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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
管理番号 1392514
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-16 
確定日 2022-11-10 
事件の表示 特願2019−548486「医療用機器コンテナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月21日国際公開、WO2021/009890〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)7月18日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略、以下のとおりである。
令和 2年 7月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 3年 1月 7日付け:拒絶査定
令和 3年 4月16日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 3年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月24日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 3月 3日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
令和 4年 4月21日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 令和4年4月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
上部に開口部を有するコンテナー本体内に医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダーを段積して内装可能であり、前記開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる医療用機器コンテナーの製造方法であって、
前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、
該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し、
前記シールを大気圧未満に減圧した空間内で行なうことによって、又は、前記コンテナー本体の側面部若しくは底面部に予め減圧用開口部を設けておき、前記シールをした後で前記減圧用開口部から前記医療用機器コンテナーの内部を減圧することによって、前記医療用機器コンテナーの内圧を、400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満にして、
前記ガス不透過性フィルムを、ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させることを特徴とする医療用機器コンテナーの製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年1月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は次のとおりである。
「【請求項1】上部に開口部を有するコンテナー本体内に医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダーを段積して内装可能であり、前記開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる医療用機器コンテナーの製造方法であって、前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し、前記シールを大気圧未満に減圧した空間内で行なうことによって、又は、前記コンテナー本体の側面部若しくは底面部に予め減圧用開口部を設けておき、前記シールをした後で前記減圧用開口部から前記医療用機器コンテナーの内部を減圧することによって、前記医療用機器コンテナーの内圧を、400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満にすることを特徴とする医療用機器コンテナーの製造方法。
【請求項2】 前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器及び/又はホルダーに当接させることを特徴とする請求項1に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項2は、請求項1の記載を引用して記載されたものであり、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項2を、独立形式に書き改めた上で、本件補正前の請求項2に記載された発明の「前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器及び/又はホルダーに当接させる」との記載における、「前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器・・・に当接させる」との選択肢、「前記ガス不透過性フィルムを、・・・ホルダーに当接させる」との選択肢、及び「前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器及び・・・ホルダーに当接させる」との選択肢のうち、「前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器・・・に当接させる」との選択肢を削除し、さらに、「前記ガス不透過性フィルムを、医療用機器及び・・・ホルダーに当接させる」との選択肢において「医療用機器」を「ホルダーに保持された」ものに限定するものである。そして、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
令和4年3月3日付け拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)の拒絶の理由1で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1−6は以下のとおりである。
引用文献1:特開平1−164368号公報
引用文献2:国際公開第2017/188427号
引用文献3:特表平4−500651号公報
引用文献4:特開平10−101134号公報
引用文献5:特開2001−301860号公報
引用文献6:特開平8−168526号公報

(3) 引用文献の記載事項及び引用発明等
ア 引用文献1について
(ア) 記載事項
上記引用文献1には、次の事項と図面が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。

a 第1ページ左欄第4行−右欄第8行「2.特許請求の範囲
(1)少なくとも一面に開口部を有すると共にガス・水蒸気難透過性材料からなる硬質の容器と、この容器内に脱酸素剤と共に収納された液体入り軟質樹脂製の医療器具と、ガス・水蒸気難透過性かつ可撓性の材料からなるとともに前記容器の開口部を封止し、かつ前記脱酸素剤により前記容器の内部が陰圧状態になったとき前記容器の底部方向に変形すると共に前記容器内が陰圧状態でないときには原形状態に復帰する蓋体とを備えたことを特徴とする医療器具収納体。
(2)前記蓋体は前記原形状態では実質的に平坦であり、前記変形状態では前記容器の底部方向にくぼんでなる特許請求の範囲第1項記載の医療器具収納体。
(3)前記医療器具は積み重ねた複数の血液バッグである特許請求の範囲第1項又は第2項記載の医療器具収納体。
(4)前記複数の血液バッグは、最上段の血液バッグの上端面が前記容器のほぼ開口部位置になるように収納されると共に前記蓋体が変形したとき当該蓋体により押圧され保持される特許請求の範囲第1項乃至第3項いずれか1つに記載の医療器具収納体。」

