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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61N 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61N |
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管理番号 | 1392432 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-17 |
確定日 | 2022-12-20 |
事件の表示 | 特願2016−98281号「磁力伝播振動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017−192688号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年4月21日の出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 令和 元年10月 4日付け:拒絶理由通知書 令和 元年11月28日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 2年 4月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 2年 7月20日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 3年 7月28日付け:拒絶理由通知書 令和 3年10月 5日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 4年 2月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 6月17日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1〜3に係る発明は、令和4年6月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「N極、S極の交互磁場を創出するために複数の永久磁石を備えた非磁性回転板と、当該非磁性回転板の動力とから構成し、動力は回転を発生させるものとし、前記非磁性回転板中の均等放射角上に永久磁石を固着し、固着した永久磁石の直上かつ直角位置に一対の強電磁誘導棒を付設し、前記非磁性回転板を周回させることで固着した永久磁石と強電磁誘導棒との間に間欠的に吸引力を生じせしめ、前記強電磁誘導棒を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を強電磁誘導棒の突端部に伝導させ、一端が強電磁誘導棒に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の金属製ワイヤーからなる振動伝播路の接点を介して患部に接点を接触させた状態で人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進するとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させて局部マッサージ効果を促すことを特徴とする磁力伝播振動装置。」 第3 拒絶の理由 令和4年2月9日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 理由1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2.(進歩性)この出願の請求項1〜3に係る発明は、引用文献1又は2に記載された発明と引用文献3及び4に記載された周知技術とに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1: 特開2014−117697号公報 引用文献2:国際公開第2015/186176号 引用文献3:特開2016−29998号公報 引用文献4:実願平1−33272号(実開平2−126656号)のマイクロフィルム 第4 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について ア 本願発明は「固着した永久磁石の直上かつ直角位置に一対の強電磁誘導棒を付設し、前記非磁性回転板を周回させることで固着した永久磁石と強電磁誘導棒との間に間欠的に吸引力を生じせしめ、前記強電磁誘導棒を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を強電磁誘導棒の突端部に伝導させ、一端が強電磁誘導棒に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の金属製ワイヤーからなる振動伝播路の接点を介して患部に接点を接触させた状態で人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進するとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させて局部マッサージ効果を促す」という特定事項を含むものである。 そして、本願の発明の詳細な説明の段落【0017】には、本願発明の効果として、「本発明の磁力伝播振動装置は、磁力線の放射距離が延びる。