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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E03C
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03C
管理番号 1392092
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-08 
確定日 2022-11-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第7009108号発明「水回り機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7009108号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7009108号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年8月3日に出願され、令和4年1月14日にその特許権の設定登録がされ、同年2月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年8月8日に、特許異議申立人 芝崎 公昭(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1及び2に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。


第2 本件発明
特許第7009108号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
発光装置を備える水回り機器であって、
前記発光装置は、
入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材と、
前記導光部材を収容し、前記出射面から出射する光が透過可能なケースと、
前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体と、を備え、
投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え、
前記ケースは、
前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体と、
前記ケース本体の内部空間を封止する封止部材とを有し、
前記光電センサは、前記ケース本体を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する水回り機器。
【請求項2】
前記導光部材は、前記出射面とは表裏反対側に設けられ、前記入射面から入射させた光を前記出射面に向けて反射可能な反射面を有し、
前記反射体は、前記導光部材の側面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射させる請求項1に記載の水回り機器。」


第3 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び証拠の記載
1 証拠一覧
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。

甲1: 特開2006−144331号公報
(平成18年6月8日公開)
甲2: 特開2017−55978号公報
(平成29年3月23日公開)
甲3: 特開2004−214059号公報
(平成16年7月29日公開)
甲4: 特開2016−108773号公報
(平成28年6月20日公開)
甲5: 特開2001−107407号公報
(平成13年4月17日公開)
甲6: 特開2006−274573号公報
(平成18年10月12日公開)
甲7: 登録実用新案第3067542号公報
(平成12年4月7日発行)
甲8: 特開2011−153408号公報
(平成23年8月11日発行)
甲9: 特開2007−46298号公報
(平成19年2月22日公開)
甲10:特願2016−151475号の審査過程における
令和2年3月23日付け拒絶理由通知書

2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

(1)甲1を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)甲6を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲6に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲8、甲9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)甲7を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲7に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲8、甲9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)明確性要件違反
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠の記載
事案に鑑み、甲1ないし甲9についてみる。

(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。

(ア)明細書
「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明をキッチン用のホース収納式の自動水栓に適用した場合の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はキッチンのキャビネットで、12はカウンターであり、このカウンター12上に起立する状態で水栓の本体部14と吐水管16とが設けられている。ここで吐水管16は本体部14に対して所定角度回動可能とされている。
また吐水管16は、図3に示しているように逆U字状のグースネック形状をなしている。
同図に示しているように吐水管16は、先端に吐水口18を有し、可撓性のホース20とともに引出し可能な吐水ヘッド22と、吐水ヘッド22を収納位置に保持するホルダとしての働きを有する吐水管本体24とを有している。
・・・・
【0036】
この実施形態の自動水栓では、水用センサ116の上方に手をかざして水用センサ116によりこれを検知させると、吐水口18から水が吐水(水吐水)される。また水吐水状態の下で再び水用センサ116の上方に手をかざすと、そこで水吐水が停止する。即ち止水する。
一方湯用センサ118の上方に手をかざすと、湯用センサ118による手の検知に基づいて、吐水口18から適正温度に温度調節された湯(温調水)が吐水され、そしてその湯吐水中に再び湯用センサ118の上方に手をかざすと、そこで湯吐水が停止する。
・・・・
【0039】
図8〜図11に吐水管16の内部構造が具体的に示してある。
図8,図9及び図10に示しているように、吐水管本体24は金属パイプ124と、断面U字状をなして金属パイプ124の内部に挿入され内側においてホース20をガイドし、また外側において上記各水,湯,浄水用の各センサ116,118,120とコントローラ52とを連絡する電気配線をガイドする湾曲形状のインナ部材126と、その先端側に設けられてホース20を挿通ガイドする概略筒状のガイド部材128と、その下側からこれを覆うガイドカバー130とを有している。
【0040】
図11に示しているようにこのガイド部材128の上面には仕切板131が固定されており、そしてその仕切板131の上面に上記水用センサ116,湯用センサ118を有するセンサユニット132,134が載置固定された上、その上側から樹脂製の透光性のセンサカバー136が被せられている。
ガイド部材128には、その側面に浄水用センサ120が取り付けられている。ガイドカバー130は、その浄水用センサ120に対応する部分が透光性とされている。
【0041】
上記湯用センサ118は光電式のものであって、図12(A)に示しているようにこの湯用センサ118を有するセンサユニット134は基板140を有していて、そこに赤外線の発光素子142と、受光素子144と、センサ制御部としてのマイコン146が搭載されている。
基板140にはまた、湯吐水状態であるかそうでないかを表示するためのLED148が搭載されており、湯吐水状態の下ではこのLED148が点滅し、またそうでないときにはLED148が点灯保持するようになっている。
・・・・
【0045】
図1に示しているように、上記カプラ44には吐水口18からの吐水の温度をその上流部において事前に検知する温度検知素子としてサーミスタ170が取り付けられている。
そして図8及び図9に示しているように、このサーミスタ170による温度検知に基づいて吐水の温度ないしその温度変化を光の色ないし色変化によって表示する光温度表示部162が吐水管本体24の先端面近傍、詳しくはここでは吐水管本体24の先端面と吐水ヘッド22とによって管軸方向に挟まれる位置に取り付けられている。
【0046】
この光温度表示部162は、図14に示しているように環状且つ平板状の本体部172と、その上部から後方に延出する延出部164とを一体に有する透光性の樹脂から成っており、図9の部分拡大図に示しているようにその延出部164の下面、詳しくは被照射面176(図14(B)参照)に対して、上記3色LED152からの光が照射されるようになっている。
【0047】
この透光性樹脂から成る光温度表示部162は、本体部172の外周面が表示面178とされていて、組付状態においてその表示面178だけが吐水管16の外周面で露出せしめられ、表示面178で吐水の温度を光の色で表示する。
詳しくは、3色LED152から延出部164の被照射面176に照射された光は透光性樹脂の内部を透過して、外周面の表示面178から外部に放射され、その光の色によって吐水の温度を表示する。
そしてその表示面178から光を効率高く放射するために、延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面に白色塗料が塗布してある。」

(イ)図面の図示
a 【図3】(B)




b 【図8】




c 【図9】




d 【図10】




e 【図12】(A)




f 【図13】




g 【図14】




h 【図17】(B)




イ 図面の図示より看取される事項
上記ア(イ)の図示より、次の事項が看取される。
・【図3】(B)及び【図8】より、光電式の湯用センサ118は、透光性のセンサカバー136越しに手を検知することが、看取される。

・【図3】(B)、【図8】及び【図12】(A)に示される各部材の配置より、湯吐水状態であるかそうでないかを表示するためのLED148は、透光性のセンサカバー136越しに視認されることが、看取される。

ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「カウンター12上に起立する状態で水栓の本体部14と吐水管16とが設けられ、水用センサ116の上方に手をかざして検知させると水が吐水され、湯用センサ118の上方に手をかざして検知させると湯が吐水される、ホース収納式の自動水栓であって、
吐水管16は、可撓性のホース20とともに引出し可能な吐水ヘッド22と、吐水ヘッド22を収納位置に保持するホルダとしての働きを有する吐水管本体24とを有しており、
吐水管本体24は、ホース20を挿通ガイドする概略筒状のガイド部材128、その下側からこれを覆うガイドカバー130、ガイド部材128の上面に固定された仕切板131、仕切板131の上面に載置固定された水用センサ116及び湯用センサ118、及びその上側から被せられた樹脂製の透光性のセンサカバー136を有するとともに、先端面近傍には吐水の温度を光の色によって表示する光温度表示部162が取り付けられており、
光電式の湯用センサ118は、赤外線の発光素子142と、受光素子144と、湯吐水状態であるかそうでないかを表示するためのLED148とを有し、透光性のセンサカバー136越しに手を検知するものであり、
湯吐水状態であるかそうでないかを表示するためのLED148は、透光性のセンサカバー136越しに視認されるものであり、
光温度表示部162は、環状且つ平板状の本体部172と、その上部から後方に延出する延出部164とを一体に有する、透光性の樹脂から成り、延出部164の下面が被照射面176とされ、本体部172の外周面が表示面178とされ、組付状態においてその表示面178だけが吐水管16の外周面で露出し、3色LED152から延出部164の被照射面176に照射された光が透光性樹脂の内部を透過して外周面の表示面178から外部に放射されるものであり、
光温度表示部162は、表示面178から光を効率高く放射するために、延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面に白色塗料が塗布してある、
自動水栓。」

(2)甲2
甲2には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。図1に示された本実施形態の水回り設備は、台所に設置される厨房装置1である。厨房装置1は、例えば対面式又は壁付けのキッチンカウンターとして利用される。
【0012】
厨房装置1は、台所の床に設置される作業台2と、作業台2に設けられた照明装置4とを備えている。本実施形態では、照明装置4が紫外線を照射する紫外線照射部53を有している(図5参照)。
・・・・
【0033】
図2に示されるように、本実施形態の照明装置4は、ケーシング40と照明部41とを有している。ケーシング40は、バックガード28の隅部35に取り付けられている。
【0034】
ケーシング40は、バックガード28の隅部35に沿って左右方向に延びている。ケーシング40には、照明部41が収納されている。
【0035】
照明部41は、可視光線である照明光を、カウンター21の上面、シンク24の内面、及び加熱調理器22の上面に照射する。
【0036】
本実施形態の照明部41は、複数の導光部材42(図3参照)と、複数の光源43(図3及び図4参照)とを有している。
・・・・
【0038】
各導光部材42は、左右方向に延びた形状であり、棒状である。各導光部材42は、左右1対の入光面44(図4参照)及び出光面45(図2参照)を有している。
【0039】
1対の入光面44(図4参照)は、導光部材42の左右方向の両端面で構成されている。すなわち、各入光面44は、導光部材42の左右方向の端面で構成されている。
【0040】
図2に示されるように、出光面45は、導光部材42の前面で構成されている。本実施形態の出光面45は、前斜め下方を向いている。出光面45は、導光部材42の長手方向の全長に亘っており、左右方向に延びている。
・・・・
【0047】
各光源43から出射された照明光は、対応する入光面44から導光部材42に入射する。この照明光は、導光部材42の内部を、入射した入光面44とは反対側の入光面44に向かって進行する。この進行の過程で、照明光は、図2に示される拡散反射部46に当たって、出光面45側に拡散反射する。この照明光は、出光面45から前斜め下方に出射する。
【0048】
本実施形態では、図3に示される各導光部材42の左右両側の光源43から照明光を出射することで、各導光部材42の出光面45から照明光が出射する。この照明光は、出光面45の全体から出射する。
・・・・
【0054】
傾斜片部50(ケーシング40の前面部の一部)には、複数の導光部材42の出光面45から出射された照明光が透過可能な透光部51が設けられている。


イ 図面の図示
(ア)【図1】




(イ)【図2】




(ウ)【図3】




(エ)【図4】




(3)甲3
甲3には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0038】
図1は、操作パネル入力装置1の斜視図で、図示しない洗濯機の筺体表面に取り付けられるものである。本発明に係る操作パネル入力装置は、防水性が求められる洗濯機、風呂の給湯器等の制御入力装置などに特に適しているが、音響機器、空調機器など他の電気機器を制御する入力装置としてこれらの筺体に取り付けられるものでもよい。
【0039】
操作パネル入力装置1は、外方(図2において上方側)から、矩形の操作パネルとなる透明アクリル板3、液晶表示パネル4及びバックライトパネル9が、互いの対向面を貼り付けて積層配置されるとともに、その内方に赤外発光素子5と赤外受光素子6を実装したプリント配線基板7が配置され、これらの全体が、合成樹脂製のケース2内に収容されている。
・・・・
【0041】
透明アクリル板3の周囲に固定枠22の厚み分の段差を設けることにより、透明アクリル板3とその周囲のケース2の表面は、同一平面上に整列する。また、ここでは、ケース2と透明アクリル板3との間が接着剤により密封した状態で接着され、操作パネル入力装置1内に水滴、埃等が侵入しないようにしている。ケース2と透明アクリル板3間には、接着剤の他、シール等を介在させ、防水、防塵を行ってもよい。
・・・・
【0044】
バックライトパネル9は、透明アクリル板などで構成される透明基板9Bと、透明基板9Bの表面(液晶表示パネル4との対向面)に貼り付けられた拡散シート9Aと、透明基板9Bの背面側に貼り付けられ、透明基板9Bとの対向面を白色とした反射板9Cとから構成され、バックライト光源40(図3参照)から発光されるバックライト光を、透明基板9Bの内部で散乱させながら導光する。
【0045】
これにより、透明アクリル板3の外方からは、特定のバックライト光源は確認されず、あたかも液晶表示パネル4による表示の背景全体がバックライト光により照光されたように目視される。
【0046】
本実施の形態では、バックライトパネル9とバックライト光源40は、操作エリア30毎にしきい板33により区切られ、操作エリア30の背面を、異なる光源40で照光するようになっている。
【0047】
反射板9Cは、上述のように表面に白色の塗料を塗布することにより、バックライトパネル9との対向面を白色とし、バックライト光を下方に逃げないようにバックライトパネル9内に反射させている。白色とするので、バックライト光を所定の色彩に着色すれば、液晶表示パネル4による表示の背景は、その色彩に変化したように目視される。」