b 第2ページ右上欄第6−13行「本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、保存中に蓋体等にピンホールが生じてもこの状態を外部から容易に確認することができると共に医療器具を確実に保持することが可能となり、輸送中等のがたつきを防止して傷の発生を防止することのできる医療器具収納体を提供することにある。」

c 第2ページ右下欄第3−9行「第1図は本発明の一実施例に係る医療器具収納体の収納時の構成を示す斜視図、第2図は第1図の2−2線に沿う断面図である。図中、1は上面に開口部2を有し、この開口部2にフランジ部2aを設けた容器、3はこの容器1の開口部2を封止する蓋体、4は容器1内に収納した医療器具例えば連結チューブを備えた血液バッグである。」

d 第2ページ右下欄第20行−第3ページ左上欄第5行「蓋体3はガス・水蒸気難透過性かつ可撓性の透明な材料、例えば厚み130μmのポリエステル/塩化ビニリデンコートポリブロビレン/エバール/ナイロン/ポリエチレンの積層フィルムにより形成してあり、容器1のフランジ部2aに対して熱シールにより取付けられる。」

e 第3ページ左上欄第17−20行「吸水体6の上部には複数個例えば4個の血液バッグ4を平坦な状態で積み重ねてあり、最上段の血液バッグ4aの上端面が容器1のほぼ開口部2に位置し蓋体3と接触している。」

f 第3ページ右上欄第8行−左下欄第1行「さらに、包装体が硬質の容器1と可撓性の蓋体3から成るので、脱酸素剤5により容器1内の酸素が吸収されることにより容器1内が外気圧より低くなり陰圧状態となる。その結果、蓋体3が第3図に示すように容器1の底面方向に向かってくぼむ、したがって、このくぼみの程度により蓋体3あるいは容器1のピンホールの有無状態を確認することができる。
また、蓋体3がくぼむと同時に当該蓋体3が血液バッグ4を容器1の底部に押圧して、血液バッグ4をがたつかないように保持する。このため、輸送中等の際に血液バッグ4に傷がつくようなおそれがなくなる。」

g 第1図



h 第2図



i 第3図



(イ) 認定事項
a 第2ページ右下欄第3−9行(摘示(ア)c)、第2ページ右下欄第20行−第3ページ左上欄第5行(摘示(ア)d)、及び第3ページ左上欄第17−20行の記載(摘示(ア)e)、並びに第1−3図の図示内容から、上面に開口部2を有する容器1内に、複数の血液バッグ4を積み重ねて収納可能であり、前記開口部2がガス・水蒸気難透過性の蓋体3により熱シールされてなる医療器具収納体が認定できる。

b 第1ページ左下欄第5行−右下欄第8行(摘示(ア)a)、第2ページ右下欄第3−9行(摘示(ア)c)、第2ページ右下欄第20行−第3ページ左上欄第5行(摘示(ア)d)、第3ページ左上欄第17−20行(摘示(ア)e)、第3ページ右上欄第8行−左下欄第1行(摘示(ア)f)の記載から、医療器具収納体の製造方法が認定できる。

(ウ) 引用発明
上記(ア)の記載事項及び(イ)の認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「上面に開口部2を有する容器1内に、
複数の血液バッグ4を積み重ねて収納可能であり、
前記開口部2が、厚み130μmのポリエステル/塩化ビニリデンコートポリブロビレン/エバール/ナイロン/ポリエチレンの積層フィルムにより形成されているガス・水蒸気難透過性の蓋体3により熱シールされてなる医療器具収納体の製造方法であって、
脱酸素剤5により前記容器1内の酸素が吸収されることにより、前記容器1内が外気圧より低くなり陰圧状態となり、その結果、蓋体3がくぼむと同時に当該蓋体3が血液バッグ4を容器1の底部に押圧して、血液バッグ4をがたつかないように保持する、医療器具収納体の製造方法。」

