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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1392068
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-11 
確定日 2022-12-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6998474号発明「生体組織のコンピュータ分類」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6998474号の請求項1〜28に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6998474号の請求項1〜28に係る特許についての出願は、令和元年7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年7月24日 英国)を国際出願日とする出願であって、令和3年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、同年7月11日に特許異議申立人 佐伯惠子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6998474号の請求項1〜28に係る特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明28」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜28に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
コンピューティングシステムを使用して生体組織を分類するための方法であって、
コンピューティングシステムが、生体組織の検査領域の複数の画像を含む画像データを受信することを備え、前記複数の画像の各々は、前記生体組織の前記検査領域への病理鑑別剤の局所塗布が過渡的な光学的効果を引き起こす期間中、異なる時間に捕捉され、前記方法はさらに、
前記コンピューティングシステム上で動作する機械学習アルゴリズムへの入力として前記受信された画像データを提供することを備え、前記機械学習アルゴリズムは、前記生体組織の複数のセグメントを識別し、前記生体組織の前記複数のセグメントの各々に複数の分類のうちの1つを割り当てるように構成されるディープニューラルネットワークを含み、
前記複数の分類は、疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケールによって規定される、コンピューティングシステムを使用して生体組織を分類するための方法。
【請求項2】
前記生体組織は子宮頸部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の画像のうちの少なくとも1つの画像は、前記期間の開始時、前記過渡的な光学的効果が生じる前に捕捉され、および/または
前記複数の画像のうちの少なくともいくつかは、前記病理鑑別剤の局所塗布期間中、所定の持続時間の間隔で捕捉される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検査領域は、前記生体組織の前記検査領域への病理鑑別剤の局所塗布が過渡的な光学的効果を引き起こす期間中、光放射に曝される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記病理鑑別剤は酸を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記画像データの前記複数の画像は、複数の光学画像から導出され、
前記複数の光学画像は、前記生体組織の前記検査領域において画像収集モジュールを使用することで捕捉されたものである、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の画像の各々は、前記複数の画像内の前記検査領域の整列を提供するように変換されたそれぞれの初期画像から導出される;
前記複数の画像の各々は、1つまたは複数のアーチファクトを除去するよう処理されたそれぞれの初期画像から導出される;および
前記機械学習アルゴリズムへの入力として提供される画像データは、前記複数の画像の各々に対して、それぞれの初期画像から導出された複数のパッチを含む;のうち1つまたは複数が満たされる、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体組織は子宮頸部を含み、前記方法はさらに、前記子宮頸部に対応する複数の画像の一部分を識別するために前記複数の画像を処理することを備える、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の画像の各々は、それぞれの画素セットによって規定され、前記画素セットの各々は、同じ画素構成を有し、前記方法はさらに、
前記コンピューティングシステムがマップデータを取得することを備え、前記マップデータは、前記画素構成の各画素に対するそれぞれの解析指標を含み、前記解析指標は、前記複数の画像から導出され、前記方法はさらに、
前記マップデータを前記機械学習アルゴリズムへの入力として提供することを備え、
画素についての前記解析指標は、前記複数の画像から導出される少なくとも1つのパラメータに基づいて生成され、前記少なくとも1つのパラメータは、前記複数の画像にわたる前記画素の最大強度、前記画素の前記最大強度に達する時間、および、前記複数の画像にわたる前記画素の強度の合計もしくは重み付けされた合計、のうちの1つまたは複数を含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパラメータのうちのあるパラメータは、所定のスペクトル帯域幅に限定される;
前記少なくとも1つのパラメータの各パラメータは、前記複数の画像にわたる前記画素についてのデータを線または曲線に当てはめ、前記線または曲線から前記少なくとも1つのパラメータを決定することによって決定される;および
各画素についての解析指標は、前記少なくとも1つのパラメータのうちの複数のパラメータの重み付けされた組み合わせに基づく;のうちの1つまたは複数である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の画像を処理して、少なくとも1つの形態学的特性および/または少なくとも1つの抽出された特徴を識別する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの形態学的特性および/または抽出された特徴を前記機械学習アルゴリズムへの入力として提供することさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークを含み、
前記ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク、全結合ニューラルネットワークおよび再帰型ニューラルネットワークの1つもしくは組み合わせを含み、ならびに/または、
前記ニューラルネットワークはマルチモーダルである、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の被験者特性を提供することをさらに備え、各被験者特性は、前記機械学習アルゴリズムへの入力として、前記生体組織が由来する被験者に関連する、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の被験者特性は、被験者リスク因子、被験者事前医療履歴情報、および被験者臨床検査結果のうちの1つまたは複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被験者リスク因子は、前記被験者の年齢、前記被験者の喫煙者ステータス、前記被験者の以前のHPVワクチン接種ステータス、前記被験者の性交中のコンドームの使用に関する情報、および前記被験者の出産経歴のうちの1つもしくは複数を含み、ならびに/または、前記被験者臨床検査結果は、以前の細胞診結果、以前のHPV検査結果、以前のHPVタイピング検査結果、以前の子宮頸部治療情報、および以前の子宮頸癌もしくは前癌のスクリーニングおよび/もしくは診断の履歴のうちの1つもしくは複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生体組織の前記複数のセグメントに割り当てられた前記分類に基づいて、および/または前記機械学習アルゴリズムとは異なるアルゴリズムに基づいて、前記複数の分類のうちの1つを組織全体に割り当てることをさらに備える、請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の分類は、さらに、複数の疾患タグによって規定される、請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の分類は、さらに、少なくとも1つの形態学的特性の存在を示す、請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
出力画像を生成し、前記画像データに基づく前記生体組織の前記検査領域を示し、前記生体組織の前記複数のセグメントの各々に割り当てられた前記分類を示すことをさらに備える、請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複数の他の生体組織の各々に対するそれぞれの複数の画像およびそれぞれの割り当てられた分類に基づいて前記機械学習アルゴリズムをトレーニングすること、
前記生体組織についてのユーザ決定された分類またはデータベース分類を前記機械学習アルゴリズムまたは第2のコンピュータシステム上で動作する前記機械学習アルゴリズムのあるバージョンに提供することによって前記機械学習アルゴリズムをトレーニングすること、および
連続的な動的トレーニングを前記機械学習アルゴリズムまたは第2のコンピュータシステム上で動作する前記機械学習アルゴリズムの前記あるバージョンに提供すること、の1つまたは複数をさらに備える、請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の分類のうちの1つを、前記コンピューティングシステムの第1のプロセッサで動作する第1の機械学習アルゴリズムを使用して前記生体組織に割り当てることと、
前記複数の分類のうちの1つを、前記コンピューティングシステムの第2のプロセッサで動作する第2の機械学習アルゴリズムを使用して前記生体組織に割り当てることと、
前記生体組織に対するユーザ決定分類またはデータベース分類を前記第2の機械学習アルゴリズムに提供することによって前記第2の機械学習アルゴリズムをトレーニングすることとをさらに備え、前記第1の機械学習アルゴリズムは、前記生体組織に対するユーザ決定分類またはデータベース分類を前記第1の機械学習アルゴリズムに提供することによってトレーニングされない、請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の機械学習アルゴリズムを更新することをさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コンピューティングシステム上で動作させられると、請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される、コンピュータプログラム。
【請求項25】
組織の分類のために動作するコンピューティングシステムであって、
生体組織の検査領域の複数の画像を含む画像データを受信するように構成された入力を備え、前記複数の画像の各々は、前記生体組織の前記検査領域への病理鑑別剤の局所塗布が過渡的な光学的効果を引き起こす期間中、異なる時間に捕捉され、前記コンピューティングシステムはさらに、
前記生体組織の複数のセグメントを識別し、前記画像データに基づいて前記生体組織の前記複数のセグメントの各々に複数の分類のうちの1つを割り当てるように構成された機械学習アルゴリズムを動作させるように構成されたプロセッサを備え、前記機械学習アルゴリズムはディープニューラルネットワークを含み、
前記複数の分類は、疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケールによって規定される、コンピューティングシステム。
【請求項26】
前記生体組織の検査領域の複数の光学画像を捕捉するように構成される画像収集モジュールをさらに備え、前記受信された画像データは前記画像収集モジュールによって捕捉された前記複数の光学画像に基づく、請求項25に記載のコンピューティングシステム。
【請求項27】
前記画像収集モジュールは前記機械学習アルゴリズムが動作するプロセッサから遠隔に位置し、または
前記プロセッサは複数の処理装置を含み、各処理装置は前記機械学習アルゴリズムの一部を動作させるように構成され、前記画像収集モジュールは前記複数の処理装置のうちの少なくとも1つから遠隔に位置する、請求項26に記載のコンピューティングシステム。
【請求項28】
請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成される、請求項25〜請求項27のいずれか1項に記載のコンピューティングシステム。」

