯電話及び小型ディスプレイ(車内用、機器用、装着品用、電子装置用等)等のさまざまなディスプレイの製造における用途である。亀裂又は損傷なしにディスプレイを自由に曲げることができる可撓性電子ディスプレイは、例えば可撓性プラスチック基材を使用して電子デバイスを作製する、急速に台頭しつつある技術分野である。この技術は、非平面物体への電子機能の統合、所望の設計への適合、及び使用中の可撓性を可能にし、多数の新規用途を生むことができる。
【0003】
可撓性電子ディスプレイの出現により、電子ディスプレイアセンブリの外側カバーレンズ又はシート(ガラス、PET、PC、PMMA、ポリイミド、PEN、環状オレフィンコポリマー等をベースとする)と下層のディスプレイモジュールとの間のアセンブリ層又は隙間充填層として機能する接着剤、特に光学透明接着剤(OCA)に対する要望が増している。OCAの存在は、明るさ及びコントラストを増加することによってディスプレイの性能を改善し、同時にアセンブリに構造支持も与える。可撓性アセンブリにおいて、OCAはまた、典型的なOCA機能に加えて、折り畳むことにより誘発される応力のほとんどを吸収してディスプレイパネルの壊れやすい部品の破損を防止し、折り畳みの応力下での損傷から電子部品を保護することもできるアセンブリ層として機能する。OCA層は、例えば有機発光ディスプレイ(OLED)のバリア層、駆動電極、又は薄膜トランジスタ等、ディスプレイの壊れやすい部品に又は少なくともその近くに中立曲げ軸を配置し、保持するためにも使用し得る。)
B1c「


」(第3頁第16行〜第4頁第7行)
(日本語訳:
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、例えば電子ディスプレイ、可撓性光電池又はソーラーパネル、及びウェアラブル電子機器等の可撓性デバイスにおいて使用可能なアクリル系アセンブリ層である。本明細書で使用する場合、用語「アセンブリ層」は、以下の特性:(1)少なくとも2つの可撓性基材への接着性と、(2)繰り返される屈曲中、被着物に付着していて、耐久性試験に合格するのに十分な能力と、を持つ層を意味する。本明細書で使用する場合、「可撓性デバイス」は、200mm、100mm、50mm、20mm、10mm、5mm、又は更には2mm未満の曲げ半径での繰り返される屈曲又は巻き取り動作に耐えることができるデバイスとして定義される。アクリル系アセンブリ層は、軟質であり、主に弾性で、プラスチックフィルム又はガラスのような他の可撓性基材に対して良好な接着性を有し、剪断負荷に対して高い耐性がある。更に、アクリル系アセンブリ層は、比較的低い弾性率、中程度の応力での高率コンプライアンス、低いガラス転移温度、折り畳み中の最低ピーク応力の発生、及び応力を加えて取り除いた後の良好な歪み回復を有し、その繰り返される折り畳み及び展開に耐える能力のために可撓性アセンブリにおける使用に適合させる。多層構造体の繰り返される屈曲又は回転の下、接着層への剪断負荷は非常に大きくなり、任意の形態の応力が、機械的欠陥(層間剥離、1つ以上の層の座屈、接着剤中のキャビテーション気泡等)だけでなく、光学的欠陥又はムラ(Mura)も生じさせ得る。主に粘弾性の特徴を持つ従来の接着剤とは異なり、本発明のアクリル系アセンブリ層は、使用条件下で主に弾性であるが、さまざまな耐久性必要条件に合格するのに十分な接着性も維持する。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層は、光学的に透明であり、低ヘイズ、高い可視光透明性、抗白色化挙動(anti−whitening behavior)、及び環境耐久性を示す。)
B1d「

」(第6頁第11〜32行)
(日本語訳:
【0016】
一実施形態では、モノマー混合物は、多官能性架橋剤を含む。例えば、前駆体混合物としては、溶媒をコーティングした接着剤を調製する乾燥工程中に活性化される熱架橋剤、及び重合工程中に共重合する架橋剤を挙げることができる。このような熱架橋剤としては、多官能性イソシアネート、多官能性アジリジン、及びエポキシ化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。共重合可能な例示的な架橋剤としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の二官能性アクリレート又は当業者に既知のもの等の多官能アクリレートが挙げられる。有用なイソシアネート架橋剤として、例えば、DESMODUR N3300として、Cologne,GermanyにあるBayerより入手可能な芳香族トリイソシアネートが挙げられる。紫外線、又は「UV」活性型架橋剤も、アセンブリ層の前駆体を架橋するのに使用することができる。そのようなUV架橋剤は、ベンゾフェノン等の非共重合性光架橋剤、及び4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなアクリル化又はメタクリル化ベンゾフェノン等の共重合性光架橋剤を含み得る。典型的には、架橋剤は、存在する場合、約0.01重量部〜約5重量部、特に約0.01〜約4重量部、より特定すると約0.01〜約3重量部の量でモノマー混合物に添加される。イオン架橋、酸塩基架橋等の他の架橋方法、又は例えばポリメチルメタクリレートマクロマー若しくはポリスチレンマクロマー等の高Tgマクロマーを共重合することによる物理架橋方法も使用してよい。マクロマーは、アセンブリ層組成物中の全モノマー成分の約1〜約20重量部の量で使用してよい。)
B1e「

」(第7頁第15〜26行)
(日本語訳:
【0019】
例えば、分子量制御剤、カップリング剤、油、可塑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、顔料、硬化剤、重合体添加剤、ナノ粒子、及び他の添加剤を含めた他の材料を、特別の目的のためにモノマー混合物に添加してもよい。アクリル系アセンブリ層が、光学的に透明である必要があるケースでは、他の材料をモノマー混合物に添加してもよいが、但しそれらは、重合及びコーティング後、アセンブリ層の光学的透明性をあまり低減しない。本明細書で使用するとき、用語「光学的に透明」は、波長範囲400〜700nmにおいて、約90パーセントを超える光の透過率、約2パーセント未満のヘイズ及び約1パーセント未満の不透明度を有する材料を指す。光の透過率及びヘイズは両方とも、例えば、ASTM−D 1003−92を使用して決定することができる。典型的に、光学的に透明なアセンブリ層は、気泡が目視で認められない。)
B1f「


」(第8頁第22行〜第9頁第12行)
(日本語訳:
【0023】
本発明はまた、アクリル系アセンブリ層を含む積層体も提供する。積層体は、2つの可撓性基材層又はその倍数間に挟まれた少なくとも1つのアセンブリ層の多層複合体として定義される。例えば、複合体は、基材/アセンブリ層/基材の3層複合体;基材/アセンブリ層/基材/アセンブリ層/基材の5層複合体等であり得る。このような多層スタック中の可撓性アセンブリ層それぞれの厚さ、機械特性、電気特性(誘電率等)、及び光学特性は、同じであってもよいが、最終的な可撓性デバイスアセンブリのデザイン及び性能特性によりよく適合するために異なっていてもよい。積層体は、以下の特性:それを使用する物品の有用な耐用年数にわたる光学透過率、それを使用する物品の層間の十分な結合強度を維持する能力、層間剥離耐性又は回避、及び有用な耐用年数にわたる気泡に対する耐性のうちの少なくとも1つを有する。気泡形成に対する耐性及び光学透過率の保持は、促進老化試験を用いて評価することができる。促進老化試験において、アクリル系アセンブリ層は、2つの基材間に配置される。次いで、得られる積層体を、ある一定時間、多くの場合は高湿と組み合わせて、高温に曝露する。高温及び高湿に曝露した後でも、アクリル系アセンブリ層を含む積層体は、光学的透明性を保持する。例えば、アクリル系アセンブリ層及び積層体は、約72時間の間、70℃及び相対湿度90%で老化し、続けて室温に冷却された後でも、光学的に透明なままである。老化後、400ナノメートル(nm)〜700nmの接着剤の平均透過率は約90%超であり、ヘイズは約5%未満、特に約2%未満である。)
B1g「

」(第11頁第19〜31行)
(日本語訳:
【0029】
更に、折り畳み又は屈曲事象の間に発生する応力を最小限に抑え、応力を消散するアクリル系アセンブリ層の能力は、中間層の破壊を回避するアクリル系アセンブリ層の能力及び可撓性ディスプレイアセンブリのより壊れやすい部品を保護するその能力に極めて重要である。応力の発生及び消散は、材料に適切な剪断歪み量を強制的に与えてこれを保持する従来の応力緩和試験を用いて測定することができる。次いで、材料をこの標的歪みで保持しながら、剪断応力量を経時観察する。一実施形態では、約500%の剪断歪み、特に約600%、約700%、及び約800%、より特定すると約900%の歪みの後、約5分後に観察される残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)は、ピーク応力の約50%未満、特に約40%未満、約30%未満、及び約20%未満、より特定すると約10%未満である。試験は、通常、室温で実施するが、可撓性デバイスの使用に関連した任意の温度でも実施することが可能である。)
B1h「