イ 引用文献2について
(ア)記載事項
上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a 「[0011] [実施形態1]
図1〜図7は、本発明の医療用機器コンテナー1の実施形態1を示す。実施形態1に係る医療用機器コンテナー1は、図1〜図3及び例えば図7に示すように、上部が開口するコンテナー本体2と、コンテナー本体2に内装された医療用機器ホルダー4と、コンテナー本体2の上部の開口部をシールするガス不透過性フィルム3とを備える。」

b 「[0012] 図1及び図2に示すように、コンテナー本体2は、平面形状が概略矩形である籠(箱)形状のものであり、上部の開口部に設けられた環状かつ外側に延伸するように形成された環状フランジ部22と、環状フランジ部22より所定長底面側となる位置に環状に設けられた段差部23とを備える。なお、コンテナー本体2の平面形状は、図示するような概略矩形のほか、多角形、円形、楕円形であってもよい。また、コンテナー本体2は、合成樹脂、金属、これらの各種混合体で形成されている。」

c 「[0013] ガス不透過性フィルム3は、コンテナー本体2の環状フランジ部22に熱溶着等により剥離可能にシールされ、コンテナー本体2の上部の開口部を封止している。ガス不透過性フィルム3は、ガス、水蒸気、菌などを透過しないガス不透過性フィルムとコンテナー本体2に接する側に位置して積層された滅菌可能なフィルムからなることが好ましい。なお、滅菌可能なフィルムがコンテナー本体2の環状フランジ部22に熱溶着等により剥離可能にシールされ、更にコンテナー全体をガス不透過性フィルム3で覆い、バキュームすることにより、コンテナー本体2を包装し、開口部を封止することもできる。滅菌可能なフィルムは、ガス、水蒸気等の滅菌用の気体類は透過するが菌は不透過のものであり、例えば、高密度ポリエチレン又はその他のポリマーのフィラメントより構成されたものである。滅菌可能なフィルムとしては、デュポン社製のTyvek(登録商標)等が使用でき、ガス不透過性フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムなどが使用できる。」

d 「[0014] コンテナー本体2に内装される医療用機器ホルダー4は、コンテナー本体2の内部に単体で、あるいは図7に示すように複数が段積された状態で載置される。ホルダー4は、図3(A)〜(B)に示すように、板状の基板部41と、この基板部41より下方に突出する複数の筒状部42とを備える。なお、基板部41の形状は、図示するような概略矩形のほか、円形、楕円形、多角形であってもよい。また、筒状部42の設置数や隣接する筒状部42との間隔は、特に限定されるものではないが、隣接する各筒状部42と概ね等間隔となるように設置するのが好ましい。このようにすることで、筒状部42を多数設けることができるだけでなく、長尺の医療用機器を収納する場合、隣接する医療用機器との接触を防止することができる。筒状部42は、基板部41の側で開口する上端開口部44及び下方で開口する下端開口部43を有し、上端開口部44と下端開口部43は連通している。」

e 「[0015] 図4(A)、(B)に示すように、筒状部42は、所定長下端の内側面に環状凸部48が設けられている。例えば、医療用機器としてピストン61を筒状部42の内部に収納した際に、前記環状凸部48によって、ピストン61が通過できず、吊るされた状態で保持される。環状凸部48は、環状に連続するもののほか、非連続のものであってもよく、また、筒状部42の内側面が筒状部42の上又は下方向に行くに従って小径となるテーパ形状となっているものでもよい。更に、環状凸部48は、筒状部42の所定長下端(環状凸部48の下端部)の内径がホルダーの上端開口部よりも狭くなっているものであればよい。
図4(B)は、ピストン61を筒状部42の上端開口部から入れて、先端から1つ目のリブ611が環状凸部48を通過し、2つ目のリブ612が環状凸部48を通過出来ずに引っ掛かり、吊るされた状態で保持されている状態を示したものである。」

f 「[0016] 図3(A)〜(C)に示すように、ホルダー4は、その周縁部に基板部41より下方に突出するサイド支柱45を備え、更に、ホルダー4の中央部には、基板部41より下方に突出するセンター支柱46を備える。サイド支柱45及びセンター支柱46は、筒状部42より長尺となっており、筒状部42に収納された医療用機器(図示せず)がコンテナー本体2の底面や底面にたまった水分に、あるいはホルダー4が段積された状態では隣接するホルダー4に、触れることがないようになっている。」

g 「[0020] ホルダー4を段積するには、サイド支柱45の連結支柱部452の下端を、既に載置されているホルダー4のサイド支柱45の基端部にある連結穴47に収納する(センター支柱46についても連結穴47を設ける構造とした場合には同様に行う)。順次、これを繰り返すことにより、図7に示すように、段積された状態とすることができる。また、このような構成とすることで、ホルダー4のサイド支柱45及びセンター支柱46の下端面とコンテナー底部21あるいは連結穴47との接触面積を小さくすることができ、接触部分についても十分な滅菌処理が可能になる。更に、このようなホルダー4の構成とすることで、ホルダー4を段積した場合であっても、確実な滅菌処理が可能となり、一度に多くの医療用機器の滅菌処理を行うことができる。」