第3 申立理由の概要

1 申立理由の概要
申立人は、下記2に示す、主たる証拠として甲第1号証、並びに、従たる証拠として甲第2号証及び甲第3号証を提出し、請求項1〜28に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1〜28に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

2 証拠方法
甲第1号証:Acosta-Mesa, et al.「Aceto-white temporal pattern classification using k-NN to identify precancerous cervical lesion in colposcopic images」Computers in Biology and Medicine Vol.39 (2009) pp.778-784(以下「甲1」という。)
甲第2号証:Tao Xu, et al.「Multi-feature based benchmark for cervical dysplasia classification evaluation」Pattern Recognition Vol.63 (2017) pp.468-475(以下「甲2」という。)
甲第3号証:Tao Xu, et al.「Multimodal Deep Learning for Cervical Dysplasia Diagnosis」MICCAI 2016, Part II. LNCS 9901, pp. 115-123(以下「甲3」という。)

第4 各甲号証の記載等

1 甲1について

(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同じ。)。

(甲1ア)
「Aceto-white temporal pattern classification using k-NN to identify precancerous cervical lesion in colposcopic images」(第778頁)
(当審訳:
「コルポスコープ画像における子宮頸部前癌病変の同定のためのk-NNを用いたアセトホワイト時間パターン分類」)

(甲1イ)
「Abstract
After Pap smear test, colposcopy is the most used technique to diagnose cervical cancer due to its higher sensitivity and specificity. One of the most promising approaches to improve the colposcopic test is the use of the aceto-white temporal patterns intrinsic to the color changes in digital images. However, there is not a complete understanding of how to use them to segment colposcopic images. In this work, we used the classification algorithm k-NN over the entire length of the aceto-white temporal pattern to automatically discriminate between normal and abnormal cervical tissue, reaching a sensitivity of 71% and specificity of 59%.」(第778頁)
(当審訳:
「要旨
コルポスコピーは、細胞診検体検査に次いで感度・特異度が高く、子宮頸癌の診断に最も用いられる検査法である。コルポスコピー検査を改善するための最も有望なアプローチの一つは、デジタル画像中の色調変化に内在するアセトホワイト時間的パターンを利用することである。しかし、コルポスコープ画像のセグメンテーションにそれらをどのように利用するかについては、完全には理解されていない。本研究では、アセトホワイト時間的パターンの全長にわたって分類アルゴリズムk-NNを用い、子宮頸部組織の正常・異常を自動的に識別し、感度71%、特異度59%に到達した。」)

(甲1ウ)
「In the present work, we compare the shape of the temporal patterns to establish relationships among similar shapes, and the correlation of those patterns with certain types of tissue. Our analysis not only shows results of those small areas from where the biopsies were acquired, but also it considers the segmentation of the complete image, which is more realistic. This is particularly important from the point of view that in a real computer aided system, the analysis of the complete image is needed, considering noisy data and outliers. We use the total length of the raw temporal pattern to develop a supervised machine learning (ML) processes, using one classical ML algorithm called k-nearest neighbor(k-NN).」(第779頁左欄)
(当審訳:
「本研究では、時間的なパターンの形状を比較し、類似した形状同士の関係や、ある種の組織との相関を確立している。この解析は、生検が行われた小さな領域の結果を示すだけでなく、より現実的な画像全体のセグメンテーションを考慮している。これは、実際のコンピュータ支援システムにおいて、ノイズの多いデータや外れ値を考慮した完全な画像の解析が必要であるという観点から、特に重要なことである。我々は、k近傍法(k-NN)と呼ばれる古典的な機械学習アルゴリズムを用い、生の時間パターンの全長を用いて、教師付き機械学習(ML)プロセスを開発する。」)

(甲1エ)図1(第779頁)

(甲1オ)
「The paper is structured in four sections: in the first section, the technical issues of subject preparation and data acquisition are explained, in the second part, data analysis methodology is explained, including image acquisition and preprocessing, time series extraction and machine learning implementation (Fig. 1). In the third section results of the application of the methodology on real data of 38 patients are shown. Finally, in the fourth section some conclusions and future work are commented.」(第779頁左欄)
(当審訳:
「本論文は4つのセクションで構成されている。第1セクションでは、被験者の準備とデータ取得の技術的問題について説明し、第2セクションでは、画像の取得と前処理、時系列の抽出と機械学習の実装を含むデータ分析方法について説明する(図1)。第3セクションでは、38名の患者の実データに本手法を適用した結果を示す。最後に、第4セクションでは、結論と今後の課題についてのコメントを述べる。」)