」(第13頁第3〜12行)
(日本語訳:
【0032】
上記の静的折り畳み試験挙動に加えて、アクリル系アセンブリ層と結合された第1及び第2の基材を含む積層体は、動的折り畳みシミュレーション試験中、座屈又は層間剥離等の破壊を示さない。一実施形態では、積層体は、約10000サイクル超、特に約20000サイクル超、約40000サイクル超、約60000サイクル超、及び約80000サイクル超、より特定すると約100000サイクル超の折り畳み(曲率半径:約50mm未満、特に約20mm未満、約10mm未満、及び約5mm未満、より特定すると約3mm未満)の自由曲げモード(すなわち、マンドレルは使用しない)の動的折り畳み試験で、全ての使用温度(−30℃〜90℃)間で破壊事象を示さない。)
B1i「



」(第13頁第18行〜第14頁最終行)
(日本語訳:
【実施例】
【0034】
本発明は、例示のみを意図する以下の実施例で、より具体的に説明されるが、これは、本発明の範囲内の数多くの修正形態及び変形形態が当業者には明らかとなるためである。特に注記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、百分率及び比は、重量を基準とする。
【表1】

【0035】
試験方法1光学特性
HunterLab(Reston,VA)製のUltrascanPro分光光度計を透過モードで使用してヘイズ測定を行った。アセンブリ層を剥離キャリアライナー(RF02N及びRF52N,SKC Haas,Korea)間にコーティングし、およそ幅5cm×長さ10cmに切って、その厚さを測定した。キャリアライナーのうちの1つを除去し、サンプルを、1mm厚の透明なガラス片に貼り合わせた。次いで、他方のライナーを除去し、2ミル厚の光学的に透明なポリエチレンテレフタレート層(PET,SKC Haas(Korea)製のSkyrol SH−81)をアセンブリ層に貼り合わせた。サンプルをUltrascanPro分光光度計に入れ、PET/OCA/ガラスアセンブリを通して透過率及び色を測定した。追加のサンプルを準備し、65℃及び相対湿度90%に設定したチャンバ中で800時間、老化させた。サンプルを湿度チャンバから取り出して冷却させた後、再度、ヘイズ測定を実施した。典型的には、光学用途に適したサンプルのヘイズ値は、約5%未満、特に約2%未満であり、b*明度は約5未満である。)
B1j「


」(第16頁第14行〜第17頁第8行)
(日本語訳:
【0040】
試験方法6静的折り畳み試験
アセンブリ層の2ミル厚の部分を1.7ミルのポリイミド(PI)シート間に積層して、3層の構造体を作製し、次いで5インチの長さに切った。更に、PI/AS/PI/AS/PIで構成される5層の構造体も、2ミルのアセンブリ層及び1.7ミルのPIを用いて同様に調製した。積層構造体も、4ミル及び6ミル厚のアセンブリ層をPI層間に使用して同様に調製した。次いで、サンプルを曲率半径3mm辺りで曲げ、その位置で24時間保持した。24時間後、接着剤の座屈又は層間剥離がなければ、サンプルは静的保持試験(static hold test)に合格とした。更に、24時間後、サンプルを解放し、回復させ、面に対して90度及び45度(すなわち、それぞれ90度及び135度の夾角)に達成するために要した時間を記録し、3分の終わりには最終角度Θになった。一部の場合では、サンプルは、3分の試験時間内で、面に対して45度又は更には90度まで回復できなかった。これらのサンプルの場合、最終角度は、その時間帯で達した最低値で記録された。静的折り畳み試験はまた、24時間の間、−20℃の温度でサンプルを保持して繰り返した。
【0041】
試験方法7動的折り畳み試験
ライナーを2ミル厚のアセンブリ層から取り外し、1.7ミルのポリイミドのシート2枚の間に材料を積層して、3層の構造体を作製した。次いで、この積層体を長さ5”×幅1”に切った。PI/AS/PI/AS/PIで構成される5層の構造体も、2ミルのアセンブリ層及び1.7ミルのPIを用いて同様に調製した。サンプルを、180度(すなわち、サンプルは曲げられていない)から0度(すなわち、サンプルが折り畳まれている)まで回転する2つの折り畳みテーブルを有する動的折り畳みデバイスにマウントし、約6サイクル/分の試験速度で100000サイクルにかけた。5mmの曲げ半径は、閉じた状態(0度)にある2つの剛性板の間の隙間によって決定した。曲率を誘導するためにマンドレルは使用しなかった(すなわち、自由曲げ様式を用いた)。折り畳みは、室温で行った。)
B1k「














」(第17頁第28行〜第22頁第4行)
(日本語訳:
【0044】
実施例1〜6:溶媒ベースのアセンブリ層サンプルの調製
アセンブリ層フィルムを、下記の表2に記載した組成に従って調製した。実施例1において、40gの2EHA、10gのHBA、0.05gのVAZO 67、0.025gのTDDM、及び50gの酢酸エチルをガラス瓶に添加した。内容物を混合し、窒素で2分間パージした後、密封し、Laundrometer(SDL Atlas,Rock Hill,SC)に入れ、24時間、60℃で水浴を回転した。24時間後、GPCを用いてサンプルを分析し、ポリマーが465kDaのMw及び5.75の多分散指数を有していたことを決定した。次いで、0.037gのN3300架橋剤をこの溶液に添加し、2時間混合した後、溶液を、50マイクロメートル厚のRF02Nシリコーン処理ポリエステル剥離ライナー(SKC Haas,Korea)に、ナイフ塗布器を使用してコーティングし、5ミルの隙間を設けた。コーティングされたサンプルを70℃のオーブンに24時間入れておいた後、上部キャリア層のT50シリコーン処理ポリエステル剥離ライナー(Solutia,USA)をアセンブリ層に積層した。この手順は、表2に列挙した配合物を使用して、実施例2〜6及び比較例CE1及びCE2について繰り返した。
【表2】

【0045】
実施例7〜20:無溶媒ベースのアセンブリ層サンプルの調製
アセンブリ層フィルムはまた、実施例7で詳述する以下の手順を用いて、表3に列挙する配合に従って調製した。透明なガラス瓶中、80gの2−EHA、20gのHBA及び0.02gのD1173光開始剤を混合した。サンプルを窒素で5分間パージし、コーティング可能な粘性(約2000cPs)を実現するまで360nmのLED光からの低強度(0.3mW/cm2)UVに曝した。LED光を遮断し、空気でパージすることによって重合を止めた。次いで、追加の0.18gのD1173光開始剤及び0.01gのHDDA架橋剤を、表3に示す配合物に添加し、一晩混合した。次いで粘性ポリマー溶液を、ナイフ塗布器を使用して、シリコーン処理ポリエステル剥離ライナーRF02N及びT50間にコーティングし、別段の指定がない限り2ミル厚のOCAコーティングを得るように隙間を設定した。次いで、この構造体を、全量1500mJ/cm2のUV−Aのバックライトランプで照射した。比較例をCE3として列挙する。
【表3】

【0046】
実施例1〜19並びに比較例CE1、CE2及びCE3を、上記の試験方法2〜4に記載のTg、弾性率、剪断クリープ、及び応力緩和特性について試験した。データを以下の表4に記録する。
【表4】

【0047】
実施例8〜20及び比較例CE3を、試験方法1、5及び6による光学特性、引張伸び、及びT剥離接着性について試験し、結果を表5に記載した。T剥離破壊モードは、接着性(Ad)、凝集性(Co)、又は移動(Tr、軽い凝集破壊/ゴースティング)として記録する。
【表5】

【0048】
全てのサンプルを、試験方法6によって指示される静的屈曲条件下で試験し、一部のサンプルを、試験方法7に記載の動的屈曲性能について試験した。結果を以下の表6に列挙する。
【表6】