イ 図面の図示
(ア)【図1】




(イ)【図3】




(4)甲4
甲4には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0015】
水栓装置1は、センサー11の検知結果に基づいて、吐水の有無を切り換える自動水栓である。水栓装置1は、図6に示すように、水を吐出するための吐水部材12、吐水部材12に水を供給するための給水路26、給水路26に設けられて吐水部材12から吐出される水の流量と温度を変更するための操作部材14、および電源ボックス15を備えている。
【0016】
図1に示すように、吐水部材12は、水栓本体10とセンサーブロック16を備えている。水栓本体10は、基体17と吐水体18を備えている。基体17は、筒状部19と突出部20を備えている。
・・・・
【0037】
図8に示すように、センサーブロック16は、水栓本体10の筒状部19の上端部(開口部21側の端部)に設けられている。センサーブロック16は、カバー38、Oリング39、センサー11、および保持部材40を備えている。
【0038】
カバー38は、筒状部19に着脱可能に取り付けられる。カバー38は、開口部21を閉塞する略円板状の板状部41と、板状部41の外周部から下側(筒状部19側)に向かって突出して筒状部19の上端部(開口部21)に嵌め込まれる周壁部42を備えている。
【0039】
カバー38は透光性を有している。なお、カバー38は、全体が透光性を有するカバーであってもよいし、センサー11に対向する板状部41のみが透光性を有するカバーであってもよい。
・・・・
【0052】
カバー38の板状部41の内面側でかつ周壁部42の内側には、回路基板44を保持する保持部材40が配置されている。保持部材40はカバー38に固定されている。
【0053】
本実施形態の保持部材40は、回路基板44の上面側に配置された位置決め部材47と、回路基板44の下面側に配置された被覆部材48を備えている。回路基板44は、位置決め部材47と被覆部材48とで囲まれている。
・・・・
【0058】
本実施形態の被覆部材48は、ホットメルト剤から形成されている。被覆部材48は、例えば以下のように形成される。まず、各突部51を対応する孔52に嵌め込むことで、位置決め部材47を回路基板44に固定する。次に位置決め部材47をカバー38の凹み部50に嵌め込み、カバー38の周壁部42の内側に型となる入れ子を配置する。そして、カバー39の周壁部42と前記入れ子の間、および回路基板44と前記入れ子の間に、溶融したホットメルト剤を注入し、このホットメルト剤を硬化させる。このように形成された被覆部材48は、カバー38の周壁部42、回路基板44、および位置決め部材47に接合される。」

イ 図面の図示
【図8】




(5)甲5
甲5には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動水栓に関し、特にスパウト本体に検知部を収納し、この検知部で手洗い空間内の手の有無を検知し、この検知信号に基づきスパウト本体先端に設けた吐水口より自動吐水する自動水栓に関する。
・・・・
【0011】スパウト本体2の前面開口部8には、光透過性物質で形成された透光板部12を透光板部前面13がスパウト本体前面14と略同一曲面を形成するように両面テープなどで接着されている。透光板部12の透光板部前面13は必ずしもスパウト本体前面14と略同一曲面にする必要はなく、スパウト本体前面14と段差が生じないような形状であればよい。透光板部後面15は平面でありスパウト本体2の前面開口部内面16より内側に突出している。
【0012】検知部17はその上下に設けられた検知部貫通穴18に検知部固定台19の傘状突起部20a,20bを差込まれることにより拘束されている。なお、検知部17は完全な防水性が要求されるため光透過性物質のケーシングで囲まれた上にポッティング材が充填されている。」

イ 図面の図示
【図1】




(6)甲6
ア 記載事項
甲6には、次の記載がある。
(ア)明細書
「【0027】
図3(a)は実施の形態に係る衛生設備としての洗面設備の斜視図、図3(b)は手洗吐水管の縦断面図である。
【0028】
洗面カウンター20に洗面ボウル21が設置されており、この洗面カウンター20の上面と洗面ボウル21の表面に光触媒層が設けられている。
【0029】
この洗面ボウル21に向って吐水するように該手洗吐水管(以下、単に吐水管と略)22が設置されている。この吐水管22の先端部の下面に吐水口23が設けられ、吐水管22内にはホース、パイプ等よりなる通水部材24が引き回されている。
【0030】
この吐水口23の近傍の吐水管22の下面に、赤外線及び紫外線を透過させるが可視光を遮光するガラスよりなる窓プレート25が設置されている。この窓プレート25の背後側の吐水管22内に回路基板26が設置され、この回路基板26に赤外線センサ(図示略)と紫外線LED27が設置されている。
【0031】
赤外線センサが吐水口23付近に差し出された手を検知すると、吐水口23から吐水が開始し、手が検知されなくなると、止水される。図示はしないが、この洗面カウンター20近傍の人体を検知するセンサが設けられており、人体が検知されないときにはLED27が点灯する。これにより、洗面ボウル21や洗面カウンター20の上面で殺菌及び有機物分解が行われる。」

(イ)図面の図示
【図3】




イ 記載された発明
上記アより、甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている(なお、「紫外線LED27」と「LED27」とは同じものを指すことが明らかであるから、「紫外線LED27」に表記を統一した。)。
「先端部の下面に吐水口23が設けられ、
吐水口23の近傍の下面に、赤外線及び紫外線を透過させるが可視光を遮光するガラスよりなる窓プレート25が設置され、窓プレート25の背後側の吐水管22内に回路基板26が設置され、回路基板26に赤外線センサと紫外線LED27が設置され、
赤外線センサが吐水口23付近に差し出された手を検知すると、吐水口23から吐水が開始し、
洗面カウンター20近傍の人体を検知するセンサにより人体が検知されないときには、紫外線LED27が点灯する、
手洗吐水管22。」

(7)甲7
ア 記載事項
甲7には、次の記載がある。
(ア)明細書(当審注:段落番号等の前の空白は、摘記に際して省略した。)
「【0013】
【考案の実施の形態】
次に本考案による手洗器用自動水栓が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は本考案による手洗器用自動水栓における吐水カラン部の縦断面図である。
・・・・
【0020】基体1と下カバー21との間には、センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24などからなるセンサーユニット25と、配線基板26が内蔵されている。
【0021】次に動作を説明する。通常は、パイロット弁体19でパイロット弁座16が閉じられているため、流入口10からブリード孔14を経て流入した水は、ダイヤフラム背室15の中に溜まり、ダイヤフラム12の背面全面に作用する水圧とコイルスプリング27のバネ力とでダイヤフラム12が主弁座11に押しつけられて開弁し、吐水口9からの吐水が不能となっている。
【0022】通常はこの状態であるが、いまセンサー22の前に手が差し伸べられると、その検知信号が電磁コイル17に伝わって、可動鉄芯18が固定鉄芯28に吸着され、パイロット弁体19がパイロット弁座16から離れて、開弁する。その結果、ダイヤフラム背室15中の水が、パイロット流路3→パイロット弁座16→主流路2の順に流出する。
【0023】その結果、ダイヤフラム背室15中の水圧が低下するので、ダイヤフラム12の下面に作用する流入水圧で、ダイヤフラム12が押し上げられて主弁座11が開かれ、流入口10から流入した水道水が、主流路2側に流れ、吐水管7を経て、吐水口9から流出する。
・・・・
【0028】電池ケース30は、取り付け孔36によって、手洗器の下側などの空間に取り付け固定される。つまり、空間的に余裕のある場所に設置する。なお、37は電池カバーである。」

