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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05D |
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管理番号 | 1392515 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-19 |
確定日 | 2022-12-08 |
事件の表示 | 特願2019−230823「無人航空機の操縦支援システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年7月1日出願公開、特開2021−99635〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和1年12月20日に出願された特願2019−230823であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和2年 6月11日付け:拒絶理由の通知 令和2年 8月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 8月24日付け:拒絶理由の通知 令和2年10月29日 :意見書の提出 令和3年 1月 7日付け:拒絶査定 令和3年 4月19日 :審判請求書の提出 令和3年11月 1日付け:拒絶理由の通知 令和3年12月27日 :意見書の提出 令和4年 3月16日付け:拒絶理由の通知 令和4年 5月23日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書 による補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 無人航空機と、該無人航空機の操縦信号を出力する第1操縦機及び第2操縦機とを備える無人航空機の操縦支援システムであって、 前記第1操縦機が、第1操作部と、第1操縦信号出力部と、前記第1操作部の操作に基づき第1操縦信号を生成して前記第1操縦信号出力部から前記第2操縦機に向けて出力させる第1制御部とを有し、 前記第2操縦機が、第2操作部と、前記第1操縦信号出力部から出力された第1操縦信号が入力される第2操縦信号入力部と、第2操縦信号出力部と、前記第2操作部の操作がなされると該操作に応じた第2操縦信号を生成して前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信し、前記第2操縦信号を生成するための前記第2操作部の操作がなされていない状態で前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部とを有し、 前記無人航空機が、前記第2操縦信号出力部から送信されてくる第1操縦信号又は第2操縦信号を受信する受信器と、該受信器が受信した第1操縦信号又は第2操縦信号に基づいて該無人航空機を駆動する駆動装置とを有する、無人航空機の操縦支援システム。」 第3 拒絶の理由 本件補正前の請求項1に係る発明に対して、令和4年3月16日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項、又は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2011−72376号公報 引用文献2:国際公開第2018/034018号 引用文献3:中国特許出願公開第105575095号明細書 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載事項 ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。) (ア)「【0020】 <1.ラジオコントロール送信機の外観例> 本願の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)は、模型用のラジオコントロールシステムにおけるラジオコントロール送信機に適用される。ラジオコントロールシステムは、ラジオコントロール送信機と、ラジオコントロール受信機及びサーボ等を搭載する模型の被操縦体から成る。 【0021】 図1の斜視図は、本実施形態のトレーナ機能に対応して、先生用若しくは生徒用として使用することのできる、模型用のラジオコントロール送信機(RC送信機)1の外観例を示している。この図に示すラジオコントロール送信機1は、いわゆるスティック型といわれる形態のものである。 また、本実施形態のラジオコントロール送信機1に対応したラジオコントロール受信機、またサーボを搭載する被操縦体としては、模型飛行機や模型ヘリコプターなどの飛行体となる。」 (イ)「【0035】 <3.