(2)甲B1発明の認定
ア 甲B1の実施例8で調製されるアセンブリ層フィルムは、アクリル系ポリマーと架橋剤を含有し、所定条件下で測定したヘイズ値が0.7%である(甲B1の第14頁第3〜17行、第18頁第13行〜第19頁第3行、第20頁第2行〜第21頁第1行、表3、5(前記(1)の摘記B1i及びB1k)参照)。
イ 甲B1の請求項1、8及び第3頁第22〜24行(前記(1)の摘記B1a及びB1c)の記載より、甲B1に開示されるアセンブリ層は、所定の曲げ半径での繰り返される屈曲又は巻き取り動作に耐えることができる可撓性デバイス用で、第1の可撓性基材と第2の可撓性基材とを貼合するためのものといえる。
ウ そうすると、甲B1の実施例8を中心に、甲B1から次の発明(以下、「甲B1発明」という。)が認定できる。
エ 甲B1発明
「所定の曲げ半径での繰り返される屈曲又は巻き取り動作に耐えることができる可撓性デバイス用で、第1の可撓性基材と第2の可撓性基材とを貼合するためのアセンブリ層を有するアセンブリ層フィルムであって、
前記アセンブリ層は、アクリル系ポリマーと架橋剤を含有し、
所定条件下で測定した前記アセンブリ層のヘイズ値が、0.7%である、
アセンブリ層フィルム。」

(3)本件特許発明1について
ア 対比
甲B1発明と本件特許発明1を対比する。
甲B1発明の「所定の曲げ半径での繰り返される屈曲又は巻き取り動作に耐えることができる可撓性デバイス」、「第1の可撓性基材」、「第2の可撓性基材」、「アセンブリ層」、「アセンブリ層フィルム」はそれぞれ、本件特許発明1の「繰り返し屈曲されるデバイス」、「一の屈曲性部材」、「他の屈曲性部材」、「粘着剤層」、「粘着シート」に相当する。

イ 一致点及び相違点
そうすると、甲B1発明と本件特許発明1は、
「繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5>
「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」(以下、「せん断応力残存率」ともいう。)が、本件特許発明1は「72%以下」であるのに対し、甲B1発明は不明である点。
<相違点6>
本件特許発明1は、「前記粘着剤層のヘイズ値が、0.5%以下であ」るのに対し、甲B1発明は、「所定条件下で測定した前記アセンブリ層のヘイズ値が、0.7%である」点。
<相違点7>
本件特許発明1は、「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であ」るのに対し、甲B1発明は、「前記アセンブリ層」のゲル分率が不明である点。
<相違点8>
本件特許発明1は、「前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する」のに対し、甲B1発明は、「前記アセンブリ層」がシランカップリング剤を含有しない点。

ウ 相違点5の検討
前記<相違点5>について、最初に、甲B1発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認できるか検討する。
甲B1発明のアセンブリ層は、アクリル系ポリマーと架橋剤を少なくとも含有する点で、本件特許明細書の実施例1〜10における粘着性組成物と共通する(甲B1の第18頁第13行〜第19頁第3行、表3(前記(1)の摘記B1k)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)。しかしながら、両者は、アクリル系ポリマーの構成モノマー組成、架橋剤の添加量といった点で少なくとも相違するため(甲B1の同箇所(前記(1)の摘記B1k)、本件特許明細書の同箇所(前記1の摘記(3))参照)、「せん断応力残存率」のような、粘着剤の硬さに関する物理的特性は異なると解される。
また、甲B1の第11頁第25〜30行(前記(1)の摘記B1g)には、「一実施形態では、約500%の剪断歪み、特に約600%、約700%、及び約800%、より特定すると約900%の歪みの後、約5分後に観察される残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)は、ピーク応力の約50%未満、特に約40%未満、約30%未満、及び約20%未満、より特定すると約10%未満である」ことが記載されている。ここで、出願時の当業者の技術常識を考慮すれば、時間の経過と共に応力は緩和され、残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)は減少すると解されるが、時間の経過に伴う残留応力量の減少速度は一定とは限らず、残留応力量の減少過程は最初に与えられる剪断歪み量によっても変化し得ると解される。そうすると、仮に例えば「約900%の剪断歪みの後、約5分後に観察される残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)」が「ピーク応力の約50%未満」であるとしても、そのことから、本件特許発明1で規定される「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」を推測することはできず、その値が必ず「72%以下」になると推認することはできない。
したがって、甲B1発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできず、前記<相違点5>は実質的な相違点である。
そして、前記<相違点5>に係る本件特許発明1の構成は、甲B1及び他の各甲号証に記載も示唆もされておらず、甲B1発明において係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 相違点5に係る申立人Bの主張の検討
前記<相違点5>に関し、申立人Bは異議申立書において以下の旨を主張する。
「このように、甲第1号証には、アセンブリ層のせん断歪みの後の残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)が所定値未満となること、そしてアセンブリ層が屈曲又は折り畳みの形状に適合することが記載されている。
ここで、本件特許発明1におけるせん断応力残存率は、粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合を示すものであり、せん断応力残存率が小さい場合、せん断応力緩和性に優れていることを示すものである。せん断応力緩和性に優れている粘着剤層は、屈曲状態と非屈曲状態を繰り返しても、その両方の屈曲性部材に追従することができ、粘着剤層の浮きや剥がれの発生が抑制されることになる(本件特許明細書の段落0023等)。
甲第1号証に記載されたせん断歪みの後の残留応力量も本件特許発明1におけるせん断応力残存率と同様に、せん断応力緩和性の優劣を示す指標であるため、甲1発明におけるアセンブリ層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)は72%以下である藍然性が高い。
また、本件特許明細書の段落0027には、『本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。』と記載されており、粘着性組成物に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)を配合することで、所定のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)を達成しているものと理解できる。ここで、甲第1号証の段落0044の実施例1〜6に示されるように、甲1発明のアセンブリ層においても、アルキル(メタ)アクリレートエステルと架橋剤(N3300)が用いられており、本件特許発明の粘着剤層を構成する成分と甲1発明のアセンブリ層を構成する成分は共通しているため、粘着剤層とアセンブリ層のせん断応力残存率も同等程度であると考えられる。このことからも、甲1発明のアセンプリ層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)が72%以下である蓋然性が高いことが裏付けられている。」(第48頁第11行〜第49頁第17行)
しかしながら、前記ウで検討したとおり、甲B1の第11頁第25〜30行(前記(1)の摘記B1g)における、アセンブリ層のせん断歪みの後の残留応力量(測定される剪断応力をピーク剪断応力で除算したもの)が所定値未満となる旨の記載や、甲B1発明におけるアセンブリ層の組成からは、甲B1発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできない。
また、申立人Bは、例えば実験成績証明書により、甲B1発明のアセンブリ層はせん断応力残存率が72%以下であることを実際に示す等、前記<相違点5>が実質的に相違点でないといえる具体的な根拠を何ら示していない。
したがって、申立人Bの前記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、前記<相違点5>以外の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1発明に対して新規性進歩性を有するものである。

(4)本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、いずれも本件特許発明1に従属し、本件特許発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件特許発明2〜9は、前記(3)と同様の理由により、甲B1発明に対して新規性進歩性を有するものである。

