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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J |
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管理番号 | 1392601 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-08-05 |
確定日 | 2022-12-12 |
事件の表示 | 特願2016−247764「有機EL表示装置用粘着剤組成物、有機EL表示装置用粘着剤層、有機EL表示装置用粘着剤層付き偏光フィルム、及び有機EL表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開、特開2017−165941〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年12月21日(優先権主張 平成27年12月25日(以下「本件優先日」という。) 平成28年3月11日)の出願であって、令和2年10月23日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年12月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年2月4日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月6日付けで拒絶査定され(謄本の発送は同月11日)、これに対し、同年8月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和3年4月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 ベースポリマー、紫外線吸収剤、及び、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物を含み、 前記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長が、300〜380nm(ただし、380nmを除く。)の波長領域に存在することを特徴とする有機EL表示装置用粘着剤組成物。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由は、令和3年2月4日付け拒絶理由通知書に記載された理由であって、要するに、上記本願発明は、下記の刊行物1〜5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1:国際公開第2014/185318号 引用文献2:特開2012−211305号公報 引用文献3:特開2014−115524号公報 引用文献4:特開2005−189645号公報 引用文献5:特開2009−96973号公報 第4 当審の判断 当審は、令和3年8月5日提出の審判請求書を斟酌しても、上記した原査定の拒絶の理由が依然として妥当すると判断する。 その理由は以下のとおりである。 引用文献及びその記載事項 引用文献1:国際公開第2014/185318号 引用文献2:特開2012−211305号公報 引用文献3:特開2014−115524号公報 引用文献4:特開2005−189645号公報 引用文献6:特開2015−59128号公報(周知技術を示す文献) 引用文献7:国際公開第2014/171164号(周知技術を示す文献) (1)原査定で引用された本願優先日前に頒布された引用文献1には次の記載がある。 (1a)「[請求項1] 画像表示セル、及び画像表示セルよりも視認側に位置する偏光板を有する画像表示装置であって、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層されており、 偏光子保護フィルムの少なくとも一方は、活性エネルギー線硬化性接着剤を介して偏光子と積層されており、 画像表示セルよりも視認側に紫外線吸収性粘着層を有することを特徴とする画像表示装置。 ・・・ [請求項5] 画像表示セルと偏光板とが紫外線吸収性粘着層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の画像表示装置。」 (1b)「[0002] 液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイなどの画像表示装置の画像表示セルには、カラー表示を行うために、カラーフィルターや色素等が用いられるが、カラーフィルターや色素等や液晶化合物は太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外線により劣化し易く、色調が経時的に変化する場合がある。これを防ぐために一般的には画像表示セルより視認側に配置される偏光板に紫外線吸収機能を付与している。偏光板に紫外線吸収機能を持たせるためには、偏光板の偏光子保護フィルムに紫外線吸収剤を添加する方法、及び偏光子と偏光子保護フィルムを接着する接着剤に紫外線吸収剤を添加する方法(特許文献1)が採用されている。 [0003] 従来、偏光子と偏光子保護フィルムの接着には水系の接着剤が用いられてきたが、近年活性エネルギー線硬化性の接着剤が提案され(特許文献2)、生産性の面から注目を浴びている。しかしながら、偏光子保護フィルムとして紫外線吸収剤を含有するフィルムを用いる場合には、片面の偏光子保護フィルムは紫外線吸収剤を含まないフィルムを用い、紫外線吸収剤を含まないフィルム面からのみ紫外線を照射して接着剤を硬化させる必要がある。ところが、そのように紫外線を照射すると紫外線の照射面とは反対側の接着層は、偏光子により光量が半減するため、十分に硬化させるためには過剰の紫外線を照射する必要がある。また、活性エネルギー線硬化性の接着剤に紫外線吸収剤を添加すると、十分硬化することが困難であるといった問題があった。 ・・・ [0007] 本発明の画像表示装置によれば、偏光板とは別に紫外線吸収性粘着層を有するので、カラーフィルターや色素や液晶化合物等の紫外線劣化を抑制しつつ、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性良好な偏光板を有する、画像表示装置を生産性よく提供することができる。」 (1c)「[0143] (紫外線吸収性粘着層の積層位置) 紫外線吸収性粘着層の積層位置としては画像表示セルよりも視認側であれば特に限定されるものではない。例えば、液晶ディスプレイを例にすると、紫外線吸収性粘着層は、液晶セルと視認側偏光板との間又は視認側偏光板よりも視認側の任意の位置に設けることができる。より具体的に、紫外線吸収性粘着層は、次の位置に設けることができる:液晶セルと視認側偏光板との間、視認側偏光板と飛散防止フィルムとの間、視認側偏光板と表面保護板との間、視認側偏光板と表面カバーフィルムとの間、飛散防止フィルムとタッチパネル用電極フィルムとの間、2枚のタッチパネル用電極フィルムの間、飛散防止フィルムと表面保護板との間、表面保護板と表面カバーフィルムとの間など。これらの中でも、液晶セルと視認側偏光板との間の貼り合わせに基材レスの紫外線吸収性粘着層を用いることが最も好ましい形態である。 [0144] なお、視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルムが液晶化合物を含有する位相差板である場合は、液晶化合物が紫外線により劣化する場合がある。この場合には、視認側偏光板より視認側に紫外線吸収性粘着層が設けられることが好ましい。この場合、偏光板と画像表示セルの間は必ずしも紫外線吸収性粘着剤である必要はない。」 (1d)「[0146] 以下に各図で本発明の構成の詳細な例を説明する。なお、本発明はこの図に限定されるものではない。 図1は、テレビやコンピューターのディスプレイなどの例である。上部が視認側で、下部が光源側である。液晶セル(41)の両面に偏光板(1、2)が紫外線吸収性粘着層(51、52)を介して積層されている。液晶セルの詳細は図示されていないが、液晶の駆動電極を設けた2枚のガラス板の間に液晶化合物が封入されており、さらにカラーフィルターが設けられている。 [0147] 偏光板は偏光子(11、21)の両面に偏光子保護フィルム(12、13、22、23)が活性エネルギー線硬化性接着剤(図示されていない)を介して積層されている。視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)および光源側偏光子の光源側偏光子保護フィルム(22)は、高リタデーション配向フィルムであるかもしくは複屈折を有しないフィルムである。