(甲1カ)
「2.2. Data acquisition
Images were acquired using a colposcope dfv Vasconsellos model CP-M7 with magnification 16x without any optical filter. The viewing distance was 20 cm and the field of view covers approximately a circle of 13 mm ratio. Images were acquired using a color camera Sony SSC-DC50A and a frame grabber Matrox Meteor-II/Standard driven by a HP workstation XW6000 running Matlab 7.0 image acquisition toolbox. During the first 10 s of the image acquisition 10 images (352x240) were taken as base line reference (1 frame/s), then after acetic acid application, three hundred images were taken in 5 min using the same sampling frequency. Control images taken at the beginning of each trial have a double purpose, the first one is to have a base reference to assess the signal percentage of change and the second one is to estimate the amount of signal noise. Each image was saved independently as a BMP file. Although we developed analysis over color images (results not shown in this article),in this publication we present results obtained processing the images in gray scale because results were similar.」(第779頁右欄)
(当審訳:
「2.2. データ取得
画像は、コルポスコープdfv VasconsellosモデルCP-M7を用い、光学フィルタなし、倍率16倍で取得した。観察距離は20cmで視野は約13mmの円の比率をカバーする。画像はカラーカメラソニーSSC-DC50AとフレームグラバーMatrox Meteor-II/Standardを使用し、Matlab 7.0画像取得ツールボックスを実行するHPワークステーションXW6000で駆動して取得された。画像取得の最初の10秒間は、基準線として10枚の画像(352x240)が撮影され(1枚/秒)、次に、酢酸塗布後、同じサンプリング周波数で5分間に300枚の画像が撮影された。各試験の最初に撮影したコントロール画像には、信号の変化率を評価するための基準画像と、信号ノイズの量を推定するための基準画像の2つの目的がある。各画像はBMPファイルとして独立して保存された。カラー画像での解析も行ったが(結果は本誌に掲載せず)、同様の結果が得られたため、本誌ではグレースケール画像での処理結果を紹介する。」)

(甲1キ)図2(第780頁)

「Fig. 2. Aceto-white response functions. At the right, temporal patterns observed on the pixels denoted by dots on the left image. As can be appreciated, different kinds of tissue produce Awrf with different percentage of change, speed of increase and decay. Next to each raw Awrf is shown its polynomial model.」
(当審訳:
「図2. アセトホワイト応答関数。右は、左図のドットで示した画素で観測された時間パターン(当審注:右図の5本の各時間パターンは左図の5カ所の各ドッドで観測されたもの)。このように、組織の種類によって、変化率、増加速度、減少速度が異なるAwrfが生成されることがわかる。各Awrfの横には、その多項式モデルを示している。」)

(甲1ク)
「3.2. Time series extraction
The colposcopic set of images can be thought of as a spatiotemporal data matrix. Let lmageCube (m,n,t) represent a stack of t images of size (m,n). Thus there are (mxn) pixels, each of which is a time series of length t. Let p(i,j) represent the color of the pixel (i,j), i=1,…,m,j=1,…,n. The intensity value of each pixel over time is used to construct a time series, which we call, the Aceto-white response function (Awrf). In order to smooth the signal we propose the following polynomial model as a function of time:

As a way of standardization to permit comparison among different subject the values of each temporal pattern are divided by the mean value of its basal period [12]. The resultant amplitude of the Awrf is then measured as a percentage of change with respect to the base line. See Fig. 2. 」(第780頁左〜右欄)
(当審訳:
「3.2. 時系列抽出
コルポスコープ画像のセットは、時空間データ行列と考えることができる。lmageCube (m,n,t) がサイズ (m,n) の t 個の画像のスタックを表すとすると、(mxn) 個の画像が存在することになる。p(i,j) は画素 (i,j) の色を表し、i=1,...,m,j=1,...,nであるとする。各画素の強度値を用いて時系列を構成し、これをアセトホワイ応答関数(Awrf)と呼ぶ。信号を滑らかにするために、我々は時間の関数として次のような多項式モデルを提案する。

異なる被験者間の比較を可能にする標準化の方法として、各時間的パターンの値をその基底周期の平均値で割る[12]。その結果、Awrfの振幅は、基準線に対する変化率として測定される。図2を参照。」)

(甲1ケ)
「3.3. Supervised learning
Supervised learning is a machine learning area for constructing models from a set of observations presented as examples. The goal of these methods is to predict the class label of an unseen observation given the knowledge (model) extracted from the training data. Training data can be seen as a database containing observations and their corresponding class label. When the class label value is categorical, supervised learning is called classification. There are different methods to perform classification k-nearest neighbors, decision trees, neural networks, nai1ve bayes, etc. The selection of the method depends on the kind of data and prior hypothesis, and most of the time has to be selected empirically [13-15].
A colposcopic data set can be seen as a time series database, the classification (segmentation) task consists of finding similar temporal patterns with regular shapes belonging to the same type of tissue (class label). In this work we are interested in investigating the relationship between regular shapes and the class tissue. We propose to use the smoothed polynomial representation of raw Awrf as a unique feature and the k-nearest neighbors classifier. As is going to be explained below this method is a direct way to explore the relationship between the shapes of temporal patterns and their corresponding type of tissue.」(第780頁右欄)
(当審訳:
「3.3. 教師あり学習
教師あり学習は、例として提示された一連の観察からモデルを構築するための機械学習分野である。これらの手法の目的は、訓練データから抽出された知識(モデル)が与えられたときに、未見の観測値のクラスラベルを予測することである。学習データは、オブザベーションとそれらに対応するクラスラベルを含むデータベースとみなすことができる。クラスラベルの値がカテゴリである場合,教師あり学習は分類と呼ばれる。分類の方法には、k近傍法、決定木、ニューラルネットワーク、ナイーブベイズなどがある。どの手法を選択するかは、データの種類や事前仮説に依存し、ほとんどの場合、経験的に選択する必要がある[13-15]。
コルポスコープデータセットは時系列データベースとみなすことができ、分類(セグメンテーション)タスクは、同じ種類の組織(クラスラベル)に属する規則的な形状を持つ類似の時間パターンを見つけることから構成される。本研究では、規則的な形状とクラス組織の関係を調査することに興味がある。我々は、生Awrfの平滑化多項式表現をユニークな特徴量として用い、k近傍分類器を用いることを提案する。後述するように、この方法は、時間的パターンの形状とそれに対応する組織の種類の間の関係を調べる直接的な方法である。」)