トレーナ機能概要> 上記図1に示した本実施形態のラジオコントロール送信機1は、トレーナ機能に対応しており、生徒用ラジオコントロール送信機、若しくは先生用ラジオコントロール送信機として動作させることができる。 【0036】 そこで図4により、トレーナ機能の基本動作について説明する。 トレーナ機能を利用するのにあたっては、図示するようにして、2つのラジオコントロール送信機1を、トレーナ機能に対応する所定の伝送路100により通信可能に接続する。この伝送路100の実際としては、例えばラジオコントロール送信機1同士をケーブルで接続する形態でもよいし、無線でもよい。 そのうえで、しかるべき操作、作業により、伝送路100で接続される2つのラジオコントロール送信機1について、その一方が先生用ラジオコントロール送信機1Aとして動作し、他方が生徒用ラジオコントロール送信機1Bとして動作するように設定を行っておくようにする。そして、先生用ラジオコントロール送信機1Aは、先生となる操縦者が持って操縦し、生徒用ラジオコントロール送信機1Bは、生徒となる操縦者が持って操縦する。 ・・・・・・ 【0037】 トレーナ機能が有効に設定されている場合、先ず、生徒用ラジオコントロール送信機1Bは、自身から操縦信号を送信出力させることはしない。その代わりに、操縦のための操作に応じて、操作に応じたコントロール量の情報(操作情報)を有する信号を、伝送路100を介して先生用ラジオコントロール送信機1Aに対して送信する。この伝送路100経由で生徒用ラジオコントロール送信機1Bから先生用ラジオコントロール送信機1Aに対して送信される信号は、トレーナ信号(間接操縦信号)であって、被操縦体10に対して送信する操縦信号(直接操縦信号)と区別する。なお、コントロール量の情報は、例えばレバースティックなどの操作量に応じた値を有するもののほか、例えば単に対応する機能のオン/オフを示す情報なども含まれる。 【0038】 次に、トレーナ機能が有効に設定されている場合、先生用ラジオコントロール送信機1Aにおいてはトレーナスイッチ6の操作が有効化される。このトレーナスイッチ6の操作によっては、前述した受動モードと能動モードとの間での切り換えを行うことができる。 【0039】 受動モードでは、先生用ラジオコントロール送信機1Aは、伝送路100を経由して伝送されてくる上記トレーナ信号に応じた操縦信号を送信することができる。 一方、能動モードでは、伝送路100経由で生徒用ラジオコントロール送信機1Bからトレーナ信号が送信されてきたとしても、先生用ラジオコントロール送信機1Aは、このトレーナ信号に応じた操縦信号の送信出力を行わない。代わりに、先生用ラジオコントロール送信機1Aから、この先生用ラジオコントロール送信機1Aに対する操作に応じて生成した先生側の操縦信号を送信する動作を実行する。」 (ウ)「【0041】 <4.トレーナ機能における先生用ラジオコントロール送信機の動作モード> また、本実施形態のトレーナ機能が有効設定されているときには、先生用ラジオコントロール送信機1Aとして、図5において模式的に示す第1〜第3モードの3つの動作モードのうちの何れかによる動作を実行する。 なお、これらの第1〜第3モードの間でのモード選択は、例えば操作者の操作に応じて行われる。また、この図5における各動作モードは、その基本構成を示しており、後述するように、本実施形態のチャンネル変換機能(第1例)に対応して、図5(b)(c)の第2、第3モードについては、後述する図11(a)(b)の構成が採られる。 【0042】 先ず、図5(a)には、第1モード(ノーマルモード)としての動作が模式的に示されている。 この図に示される操作信号生成部40は、先生用ラジオコントロール送信機1Aに備えられる操作子に対する操縦操作に応じて、先生用ラジオコントロール送信機1Aにて設定されたチャンネルオーダーに従ってチャンネルを割り当てた操作信号を生成する。ここで生成されたチャンネル対応の操作信号は、エンコーダ41に入力される。 エンコーダ41は、エンコード処理として、入力されるチャンネルごとの操作信号から、その操作信号が対応するコントロール対象(例えばサーボ)についてのコントロール量を求める。そして、求めたコントロール量の情報(操縦情報)を、チャンネルごとに割り当てるようにして、操縦信号の基となる信号を生成して切換器42に出力する。 切換器42は、上記エンコーダ41からの信号と、生徒用ラジオコントロール送信機から送信されてきたトレーナ信号との何れかを選択して出力する。この信号の切り換えは、トレーナスイッチ6に対する操作に応じて行われる。つまり、切換器42は、トレーナスイッチ6に対する操作により、受動モードが設定されているときにはトレーナ信号を選択して出力し、能動モードが設定されているときにはエンコーダ41からの信号を選択して出力する。