視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム(13)および光源側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(23)は、複屈折を有しないフィルムか光学補償フィルムである。視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)か視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム(13)の少なくともいずれか一方は低透湿性フィルムである。また、光源側偏光子の光源側偏光子保護フィルム(22)か光源側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(23)の少なくともいずれか一方は低透湿性フィルムである。 [0148] 最表面である視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムの視認側表面には、アクリル樹脂と有機微粒子からなる防眩層(14)が設けられている。なお、図示はされてないが、各フィルムの表層には適正な易接着層が設けられる場合がある。また、図示されていないが、さらに光源側には、サイドエッジの蛍光体型白色LED光源、導光板、レンズフィルム、偏光選択性反射板からなる光源ユニットを有する。 [0149] 図2は、スマートホンやタブレットコンピューターなどのタッチパネル一体型液晶パネルの例である。上部が視認側で、下部が光源側である。図1との違いを主に説明する。 [0150] タッチパネル一体型液晶セル(42)の詳細は図示されていないが、液晶を封入するガラス板には液晶の駆動電極以外にタッチパネル電極が設けられている。タッチパネル電極は液晶を封入するガラス板の内面(インセル型)または外面(オンセル型)いずれでも良い。 [0151] 視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)の視認側には、表面カバー(3)が取り付けられている。表面カバーは任意ではあるがガラス板に飛散防止フィルム(32)が積層されている。視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムの視認側には、紫外線吸収性粘着層(53、54)を介して各種の層が積層されている。図2において、紫外線吸収性粘着層(51、53、54)のうち少なくともいずれかが紫外線吸収性であれば良く、かならずしも全てを備えている必要はない。 [0152] 図3は、スマートホンやタブレットコンピューターなどの液晶セル−タッチパネル分離型の例で、タッチパネルは静電容量型を例示している。上部が視認側で、下部が光源側である。図1との違いを主に説明する。 [0153] 視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)の視認側には、タッチパネル部が積層されている。タッチパネルは透明電極が設けられたフィルムまたはガラスが2枚紫外線吸収性粘着層(55)を介して積層されている。透明電極はITO電極、金属メッシュ電極、金属細線、自己組織化(ネット状)導電ペーストなど公知のものが用いられ得る。さらに視認側には表面カバー(3)が設けられていても良い。視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)とタッチパネル(6)との間には飛散防止フィルム(71)が設けられていても良く、その場合は必ずしも飛散防止フィルム(32)は必要ではない。 [0154] また、図3では表面カバー(3)、タッチパネル(6)、飛散防止フィルム(71)、視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム(12)間は空隙となっているが、粘着層で貼り合わされていても良い。この場合、透明電極間の紫外線吸収性粘着層(55)、液晶セルと視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム(13)との間の紫外線吸収性粘着層(51)も含めていずれかの粘着層が紫外線吸収性粘着剤層であればよい。 [0155] 以下に、図1の構成の液晶ディスプレイの製造方法を代表例として具体的な説明をする。 (紫外線吸収性粘着剤層の作成) アクリル酸ブチル77質量部、アクリル酸メチル30質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部からなるアクリル系共重合体(重量平均分子量70万)100質量部、アクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:75万)100質量部(固形分換算,以下同じ)と、ヘキサメチレンジイソシアネート4質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,TINUVIN 109)10質量%をメチルエチルケトンに溶解し25質量%溶液を作成した。これを、離型コートしたPETフィルム(離型PETフィルム)に乾燥後の厚さが23μmとなるようにアプリケーターで塗工し、90℃で90秒間乾燥させ、その後40℃で3日間エージング処理を行った。 [0156] (高リタデーション配向フィルムの作成) PET(IV=0.62)を常法により乾燥して押出機に供給し、285℃で溶解した。このポリマーをステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。 [0157] 次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、下記の組成の接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。 [0158] (接着性改質塗布液) ・共重合ポリエステル樹脂 4.5質量部 テレフタル酸 46モル% イソフタル酸 46モル% 5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム 8モル% エチレングリコール 50モル% ネオペンチルグリコール 50モル% ・凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310) 0.5質量部 ・水 53質量部 ・イソプロピルアルコール 37質量部 ・n−ブチルセルソルブ 5質量部 ・ノニオン系界面活性剤 0.06質量部 [0159] 塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。得られた一軸配向PETフィルムのリタデーションは10200nm、Rthは13233nm、Re/Rthは0.771であった。 [0160] 一軸配向PETフィルムの水蒸気透過性は6.8g/m2/dであった。なお、水蒸気透過度は、JIS−K7129 B法に準じて水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN−W 3/31、Modern Controls社製)により、温度40℃、湿度90%RH、2日パージ後測定した。単位はg/m2・24hrである。 [0161] (活性エネルギー線硬化性接着剤組成物) ・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40部 ・ビスフェノールA型エポキシ樹脂 60部 ・ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルフォニウム ヘキサフルオロアンチモネート(カチオン重合開始剤) 4.0部 ・ベンゾインメチルエーテル(光増感剤) 1.0部 [0162] 前記3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのエポキシ当量は126g/eqであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は187g/eqであった。また、接着剤組成物の全塩素量は840ppmであり、25℃におけるB型粘度計の60rpmで測定した粘度は3000mPa・sであった。なお、接着剤組成物の全塩素量は、JIS K 7243−3(ISO 21627−3)に準拠し、硝酸銀溶液による滴定法で測定した。 [0163] (水系接着剤) ・純水 100部 ・カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔クラレポバールKL318(株式会社クラレ製) 3.0部 ・水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(固形分濃度30%の水溶液)〔スミレーズレジン650(住化ケムテックス株式会社より販売)〕 1.5部 [0164] (偏光板の製造) 上記で得られた高リタデーション配向ポリエステルフィルム(一軸配向PETフィルム)の一方の面に、上記組成の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備えた塗工装置によって厚さ2μmの厚みに塗工した。また、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)に上記組成の水系接着剤を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。 [0165] 各フィルムへ接着剤組成物を塗工した後、直ちに、PVAとヨウ素からなる偏光フィルムの片面にポリエステルフィルムを、もう一方の面にケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。その後、メタルハライドランプを320〜400nmの波長における積算光量が600mJ/cm2となるようにポリエステルフィルム側から照射した後、さらに70℃に設定した熱風循環式乾燥機に貼合したフィルムを通し、両面の接着剤を硬化させた。こうして得られた偏光板は、この後、巻き取り装置によってロール状に巻き取られた。偏光子の配向方向(吸収軸方向)と高リタデーション配向フィルムの配向主軸との角度は90±3度内であった。 [0166] 偏光板の透過率を次の方法で測定した。分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として偏光板の波長300〜500nm領域の光透過率を測定し、波長380nmにおける光線透過率を求めた。偏光板の380nm光の透過率は43%であった。 [0167] (液晶ディスプレイの作成) 上記で作成した偏光板のトリアセチルセルロースフィルム面に上述の紫外線吸収性粘着層を塗工した離型PETフィルムを貼り合わせた。この紫外線吸収性粘着層を積層した偏光板から離型PETフィルムを剥がし、これをTN方式の液晶セルの両面に貼り合わせ、液晶パネルを作成した。得られた液晶パネルを市販の小型液晶テレビから取り出した光源ユニット(サイドエッジ型蛍光体方式白色LED光源、導光板、レンズシート、偏光選択性反射板(3M社製D−BEF)の構成)に取り付け、液晶ディスプレイとした。 [0168] なお、図1の構成の液晶ディスプレイの製造方法を代表例として説明したが、図2、図3の構成のもの、さらには他の構成であっても、従来の粘着剤の変わりに上述の紫外線吸収性粘着剤に変更することで製造することができる。 [符号の説明] [0169] 1:視認側偏光板 2:光源側偏光板 3:表面カバー 6:タッチパネル 11:視認側偏光子 12:視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム 13:視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム 14:防眩層 21:光源側偏光子 22:光源側偏光子の光源側偏光子保護フィルム 23:光源側偏光子の視認側偏光子保護フィルム 31:ガラス板 32:飛散防止フィルム 41:液晶セル 42:タッチパネル一体型液晶セル 51:紫外線吸収性粘着層 52:紫外線吸収性粘着層 53:紫外線吸収性粘着層 54:紫外線吸収性粘着層 55:紫外線吸収性粘着層 61:透明電極 62:透明電極 71:飛散防止フィルム」 (1e)「[図1] ![]() 」 (2)原査定で引用された本願優先日前に頒布された引用文献2には次の記載がある。 (2a)「【請求項1】 画像表示装置における表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に配設して、2つの部材を一体化させるための両面粘着シートであって、 少なくとも1層の紫外線吸収層を有し、波長380nmの光線透過率が30%以下であり、かつ波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上であることを特徴とする画像表示装置用透明両面粘着シート。」 (2b)「【0001】 本発明は、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)などの画像表示装置において、表面保護パネルと、偏光板や液晶セルなどを内蔵する液晶モジュールとの間に配設して用いられる、画像表示装置用透明両面粘着シートに関するものである。 ・・・ 【0008】 上記のような新たな提案のように、表面保護パネルと液晶モジュールとの間の各種構成部材間を粘着剤や粘着シートを介して一体化する構成により、表面保護パネルと液晶セルとの間に介在したタッチパネルガラスが不要となるばかりか、薄肉化及び軽量化を図ることができ、さらには貼合工程の簡素化による生産性の向上を図ることもできる。 【0009】 しかしながら、上記のインセル、オンセル及びタッチオンレンズ方式の構成においては、1種類の粘着部材をもって表面保護パネルと液晶モジュールを貼着するため、表面保護パネルの貼着に必要な機能および液晶モジュールへの貼着に必要な機能を1枚の粘着シートまたは粘着樹脂をもって達成せねばならず、従来以上の機能付与が求められる。 特に、ディスプレイモジュールメーカーでは、タッチパネル以外にも偏光フィルムや位相差フィルムなど、貼合して得ていた機能性フィルムによる光学機能等も直接液晶モジュール内や他の構成部材に組込み、極力部材点数を減らすことが想定され、これら機能性フィルムなどの機能性層の簡略化やモジュール構成の変化に伴い、粘着シートには、これら機能性層を保護する為の紫外線カット性が求められることが推察される。 【0010】 そこで、本発明の課題は、画像表示装置における表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に配設して、2つの部材を一体化させるために用いられ、紫外線カット性を有し、かつ可視光を十分に透過して視認性を確保できる、新たな画像表示装置用透明両面粘着シートを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明は、画像表示装置における表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に配設して、2つの部材を一体化させるための両面粘着シートであって、少なくとも1層の紫外線吸収層を有し、波長380nmの光線透過率が30%以下であり、かつ波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上であることを特徴とする画像表示装置用透明両面粘着シートを提案する。 【発明の効果】 【0012】 本発明の画像表示装置用透明両面粘着シートは、少なくとも1層の紫外線吸収層を有し、特定波長において特定の光線透過率を有するという性質をもつものであるため、画像表示装置内に配設して用いた場合、画像表示装置の視認側から可視光を十分に透過して、視認性を確保することができ、かつ視認側から入射する紫外光から画像表示装置内の機能性フィルム等の機能性層を保護できるという利点を備える。 したがって、本発明の画像表示装置用透明両面粘着シートは、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)などの画像表示装置における、表面保護パネルと液晶モジュールとの間に配設して用いることができる。」 (2c)「【0050】 以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0051】 [実施例1] 2−エチルヘキシルアクリレート(Tg−70℃)62質量部と、酢酸ビニル(Tg32℃)36質量部と、アクリル酸(Tg106℃)2質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体(Mw=60万)100質量部に、紫外線吸収剤として2‐[4,6‐ジフェニル‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐(ヘキシルオキシ)フェノール1質量部と、架橋剤として、イソシアヌレートを用いてイソホロンジイソシアネートを3量体化し、メチルエチルケトンオキシム(ブロック剤)で保護した3官能イソシアネート架橋剤50質量部とを混合して粘着剤組成物を調製した。 