(イ)引用文献2に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「上部の開口部がガス不透過性フィルム3によりシールされるコンテナー本体2の内部に、段積して内装され、医療用機器を保持する、複数のホルダー4であって、前記複数のホルダー4のそれぞれを、板状の基板部41と、前記基板部41より下方に突出するサイド支柱45及びセンター支柱46と、基板部41より下方に突出する複数の筒状部42とを備えるように構成し、サイド支柱45及びセンター支柱46を、例えば、医療用機器としてピストン61を筒状部42の内部に収納した前記複数のホルダー4が前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体2の内部に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダー4に隣接するホルダー4に接触させない長尺としている、複数のホルダー4。」

ウ 引用文献3について
(ア)記載事項
上記引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a 第3ページ右下欄第20行−第4ページ左上欄第2行「この充填した容器および蓋を、容器の密閉表面をアンビル上に支えたまま、真空室内に運ぶ。次いで、真空室内の気体を排出する。この位置で、密閉ヘッドは、容器の上の、引き上げた位置にある。この工程で、容器内のヘッドスペースの気体圧が真空室内の気圧まで下がる。望ましい真空水準に達したら、密閉ヘッドを下降させ、蓋を容器に密閉する。」

b 第4ページ右下欄第15行−第5ページ左上欄第20行「次に、第7図に関して、アンビル30上に支えた充填容器および蓋を真空室38に移す。容器および蓋を最初に真空室に移した時は、密閉ヘッド40は、真空室内でアンビル30のすぐ上の引き上げた位置にある。この位置で、真空室88内の気体は多数の出口42a、bおよびcを通して排出される。排出力により、蓋26と容器本体l0の密閉表面22との間に開口部44が形成され、その結果、容器内ヘッドスペースの空気圧は真空室の空気圧まで下がる。室38内が望ましい真空水準に達し、気体が出口42a、bおよびcを通して排出されたら、密閉ヘッド40を下降させ、第8図に示す様に蓋26を容器本体10の密閉表面22に密閉する。この好ましい実施形態では、蓋を容器本体10の密閉表面22に熱密封できる方法を開示しているが、他の密封方法も使用できる。他の密封方法には、誘導密封、回転溶接、冷間密封、超音波密封あるいは縫合わせがある。密閉ヘッド40の縁部46が蓋26の外側縁部48に圧力をかけ、外側縁部48が容器本体10の密閉表面22に正確に一致させる(第8図参照)。この密閉作業の間、真空を維持する。第9図に示す様に、容器を真空室から取り出し、容器を大気圧に戻す。その結果、底部12の変形可能な挿入物14が上に向かって反転し、製品34を矢印Bの方向に押し付け、ヘッドスペースおよび空間50を充填する。容器内の湿った、または乾燥した製品は十分に流動性があり、空間に移動するものでなければならない。容器を大気圧に戻した時に製品は空間50に押し込まれるので、消費者に対する製品の商品価値が改良される。その結果、その様な変形可能な容器の充填および密閉の方法により、充填容積が初期の容器容積よりも小さくなり、製品を密閉区域から隔離し、密閉区域の汚染を防ぐ。この方法により、製品の移動を起こすことがある容器内の空間も無くなる。」

(イ)引用文献3に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「真空を維持した真空室で蓋26を容器本体10の密封表面22に熱密封して、容器内ヘッドスペースの圧力を真空室の空気圧とすること。」