このため、人体内部の頸動脈や大動脈等の循環系の経路に効果的に磁力線が浸透到達し、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼすことにより、血液等のイオン化を促進するとともに磁石のS極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播して局部マッサージ効果を促し、血液等の流れを良くし、例えば、肩こり等の筋肉の凝りをほぐすといった磁気治療効果を一層向上せしめる。」ことが記載されている。 イ しかしながら、上記本願発明の「人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進する」点について、本願の発明の詳細な説明には、段落【0024】に「固着した永久磁石1aの直上かつ直角に位置するように一対の強電磁誘導体(金属棒)4が延出され、回転板1から発生する交番磁界及び波動(振動)を対象物(例えば人体)に対して直接伝達できることもできるようにされている。図2(B)では使用者の血管やリンパ管等の循環系の経路に対して一対の導線である金属製ワイヤー7を介して患部に接点8を接触させた状態で伝達する例を模式的に記している。」と記載されているものの、金属製ワイヤーの材質(透磁率μ)、太さ(断面積S)及び長さ(l)等の記載はない。一般に、磁気回路を通る磁束の大きさは、透磁率と磁路の断面積に比例し、磁路の長さに反比例することが技術常識であるところ、図2及び図3から看取できるように、一端が電磁誘導棒に連結された金属製ワイヤーは細径であって断面積が小さく、極めて微弱な磁束しか導通させることはできないことは明らかであり、さらに、接点8の位置も「患部」がどの位置であって、「頸動脈や大動脈等」に対してどのような位置にそれぞれ配置するのか不明であり、いかに「人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進する」ほどの磁力線を浸透到達させるのか不明である。 さらに、上記人体に作用する磁力の大きさについても、段落【0020】に「永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面200ミリテスラ(mT)以上の永久磁石を使用するのが好ましい。」とは記載されいるものの、金属製ワイヤーを介して人体に作用する磁力の大きさについては何ら記載がなく、磁力の大きさと治療効果との関係も不明であるから、「人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路」にどの程度の磁力線を浸透到達させ、「血液等のイオン化を促進する」のかも不明である。 ウ さらに、上記本願発明の「振動(脈動)を伝播させて局部マッサージ効果を促す」点についても、本願の発明の詳細な説明には、段落【0024】に「固着した永久磁石1aの直上かつ直角に位置するように一対の強電磁誘導体(金属棒)4が延出され、」とは記載されているものの、一対の強電磁誘導棒をどのように固定し、強電磁誘導棒にどのように金属製ワイヤーを連結して振動を伝播するのかの記載はなく、また、一対の金属製ワイヤー自体についても、その太さや剛性、張力等の付設の態様について何ら記載がなく、人体に局部マッサージ効果を促すほどの振動(脈動)を、どのように伝播させるかの不明である。 エ これに対し、当審では令和4年2月9日付けで拒絶理由を通知し、「血液等のイオン化を促進するとともに磁石のS極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播して局部マッサージ効果を促」すことについて、(1)磁力の大きさの実験データ及び実験方法の提示、(2)原理の説明、(3)願書に最初に添付した明細書の段落【0027】の「例えば、100mの距離であっても磁力振動を伝搬することが可能であることがわかった。」との記載に関する実験データ及び実験方法の提示を求めたが、請求人は、令和4年6月15日付けの意見書の「(3)引用文献との対比」において、「『磁力』が作用することは確認していません。」とした上で、上記段落【0027】の記載を削除した。 さらに、請求人は、「血液等のイオン化を促進するとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させて局部マッサージ効果を促す」ために必要な磁力の大きさの数値を提示するデータとして、第1号証を添付します。また、その原理を説明するために、第2号証〜第5号証の文献を添付します。」と主張するが、第1号証は、ピップ株式会社のウエブページ「ジキラボ」に掲載された調査結果であって、肩こり周囲部に永久磁石6粒を2日間貼付する試験を行った結果、毛細血管に変化がみられたというものであり、金属製ワイヤーからなる振動伝搬路を介して磁力線を浸透到達させるものではないから、本願発明の磁力の大きさとは何ら関係がないものである。 また、上記第1号証では、永久磁石として「80mT φ5.2mm×2.5mm 6粒」を、肩こり周囲部に貼付することが記載されており、80mT×6粒であるから約480mTの強力な磁石を直接貼付するものである。これに対し、本願発明は、段落【0020】に「表面200ミリテスラ(mT)以上の永久磁石を使用するのが好ましい。」と記載され、第1号証記載のものよりも弱い磁力の永久磁石を用いてもよいことが記載され、さらにその磁力線を、永久磁石の直上に配置した強電磁誘導棒、さらには金属製ワイヤーを介して浸透到達させるのであるから、本願発明の人体に作用する磁力は、第1号証における磁力に比べて極めて小さくなるものと解され、本願発明が第1号証と同様の効果を奏するものとは理解できない。 