5 甲B6を主引例とした検討
(1)甲B6の記載
甲B6には、次の記載がある。
B6a「【請求項1】
可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルム、及び当該透明導電性フィルムの透明導電層上に形成された粘着剤層を含み、
前記粘着剤層の貯蔵弾性率が0.1〜0.4MPaであることを特徴とする、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体に適用される積層体。
・・・
【請求項3】
前記粘着剤層が、アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合して得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含み、
前記モノマー成分は、カルボキシル基含有モノマーを含まないか、又は、モノマー成分中7重量%以下で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
・・・
【請求項7】
前記積層体が曲面形状を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層体を用いたことを特徴とするタッチパネル。
・・・
【請求項10】
可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルムの透明導電層上に、
貯蔵弾性率が0.1〜0.4MPaである粘着剤層を積層することを特徴とする、透明導電性フィルムの屈曲耐性を向上する方法。」
B6b「【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルム、及び当該透明導電性フィルムの透明導電層上に形成された粘着剤層を含む積層体に関する。また、本発明は、前記積層体を用いたタッチパネルに関する。また、本発明は、可撓性基材上に透明導電層が形成された透明導電性フィルム、前記透明導電層上に形成するための粘着剤層を有する積層体形成キット、透明導電性フィルムの屈曲耐性を向上する方法に関する。」
B6c「【0007】
前述の通り、フレキシブルディスプレイやベンダブルディスプレイに採用する透明導電性フィルムには、高い屈曲耐性(繰り返し曲げ性)が必要である。具体的には、透明導電性フィルムを10,000回以上屈曲させた場合であっても透明導電層の抵抗値上昇が抑制されていることが望まれており、従来の透明導電層に求められる屈曲耐性よりもはるかに高度な屈曲耐性が必要とされている。
【0008】
また、透明導電性フィルム及び粘着剤層を含む積層体について屈曲性試験を施すと、粘着剤層に浮きや剥がれが発生するといった接着性能の点でも問題がある場合があった。
【0009】
従って、本発明は、透明導電性フィルム及び粘着剤層を含む積層体であって、高度に優れた屈曲耐性を有し、かつ屈曲試験後においても粘着剤層の浮きや剥がれが発生することを抑制することができる積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、前記積層体を含むタッチパネルを提供することも目的とする。さらに、本発明は、前記積層体を形成することができる積層体形成キットや、透明導電性フィルムの屈曲耐性を向上する方法を提供することも目的とする。」
B6d「【発明の効果】
【0021】
本発明の積層体は、可撓性基材と透明導電層と粘着剤層をこの順に有し、前記粘着剤層の貯蔵弾性率が0.1〜0.4MPaであるため、高度に屈曲耐性に優れており、屈曲可能である。従って、本発明の積層体は、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体に好適に適用することができる。また、本発明の積層体は、屈曲試験後においても粘着剤層の浮きや剥がれが発生することを抑制することができるものである。また、本発明の積層体を含むタッチパネルは、高度に屈曲耐性に優れており、曲面形状を有するディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイのいずれにも採用することができる。また、本発明の積層体形成キットは、本発明の積層体を形成することができる。また、本発明の方法によれば、透明導電性フィルムの屈曲耐性を向上することができる。」
B6e「【0023】
1.積層体
本発明の積層体の構成について図1を用いて説明する。本発明の積層体1は、可撓性基材4と透明導電層3を有する透明導電性フィルム5、当該透明導電性フィルム5の透明導電層3上に形成された粘着剤層2を含む構成をしている。また、前記粘着剤層2の貯蔵弾性率が0.1〜0.4MPaであることを特徴とするものであり、本発明の積層体1は、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体に適用される。ここで、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体とは、例えば、湾曲状の被着体や、折り曲げられた被着体等の屈曲している形状で固定されている被着体や、使用中に折ったり曲げたりしてその形状を変化させて使用することができる等の屈曲可能な被着体を意味する。すなわち、本発明の積層体自身も、屈曲している形態や、使用中に屈曲させてその形状を変化させる形態とすることができる。従って、本発明の積層体の形状は特に限定されるものではないが、例えば、曲面形状の被着体に適応させるために、曲面形状を有する形状であってもよい。
【0024】
以下、本発明の積層体の各構成について説明する。
【0025】
(1)粘着剤層
本発明で用いる粘着剤層は、貯蔵弾性率が0.10〜0.4MPaであり、0.15〜0.35MPaであることが好ましく、0.20〜0.30MPaであることがより好ましい。本発明で用いる粘着剤層の貯蔵弾性率が前記範囲であることで、本発明の積層体に非常に高い屈曲耐性を付与することができ、かつ、屈曲試験後においても粘着剤層に浮きや剥がれが発生せず、接着性能にも優れるものである。ここで、非常に高い屈曲耐性とは、例えば、屈曲直径が約3mm程度で10,000回以上屈曲試験を行った後でも透明導電膜の抵抗値の上昇率を抑えることができるものである。具体的には、本明細書の実施例に記載されている抵抗値変化率試験において、10,000回の屈曲試験を行った後でも、屈曲前の抵抗値の1.1倍以下の抵抗値となることをいう。ここで、屈曲直径とは、屈曲試験において積層体が円弧状に屈曲されたときに、該屈曲された積層体の内周を形成する直径のことを言い、具体的には、実施例の屈曲試験で使用する金属棒の直径をいう。」
B6f「【0061】
本発明で用いる粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、多官能性の化合物が使用され、有機系架橋剤や多官能性金属キレートが挙げられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属原子が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。」
B6g「【0076】
前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、例えば、70〜95%程度であることが好ましい。
【0077】
(2)透明導電性フィルム
本発明で用いる透明導電性フィルムは、可撓性基材の少なくとも片面に透明導電層を有するものであり、可撓性基材の両面に透明導電層を有していてもよい。
【0078】
前記可撓性基材としては、可撓性を有するものであればよく、例えば、樹脂フィルムや、ガラス等からなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材等)等が挙げられる。これらの中でも樹脂フィルムが特に好ましい。可撓性基材の厚さは、特に限定されないが、10〜200μm程度が好ましく、15〜150μm程度がより好ましい。」
B6h「【0106】
2.タッチパネル
本発明のタッチパネルは、前記積層体を含むことを特徴とする。前記積層体の透明導電層がパターニングされている場合に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。タッチパネルとしては、静電容量方式、抵抗膜方式等の各種方式に適用できるが、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。
【0107】
静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電層を備えた積層体がディスプレイ表示部の全面に形成されている。
【0108】
本発明のタッチパネルは、屈曲耐性に優れており、曲面形状を有するディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイのいずれも採用することができる。」
B6i「【0121】
実施例2
(粘着剤層の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)63重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)15重量部、メチルメタクリレート(MMA)9重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)13重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル200重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加え、60℃に昇温して10時間反応させた。その後、トルエンを加え、固形分濃度30重量%、重量平均分子量(Mw)80万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーの溶液(固形分100重量部)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)1.0重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−403、信越化学(株)製)0.2重量部を加えて粘着剤組成物(A−2)(溶液)を調製した。
【0122】
このようにして調製した粘着剤組成物(A−2)を、剥離フィルム(商品名:ダイアホイルMRF#75、三菱樹脂(株)製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが100μmとなるように塗布し、常圧下、60℃で3分間、続いて、155℃で4分間加熱乾燥し、さらに50℃で72時間エージングを行って粘着剤層を作製した。
【0123】
前記得られた粘着層を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。」
B6j「【0128】
実施例4
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA)99重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部及び重合溶媒として酢酸エチルを固形分が30%になるように投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーの溶液(固形分100重量部)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)0.02重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−403、信越化学(株)製)0.1重量部を加えて粘着剤組成物(A−4)(溶液)を調製した。
【0129】
このようにして調製した粘着剤組成物(A−4)を、剥離シートの離型処理面に乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、常圧下、60℃で1分間及び150℃で1分間加熱乾燥し、さらに23℃で120時間エージングを行って粘着剤層を作製した。
【0130】
前記得られた粘着層を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。」
B6k「【0144】
<ゲル分率の測定方法>
実施例及び比較例1〜3で得られた粘着シートから粘着剤層を約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名:NTF1122、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量(Z)とした。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量(Y)とした。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置した。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量(X)とした。
そして、下記の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=(X−Y)/(Z−Y)×100
【0145】
<抵抗値変化率(1万回屈曲)>
実施例及び比較例で作製した積層体(比較例4では透明導電性フィルムそのもの)を10mm×150mmの大きさにカットし、粘着剤層と粘着剤層上のセパレータを、長尺方向両端部から15mmカットして、透明導電層(ITO層)がむき出しになるようにした。さらに、導通をとるために長尺方向の両端部に銀ペースト(商品名:Dotite FA301C、フジクラ化成(株)製)を塗布し、室温で1日間乾燥させた。この銀ペーストは端部から5mmまでの範囲に塗布した。得られたサンプル片を上から見た場合、図2(a)に示すように、長尺方向に、5mm幅の銀ペースト6、10mm幅の透明導電層3、粘着剤層2(その上にセパレータ(不図示))、10mm幅の透明導電層3、5mm幅の銀ペースト6となる。また、サンプル片を横から見た場合、図2(b)のようになる。
【0146】
このサンプル片を用いて屈曲試験(マンドレル試験)を実施した。図2(c)に示すように、屈曲試験は、サンプル固定板7上にサンプル片12を、サンプル固定板7側に可撓性基材が接するように置き(比較例4では透明導電層側)、直径3mmの金属棒8にフィルム基板側を沿わせて、0°〜180°の範囲で繰り返し屈曲させた。屈曲条件は、室温環境下で、屈曲直径3mm、屈曲角度が180°、屈曲速度を1回/sec、引張り荷重100gであった。
また、サンプル片の銀ペースト塗布部分には導通をとった金属クリップ11を取り付け、一定電流を流すことで屈曲試験中の抵抗値変化をテスター(抵抗値測定装置)9により、測定した。
以下の計算式から10,000回屈曲後の抵抗変化率を求めた。
抵抗変化率=R/R0
(式中、Rは、屈曲後の抵抗値、R0は、屈曲前の抵抗値を示す)
【0147】
<抵抗値変化回数(1.1倍までの回数)>
前記<抵抗値変化率(1万回屈曲)>の試験結果をもとに、抵抗値が初期の抵抗値の1.1倍になるまでの屈曲回数を求めた。
【0148】
<接着力>
前記<抵抗値変化率(1万回屈曲)>で用いた1万回屈曲した後のサンプル片を目視で観察し、浮きや剥がれの有無を確認し、以下の評価基準で評価した。
○:浮きや剥がれが確認できなかった(浮きや剥がれの発生なし)。
×:浮きや剥がれが確認できた。
【0149】
【表1】