(イ)図面の図示
【図1】




イ 図面の図示より看取される事項
上記ア(イ)の図示より、次の事項が看取される。
・センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24は、断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材の裏側に配置されている。

ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲7には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。
「基体1と下カバー21との間に、センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24などからなるセンサーユニット25を内蔵し、
センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24は、断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材の裏側に配置されており、
センサー22の前に手が差し伸べられると、その検知信号が伝わって、水道水が吐水口9から流出し、
電池ケース30は、空間的に余裕のある場所に設置した、
手洗器用自動水栓。」

(8)甲8
甲8には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0046】
この状態の自動水栓1から吐水させる場合には、例えば手を、水栓本体3の吐水口6の近くに持っていく。吐水口6の近傍にはセンサ部10が配設されており、センサ部10からは、センサ本体36に設けられる発光素子で発した赤外光が出光し続けている。このため、手を吐水口6の近くに位置させた場合、センサ部10からの赤外光は、手で反射する。
【0047】
このように、センサ部10からの赤外光が手で反射した場合、反射光はセンサ部10からレンズ11に入光し、レンズ11を透過してプリズム15に入光した後、プリズム15で向きが変わって光ファイバ20に入光し、光ファイバ20に導かれて受光素子で受光する。この場合に受光した光は、電磁弁31を開弁する判断の基準となる波長の光である赤外光であるため、受光素子で受光した赤外光を光電変換回路で電気信号に変換し、受光素子でこの赤外光の受光を検知した場合には、制御部35で電磁弁31を開弁する。
【0048】
電磁弁31を開弁すると、給水元管から給水チューブ32の方向への給水経路が開かれるので、水が給水チューブ32に流れ、給水チューブ32を通って水栓本体3の方向に流れる。この給水チューブ32は、端部が吐水口6に接続されている、または吐水口6の近傍に配設されているため、給水チューブ32内を流れる水は、吐水口6の方向に流れ、吐水口6から吐水される。これにより、水栓本体3を直接操作することなく、水Wを吐水させることができる。
・・・・
【0050】
以上の自動水栓1は、自動水栓1で使用する光の光源として、水栓本体3の外部に設けられるセンサ本体36が有する発光素子を使用し、この発光素子で発光した光を光ファイバ20によって水栓本体3に導いている。さらに、この光ファイバ20で導いた光の向きを水栓本体3の外部の方向に変えることができるプリズム15を設け、光ファイバ20の先端部21を、このプリズム15に接続している。このように、プリズム15を設けて、光ファイバ20で導いた光の向きをプリズム15で変えることにより、光ファイバ20を曲げることなく光の向きを変えることができるので、光ファイバ20を曲げることに起因して、光ファイバ20で導く光の光量が低減することを抑制することができる。また、光ファイバ20の先端部21をプリズム15に接続しているので、光ファイバ20の先端部21やプリズム15が汚れていたり、水滴が付着したりすることに起因して、光ファイバ20の先端部21から出光した光がプリズム15に入光する際に、光量が低減したり光の向きが変化したりすることを抑制できる。これらの結果、光ファイバ20により導く光を、光量を低減させることなく所望の方向に変えることができる。」

イ 図面の図示
【図3】




(9)甲9
甲9には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0008】
本発明の吐水照明装置では、導光材が光を全反射しつつ自己の延びる方向に案内し、導光材の他端側に形成された反射板が光を反射させて導光材の出射部から光を出射する。そして、出射部は、少なくとも水路に露出し、出射した光が吐水口に向くようにされている。そのため、曲がりによる放射損失が発生し難く、多量の光を吐水流内に直接入射することができる。こうして、吐水流自体が発光するように見え、くっきりしたいわゆる切れの良い照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流自体が発光するように見える上、手をかざすと吐水が当った部分が光り、驚きを演出する効果が大きい。
・・・・
【0026】
本実施例の水洗装置10では、導光材17を大きく曲げることなく光を吐水流W内に入射することができるため、曲がりによる放射損失が発生し難く、導光材17の光損失が起こり難い。また、導光材17は軸直角方向の断面が四角形であるため、確実に反射板18の位置決めができる上、伝搬する光量も多い。さらに、出射部17cは吐水口15aに対向、すなわち吐水流Wの方向に向いていることから、光を確実に吐水流W内に入射することができる。このように、この水洗装置10では、多量の光を吐水流W内に直接入射することができる。そして、吐水流W内に入射された光は、水流の光導波路効果により光が吐水流W内を全反射して下方に伝播しつつ、少しづつ拡散されて吐水流Wから漏れ出てくる。こうして、この水洗装置10では、光が不必要な部分を照明することが少なくなるため、吐水流W自体が発光するように見え、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流W自体が発光するように見える上、手をかざすと吐水が当った部分が光り、驚きを演出する効果が大きい。また、この水洗装置10では、吐水口15aには有色透明の整流板19が設けられているため、簡易に光源16のLED16aから照射された光の色を変更することができる。
・・・・
【0032】
鉢本体11の後方には、図6に示すように、吐水口25aまで延びる水路25bが内部に形成され、水路25bを流れる水を吐水口25aから吐水流Wとして吐出する吐水具25が固定されている。また、吐水具25の内部には水路25bに沿ってわずかに湾曲して収納路25cが形成されており、水路25bと収納路25cとは各々の先端部分で連通している。この収納路25cには導光材27が収納されている。導光材27の他端側27bには長方形の平面が形成され、その平面には銀が蒸着されて反射板28とされている。さらに、導光材27の他端側27bの外面が出射部27cとされている。この出射部27cと反射板28とは鋭角をなし、出射部27cは吐水口25aに対向、すなわち吐水流Wの方向に向いている。また、図5(A)に示すように、導光材27の一端面27aに対向して、光源16がタンクカバー5内に設けられている。その他の構成は実施例1と同様である。」