さらに、上記第2号証には、磁気の生体作用として「磁場が直接血流に作用するのではなく、まず、渦電流によって皮膚受容器が興奮し、次に、血管運動中枢機構により一時的に血管収縮が生じて血流変化が引き起こされる」こと等が記載され、上記第3号証には「赤血球が常磁性相互作用により牽引される度合」等が記載され、上記第4号証には「ヒトの頭の表面にドーナツ状のコイルを置き、このコイルに大電流を瞬間的に流しパルス磁場をつくることにより脳を刺激する」こと等が記載され、上記第5号証には「生物細胞への磁気効果などにも高勾配磁場を適用すべきこと」等が記載されいるものの、上記第2〜5号証は、いずれも磁場が人体に与える影響を説明するものであって、本願発明の「人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進する」ための磁力線を、永久磁石の直上に配置した強電磁誘導棒、さらには金属製ワイヤーを介して浸透到達させる原理を説明するものではない。 オ したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明の「固着した永久磁石の直上かつ直角位置に一対の強電磁誘導棒を付設し、前記非磁性回転板を周回させることで固着した永久磁石と強電磁誘導棒との間に間欠的に吸引力を生じせしめ、前記強電磁誘導棒を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を強電磁誘導棒の突端部に伝導させ、一端が強電磁誘導棒に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の金属製ワイヤーからなる振動伝播路の接点を介して患部に接点を接触させた状態で人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路に磁力線を浸透到達させ、血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進するとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させて局部マッサージ効果を促す」という特定事項について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 第5 特許法第29条第2項(進歩性)について 上記第4にて検討したとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないところ、本願発明を発明の詳細な説明と図面に沿って理解して、以下検討する。 5−1 引用文献の記載事項及び引用発明等 (1)引用文献2について ア 記載事項 上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。 「[請求項1] 磁石の特性であるN極とS極の磁場を交互に反復して発生させ、水に対して、N、Sの交番磁界を付与すると共に、曝気することを特徴とする磁化水の製造方法。 [請求項2] 水にN、Sの交番磁界を創出するために複数の永久磁石からなる電磁誘導体を備えた回転体と、当該回転体を回動するモータとから構成したことを特徴とする請求項1記載の磁化水製造装置。 [請求項3] 複数の永久磁石をN極、S極が同位相又は交互位相になるように平盤状に配置してなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁化水製造装置。」 「[0015] 本発明では、強力な磁力を有する永久磁石を配置した平盤状回転体を高速回転させることによって、飲水内(例えば、水道水)にN、Sの交番磁界を造り出し付与することができる。 [0016] 永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面2000ガウス程度を基準に永久磁石を使用するのが好ましい。永久磁石は数100rpm以上で回転させる。 [0017] 図1は本発明に係る磁化水製造装置の一実施例を示す斜視図、図2は回転体内の永久磁石の配置例を示す(A)は平面図、(B)は側面図である。 [0018] 本発明の化水製造装置は、平盤状の回転体1と、この回転体1に回転軸2aを介して連結されたモータ2とから成り、回転体1の内部には、複数の永久磁石1aを任意の間隔をおいて固定されている。そして、この回転体1の上下を挟むように一対の電磁誘導体(金属棒)4が延出され、回転体1から発生する交番磁界及び波動(振動)を対象物(例えば貯水)に対して伝達できるようにされている。図2(B)では一対の金属製導電帯8で周囲に挟持された水道管9に導線7を介して伝達する例を記している。 [0019] 永久磁石1aは回転体1の円周に沿って等間隔に配置する。磁石1aは、それぞれN極とS極とが交互に位置するように配置しても良いし、同極同士が隣接するように配置しても良い。配置する個数も任意である。回転体1は、モータ2に連結された回転軸2aにより高速回転する。尚、本実施例においてモータ2の電源は商用電源3としたが、太陽光、水力、風力等の自然界のエネルギーを用いて電源とすることが有益なことは言うまでもない。 [0020] 図3は、本装置10をコンパクト化したもので、パンチングメタル板で作製した筒本体5b内にモータ2と回転体1を収納し、上蓋5aを被せた本体カバー5を備え、コ字型架台6に傾動自在に取り付けた磁化水製造装置10である。