(2)甲B6発明の認定
ア 甲B6の実施例2、4で調製される粘着剤組成物(A−2)、(A−4)は、アクリル系ポリマー、イソシアネート系架橋剤及びシランカップリング剤を含有し、該粘着剤組成物から作製される粘着剤層のゲル分率は、それぞれ90%、73%である(甲B6の段落【0121】〜【0123】、【0128】〜【0130】、【0144】、表1(前記(1)の摘記B6i〜B6k)参照)。
イ 甲B6の請求項1、8及び段落【0021】、【0023】(前記(1)の摘記B6a、B6d及びB6e)の記載より、甲B6に開示される粘着剤層は、「可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルム」と「屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体」の貼合に適用され、その積層体は、フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ等のタッチパネルに用いられるといえる。
ウ そうすると、甲B6の実施例2、4を中心に、甲B6から次の発明(以下、「甲B6発明」という。)が認定できる。
エ 甲B6発明
「フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ等のタッチパネルにおける、可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルム(a)と、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体(b)の貼合に適用される粘着剤層であって、
前記粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー、イソシアネート系架橋剤及びシランカップリング剤を含有し、
前記粘着剤層のゲル分率が90%又は73%である、
粘着剤層。」

(3)本件特許発明1について
ア 対比
甲B6発明と本件特許発明1を対比する。
(ア)甲B6発明の「フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ等のタッチパネル」、「可撓性基材と透明導電層を有する透明導電性フィルム(a)」、「屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体(b)」はそれぞれ、本件特許発明1の「繰り返し屈曲されるデバイス」、「一の屈曲性部材」、「他の屈曲性部材」に相当する。
(イ)甲B6発明の「粘着剤層」は、本件特許発明1の「粘着剤層」ないし「粘着シート」に相当する。
(ウ)甲B6発明では、「前記粘着剤層のゲル分率が90%又は73%である」から、本件特許発明1の「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり」を充足する。
(エ)甲B6発明では、「前記粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、・・・シランカップリング剤を含有」するから、本件特許発明1の「前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する」を充足する。

イ 一致点及び相違点
そうすると、甲B6発明と本件特許発明1は、
「繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であり、
前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する
粘着シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点9>
「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」(以下、「せん断応力残存率」ともいう。)が、本件特許発明1は「72%以下」であるのに対し、甲B6発明は不明である点。
<相違点10>
「粘着剤層のヘイズ値」が、本件特許発明1は「0.5%以下」であるのに対し、甲B6発明は不明である点。

ウ 相違点9の検討
前記<相違点9>について、最初に、甲B6発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認できるか検討する。
甲B6発明の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー、イソシアネート系架橋剤及びシランカップリング剤を少なくとも含有する点で、本件特許明細書の実施例1〜9における粘着性組成物と共通する(甲B6の段落【0121】、【0128】(前記(1)の摘記B6i、B6j)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)。しかしながら、両者は、アクリル系ポリマーの構成モノマー組成、イソシアネート系架橋剤の添加量といった点で少なくとも相違するため(甲B6の同箇所(前記(1)の摘記B6i、B6j)、本件特許明細書の同箇所(前記1の摘記(3))参照)、「せん断応力残存率」のような、粘着剤の硬さに関する物理的特性は異なると解される。
そのため、甲B6発明における粘着剤組成物の組成に着目しても、甲B6発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできず、前記<相違点9>は実質的な相違点である。
そして、前記<相違点9>に係る本件特許発明1の構成は、甲B6及び他の各甲号証に記載も示唆もされておらず、甲B6発明において係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 相違点9に係る申立人Bの主張の検討
前記<相違点9>に関し、申立人Bは異議申立書において以下の旨を主張する。
(ア)「甲第6号証の段落0009には、粘着剤層を含む積層体が高度に屈曲耐性に優れており、屈曲試験後においても粘着剤層の浮きや剥がれが発生することが抑制されていることが記載されており、段落0025には、当該積層体が非常に高い屈曲耐性を有するものであり、かつ、屈曲試験後においても粘着剤層に浮きや剥がれが発生せず、接着性能にも優れるものであることが記載されている。甲第6号証に記載された粘着剤層は、屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するために用いられ、屈曲試験後であっても、浮きや剥がれが発生せず、接着性能に優れるとされており、甲第6号証に記載された粘着剤層は、本件特許発明1の粘着シートと同様の機能を発揮している。
ここで、本件特許明細書の段落0023には、『せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れているということができる。一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する粘着剤層とからなる積層体を屈曲させた場合、屈曲の外側に位置する屈曲性部材と屈曲の内側に位置する屈曲性部材とでは、屈曲部の曲率が異なるため、互いにずれた位置関係になる。そのため、それらを貼合する粘着剤層には、せん断応力が発生する。上記の通り、本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力緩和性に優れているため、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。』と記載されており、せん断応力残存率が小さければ、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易いことが記載されている。このため、屈曲性部材に追従し易い粘着剤層であれば、せん断応力残存率は小さいものであることが推定される。従って、甲6発明における粘着剤層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)は72%以下である蓋然性が高い。」(第68頁第14行〜第69頁第11行)
(イ)「さらに、本件特許明細書の段落0027には、『本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。』と記載されており、粘着性組成物に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)を配合することで、所定のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)を達成しているものと理解できる。ここで、甲第6号証の実施例2に示されるように、甲2発明の粘着剤層においても、アクリル系粘着剤と架橋剤(トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製))が用いられており、本件特許発明の粘着剤層を構成する成分と甲6発明の粘着剤層を構成する成分は共通しているため、本件特許発明1における粘着剤層と甲6発明における粘着剤層のせん断応力残存率は同等程度であると考えられる。このことからも、甲6発明の粘着剤層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)が72%以下である蓋然性が高いことが裏付けられている。」(第69頁第21行〜第70頁第13行)
前記(ア)の主張は、甲B6発明の粘着剤層が、高度に屈曲耐性に優れ、屈曲試験後においても粘着剤層の浮きや剥がれが発生せず、接着性能に優れるという点で、本件特許発明1の粘着シートと同様の機能を発揮することを、「せん断応力残存率・・・は72%以下である蓋然性が高い」ことの根拠としている。しかし、粘着剤層や粘着シートが同様の機能を発揮するからといって、「せん断応力残存率」のような具体的な物理的特性までもが同様であるとは限らないため、このような根拠に基づき、甲B6発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできない。
また、前記(イ)の主張は、粘着剤層の構成成分が本件特許発明と甲B6発明で共通していることを、「せん断応力残存率・・・が72%以下である蓋然性が高い」ことの根拠としている。しかし、前記ウで検討したとおり、粘着剤層の組成に関し、アクリル系ポリマーの構成モノマー組成、イソシアネート系架橋剤の添加量といった点で少なくとも両発明は相違するため、粘着剤層の組成の観点から、甲B6発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできない。
そして、申立人Bは、例えば実験成績証明書により、甲B6発明の粘着剤層はせん断応力残存率が72%以下であることを実際に示す等、前記<相違点9>が実質的に相違点でないといえる具体的な根拠を何ら示していない。
したがって、申立人Bの前記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、前記<相違点10>について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B6発明に対して新規性進歩性を有するものである。

(4)本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、いずれも本件特許発明1に従属し、本件特許発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件特許発明2〜9は、前記(3)と同様の理由により、甲B6発明に対して新規性進歩性を有するものである。