エ 引用文献4について
(ア)記載事項
上記引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a 「【請求項2】 容器本体の底部に、上げ底となった第1状態と下げ底となった第2状態とに変換可能であって、かつ、外力を加えない限り第1状態と第2状態の一方の状態を維持する保形性を有する変形部を形成したことを特徴とする食品用包装容器。」

b 「【0031】また、減圧室の内部(雰囲気が大気圧よりも低い減圧状態)で中味の充填を行うとともにシール材3のヒートシールまで行い、減圧室から出して減圧状態を解除し、大気圧と包装容器1内の圧力との圧力差により底部を上側に凸の第1状態に戻すようにしてもよい。」

c 「【0038】また、請求項4に記載の食品包装方法によれば、容器における容器本体の底部を下げ底状態にするとともに、雰囲気を減圧状態にして食品を詰め、その後、減圧状態のまま容器本体の開口部にシート状シール材を被せて該シール材を容器本体の開口縁にヒートシールを行い、その後に雰囲気の減圧状態を解除して大気圧に戻し、内部圧力と大気圧との圧力差により容器本体の底部を上げ底状態に変化させるので、底部を戻す手間を省くことができる。」

(イ)引用文献4に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「雰囲気が大気圧よりも低い減圧状態の減圧室でシール材3を容器本体の開口部にヒートシールを行い、包装容器1内の圧力を減圧状態とすること。」

オ 引用文献5について
(ア)記載事項
上記引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a 「【0036】この包装容器入り卵を製造するには、まず殻を除去した卵、すなわち黄身4及び白身5を下パックの複数の凹部3Aにそれぞれ収容し、上パック2を下パック3に重ね合わせ、図1にて破線ハッチングで、図2にて太線でそれぞれ示すシール部1Aに沿ってシールする。」

b 「【0037】この時、収容作業、重合作業及びシール作業を真空雰囲気にて実施すれば、上下パック2、3の内部が真空になり、黄身4及び白身5の収容雰囲気が無酸素状態となるため、細菌等の増殖を抑止できる。この結果、上下パック2,3内に封入された卵を長期間にわたり、パック1の状態で保存可能となる。」

(イ)引用文献5に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「真空雰囲気にて、上パック2を下パック3に重ね合わせてシール部1Aに沿ってシールし、上下パック2、3の内部を真空とすること。」

カ 引用文献6について
(ア)記載事項
上記引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a 「【0016】図1は、本発明の密閉容器の実施例を示す断面側面図、図2は、図1に示す密閉容器の容器本体と蓋体の接合部を拡大して示す断面図である。本発明の密閉容器1は、腹膜透析における透析液交換装置に設置され、透析液バッグおよび排液バッグをそれぞれ加圧および減圧する加圧・減圧室として用いられるものであり、図1に示すように、ケーシング2と、容器本体3と、容器本体3に対し開閉可能な蓋体4と、容器本体3と蓋体4との接合部50に設置されたシール手段5と、蓋体4を閉じた状態に保持するロック手段6と、容器本体3の内部を減圧・加圧する減圧・加圧装置7とで構成されている。
【0017】箱状のケーシング2の内部には、例えばアルミニウム、アルミニウム系合金等の比較的比強度の大きい金属製板に塑性加工を施して形成された容器本体3が設置されている。図2に示すように、この容器本体3は、その上端縁部において、ビス21によりケーシング2に支持固定されている。容器本体3の内部には、透析液バッグ、排液バッグ等を収納する収納空間30が形成されている。この収納空間30は、減圧室または加圧室として機能する。」

b 「【0022】また、ケーシング2内には、減圧・加圧装置7が設置されている。この減圧・加圧装置7は、減圧ポンプ71と、加圧ポンプ72と、基端部が減圧ポンプ71に接続された送気管73と、基端部が加圧ポンプ72に接続された送気管74と、送気管73、74の途中にそれぞれ設置された電磁弁75、76とで構成されている。送気管73、74の先端は、それぞれ、容器本体3の壁部を貫通し、収納空間30に連通している。減圧ポンプ71および加圧ポンプ72としては、例えばロータリーポンプ等の真空ポンプが用いられる。
【0023】次に、減圧・加圧装置7の作動について説明する。蓋体4を閉じ、ロック手段6によりロックして、容器本体3を密閉する。この状態で、電磁弁75を開、電磁弁76を閉とし、減圧ポンプ71を作動すると、収納空間30内の空気が送気管73を介してケーシング2外へ排気され、収納空間30は減圧される。収納空間30が所定の圧力(負圧)に達したら、電磁弁75を閉じるとともに、減圧ポンプ71の作動を停止する。これにより、収納空間30の減圧状態が保持される。電磁弁75または76を開くと、外気が送気管73を介して収納空間30へ流入し、収納空間30は、大気圧に復帰する。」