(甲1コ)
「3.3.1. k-Nearest neighbor classification algorithm
k-Nearest neighbor is one of the simplest algorithms for machine learning, the basic idea behind it is that, given an unclassified observation it assigns the class label of those observations in the training data that are most similar to the new case. The parameter k can take different values, when this is equal to one; the new observation takes the label of the most similar case on the training data, otherwise if k > 1 the new observation takes the class label most frequent of its k-nearest neighbors. Under this approach there is not any model construction and for every new observation the complete set of training data has to be consulted. It is called lazy evaluation. Many measures can be used to establish criteria of similarity, the most usual is Euclidean distance.」(第780頁右欄〜第781頁左欄)
(当審訳:
「3.3.1. k近傍法による分類アルゴリズム
k近傍法は、機械学習のための最も単純なアルゴリズムの1つで、その背後にある基本的な考え方は、未分類の観測が与えられると、新しいケースに最も似ている訓練データ中のそれらの観測のクラスラベルを割り当てる方法である。パラメータkは異なる値をとることができ、これが1に等しい場合、新しい観測は、学習データ上で最も似たケースのラベルをとり、そうでないk>1の場合、新しい観測は、そのk近傍の最も頻繁にあるクラスラベルをとる。このアプローチでは、モデルの構築はなく、すべての新しいオブザベーションに対して、トレーニングデータの完全なセットを参照する必要がある。これは遅延評価(lazy evaluation)と呼ばれる。類似性の基準を確立するために多くの尺度を使用することができるが、最も一般的なのはユークリッド距離である。」)

(甲1サ)図3(第781頁)

「Fig. 3. Knowledge acquisition graphical interface. Using this tool, the user is able to assign a label to each representative region on tissue. The Awrf of each selected pixel of the image was displayed in a separate window. In a semisupervised fashion, for each selected pixel, a set of pixels with similar Awrf were suggested to the user in order to simplify the class labeling process.」
(当審訳:
「図3. 知識獲得グラフィカルインターフェース。このツールを使って、ユーザーは組織上の各代表的な領域にラベルを割り当てることができる。画像の各選択画素のAwrfは別ウィンドウに表示される。半教師付きで、各ピクセルに対して、類似したAwrfを持つピクセル群が提案され、クラスラベル付けプロセスを簡素化することができる。」)

(甲1シ)表2(第782頁左欄)

「On this application each observation represents one temporal pattern. The number of observations is bigger than the number of patients because multiple pixels were selected from one region and in some patients more than one type of tissue was sampled.」
(当審訳:
「このアプリケーションでは、各観測は1つの時間的パターンを表す。1つの領域から複数のピクセルが選択され、一部の患者では複数のタイプの組織がサンプリングされたため、観測の数は患者の数より多い。」)

(甲1ス)表3(第782頁左欄)

「Performance values were computed as the mean values obtained on the classification over the 38 cases.」
(当審訳:
「性能値は、38ケースにわたる分類で得られた平均値として計算された。」)

(甲1セ)
「4. Results
Image registration was carried out using the cross-correlation technique explained above. The search window was defined selecting a region feature over which some anatomical features show high contrast boundaries, e.g. the cervical hole. In those cases in which the cervical hole was not a good reference a stain landmark was introduced using lugol solution [8]. Once the dataset was registered, we asked the expert colposcopist to define points (pixels) on the colposcopic sequence of each patient to assign a class label on representative regions. To help the expert to do the class labeling, we develop a knowledge acquisition graphical interface where the expert can see the entire image of the colposcopic sequence. Also he was able to select the images at different times to look the aceto-white changes (see Fig. 3).
Based on the results reported by histology, the expert selected a pixel of the image in order to assign one of the following class labels: normal tissue, immature metaplasia, mature metaplasia, ectopy, low grade lesion, high grade lesion. Table 2 summarizes the number of observations on each class, and the number of patients from which those observations were taken.
Once representative examples of tissue were labeled on each patient, a spatiotemporal database was constructed containing, the patient identification, the observation's spatial position on the image, the class label and the temporal pattern extracted from the stereoscopic sequence relative to that position. The classification process was implemented through the k-NN algorithm, using k = 1, 10 and20 [15]. Euclidean distance was used as a measure of similarity. The classification performance was measured using leave-one-out cross-validation as explained above. Following the advice of the expert colposcopist, the class labels were binarized as follows: normal (normal tissue, immature metaplasia, mature metaplasia, ectopy), abnormal (low grade lesion, high grade lesion). Since the database contains more observations for the abnormal label, the occurrences were balanced using under sampling on the majority class [14,16]. The classification results are shown in Table 3.
Supervised learning was also developed over the entire image, that is to say, not only on those positions (pixels) selected by the expert during class labeling. In this analysis the classification was developed in a similar way than before using leave-one-out. However, in this case all the temporal patterns belonging to the entire image were including in the validation set. As is obvious, under this approach is not possible to validate performance on the classification process because the entire image was not labeled in the class labeling task. However, it was visually evaluated by the expert, concluding that segmentation results are coherent with those introduced on the training set. To the best of our knowledge, only one work has re- ported the segmentation of the entire image using the aceto-white effect; however, they did not use the complete aceto-white temporal pattern [17]. As an example, the image segmentation displayed by the graphical interface developed by us is shown in Fig. 4. 」(第782頁左〜右欄)
(当審訳:
「4.結果
画像登録は、上記で説明した相互相関技術を使用して行われた。検索ウィンドウは、解剖学的特徴のうち、頸部穴のようなコントラストが高い境界を示す領域特徴を選択して定義した。頸部穴が良い基準でない場合は、ルゴール液[8]を用いて染色ランドマークを導入した。データセットの登録が完了したら、各患者のコルポスコピックシーケンス上に点(画素)を定義し、代表的な領域にクラスラベルを割り当てるよう、コルポスコピーの専門家に依頼した。専門家がクラスラベル付けを行うために、知識獲得用のグラフィカルインターフェースを開発し、専門家がコルポスコピックシーケンスの全画像を見ることができるようにした。また、専門家は異なる時間帯の画像を選択し、アセトホワイトの変化を見ることができるようにした(図3参照)。
組織学で報告された結果に基づいて、専門家は次のクラスラベルのいずれかを割り当てるために画像の画素を選択した:正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変。表2は、各クラスの観測数と、その観測が行われた患者の数をまとめたものである。
各患者の代表的な組織の例がラベル付けされると、患者の識別、画像上の観測の空間位置、クラスラベル、その位置に対する立体視シーケンスから抽出された時間パターンを含む時空間データベースが構築された。分類処理は、k=1,10,20を用いたk-NNアルゴリズムによって実施された[15]。ユークリッド距離は類似性の尺度として用いられた。分類の性能は、上記で説明したように、リーブワンアウト・クロスバリデーションを用いて測定された。専門家であるコルポスコピストの助言に従い、クラスラベルを以下のように二値化した:正常(正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性)、異常(低悪性度病変、高悪性度病変)。データベースは異常ラベルの観測をより多く含むので、多数決クラスのアンダーサンプリングを使って出現頻度をバランスさせた[14,16]。分類結果を表3に示す。
また、クラスラベリング時に専門家が選択した位置(画素)だけでなく、画像全体に対して教師あり学習を展開した。この分析では、分類はリーブワンアウトを用いる前と同様の方法で開発された。しかし、この場合、画像全体に属するすべての時間的パターンが検証セットに含まれる。当然のことながら、クラスラベル付けタスクでは画像全体がラベル付けされていないため、このアプローチでは分類処理に関する性能を検証することはできない。しかし、専門家が目視で評価した結果、セグメンテーションの結果はトレーニングセットで導入された結果と一致すると結論づけた。我々の知る限り、アセトホワイト効果を用いて画像全体のセグメンテーションを再現した研究は1件のみであるが、彼らは完全なアセトホワイト時間パターンを用いていない[17]。図4に、我々が開発したグラフィカルインターフェースで表示される画像セグメンテーションの一例を示す。」)