このようにして切換器42により選択された信号が、実際に被操縦体に対して送信されるべき操縦信号として出力される。」 (エ)「【0050】 このような問題は、例えば図5(a)(b)(c)に示した第1モード〜第3モードの何れにおいても生じる。 図5(a)の第1モードの構成の場合、切換器42によってトレーナ信号が選択された場合には、先生用ラジオコントロール送信機1Aを、トレーナ信号がスルーするような状態で操縦信号として出力される。従って、当然のこととして、トレーナ信号のCH1〜CH8ごとの情報が、そのまま操縦信号のCH1〜CH8の情報として反映される。 また、図5(b)(c)の第2,第3モードは、トレーナ信号がエンコーダ41を通過するものの、エンコーダ41においては、入力されたトレーナ信号のCH1〜CH8ごとの情報を、そのまま操縦信号のCH1〜CH8の情報に置き換えることになる。このために、やはり、トレーナ信号のCH1〜CH8ごとの情報は、それぞれ、操縦信号のCH1〜CH8の情報として反映されてしまう。 【0051】 このような不具合の解消のためには、例えば先にも述べたように、例えば、先生用ラジオコントロール送信機1A又は生徒用ラジオコントロール送信機1Bの少なくとも何れか一方がチャンネルオーダー変更機能を有していれば、これを利用してチャンネルオーダーを一致させることができる。つまり、相互のチャンネルオーダーを確認した上で、チャンネルオーダー変更機能を有するラジオコントロール送信機に対して、相手側のチャンネルオーダーに合わせるようにしてチャンネルオーダー変更のための操作を行えばよい。」 (オ)「【0061】 <7.本実施形態のチャンネル変換機能:第1例> [7−1.システム構成] 本実施形態として、上記のチャンネル変換を実現するための構成としては、第1例と第2例との2例を挙げることとし、先ず、第1例から説明する。 図8は、第1例に対応する先生用ラジオコントロール送信機1Aと生徒用ラジオコントロール送信機1Bのシステム構成例を示している。 先ず、先生用ラジオコントロール送信機1Aにおいては、制御部21a、メモリ22a、送信部23a、トレーナ機能対応通信部24a、表示部25a、操作部26aが示されている。 制御部21aは、例えばCPUを有して構成され、先生用ラジオコントロール送信機1Aにおける各種の制御処理を実行する。」 (カ)「【0066】 送信部23aは、被操縦体に対して送信すべき信号、即ち、操縦信号を送信するための処理を実行する部位とされる。例えば制御部21aは、送信部23aに対して操縦信号としての送信用データを渡す。制御部21aは、受け取った送信用データについて所定の伝送変調などを実行し、例えばアンテナ7aから操縦信号として送出させる。 【0067】 トレーナ機能対応通信部24aは、トレーナ機能に対応して形成された伝送路100を経由して生徒用ラジオコントロール送信機1Bと通信を実行するための部位となる。 例えば生徒用ラジオコントロール送信機1Bからは伝送路100を経由してトレーナ信号が送信されてくる。トレーナ機能対応通信部24aは、このトレーナ信号を受信して、例えば制御部21aが処理可能な形式に変換し、制御部21aに対して渡す。制御部21aは、トレーナ機能が有効に設定されているときには、受信したトレーナ信号が有するコントロール量の情報が反映された操縦信号を送出させる。そして、第1例においては、この操縦信号の送出の際において、後述するようにしてチャンネル変換処理を実行する。」 (キ)「【0069】 操作部26aは、先生用ラジオコントロール送信機1Aに備えられる各種操作子を一括して示したものとなる。操作部26aを形成する操作子に対して操作が行われたことに応じては、その操作子に応じた操作信号が制御部21aに対して入力される。制御部21aは、入力された操作信号に応じてしかるべき処理を実行する。例えば、トレーナ機能が無効とされている状態、また、トレーナ機能における能動モードにおいて、例えばスティックレバー(2L,2R)などの操縦に関する操作子に対する操作が行われたのであれば、この操作に応じたコントロール量を算出するエンコードを実行し、さらに、そのコントロール量の情報(操作情報)を、チャンネルオーダーデータ27aに示されるチャンネルオーダーに従って、しかるべきチャンネルに割り当てた操縦信号を生成する。そして、この操縦信号を、送信部23aにより被操縦体に対して送信出力させる。 【0070】 なお、先の図5(a)(b)(c)に示した第1?第3モードにおける、操作信号生成部40、エンコーダ41、切換器42、合成器43などの構成は、例えば制御部21aが実行する処理としてみることができる。 【0071】 次に、同じ図8における生徒用ラジオコントロール送信機1B(生徒用として設定されたラジオコントロール送信機1)においても、先生用ラジオコントロール送信機1Aと同様にして、制御部21b、制御部21b、メモリ22b、送信部23b、トレーナ機能対応通信部24b、表示部25b、操作部26bを備える。 