(イ)引用文献6に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「送気管73の先端は容器本体3の壁部を貫通して容器本体3の内部に形成された収納空間30に連通しており、減圧ポンプ71を作動すると、収納空間30内の空気が送気管73を介してケーシング2外へ排気されて、収納空間30は減圧され、そして、収納空間30が所定の圧力(負圧)に達したら、電磁弁75を閉じるとともに、減圧ポンプ71の作動を停止することにより、収納空間30の減圧状態が保持されること。」

(4) 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「開口部2」は、その構造及び機能からみて、本件補正発明における「開口部」に相当し、以下同様に、「上面」は「上部」に、「容器1」は「コンテナー本体」に、「積み重ねて」は「段積して」に、「収納」は「内装」に、「医療器具収納体」は「医療用機器コンテナー」に、それぞれ相当する。
引用発明における「ガス・水蒸気難透過性の蓋体3」は、「厚み130μmのポリエステル/塩化ビニリデンコートポリブロビレン/エバール/ナイロン/ポリエチレンの積層フィルムにより形成されて」おり、ガス・水蒸気の透過性の抑制を目的に、塩化ビニリデンコートポリブロビレンやエバールといった、一般的にガス不透過性といわれる材料の層を含むフィルムであること、及び、本願明細書の段落[0021]においても「ガス不透過性フィルム3としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン又はこれらを積層したフィルムなどが使用できる。」と記載されていることから、本件補正発明における「ガス不透過性フィルム」に相当する。
引用発明における「容器1内が外気圧より低くなり陰圧状態とな」ることは、大気圧が1013ヘクトパスカルであることの技術常識を踏まえると、容器1の内圧を外気圧(1013ヘクトパスカル)未満とすることであるから、本件補正発明における「医療用機器コンテナーの内圧を」「1013ヘクトパスカル(hPa)未満に」することに相当する。
引用発明の「積み重ねて収納可能」な「複数の血液バッグ」と本件補正発明の「段積して内装可能」な「医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダー」は、いずれも、コンテナー本体内に、段積して内装されるものであるから、段積して内装可能な複数の医療用段積物である限りで一致する。
引用発明の「蓋体3がくぼむと同時に当該蓋体3が血液バッグ4を容器1の底部に押圧して、血液バッグ4をがたつかないように保持」することは、蓋体3が血液バッグ4に当接することであるから、引用発明の「蓋体3がくぼむと同時に当該蓋体3が血液バッグ4を容器1の底部に押圧して、血液バッグ4をがたつかないように保持」することと、本件補正発明の「前記ガス不透過性フィルムを、ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させること」は、いずれも、ガス不透過性フィルムを医療用段積物に当接させる限りで一致する。

以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、
「上部に開口部を有するコンテナー本体内に複数の医療用段積物を段積して内装可能であり、前記開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる医療用機器コンテナーの製造方法であって、
前記医療用機器コンテナーの内圧を1013ヘクトパスカル(hPa)未満にして、
前記ガス不透過性フィルムを、医療用段積物に当接させる、医療用機器コンテナーの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件補正発明では、複数の医療用段積物が「医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダー」であって、「前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し」たものであり、ガス不透過性フィルムを「ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させる」のに対して、引用発明では、複数の医療用段積物が複数の血液バッグであって、ガス不透過性フィルムに当接するのが血液バックである点。

<相違点2>
医療用機器コンテナーの内圧について、本件補正発明では「前記シールを大気圧未満に減圧した空間内で行なうことによって、又は、前記コンテナー本体の側面部若しくは底面部に予め減圧用開口部を設けておき、前記シールをした後で前記減圧用開口部から前記医療用機器コンテナーの内部を減圧することによって、前記医療用機器コンテナーの内圧を400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満に」するのに対し、引用発明では脱酸素剤5により容器1内の酸素を吸収することによって、前記容器の内圧を1013ヘクトパスカル(hPa)未満にする点。