6 甲B7を主引例とした検討
(1)甲B7の記載
甲B7には、次の記載がある。
B7a「【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含む、光学フィルム用粘着剤であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、
(a1)アルキル(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位 9.9質量%以上99.9質量%以下と;
(a2)アミド基を有する、(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位 0.1質量%以上15質量%と;
(a3)ラジカル重合性官能基を複数個有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーである官能基含有モノマー由来の構成単位 0質量%以上19.9質量%以下と;
(a4)前記(a1)、(a2)および(a3)以外の(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位 0質量%以上90質量%以下と;
を含み、
前記(a1)、(a2)、(a3)および(a4)由来の構成単位の合計量が、100質量%であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の、ガラス転移温度が−70℃以上−58℃以下であり、かつ、重量平均分子量が100万を超えて250万以下である、光学フィルム用粘着剤。
・・・
【請求項8】
架橋剤(B)をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤。
・・・
【請求項10】
前記架橋剤(B)が、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、多官能アクリル酸エステルモノマー、過酸化物、チタンカップリング剤、ジルコニウム化合物、金属アルミキレート、ヒドラジド化合物および熱酸発生剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8または9に記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項11】
シランカップリング剤(C)が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下含まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤から形成されてなる、粘着剤層。
・・・
【請求項16】
光学フィルムの少なくとも片側に、請求項12〜15のいずれか1項に記載の粘着剤層が形成されてなる、光学部材。
・・・
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか1項に記載の光学部材を、少なくとも1つ用いた、画像表示装置。
【請求項22】
曲面ディスプレイまたはフレキシブルディスプレイである、請求項21に記載の画像表示装置。」
B7b「【0009】
そこで、本発明においては、光学フィルム等に対する接着力に優れ、また各種耐久性試験条件において、貼合したフィルムを変形させた状態で長時間保持または屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生することのない、光学フィルム用粘着剤、およびそれを利用した粘着剤層、光学部材および画像表示装置を提供することを目的とする。」
B7c「【発明の効果】
【0012】
光学フィルム等に対する接着力に優れ、また各種耐久性試験条件において、貼合したフィルムを変形させた状態で長時間保持または屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生することのない、光学フィルム用粘着剤、およびそれを利用した粘着剤層、光学部材および画像表示装置を提供する。」
B7d「【0097】
[架橋剤(B)]
本発明の粘着剤は、本発明の所期の効果を効率的に奏するためには、架橋剤(B)をさらに含有することが好ましい。架橋剤(B)を含有する場合の添加量は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.01質量部以上1質量部以下である。かような範囲であれば、接着性と折り曲げ耐久性との両立の技術的効果がある。なお、架橋度が上がりすぎることによって高温および高温多湿環境下での折り曲げ耐性は低下する場合がある。」
B7e「【0118】
[シランカップリング剤(C)]
本発明の粘着剤はまた、耐久性が向上する観点から、シランカップリング剤をさらに含有することができる。」
B7f「【0168】
<画像表示装置>
本発明は、上述した光学部材のうち、少なくとも1つを用いる画像表示装置も提供する。
【0169】
画像表示装置としては、特に限定されず、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)等が挙げられる。また、本発明の粘着剤の効果をより顕著に発現する観点から、特に薄型の画像表示装置や曲面ディスプレイまたはフレキシブルディスプレイ等に好ましく適用される。
【0170】
上記のように、本発明は、光学フィルム用粘着剤、光学フィルム用粘着剤層、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置に関するものであり、得られる積層体を各耐久性試験条件で貼合した光学フィルムを変形させた状態で長時間保持または屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生することのない粘着剤を提供することができる。また、本発明の粘着剤は、光学フィルムまたはシートを含む薄層被着体の積層に好適に使用され、さらにフレキシブルディスプレイのような液晶表示素子およびエレクトロルミネッセンス素子等に使用される各種フィルムまたはシートの製造に好適に使用されるものであり、これら技術分野で商用され得るものである。」
B7g「【0181】
(製造例1)
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート90部、ヒドロキシエチルアクリルアミド5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って5時間重合反応を行い、Mw(重量平均分子量)170万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)の溶液を調製した。
・・・
【0183】
(製造例20)
アクリルシロップ(A20)は、以下に示すように調製した。
【0184】
外部の紫外線をカットした環境下にUVランプであるブラックライトを4本(三共電気社製FL20SBL)フラスコの4方に設置した反応ボックス内で反応を実施した。
【0185】
上記ボックス内に攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート90部、ヒドロキシエチルアクリルアミド5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5部を投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら30℃まで加熱した。
【0186】
次いで、重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE(登録商標) 651;BASFジャパン社製)0.005部を攪拌下に投入して均一に混合した。
【0187】
ここで重合開始のために、ブラックライトで積算光量200mJ/cm2を照射した。反応開始後、反応系の温度は上昇したが、開始からの反応温度の上昇が10℃になった段階でフラスコ内に空気ポンプにて空気を導入することにより反応を強制的に停止させてアクリルシロップ(A20)を得た。アクリルシロップ(A20)中の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A20)のTg(ガラス転移温度)、Mw(重量平均分子量)は、表1に示す通り。
・・・
【0194】
【表1−1】

【0195】
【表1−2】


B7h「【0196】
<実施例1>
(粘着剤の調製)
製造例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)溶液の固形分100部に対して、架橋剤(B)としてイソシアネート架橋剤タケネート(登録商標)D110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学社製)0.1部を配合して、アクリル系粘着剤の溶液(固形分15%)を調製した。
【0197】
(粘着剤層の形成)
次いで、上記アクリル系粘着剤の溶液を、シリコーン処理(剥離処理)を施した、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが100μmになるようにダイコーターで塗布し、80℃ 3分乾燥後、120℃で10分間乾燥処理して粘着剤層(100μm)を形成した。
【0198】
(粘着剤層付偏光板の作製)
前記保護層8側に、コロナ処理をコロナ放電量80[W・min/m2]で処理を行い、保護層上に易接着層(図示せず)を形成した。
【0199】
次いで、上記粘着剤層を形成したシリコーン処理を施したPETフィルムを、上記粘着剤層と保護層8とが易接着層を介して接触するように転写し、粘着剤層付偏光板(光学部材)を作製した。
【0200】
<実施例2〜26および比較例1〜6>
表2に示すように、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(ポリマー種)の種類、架橋剤の種類またはその使用量を変えたこと、また例によっては、表2に示す割合でシランカップリング剤を用いたこと、また例によっては、表2に示す割合で重合開始剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光板(光学部材)を作製した。
【0201】
<実施例27>
製造例20で得られた、アクリルシロップ中の有効成分100gに対し、表2に示す配合量の、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートTMP−A;共栄化学社製、以下「TMP−A」とする)、ビウレット型ヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート(登録商標)24A−100;旭化成ケミカルズ株式会社製、以下「24A−100」という)、2−ヒドロキシ−2−メチル−I−フェニル−プロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)1173;BASFジャパン社製、以下「I−1173」とする)及びシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403;信越化学工業株式会社製、以下「KBE−403」という)を添加し、混合・脱泡処理して光重合性の粘着剤組成物(アクリル系粘着剤の溶液)を得た。
【0202】
ここで、上記アクリルシロップ中の有効成分100g中に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A20)が32.5g含まれており、残存する未反応モノマーが67.5g含まれている。
【0203】
この光重合性の粘着剤組成物を、片面剥離処理された(つまり、シリコーン処理された)厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの剥離処理面上に100μmの塗布厚さになるように塗布し、この塗布表面上に剥離処理された厚さ50μmのPETセパレータを貼着することによって、粘着剤組成物の上下にPETセパレータを配置してサンドイッチ状に密閉した後、ブラックライトにより5.0mWの光を10分間照射して無色透明のアクリルシート(粘着剤層)を得た。
【0204】
次いで、一方のPETセパレータを剥がし、無色透明のアクリルシート(粘着剤層)を露出させ、当該粘着剤層と、保護層8とが易接着層を介して接触するように転写し、粘着剤層付偏光板を作製した。
・・・
【0206】
【表2−1】

【0207】
【表2−2】


B7i「【0208】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付偏光板(光学部材)(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0209】
<耐久性>
厚さ0.7mmのポリイミドフィルムに最表面に厚さ50nmの窒化ケイ素(SiNx)膜を有するフィルムをフレキシブルパネルの代替品として使用した。
【0210】
粘着剤層付偏光板サンプルを、5インチサイズとし、上記ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを剥がして、ラミネーターを用いてポリイミドフィルムに貼着した。
【0211】
次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全にポリイミドフィルムに密着させた。その後、サンプルを内径(直径)が6mmに保持できるようにガラス板で挟み固定した。
【0212】
(1)かかる処理の施されたサンプルに、85℃(10%RH以下)で500時間(加熱試験)の処理を施した。
【0213】
(2)また、60℃/95%RHの雰囲気下で500時間処理を施した(加湿試験)。
【0214】
(3)また、85℃と−40℃との環境を1サイクル1時間で300サイクル施した(ヒートショック試験)。
【0215】
それぞれの試験について、偏光板とポリイミドフィルムとの外観を下記基準で目視にて評価した。
【0216】
◎:発泡、剥がれ、浮き、クラックなしなどの外観上の変化が全くなし。
【0217】
○:わずかながら端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、実用上問題なし。
【0218】
△:端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
【0219】
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0220】
なお、(1)、(2)および(3)の試験は、それぞれサンプルを用意し、独立して試験を行っている。
【0221】
<折りたたみ耐性(折り曲げ試験10万回)>
上記耐久性試験で用いたものと同じサンプル(50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理したもの)を、新たに準備し、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして10万サイクル繰り返し行った。試験環境としては、それぞれ、
(1)23℃/55%RHの雰囲気下、
(2)85℃(10%RH以下)、
(3)60℃/95%RHの雰囲気下、
(4)−20℃で行った。試験後の偏光板とポリイミドフィルムの外観を下記基準で目視にて評価した。
【0222】
なお、(1)、(2)、(3)および(4)の試験は、それぞれサンプルを用意し、独立して試験を行っている。
【0223】
◎:発泡、剥がれ、浮き、クラックなしなどの外観上の変化が全くなし。
【0224】
○:わずかながら端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、実用上問題なし。
【0225】
△:端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
【0226】
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。」