イ 図面の図示
【図6】





第4 判断
1 甲1を主引例とした進歩性
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「吐水管本体24」は、「先端面近傍には吐水の温度を光の色によって表示する光温度表示部162が取り付けられて」いることをふまえると、本件発明1における「発光装置」に相当する。
甲1発明において、「吐水管本体24」を有する「吐水管16」が設けられた「自動水栓」は、本件発明1において、「発光装置を備える水回り機器」に相当する。
甲1発明において、「吐水管本体24」の「先端面近傍」に「取り付け」られた「光温度表示部162」が、「3色LED152から延出部164の被照射面176に照射された光が透光性樹脂の内部を透過して外周面の表示面178から外部に放射される」ものである構成は、本件発明1において、「発光装置」が、「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」を備える構成に、相当する。
甲1発明において、「吐水管本体24」が、「ガイド部材128、その下側からこれを覆うガイドカバー130」及び「上側から被せられた樹脂製の透光性のセンサカバー136」を有する構成は、本件発明1において、「発光装置」が、「ケース」を有する構成に相当する。
甲1発明において、「吐水管本体24」に設けられた「光電式の湯用センサ118」が、「赤外線の発光素子142と、受光素子144と」を有して「手を検知するもの」である構成は、本件発明1において、「発光装置」が、「投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え」る構成に相当する。
甲1発明において、「透光性のセンサカバー136」は、「湯用センサ118」に「上側から被せられ」ているから、「ガイド部材128、その下側からこれを覆うガイドカバー130」とともに「湯用センサ118」を収容するケースの一部をなす、透光性の部材と言うことができ、本件発明1において、「ケース」が「前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体」を有する構成とは、「ケース」が「光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材」を有する構成という点で、共通する。
甲1発明において、「光電式の湯用センサ118」が、「透光性のセンサカバー136越しに手を検知」する構成と、本件発明1において、「前記光電センサは、前記ケース本体を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成とは、「前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成という点で、共通する。

整理すると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。
「発光装置を備える水回り機器であって、
前記発光装置は、
入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材と、
ケースと、を備え、
投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え、
前記ケースは、
前記光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材を有し、
前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する水回り機器。」

そして、本件発明1と甲1発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
「導光部材」と「ケース」との関係、及び「ケース」の構成に関し、
本件発明1においては、「ケース」が「導光部材を収容し、前記出射面から出射する光が透過可能な」ものであること、及び、「ケース」が「前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体」と「前記ケース本体の内部空間を封止する封止部材」とを有することが特定されているのに対し、
甲1発明においては、「光温度表示部162」は、「組付状態においてその表示面178」が「吐水管16の外周面で露出」するものであり、「樹脂製の透光性のセンサカバー136」は、「光温度表示部162」の「表示面178」から出射する光を透過可能な「単色」の「ケース本体」として「光温度表示部162」を「収容」するものではなく、「ケース本体の内部空間を封止する封止部材」を有するとも特定されていない点。

<相違点2>
本件発明1においては、「発光装置」が「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を備えると特定されているのに対し、
甲1発明においては、「光温度表示部162」の「延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面に白色塗料が塗布してある」点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について判断する。
甲1発明において、「湯吐水状態であるかそうでないかを表示するためのLED148」が、「透光性のセンサカバー136越しに視認される」ものである一方、「光温度表示部162」について、「3色LED152から延出部164の被照射面176に照射された光が透光性樹脂の内部を透過して外周面の表示面178から外部に放射される」という、いわゆる導光型の部材を用いていることから、「光温度表示部162」として導光型の部材を用いる構成は、「吐水管本体24」の「先端面近傍」で「吐水管16の外周面で露出」する「表示面178」において、「吐水の温度を光の色によって表示」するために採用された構成であると、合理的に理解される。そうすると、甲1発明において、「光温度表示部162」としていわゆる導光型の部材を用いる構成を維持しつつ、「表示面178」を「透光性のセンサカバー136」の下に収容する動機付けがあったということはできない。
また、甲1発明において、「樹脂製の透光性のセンサカバー136」を、「内部空間」を有する「ケース本体」とし、導光型の「光温度表示部162」を「表示面178」も含めて収納して、「封止部材」により封止を行うものへと変更するには、「光温度表示部162」の構造及び「樹脂製の透光性のセンサカバー136」の構造のみでなく、「概略筒状のガイド部材128、その下側からこれを覆うガイドカバー130」を含めて、「吐水管本体24」を構成する複数の部材の構造を、甲1の【図8】ないし【図10】、【図13】、【図14】に図示されるものとは異なるものへと、全体として変更する必要があるところ、甲1発明において、そのような構造の変更を行う動機付けがあったということはできない。
甲2及び甲3には、上記第3の3(2)及び(3)に摘記した事項が記載されており、カウンター用の照明装置において光源からの光を伝達する導光部材をケースの中に収納する例、及び、透光性操作パネルにおいて導光用のバックライトパネルをケースで覆う例が示されているが、甲1発明における「光温度表示部162」及び「樹脂製の透光性のセンサカバー136」とは、前提となる構造が異なり、甲1発明において上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
甲4ないし甲9には、上記第3の3(4)ないし(9)に摘記した事項が記載されているが、甲1発明における「光温度表示部162」及び「樹脂製の透光性のセンサカバー136」に係る構造を変更して、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることは、甲2ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(イ)相違点2について
上記相違点2について判断する。
甲1発明において、「光温度表示部162」の「延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面」に、「白色塗料」を塗布する構成は、「表示面178以外の面」自体に、光の出射を防止する機能を付与していると解されるところ、甲1発明において、「表示面178以外の面」から「出射する光」を対象として、「内部に向けて反射」する「反射体」を設けることは、甲1において記載も示唆もされていない。
甲2ないし甲9には、上記第3の3(2)ないし(9)に摘記した事項が記載されているが、甲1発明における「光温度表示部162」について、上記相違点2に係る本件発明1の構成をとることが、記載あるいは示唆されているものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、甲2ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、甲2ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)相違点1について
申立人は申立書において、上記相違点1に係る本件発明1の構成に関し、導光部材の出射面から出射する光がケースを透過するように導光部材をケース内に収納すること、センサカバーを単色の部材とすること、センサカバーの内部空間を封止する封止部材を有すること、という3つの相違点として個別に検討すべき旨を主張している。
そして申立人は、導光部材の出射面から出射する光がケースを透過するように導光部材をケース内に収納することは、甲2及び甲3に示されており、防水及び防塵という一般的な観点から甲1発明において採用する動機付けがあるから、想到容易である旨を主張している。
また申立人は、甲1発明におけるセンサカバー136は2色形成等の特段の記載がないから単色である蓋然性が高く、仮に単色でないとしても、単色とすることは容易である旨を主張している。
さらに申立人は、甲4にはセンサーブロックのカバーの内部をホットメルト剤の被覆部材で被覆する構成が開示され、甲5には検知部を光透過性物質のケーシングで囲みポッティング材を充填する構成が開示されているから、甲1発明におけるセンサカバー136の内部を封止部材で封止することは容易である旨を主張している(申立書第46頁第7行−第50頁下から3行)。
しかしながら、本件発明1において、「ケース」を「ケース本体」と「ケース本体の内部空間を封止する封止部材」とを有するものとする構成、「ケース本体」を「前記導光部材及び前記光電センサを収容する」ものとする構成、「ケース本体」を「単色」とする構成、及び、「ケース本体」を導光部材の「前記出射面から出射する光を透過可能」なものとする構成は、相互に関連しているのに対し、甲1発明においても、「光温度表示部162」の「表示面178」が露出する構成、及び「センサカバー136」が「湯用センサ118」等の上を覆うカバーである構成は、各部材の構造及び光透過特性と相互に関連するものであるから、本件発明1と甲1発明との上記相違点1に係る構成は、相互に関連する構成として認定し、容易想到性について判断すべきものである。
そして、上記イ(ア)に指摘したとおり、甲1発明においては、「吐水管本体24」の「先端面近傍」で「吐水管16の外周面で露出」する「表示面178」において、「吐水の温度を光の色によって表示」するために、「光温度表示部162」として導光型の部材を用いる構成を採用していると解されるから、防塵及び防水という一般的な観点を考慮したとしても、前提となる構造が異なる甲2及び甲3に示される構成を採用して、「光温度表示部162」及び「センサカバー136」の構造を変更し、上記相違点1に係る本件発明1の構成とする動機付けがあったということはできない。甲4ないし甲9に示される事項を考慮した場合にも、同様である。
したがって、申立人による主張について考慮しても、本件発明1と甲1発明との相違点1は、上記アのとおり認定されるべきであり、上記イ(ア)のとおり判断されるべきものである。