(5) 判断
ア 相違点1について
本件補正発明と引用文献2に記載された技術的事項とを対比する。
引用文献2に記載された技術的事項の「上部の開口部」は、本件補正発明の「上部に開口部」に相当し、以下同様に、「ガス不透過性フィルム3」は「ガス不透過性フィルム」に、「上部の開口部がガス不透過性フィルム3によりシールされる」ことは「開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる」ことに、「コンテナー本体2」は「コンテナー本体」に、「医療用機器」は「医療用機器」に、「医療用機器を保持する、複数のホルダー4」は「医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダー」に、「コンテナー本体2の内部」は「コンテナー本体内」に、「段積して内装され」ることは「段積して内装可能で」あることに、「板状の基板部41」は「板状の基板部」に、「基板部より突出するサイド支柱45及びセンター支柱46」は「基板部より突出する支柱」に、「前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体の内部に段積された状態」は「前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態」に、「前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダー4に隣接するホルダー4に接触させない長尺としている」ことは「前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し」ていることにそれぞれ相当する。
してみると、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「上部に開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなるコンテナー本体内に段積して内装可能である、医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダーであって、前記複数のホルダーのそれぞれが、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成している、複数のホルダー。」

引用発明の「複数の血液バッグ4」と引用文献2に記載された技術的事項の「複数のホルダー」とは、共に、上部の開口部がガス不透過性フィルムによりシールされるコンテナー本体内に、段積して内装される複数の医療用段積物である。ここで、上部の開口部がガス不透過性フィルムによりシールされるコンテナー本体内に、段積して内装される複数の医療用段積物として、何を採用するかは当業者が適宜調整し得る事項であるところ、引用発明において引用文献2に記載された技術的事項を勘案し、複数の医療用段積物として、医療用機器を少なくとも1個保持する複数のホルダーであって、前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成したものを採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。そして、引用発明は蓋体3(ガス不透過性フィルム)を血液バッグ4(医療用段積物)に当接させるものであるから、複数の医療用段積物として、引用文献2に記載されたピストン61を筒状部42の内部に収納した複数のホルダーを引用発明に適用した際に、ガス不透過性フィルムが少なくともホルダーに当接するようになることは当業者にとって自明ないし容易である。

イ 相違点2について
例えば、上記「(3)ウ(イ)」に示したとおり、引用文献3に「真空を維持した真空室で蓋26を容器本体10の密封表面22に熱密封して、容器内ヘッドスペースの圧力を真空室の空気圧とすること。」が記載され、また、上記「(3)エ(イ)」に示したとおり、引用文献4に「雰囲気が大気圧よりも低い減圧状態の減圧室でシール材3を容器本体の開口部にヒートシールを行い、包装容器1内の圧力を減圧状態とすること。」が記載され、さらに、上記「(3)オ(イ)」に示したとおり、引用文献5に「真空雰囲気にて、上パック2を下パック3に重ね合わせてシール部1Aに沿ってシールし、上下パック2、3の内部を真空とすること。」が記載されているように、容器内の圧力を大気圧未満とするために、容器のシールを大気圧未満の空間で行うことは、従来周知の技術である。
したがって、引用発明の医療用コンテナーの内圧を1013ヘクトパスカル未満とするために、上記周知の技術を採用することは、当業者にとって容易である。
ところで、引用発明は容器内の圧力を外気圧未満とすることで、ガス不透過性フィルムにより容器内の収納物を確実に保持するものである(特に第3ページ右上欄第8−18行参照。)。そうすると、引用発明に上記周知の技術を適用する際に、容器内の圧力の下限をどの程度とするかは、収納物が破損しない範囲で収容物を確実に保持されるように、蓋体3と収納物の上面との間の距離、蓋体3の材料、収納物の強度や形状等に応じて適宜設定され得るものであるところ、医療用機器コンテナーの内圧を「400ヘクトパスカル(hPa)以上」とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項に過ぎない。

ウ 本件補正発明の効果は、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項、並びに、引用文献3−5に記載された周知技術から、当業者が予測し得た程度のものである。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び引用文献3−5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(6) 審判請求人の主張について
令和4年4月21日提出の意見書における審判請求人の主張について、以下検討する。