(2)甲B7発明の認定
ア 甲B7の実施例4、8、27で調製されるアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、架橋剤(B)及びシランカップリング剤(C)を含有する(甲B7の段落【0200】〜【0202】、【表2−1】、【表2−2】(前記(1)の摘記B7h)参照)。
イ 甲B7では、実施例で得られた粘着剤層付偏光板(光学部材)(サンプル)の折りたたみ耐性(折り曲げ試験10万回)を試験するに当たり、最表面に窒化ケイ素(SiNx)膜を有するポリイミドフィルムをフレキシブルパネルの代替品として使用し、粘着剤層付偏光板サンプルを該ポリイミドフィルムに貼着したサンプルを準備している(段落【0208】〜【0211】、【0221】(前記(1)の摘記B7i)参照)。そのため、甲B7に開示される粘着剤層は、フレキシブルパネルの代替品であるポリイミドフィルムと偏光板とを貼合するためのものといえる。
ウ そうすると、甲B7の実施例4、8、27を中心に、甲B7から次の発明(以下、「甲B7発明」という。)が認定できる。
エ 甲B7発明
「フレキシブルパネルの代替品であるポリイミドフィルムと偏光板とを貼合するための粘着剤層であって、
前記粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、架橋剤(B)及びシランカップリング剤(C)を含有する、
粘着剤層。」

(3)本件特許発明1について
ア 対比
甲B7発明と本件特許発明1を対比する。
(ア)甲B7発明の「フレキシブルパネル」、「ポリイミドフィルム」、「偏光板」はそれぞれ、本件特許発明1の「繰り返し屈曲されるデバイス」、「一の屈曲性部材」、「他の屈曲性部材」に相当する。
(イ)甲B7発明の「粘着剤層」は、本件特許発明1の「粘着剤層」ないし「粘着シート」に相当する。
(ウ)甲B7発明では、「前記粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤は、・・・シランカップリング剤(C)を含有する」から、本件特許発明1の「前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する」を充足する。

イ 一致点及び相違点
そうすると、甲B7発明と本件特許発明1は、
「繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤が、シランカップリング剤を含有する
粘着シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点11>
「粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合」(以下、「せん断応力残存率」ともいう。)が、本件特許発明1は「72%以下」であるのに対し、甲B7発明は不明である点。
<相違点12>
「粘着剤層のヘイズ値」が、本件特許発明1は「0.5%以下」であるのに対し、甲B7発明は不明である点。
<相違点13>
「粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率」が、本件特許発明1は「40%以上、90%以下」であるのに対し、甲B7発明は不明である点。

ウ 相違点11の検討
前記<相違点11>について、最初に、甲B7発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認できるか検討する。
甲B7発明の粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、架橋剤(B)及びシランカップリング剤(C)を少なくとも含有する点で、本件特許明細書の実施例1〜9における粘着性組成物と共通する(甲B7の段落【0200】〜【0202】、【表2−1】、【表2−2】(前記(1)の摘記B7h)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)。しかしながら、両者は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の構成モノマー組成、架橋剤の添加量といった点で少なくとも相違するため(甲B7の段落【0181】、【0183】、【0200】〜【0202】、【表1−1】、【表1−2】、【表2−1】、【表2−2】(前記(1)の摘記B7g、B7h)、本件特許明細書の段落【0104】〜【0105】、【0108】〜【0109】、表1(前記1の摘記(3))参照)、「せん断応力残存率」のような、粘着剤の硬さに関する物理的特性は異なると解される。
そのため、甲B7発明における粘着剤の組成に着目しても、甲B7発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできず、前記<相違点11>は実質的な相違点である。
そして、前記<相違点11>に係る本件特許発明1の構成は、甲B7及び他の各甲号証に記載も示唆もされておらず、甲B7発明において係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 相違点11に係る申立人Bの主張の検討
前記<相違点11>に関し、申立人Bは異議申立書において以下の旨を主張する。
(ア)「甲第7号証の段落0009には、光学フィルム等に対する接着力に優れ、また各種耐久性試験条件において、貼合したフィルムを変形させた状態で長時間保持または屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生することのない、光学フィルム用粘着剤、およびそれを利用した粘着剤層が記載されており、段落0231〜0232の表3では、実施例で得られた粘着剤層付偏光板(光学部材)(サンプル)について折り曲げ試験10万回を行い、折りたたみ耐性が良好であるとの結果が示されている(段落0221〜0226)。ここで、本件特許明細書の段落0023には、『せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れているということができる。一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する粘着剤層とからなる積層体を屈曲させた場合、屈曲の外側に位置する屈曲性部材と屈曲の内側に位置する屈曲性部材とでは、屈曲部の曲率が異なるため、互いにずれた位置関係になる。そのため、それらを貼合する粘着剤層には、せん断応力が発生する。上記の通り、本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力緩和性に優れているため、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。』と記載されており、せん断応力残存率が小さければ、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易いことが記載されている。このため、屈曲性部材に追従し易い粘着剤層であれば、せん断応力残存率は小さいものであることが推定される。従って、甲7発明における粘着剤層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)は72%以下である蓋然性が高い。」(第83頁最終行〜第84頁第20行)
(イ)「また、本件特許明細書の段落0027には、『本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。』と記載されており、粘着性組成物に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)を配合することで、所定のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)を達成しているものと理解できる。ここで、甲第7号証の実施例1に示されるように、甲7発明の粘着剤層においても、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と架橋剤(イソシアネート架橋剤タケネート(登録商標)D110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学社製))が用いられており、本件特許発明の粘着剤層を構成する成分と甲7発明の粘着剤層を構成する成分は共通しているため、本件特許発明1における粘着剤層と甲7発明における粘着剤層のせん断応力残存率は同等程度であると考えられる。このことからも、甲7発明の粘着剤層のせん断応力残存率(粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合)が72%以下である蓋然性が高いことが裏付けられている。」(第84頁第21行〜第85頁第14行)
前記(ア)の主張は、甲B7発明の粘着剤層が、光学フィルム等に対する接着力に優れ、貼合したフィルムを変形させた状態で長時間保持又は屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生せず、折り曲げ試験10万回を行った際の折りたたみ耐性が良好であるという点で、本件特許発明1の粘着シートと同様の機能を発揮することを、「せん断応力残存率・・・は72%以下である蓋然性が高い」ことの根拠としている。しかし、粘着剤層や粘着シートが同様の機能を発揮するからといって、「せん断応力残存率」のような具体的な物理的特性までもが同様であるとは限らないため、このような根拠に基づき、甲B7発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできない。
また、前記(イ)の主張は、粘着剤層の構成成分が本件特許発明と甲B7発明で共通していることを、「せん断応力残存率・・・が72%以下である蓋然性が高い」ことの根拠としている。しかし、前記ウで検討したとおり、粘着剤層の組成に関し、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の構成モノマー組成、架橋剤の添加量といった点で少なくとも両発明は相違するため、粘着剤層の組成の観点から、甲B7発明の「せん断応力残存率」が「72%以下」と推認することはできない。
そして、申立人Bは、例えば実験成績証明書により、甲B7発明の粘着剤層はせん断応力残存率が72%以下であることを実際に示す等、前記<相違点11>が実質的に相違点でないといえる具体的な根拠を何ら示していない。
したがって、申立人Bの前記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、前記<相違点11>以外の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B7発明に対して新規性進歩性を有するものである。

(4)本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、いずれも本件特許発明1に従属し、本件特許発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件特許発明2〜9は、前記(3)と同様の理由により、甲B7発明に対して新規性進歩性を有するものである。

第5 サポート要件(理由3)について
1 本件特許明細書の記載
前記第4の1で示したとおりである。

2 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0008】(前記第4の1(1))の記載より、「繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる繰り返し屈曲デバイス用粘着剤、粘着シート、繰り返し屈曲積層部材及び繰り返し屈曲デバイスを提供すること」と認められる。