(甲1ソ)図4(第783頁)

「Fig. 4. Colposcopic image segmentation. The image at the left shows the original unknown colposcopic sequence given to the classifier. At the right, the image shows the labels suggested by the segmentation tool. Only the central part of the image, demarked by the circle, is analyzed to avoid artifacts introduced by illumination heterogeneities on the periphery.」
(当審訳:
「図4. コルポスコープ画像のセグメンテーション。左側の画像は、分類器に渡された未知のコルポスコープのオリジナルシーケンスである。右側の画像は、セグメンテーションツールによって提案されたラベルを示す。周辺部の照明不均質によるアーチファクトを避けるため、円で示された画像の中央部のみが分析される。」)

(甲1タ)
「5. Conclusions and future work
On this pilot study our results show that normal and abnormal colposcopic findings can be discriminated using the temporal information intrinsic to the change of color occurred during aceto-whitening. The shape of the temporal patterns (Awrfs) can be used to segment a colposcopic image. Although some approaches have been proposed to analyze colposcopic images using temporal patterns, as far as we known, none of them has established a complete methodology to acquire and analyze colposcopic sequences in order to automatically segment the entire image. Our approach is one step toward it. However, more research in this field is needed in order to improve classification performance.
In this work, we present a way to automatically discriminate be- tween normal and abnormal cervical tissue, using the machine learning supervised classification algorithm k-NN over the entire length of the aceto-white temporal pattern. Although this is one of the easiest machine learning classification technique, it surpasses classification specificity reached for expert colposcopists (59% and 48%), although the sensitivity reached by k-NN is lower than that reached by colposcopists (71% and 98%). This can be explained in part by the fact that some abnormal observations like leukoplakia (hyperkeratosis) looks white also before the application of acetic acid and its temporal pattern is almost flat, with a similar shape as normal tissue.
As a continuation of this work we are using time series data mining (TSDM) techniques to explore compressed representations to facilitates classification [18]. Specifically, working with discrete time series representations that can be treated using probabilistic approaches like Nai1ve-Bayes. Under this approach the classification can be relaxed assigning to one observation different degrees of membership to more than one class label, which is more similar to the diagnosis made by the human expert. Finally, we continue growing the number of patients to be included in the training set in order to increase the space of cases.」(第782頁右欄)
(当審訳:
「5.結論と今後の課題
今回のパイロット研究では、アセトホワイトニングの際に生じる色の変化に内在する時間情報を用いて、コルポスコープの正常・異常所見を識別できることが示された。この時間的パターン(Awrfs)の形状を利用して、コルポスコープ画像をセグメント化することができる。時間的パターンを用いてコルポスコープ画像を解析するアプローチはいくつか提案されているが、我々が知る限り、コルポスコピックシーケンスを取得して解析し、画像全体を自動的にセグメント化するための完全な方法論を確立したものはない。我々のアプローチはそれに向けた一つのステップである。しかし、分類性能を向上させるためには、この分野での更なる研究が必要である。
本研究では、機械学習による教師付き分類アルゴリズムk-NNを用いて、子宮頸部の正常組織と異常組織を、アセトホワイト時間的パターンの全長にわたって自動的に識別する方法を提示する。これは最も簡単な機械学習分類法の一つであるが、k-NNの感度はコルポスコピストが到達する感度(71%と98%)より低いものの、k-NNの分類特異度はコルポスコピストが到達する分類特異度(59%と48%)を上回るものである。これは、白板症(過角化症)のような異常所見は酢酸塗布前でも白く見え、その時間的パターンはほぼ平坦で、正常組織と同様の形状であることが一因であると考えられる。
この研究の続きとして、我々は時系列データマイニング(TSDM)技術を使用して、分類を容易にするために圧縮された表現を探求している[18]。具体的には、ナイーブベイズのような確率的アプローチで扱える離散時系列表現に取り組んでいる。このアプローチでは、1つの観測に複数のクラスラベルへの異なるメンバーシップを割り当てることで分類を緩和することができ、これは人間の専門家が行う診断により近いものである。最後に、症例数を増やすために、訓練セットに含まれる患者数を増やし続ける。」)

(甲1チ)
「6. Summary
Cervical cancer is the first cause of death in Mexican women. After Pap smear test, colposcopy is the most used technique to diagnose this disease due to its higher sensitivity (98%) and specificity (48%). However, the major problem with this technique is its intrinsic subjectivity that requires new mechanisms to quantify near to absolute measurements to improve the test. One of the most promising approaches to reach this goal has been the use of the aceto-white temporal patterns intrinsic to the color changes in digital images. Although some efforts have been made to characterize cervical lesion using these temporal patterns, there is not a complete understanding of how to use them to segment colposcopic images. In this work, we used the machine learning supervised classification algorithm k- NN over the entire length of the aceto-white temporal pattern to automatically discriminate between normal and abnormal cervical tissue, reaching a sensitivity of 71% and specificity of 59%.」
(当審訳:
「6.まとめ
子宮頸がんは、メキシコ人女性の死因の第一位である。コルポスコピーは、感度(98%)、特異度(48%)ともに高いため、細胞診検体検査に次いで、この疾患の診断に最も使用される技術である。しかし、この検査法の大きな問題は、その本質的な主観性であり、検査を改善するために絶対測定に近い数値化を行う新しいメカニズムが必要である。この目標を達成するための最も有望なアプローチの1つは、デジタル画像の色変化に内在するアセトホワイト時間的パターンを利用することであった。これらの時間的パターンを用いて子宮頸部病変を特徴付ける試みがなされているが、コルポスコープ画像のセグメンテーションにどのように用いるかについては完全には理解されていない。本研究では、機械学習による教師付き分類アルゴリズムk-NNをコルポスコープ時間パターンの全長にわたって用い、子宮頸部組織の正常・異常を自動的に識別し、感度71%、特異度59%に到達した。」)