(イ)相違点2について
申立人は申立書において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に関し、甲1発明において「光温度表示部162」の「延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面に白色塗料が塗布してある」構成は、本件発明1において「発光装置」が「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を備える構成に相当するから、相違点2は相違点ではなく一致点である旨を主張している(申立書第43頁第1行−第23行)。
しかしながら、本件発明1における「反射体」に係る構成は、導光部材の面に反射特性を持たせる「反射面」に係る本件発明2における構成とは区別されており、「導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光」を反射すると特定されているから、甲1発明の「光温度表示部162」において「延出部164の被照射面176及び外周面の表示面178以外の面に白色塗料が塗布してある」構成をもって、本件発明1における「反射体」に係る構成に相当するということはできない。
したがって、申立人による主張について考慮しても、本件発明1と甲1発明との相違点2は、上記上記アのとおり認定されるべきであり、上記イ(イ)のとおり判断されるべきものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)に示したとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲9に示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2における付加的構成について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、及び甲2ないし甲9に示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 甲6を主引例とした進歩性
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明における「手洗吐水管22」は、本件発明1における「水回り機器」に相当する。
甲6発明において、「手洗吐水管22」が「紫外線LED27」を有する構成は、本件発明1において、「水回り機器」が「発光装置」を備える構成に相当する。
甲6発明において、「紫外線LED27」が「窓プレート25の背後側」に設けられている構成は、本件発明1において、「発光装置」が「ケース」を有する構成に相当する。
甲6発明において、「窓プレート25の背後側」に「赤外線センサ」が設けられ、「吐水口23付近に差し出された手を検知する」構成は、手を検知する「赤外線センサ」として、投光部が投光した赤外線の反射光を受光部が受光する光電センサ型のものを用いることが技術常識であることをふまえると、本件発明1において、「投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え」る構成に相当する。
甲6発明において、「赤外線及び紫外線を透過させるが可視光を遮光するガラスよりなる窓プレート25」は、「背後側」に「赤外線センサと紫外線LED27」が設置されるとともに、使用される「赤外線」及び「紫外線」については透過させるから、「赤外線センサ」等を収容するケースの一部をなす、透光性の部材と言うことができ、本件発明1において、「ケース」が「前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体」を有する構成とは、「ケース」が「光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材」を有する構成という点で、共通する。
甲6発明において、「窓プレート25の背後側」に設けられた「赤外線センサ」が、「吐水口23付近に差し出された手を検知する」構成と、本件発明1において、「前記光電センサは、前記ケース本体を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成とは、「前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成という点で、共通する。

整理すると、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致する。
「発光装置を備える水回り機器であって、
前記発光装置は、
ケースを備え、
投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え、
前記ケースは、
前記光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材を有し、
前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する水回り機器。」

そして、本件発明1と甲6発明とは、次の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1においては、「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」が、「前記出射面から出射する光が透過可能なケース」に「収容」されているとともに、「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を備えることが特定されているのに対し、
甲6発明においては、「導光部材」が「窓プレート25の背後側」に設けられておらず、「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」も備えられていない点。

<相違点4>
「ケース」の細部構成及び「導光部材」との関係に関し、
本件発明1においては、「前記ケースは、前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体と、前記ケース本体の内部空間を封止する封止部材とを有」すると特定されているのに対し、
甲6発明においては、そのように特定されていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点3について
上記相違点3について判断する。
甲6発明において、「窓プレート25」の背後側に、「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」を設ける動機付けはなく、「導光部材」とともに「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を設ける動機付けもない。
甲1ないし甲5及び甲7ないし甲9には、上記第3の3(1)ないし(5)及び(7)ないし(9)に摘記した事項が記載されているが、甲6発明における「紫外線LED27」及び「窓プレート25」に関して、上記相違点3に係る本件発明1の「導光部材」及び「反射体」を追加することが、記載あるいは示唆されているものではない。
したがって、甲6発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲5及び甲7ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(イ)相違点4について
上記相違点4について判断する。
上記(ア)において上記相違点3に関して判断したとおり、甲6発明において、相違点3に係る「導光部材」及び「反射対」を追加する動機付けはないから、「導光部材」との関係において、「窓プレート25」の構成を変更する動機付けもない。
そしてその点は、甲1ないし甲5及び甲7ないし甲9に記載される事項を考慮しても、変わるものではない。
したがって、甲6発明において、上記相違点4に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲5及び甲7ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲6発明において、上記相違点3及び相違点4に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲5及び甲7ないし甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではないから、本件発明1は、甲6発明、甲1ないし甲5に記載される事項及び甲7ないし甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)相違点3について
a 甲8に基づく主張
申立人は申立書において、上記相違点3に関し、甲8に記載される「プリズム15」は、上記相違点3に係る本件発明1の構成における「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」に相当し、甲8における「プリズム15」が当然に有する支持部材は、「プリズム15」に接触する箇所において、プリズム15から出射される光をある程度はプリズム15内部に向けて反射するから、上記相違点3に係る本件発明1の構成における「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」に相当する旨を主張している(申立書第34頁下から3行−第36頁下から7行)。
そして申立人は、甲6発明において、光の伝達率向上等を目的として、甲3における「プリズム15」、及び「プリズム15」に接触する支持部材を、紫外線LED27と窓プレート25との間、すなわち「ケース内」に配置する動機付けがあるから、甲6発明において甲8における「プリズム15」を追加し、もって上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者であれば想到容易である旨を主張している(申立書第53頁下から10行−第56頁下から6行のうち、申立人が示す「相違点4」「相違点5」及び「相違点6」に関する主張。)