ア 審判請求人の主張
審判請求人は
「(3-3-1) ガス不透過性フィルムをホルダーに当接させた場合
a).医療用機器の構造に問題がある場合でも減圧包装が可能
医療用機器自体がガス不透過性フィルムによる押圧に耐えられない構造(減圧包装時に破損や変形を起こしてしまう)の場合や医療用機器自体に鋭利な部分がある場合、減圧包装時に医療用機器とガス不透過性フィルムが当接すると、医療用機器自体が破損するおそれ、又は、ガス不透過性フィルムが破損するおそれが生じてしまいます。そのため、フィルムを医療用機器には当接させずにホルダーのみに当接させることで、減圧包装及び内容物の固定が可能になります。
b).ガス不透過性フィルムに問題がある場合でも減圧包装が可能
ガス不透過性フィルムの清浄度が悪く医療用機器自体にガス不透過性フィルムを当接させたくない場合、又は、汚染防止の観点から医療用機器以外の他物品(ガス不透過性フィルム)との交差汚染を防止したい場合、ガス不透過性フィルムを医療用機器には当接させずにホルダーのみに当接させることで、医療用機器を汚染させずに減圧包装し、内容物の固定が可能になります。
c).ホルダーとコンテナーとを強固に固定
本願図2(B)のように、ホルダーのみにガス不透過性フィルムを当接させることで、ホルダーを強固に固定でき、コンテナー搬送中にコンテナー内でホルダーが動かないようにすることができます。コンテナー内でホルダーが動くと、コンテナー内壁面とホルダーが擦れ、微粒子や異物が発生し、コンテナー内部の清浄度が保てなくなるおそれがあります。そのため、ガス不透過性フィルムを医療用機器には当接させずにホルダーのみに当接させることで、コンテナー内の清浄度を維持しつつ、医療用機器を汚染させずに減圧包装し、ホルダーを固定することが可能になります。」(第2ページ第32行−第3ページ第3行)
と主張する。

イ 検討
引用発明も、容器内の減圧によりガス不透過性フィルムをくぼませて血液バッグに当接させることで、当該フィルムで血液バッグを押圧して、容器内で複数の血液バッグをがたつかないように確実に保持するものである(上記「(3)ア(ア)」の記載事項、及び上記「(3)ア(イ)」の認定事項を参照。)。また、一般にホルダーが内部に保持する機器の破損や汚染を防止するものであることも技術常識である。そうすると、上記「(5)ア」で説示したように複数の医療用段積物として引用発明の複数の血液バッグに換えて引用文献2に記載された複数のホルダー(特に、図4(B)を参照。)を適用した際にガス不透過性フィルムが少なくともホルダーに当接することになるのは、当業者にとって自明ないし容易であって、医療用機器の破損や汚染を防止しつつ、ホルダーを強固に固定するという効果も当業者が予測し得た程度のことである。
よって、審判請求人の主張を採用することはできない。

3 本件補正発明についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年4月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年1月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 令和4年3月3日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における拒絶の理由
令和4年3月3日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における拒絶の理由1は、次のとおりのものである。
本願の請求項1〜4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び、引用文献3−5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
引用文献1:特開平1−164368号公報
引用文献2:国際公開第2017/188427号
引用文献3:特表平4−500651号公報
引用文献4:特開平10−101134号公報
引用文献5:特開2001−301860号公報
引用文献6:特開平8−168526号公報

3 引用文献の記載事項及び引用発明等
令和4年3月3日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における拒絶の理由1で引用された引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(3)アに記載したとおりである。
当該拒絶の理由1で引用された引用文献2の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)イに記載したとおりである。
当該拒絶の理由1で引用された引用文献3の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)ウに記載したとおりである。
当該拒絶の理由1で引用された引用文献4の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)エに記載したとおりである。
該拒絶の理由1で引用された引用文献5の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)オに記載したとおりである。
該拒絶の理由1で引用された引用文献6の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)カに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「前記ガス不透過性フィルムを、ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させる」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び引用文献3−5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び引用文献3−5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-07 
結審通知日 2022-09-13 
審決日 2022-09-27 
出願番号 P2019-548486
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 宮部 愛子
井上 哲男
発明の名称 医療用機器コンテナーの製造方法  
代理人 戸塚 朋之  
代理人 平石 利子  

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