ただし、チャンネル変換機能の第1例に対応しては、生徒用ラジオコントロール送信機1B側ではチャンネル対応テーブルは保持しない。 この場合の生徒用ラジオコントロール送信機1Bのメモリ22bにおいては、チャンネルオーダーデータ27dが示されている。このチャンネルオーダーデータ27dは、例えば図6,図7の紙面左側に例示したように、生徒用ラジオコントロール送信機1B側にて設定されたチャンネルオーダーを示す内容を有するものとなる。 なお、操縦関連データについては、生徒用ラジオコントロール送信機1B側においても保持していてよいのであるが、ここでは操縦関連データについてのメモリ22における図示を省略している。」 (ク)【図5】 (ケ)【図8】 イ 引用文献1の上記記載から、以下の事項が理解できる。 (ア)上記ア(ア)、(イ)、(オ)より、ラジオコントロールシステムが、模型飛行機や模型ヘリコプターなどの飛行体である被操縦体と、該被操縦体を操縦するための生徒用ラジオコントロール送信機1Bと先生用ラジオコントロール送信機1Aからなること。 (イ)上記ア(キ)、(ケ)より、生徒用ラジオコントロール送信機1Bが、操作部26bと、トレーナ機能対応通信部24bと、制御部21bとを有すること。 (ウ)上記ア(イ)、(カ)〜(キ)より、生徒用ラジオコントロール送信機1Bの操作部26bの操作に応じたコントロール量の情報(操作情報)を有する信号が、トレーナ信号(間接操縦信号)であること。 (エ)上記ア(イ)、(カ)、(ケ)より、トレーナ信号を、生徒用ラジオコントロール送信機1Bのトレーナ機能対応通信部24bから(伝送路100を経由して)先生用ラジオコントロール送信機1Aのトレーナ機能対応通信部24aに対して送信すること。 (オ)上記ア(オ)、(キ)より、生徒用ラジオコントロール送信機1Bの制御部21bが、先生用ラジオコントロ−ル送信機1Aの制御部21aと同様に、生徒用ラジオコントロール送信機1Bにおける各種の制御処理を実行することから、上記ア(イ)、(キ)、(ケ)、及び、上記イ(ウ)〜(エ)より、制御部21bが、操作部26bの操作に応じたコントロール量の情報(操作情報)を有する信号であるトレーナ信号を生成し、トレーナ機能対応通信部24bから先生用ラジオコントロール送信機1Aに対して送信させること。 (カ)上記ア(オ)、(ケ)より、先生用ラジオコントロール送信機1Aが、操作部26aと、トレーナ機能対応通信部24aと、送信部23aと、制御部21aとを有すること。 (キ)上記ア(カ)、及び、上記イ(エ)より、先生用ラジオコントロール送信機1Aのトレーナ機能対応通信部24aが、生徒用ラジオコントロール送信機1Bのトレーナ機能対応通信部24bから送信されたトレーナ信号を受信すること。 (ク)上記ア(イ)、(オ)、(キ)より、先生用ラジオコントロール送信機1Aの制御部21aが、操作部26aに対する操作に応じて操縦信号を生成して送信部23aにより被操縦体に対して送信すること。 (ケ)上記ア(ウ)〜(エ)、(キ)より、先生用ラジオコントロール送信機1Aが第1モード(ノーマルモード)としての動作をしている際に、トレーナスイッチ6の操作によって受動モードが設定された状態では、制御部21aが実行する処理としての切換器42は、生徒用ラジオコントロール送信機1Bから送信されてきたトレーナ信号をスルーするような状態で操縦信号として出力すること、つまり、制御部21aが、生徒用ラジオコントロール送信機1Bから送信されてきたトレーナ信号を受信したときは、該トレーナ信号を選択して被操縦体に対して送信すること。 このように、トレーナ信号をスルーするような状態で操縦信号として出力することは、上記ア(ク)の図5(a)において、先生用ラジオコントロール送信機1Aに入力されたトレーナ信号がエンコーダ41を介さず出力されていることからも明らかである。 加えて、上記ア(エ)の【0051】には、チャンネルオーダーを一致させるチャンネルオーダー変更機能を、先生用ラジオコントロール送信機1A、生徒用ラジオコントロール送信機1Bの少なくとも何れか一方に設けることできる旨記載されているところ、生徒用ラジオコントロール送信機1Bにチャンネルオーダー変更機能を設けた場合には、トレーナ信号はチャンネルオーダーも含めて先生用ラジオコントロール送信機1Aのエンコーダ通過後の信号と同様のものとなることが理解できる。 (コ)上記ア(ア)より、被操縦体が、ラジオコントロール受信機と、サーボとを搭載すること。 (2)引用発明 上記(1)のア及びイを総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「模型飛行機や模型ヘリコプターなどの飛行体である被操縦体と、該被操縦体を操縦するための生徒用ラジオコントロール送信機1Bと先生用ラジオコントロール送信機1Aからなるラジオコントロールシステムであって、 生徒用ラジオコントロール送信機1Bが、操作部26bと、トレーナ機能対応通信部24bと、操作部26bの操作に応じたコントロール量の情報(操作情報)を有する信号であるトレーナ信号を生成し、トレーナ機能対応通信部24bから先生用ラジオコントロール送信機1Aに対して送信させる制御部21bとを有し、 先生用ラジオコントロール送信機1Aが、操作部26aと、トレーナ機能対応通信部24bから送信されたトレーナ信号を受信するトレーナ機能対応通信部24aと、送信部23aと、操作部26aに対する操作に応じて操縦信号を生成して送信部23aにより被操縦体に対して送信し、トレーナスイッチ6の操作によって受動モードが設定された状態では、トレーナ機能対応通信部24aが生徒用ラジオコントロール送信機1Bから送信されてきたトレーナ信号を受信したときは該トレーナ信号を選択して送信部23aにより被操縦体に対して送信する制御部21aとを有し、 被操縦体が、ラジオコントロール受信機と、サーボとを搭載する、ラジオコントロールシステム。」 2 引用文献2 (1)引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア 「[0038] この状況において、例えば、指導者が、教習者にそのまま操縦を続けさせると、ドローン11が通行人にぶつかるおそれがある等の危険を感じると、図2(B)に示すように、指導者が、スマートフォン12Aからドローン11に操縦シグナルを送信する。前述のように、指導者のスマートフォン12Aと教習者のスマートフォン12Bとは、スマートフォン12Aのドローン11に対する操縦機能の優先度が、スマートフォン12Bのドローン11に対する操縦機能の優先度よりも高く順位づけされており、サーバ13が、相対的に順位の高いスマートフォン12Aに、スマートフォン12Bを同期させる。このため、スマートフォン12Aからの前記操縦シグナルが送信されていない状態では、スマートフォン12Bからの前記操縦シグナルは、ドローン11に対して送信されるが、スマートフォン12Aからの前記操縦シグナルが送信されている状態では、スマートフォン12Bからの前記操縦シグナルは、ドローン11に対して送信されない状態となり、指導者のスマートフォン12Aからの前記操縦シグナルのみが、ドローン11に送信される。ついで、ドローン11が、指導者のスマートフォン12Aからの前記操縦シグナルを受信する。そして、ドローン11は、指導者からの前記操縦シグナルにしたがって動きが制御される。 [0039] このように、本例によれば、教習者および指導者のスマートフォン12Bおよび12Aの間において、ドローン11に対して操縦機能を発揮するスマートフォンを切換え可能であることで、指導者が教習者をサポートし、ドローン11を安全に操縦することが可能である。」 イ [図1] (2)引用文献2記載の技術的事項 上記(1)より、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「指導者が、スマートフォン12Aからドローン11に操縦シグナルを送信することにより、教習者および指導者のスマートフォン12Bおよび12Aの間において、ドローン11に対する操縦機能を発揮するスマートフォンの切換えを行うこと。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)操縦支援システムについて ア 引用発明の「被操縦体」は、模型飛行機や模型ヘリコプターなどの飛行体であるから、本願発明の「無人航空機」に相当する。 イ 引用発明の「生徒用ラジオコントロール送信機1B」、「先生用ラジオコントロール送信機1A」は、それぞれ、本願発明の「第1操縦機」、「第2操縦機」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「被操縦体を操縦するための生徒用ラジオコントロール送信機1Bと先生用ラジオコントロール送信機1A」は、本願発明の「無人航空機の操縦信号を出力する第1操縦機及び第2操縦機」に相当する。 ウ 引用発明の「ラジオコントロールシステム」は、「被操縦体」の操縦を支援するものであることが明らかであるから、本願発明の「無人航空機の操縦支援システム」に相当する。 (2)第1操縦機について 引用発明の「操作部26b」は、本願発明の「第1操作部」に相当し、同様に、「トレーナ機能対応通信部24b」は「第1操縦信号出力部」に、「操作に応じたコントロール量の情報(操作情報)を有する信号であるトレーナ信号」は「第1操縦信号」に、「先生用ラジオコントロール送信機1Aに対して送信する」ことは「前記第2操縦機に向けて出力させる」ことに相当する。 そして、引用発明の「制御部21b」は、「トレーナ信号」を「生成」し、トレーナ機能対応通信部24bから「先生用ラジオコントロール送信機1A」に対して「送信」させることから、本願発明の「第1制御部」に相当する。 (3)第2操縦機について ア 引用発明の「操作部26a」は、本願発明の「第2操作部」に相当し、同様に、「トレーナ機能対応通信部24bから送信されたトレーナ信号を受信するトレーナ機能対応通信部24a」は「前記第1操縦信号出力部から出力された第1操縦信号が入力される第2操縦信号入力部」に、「送信部23a」は「第2操縦信号出力部」に、「操縦信号」は「第2操縦信号」に相当する。 イ 引用発明の「操作部26aに対する操作に応じて操縦信号を生成して送信部23aにより被操縦体に対して送信し、トレーナスイッチ6の操作によって受動モードが設定された状態では、トレーナ機能対応通信部24aが生徒用ラジオコントロール送信機1Bから送信されてきたトレーナ信号を受信したときは該トレーナ信号を選択して送信部23aにより被操縦体に対して送信する制御部21a」と、本願発明の「前記第2操作部の操作がなされると該操作に応じた第2操縦信号を生成して前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信し、前記第2操縦信号を生成するための前記第2操作部の操作がなされていない状態で前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部」とは、「前記第2操作部の操作がなされると該操作に応じた第2操縦信号を生成して前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信し、状態に応じて前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部」という点で一致する。 (4)無人航空機について ア 引用発明の「ラジオコントロール受信機」は、「先生用ラジオコントロール送信機1A」の「送信部23a」から送信された「トレーナ信号」又は「操縦信号」を受信することが明らかであるから、本願発明の「前記第2操縦信号出力部から送信されてくる第1操縦信号又は第2操縦信号を受信する受信器」に相当する。 イ 引用発明の「サーボ」は、「ラジオコントロール受信機」が受信した「トレーナ信号」又は「操縦信号」に基づいて被操縦体を駆動するものであることが明らかであるから、本願発明の「該受信器が受信した第1操縦信号又は第2操縦信号に基づいて該無人航空機を駆動する駆動装置」に相当する。 ウ 上記ア、イから、引用発明の「被操縦体が、ラジオコントロール受信機と、サーボとを搭載する」ことは、本願発明の「前記無人航空機が、前記第2操縦信号出力部から送信されてくる第1操縦信号又は第2操縦信号を受信する受信器と、該受信器が受信した第1操縦信号又は第2操縦信号に基づいて該無人航空機を駆動する駆動装置とを有する」ことに相当する。 2 一致点、相違点 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (1)一致点 「無人航空機と、該無人航空機の操縦信号を出力する第1操縦機及び第2操縦機とを備える無人航空機の操縦支援システムであって、 前記第1操縦機が、第1操作部と、第1操縦信号出力部と、前記第1操作部の操作に基づき第1操縦信号を生成して前記第1操縦信号出力部から前記第2操縦機に向けて出力させる第1制御部とを有し、 前記第2操縦機が、第2操作部と、前記第1操縦信号出力部から出力された第1操縦信号が入力される第2操縦信号入力部と、第2操縦信号出力部と、前記第2操作部の操作がなされると該操作に応じた第2操縦信号を生成して前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信し、状態に応じて、前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部とを有し、 前記無人航空機が、前記第2操縦信号出力部から送信されてくる第1操縦信号又は第2操縦信号を受信する受信器と、該受信器が受信した第1操縦信号又は第2操縦信号に基づいて該無人航空機を駆動する駆動装置とを有する、無人航空機の操縦支援システム。」 (2)相違点 「状態に応じて、前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部」について、本願発明では、当該「状態」が「前記第2操縦信号を生成するための前記第2操作部の操作がなされていない状態」であるのに対して、引用発明では、「トレーナスイッチ6の操作によって受動モードが設定された状態」である点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について検討する。 引用文献2記載の技術的事項の「ドローン11」は、本願発明の「無人航空機」に対応する。 そして、引用文献2記載の技術的事項の「スマートフォン12B」、「スマートフォン12A」は、それぞれ「ドローン11」を制御するものであるから、本願発明の「第1操縦機」、「第2操縦機」にそれぞれ対応する。 