(2)甲1に記載された発明

ア 上記(甲1イ)の「コルポスコピー検査を改善するための最も有望なアプローチの一つは、デジタル画像中の色調変化に内在するアセトホワイト時間的パターンを利用することである。」との記載、上記(甲1タ)の「本研究では、機械学習による教師付き分類アルゴリズムk-NNを用いて、子宮頸部の正常組織と異常組織を、アセトホワイト時間的パターンの全長にわたって自動的に識別する方法を提示する。」との記載、上記(甲1ウ)の「実際のコンピュータ支援システムにおいて、ノイズの多いデータや外れ値を考慮した完全な画像の解析が必要であるという観点から、特に重要なことである。我々は、k近傍法(k-NN)と呼ばれる古典的な機械学習アルゴリズムを用い、生の時間パターンの全長を用いて、教師付き機械学習(ML)プロセスを開発する。」との記載、上記(甲1セ)の「専門家であるコルポスコピストの助言に従い、クラスラベルを以下のように二値化した:正常(正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性)、異常(低悪性度病変、高悪性度病変)。」との記載を踏まえると、甲1は、コンピュータにより実行される機械学習による教師付き分類アルゴリズムk近傍法を用いて、子宮頸部の正常(正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性)と異常(低悪性度病変、高悪性度病変)を、コルポスコープ画像中の色調変化に内在するアセトホワイト時間的パターンの全長にわたって自動的に識別する方法であることが読み取れる。

イ 上記(甲1カ)の「画像取得の最初の10秒間は、基準線として10枚の画像(352x240)が撮影され(1枚/秒)、次に、酢酸塗布後、同じサンプリング周波数で5分間に300枚の画像が撮影された。」との記載を踏まえて、(甲1エ)図1のデータ分析スキームを見ると、上記アで読み取った甲1の方法では、子宮頸部に酢酸を塗布した後、1枚/秒で5分間に300枚撮影されたコルポスコープ画像のデータセットをコンピュータに登録し、登録された生の時系列のコルポスコープ画像のデータセットを、k近傍法による教師付き分類アルゴリズムへ入力していることが読み取れる。

ウ 上記(甲1ケ)の「分類(セグメンテーション)タスクは、同じ種類の組織(クラスラベル)に属する規則的な形状を持つ類似の時間パターンを見つけることから構成される。」との記載、上記(甲1セ)の「専門家は次のクラスラベルのいずれかを割り当てるために画像の画素を選択した:正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変。」との記載、(甲1ソ)の図4の「グラフィカルインターフェースで表示されるコルポスコープ画像のセグメンテーション」の説明文「左側の画像は、分類器に渡された未知のコルポスコープのオリジナルシーケンスである。右側の画像は、セグメンテーションツールによって提案されたラベルを示す。」との記載に加えて、図4の右図には、コルポスコープ画像の説明の欄に、「1.正常組織」、「2.未熟形質転換」、「3.成熟形質転換」、「4.異所性」、「5.低悪性度病変」、「6.高悪性度病変」の各クラスラベルが色別に記載され、コルポスコープ画像上に前記「1.正常組織」のクラスラベルに対応する緑色が複数の領域に割り当てられた例が見て取れること、上記(甲1タ)の「この時間的パターン(Awrfs)の形状を利用して、コルポスコープ画像をセグメント化することができる。」との記載、及び上記(甲1キ)の図2の「アセトホワイト応答関数」の説明文「右は、左図のドットで示した画素で観測された時間パターン(当審注:右図の5本の各時間パターンは左図の5カ所の各ドッドで観測されたもの)。このように、組織の種類によって、変化率、増加速度、減少速度が異なるAwrfが生成されることがわかる。」との記載を踏まえると、甲1のk近傍法による教師付き分類アルゴリズムは、入力されたコルポスコープ画像のデータセットにおける組織上の複数の各領域で観測されたアセトホワイト時間的パターンの形状を利用して、各領域に正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかを割り当て、コルポスコープ画像をセグメント化することが読み取れる。

エ 上記(甲1コ)の「k近傍法は、・・・未分類の観測が与えられると、新しいケースに最も似ている訓練データ中のそれらの観測のクラスラベルを割り当てる方法である。パラメータkは異なる値をとることができ、これが1に等しい場合、新しい観測は、学習データ上で最も似たケースのラベルをとり、そうでないk>1の場合、新しい観測は、そのk近傍の最も頻繁にあるクラスラベルをとる。」との記載、及び上記(甲1セ)の「分類処理は、k=1、10、20を用いたk-NNアルゴリズムによって実施された[15]。ユークリッド距離は類似性の尺度として用いられた。」との記載、並びにk近傍法に関する技術常識を踏まえると、甲1のk近傍法による教師付き分類アルゴリズムは、教師データである、正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかが割り当てられたアセトホワイト時間的パターンの形状の中から、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンの形状との類似性が高いものから順にk個選び、k個の中で最も頻繁にあるクラスラベルを、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンが内在する領域のクラスラベルとして割り当て、類似性の尺度としてユークリッド距離を用いることが読み取れる。

オ 上記ア〜エを含む上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「 コンピュータにより実行される機械学習による教師付き分類アルゴリズムk近傍法を用いて、子宮頸部の正常(正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性)と異常(低悪性度病変、高悪性度病変)を、コルポスコープ画像中の色調変化に内在するアセトホワイト時間的パターンの全長にわたって自動的に識別する方法であって、
子宮頸部に酢酸を塗布した後、1枚/秒で5分間に300枚撮影されたコルポスコープ画像のデータセットをコンピュータに登録し、登録された生の時系列のコルポスコープ画像のデータセットを、k近傍による教師付き分類アルゴリズムへ入力し、
k近傍法による教師付き分類アルゴリズムは、入力されたコルポスコープ画像のデータセットにおける組織上の複数の各領域で観測されたアセトホワイト時間的パターンの形状を利用して、各領域に正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかを割り当て、コルポスコープ画像をセグメント化するものであり、
k近傍法による教師付き分類アルゴリズムは、教師データである、正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかが割り当てられたアセトホワイト時間的パターンの形状の中から、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンの形状との類似性が高いものから順にk個選び、k個の中で最も頻繁にあるクラスラベルを、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンが内在する領域のクラスラベルとして割り当て、類似性の尺度としてユークリッド距離を用いる、
方法。」