そして、図4に示すように、この磁化水製造装置10の一対の一対の電磁誘導体(金属棒)4から一対の金属製導電帯8で周囲に挟持された水道管9に導線7を介して伝達させて交番磁界及び波動付与水を得る。 [0021] すなわち、本発明に係る磁化水製造装置10は、水道管や家畜用の供給水管の通水管の近傍に配設し、通過する水に交番磁界を付与する。」 引用文献2には次の図が示されている。 [図2] [図4] イ 認定事項 (ア)回転体1が磁性体である場合、永久磁石1aからの磁力線の大部分が回転体1内を通り、電磁誘導体4に至らないことは技術常識からみて明らかであるから、回転体1は非磁性体であると認められる。 そして、請求項3の「複数の永久磁石をN極、S極が・・交互位相になるように平盤状に配置してなる」なる記載、段落[0018]の「平盤状の回転体1」なる記載及び段落[0019]の「永久磁石1aは回転体1の円周に沿って等間隔に配置する。磁石1aは、それぞれN極とS極とが交互に位置するように配置しても良い」なる記載から、引用文献1記載の磁化水製造装置10が、N極、S極の交互磁場を創出するために複数の永久磁石1aを備えた非磁性体の平盤状の回転体1を備えるものと認められる。 (イ)段落[0018]の「本発明の化水製造装置は、平盤状の回転体1と、この回転体1に回転軸2aを介して連結されたモータ2とから成り、」なる記載、段落[0019]の「回転体1は、モータ2に連結された回転軸2aにより高速回転する。」なる記載及び上記(ア)も踏まえると、引用文献1記載の磁化水製造装置10が、非磁性体の平盤状の回転体1と、非磁性体の平盤状の回転体1のモータ2とから構成し、モータ2は回転を発生させるものと認められる。 (ウ)図2及び段落[0019]の「永久磁石1aは回転体1の円周に沿って等間隔に配置する。」なる記載から、引用文献1記載の磁化水製造装置10は、非磁性体の平盤状の回転体1中の均等放射角上に永久磁石1aを固着していると認められる。 (エ)図2(A)の平面図において、直角位置に一対の電磁誘導体(金属棒)4が看取できること及び段落[0018]の「この回転体1の上下を挟むように一対の電磁誘導体(金属棒)4が延出され、」なる記載、さらに上記(ウ)も踏まえると、引用文献1記載の磁化水製造装置10は、固着した永久磁石1aの直上かつ直角位置に一対の電磁誘導体(金属棒)4を付設していると認められる。 (オ)段落[0018]の「この回転体1の上下を挟むように一対の電磁誘導体(金属棒)4が延出され、回転体1から発生する交番磁界及び波動(振動)を対象物(例えば貯水)に対して伝達できるようにされている。」なる記載及び一般に、延出された金属棒の一端に周期的な力を加えた場合に、撓みによる振動が生じることは技術常識であること、さらに上記(イ)も踏まえると、引用文献1記載の磁化水製造装置10は、非磁性体の平盤状の回転体1を周回させることで固着した永久磁石1aと電磁誘導体(金属棒)4との間に吸引力を生じせしめ、電磁誘導体(金属棒)4を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を電磁誘導体(金属棒)4の突端部に伝導させるものと認められる。 (カ)段落[0018]の「図2(B)では一対の金属製導電帯8で周囲に挟持された水道管9に導線7を介して伝達する例を記している。」なる記載、段落[0020]の「図4に示すように、この磁化水製造装置10の一対の一対の電磁誘導体(金属棒)4から一対の金属製導電帯8で周囲に挟持された水道管9に導線7を介して伝達させて交番磁界及び波動付与水を得る。」なる記載、図2(B)及び図4から、引用文献1記載の磁化水製造装置10が、一端が電磁誘導体(金属棒)4に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の導線7からなる振動伝播路の金属性導電帯8を介して水道管9に金属性導電帯8を接触させた状態で水道管内部の水の経路に磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する波動(振動)を伝播させるものと認められる。 ウ 引用発明 上記アの記載事項及びイの認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「N極、S極の交互磁場を創出するために複数の永久磁石1aを備えた非磁性体の平盤状の回転体1と、当該非磁性体の平盤状の回転体1のモータ2とから構成し、モータ2は回転を発生させるものとし、前記非磁性体の平盤状の回転体1中の均等放射角上に永久磁石1aを固着し、固着した永久磁石1aの直上かつ直角位置に一対の電磁誘導体(金属棒)4を付設し、前記非磁性体の平盤状の回転体1を周回させることで固着した永久磁石1aと電磁誘導体(金属棒)4との間に間欠的に吸引力を生じせしめ、前記電磁誘導体(金属棒)4を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を電磁誘導体(金属棒)4の突端部に伝導させ、一端が電磁誘導体(金属棒)4に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の導線7からなる振動伝播路の金属性導電帯8を介して水道管9に金属性導電帯8を接触させた状態で水道管9内部の水の経路に磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる磁化水製造装置10。」 (2)引用文献3について ア 記載事項 上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、回転磁界を利用して治療効果を与える磁気治療装置に関するものである。 「【0021】 磁気治療器10(=10−1,10−2)は、略円柱状の回転磁界発生部20と、この回転磁界発生部20の側面に突設された略角柱状の電源部30(第1磁気治療器10−1側では第1電源部、第2磁気治療器10−2側では第2電源部)と、により構成されている。」 「【0024】 回転円板24上には、回転磁界H(=H1,H2)を発生させる複数(例えば、4つ)の永久磁石25(=25−1〜25−4)が同心円状に配置されている。」 「 【0026】 同心円状に配置された4つの永久磁石25(=25−1〜25−4)の極性は、N極とS極が交互に配置されている。」 「【0032】 第1磁気治療器10−1側の回転円板24が回転すると、図3に示すように、その回転円板24上の4つの永久磁石25−1〜25−4のN極側からS極側に向かって磁束φが発生する。この磁束φにより、回転周波数f1(例えば、110Hz位)で回転する正極及び負極対称の回転磁界H1が、患部50に対して略垂直方向に照射される。これにより、患部50内の血管中の血液(即ち、導電性流体)に起電力が発生して、その血管中に誘導電流iが流れる。」 「【0040】 (2) 磁気治療装置1を頭部以外の他の患部50(例えば、首、肩、腰、足等)に装着した場合、磁気唸りにより、肩こりや腰痛等の治療効果が高い。」 「【0044】 (6) 各磁気治療器10内には、電源部30がそれぞれ設けられているので、各磁気治療器10を単独に使用して、患部50の磁気治療を行うことも可能である。」 引用文献3には次の図が示されている。 【図1】 【図3】 イ 認定事項 (ア)引用文献3記載の「回転磁界発生部20」は、図1から永久磁石25が配置された回転円板24を含むものであり、さらに、段落【0026】に「同心円状に配置された4つの永久磁石25(=25−1〜25−4)の極性は、N極とS極が交互に配置されている。」と記載されえているから、N極、S極を回転させるものと認められる。 (イ)段落【0032】の「回転磁界H1が、患部50に対して略垂直方向に照射される。これにより、患部50内の血管中の血液(即ち、導電性流体)に起電力が発生して、その血管中に誘導電流iが流れる。」なる記載から、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させるものと認められる。 ウ 引用文献3に記載された技術的事項 上記アの記載事項及びイの認定事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁気治療装置。」 (3)引用文献4について ア 記載事項 上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)第1ページ第17〜19行 「〔産業上の利用分野〕 本考案は美顔器、眼精疲労回復器などとして用いる磁気マッサージ器に関するものである。」 (イ)第3ページ第7〜12行 「4はモータ1の回転軸1aに直結された回転円盤で、ケース2の皮膚接触部2aに近接して設けられ、その上面にN極及びS極を交互になるようにして、1360ガウス(φ12×4)の6個のコイン状のマグネット5が固定されており、更に2個の偏心用ウエイト6が固定されている。」 (ウ)第3ページ第16〜第4ページ第2行 「モータ1が回転するとマグネット5が回転して交番磁束と渦電流を起し、その渦電流が血液中の(−)イオンに刺激を与え、血行を良くする。と同時にケース2が振動するため、その振動効果と相俟って皮膚の表面の血液が順調になり、新陳代謝が活発になって、染み、しわが少なくなり、艶が出て色白になる効果がある。」 (エ)第4ページ第10〜11行 「また患部に当てることにより疲労が回復する効果がある。」 引用文献4には次の図が示されている。 (オ)第1図 (カ)第2図 イ 認定事項 (ア)上記適示ア(イ)の「4はモータ1の回転軸1aに直結された回転円盤で、ケース2の皮膚接触部2aに近接して設けられ、その上面にN極及びS極を交互になるようにして」なる記載から、引用文献4記載のものは、N極、S極を回転させるものと認められる。 (イ)上記適示ア(ウ)の「モータ1が回転するとマグネット5が回転して交番磁束と渦電流を起し、その渦電流が血液中の(−)イオンに刺激を与え、血行を良くする。」なる記載から、引用文献4記載のものは、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させるものと認められる。 ウ 引用文献4に記載された技術的事項 上記アの記載事項及びイの認定事項から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁気マッサージ器。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明の「永久磁石1a」は本願発明の「永久磁石」に相当し、以下同様に、「非磁性体の平盤状の回転体1」は「非磁性回転板」に、「モータ2」は「動力」に、それぞれ相当する。 2 引用発明の「電磁誘導体(金属棒)4」は、磁力伝播で受得する磁力線を突端部に伝導させるものであって金属棒であるから、本願発明の「強電磁誘導棒」に相当する。 3 引用発明の「導線7」は、磁力線を浸透到達させるものであるから、その材質が金属であること明らかである。