前記粘着剤組成物を80℃で溶融し、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製「MRF75」厚み75μm)の剥離処理した側に、アプリケータを用いて250μmとなるよう賦型した後、110℃に加熱してブロック剤を脱保護して架橋反応を進行させて紫外線吸収層を形成した。次に、表面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック社製;商品名「NP50Z01」、厚み50μm)の剥離処理した側を、前記紫外線吸収層に重ねて被覆し、温度25℃湿度40%で1週間養生させて両面粘着シート1を作製した。 【0052】 [実施例2] (紫外線吸収層の作製) 感圧接着剤層用の組成物として、アクリル酸ブチル(Tg−56℃)73質量部と、メタクリル酸メチル(Tg105℃)25質量部と、アクリル酸(Tg106℃)2質量部とを共重合してなるアクリル酸エステル共重合体1kg(Mw=110万)に対して、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(旭化成株式会社製;商品名「デュラネート24A−100」)を0.15gと、2−(2’−ヒドロキシ−3−tブチルフェニル)ベンゾエートの変性体混合物からなる紫外線吸収剤(BASF社製;商品名「Tinuvin213」)10gとを加えて感圧接着剤用組成物(a1)を調製した。 【0053】 酢酸エチルとトルエンの混合物からなる揮発性有機溶剤を用いて、前記感圧接着剤用組成物(a1)を、固形分濃度が15質量%となるように希釈して塗料を調製した。この塗料を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製;商品名「MRF75」、厚み75μm)の剥離処理した側に、乾燥後の厚みが30μmとなるようにシート状に塗工して紫外線吸収層(A1)を成形した。 次に、露出した粘着面を乾燥させ、未処理のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製;商品名「ダイアホイルT−100」、厚み25μm)を積層した。」 (3)原査定で引用された本願優先日前に頒布された引用文献3には、次の記載がある。 (3a)「【請求項1】 表示部を有する屋外用表示装置であって、 前記表示部は、視認側の面に、光吸収層と偏光子層とを有する偏光板を備え、 前記光吸収層は、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤とを含み、 前記光吸収層が前記偏光子層よりも視認側に配置された屋外用表示装置。」 (3b)「【0018】 本発明者らは、鋭意検討の結果、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤の少なくとも2種類の光吸収剤を併用することによって、光吸収剤の添加量を大きく増大させる事なく、屋外使用での日光による偏光子の劣化を効果的に抑制できる事を見出した。 すなわち、下記手段により、上記課題を解決し得る。」 (3c)「【0040】 以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜 変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。 【0041】 まず、実施例で使用したセルロースアシレート、光吸収剤及び可塑剤について説明する。 【0042】 (セルロースアシレート) アセチル基の置換度2.85、数平均分子量66000のセルロースアシレートを使用した。このセルロースアシレートは公知の合成方法により入手可能である。 【0043】 (可塑剤) 実施例、及び比較例ではトリフェニルホスフェート(TPP)を使用した。TPPは市販品や公知の合成方法により入手可能である。 【0044】 【化1】 ![]() 【0045】 (光吸収剤) 下記に記載の光吸収剤を使用した。これらの光吸収剤は市販品や公知の合成方法により入手可能である。 【0046】 【化2】 ![]() 【0047】 【表1】 ![]() 【0048】 (セルロースアシレートフィルム101の作製) (セルロースアシレートドープ101の調製) 下記の組成物を加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートドープ101を作製した。 【0049】 (セルロースアシレートドープ101組成物) セルロースアシレート(前記) 100質量部 可塑剤TPP(前記) 12質量部 メチレンクロライド 435質量部 メタノール 65質量部 シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) 0.16質量部 (“AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製) 光吸収剤UV−1(前記) 1.6質量部 光吸収剤UV−3(前記) 2.1質量部 【0050】 ドープ101の固形分濃度(セルロースアシレート、可塑剤、シリカ粒子及び光吸収剤の合計濃度)は19質量%であった。 【0051】 (セルロースアシレートフィルム101の製膜) 上記方法で作製したセルロースアシレートドープ101を、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量30質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド上から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、ついで、乾燥ゾーンで搬送しながら140℃40分間乾燥させ、1500mm幅にスリットし、厚み60μmのセルロースアシレートフィルム101を作製した。 【0052】 (セルロースアシレートフィルム102〜110の作製) 光吸収剤の種類及び添加量、フィルム厚みを下記表2に記載したとおりに変更した以外は前記セルロースアシレートフィルム101と同様にして、セルロースアシレートフィルム102〜110を得た。 【0053】 【表2】 ![]() 【0054】 以上のようにして作製したセルロースアシレートフィルム101〜110に対して、以下の評価を行った。 【0055】 (セルロースアシレートフィルム101〜110の透過率の測定) 分光光度計“UV−3150”((株)島津製作所製)にて、25℃60%RHで波長400〜650nmの光線透過率を測定した。上記表2に、波長400nmと、430〜650nmの透過率を記載した。 【0056】 (セルロースアシレートフィルム101〜110の鹸化処理) 作製したセルロースアシレートフィルム101〜110を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルム101〜110の表面の鹸化処理を行った。 【0057】 (偏光子の作製) 厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ19μmの偏光膜を得た。 【0058】 (偏光板201〜210の作製) 作製した偏光子の一方の側に鹸化処理したセルロースアシレートフィルム101〜110のいずれかを、もう一方の側に鹸化処理したセルロースアシレートフィルム110を、それぞれポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた。この際、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの幅方向とが平行になるように配置した。このようにして下記表3に示す偏光板201〜210を作製した。 なお、セルロースアシレートフィルム101〜106は本発明における光吸収層であり、偏光子は偏光子層である。 【0059】 【表3】 ![]() 【0060】 (実施例1〜7、及び比較例1〜3) アップル社製スマートフォン、iPhone4(商品名)の液晶パネルを取り出し、視認側、及び光源側の偏光板をはがし、視認側、及び光源側の偏光板を下記表4に示す組み合わせで貼り合せた。ただし、偏光板は全てセルロースアシレートフィルム110の面が液晶パネルのガラス基板と接するようにし、かつ視認側偏光板の透過軸が光源側偏光板の透過軸と直交となるように貼り合せた。このようにして作製した液晶パネルを再びiPhone4の筐体に組み込んで、実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置を作製した。 