b 甲9に基づく主張
また、申立人は申立書において、甲9に記載される「導光材27」は、上記相違点3に係る本件発明1の構成における「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」に相当し、甲9において「導光材27」が収納される「収納路25c」は、光ファイバーのように特殊な部材ではない「導光材27」から漏れる光を当然に反射して戻すから、上記相違点3に係る本件発明1の構成における「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」に相当する旨を主張している(申立書第36頁下から6行−第38頁下から11行)。
そして申立人は、甲6発明において、光の伝達率向上等を目的として、甲9における「導光材27」、及び「導光材27」を収納する「収納路25c」を、紫外線LED27と窓プレート25との間、すなわち「ケース内」に配置する動機付けがあるから、甲6発明において甲9における「導光材27」及び「収納路25c」を採用し、もって上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者であれば想到容易である旨を主張している(申立書第53頁下から10行−第56頁下から6行のうち、申立人が示す「相違点4」「相違点5」及び「相違点6」に関する主張。)

c 上記主張aについての判断
甲8における「プリズム15」は、単に反射材として用いられているものであり、反射の過程で光が「プリズム15」の内部を通過するからといって、本件発明1における「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」に相当するものではない。また、「プリズム15」の表面の一部において、何らかの支持部材が接触するとしても、かような支持部材は単なる支持部材に過ぎず、本件発明1における「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」に相当するものではない。
そして、甲6発明において、「紫外線LED27」と「窓プレート25」との間に、甲8に記載される「プリズム15」を設けても、部材数が増える反面、紫外線の照射効率が上がるものではないから、甲6発明において甲8に記載される「プリズム15」等を設ける動機付けもない。
さらに、仮に甲6発明に、甲8に記載される「プリズム15」を組み合わせたとしても、上述したとおり甲8における「プリズム15」は、相違点3に係る「導光部材」及び「反射体」のいずれの構成を充足するものでもないから、相違点3に係る本件発明1の構成に至るものではない。
したがって、甲8に基づいて上記相違点3が想到容易である旨をいう、上記aの申立人の主張は、採用することができず、申立人による上記aの主張を考慮しても、上記相違点3の容易想到性について、上記イ(ア)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

d 上記主張bについての判断
甲9において、「収納路25c」は、「わずかに湾曲」していること、及び「導光材27」を収納することが記載されている一方、「収納路25c」の内面に反射特性を持たせることは何ら記載されていない。そして、「収納路25c」の湾曲がわずかであれば、内部に収納される「導光材27」も大きく湾曲させる必要がなくなり、甲9の段落【0026】にも「導光材17を大きく曲げることなく光を吐水流W内に入射することができるため、曲がりによる放射損失が発生し難く、導光材17の光損失が起こり難い。」と記載されているように、「導光材27」における放射損失も発生し難くなることからすれば、内面の反射特性について何ら特段の記載もされていない甲9における「収納路25c」を、本件発明1における「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」に相当するということはできない。
また、甲6発明において、「紫外線LED27」と「窓プレート25」との間に、甲9に記載される「導光材27」及び「収納路25c」を設けても、部材数を増やして全体の構造を大きく変更する必要がある反面、紫外線の照射効率が上がるものではないから、甲6発明において甲9に記載される「導光材27」及び「収納路25c」を設ける動機付けもない。
さらに、仮に甲6発明に、甲9に記載される「導光材27」及び「収納路25c」を組み合わせたとしても、上述したとおり甲9における「収納路25c」は、相違点3に係る「反射体」の構成を充足するものではないから、相違点3に係る本件発明1の構成に至るものではない。
したがって、甲9に基づいて上記相違点3が想到容易である旨をいう、上記bの申立人の主張は、採用することができず、申立人による上記bの主張を考慮しても、上記相違点3の容易想到性について、上記イ(ア)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(イ)相違点4について
申立人は申立書において、甲6発明において、上記相違点4に係る本件発明1の構成に至ることも想到容易である旨を主張している(申立書第53頁下から10行−第56頁下から6行のうち、申立人が示す「相違点7」及び「相違点8」に関する主張。)。
しかしながら、上記(ア)のとおり、甲6発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることが想到容易でないから、上記相違点3に係る「導光部材」との関係において「ケース」の細部構造を特定する、上記相違点4に係る本件発明1に至ることは、想到容易でない。
したがって、上記相違点4が想到容易である旨をいう申立人の主張は、採用することができず、上記相違点4の容易想到性について、上記イ(イ)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)に示したとおり、本件発明1は、甲6発明、甲1ないし甲5に記載される事項及び甲7ないし甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2における付加的構成について検討するまでもなく、本件発明2は、甲6発明、甲1ないし甲5に記載される事項及び甲7ないし甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 甲7を主引例とした進歩性
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲7発明とを対比する。
甲7発明における「手洗器用自動水栓」は、本件発明1における「水回り機器」に相当する。
甲7発明において、「手洗器用自動水栓」が「電池の寿命表示ランプ24」を内蔵する構成は、本件発明1において、「水回り機器」が「発光装置」を備える構成に相当する。
甲7発明において、「電池の寿命表示ランプ24」が「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材の裏側に配置されて」いる構成は、本件発明1において、「発光装置」が「ケース」を有する構成に相当する。
甲7発明において、「センサーランプ23」を有する「センサー22」により「センサー22の前に手が差し伸べられると、その検知」を行う構成は、「センサーランプ23」が投光した光の反射光を「センサー22」が受光することで検知を行う光電センサ型のものを用いることが技術常識であることをふまえると、本件発明1において、「投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え」る構成に相当する。
甲7発明において、「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材」は、「裏側」に「センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24」が配置されるとともに、「センサー22、センサーランプ23、電池の寿命表示ランプ24」が用いる光は透過させることが技術常識より明らかであるから、「センサー22、センサーランプ23」等を収容するケースの一部をなす、透光性の部材と言うことができ、本件発明1において、「ケース」が「前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体」を有する構成とは、「ケース」が「光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材」を有する構成という点で、共通する。
甲7発明において、「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材」の「裏側」に設けられた「センサー22、センサーランプ23」が、「前に手が差し伸べられ」ると「検知信号」を伝える構成と、本件発明1において、「前記光電センサは、前記ケース本体を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成とは、「前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する」構成という点で、共通する。

整理すると、本件発明1と甲7発明とは、以下の点で一致する。
「発光装置を備える水回り機器であって、
前記発光装置は、
ケースを備え、
投光部が投光した検知光の反射光を受光部が受光することで被検知物を検知可能な光電センサを備え、
前記ケースは、
前記光電センサを収容し、透光性素材を用いて構成されるケース部材を有し、
前記光電センサは、前記ケース部材を透過する検知光を用いて前記被検知物を検知する水回り機器。」

そして、本件発明1と甲7発明とは、次の点で相違する。
<相違点5>
本件発明1においては、「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」が、「前記出射面から出射する光が透過可能なケース」に「収容」されているとともに、「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を備えることが特定されているのに対し、
甲7発明においては、「導光部材」が「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材の裏側」に設けられておらず、「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」も備えられていない点。