そうすると、引用文献2記載の技術的事項は、本願発明の用語でいえば、無人航空機の制御を行う第1操縦機と第2操縦機の制御の切換を第2操縦機の操作を契機に行うものといえる。 ここで、引用発明と引用文献2記載の技術的事項とは、2つの操縦機で無人航空機の制御を行うという共通の技術分野に属するものであり、また、指導のために2つの操縦機の制御を切り換えるという点で共通の機能を有しているから、引用発明の「先生用ラジオコントロール送信機1A」において、トレーナスイッチ6に対する操作に応じて、「生徒用ラジオコントロール送信機1B」から送信されてきたトレーナ信号を被操縦体に対して送信するか、「操作部26a」の操作に基づいて生成した操縦信号を送信するかを切り換える構成に代えて、引用文献2記載の技術的事項である、第2操縦機の操作を契機に切り換えを行う構成を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 2 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 審判請求人の主張について 1 令和4年5月23日提出の意見書における主張の概要 審判請求人は、意見書の「5.3 相違点1についての検討結果の妥当性について」の(3)において、引用文献2に記載の発明について、ドローン11に対する操縦機能を発揮するスマートフォンの切換え動作は、同期手段による同期処理が行われることによって初めてなし得る動作であって、同期手段による同期処理なしで、スマートフォン12Aからドローン11に操縦シグナルが送信されたことだけでなし得る動作でないから、引用文献2が、本願発明の特徴である、「第2操縦機が、第2操作部の操作がなされると該操作に応じた第2操縦信号を生成して前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信し、前記第2操縦信号を生成するための前記第2操作部の操作がなされていない状態で前記第2操縦信号入力部に前記第1操縦信号が入力されたときは該第1操縦信号を前記第2操縦信号出力部から前記無人航空機に向けて送信する第2制御部」について、教示も示唆も与えないことは明白である旨主張している。 2 審判請求人の主張の検討 審判請求人の上記主張について検討する。 上記第5の1、2で検討したとおり、本願発明と引用発明とは、第2操縦信号出力部から無人航空機に向けて、第1操縦信号を送信する状態について、本願発明が「前記第2操縦信号を生成するための前記第2操作部の操作がなされていない状態」であるのに対して、引用発明が「トレーナスイッチ6の操作によって受動モードが設定された状態」である点でのみ、すなわち、無人航空機に向けて、第1操縦信号を送信する状態と第2操縦信号を送信する状態の「切換」を、「第2操縦機の操作」を契機に行うか否かでのみ相違するものである。 ここで、上記第6の1で検討したとおり、引用文献2から、第1操縦機と第2操縦機の制御の切換を「第2操縦機の操作」を契機に行うという技術的事項が把握されることは明らかであるところ、第1操縦信号を送信する状態と第2操縦信号を送信する状態の「切換」を、「第2制御部」で実現するものである引用発明に、第1操縦機と第2操縦機の制御の切換を「第2操縦機の操作」を契機に行う引用文献2記載の技術的事項を適用することにより、「第2操縦機の操作」がなされたかどうかを、「第2制御部」で判断し、第1操縦信号を送信する状態と第2操縦信号を送信する状態の「切換」を当該「第2制御部」が行う構成となることは当然のことであるし、そうでないとしても、上記切換を第2制御部に行うよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、引用文献2の[0032]には、「同期手段13は、複数の操縦シグナル送信機を同期可能であればいかなる手段であってもよく、・・・、例えば、複数の操縦シグナル送信機が、それぞれ、同期手段を有し、・・・」と記載されているから、同期手段を操縦シグナル送信機とは別に設ける構成以外のものを採り得ることも示唆されるものである。 したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-10-05 |
結審通知日 | 2022-10-11 |
審決日 | 2022-10-26 |
出願番号 | P2019-230823 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G05D)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
見目 省二 |
特許庁審判官 |
中里 翔平 田々井 正吾 |
発明の名称 | 無人航空機の操縦支援システム |
代理人 | 特許業務法人京都国際特許事務所 |