【0061】 上記のようにして作製した実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置に対し、以下の評価を行った。 【0062】 (色味付きの評価) 実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置を快晴の日の正午に屋外(日本国神奈川県南足柄市)に南向きに設置し、種々の静止画を表示させて正面から観察した。このとき、表示の色味付きを以下の基準で評価した。 A:色味付きが全く視認されない。 B:色味差が視認されるものの、ごくわずかで許容できる。 C:色味差が視認され、許容できない。 【0063】 (耐光性の評価) (耐光性試験前のコントラスト測定) 実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置を全面白色の表示にし、トプコンテクノハウス製輝度計BM−5Aを用いて輝度Y[白]を測定した。次に全面黒色の表示にし、同様にして輝度Y[黒]を測定した。該屋外用表示装置のコントラストCRを、以下の式1で求めた。 CR=Y[黒]/Y[白] (式1) 【0064】 (耐光性試験の実施) 実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置を、視認側に光が当るようにして(株)スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75に設置し、60℃、相対湿度50%の環境下において400時間照射した。尚、スーパーキセノンの照射光は屋外における日光に近似したスペクトルを有しており、屋外での使用を模擬した耐光性試験を実施することができる。 【0065】 スーパーキセノン照射後の実施例1〜7、及び比較例1〜3の屋外用表示装置のコントラストを、上記と同様にして測定し、スパーキセノン照射前後でのコントラストの変化量を求め、以下の基準により評価した。 A:コントラストの変化が5%未満 B:コントラストの変化が5%以上10%未満 C:コントラストの変化が10%以上 【0066】 作製した屋外用表示装置の構成と、評価結果を下記表4に示す。 【0067】 【表4】 ![]() 【0068】 上記結果より、本発明の屋外用表示装置は屋外で長時間日光に晒される場合においても紫外線による偏光子のコントラスト変化を効果的に抑制でき、そのため日光に晒される前 後での表示品位の劣化が少ないことがわかる。」 (4)原査定で引用された本願優先日前に頒布された引用文献4には次の記載がある。 (4a)「【請求項1】 支持体と偏光素子層を有する円偏光板において、支持体中に380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有することを特徴とする円偏光板。 【請求項2】 光吸収材料が蛍光増白剤及び/又は紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1に記載の円偏光板。」 (4b)「【0004】 この、視認側に円偏光板を配置する有機ELディスプレイ素子は現在の主流となっており、円偏光板に380nm以下をカットする市販の紫外線吸収剤を含有させることにより発光材料やフィルター材料の耐久性改善をはかっている。しかしながら更なる寿命の改善が望まれているのが現状である。 【0005】 これまで、380nm以上の光も遮断して写真や液晶表示ディスプレイの褪色を防ぐフイルムに関する技術が開示されているが、有機ELディスプレイ素子に関する効果については何ら述べられていない(例えば特許文献3)。 【特許文献1】 特開平7−142170号公報 【特許文献2】 特開平9−127885号公報 【特許文献3】 特開2002−53824号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、発光材料やカラーフィルターの外光による耐久性の低下を軽減し得る有機ELディスプレイ素子および有機ELディスプレイパネルを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、有機発光材料は、紫外線のみならず可視光によっても劣化するとの知見を得た。光耐久性は、遮断する波長が長いほど効果的であるが、可視領域まで遮断してしまうと、着色が起こり、表示性能の低下を招くことになる。波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断すると、着色が目立たず、光耐久性効果が最もよくなることを見出し本発明を完成するに至った。 【0008】 前記課題を解決するための手段は以下の通りである。 (1) 支持体と偏光素子層を有する円偏光板において、支持体中に380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有することを特徴とする円偏光板。 (2) 光吸収材料が蛍光増白剤及び/又は紫外線吸収剤であることを特徴とする(1)に記載の円偏光板。 (3) (1)または(2)に記載の有機ELデイスプレー用円偏光板。 (4) 第一の支持体、偏光素子層、第二の支持体をこの順に有する円偏光板において、第一の支持体が視認側にあり、第一の支持体が380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有することを特徴とする(3)に記載の有機ELデイスプレー用円偏光板。 (5)(3)または(4)に記載の有機ELディスプレー素子用円偏光板を用いて視認側に反射防止処理を施したことを特徴とする有機ELディスプレイ素子。 (6) (5)に記載の有機ELディスプレイ素子を有するディスプレイパネル。」 (4c)「【0014】 前記蛍光増白剤および紫外線吸収剤は、有機材料であっても、無機材料であってもよい。前記蛍光増白剤および紫外線吸収剤は、通常市販されているものあるいは新規物質の中から耐光性などに基づいて任意に選択することができる。またそれらを任意に混合して用いても良い。 前記蛍光増白剤の具体例としては、下記構造式1〜16で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 ・・・ 【0033】 【化9】 ・・・ ![]() ・・・」 4d「【0053】 次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。 なお、実施例において、透過率は島津製作所製紫外可視分光光度計にて測定した。 【0054】 [実施例1] 特開平5−5047記載の方法で厚み80μmのトリアセチルセルロースフイルムを得た。更に特開平5−5047記載の流延前トリアセチルセルロース液に化合物(15)および紫外線吸収剤である2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin 329)をそれぞれトリアセチル固形分100部に対し2.65部溶解し光吸収材料含有トリアセチルセルロースフイルムを得た。 このようにして得られた紫外線吸収トリアセチルセルロースフイルムを視認側に光吸収材料を含まないトリアセチルセルロースフイルムがパネル側になるように特開平2000−338329記載の方法で偏光板を作成した。 【0055】 [実施例2] 実施例2で得られた偏光板のパネル側に特開平4−5601記載の方法で作成した位相差板を接着剤を用いて貼りあわせ光吸収材料含有円偏光板を得た。 【0056】 [実施例3] アクリル系粘着剤(大日本インキ工業(株)製、商品名アクリテック)100gにトルエン50mL、メチルエチルケトン50mLを加え40℃にて溶解した。この混合液を光吸収材料含有円偏光板上に、リバースコーターを用いて塗工し、65℃で5分間の乾燥条件下で乾燥させ、膜厚25μmの粘着剤層を形成した。次いで、剥離紙をその粘着剤層上に積層し、粘着剤付き光吸収材料含有円偏光板を作製した。 【0057】 得られた本発明の円偏光板をガラス板に貼付した試料について、吸収スペクトルを測定した。比較例として、市販のフィルター(3M社製のISCLARL(商品名))を市販の円偏光板((株)サンリッツ製BPCT-HC56-243HCSC)に貼付した比較用円偏光板を作製し、同様に吸収スペクトルを測定した。無処理の円偏光板の吸収スペクトルと共に結果を図1に示す。 【0058】 図1に示すグラフからわかる様に、本発明の円偏光板は、比較例の市販のフィルター付き円偏光板に比べ、紫外線よりも若干長波長である410nmまでの光を吸収することがわかった。