<相違点6>
「ケース」の細部構成及び「導光部材」との関係に関し、
本件発明1においては、「前記ケースは、前記導光部材及び前記光電センサを収容し、前記出射面から出射する光を透過可能であり、単色の透光性素材を用いて構成されるケース本体と、前記ケース本体の内部空間を封止する封止部材とを有」すると特定されているのに対し、
甲7発明においては、そのように特定されていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点5について
上記相違点5について判断する。
甲7発明において、「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材の裏側」に、「入射面から入射した光を内部で導光させ、出射面から出射させることが可能な導光部材」を設ける動機付けはなく、「導光部材」とともに「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」を設ける動機付けもない。
甲1ないし甲6、甲8及び甲9には、上記第3の3(1)ないし(6)、(8)、(9)に摘記した事項が記載されているが、甲7発明における「電池の寿命表示ランプ24」に関して、上記相違点5に係る本件発明1の「導光部材」及び「反射体」を追加することが、記載あるいは示唆されているものではない。
したがって、甲7発明において、上記相違点5に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(イ)相違点6について
上記相違点6について判断する。
上記(ア)において上記相違点5に関して判断したとおり、甲7発明において、相違点5に係る「導光部材」及び「反射対」を追加する動機付けはないから、「導光部材」との関係において、「下カバー21」及び「断面図でみて下カバー21の開口部に配置された板状の部材」の構成を変更する動機付けもない。
そしてその点は、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項を考慮しても、変わるものではない。
したがって、甲7発明において、上記相違点6に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。

(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲7発明において、上記相違点5及び相違点6に係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではないから、本件発明1は、甲7発明、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)相違点5について
申立人は申立書において、上記相違点5に関し、本件発明1と甲6発明との相違点3と同様に、甲8または甲9に記載される事項に基づいて想到容易である旨を主張している(申立書第58頁第8行−第59頁下から2行のうち、申立人が示す「相違点11」「相違点12」及び「相違点13」に関する主張。)。
しかしながら、本件発明1と甲6発明との上記相違点3に関する申立人の主張について、上記2(1)ウ(ア)に指摘したと同様に、本件発明1と甲7発明との相違点5に関する申立人の主張も、採用することができない。
そして、申立人による主張を考慮しても、上記相違点5の容易想到性について、上記イ(ア)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(イ)相違点6について
申立人は申立書において、甲7発明において、上記相違点6に係る本件発明1の構成に至ることも想到容易である旨を主張している(申立書第58頁第8行−第59頁下から2行のうち、申立人が示す「相違点14」及び「相違点15」に関する主張。)。
しかしながら、上記(ア)のとおり、甲7発明において上記相違点5に係る本件発明1の構成に至ることが想到容易でないから、上記相違点5に係る「導光部材」との関係において「ケース」の細部構造を特定する、上記相違点6に係る本件発明1に至ることは、想到容易でない。
したがって、上記相違点6が想到容易である旨をいう申立人の主張は、採用することができず、上記相違点6の容易想到性について、上記イ(イ)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)に示したとおり、本件発明1は、甲7発明、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2における付加的構成について検討するまでもなく、本件発明2は、甲7発明、甲1ないし甲6、甲8及び甲9に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

明確性
(1)申立人の主張
申立人は申立書において、本件発明1及び2が有する「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」
に関し、ほとんどの物質は光を全て吸収することはなく、程度の差はあっても光を反射する性質を有しており、「導光部材」に接触する支持部材についても同様であるところ、本件発明1及び2においては「反射体」の具体的な反射率等が特定されていないから、従来技術において「導光部材」に隣接して存在する部材との関係で、どの程度光を反射するものであるか不明である旨を主張し、本件発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしていない旨を申し立てている(申立書第60頁第16行−第61頁第13行)。

(2)明確性要件に違反するか否かの判断
ア 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から、判断されるべきものである。
上記の観点に基づいて、以下、判断する。

イ 本件明細書における記載
「反射体」に関し、本件明細書には、次の記載がある。
・段落【0050】
「本実施形態の発光装置10では、導光部材48とは別体に設けられ、導光部材48の側面48mから出射した光Lcを導光部材48の内部に向けて反射可能な反射体68を備える。」
・段落【0051】
「反射体68が一部に設けられるケース50は、この透光層70とは反射率が異なる素材を用いて構成される。本実施形態のケース50は、空気層より高い反射率の素材となるアクリル樹脂を用いて構成される。この反射率の違いに起因して、導光部材48から出射した光の一部を導光部材48の内部に向けて反射可能となる。」
・段落【0057】
「発光装置10は、導光部材48の側面48mから出射する光を導光部材48の内部に向けて反射させる反射体68を備える。よって、導光部材48の出射面48b以外の箇所から出射する光源光の一部を導光部材48の内部に戻すことで、出射面48bから出射する光源光の光量を増大させることができ、導光部材48の発光効率を高められる。これに伴い、導光部材48の発光効率の低下を抑制しつつ、導光部材48を大型化できる。」
・段落【0059】
「また、導光部材48の反射面48eまで伝搬した光源光は反射面48eにより出射面48bに向けて反射するため、その反射面48eから導光部材48の外部に漏れ難い。一方、導光部材48の側面48mは、通常、そこに伝搬した光を反射させるための部位がないため、そこから外部に光源光が漏れ易い。本実施形態では、このように光源光が漏れ易い箇所から出射する光源光の一部を導光部材48の内部に戻せるため、より効果的に導光部材48の発光効率を高められる。」

ウ 判断
上記明細書における説明をふまえると、本件発明1及び2における「前記導光部材の前記出射面以外の表面から出射する光を前記導光部材の内部に向けて反射可能な反射体」とは、導光部材が導光のために表面に備える「反射面」とは区別され、導光部材の「出射面以外の表面から出射する光」を対象として、当該「出射する光」を「導光部材の内部に向けて反射可能」に配置された部材であり、かつ、導光部材の発光効率を有意に高められる程度の反射特性を備える部材であることが理解される。
そして、本件発明1及び2に係る「反射体」は、その構成及び機能について上記のとおりに理解されるから、明確であり、具体的な反射率が数値で特定されていないからといって、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確なものではない。

また、本件発明1及び2におけるその余の構成についても、第三者に不測の不利益を生じさせる程に、発明が不明確となる点はない。

したがって、本件発明1及び2は、申立人が申立てる点で明確性要件に違反するものではなく、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしている。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び提出された証拠によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-10-28 
出願番号 P2017-151098
審決分類 P 1 652・ 537- Y (E03C)
P 1 652・ 121- Y (E03C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 有家 秀郎
佐藤 美紗子
登録日 2022-01-14 
登録番号 7009108
権利者 株式会社LIXIL
発明の名称 水回り機器  
代理人 森下 賢樹  

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