また、本願の発明の詳細な説明の段落【0024】にも「一対の導線である金属製ワイヤー7」と記載されていることを踏まえると、引用発明の「導線7」は本願発明の「金属製ワイヤー」に相当する。 4 引用発明の「金属性導電体8」は、一対の導線7からなる振動伝搬路を水道管9に接続する部材といえるから、本願発明の「接点」に相当する。 5 引用発明の「水道管9」と本願発明の「患部」及び「人体」とは、いずれも、磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる対象であるから、「対象」という限りにおいて一致する。 6 引用発明の「磁化水製造装置10」は、磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させるものであるから、本願発明の「磁力伝播振動装置」に相当する。 以上によれば、本願発明と引用発明とは、 「N極、S極の交互磁場を創出するために複数の永久磁石を備えた非磁性回転板と、当該非磁性回転板の動力とから構成し、動力は回転を発生させるものとし、前記非磁性回転板中の均等放射角上に永久磁石を固着し、固着した永久磁石の直上かつ直角位置に一対の強電磁誘導棒を付設し、前記非磁性回転板を周回させることで固着した永久磁石と強電磁誘導棒との間に間欠的に吸引力を生じせしめ、前記強電磁誘導棒を振動させるとともに、磁力伝播で受得する磁力線を強電磁誘導棒の突端部に伝導させ、一端が強電磁誘導棒に連結されると共に、他端が開放された並行する一対の金属製ワイヤーからなる振動伝播路の接点を介して対象に接点を接触させた状態で対象内部に磁力線を浸透到達させ、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる磁力伝播振動装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる「対象」及びその作用効果について、本願発明は「患部」に接点を接触させた状態で「人体内部の頸動脈や大動脈等の循環器系の経路」に磁力線を浸透到達させ、「血管内を流れる血液、リンパ系を流れるリンパ液に対して磁気作用を及ぼして、血液等のイオン化を促進するとともに」、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させて「局部マッサージ効果を促す」のに対し、引用発明は「水道管9」に接点を接触させた状態で「水道管9内部の水の経路に磁力線を浸透到達させるとともに」、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 上記5−1(2)に示したとおり、引用文献3には「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁気治療装置。」という技術的事項が記載され、また、上記5−1(3)に示したとおり、引用文献4には「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁気マッサージ器。」という技術的事項が記載されていることから、「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁力伝搬装置。」は、本願出願前の周知技術である。 また、人体に振動を伝播させて局部マッサージ効果を促すことも、例えば、引用文献4の適示ア(ウ)に記載されるとおり、本願出願前の慣用技術である。 上記周知ないし慣用技術を踏まえると、引用発明の磁力線を浸透到達させるとともに、S極とN極が交番する際に発生する振動(脈動)を伝播させる対象を、同様に交互磁場と振動を適用する人体とすることで、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 また、本願発明の効果についても、上記のとおり「N極、S極を回転させることにより、人体内部の血液、すなわち導電性流体に交互磁場を伝達し、誘導電流を発生させる、磁力伝搬装置。」は、本願出願前の周知技術であって、上記誘導電流を発生させる際に、誘導起電力による血液等のイオン化が促進されることは明らかである。さらに、上記引用文献4の適示ア(ウ)には「モータ1が回転するとマグネット5が回転して交番磁束と渦電流を起し、その渦電流が血液中の(−)イオンに刺激を与え、血行を良くする。と同時にケース2が振動するため、その振動効果と相俟って皮膚の表面の血液が順調になり、」と記載されているから、本願発明の効果も、引用発明と周知ないし慣用技術とに基づいて、当業者が予測し得た程度のものである。 4 したがって、本願発明は引用発明と周知ないし慣用技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、引用発明と周知ないし慣用技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-10-04 |
結審通知日 | 2022-10-11 |
審決日 | 2022-10-27 |
出願番号 | P2016-098281 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(A61N)
P 1 8・ 121- WZ (A61N) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
佐々木 正章 |
特許庁審判官 |
村上 哲 佐々木 一浩 |
発明の名称 | 磁力伝播振動装置 |