得られた円偏光板の波長300nm〜410nmの光に対する吸収率は約100%であった。さらに、本発明の円偏光板は、長波長の光を吸収するにもかかわらず、黄色味が無く、透明度の高い光吸収フィルターであることがわかった。 【0059】 [実施例4](有機ELディスプレイの劣化試験) 実施例3で得られた本発明の光吸収材料含有円偏光板、および比較用である市販のフィルターを貼付した円偏光板を用いて有機ELディスプレイパネルを作製した。これらの有機ELディスプレイパネルおよび何も処理していない円偏光板を有する有機ELディスプレイパネルを、各々、赤外線フィルターを備えたキセノン退色試験機に入れ、光照度10万ルクスの条件下、1000時間暴露後にそれぞれの輝度を測定した。輝度低下の許容レベルは官能試験より決定した20%以下が合格である。 結果を表1に示す。本発明の円偏光板を有する有機ELディスプレイパネルは20%以下の輝度低下であり、優れた性能を示した。 【0060】 【表1】 ![]() 」 (5)引用文献6には次の記載がある。 (6a)「【0027】 成分(C)の紫外線吸収剤としては、最大吸収波長のピーク位置、吸収剤自身の堅牢性、相溶性の観点から、ベンゾトリアゾール系化合物及びヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の少なくともいずれか一方が好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物としては、λmaxが353nmの3−[3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクチル(例えば、BASF社製TINUVIN109)が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系化合物としては、λmaxが353nmの2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(例えば、BASF社製TINUVIN329)が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、λmaxが356nmのBASF社製TINUVIN477が挙げられる。」 (6)引用文献7には次の記載がある。 (7a)「[0039] [液状紫外線吸収剤] TINUVIN 213(BASF社製、融点−40℃、最大吸収波長344nm)(5−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルベンゼンプロパン酸メチル) TINUVIN 571(BASF社製、分子量393.6、融点−56℃、最大吸収波長343nm)(2−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−ドデシルフェノール)。」 2.引用文献に記載された発明 (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1の[0155]に記載の溶液は紫外線吸収性粘着剤層を作成するためのものであり(摘記1d参照)、紫外線吸収性粘着剤層は画像表示装置を構成するものであるから(摘記1a参照)、引用文献1の[0155]には「アクリル酸ブチル77質量部、アクリル酸メチル30質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部からなるアクリル系共重合体(重量平均分子量70万)100質量部、アクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:75万)100質量部(固形分換算,以下同じ)と、ヘキサメチレンジイソシアネート4質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,TINUVIN 109)10質量%をメチルエチルケトンに溶解し、作成した、画像表示装置の紫外線吸収性粘着剤層を作成するための溶液。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる(摘記1d参照)。 (2)引用文献2に記載された発明 引用文献2に記載の粘着剤組成物は画像表示装置用両面粘着シートを作成するためのものであるから(摘記2a参照)、引用文献2の実施例2において「アクリル酸ブチル(Tg−56℃)73質量部と、メタクリル酸メチル(Tg105℃)25質量部と、アクリル酸(Tg106℃)2質量部とを共重合してなるアクリル酸エステル共重合体1kg(Mw=110万)に対して、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(旭化成株式会社製;商品名「デュラネート24A−100」)を0.15gと、2−(2’−ヒドロキシ−3−tブチルフェニル)ベンゾエートの変性体混合物からなる紫外線吸収剤(BASF社製;商品名「Tinuvin213」)10gとを加えて、調製した、画像表示装置用透明両面粘着シートとするための感圧粘着剤組成物。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。 3.対比・判断 (1)引用発明1を主たる引用発明とする場合。 ア 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「アクリル酸ブチル77質量部、アクリル酸メチル30質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部からなるアクリル系共重合体(重量平均分子量70万)」及び「アクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:75万)100質量部(固形分換算,以下同じ)」は、本願発明の「ベースポリマー」に相当する。 引用発明1の「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,TINUVIN 109)」は、最大吸収波長が353nmであるから(摘記6a参照)、本願発明の「紫外線吸収剤」及び「前記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長が、300〜380nm(ただし、380nmを除く。)の波長領域に存在する」に相当する。 引用発明1の「画像表示装置の紫外線吸収性粘着剤層を作成するための溶液」は、画像表示装置は有機ELディスプレイであるから(摘記1b参照)、本願発明の「有機EL表示装置用粘着剤組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、「ベースポリマー、紫外線吸収剤を含み、 前記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長が、300〜380nm(ただし、380nmを除く。)の波長領域に存在することを特徴とする有機EL表示装置用粘着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物を含むのに対し、引用発明1はそのような色素化合物を含まない点。 イ 相違点について検討する。 <相違点1>について 引用文献3には、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤とを含む光吸収層を有する偏光板が、記載されており(摘記3a参照)、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤の少なくとも2種類の光吸収剤を併用することによって、光吸収剤の添加量を大きく増大させる事なく、屋外使用での日光による偏光子の劣化を効果的に抑制できることが、記載され(摘記3b参照)、344nmに吸収ピークをもつ第1の光吸収剤(UV−1、ベンゾトリアゾール)と386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤(UV−6、ベンゾトリチオール)を含む偏光板保護フィルムが備えられた屋外用表示装置は屋外で長時間日光に晒される場合においても紫外線による偏光子のコントラスト変化を効果的に抑制でき、そのため日光に晒される前後での表示品位の劣化が少ないことが、記載され(摘記3c参照)、前記386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤は本願発明の「吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物」に相当する。 