2 甲2の記載
甲2には以下の記載がある。

(甲2ア)
「In addition to feature descriptors, classifiers also have great influence on the performance of a machine-learning based classification method. Neural networks, support vector machines (SVM), k-Nearest Neighbors (KNN), linear discriminant analysis (LDA), and decision trees are commonly used for studying cervical cancer [11].」(第469頁左欄末行〜右欄第4行)
(当審訳:
「特徴記述子だけでなく、分類器も機械学習ベースの分類法の性能に大きな影響を与える。子宮頸がんの研究では、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、k近傍法(KNN)、線形判別分析(LDA)、決定木がよく利用される[11]。」)

(甲2イ)
「The work by Razavian et al. [16] indicates that the deep features extracted from convolutional neural networks (CNN) are very powerful for many recognition tasks. In this work, we investigate the performance of CNN deep features for cervical disease classification. In contrast to hand-crafted features, CNN features are automatically learned from a large number of images.」(第470頁右欄下13行〜下8行)
(当審訳:
「ラザビアンらによる研究[16]は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)から抽出される深層特徴が、多くの認識タスクに対して非常に強力であることを示している。この研究では、子宮頸部疾患分類のためのCNN深層特徴の性能を調査する。手作業で作成された特徴量とは対照的に、CNN 特徴量は多数の画像から自動的に学習される。」)

(甲2ウ)
「seven classic machine learning methods, including random forest (RF), gradient boosting decision tree (GBDT), AdaBoost, support vector machines (SVM), logistic regression (LR), multilayer perceptron (MLP), and k-Nearest Neighbors (kNN).
・・・
k-Nearest Neighbors (kNN) is one of the simplest classifiers, which classifies a new instance by a majority vote of its k nearest neighbors. In this paper, we use the Euclidean distance metric to find the k nearest neighbors. We search the optimal k value for our task in the range [1,50] with a step increment of 1.」(第471頁左欄第16行〜右欄下21行)
(当審訳:
「ランダムフォレスト(RF)、勾配ブースティング決定木(GBDT)、AdaBoost、サポートベクターマシン(SVM)、ロジスティック回帰(LR)、多層パーセプトロン(MLP)、k近傍法kNN)など7つの古典機械学習手法を紹介する。
・・・
k近傍法(kNN)は最も単純な分類器の一つであり、新しいインスタンスをそのk個の最近傍の多数決によって分類するものである。本論文では、ユークリッド距離法を用いてk個の最近傍を求める。我々のタスクに最適なk値を[1,50]の範囲で、1ずつ増やしながら探索する。」)

(甲2エ)
「Further, we adopt a uniform experimentation and parameter optimization framework to compare seven classic machine learning algorithms in terms of their performance in classifying an image into either CIN1/Normal (i.e. low-grade lesion/healthy) or CIN2/3+ (i.e. high-grade lesion/cancer). The reported results can serve as a baseline for future comparisons of automated cervical dysplasia classification methods. From the results, we find that ensemble-tree models-Random Forest, Gradient Boosting Decision Tree, and AdaBoost-outperform other classifiers such as multi-layer perceptron, SVM, logistic regression and kNN, on this task.」(第473頁右欄下10行〜末行)
(当審訳:
「さらに、均一な実験とパラメータ最適化の枠組みを採用し、画像をCIN1/Normal(=低悪性度病変/健康)またはCIN2/3+(=高悪性度病変/がん)に分類する際の性能という観点から、7つの古典的機械学習アルゴリズムを比較している。この結果は、今後、子宮頸部異形成の自動分類法を比較する際のベースラインとなり得る。その結果、ランダムフォレスト、勾配ブースティング決定木、AdaBoostといったアンサンブル木モデルが、多層パーセプトロン、SVM、ロジスティック回帰、kNNといった他の分類器よりも優れていることが分かった。」)

3 甲3の記載
甲3には以下の記載がある。

(甲3ア)
「Fig.1 Our multimodal deep network: (1) we apply a convolutional neural network (CNN) to learn image features from raw data in Cervigram ROIs; (2) we use joint fully connected (jfc) layers to model the non-linear correlations across all sources of information for CIN classification.」(第116頁)
(当審訳:
「図1 マルチモーダルディープネットワーク:(1)畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用し、子宮頸部写真ROIの生データから画像特徴を学習する。(2)ジョイント完全接続(jfc)層を用い、CIN分類のためにすべての情報源にわたる非線形相関をモデル化する。」)

第5 当審の判断

1 本件発明1について

(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「子宮頸部」は本件発明1の「生体組織」に相当するから、甲1発明の「コンピュータにより」「子宮頸部の正常(正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性)と異常(低悪性度病変、高悪性度病変)を」「識別する方法」は、本件発明1の「コンピューティングシステムを使用して生体組織を分類するための方法」に相当する。

イ 甲1発明の「コルポスコープ画像」は、「子宮頸部」の「画像」であるから、上記アを踏まえると本件発明1の「生体組織の検査領域の」「画像」に相当する。よって、甲1発明の「300枚撮影されたコルポスコープ画像のデータセットをコンピュータに登録」することは、コンピュータに登録する工程には受信する工程が内在することは明らかであるから、本件発明1の「コンピューティングシステムが、生体組織の検査領域の複数の画像を含む画像データを受信する」ことに相当する。

ウ 甲1発明が、「1枚/秒で5分間に300枚」の「コルポスコープ画像」を、「子宮頸部に酢酸を塗布した後」に「撮影」するのは、「子宮頸部」の「組織上の複数の各領域で」「コルポスコープ画像中の色調変化に内在する」「アセトホワイト時間的パターンの形状を」「観測」するためであるから、甲1発明の「酢酸」は甲1発明の「過渡的な光学的効果を引き起こす」「病理鑑別剤」に相当する。よって、甲1発明の「1枚/秒で5分間に300枚」の「コルポスコープ画像」が、「子宮頸部に酢酸を塗布した後」に「撮影され」ることは、本件発明1の「前記複数の画像の各々は、前記生体組織の前記検査領域への病理鑑別剤の局所塗布が過渡的な光学的効果を引き起こす期間中、異なる時間に捕捉され」ることに相当する。

エ 甲1発明の「機械学習による教師付き分類アルゴリズム」は本件発明1の「機械学習アルゴリズム」に相当するから、甲1発明の「コンピュータにより実行される機械学習による教師付き分類アルゴリズム」に「登録された生の時系列のコルポスコープ画像のデータセットを」「入力」することは、本件発明1の「前記コンピューティングシステム上で動作する機械学習アルゴリズムへの入力として前記受信された画像データを提供する」ことに相当する。