3 当審の判断
本件特許明細書の段落【0009】〜【0010】、【0022】〜【0025】(前記第4の1(1)及び(2))には、本件特許発明1の発明特定事項である「前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、72%以下」と小さいことにより、せん断応力緩和性に優れ、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても、粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い旨、同じく本件特許発明1の発明特定事項である「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下」であることにより、粘着剤層の凝集力不足による繰り返し屈曲時の屈曲端部からの粘着剤成分の染み出しを抑制しつつ、積層体を繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される旨が記載されている。また、本件特許明細書には、本件特許発明1の発明特定事項をすべて充足する複数の実施例が記載され、それらの粘着シートは、所定条件下での屈曲試験結果(23℃,80℃)が◎又は○であり、2つの屈曲性部材を貼合して繰り返し屈曲させたときに、実用上使用できないレベルの染み出しを発生することなく、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができた旨が記載されている(前記第4の1(3)参照)。
そうすると、本件特許明細書のこれらの記載より、当業者は本件特許発明1の構成を備えることで、前記2で示した課題が解決できることを十分認識できるといえる。
したがって、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているとはいえない。また、本件特許発明1に従属する本件特許発明2〜9についても、同様である。

4 申立人の主張及びその検討
(1)申立人Aの主張
申立人Aは、異議申立書において、以下の旨を主張する。
ア 「本件特許発明1では、単に「粘着剤層を有する粘着シート」と記載されているが、どの様な粘着剤であるか何ら特定されていない。一般的に、粘着剤層を有する粘着シートに用いられる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が知られているが、本件明細書には、具体例として、アクリル系粘着剤について記載されているのみである。
そのため、アクリル系粘着剤以外の粘着剤を用いた場合でも、本件特許発明の効果を奏するか否かは不明である。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、「粘着剤層を有する粘着シート」とのみ特定することによって本件特許発明の課題が解決できるとは認められず、本件特許発明1の範囲まで、本件明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。」(第57頁第15〜26行)
イ 「以上のことから、本件明細書には、アクリル系粘着剤として「反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、熱架橋剤(B)を特定量含有する粘着性組成物を架橋してなるアクリル系粘着剤」のみが記載されている。そのため、これ以外のアクリル系粘着剤、例えば、反応性官能基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)や、架橋剤(B)として光架橋剤を用いたアクリル系粘着剤の場合、本願発明の効果を奏するか否かは不明である。
したがって、仮に粘着剤を「アクリル系粘着剤」に訂正した場合であっても、出願時の技術常識に照らして、本件特許発明の課題が解決できるとは認められず、本件特許発明の範囲まで、本件明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできないものである。」(第59頁第15〜25行)

(2)申立人Bの主張
申立人Bは、異議申立書において、以下の旨を主張する。
ア 「以上のとおり、本件特許発明1では、シランカップリング剤を含有することが規定されているものの、シランカップリング剤の含有量は限定されていないため、本件特許発明1は発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えている。」(第102頁第13〜16行)
イ 「本件特許発明1では粘着剤が架橋剤を含有することが規定されていないので、本件特許発明1には、粘着剤が架橋剤を含有しない態様や、架橋剤を多量に含む態様も包含されている。・・・すなわち、当業者は、架橋剤の配合量が1質量部以下である場合に、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層が得られると理解することはできるが、架橋剤の配合量が1質量部を超える範囲においても、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層を得ることができると理解することはできない。また、本件特許発明の出願当時に、いかなる量の架橋剤を配合しても、粘着剤層のせん断応力残存率が72%以下になるといった技術常識もなかった。
よって、本件特許発明1は発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えている。」(第102頁第18行〜第103頁第6行)
ウ 「本件特許発明1では粘着剤が熱架橋剤を含有することが規定されていないので、本件特許発明1には、粘着剤が架橋剤として熱架橋剤以外の架橋剤を含有する態様までもが包含されている。・・・このため、本件特許明細書の記載に接した当業者であれば、架橋剤として熱架橋剤を用いた場合には、粘着剤層のせん断応力残存率を72%以下にできると理解できるが、架橋剤として熱架橋剤以外の架橋剤を用いた場合においても、粘着剤層のせん断応力残存率を72%以下にできると理解することができない。また、本件特許発明の出願当時に、いかなる架橋形態(例えば、光架橋剤を用いて架橋構造を形成した場合など)を採用したとして、粘着剤層のせん断応力残存率が72%以下になるといった技術常識もなかった。
よって、本件特許発明1は発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えている。」(第103頁第15行〜第104頁第11行)

(3)申立人A及び申立人Bの主張の検討
前記(1)〜(2)で摘示した主張は、粘着剤層を構成する粘着剤の組成の特定が本件特許発明1では不十分であることを理由として、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている旨主張するものである。当業者の技術常識等を考慮すれば、「せん断応力残存率」や「ゲル分率」のような粘着剤層の物理的特性は、粘着剤層を構成する粘着剤の組成によって変化するため、粘着剤の組成如何によっては、確かに本件特許発明1で特定される「せん断応力残存率」や「ゲル分率」の範囲を外れ、前記2で示した課題が解決できない恐れもある。
しかし、本件特許発明1で特定される「せん断応力残存率」や「ゲル分率」は、粘着剤の硬さと密接に関連する物理的特性であり、「繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる」という本件特許発明の課題も、当業者の技術常識等を考慮すれば、粘着剤の硬さと密接に関連したものと認識できる。そうすると、粘着剤層を構成する粘着剤の組成は、あくまで課題解決の可否に影響する間接的要因にすぎず、本件特許発明の課題と直接関係があるのは、本件特許発明1で特定される「せん断応力残存率」や「ゲル分率」のような、粘着剤の硬さと密接に関連する物理的特性といえる。
そのため、申立人A及び申立人Bが主張するような粘着剤組成のさらなる特定がなくても、当業者は本件特許発明1の構成を備えることで、前記2で示した課題が解決できることを十分認識できるといえる。
このように、申立人A及び申立人Bの主張は、粘着剤層を構成する粘着剤の組成の特定が不十分であることにより、課題が解決できない恐れがあるということを主張するにとどまり、本件特許発明1の範囲内に現実に課題が解決できない部分があることを具体的に主張、立証するものではないから、採用できない。

第6 実施可能要件(理由4)について
1 本件特許明細書の記載
前記第4の1で示したとおりである。

2 当審の判断
本件特許明細書には、本件特許発明1〜9の発明特定事項を充足する複数の実施例が記載されており、各実施例の粘着シートを構成する粘着剤の組成をはじめ、粘着シートの製造方法についても、再現可能な程度に具体的に記載されている(前記第4の1(3)参照)。
また、本件特許発明1で特定される「せん断応力残存率」や「ゲル分率」は、粘着剤の硬さと密接に関連する物理的特性であるところ、所望の性能を得るために粘着剤の硬さを調整することは、当業者間で通常一般に行われており、その調整方法として、例えば架橋剤の量や種類を変えることで架橋の程度を調節することも当業者に知られている。そうすると、本件特許明細書の実施例で製造される特定組成の粘着シートを参考として、本件特許発明1の発明特定事項である「前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、72%以下」や「前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下」を充足する粘着シートを実際に作ることが、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとは認められない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1〜9について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

3 申立人の主張及びその検討
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、異議申立書において、以下の旨を主張する。
ア 「また、本件特許明細書には、架橋剤の量を調整する以外にせん断応力残存率を72%以下にコントロールする方法が一切開示されていない。このため、架橋剤を含有しない粘着剤を用いた場合においても、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層を得るためには、当業者に過度の試行錯誤を要求することになる。
よって、発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。なお、請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2〜9についても同様である。」(第103頁第8〜14行)
イ 「また、本件特許明細書には、架橋剤として熱架橋剤以外の架橋剤が一切記載されていないので、熱架橋剤以外の架橋剤(例えば、光架橋剤等)を用いた場合においても、せん断応力残存率が72%以下の粘着剤層を得るためには、当業者に過度の試行錯誤を要求することになる。このため、発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。なお、請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2〜9についても同様である。」(第104頁第13〜19行)

(2)申立人Bの主張の検討
前記2で述べたとおり、本件特許明細書には、本件特許発明1〜9の発明特定事項を充足する複数の実施例が再現可能な程度に具体的に記載されていることや、本件特許明細書の実施例で製造される特定の物の他に、本件特許発明1〜9の発明特定事項を充足する物を作ることが、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとは認められないことから、前記(1)で摘示した申立人Bの主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、申立人A及び申立人Bによる特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1〜9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-11-29 
出願番号 P2017-243305
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
P 1 651・ 113- Y (C09J)
P 1 651・ 537- Y (C09J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 田澤 俊樹
門前 浩一
登録日 2022-01-06 
登録番号 7004564
権利者 リンテック株式会社
発明の名称 粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  
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