また、引用文献4には、380nm以下の光をカットする市販の紫外線吸収剤を含有させた円偏光板に、380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有させることにより、波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断し、発光材料やカラーフィルターの外光による耐久性の低下を軽減し得ることが、記載され(摘記4a〜4c参照)、その具体例において380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料である化合物(15)を含有する円偏光板を用いた有機ELディスプレイパネルは輝度低下が軽減できることが記載され(摘記4d参照)、前記380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料である化合物(15)が、本願発明の「吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物」に相当する。 ここで、引用発明1における画像表示装置は、偏光板、及び、カラーフィルターや色素等や液晶化合物を含み、カラーフィルターや色素等や液晶化合物は太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外線により劣化し易く、色調が経時的に変化する場合があり、これを防ぐために従来偏光板が有していた紫外線吸収機能を、偏光板とは別の紫外線吸収性粘着層に備えるものである(摘記1b参照)。 そうすると、画像表示装置の紫外線吸収性粘着剤層を作成するための溶液である引用発明1において、画像表示装置における偏光子の劣化を効果的に抑制するために、紫外線吸収剤に加えて、引用文献3に記載された、偏光子の劣化を効果的に抑制でき、386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤を含むものとし、あるいは、波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断し、画像表示装置において、発光材料やカラーフィルターの外光による耐久性の低下を軽減するために、紫外線吸収剤に加えて、引用文献4に記載された、380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有させ、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 本願発明の効果について 本願明細書【0021】の「本発明の有機EL表示装置用粘着剤組成物は、有機EL表示装置に用いることで、有機EL素子の劣化を抑制することができ、高い透明性を有する有機EL表示装置用粘着剤層を形成することができる。従って、本発明の有機EL表示装置用粘着剤層及び/又は有機EL表示装置用粘着剤層を含む粘着剤層付き偏光フィルムを用いた有機EL表示装置は、優れた耐候劣化性を有し、長寿命化することができる。」及び【0085】の「(3)色素化合物 本発明で使用する色素化合物としては、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する化合物であればよく、特に限定されるものではない。色素化合物の吸収スペクトルの最大吸収波長は、380〜420nmの波長領域に存在することがより好ましい。本発明においては、このような色素化合物と前記紫外線吸収剤を組み合わせて用いることで、有機EL素子の発光に影響しない領域(波長380nm〜430nm)の光を十分に吸収することができ、かつ、有機EL素子の発光領域(430nmよりも長波長側)は十分に透過することができるものであり、その結果、有機EL素子の外光による劣化を抑制することができる。また、色素化合物は前記波長特性を有するものであれば特に限定されないが、有機EL素子の表示性を阻害しないような、蛍光及び燐光性能(フォトルミネセンス)を有しない材料が好ましい。」との記載からみて、本願発明においては、所定の色素化合物と紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることで、有機EL素子の発光に影響しない領域(波長380nm〜430nm)の光を十分に吸収することができ、かつ、有機EL素子の発光領域(430nmよりも長波長側)は十分に透過することができるものであり、その結果、有機EL素子の外光による劣化を抑制することができるという効果を奏するものであるが、引用文献3には、344nmに吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤を併用することにより、波長400nmの光も十分吸収すること、430nmよりも長波長側の光を十分に透過することができることが、記載され(摘記3c、特に表2参照)、偏光子のコントラスト変化を効果的に抑制でき、そのため日光に晒される前後での表示品位の劣化が少ないことが記載され(摘記3c、特に【0068】参照)、引用文献4には、380nm以下の光をカットする市販の紫外線吸収剤を含有させた円偏光板に、380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有させることにより、波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断し、発光材料やカラーフィルターの外光による耐久性の低下を軽減し得ることが、記載され(摘記4a〜4c参照)、その具体例において380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料である化合物(15)を含有する円偏光板を用いた有機ELディスプレイパネルは輝度低下が軽減できることが記載されているから(摘記4d参照)、本願発明が、引用発明1、並びに、引用文献3及び引用文献4の記載から、当業者であっても予測し得ない顕著な効果を発現しているとは認められない。 エ 審判請求人の主張及び当審の判断 審判請求人は、審判請求書において、「引用発明1では、偏光子保護フィルムの少なくとも一方は、活性エネルギー線硬化性接着剤を介して偏光子と積層されますので(請求項1)、活性エネルギー線硬化性接着剤を十分硬化させるために、紫外線吸収剤を添加した保護フィルムを用いるのではなく、偏光板とは独立した別体の紫外線吸収性粘着層を画像表示セルよりも視認側に配置することで紫外線劣化を抑制しています(段落[0003]、[0007])。一方、引用文献3では偏光子の保護フィルムに紫外線吸収剤を配合し、引用文献4では円偏光板の支持体に紫外線吸収剤を含有させ、引用文献5では樹脂フィルムに紫外線吸収剤を添加しており、これらはいずれも保護フィルムへの紫外線吸収剤の添加を遠ざける引用発明1にとって回避すべき構成といえますので、引用発明1に接した当業者は引用文献3−5を参照しようとはしません。」(3.(3)イ.(イ))と主張する。 しかし、上記イで検討したとおり、引用発明1は、従来偏光板が有していた紫外線吸収機能を偏光板とは別の紫外線吸収性接着層に備えるものとしたものであるから、引用発明1に接した当業者は、偏光子の保護フィルムに紫外線吸収剤を配合する引用文献3、円偏光板の支持体に紫外線吸収剤を含有させる引用文献4を参照しようとするといえる。 そうすると、審判請求人の上記主張は採用できない。 オ 小括 以上検討のとおり、本願発明は、引用発明1、並びに、引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)引用発明2を主たる引用発明とする場合。 ア 本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「アクリル酸ブチル(Tg−56℃)73質量部と、メタクリル酸メチル(Tg105℃)25質量部と、アクリル酸(Tg106℃)2質量部とを共重合してなるアクリル酸エステル共重合体」は本願発明の「ベースポリマー」に相当する。 引用発明2の「2−(2’−ヒドロキシ−3−tブチルフェニル)ベンゾエートの変性体混合物からなる紫外線吸収剤(BASF社製;商品名「Tinuvin213」)」は、最大吸収波長が344nmであるから(摘記7a参照)、本願発明の「紫外線吸収剤」及び「前記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長が、300〜380nm(ただし、380nmを除く。)の波長領域に存在する」に相当する。 