オ 本件発明1の「セグメント」は、本件特許明細書の【0017】「1つまたは複数のセグメントは、例えば個々の関心領域または病変を同定するために機械学習アルゴリズムを使用して画像データから識別することができる。」との記載を踏まえると、個々の関心領域または病変を同定する、画像データから識別される領域であるといえる。
すると、甲1発明の「セグメント」は、「正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかを割り当てる」関心「領域」又は病変「領域」であるから、甲1発明の「機械学習による教師付き分類アルゴリズム」が、「入力されたコルポスコープ画像のデータセットにおける組織上の複数の各領域で観測されたアセトホワイト時間的パターンの形状を利用して、」「コルポスコープ画像をセグメント化する」ことは、本件発明1の「前記機械学習アルゴリズムは、前記生体組織の複数のセグメントを識別」することに相当する。

カ 甲1発明の「正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベル」は、本件発明1の「複数の分類」に相当するから、上記オを踏まえると、甲1発明の「機械学習による教師付き分類アルゴリズム」が、「各領域に正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかを割り当て」ることは、本件発明1の「前記機械学習アルゴリズムは、」「前記生体組織の前記複数のセグメントの各々に複数の分類のうちの1つを割り当てる」することに相当する。

キ 甲1発明の「k近傍法による教師付き分類アルゴリズムは、教師データである、正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかが割り当てられたアセトホワイト時間的パターンの形状の中から、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンの形状との類似性が高いものから順にk個選び、k個の中で最も頻繁にあるクラスラベルを、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンが内在する領域のクラスラベルとして割り当て」るものであるから、甲1発明の「観測された未知のアセトホワイト時間的パターンが内在する領域のクラスラベルとして割り当て」る「正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変」は、疾患状態を異なる程度によって規定したものものであっても、疾患状態の確率を示したものではなく、また疾患状態を連続範囲における値のスケールによって規定したものでもない。
すると、甲1発明の「クラスラベル」が「正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変」であることと、本件発明1の「前記複数の分類は、疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケールによって規定される」こととは、「前記複数の分類は、疾患状態を異なる程度によって規定される」ことの点で共通する。

(2)一致点・相違点
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「 コンピューティングシステムを使用して生体組織を分類するための方法であって、
コンピューティングシステムが、生体組織の検査領域の複数の画像を含む画像データを受信することを備え、前記複数の画像の各々は、前記生体組織の前記検査領域への病理鑑別剤の局所塗布が過渡的な光学的効果を引き起こす期間中、異なる時間に捕捉され、前記方法はさらに、
前記コンピューティングシステム上で動作する機械学習アルゴリズムへの入力として前記受信された画像データを提供することを備え、前記機械学習アルゴリズムは、前記生体組織の複数のセグメントを識別し、前記生体組織の前記複数のセグメントの各々に複数の分類のうちの1つを割り当てるように構成され、
前記複数の分類は、疾患状態を異なる程度によって規定される、コンピューティングシステムを使用して生体組織を分類するための方法。」

(相違点1)
機械学習アルゴリズムが、本件発明1では、「ディープニューラルネットワークを含」むのに対し、甲1発明では、「k近傍法」である点。

(相違点2)
複数の分類は、本件発明1では、「疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケール」により規定されるのに対し、甲1発明では、「教師データである、正常組織、未熟形質転換、成熟形質転換、異所性、低悪性度病変、高悪性度病変のクラスラベルのいずれかが割り当てられたアセトホワイト時間的パターンの形状の中から、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンの形状との類似性が高いものから順にk個選び、k個の中で最も頻繁にあるクラスラベルを、観測された未知のアセトホワイト時間的パターンが内在する領域のクラスラベルとして割り当て、類似性の尺度としてユークリッド距離を用いる」ことにより規定される点。

(3)判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。

甲1発明の「ユークリッド距離」は、教師データの中から観測データとの類似性が高いものをk個選ぶための尺度であるから、「疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケール」に相当しないことは明らかである。
そして、複数の分類が「疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケール」により規定されることは、甲2(上記第4の2参照。)及び甲3(上記第4の3参照。)に記載も示唆もなく、本件特許に係る出願の優先日前に周知技術であるといえる証拠も見当たらない。
すると、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(4)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、
「また、分類には機械学習の最も単純なアルゴリズムの1つである、Kー最近傍(kNearest neighbor)分類アルゴリズムが用いられ、類似性の尺度としてユークリッド距離が最も一般的であることが記載されている(3.3.1. k-最近傍分類アルゴリズム)。
よって、甲1には以下の技術(甲1技術1という。)が記載されている。
・・・
[1F]:前記複数の分類は、疾患状態の確率を示す連続範囲における値(ユークリッド距離)のスケールによって規定される、・・・

イ 一致点・相違点
・・・
したがって、甲1技術1は、本件特許発明1の構成・・・1Fを備える」(第43頁〜第44頁)と主張する。
しかし、甲1発明が、複数の分類は、「疾患状態の確率を示す連続範囲における値のスケール」によって規定される、たる構成を備えていないことは、上記(1)キ及び(3)で説示したとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。

(5)小括
以上のとおり、本件発明1は、上記相違点1を検討するまでもなく、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

2 本件発明2〜23について
本件発明2〜23は、本件発明1の構成を全て含むものであり、上記相違点2を構成として含んでいることから、本件発明2〜23は、上記1(3)に示した理由と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明2〜23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

3 本件発明24について
本件発明24は、本件発明1〜23のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される、コンピュータプログラムの発明であり、上記相違点2を構成として含んでいることから、本件発明24は、上記1(3)及び2に示した理由と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明24に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

4 本件発明25について
本件発明25は、本件発明1に対応するコンピューティングシステムの発明であり、本件発明1とカテゴリ表現だけが異なる発明であって、上記相違点2を構成として含んでいることから、本件発明25は、上記1(3)に示した理由と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明25に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

5 本件発明26及び27について
本件発明26及び27は、本件発明25の構成を全て含むものであり、上記相違点2を構成として含んでいることから、本件発明26及び27は、上記4に示した理由と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明26及び27に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

6 本件発明28について
本件発明28は、本件発明1〜23のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成される、本件発明25〜27のいずれか1項に記載のコンピューティングシステムの発明であり、上記相違点2を構成として含んでいることから、本件発明28は、上記1(3)及び4に示した理由と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明28に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1〜28に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜28に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-11-30 
出願番号 P2020-568546
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 樋口 宗彦
▲高▼見 重雄
登録日 2021-12-22 
登録番号 6998474
権利者 ダイシス・メディカル・リミテッド
発明の名称 生体組織のコンピュータ分類  
代理人 弁理士法人深見特許事務所  

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