引用発明2の「画像表示装置用透明両面粘着シートとするための感圧粘着剤組成物」は、画像表示装置は有機ELディスプレイ(OLED)であるから(摘記2b参照)、本願発明の「有機EL表示装置用粘着剤組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明2とは、「ベースポリマー、紫外線吸収剤を含み、 前記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長が、300〜380nm(ただし、380nmを除く。)の波長領域に存在することを特徴とする有機EL表示装置用粘着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本願発明は、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物を含むのに対し、引用発明2はそのような色素化合物を含まない点。 イ 相違点について検討する。 <相違点2>について 引用文献3には、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤とを含む光吸収層を有する偏光板が、記載されており(摘記3a参照)、波長280nm以上360nm未満の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第1の光吸収剤と、波長360nm以上400nm以下の範囲に少なくとも1つの吸収ピークをもつ第2の光吸収剤の少なくとも2種類の光吸収剤を併用することによって、光吸収剤の添加量を大きく増大させる事なく、屋外使用での日光による偏光子の劣化を効果的に抑制できることが、記載され(摘記3b参照)、344nmに吸収ピークをもつ第1の光吸収剤(UV−1、ベンゾトリアゾール)と386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤(UV−6、ベンゾトリチオール)を含む偏光板保護フィルムが備えられた屋外用表示装置は屋外で長時間日光に晒される場合においても紫外線による偏光子のコントラスト変化を効果的に抑制でき、そのため日光に晒される前後での表示品位の劣化が少ないことが、記載され(摘記3c参照)、前記386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤は本願発明の「吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物」に相当する。 また、引用文献4には、380nm以下の光をカットする市販の紫外線吸収剤を含有させた円偏光板に、380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有させることにより、波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断し、発光材料やカラーフィルターの外光による耐久性の低下を軽減し得ることが、記載され(摘記4a〜4c参照)、その具体例において380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料である化合物(15)を含有する円偏光板を用いた有機ELディスプレイパネルは輝度低下が軽減できることが記載され(摘記4d参照)、前記380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料である化合物(15)が、本願発明の「吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物」に相当する。 ここで、引用発明2における画像表示装置は、偏光板及び液晶セルを含むものである(摘記2b参照)。 そうすると、画像表示装置用透明両面粘着シートとするための感圧粘着剤組成物である引用発明2において、画像表示装置における偏光子の劣化を効果的に抑制するために、紫外線吸収剤に加えて、引用文献3に記載された、偏光子の劣化を効果的に抑制でき、386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤を含むものとし、あるいは、波長405〜410nmの光をすそ切れよく遮断し、画像表示装置において、液晶セルに含まれる発光材料の外光による耐久性の低下を軽減するために、紫外線吸収剤に加えて、引用文献4に記載された、380nm以上410nm以下の光をカットする光吸収材料を含有させ、吸収スペクトルの最大吸収波長が380〜430nmの波長領域に存在する色素化合物を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 本願発明の効果について 上記(1)ウと同様の理由により、本願発明が、引用発明2、並びに、引用文献3及び引用文献4の記載から、当業者であっても予測し得ない顕著な効果を発現しているとは認められない。 エ 審判請求人の主張及び当審の判断 審判請求人は、審判請求書において、「また、引用発明2では、両面粘着シートの波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上となる必要があります(請求項1等)。ここで、引用文献2の単層構造の紫外線吸収層の厚みである「250μm」(引用文献2の実施例1、段落[0051])に近い厚さの本願実施例1−4、6−7(厚さ100−150nm;表1)では、波長430−450nmの平均透過率が最大でも76.9%(実施例1)となっています。そうしますと、厚さ100−150nmの本願実施例でも平均透過率が最大で76.9%であるのに、審査官殿が指摘されるように、引用発明2の厚み250μmの紫外線吸収層にさらに引用文献3−5の長波長側吸収性紫外線吸収剤を添加した場合には、引用発明2の「波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上」との要件を満たさなくなります。 このように、引用発明2への引用文献3−5の長波長側吸収性紫外線吸収剤の適用には阻害要因があるといえますので、たとえ当業者が引用文献2−5に接したとしても、上記相違点に係る構成は容易になし得たものではないと思料いたします。」(3.(3)イ.(イ))と主張する。 しかし、引用文献2の実施例2における紫外線吸収層の厚みは30μmであり(摘記2c、特に【0053】参照)、審判請求書で上記言及する引用文献2の実施例1(250μm)よりはるかに薄いものである。そして、引用文献3の表2に開示されるフィルム103〜105は、厚みが40〜80μmであるが、344nmに吸収ピークをもつ第1の光吸収剤(UV−1)に386nmに吸収ピークをもつ第2の光吸収剤(UV−6)を添加しても、波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上である(摘記3c参照)。ここで、一般に層厚が小さいほど光透過率は高いことを考慮すると、少なくとも引用文献2の実施例2において、引用文献3及び引用文献4に記載の長波長側吸収性紫外線吸収剤を添加したとしても、引用文献2の請求項1で規定される「波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上」との要件を十分満たすと推認される。 よって、引用発明2への引用文献3及び引用文献4の長波長側吸収性紫外線吸収剤の適用には阻害要因があるとはいえず、引用発明2に接した当業者は、偏光子の保護フィルムに紫外線吸収剤を配合する引用文献3、円偏光板の支持体に紫外線吸収剤を含有させる引用文献4を参照しようとするといえるから、当業者が引用文献2−4に接したとすれば、上記相違点に係る構成は容易になし得たものである。 そうすると、審判請求人の上記主張はいずれも採用できない。 オ 小括 以上検討のとおり、本願発明は、引用発明2、並びに、引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1又は引用発明2、並びに、引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-10-20 |
結審通知日 | 2022-10-21 |
審決日 | 2022-11-01 |
出願番号 | P2016-247764 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09J)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 田澤 俊樹 |
発明の名称 | 有機EL表示装置用粘着剤組成物、有機EL表示装置用粘着剤層、有機EL表示装置用粘着剤層付き偏光フィルム、及び有機EL表示装置 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |